Upload
others
View
0
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
– 1 – Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に
含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何ら
かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
更新日:2020/5/11
メタンハイドレート研究開発グループ:山本晃司
メタンハイドレート研究開発の総括成果報告書とフェーズ 4 実行計画の公表
• 2001年度に開始された経済産業省の「我が国におけるメタンハイドレート開発計画」のフェーズ1か
らフェーズ3(機構と(国研)産業技術総合研究所(以下「産総研」)が組織するメタンハイドレート資
源開発研究コンソーシアム(以下「MH21」))は、2018年度末をもって終結した。
• この期間に、陸上及び海洋において、いずれも世界で初めてメタンハイドレートからのガス生産実
験を実現するなど多くの成果を収め、その成果は和英文の「総括成果報告書」として取りまとめら
れ、MH21のウェッブサイトにて公開された。
• 一方で、メタンハイドレートの商業化にむけて多くの技術課題が明らかとなり、それらの課題を解決
すべく、経済産業省の「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画(以下「開発計画」)」)の下で、新たに
組織されたMH21-S研究開発コンソーシアム(機構、産総研、及び日本メタンハイドレート調査(株)
(以下「JMH」))が、2019〜2022年度に砂層型メタンハイドレート研究開発の「フェーズ4」を実施す
ることとなり、その目標と実施内容を定めた「フェーズ4実行計画」が発表された。
1. フェーズ 1からフェーズ 3までの成果
日本周辺海域を含む世界の大水深海底に広く分布すると考えられているメタンハイドレートは、低温・
高圧環境の海底面下で固体として存在する「非在来型天然ガス資源」の一つであると考えられている。
それが天然に存在することは20世紀中から知られていて、地球の炭素循環の重要な要素として科学者
の興味の対象となっていた。一方、MH21が資源としての研究開発に着手した平成13年頃には、わが国
近海における資源としての賦存量も仮定を積み重ねた値であり、それが地下にどのような状態で存在す
るのかはわかっておらず、またどのような生産手法を用いればエネルギー資源として有用なメタンガスを
取り出せるのかについても理論的な考察しかなかった。
その後の18年間の研究は、図1に示すように、
1) 地震探査と掘削調査による資源量と貯留層特性の解明
2) 理論・数値シミュレーション・室内実験などによる生産手法の開発と陸上・海洋でのフィールド産出試
験によるその実証
を二本柱に、将来の商業化を視野に入れた海洋開発システムとその経済性の検討、環境影響に関する
調査・研究も含めて実施した。その結果、
– 2 – Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に
含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何ら
かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
・ 東部南海トラフ海域に、広がりをもったタービダイト砂層中に高い飽和率でメタンハイドレートが存在
する「メタンハイドレート濃集帯」が存在することを発見した。
・ 比較的高いエネルギー効率が期待される「減圧法」でメタンハイドレートを分解してガスを生産できる
可能性が第1回陸上産出試験(2002年)と数値シミュレーション・室内実験などから示され、第2回陸上
産出試験(2007-2008年)、第1回(2013年)及び第2回(2017年)の海洋産出試験で実証した、
といった成果を上げることができた。また、関連して多くの基礎的研究及び技術開発が進められ、その中
には、メタンハイドレートの生成・分解メカニズムと基礎物性のような研究基盤データの取得、地震探査・
物理検層によるメタンハイドレート貯留層の特性評価手法、メタンハイドレート生産シミュレータの開発、
圧力コア取得及び分析装置の開発といった、その後の各国のメタンハイドレート研究開発の基準となるよ
うな成果が多くもたらされた。
これら、18年間の成果を和英の総括成果報告書として発表している。フェーズ1の総括成果報告書は
2008年にMH21のウェッブサイトで公開されており(https://www.mh21japan.gr.jp/archives02/)、さらに
2019年及び2020年には
I.はじめに
II.メタンハイドレートの研究開発の現況
III.我が国周辺のMHの資源量評価
IV.メタンハイドレートからのガス生産技術
V.基盤技術の開発
VI.開発システムと経済性・エネルギー収支
VII.環境影響評価に関する研究開発
VIII.コンソーシアム推進業務
の8章からなるフェーズ2及びフェーズ3の総括成果報告書が公開された
(https://www.mh21japan.gr.jp/archives05/)。
– 3 – Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に
含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何ら
かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
図1 「我が国におけるメタンハイドレート開発計画(2001~18年度)」の実施内容と成果
(経済産業省「第34回 メタンハイドレート開発実施検討会」資料4より一部改変)
2. フェーズ4の実行計画と解決すべき課題
多くの「世界初」を含む大きな成果を上げたフェーズ1〜3の研究であったが、メタンハイドレートを経済
的に成立する資源として商業化するにはまだ多くの技術課題があることが明らかになった。
2019年度より開始されたフェーズ4の研究開発では、引き続き「生産技術の開発」と「有望濃集帯の抽
出のための海洋調査」を柱に、「環境影響評価」と「長期的取り組み」を加えて研究を進めることとして、そ
の目標と実施内容を定めた「実行計画」を策定した。
その中では、商業化を実現するために2023年度以降に次の海洋産出試験を実施することを目指し、
2022年度末に達成すべき目標として、『生産技術の開発』については、「長期安定生産の見通しがつき、
生産挙動予測の信頼性向上がされていて、長期陸上産出試験で検証されていること」を目標として、具
体的な達成基準としては
• 貯留層内並びに坑井近傍の現象の理解が進み、生産の安定性を阻害する要因の抽出と分析が行
われ、対策技術が提示されること。
– 4 – Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に
含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何ら
かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
• 生産挙動予測の信頼性が向上して、有望濃集帯においては経済性の基準を満たすことが期待さ
れる1坑井あたりの生産レート(日産5万立方メートルが目安)の見込みが得られていること。
• 生産挙動予測の信頼性は長期陸上産出試験における長期生産挙動のデータ等により確認されて
いること。
• 生産技術の改良がなされ、海洋で数か月程度の連続生産が可能な技術の見込みが得られている
こと(基本設計実施可能な技術レベルの達成)。
とした。
そのために、具体的な実施項目として、生産挙動予測の信頼性向上や長期生産技術の開発・改良、さ
らに長期のガス生産が可能であることを実証するための長期陸上産出試験(1年程度を目処)を実施する
こととした。
また『有望濃集帯の抽出に向けた海洋調査』及び『環境影響評価』については、「次フェーズ海洋産出
試験の実施候補地点が抽出されていること」を目標として、達成基準として、
• 三次元地震探査等による有望濃集帯候補の抽出と試掘によるデータ取得により原始資源量・貯留
層性状等が把握されること。
• 候補地点の存在する濃集帯は、経済性の基準(原始資源量、標準状態のメタンガス換算100億立方
メートル以上)を満たすと評価されること。
• 海域環境調査が継続され、次フェーズ海洋産出試験候補地点の環境影響の程度が推定されてい
ること。
を定めた。
また、そのために、地震探査データの解析による有望濃集帯候補の抽出と、簡易生産実験を含む試
掘作業、環境影響評価のためのデータ取得などを進めることとした。(図2)
– 5 – Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に
含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何ら
かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
図2 フェーズ4での実施項目概要(2019年メタンハイドレートフォーラム資料より)
この計画は、経済産業省第34回及び第35回開発実施検討会メタンハイドレート開発実施検討会に提
案され、了承された。
( https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/methane_hydrate/034.html 、
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/methane_hydrate/035.html)
また、2019年度中は、具体的に解決すべき課題と課題解決策の抽出作業を進めた。商業化に向けて
の最大の課題は、2回の海洋産出試験におけるガス生産量が未だ十分ではなく、また生産挙動が数値
シミュレーションによる予測と異なっていたことから正確な技術的可採量の評価が難しいことであり、その
要因としては、
• 地層の性状とメタンハイドレートの不均質性などに起因する「水生産の過剰」
• 減圧された状態が地層に伝わるのを妨げる「坑井周辺の圧力損失」
– 6 – Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に
含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何ら
かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
が重要と考えられることがわかり、事前防止策、事後対策案を提示した。これらは、経済産業省第36回メ
タンハイドレート開発実施検討会で報告された。
(https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/methane_hydrate/pdf/036_03_00.pdf)
3. まとめ
メタンハイドレートを商業化する上では、そもそも資源量が十分あることに加えて、生産技術が経済性
をもち環境への影響も含めて社会的に受け入れられる条件が満たされていることが必要である。そのた
め、正しい情報が広く社会に伝えられることが必要であると考えている。その観点で、我々研究開発実施
者は正しい情報を伝え世に問うために、情報発信を続けている。
また、プロジェクト着手時の今世紀初頭には、産業からほぼ顧みられていなかったメタンハイドレート
について各国が資源としての関心をもち研究を進めるようになっており、事実、中国は2017年および
2020年に2回の海洋産出試験を実現しているが、このような国際競争は、さらに技術を進歩させると考え
られる。その一方で、現下の低油価状況と温室効果ガス排出削減への要求は技術のハードルをさらに
高めるものであり、この状況のもとで、情報発信を進めることはより重要になっていると考えている。
以 上