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1 日本国際経済学会第 73 回全国大会(京都産業大学) 2014 10 26 日) 自由論題 グローバル・サプライ・チェーン下の貿易政策 青山学院大学 小田 正規 要旨 本稿では、2013 年に OECD/WTO が提供を開始した付加価値貿易(TiVA)データベー スを用いて、中間財が国境を越える度に累積される関税のコストが途上国の場合には最大 輸出総額の 35%に達することを明らかにした。 20 世紀型貿易政策では、相手国の関税障 壁のコストばかりが分析されてきたが、21 世紀型貿易政策では、自国の関税が自国の輸出 競争力を阻害しているという点に着目する必要がある。 キーワード:グローバル・バリュー・チェーン(GVCs)、付加価値貿易(TiVA)、世界貿易 機関(WTO)、自由貿易協定(FTA青山学院大学 WTO 研究センター客員研究員、[email protected]

グローバル・サプライ・チェーン下の貿易政策...1 日本国際経済学会第73 回全国大会(京都産業大学) (2014 年10 月26 日) 自由論題 グローバル・サプライ・チェーン下の貿易政策

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1

日本国際経済学会第 73 回全国大会(京都産業大学)

(2014 年 10 月 26 日)

自由論題

グローバル・サプライ・チェーン下の貿易政策

青山学院大学 小田 正規†

要旨

本稿では、2013 年に OECD/WTO が提供を開始した付加価値貿易(TiVA)データベー

スを用いて、中間財が国境を越える度に累積される関税のコストが途上国の場合には最大

輸出総額の 3〜5%に達することを明らかにした。20世紀型貿易政策では、相手国の関税障

壁のコストばかりが分析されてきたが、21 世紀型貿易政策では、自国の関税が自国の輸出

競争力を阻害しているという点に着目する必要がある。

キーワード:グローバル・バリュー・チェーン(GVCs)、付加価値貿易(TiVA)、世界貿易

機関(WTO)、自由貿易協定(FTA)

† 青山学院大学WTO 研究センター客員研究員、[email protected]

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1. はじめに:世界貿易の潮流

2011 年 3 月に発生した東日本大震災によって明らかになったことは、世界経済は「グロ

ーバル・バリュー・チェーン(Global Value Chains; GVCs)」によって強固な結びつきを有し

ているということであった。自然災害や事故、政変や気候変動に伴う突然の資源制約等に

よりバリュー・チェーンの一部が機能しなくなると、これが多数の国の生産活動に大きな

影響を与えるようになっている。2011 年には東日本大震災だけでなく、タイにおける洪水

被害により、現地に進出した外資系企業の生産活動の停止、部品供給の大幅な遅れなどに

より、被害を受けた当事国だけでなく、世界各地での生産活動が影響を受け、各国の輸出

や雇用にも打撃を与えることとなった。

一方、WTO(世界貿易機関)や FTA(自由貿易協定)により構築されてきた国際貿易ル

ールは、商品貿易の流れに沿って課されている関税という障壁をどのように取り除くかと

いうことが長く議論の中心とされてきた。そこでは、関税は国内産業を保護する重要なツ

ールと位置付けられ、それが貿易歪曲的にならないためのルール作りが長く行われてきた

のである。しかし、GVCsの拡大に伴い、国内産業保護目的の関税体系は、むしろ自国の輸

出競争力を阻害するものと捉えられるようになってきた。例えば、輸送機械(自動車)の

輸出国は、中間財(部品)を海外から調達したり、最終財の組み立てにあたって様々な工

作機械(統計上は輸送機械とは別の産業に分類される)を輸入したりするが、中間財や工

作機械等が海を越える度に関税が課されたり、関連産業における部品・製品(工作機械や

粗原料)の関税率が高ければ、それらが最終財(自動車)のコストとして積み重ねられ、

価格競争力を低下させる大きな要因となる。

生産工程のアンバンドリングを伴う GVCs の拡大は、アンバンドルされた個別の部品生

産や加工作業のコスト構造を透明化させてきており、関税のようなコスト増要因が企業の

生産活動における分散立地の阻害要因のひとつとして明確に認識されるようになっている。

加えて、アンバンドルされた部品生産や加工作業では、製造面での付加価値のみならず、

本来は国際的に取り引きされないとされてきたサービスの付加価値が体化された形で輸出

価格が形成されることも明らかとなった。そのとき、ある産業分類に属する特定のサービ

スが活用できれば良いということではなく、部品製造・加工作業に「必要な全てのサービ

ス」が十分に活用できなければ、企業はその国を立地選択の対象から除外して考えるよう

になるであろう。例えば、インターネット上で取引を行う「ネット販売サービス」や「ネ

ット調達サービス」の場合、原材料の調達から保管、決済に至る「輸送サービス」「通信サ

ービス」「倉庫サービス」「金融(決済)サービス」「流通・配送サービス」がセットで活用

可能となっている必要があり、その他のビジネスサービス(法務サービスや会計サービス

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など)も含め、どこかひとつのサービスが使用できないことが事業活動全体に影響を及ぼ

すことになる。すなわち、今日の生産・事業活動の国際的分散立地(フラグメンテーショ

ン)は、「製造工程のアンバンドル化」と同時に、生産地点において使用される「サービス

のバンドル化(クラスター化)」を求めるという複雑な構造となってきている。

2013 年に OECD/WTO が提供を開始した付加価値貿易(TiVA)データベースは、GVCs

内で国際的に分散立地する企業の生産活動における付加価値に着目し、付加価値の取引が

国際的にどのような流れをつくり出しているのかを明らかにした画期的な取り組みである。

本稿では同データも活用しながら、特に中間財が国境を越える度に累積される関税のコス

トを明確化するとともに、国際競争力向上のために、国家は自国の関税政策をどのように

変更すべきなのか、そして 21世紀の貿易政策として WTOや FTA を通じた自由化交渉でど

のような原理(principles)を追求していくべきかを分析する。

本稿は、まず第2節において 20 世紀と 21 世紀で貿易政策の重点が変化していることを

確認する。次いで第3節では、グローバル・バリュー・チェーン(GVCs)と貿易政策の関

係を、付加価値貿易(TiVA)統計を用いて確認するとともに、物品及びサービスそれぞれ

の分野で貿易政策のあり方が変化していることを具体的事例を用いながら分析する。そし

て第4節において GVCs の出現が顕在化させた「関税累積」のコストを、TiVA 統計と関税

データを併せて特定したうえで、最終第5節において本稿の分析を通じたインプリケーシ

ョンと今後の課題を整理する。

2. 貿易政策における重点の変遷

2.1 20 世紀型貿易政策:Boarder issues

1947 年に GATT(関税及び貿易に関する一般協定)が成立し、1995 年にこれが WTO と

して発足するまで、世界の貿易ルールは、自国産業を守るために設定された水際措置、す

なわち関税を段階的に引き下げることを中心に構築されてきた。1973 年に始まった GATT

東京ラウンド以降は非関税障壁への関心が高まったが、もっぱらそれはダンピング措置、

補助金、セーフガード措置の発動要件など輸入品の「価格」に直接的に影響を与える措置

への関心が中心であった。

日本が 1990 年代後半以降に推進してきた FTA・EPA(経済連携協定)網の構築も、基本

的に相手国の関税を引き下げさせるために、見返りとして国内のセンシティブ分野(その

多くは農業)の関税を引き下げるかどうかということに終始してきており、その意味では

未だに日本の貿易政策は 20世紀型貿易政策と見なすことができる。

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2.2 21 世紀型貿易政策:Behind the boarder issues

しかし、WTOの発足以降、世界貿易の関心は大きく方向転換することになる。注目すべ

き点は、非関税障壁としての「国内規制」、特に食品・製品安全規制や環境規制と、それら

の適合性評価手続きに対する関心の高まりである。WTO の発足に伴い、これまで任意参加

となっていた TBT 協定(貿易の技術的障壁に関する協定)や、農業協定から切り離される

形で成立した SPS 協定(衛生植物検疫措置の適用に関する協定)が一括受諾の対象となっ

たことが、ひとつの大きな転換点となった。SPS 協定や TBT 協定は、食品・製品安全に関

する技術規格(国家・地方自治体による強制規格)・基準の設定とその適合性評価手続きに

あたり、国際機関の策定する国際規格への準拠を義務化することとなった。その結果、コ

ーデックス食品規格委員会、OIE(国際獣疫事務局)、IPPC(国際植物防疫条約)、ISO(国

際標準化機構)、IEC(国際電気標準会議)、ITU(国際電気通信連合)などによって策定さ

れる国際標準の重要性が飛躍的に高まった。

日本の場合、現在発効ないし参加している貿易自由化交渉のうち、最も自由化度の高い

ものは TPP(環太平洋パートナーシップ)協定であろうが、TPP は関税を原則撤廃するとい

う交渉スタンスであることから、これまでタリフラインベースで 9 割以上の自由化を行っ

てこなかった日本にとっては非常にハードルの高い交渉となっている。さらに言えば、高

い水準の関税引下げがハードルとなって、いわゆる behind the boarder issuesたる国内規制の

国際調和化作業に対して十分な関心が向けられずにいる。その一方で、米国は TPP 交渉に

おいて、国営企業の扱い、知的財産権保護規定の強化などに加えて、規制制度間整合

(regulatory coherence)のルール、すなわち分野横断的な規制策定プロセスの調和化作業を

粛々と交渉の中に盛り込んできている(小田 2014)。現時点で規制制度間整合は原則論を

議論するにとどまっているが、 TPP 交渉がいわゆる Living Agreementであることから、今

後は協定参加国の国内規制の策定に関し少なからぬ影響をもたらすことになるであろう。

加えて、米欧間では TTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ)の交渉が進められている

が、ここでも規制の調和は極めて重要なイシューとなっている1。

1 ただし、米国が分野横断的規制策定プロセスの調和化に関心を示しているのに対して、欧州は個別分野の規制の調和に重点を置いているようである(JETRO 2014)。

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3. グローバル・バリュー・チェーンと貿易政策

3.1 生産活動の国際分散立地と付加価値貿易

グロスの生産額、貿易額に着目するのでなく、付加価値と工程に着目して競争力を分析

する考え方は従来から存在してきた。 Grossman and Rossi-Hansberg( 2008)や

WTO-IDE/JETRO(2011)は、これを財に体化された「仕事の貿易」ないし「価値の貿易」

と定義している。筆者も、1990 年代後半には、日本及びアジア市場において、家電や自動

車の部品としてのプラスチック部品産業がどのような工程間分業を行っているか、それが

生産や雇用にどのような影響を与えているかについて、産業連関表を用いて分析を行った

が(小田 1995、1996、1997)、これは付加価値貿易に着目した分析の先駆けと言ってよいで

あろう。また、Kimura and Ando(2005)、Ando and Kimura(2009)、木村(2012)、Ando(2013)

なども、生産活動の国際的分散立地について包括的にサーベイを行うとともに、実証研究

を行ったものとしてこの分野の研究をリードするものとなっている。

OECD/WTOが 2013年 5月より提供を開始した付加価値貿易(Trade in Value Added; TiVA)

データベースは、国際産業連関分析を用いて、財の貿易に伴う付加価値の発生がどの国に

おいてなされたのかを特定し、国家(及びそこに属する企業)の真の競争力を明らかにす

る新たな統計である。最新データである 2009年における輸出総額とそれに占める国内付加

価値額のランキングを見ると(表1)、上位国のランキングに変化はないが、中国について

は輸出総額約 1兆 2,840億ドルに対して国内付加価値額は約 8,650億ドルと 3分の 2となっ

ており(すなわち中国の輸出の 3 分の 1 は外国からの中間財の輸入が部品として組み込ま

れて加工された上で輸出されている)、こうした傾向は韓国、台湾など田の加工貿易型アジ

ア諸国についても確認される。一方、サウジアラビアやロシアのように、輸出に占める天

然資源が多い国については、国内付加価値額ランキングは貿易総額に比して順位を大きく

上げることになる。ちなみに日本は輸出総額の国内付加価値比率が 85.2%と高く、国内企業

の競争力(付加価値力)が高いことが確認される。

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表1 輸出総額と輸出に占める国内付加価値額の比較(2009 年、100 万米ドル)

輸出総額

国内付加価値 EU27 2,228,065

1,924,502 EU27

United States 1,458,183

1,293,570 United States

China 1,283,964

864,984 China

Germany 1,159,444

850,566 Germany

Japan 618,022

526,587 Japan

France 584,015

462,846 United Kingdom

United Kingdom 559,729

439,480 France

Italy 499,540

399,220 Italy

Korea 401,162

308,530 Russian Federation

Canada 367,569

295,733 Canada

Netherlands 363,330

247,803 Spain

Russian Federation 331,375

238,123 Korea

Spain 312,612

232,870 Netherlands

India 255,032

199,121 India

Belgium 253,648

188,444 Saudi Arabia

Switzerland 243,842

174,423 Switzerland

Mexico 231,899

169,206 Australia

Chinese Taipei 225,657

164,794 Belgium

Singapore 212,449

161,572 Mexico

Ireland 196,304

160,621 Brazil

Saudi Arabia 194,227

131,964 Chinese Taipei

Australia 193,401

129,154 Norway

Sweden 183,779

121,993 Sweden

Malaysia 179,790

116,986 Poland

Brazil 176,562

113,901 Thailand

Thailand 173,976

113,313 Ireland

Austria 164,876

112,710 Austria

Poland 162,225

111,665 Malaysia

Norway 152,490

107,574 Indonesia

Turkey 136,407

106,684 Turkey

Denmark 130,690

106,401 Singapore

Indonesia 125,692

88,850 Denmark

Czech Republic 112,257

68,036 Czech Republic

Hong Kong, China 93,076

66,551 Hong Kong, China

Hungary 88,787

61,890 South Africa

Finland 87,871

58,186 Finland

Luxembourg 79,281

56,217 Argentina

South Africa 74,111

53,350 Hungary

Argentina 63,941

49,401 Chile

Viet Nam 63,056

46,436 Greece

Portugal 61,873

41,821 Portugal

Slovak Republic 60,964

39,948 Viet Nam

Chile 60,585

33,927 Slovak Republic

Greece 60,422

32,595 Luxembourg

Philippines 51,845

31,955 Philippines

New Zealand 31,573

25,760 New Zealand

出所:OECD/WTO TiVAデータベースより筆者作成

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こうした事実は、OECD(2013)で紹介されている iPhone の生産・輸出に関する分析や

Meng and Miroudot(2011)におけるボーイング 787機の国際的な生産体制に関する分析な

どから確認することができるが、これらによると、従来の貿易統計は国(やそこに属する

企業)の輸出競争力を正しく反映していないことになる。このことは、どの産業を保護し、

どの産業を国際競争にさらしうるかという貿易政策に重要な変更を迫るものとなっている。

Baldwin(2011、2014)が指摘するように、21 世紀の貿易政策は、自由貿易協定(FTA)、

二国間投資協定(BITs)、そして unilateralな自主的自由化により、関税が大きく引き下げら

れることが特徴である。実際、1995 年の WTO 設立以降、米国、EU、日本といった先進国

の関税は(途上国と比較して定率ではあるが)、大きく変化していないのに対して、途上国

の関税は、若干のフラクチュエーションがあるものの、漸進的に引き下げられているのが

分かる。(図1)。

注:関税率は、全品目、実行税率、単純平均

出所:World Bank; World Development Indicators(最終更新 07/22/2014)より筆者作成

図1 世界の地域別関税率の推移

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20 世紀型貿易政策では、貿易自由化交渉において「後出し」が有利であると見なされて

きた。すなわち、国内に一定の関税障壁が残存していれば、それが自由化交渉における手

持ちのカードとなり、そのカードを切ること(=自国の関税引下げを行うこと)が交渉相

手国の障壁を引き下げさせるための見返りとなるという考え方である。しかし、1995 年以

降の世界の現実は、世界各国がこうした後出し型貿易政策を採用していないことを明確に

物語っている。

3.2 物品分野での貿易政策の変化

こうした自主的自由化は、GVCsの拡大と無関係ではない。生産活動の国際的分散立地の

進展は、財、資本、労働が国際間で取引されていく過程で、要素価格が均等化していくと

いうことの動学的プロセスであると位置付けることができる。特に消費者の選好が品質よ

りも価格にある場合には、こうした力学がより強く働くことになろう。

逆に国家のサイドからみると、特に経済発展の遅れた途上国の場合、先進国にキャッチ

アップしていくためには、自国が GVCs の立地拠点として選択されることが極めて重要に

なってきている。従来の開発政策では、自国産業を保護しながら経済開発を進める輸入代

替型工業化政策(及びそのための幼稚産業保護)や、輸出拠点育成のためのインフラ整備

や税制優遇といった輸出志向型工業化政策の採用が議論されてきたが、GVSs 時代の貿易政

策は、輸入代替型工業化政策は言うに及ばず、部分的な自由化を行う輸出志向型工業化政

策をも大きく越えて、企業活動にとって障壁がなく、国際市場とシームレスな環境をいか

に創り出し得るかという自主的自由化が必要となってきている。

これは、WTO における情報技術合意(ITA)の事例からも明らかである。ITA は、IT 製

品の貿易に関して関税を全廃するというものだが、WTO の大原則である一括受諾の範囲外

にあり、参加の義務はない。20 世紀型貿易政策の立場に立てば、自国の産業保護のために

は ITA に参加しないことが途上国にとって好ましい選択になるが、実際には ITA は当初の

合意である 1996 年以降、途上国からの参加国が増加し、2014 年 8 月現在では、全参加国

76 カ国のうち途上国は過半の 40 カ国に達している。途上国にとっては、ITA といった IT

製品の関税全廃の枠組みに参加し、積極的・自主的に関税を引き下げることによって、「自

国は障壁の少ない、ビジネスに適した国である」とアピールし、企業のオフショア生産の

拠点として選択してもらおうとの判断である(宇山 2013)。

一般的に、FTA が締結されると、関税が引き下げられた締結国間で貿易創造効果が、そ

して FTA の第三国との間で貿易転換効果が発生すると考えられてきた。しかし FTA は関税

の引下げのみではなく、国内規制の調和、特に基準認証制度の調和により、FTA 締結国に

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おいて統一された規格・基準の下に従来以上の大きな市場が創出されることになる。つま

り、安全規制など国内規制の調和により、FTA 締結国ではない第三国の企業が、1国の市

場よりもより大きくなった2国(以上)の規格が統一された市場に向けて輸出を拡大する

ため、FTA の逆貿易転換効果、すなわち第三国に対する貿易創造効果も発揮され得ること

になる(Baldwin 2011)。最近の実証分析(Magee 2008、Freund and Ornelas 2010)では、FTA

を通じた貿易転換効果は小さく、FTA の締結は第三国からの輸入も拡大すると指摘してい

る。FTA の締結を通じてこうした効果が複数分野で出現し、逆貿易転換効果が大きくなれ

ば、関税が国内産業の保護ツールであるとする 20世紀型の貿易政策を根本的に覆すことに

なろう。

これまで、国内規制の改革を通じた貿易自由化政策は、特定国だけに対して差別的に実

施することが困難であるため、FTA では実行が困難であり、それだからこそ WTOのような

マルチの枠組みでの自由化交渉が重要であると位置付けられてきた(小田 2004、2005)。

これは、知的財産権の保護規定や、競争政策などの場合については依然としてあてはまる

が、上記で見たように、基準認証政策の調和化といった国内規制改革は、FTA 域外国に対

する貿易創出効果も発揮しうる。それゆえ FTA を通じたバイラテラルな自由化交渉におい

ても、マルチ交渉と同様の意義を持っていることが明らかになりつつある。

3.3 サービス分野での貿易政策の変化

3.3.1 財に体化されたサービスの輸出

サービス貿易については、統計的に把握される実態と政策をリンクさせることは、これ

までの国際収支統計からは極めて困難であった。そもそも、自由化状況の分析軸となる「4

つのモード」2に対応した統計が存在しておらず、特に直接投資であるモード 3(拠点設立)

やモード 4(自然人の移動)については、国際収支統計の中でもサービス貿易統計以外に分

類されるとともに、サービス貿易統計には特許料等収入などライセンスの対価まで含まれ

ている。それゆえ GVCs がサービスの生産・消費活動(及びサービス貿易)に与える影響

は、これまで十分な分析が加えられてこなかった分野である。これに対して、OECD/WTO

の TiVA データベースでは、産業連関分析を用いて、サービスの付加価値が物品に体化され

ることを通じて財の輸出に与える影響を取り込むことに成功した。

TiVA によると、主要国の財輸出の付加価値のうちサービスが占める割合は、資源輸出が

2 WTO 協定の一部をなす GATS(サービスの貿易に関する一般協定)において定義されて

いる「越境取引」「国外消費」「拠点設立」「自然人の移動」を通じた 4つの取引体系のこと。

多くの FTA でも同様の分類が行われている。

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中心のサウジアラビアでは 1 割に満たず、サービス産業が十分に発達していない発展途上

国では 2〜3割程度である。日本は輸出総額の約 4割がサービスの付加価値であり、そのほ

とんどが日本国内で生産されたサービスである。サービス経済化が進んでいる先進国や、

シンガポール、香港といったサービス先進国では、輸出に占めるサービスの付加価値は 5

割〜8割超に至っている。インドですら、輸出総額の半分以上がサービスの付加価値であり、

その 8割以上がインド国内で産出されるサービスである。

既存の貿易統計では、先進国でもサービス貿易の比率は財貿易の 2 割前後3であるが、サ

ービスの競争力の高さが財貿易の競争力に直結しているということが理解できよう。

出所:OECD/WTO TiVAデータベースより筆者作成

図2 輸出総額に体化されたサービスの付加価値(%、2009 年)

このように、国内のサービス産業の競争力は、当該国の財輸出、すなわち製造業の競争

力に直結する。20 世紀型貿易政策では、自国産業を保護しながら輸出先国の障壁を取り除

き自国からの輸出を拡大することを目指すことになるが、GVCsが活発に活動する経済にお

いては、いかに自国のサービス産業を強化するかということが重要になる。このとき、自

3 日本銀行国際収支統計によると、2009年における日本の財+サービスの輸出に占めるサ

ービス輸出の比率は 16.5%である。

6.0

15.9 18.1 17.4

28.0 21.5

33.4 24.9 24.4

35.1 35.7 29.0

35.9

46.1 41.3 43.1

30.0

50.2

66.8

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

80.0

90.0

外国サービス

国内サービス

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国のサービス産業を保護して外国のサービス事業者との競争を回避することが得策なので

はなく、GVC 企業(製造業)の中間投入の選択肢をいかに増やすか、すなわち、サービス

産業分野の各種規制を取り除き、外資の参入を促すことを通じて自国のサービス産業に競

争を導入することが、サービス産業の競争力強化に繋がるものと考えられる。GVC 活動下

の 21世紀型貿易政策では、サービス分野においても自主的な自由化が競争力に直結するの

である。その点、OECDが 2014年 5月に公表したサービス貿易制限指標によると、日本は

航空輸送、電気通信、海上輸送といった、GVCs にとってインフラとなるサービスの制限指

標が高い4。こうした点を改善していくことが、日本が GVCs の拠点としての役割を果たし

得るかどうかの大きなベンチマークである。

3.3.2 サービスのクラスター化(バンドル化)

ここで、GVCsにおける輸出競争力のひとつが、直接的には貿易されないサービスの競争

力にあると仮定するのであれば、そのサービスの競争力とはどのように定義されるべきで

あろうか。

サービスの特徴は、物品以上に規模の経済性が発揮されることにある。インターネット

を通じた無形物たるソフトウエアのダウンロード販売は、規模の経済性が究極的に発揮さ

れる典型例であろう。ただし、サービスの「価格」自体が競争力の指標となり得るかは、

財の場合との比較において、とても困難なものとなる。特定の知的財産を有した PC ソフト

や映画ソフトなどは、相当の数が販売(ダウンロード)されたとしても、著作権という排

他的権利の行使を通じて一定価格に高止まりする。一方、インターネット接続サービスの

ように国際的に均質なサービスの場合は規模の経済性が働くほど価格が安くなる5。

さらに問題を難しくしているのは、サービスの「複合性」である。従来の「国際電話」

や海外旅行時の「航空輸送サービス」といった単一サービスの消費とは異なり、近年のサ

ービス提供は、産業分類を越えた複数のサービスが複合的にパッケージ化され、これを同

時に消費するという性格のものが増加してきているからである。

例えば、発展途上国において、先進国と同様の「ネット販売サービス」をインターネッ

ト上で開設することを考えてみよう。途上国においては、自国の小規模事業者を保護する

観点から、小売業への参入規制(外資規制)を設けている国が少なくない。加えて、ネッ

ト取引を行うには、安定的で信頼できる付加価値通信網が構築されている必要がある。そ

のため、付加価値電気通信サービスが一定程度開放され、高度で安価なインターネットプ

4 「OECD サービス貿易制限指標(STRI):日本」、

http://www.oecd.org/tad/services-trade/STRI_JPN_JA.pdf 5 もちろん、一定の固定費用が発生することから、価格が限りなくゼロとなるわけではない。

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ロバイダが市場参入していることが必要となってくる。また、取引の決済にあたっては、

VISA、Master といった信頼できるクレジットカードのサービスが自由化されている必要が

あり、物品の取引であれば海運サービス、航空輸送サービス、国内エクスプレスデリバリ

ーのサービス(FedEx をはじめとする宅配サービス)の参入が認められていなければならな

い。こうしたネット取引企業が事業活動を行っていくためには、倉庫のサービス、人材派

遣のサービスも必要であろうし、企業活動自体には様々なビジネス関連サービス(会計や

法務のサービス、カスタマーサポートのサービスなど)も開放されている必要がある。こ

れらの複数分野のサービスが同時に利用可能でなければ、「ネット取引サービス」は成立し

得ない。このようなサービス提供形態は、ネット取引サービス(電子商取引)の他に、観

光サービス、環境サービス、エネルギーサービス、エクスプレス・デリバリー(OECD 2001)

の他、エンターテインメント・サービス(劇場映画上映、テレビ放送、ビデオ(DVD)販

売、音楽サービス、ゲーム制作、書籍販売、キャラクター関連サービス、広告サービス等)

(国松 2013)が典型例である。WTO ドーハ開発アジェンダ交渉におけるサービス貿易自

由化の議論の中でも、この「クラスター・アプローチ」が実際の企業活動を通じたニーズ

として重要な交渉テーマと位置付けられ、WTO 交渉参加国から提案がなされてきた(WTO

2000a、2000b)。

以上のようにみてくると、モノの世界においては現在のところ「第2のアンバンドリン

グ」(Baldwin 2011、2014)が進んでいる一方で、サービスの分野では複数の産業分野を越

えたサービスの複合化、バンドル化、クラスター化が不可欠となっており、サービスがク

ラスターとして自由化されている国でないと、GVC 企業の立地選択の選択肢から除外され

てしまうのである。

3.4 貿易自由化の動学的効果:経営戦略論的アプローチ

一国が FTA を締結しても、貿易業者は必ずしも FTA特恵税率を活用しないという見方が

ある。このことは、民間企業の FTA の活用率が低い水準にとどまっていることからも明ら

かである(JETRO 2014)6。特に日本企業の進出が多い東南アジア諸国では、複雑な FTA網

が構築され、FTA 特恵を獲得するための原産地規則も FTA ごとに異なっているため(スパ

ゲッティボウル現象)、貿易事業者にとって複雑な税関手続きを行うよりも、多少の関税を

6 JETRO(2014)によれば、2013年度調査による日本企業の FTA 利用率は 42.9%となって

いるが、FTA 利用率の定義は「FTA日本の FTA 締結相手国のいずれか一つ以上と貿易関係

がある企業のうち、輸出または輸入で一つ以上の FTA を利用している企業の割合」であり、

個別 FTA についてみると、最も利用率の高い日タイ EPA(2007年 11月発効)で 35.9%と、

依然として FTA の利用率は高くないと言える。

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支払ってでも書類作成コストを削減した方が得策との判断となっている。

その一方で、流通業者(特に小売業者)は、FTA の合意時に「FTA 締結記念セール」「関

税撤廃記念セール」などを実施することがある。例えば、南米諸国との FTA によりワイン

の関税が長期的に撤廃されることが合意されたとき、国内消費者の受け止め方は、「長期的

に」という部分が捨象され、「ワインの関税が撤廃される」という点だけが強調される。そ

れゆえ小売業者は、関税が撤廃されるというまだ相当先に行われる自由化があたかも即時

に実施されたかのような「歓迎セール」を実施し、消費者の購買意欲を刺激しようとする。

広告効果も相まって、値下げされたワインの消費は拡大するので、利幅が小さくなっても

数量効果によって小売業者は値下げからの利益を得ることができる。

出所:筆者作成

図3 FTA 締結による小売業者の先行値下げ(イメージ)

しかしこうした「歓迎セール」も一定期間を過ぎると消費者の関心が低下し、販売数量

は減少する。販売数量が落ち込むと小売業者の利益が縮小するため、値下げ価格を維持で

きなくなり、値上げをするか、その商品(ワイン)を扱わなくなってしまう。特に値上げ

小売業者

による先

行値下げ

(歓迎セ

ール)

FTA 合意

輸入品の

販売量

(輸入量)

の増加

値下げ効

果の現象

(販売

量・輸入量

の減少)

FTA 発効

(段階的関税引下げ)

小売業者

利益減少

FTA 特恵活用

必要性

拡大

撤退?

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をすると、消費者の購買意欲は即時に減退し、当該店舗から客足を遠ざけてしまうことに

なる。小売業者にとって、消費者の足を引き止めるためには、多少の手続きコストをかけ

てでも、FTA 特恵税率を得るために原産地証明を取得することが、利益を維持するために

不可欠な経営判断となるのである。

こうしたことにより、特定の小売業者が FTA 特恵税率を活用し始めると、他の事業者も

競争戦略上 FTA 特恵税率を活用せざるを得なくなるという連鎖が発生し、FTA 締結後一定

の時間が経過すると、徐々に FTA の活用が進むということになるのである(ドミノ効果、

Baldwin 1993)。

4. GVCs が主導する 21 世紀型貿易政策の論点

以上見てきたように、GVCs 活動の拡大に伴う 21 世紀型貿易政策は、世界各国に自主的

自由化を求める潮流となっている。しかしながら、国家の貿易政策は、簡単に 20世紀型か

ら 21 世紀型へと修正することは難しい。WTO ドーハ開発アジェンダ交渉の停滞や、各種

FTA 交渉におけるハイレベルな関税引下げ交渉の難航は、国家が依然として 20世紀型貿易

政策に依存していることを如実に示している。

4.1 関税の累積:単純化モデル

それでは、世界各国はどのようにしたら 21 世紀型貿易政策へと移行できるであろうか。

現実問題として、多くの国や企業にとって 21世紀型貿易政策への移行は容易ではない。逆

に言えば、21 世紀型貿易政策に移行できた企業こそが、GVCs としての利益を獲得できる

のである。

その際、多くの既存企業が直面する課題は、「関税」という 20 世紀型貿易政策の生み出

した障壁から引き続きに複雑に影響を受けるということである。関税の問題について、既

存の分析では、①高関税、②複雑な非従価税(季節関税や差額関税を含む)、③原産地規則、

④非効率な税関手続き、⑤複雑な FTA 特恵税率適用手続き(③+④)といったことであり、

もちろんこれらは GVCs にとって立地選択上の障害とみなされるわけであるが、これらに

加えて、⑥生産立地の国際的分散により中間財が複数回国境を越えることに伴う関税の累

積によるコスト増、ということが事業活動上の大きな障害となっている。

例えば、自動車の生産についてみてみよう。従来、自動車では各国間で異なる安全規制

が存在することにより、また自動車が輸送コストのかかる大きな製品であることもあり、

消費国で生産・加工が行われることが通例であった。その際、一部の部品については海外

から調達されるものもあったが、自動車産業は各国が戦略的に保護してきた産業でもあり、

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生産活動に占める輸入部品の比率は少なかった。しかし、UNEEC7における自動車分野の国

際標準化や、特に電装品に関する IEC 等での国際標準化作業の進展もあり、加えて人件費

の安い発展途上国の技術水準の上昇も相まって、自動車生産におけるバリュー・チェーン

は一国内で完結してきたものから、一気に国際的なものへと拡大しつつある。

自動車の工程間分業は、「製造する部品」「加工工程」「使用する機器」により、以下のよ

うに整理可能である。

(1) 製造部品:ボディ、シャーシ、エンジン、トランスミッション、ブレーキ、タイ

ヤ、バンパー・ダッシュボード等、シート、電装品、カーナビ、等

(2) 加工作業:金型作成、プラスチック成形、切削、研磨、メッキ加工、等

(3) 使用機器: NC 工作機、成形機、工作ロボット、製造ライン(コンベア等)

製造部品のうち、エンジンやトランスミッション、ブレーキといった主要部品は自動車

メーカーの本社のある国で研究開発が行われるが、一度生産工程が確立されれば、容易に

国境を越え得る。一方、加工作業に関連して、ボディ金型の製造は、世界中の自動車メー

カーが日本のある金型メーカーに全面的に生産を依存するなど(自動車ボディのような大

型の金型を精密に生産するためには特殊な技術が必要となる)、容易に国境を越えられない

部品もある。一部電装品については、自動車の最終消費国である先進国で生産された後、

組み立てのために人件費の安い途上国へ輸出され、再度完成品として先進国に戻ってくる

というケースも見られる。

図4は、こうした GVCs による生産活動を単純化したイメージである。上段は GVCs 活

動の地理的分散のイメージであるが、4つの異なる中間部品製造市場(国)で生産された

部品が特定国(図4上段では中間部品④製造市場)に集約され、組立加工の後に完成品消

費市場へと輸出されるわけであるが、これらの部品や完成品が国境を越えるたびに、関税

が賦課され、最終製品のコスト上昇要因となる。

図4の下段は、各国で生産される部品の本体価格と関税相当分を分解・再結合したイメ

ージである。イメージ図は単純化しているが、部品が複数回国境を越えると、関税は累積

的に拡大する(OECD 2013)8。ここで少々詳細な分析が必要になるのは、生産の国際分散

7 国連欧州経済委員会。同委員会傘下の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)が自動車

分野の国際標準化をリードしている。欧州は大陸が地続きであることもあり、最も古くか

ら自動車分野の安全・環境規制に関して国際標準化に積極的であった。 8農林水産品・食料品に関する関税は(極度な高関税でない限り)国内産業保護の効果を持

たないが、機械産業など部品あたり銭単位でのコスト削減を行っている分野では、関税の

影響は大きい。

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立地の中で、どの国の関税が大きな影響を持ち得るかということである。部品を輸出する

だけの国については、その国の当該製品の輸入関税の高低は製品の製造コストになんら影

響を与えないが9、部品を集約して組み立て加工を行う国、そして最終製品を輸入する国の

関税は最終製品の価格に大きな影響を与え得る。ただし、製品の最終輸入国の関税は、そ

の国の消費者が高い関税を支払ってまで当該製品を購入(輸入)したいかどうかという嗜

好に依存しており、ここでは特段の考慮を払う必要はないだろう。重要になるのは、組立

加工国関税の高低である。これは、自動車であれば自動車産業としての部品関税にとどま

らず、工作機械を含め産業分類を越えた製品・部品の関税の存在が GVCs の立地選択に影

響を与え得るということである。

また仮に、図4(上段)における完成品消費市場が日本であった場合、日本は自動車の

関税は(部品を含めて)ゼロであるものの、自国で生産した部品を輸出して組立加工に用

いる場合、組立加工国の関税が賦課された上で再輸入されてくることになる。すなわち、

自国は関税を撤廃していたとしても、自国生産の部品に対して組立加工国の関税を間接的

に賦課してしまうのである。

9 輸出関税が存在する場合は別であるが、輸出関税を有する国は極めて限定的であり、そも

そもそうした国は GVCsによって選択されないであろう

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<GVCs における付加価値と関税>

<完成品市場に対する関税の累積効果>

(出所)筆者作成

図4 GVCs における関税累積の概念図

関税④ 中間部品④

製造市場・

最終組立国 完成品

消費市場

中間部品②

製造市場

中間部品①

製造市場

中間部品③

製造市場

関税①

関税③

関税②

中間部品①

価格

関税①

中間部品②

価格

関税②

中間部品③

価格

関税③

中間部品①

価格

中間部品②

価格

中間部品④

価格+

組立付加価値

関税①

関税②

中間部品③

価格

関税③

完成品市場の

コスト増

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4.2 累積関税コストの特定

TiVA 統計の定義を確認すると、貿易総額は国内付加価値と外国付加価値の総計である

(4.1 式)。このうち、国内付加価値は当該国において直接体化された付加価値+国内で生

産された中間財から間接的に体化された付加価値+再輸入された国内付加価値の合計であ

る(4.2 式)。X 国の輸出において、①外国付加価値に対する X 国の関税と、②再輸入され

た国内付加価値が当初外国に輸出された時の関税及び③それが再輸入された時の X 国の関

税が、最終製品の製造に際して累積的に賦課されることになる。

Gross exports = Domestic value added embodied in gross exports + Foreign value added

content of gross exports (4.1)

Domestic value added embodied in gross exports = Direct domestic industry value added

content of gross exports + Indirect domestic content of gross exports

(originating from domestic intermediates) + Re-imported domestic value

added content of gross exports (4.2)

TiVA 統計の最新データである 2009年に関し、OECD 加盟国の輸出総額、国内付加価値(国

内直接付加価値、国内間接付加価値、再輸入付加価値)と外国付加価値を示したのが表2

である。累積関税のコストの算出(9)にあたっては、計算を単純にするために総額データを

用い、輸出総額に占める①外国付加価値に対する関税は当該国の平均関税率が賦課される

とみなしている。また②再輸入された国内羽化価値が当初外国に輸出されたときの関税は、

2009年の世界の平均関税率(7.13%、世界銀行World Development Indicatorsより)が課され

ているとみなしている。そして③再輸入された国内付加価値には、①と同様当該国の平均

関税率を乗じている。

累積関税コスト X

=外国付加価値 X×平均関税率 X+再輸入付加価値 X×(平均関税率 X+平均関税率 W)

ここで、X は自国、Wは世界全体

(4.3)

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表2 累積関税のコスト(単位:100万米ドル)

総輸出

(1)

国内付加価値(2) 外国

付加

価値

(6)

⑤+⑥

(7)

比率

(1)/

((5)+

(6))

MFN

税率単

純平均

(8)

累積

関税

コスト

(9)

直接

付加価値

(3)

間接

付加価値

(4)

再輸入

付加価値

(5)

Australia 193,401 96,265 72,680 261 24,195 24,456 12.6% 3.5% 875

Austria 164,876 67,229 45,102 379 52,166 52,545 31.9% 5.3% 2,812

Belgium 253,648 96,765 67,323 705 88,855 89,560 35.3% 5.3% 4,797

Canada 367,569 182,900 112,026 806 71,836 72,642 19.8% 4.5% 3,326

Chile 60,585 32,456 16,925 19 11,184 11,204 18.5% 6.0% 674

Czech Republic 112,257 37,880 29,898 258 44,221 44,479 39.6% 5.3% 2,376

Denmark 130,690 58,810 29,775 265 41,841 42,105 32.2% 5.3% 2,250

Estonia 11,932 4,948 3,016 4 3,964 3,968 33.3% 5.3% 211

Finland 87,871 33,362 24,747 76 29,685 29,761 33.9% 5.3% 1,583

France 584,015 229,644 207,530 2,307 144,534 146,841 25.1% 5.3% 7,947

Germany 1,159,444 424,263 414,320 11,982 308,878 320,860 27.7% 5.3% 17,860

Greece 60,422 29,688 16,721 27 13,986 14,013 23.2% 5.3% 745

Hungary 88,787 37,473 15,782 95 35,437 35,532 40.0% 5.3% 1,890

Iceland 6,190 2,960 967 0 2,262 2,263 36.6% 5.8% 131

Ireland 196,304 81,316 31,754 243 82,991 83,234 42.4% 5.3% 4,429

Israel 65,107 29,798 15,372 21 19,916 19,937 30.6% 6.5% 1,297

Italy 499,540 182,883 215,124 1,212 100,320 101,532 20.3% 5.3% 5,468

Japan 618,022 217,840 306,478 2,268 91,435 93,704 15.2% 4.9% 4,753

Korea 401,162 110,805 125,391 1,928 163,039 164,967 41.1% 12.1% 20,098

Luxembourg 79,281 23,263 9,159 173 46,686 46,859 59.1% 5.3% 2,496

Mexico 231,899 93,321 67,823 428 70,326 70,755 30.5% 11.5% 8,167

Netherlands 363,330 138,359 93,070 1,441 130,460 131,901 36.3% 5.3% 7,096

New Zealand 31,573 12,078 13,675 7 5,813 5,819 18.4% 2.1% 123

Norway 152,490 86,901 41,874 379 23,336 23,715 15.6% 6.1% 1,474

Poland 162,225 62,010 54,711 264 45,240 45,504 28.0% 5.3% 2,431

Portugal 61,873 24,002 17,771 48 20,053 20,100 32.5% 5.3% 1,069

Slovak Republic 60,964 20,283 13,556 88 27,037 27,125 44.5% 5.3% 1,444

Slovenia 27,423 11,465 6,515 10 9,434 9,444 34.4% 5.3% 501

Spain 312,612 127,311 119,859 633 64,809 65,442 20.9% 5.3% 3,514

Sweden 183,779 72,991 48,566 436 61,786 62,222 33.9% 5.3% 3,329

Switzerland 243,842 102,707 71,040 676 69,419 70,094 28.7% 6.5% 4,604

Turkey 136,407 56,824 49,785 75 29,723 29,798 21.8% 9.7% 2,896

United Kingdom 559,729 289,633 171,748 1,464 96,883 98,347 17.6% 5.3% 5,317

United States 1,458,183 771,425 513,678 8,467 164,613 173,080 11.9% 3.5% 6,661

Argentina 63,941 29,267 26,932 19 7,724 7,743 12.1% 12.6% 977

Brazil 176,562 78,925 81,606 90 15,942 16,031 9.1% 13.6% 2,187

Brunei Darussalam 7,683 5,816 997 0 870 870 11.3% 2.5% 22

Bulgaria 21,916 8,027 6,842 4 7,044 7,048 32.2% 5.3% 374

Cambodia 5,932 2,719 1,192 0 2,021 2,021 34.1% 14.2% 287

China 1,283,964 305,543 545,355 14,086 418,981 433,067 33.7% 9.6% 42,579

Chinese Taipei 225,657 68,571 62,188 1,205 93,694 94,898 42.1% 6.1% 5,875

Hong Kong, China 93,076 42,840 23,644 68 26,525 26,592 28.6% 0.0% 5

India 255,032 111,123 87,756 243 55,911 56,153 22.0% 12.9% 7,261

Indonesia 125,692 62,758 44,704 112 18,118 18,230 14.5% 6.8% 1,248

Latvia 10,872 4,437 3,694 4 2,738 2,742 25.2% 5.3% 146

Lithuania 19,212 8,752 3,527 7 6,925 6,932 36.1% 5.3% 368

Malaysia 179,790 68,321 42,667 677 68,125 68,802 38.3% 8.4% 5,828

Malta 6,023 2,834 975 0 2,214 2,214 36.8% 5.3% 117

Philippines 51,845 19,602 12,237 116 19,890 20,006 38.6% 6.3% 1,269

Romania 47,676 23,089 13,036 23 11,527 11,550 24.2% 5.3% 614

Russian Federation 331,375 185,792 122,378 361 22,845 23,206 7.0% 10.5% 2,462

Saudi Arabia 194,227 171,484 16,933 27 5,783 5,810 3.0% 4.8% 281

Singapore 212,449 72,616 33,143 643 106,048 106,691 50.2% 0.0% 46

South Africa 74,111 35,002 26,875 13 12,221 12,234 16.5% 7.7% 943

Thailand 173,976 66,270 47,352 279 60,074 60,353 34.7% 9.9% 5,995

Viet Nam 63,056 27,156 12,741 52 23,107 23,159 36.7% 10.9% 2,528

出所:OECD/WTO TiVAデータベース及びWTO World Tariff Profile 2010より筆者作成

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20

TiVA データベースに搭載されている OECD 加盟 34 カ国、非 OECD 加盟 22 カ国、合計

56 カ国の累積関税コストは総額で 2,160 億ドルで、台湾やシンガポール、メキシコなどの

輸出総額に匹敵する額である。また図5は累積関税コストの輸出総額に対する比率を求め

たものであるが、韓国、マレーシア、中国、タイ、ベトナム、カンボジアなどアジア諸国

は、経済発展著しく実際に GVCs の立地拠点として選択されている国々であるが、自国の

関税が依然として高いために外国中間財の輸入がコスト増となってしまっており、今後

GVCsの拠点としてさらなる成長を実現するためには、自国関税の引下げが不可避であるこ

とが理解されよう。一方日本は、累積関税の輸出総額に対する比率は 0.8%と、OECD 加盟

国ではニュージーランド、豪州、米国に次いで低い。その意味で、日本の関税水準は GVCs

の活動に適したものであるということができる。

たしかに、上記の分析は、輸出をひとまとめとして平均関税率を乗じているほか、途上

国における輸出加工区等での免税生産や途上国特恵、FTA 特恵の存在などは考慮していな

い。特に日本のように、主たる貿易品目である家電や輸送機械は関税がゼロでありながら、

全産業の平均関税率を乗じてしまっているのは、コストを過大に算出することになってい

るであろう。今後は、産業別の分析をより詳細に進め、累積関税コストの正確な算出に務

めることが課題である。

しかしながらここで言えることは、20 世紀型貿易政策では、相手国の関税障壁のコスト

ばかりが分析されてきたが、21 世紀型貿易政策では、自国の関税が自国の輸出競争力を阻

害しているという点に着目する必要があるということである。

出所:表2に同じ

図5 輸出総額に対する累積関税コストの比率

0.0%

1.0%

2.0%

3.0%

4.0%

5.0%

6.0%

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5. インプリケーションと今後の検討課題

4.1 インプリケーション

以上見てきたように、GVCs下の貿易政策としては、関税は自主的に自由化し、サービス

も規制緩和を積極的に進めて競争力の高い外国事業者の参入を促すことが、結果的に財の

輸出競争力を高めることになる。特にサービス分野においては、クラスター・アプローチ

による分野横断的自由化パッケージの構築が重要となる。その際、GATS型ポジティブリス

ト方式による自由化ではなく、NAFTA型のネガティブリスト方式の自由化を目指すととも

に、将来に対する一定の留保が認められている NAFTA 型を越えて、新たなサービスについ

ては将来においても制限を導入しない「WTO金融了解」型の自由化を行うことが好ましい。

また、宇山(2013)が指摘するように、GVCsに参加できるかどうかは、途上国の経済発

展にとって極めて重要である。「貿易と開発」の視点は、マルチにせよバイにせよ、今後世

界が新たな貿易ルールを作り、GVCsの活動をより円滑化していくのであれば、途上国のポ

ジティブなコミットメントの確保が不可欠である。しかし途上国企業が GVCs に参入する

ためには、各国は部分的な自由化ではなく、相当程度パッケージ化された程度の高い自由

化を行う必要がある。その際、関税に関しては重要な国家税収であるとの位置付けから脱

却しなければならない。GVC 活動の拡大を通じた法人税収の拡大、GVCs に雇用される労

働者の所得拡大・経済全体の発展を通じた所得税・付加価値税収入の拡大に移行する環境

整備を同時に行わなければならない。

これまでの産業政策において、日本はフルセット型構造をいかに維持していくかという

ことに力を砕いてきた。しかし GVC 活動が活発化している今日の世界経済において、あら

ゆる産業のあらゆる工程を自国内に保持することは極めて困難である。特に付加価値の低

い組立加工分野を人件費の安い途上国の企業と競争することは避けなければならない。21

世紀に入り、産業政策も従来のフルセット型から、付加価値が高く、将来性のある技術分

野へ集中特化していくことへと大きく転換していく必要がある。

また貿易政策に関しては、マルチ、バイの交渉を問わず、日本は家電や自動車分野を中

心に自主的に関税を引き下げており、交渉にあたってバーターとし得る「持ちダマ」が少

なく不利であると言われてきた。しかし GVC 時代において関税が低いことはマイナスでは

なく、GVC 企業に立地選択してもらうために大いにプラスであると発想を転換する必要が

ある。

4.2 今後の検討課題

TiVA 統計は、これまで統計の裏側に隠されていた真の国際競争力を白日の下にさらすこ

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ととなった。従来、国家の輸出競争力を計測する手法として RCA 指数、貿易特化係数等の

算出が行われてきたが、TiVA統計は実証分析上も大きな付加価値を与えるものである(TiVA

データベースには、これを用いた RCA指数のデータベースも付属している。例えば日本は、

貿易総額の RCA 指数と比較して、TiVA 統計の RCA 指数が高い)。ただし、国際産業連関

分析を用いることから作成に長時間を要し、現時点では 2009年データまでしか作成されて

おらず、既存の貿易統計から 4〜5年のタイムラグが発生することになる。それにより、タ

イムリーな分析には向かず、対象国も限定的であり、また既存の貿易統計のような詳細な

品目別分析も行うことが難しい。既存の貿易統計と併存する形で、より詳細な分析を可能

とするよう、対象国の拡大も含めて、国際的に統計整備の協力が待たれるところである。

GVCsの存在を前提とした貿易政策の検討は、従来の経済学的分析に修正を求めるだけで

なく、GVCsの活動実態を踏まえた経営学的分析、そして新たな政治力学を考慮した政治経

済的分析を必要とするなど、分析自体の「バンドル化」を求めるようになってきているこ

とも、見逃すことのできない点である。本稿では、先行研究の整理を行った上で 21世紀の

貿易政策に関する論点整理を行った。今後は TiVA統計を用いたさらに詳細な実証研究を行

い、既存の貿易データと TiVA 統計の間で国家の輸出競争力に関する分析結果がどのように

異なるかを検証していくことが課題である。

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