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オフセット印刷工場におけるVOC排出の見える化とその対策
あさひ高速印刷株式会社
代表取締役 岡 達也
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会社の概要
• あさひ高速印刷株式会社
• 1964年設立(創業1950年)
• グループ社員数 約120名(パート含む)
• 商業印刷、出版印刷
• 編集・デザイン、印刷、製本加工、在庫配送まで
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本社・工場(西区江戸堀・肥後橋)
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当社の立地
• オフィス街にあるオフセット印刷工場
• 営業・制作・印刷・加工がひとつの建物に
• 職住近接の流れで新しいマンションが建ち、
人口も増える。
• 安全への気遣い、地域への配慮
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変わる近隣
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4年前のこと。
隣接する土地にワンルームマンションが建つ。
(それまでは駐車場)
ワンルームマンション 当社
労働衛生・地球環境への配慮
2008年: FSC森林認証(管理された森林から伐
採したパルプを使用)
2009年: グリーンプリンティング認定工場
2016年: 日本印刷産業連合会 環境優良工場
表彰(会長賞)を受賞
7
取組みのきっかけ
• 2012年に大阪の印刷会社で胆管がん問題
が発生
• うちの会社は大丈夫?と聞かれても「たぶ
ん・・・」としか言えない
• 第2種有機溶剤も使っていたが、意識せず。
• この問題以前は「オフセット印刷は大丈夫だ
ろう」と業界では言われていた。(根拠はな
い。)8
取組みのきっかけ
• 仕入れ業者さんに聞くしか方法がない。
• 従業員に対して、「有機則非該当のもの
しか使っていないから大丈夫(たぶん)」
としか言えない。
• 何をどうしていいかわからない。
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問題の認識 –業界団体発刊の冊子
「オフセット印刷工場の有機溶剤管理」日本印刷産業連合会 刊 10
冊子の内容 -オフセット印刷工場のVOC発生
1. オフセット印刷の工場は常時VOCの混合蒸気
が排出されている
2. 特にローラー等の洗浄時に高濃度のVOCが
発生
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工場は常時VOCの混合蒸気が排出
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ローラー等の洗浄時に高濃度のVOCが発生
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推奨された対策
①換気をする
②拡散を防止する
③有害性の低い溶剤へ切り替える
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私の理解
洗浄時のみ、換気などの対策を取れ
ばおおむねOKだ、と理解した。
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VOC警報器の発売、導入
裏付けのなかった状況に、朗報
• VOCの発生状況が把握できる。
これはいい!
• 2016年3月
9台の警報器を工場内に設置
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VOC警報器
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2種類の設置方法
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柱に設置(150cm) 印刷機の上
当初の予想
• 印刷機上の警報器が、ローラー
等の洗浄時に鳴る。
• 人の高さの警報器は鳴らない(だ
ろう)
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警報器設置後
• しかしすべての警報器がランダムに鳴る
• 鳴る頻度
印刷機上の警報器 > 人の高さの警報器
• 洗浄時以外になるとは予想していなかった
• 予想外の展開に困惑
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警報器設置後
• 「社長、うちは大丈夫って言ってましたよ
ね?」
• どうすればいいの?
どこから手をつけるべきか?
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対策その1
【仮説】
1台でも印刷機が洗浄工程に入ったら、工場
内の気流で警報器が鳴るのかも?
【対策】
吸排気を強化
• 鳴る頻度が約半分に。一定の成果。23
吸排気ダクトの増設
24
対策その1 – 対策前
25
26
対策その1 – 対策後
対策その2
【仮説】
廃ウェスからVOCの混合蒸気が発生?
【対策】
⇒「ウェスにはフタをする」の徹底
• 廃ウェスの入ったドラム缶の場所を移動
• ⇒ドラム缶に近い警報器の鳴る頻度が減少
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フタをする。廃ウェスのドラム缶を移動
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対策その2 – 対策前
29
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対策その2 – 対策後
しかしまだ警報器は鳴る
• さらなる改善が必要・・・
• 大がかりなプッシュ・プルの換気装置や、
機械ごとに排気の装置をつけるしかない
のか?
• 大がかりな換気は、冬場の湿度が下がり
品質に影響する。
• お金もかかるし、成果も保証されない。途
方にくれる。 31
SANYO-CYP 山村社長との出会い
• 胆管がん問題の会社
• 徹底した対策と成果
• 中災防を紹介される
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(株)SANYO-CYP
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• 1時間に10回以上空気が入れ替わる。
•ニオイがしない!?
•すごい!
• ここまでしないとダメなのか?
中央労働災害防止協会大阪労働衛生総合センター
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すごく近い!
当社中災防さん
専門家による指導-1
問題の分離
• 「警報器の作動」と「従業員の健康被害」
•いったん切り離して考えよう
•警報器は鳴っても、健康に影響のないレベル
であればよい。
• 警報器を鳴らないようにする⇒健康被害のない
状態をつくる
• 目からうろこ。35
専門家による指導-2
リスクアセスメント
• 洗浄時以外に警報器を鳴らしているモノは何か?
• 洗浄液以外に使用量の多いものは?
• 工場で使用している溶剤等のSDSを見直しする。
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専門家による指導-3
使用量の多い、湿し水に添加するアルコール(代替
IPA)に含まれるtert-ブタノールに注目
湿し水とは・・・
•オフセット印刷は水(湿し水)と油(インキ)の分
離を利用
•湿し水=水と給湿液を混ぜたもの。水の表面張力を
消す
•添加剤として、IPAイソプロピルアルコールなどが使
われる場合も多い 37
代替アルコール tert-ブタノール
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個人ばく露調査の実施
• tert-ブタノール 許容濃度50ppm
• 個人ばく露の値は最大で7ppm以下
• 健康には影響のないレベル
• ひとまず従業員の安全は担保された
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個人ばく露調査
40
専門家による指導-3
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【警報器が鳴る原因を特定】
• しかしまだ警報器は洗浄時以外にも鳴る。
• 不安、気持ちの悪さの解消
• 代替アルコールの濃度が高い機械と警報器の
鳴る頻度に相関がある。
• 洗浄時以外に鳴らすのは何?
• 当社の場合は代替アルコールが原因。
対策その3 -代替アルコールの使用量を減らす
• すぐにはゼロには出来ない事情
• 品質の維持、不使用にするリスク
• 印刷機械の徹底したメンテナンス
• 湿し水の見直し
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対策その3 – 対策前
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対策その3 – 対策後
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対策その3
• 鳴る時間は当初から8割減
• ローラー洗浄時以外はほぼ鳴らない
• 警報器の有効期限が2年経過した。
今は2世代目の警報器を導入。
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一連の取組みのまとめ
以前
•なんとなく・たぶん
•仕入れ業者さんが「安全です」と
言えば安全
•業界では○○と言われている
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警報器導入後
• そもそもVOCは目に見えない
⇒警報器が鳴ると「問題がある」ことがわかる
• 発生の場所やタイミングが把握できた
• オフセット印刷で使用する溶剤は安全と経験則
で思い込んでいた従業員への正しい注意喚起
• はじめて、業界外の第三者の専門家に指導を
あおぐことができた
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予想外の成果も
• 胆管がん問題発生時に防毒マスクを配布
⇒いやがって誰も着用しなかった。
• 今回、個人ばく露調査をして、「安全です。」
• 目に見えない空気への意識が高まる
•意識の向上から洗浄時に防毒マスクを着用
•フタをする、の徹底
•換気扇のフィルター清掃
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防毒マスク、換気扇フィルターの掃除
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防毒マスクを奨励
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今回学んだこと
• 警報器や計測器をもちいた、問題の見える化
• 新しい溶剤等を導入するときのリスクアセスメント
• 第三者機関による定期的な測定と安全性の担保
• おそらく、スタッフの定着率や求人募集にも良い
影響があるのでは。「安全な工場を目指します」と
してアピールしていくことを視野に。
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今後
警報器の作動や調査結果といった、明確な根
拠にもとづいて、従業員が安心して働くことが
できる快適な職場づくりに向けて、安全対策を
続けていきたい。
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