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1 ナノファイバーを利用した 細胞足場とその応用 東京電機大学 理工学部 電子・機械工学系 舟久保 昭夫 研究員 幡多 徳彦 ・再生医療における3次元Scaffold作製技術、 輸送用デバイス、毛細血管構築技術

ナノファイバーを利用した 細胞足場とその応用 - JST...(Extracellular Matrix: ECM) 生体組織 人工ナノファイバーScaffold 4 1010 10 μ μ m m μ 10 μ m

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ナノファイバーを利用した 細胞足場とその応用

東京電機大学 理工学部 電子・機械工学系

教 授 舟久保 昭夫

研究員 幡多 徳彦

・再生医療における3次元Scaffold作製技術、輸送用デバイス、毛細血管構築技術

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1.ナノファイバーを用いた繊維性構造物の作製 (2次元および3次元構造) 2.2次元,3次元の繊維性足場の上に,毛細血管を 構築するための技術 3.細胞を安全に安価に輸送するための,デバイス開 発に関する基礎技術 ・ナノファイバーを必要とする分野,再生医工学分野 医用工学分野へ応用可能

研究開発内容

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増殖・分化誘導を促す最適なScaffold構造

コンタクトガイダンス(形態追従効果)

P. X. Ma, R. Langer, Degradation structure and properties of fibrous nonwoven poly (glycolic acid)scaffolds for tissue engineering, “Polymers in Medicine and Pharmacy,” ed. By A.G. Mikos, K.W.Leong,M.L.Radomsky, J.A.Tamada,Yaszemski, Materials Research Society(1995).

細胞

繊維 細胞外マトリックス(Extracellular Matrix: ECM)

生体組織

人工ナノファイバーScaffold

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10 10 μ μ m m 10 10 μ μ m m

10 10 μ μ m m

5.18 ± 0.50 μ m

1.56 ± 0.24 0.24 μ m 2.63 ± 0.28 μ m

溶液濃度13.0-16.0%, 印加電圧値 8.0-12.5kV, 噴射距離15.0cm

溶液噴射流量変化による繊維径制御

セグメント化ポリウレタン製Scaffold

TDUTOKYO DENKI UNIVERSITYTDU

TOKYO DENKI UNIVERSITY

0

1

2

3

4

5

6

0 1 2 3 4 5 6 7

THF/DMF, 80/20v/v

Flow rate [ml/h]

Fibe

r D

iam

eter

[μm

]

6 5 4 3 2 1 0 0 1 2 3 4 5 6 7

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生体組織に類似したナノスケールの繊維構造

様々な形状の人工Scaffold

0

1

2

3

4

5

6

0 1 2 3 4 5 6 7

THF/DMF, 80/20v/v

Flow rate [ml/h]

Fibe

r D

iam

eter

[μm

]

6 5 4 3 2 1 0 0 1 2 3 4 5 6 7

・繊維径の制御 200nm~5μmの範囲で 10%以内の誤差で作製可能

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ナノファイバーの作製方法

多陰極エレクトロスピニング法

特徴 1. 陰極板6枚使用、60°おきに配置。 2. 対となる陰極板(計3対)をそれぞれアース接続。

陰極間距離

陰極幅 40 mm

100 mm

60°

SW1 SW2 SW3

200 mm

高電圧電源

電極間距離 高分子溶液

シリンジポンプ

+ + +

陰極板

- -

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画像解析結果

配向角0° 配向角90° 配向角60°

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人工血管への応用 ・人工血管の種類

①布製人工血管 ②PTFE製人工血管

③生体材料由来の人工血管 ④合成高分子材料製人工血管 ⑤ハイブリッド人工血管 etc…

ラット腹部大動脈への小口径人工血管(φ1.5mm)の埋め込み

SEMによる人工血管断面図

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臓器を模擬した三次元スキャフォルド

tube alveo heart

pouch

チューブ状,袋状,肺胞様形状 心臓など任意の形状を作製可能

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従来技術とその問題点(1)

エレクトロスピニング法は既に実用化されている技術であるが,目視のできないレベルの繊維径のものを、精密に制御し任意の ・密度、 ・配向性, ・3次元形状 を作り出す技術は,他には見られない。

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細胞輸送デバイスの基礎技術

Perfluorocarbon(PFC) ・ 無色透明,比重は水の2倍,酸素溶解度は 水の20倍等の特徴を有する Medium

PFC 培地

PFC

Suspended cells ・ 培地とPFCの間に浮遊するような状態で,細胞を保持 ・ 栄養は培地から,ガス交換はPFCから行う

0

20

40

60

80

100

Surv

ival

rate

[ %

]

Initial 8 ℃ 25 ℃ 37 ℃

RCB1994

0.000

0.005

0.010

0.015

0.020

0.025

0.030

Spec

ific

grow

th ra

te [

h–1 ]

Control 8 ℃ 25 ℃ 37 ℃

t = 3 - 24 h

細胞の生存率 再培養した際の増殖割合

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Microcomputer

Battery

Temperature sensor

Film heater

Urethane foam

Hyperbaric solution (PFC)

Hypobaric solution (Medium)

Cell strainer

Centrifuge tube(50ml)

Aluminum beads Aluminum plate

細胞輸送デバイスの外観

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細胞輸送デバイスの構造

細胞輸送デバイスの構造

細胞の取り出し方

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従来技術とその問題点(2)

・細胞輸送に関しては,現在大がかりなものは あるが,小型で温度管理も容易にできるもの は見られない。 ・栄養とガス交換の両方を適切に行う技術は 高度・高価なものになってしまう

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毛細血管網構築方法 ・ 血管内皮細胞は,流れのあるものを取り囲んで管状のものを作る。

1.Scaffold上に培地の流れを作る

2.この流れを取り囲むように管状の血管を作り出す。

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Scaffold上に形成された毛細血管網

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培地を表面に流す

円筒状のScaffoldを準備する

中空糸表面への毛細血管の構築

毛細血管網の伸展と増加

毛細血管構築による新たな可能性

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従来技術とその問題点(3)

・3次元の細胞導入には,毛細血管等,表面に 無い細胞に対する栄養供給,ガス輸送が必要 不可欠であるが,奥行き方向に対する,これら の輸送手段を構築することは難しかった。 ・毛細血管構築技術は幾つか見られるが,決 められた部分にのみ形成できるレベルであっ た。

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新技術の特徴・従来技術との比較

• 従来技術では作製困難であった、ナノファイバーによる3次元の任意形状を作り出すことに成功した。

• 細胞に栄養と酸素供給を容易に行うことのできる簡便な細胞輸送デバイスを開発した。

• 3次元足場内部に,ランダムに毛細血管を構築させることのできる基礎技術を構築した。

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想定される用途

• 医療用,再生医工学用途以外にもフィルターなどナノファイバーのシート,3次元形状を必要とする分野に応用可能である。

• 主に再生医療分野に,応用可能であるが,細胞培養分野などにも応用が可能である。

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実用化に向けた課題 • 使用する高分子に関しては,溶剤で溶解できるもの,高温で溶解できるものに限る。コラーゲン,絹フィブロインなどタンパク質にかんしても応用可能である。

• PFCに関しては国内では医療用に用いること

のできるものはないので,海外からの輸入などによる。

• 毛細血管を効率よく形成させるための,コーティング技術などが必要となる。

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企業への期待

• 再生医工学を中心とした分野でこれから発展と拡大が期待されるが,積極的にこの分野に対しても参入していただきたい。

• この分野はベンチャー的な企業が多くあるが大手企業の参入も期待したい。

• 再生医療の一般化には工学技術の支援が必要不可欠である。

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本技術に関する知的財産権 • 発表した内容に関しましては,3件の特許を申請中であります。

産学連携の経歴

・企業との共同研究:現在4件,過去10年間に15件以上

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お問い合わせ先

東京電機大学

産学連携コーディネーター 徳永 昌一

TEL 03-5284 - 5225

FAX 03-5284 - 5242

e-mail crc@jim.dendai.ac.jp