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準モンテカルロ法を用いた
多段階ワイブル劣化ハザードモデルの
ベイズ推定
大阪大学大学院博士後期課程
水谷大二郎
大阪大学大学院准教授
貝戸清之
大阪大学大学院博士前期課程
坂口創
京都大学経営管理大学院教授
小林潔司
○
発表の流れ
1. はじめに- 研究背景,動機,目的
2. 方法論- 多段階ワイブル劣化ハザードモデル
- ベイズ推定(マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法)
- 準モンテカルロ法
3. 適用事例
- 実在する高速道路伸縮継手装置の劣化予測
4. おわりに
キーワード
❏ アセットマネジメント
❏ モデル推定時間
❏ 統計的劣化予測モデル
❏ 時間依存型劣化過程
2
研究背景
3
❏ 社会基盤施設のアセットマネジメント
劣化過程の定量化 統計的劣化予測モデル
ワイブル劣化ハザードモデル(青木等,2005)
マルコフ劣化ハザードモデル(津田等,2005)
多段階ワイブル劣化ハザードモデル(青木等,2005)
混合マルコフ劣化ハザードモデル(小濱等,2008)
隠れマルコフ劣化ハザードモデル(小林等,2008)
多元的劣化過程モデル(水谷等,2014)
最尤推定
ベイズ推定(マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法)
動機
4
アセットマネジメントのシステム化,実践
劣化予測モデル推定時の計算負荷が問題となる
❏ 社会基盤施設のアセットマネジメント
劣化過程の定量化 統計的劣化予測モデル
❏ 目標のひとつとして
マネジメントアプリケーション- 橋梁マネジメントシステム(BMS)- 舗装マネジメントシステム(PMS)
アセットマネジメント国際規格化- ISO 5500X
劣化予測結果の逐次更新
目的
5
社会基盤施設の劣化予測モデルにおける
数値計算負荷低減のための方法論の開発
準モンテカルロ法を用いて
多段階ワイブル劣化ハザードモデルを
MCMC法によるベイズ推定
ワイブル劣化ハザードモデル
6
1)exp()( yy βx
❏ ハザード関数(劣化速度)
劣化状態が使用可能か否かの2値状態で評価
β:未知パラメータベクトルx:説明変数ベクトル(交通量など)
α:加速度パラメータy:経過時間
❏ 生存関数
yyF )exp(exp)(~
βx
❏ 寿命の確率密度関数
yyyf )exp(exp)exp()( 1βxβx
多段階ワイブル劣化ハザードモデル
7
劣化状態が離散的な多段階の健全度 i (i=1,…, I)で評価
1)exp()(
i
iiiii yy βx
❏ 健全度 i ,i+1間のハザード関数(劣化速度)
110 0 0
1
1
1
1
1
1
2
1 ~)(
i
s s s i
m
mi
i
m
mmi ddsFfs
i
m m
❏ 健全度推移確率
積分の解を解析的に求めることが不可能
乱数を用いた数値計算(反復計算)
MCMC法によるベイズ推定
8
❏ ベイズの定理
(パラメータの事後確率密度関数)
∝(尤度関数)×(パラメータの事前確率密度関数)
❏ パラメータの事後確率密度関数
I
i
N
n ni
niniI
i i
ib
i
I
i
K
k
i
s s s i
m
mi
i
m
mm
l
ddsFff
i
kii
m m
1 12
,
2
,,
1
1
1 1
110 0 0
1
1
1
1
)(2
)(expexp)(
~)|(
1
2
1
γ
メトロポリス・ヘイスティングス(MH)法による反復計算
モデル推定時の計算フロー
9
MCMC法(MH法)のc回目のループ
m個目のサンプルの尤度の計算(積分計算)
z個目のパラメータのサンプリング
初期設定
アルゴリズムの終了
m=M?
z=Z?
c=C?
Yes
No
Yes
m=m+1
No
z=z+1
No
c=c+1Yes
M×Z×C回の
積分計算
例えば,
M=2,000
Z=7
C=10,000
さらに,
モンテカルロ法での
乱数発生
準モンテカルロ法
10
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 10
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
乱数
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 10
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
準乱数
モンテカルロ法で用いる乱数の代わりに準乱数を使用
乱数発生個数低減により,計算時間を短縮
適用事例
11
❏ 高速道路ゴム製伸縮継手装置への適用
健全度 損傷状態
1損傷および劣化はない.
非常に軽微で記録する必要がない.
2 漏水跡がある.
3 漏水がある.
4たたき音がある.
著しい漏水,止水材の損傷・欠損がある.
【データ諸元】
供用開始年:1977~2003年
点検実施年:1993~2010年
サンプル総数:701サンプル
推定結果
12
多段階ワイブル劣化ハザードモデルをベイズ推定
健全度加速度
パラメータ定数項 車線種別
1 2.26 -5.05 -0.47
2 1.29 -1.94 -
3 7.80 -18.3 -
❏ 上記の値(推定値)は事後分布の期待値
❏ 個々のパラメータのベイズ信用域の算出が可能
❏ パラメータの収束はGeweke検定統計量を用いて確認済み
伸縮装置の期待劣化パスとベイズ信用域
13
1
2
3
4
0 5 10 15 20 25 30 35 40
健全度
経過年数
推定精度と計算回数
14
0
0.0001
0.0002
0.0003
0.0004
0.0005
0.0006
0 200 400 600 800 1000
状態推移確率の誤差の絶対値
乱数の発生個数
準モンテカルロ法
モンテカルロ法
真値は,20,000個の乱数を
用いたモンテカルロ法の値
個々の状態推移確率に対して,
計算精度と乱数発生個数の
関係を考察
❏ 準乱数と乱数を200個ずつ10,000回発生
計算値の90%信頼区間
準モンテカルロ法:(4.974E-4, 5.297E-4)
モンテカルロ法:(4.536E-4, 5.761E-4)
計算時間
15
約 36 時間
一度の積分計算での準乱数の発生個数:200個
MCMC法のループ数:13,000回
パラメータ数:7個
準モンテカルロ法と同等の推定精度を目指す場合,
モンテカルロ法では
数十倍~数百倍の計算時間が必要
マルコフ性と時間依存性
16
加速度パラメータの事後分布を用いて時間依存性の有無(パラメータが1か否か)の仮説検定も可能
1
2
3
4
0 20 40 60 80
健全度
経過年数
多段階ワイブル劣化ハザードモデル期待寿命95%信用域
マルコフ劣化ハザードモデル期待寿命95%信用域
時間依存型劣化予測モデルの発展可能性
17
マルコフ劣化ハザードモデル(積分に数値計算不要)
ベイズ推定(MCMC法)
混合マルコフ劣化モデル
隠れマルコフ劣化モデル
多元的劣化過程モデル
多段階ワイブル劣化ハザードモデル(積分に数値計算必要)
本研究
混合多段階ワイブルモデル
隠れ非斉次マルコフ劣化モデル
時間依存型多元的劣化過程モデル
おわりに
18
❏ 社会基盤施設の統計的劣化予測モデルの計算負荷軽減のため,
準モンテカルロ法を用いた方法論を開発
❏ 多段階ワイブル劣化ハザードモデルをベイズ推定
❏ 数十倍から数百倍の計算時間低減
【今後の課題】
❏ 適用事例の拡大
❏ 準MCMC法の開発(独立MH法では適用可能だと考えられる)