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スポンサー: パルスサーベイ デジタルトランス フォーメーションの 再評価 企業文化とプロセスの 不可欠な変化

デジタルトランス フォーメーションの 再評価...スポンサーの視点 「文化」とは、非常に簡単に言ってしまえ ば、ある集団内の人々が共有する暗黙の

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パルスサーベイ

デジタルトランスフォーメーションの 再評価企業文化とプロセスの 不可欠な変化

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スポンサーの視点

「文化」とは、非常に簡単に言ってしまえば、ある集団内の人々が共有する暗黙の了解のことです。人の持つ知識やプロセスそして習慣を人から人へと伝える方法ともいえます。また文化は、ダーウィンの進化論とは異なる形で人類を進化させてきた重要な手段でもあります。

文化は、企業の活動においても同様に大きな力を持っています。企業の持つ文化が、その企業を規定し、さらに成功できるかどうかにも直接的な影響を及ぼすことがよくあるのです。本書に示されたように、多くの最高経営幹部はその点を認識

しており、さらには自社の企業文化を改善しようと、あるいは少なくともいくつかの点を変えようと考え、必死に取り組んでいます。

なぜ文化とはそれほどまでに複雑なのか。文化的習慣は、ある一人の個人、一つの集団の中にあるというよりは、人々のつながりの中に深く根付いて存在し、時間の経過とともに強化されていきます。

「企業文化」というものが単体で存在するわけではありません。大きな組織の中には、さまざまな部門・部署にわたって、60や70といった数の文化が存在し得ます。別の街にある支社を訪れたことのある従業員は、間違いなくこのことを証言できるでしょう。ドアに貼られたロゴは同じでも、支社に足を踏み入れるのは、まるで外国を訪れることのように感じられるかもしれません。

同様に、チームごとでも文化はかなり違ったものに感じられることでしょう。議論を主導するのは誰なのでしょうか。議論の最中にそれぞれが次々に考えを示すのか、それとも他の社員が話し終わるまで、自分の意見を発するのを待つのでしょうか。または、提案についてはメールで送るようになっているのでしょうか。フィードバックを求めることは歓迎されているのか、それとも国によっては、不躾だとみなされるのでしょうか。

文化はどうしたら変えられるか。どのような組織でも、人々はやってきて、また去っていきます。しかし、問題の解決方法や交渉時の習慣といった文化は、ずっと張り付いています。

人々が悪い習慣をなかなか変えられないように、人々がつながり合いの中で行動のパターンを変えるには、さらに長い時間がかかることがあります。禁煙や楽器の演奏の習得と同じように、望ましい行動の訓練、反復、強化と望ましくない行動の矯正を通じて筋肉に記憶として刻み付けることで、文化は良い方向に変化していくのです。

リーダーが果たす役割とは何か。企業文化の変革を最初に促すのが経営陣であったとしても、彼らリーダーがただ従業員に「今日から我が社の企業文化は変わります」と言えばいいというものではありません。何をすべきか言葉で伝えるよりも、望ましい行動のモデルを身をもって示すことのほうがずっと効果的です。しかし、ある集団が真に新たな行動を身に付けるには、学習と成長を後押しする文化的資質を持っていなければなりません。よって経営幹部は、一晩で変化が訪れることを期待してはならないのです。

リーダーは、模範を示すことに加えて、チームに迅速なフィードバックを行い、行動と文化規範の再形成をし始めるための堅固な体制を整えることができます。これには、心構えの転換が含まれます。すなわち、素晴らしいアイデアは社内のどこからでも生まれ得るという考え方への転換です。さらには、業務上の転換も含まれます。人々は、「これまでもずっとそうしてきた」という理由で変革を潰してしまう代わりに、革新を支えてくれるようなつながり合いの中に身を置く必要があります。

最も優れたリーダーは、能力主義を通じて変革を促進する道筋を見つけるのです。論理立った討論を可能とする体制を取り、個人個人が自由に意見を述べ、何が有効となるか、現実に向けた対策を提案できるようにします。

この革新のプロセスは、良いアイデアや習慣を引き出し、それに報いるよう、つながり合いの中にいる人々を啓発します。そのプロセスにおいて、企業文化は変わっていくのです。

企業文化を変えるのは簡単なことか。いいえ、簡単ではありません。企業文化を変えることは、とてつもなく難しいことであり、多くの時間と忍耐を必要とします。なぜなら、企業文化は非常に漠然としたものに感じられる場合があるからです。その変化の進みはゆっくりしたものになるでしょう。

しかし、変えることはできるのです。最初のステップをいくつか進めてみること、つまり、文化がどのようなものであり、どのように形成され、どうすれば新たな方向に導けるかを理解することで、リーダーは、自社の企業文化を変え、社内の各組織を新たな、より良い未来に向けて歩ませるためのプロセスを始めることができるのです。

マイク・ウォーカー

グローバルディレクター

RED HAT OPEN INNOVATION LABS

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パルスサーベイ | デジタルトランスフォーメーションの再評価 ハーバード・ビジネス・レビュー・アナリティクス・サービス 1

ハイライト:

13% デジタルトランスフォーメーションに向けた 自社のこれまでの取り組みが非常に 有効であると評価した回答者の割合

85% 適切な技術、プロセス、そして企業文化を バランスよく確立していることが非常に 重要だと回答した回答者の割合

破壊的変化の時代においてより高い競争力を維持するために、企業には変革を迫る大きな圧力がかかっています。デジタルトランスフォーメーションへのこの要請は、企業に、自社の技術的能力の向上を、そしてしばしば徹底的な見直しを求めます。しかし、真の変革には単なる新しい技術以上のものが求められます。組織の経営陣が専心して戦略的ビジョンを構築し、現代の企業の3つの主な特性である企業文化、プロセス、そして技術について再検討して刷新する必要があります。デジタル企業の能力のあるリーダーは誰でも、新技術の導入は仕事の中でも簡単な方に含まれると言うでしょう。変革の進展を妨げ得るのは、企業文化とプロセスの変化です。

これが、多くの企業がこうした取り組みに何年もかけながら、経営方法の真の変革に苦戦を強いられている理由であると、2018年7月にハーバード・ビジネス・レビュー・アナリティクス・サービス(Harvard Business Review Analytic Services)が実施した企業リーダー734名に対する新調査は示しています。デジタルトランスフォーメーションに向けた自社のこれまでの取り組みが非常に有効であると評価した回答者は、たった13%です。図1 「デジタルトランスフォーメーションのもう一方の側面に到達した企業はありません」と話すのは、コーン・フェリー社のシニア・クライアント・パートナー兼デジタルアドバイザリー担当リーダーのメリッサ・スウィフトです。「技術的な面については計画通りに進展させることも、いくつかのプロセスを再設計することも可能です。しかし、従業員側の変革は難しいのです。」

回答者の大多数は、適切な技術、プロセス、そして企業文化をバランスよく確立していることが、デジタル変革を成功させるカギであると理解しています。しかし彼らは、第一に文化的な阻害要因に頭を悩ませ、そして次に必要なプロセスと技術的能力の導入に苦戦を強いられています。

同様に、回答者はデジタルトランスフォーメーションの進捗状況を計測する最善の方法についても意見を一致させています。しかし、彼らの大半はこうした指標を自社の取り組みのモニタリングに実際には使うことができずにいます。さらに、彼らはデジタルトランスフォーメーションに向けたプロジェクトの結果として、これまでにこれらの分野で限定的な成功しか収めていないのです。

マサチューセッツ工科大学(MIT)デジタル・エコノミー・イニシアチブ(MIT Initiative on the Digital Economy)の主任研究員であるジョージ・ウェスターマンは、「5年前にあったデジタルトランスフォーメーションに対する情熱は、圧倒的な現実の力に屈してしまいました」と述べています。「この現実とは、進展を生むには組織を変えなければならないということです。そして、組織を変えることは非常に難しいのです。」

デジタルトランスフォーメーションに適した基盤の構築チーム、技術、企業文化の統合のための 施策

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2 パルスサーベイ | デジタルトランスフォーメーションの再評価ハーバード・ビジネス・レビュー・アナリティクス・サービス

ローチといったプロセスを採用している者の数もより大きなものとなっています。そして彼らの大多数が、例えば、顧客の要求に迅速に対応し、効率的にシステムを更新し、新しいアプリケーションを迅速に開発、提供することを可能とするような、新しい技術的能力を獲得しつつあります。さらに、重要業績評価指標(KPI)を用いて変革への試みの影響を計測するよう取り組んでいます。最も重要なこととして、彼らは、収益成長、市場ポジション、業務効率、従業員満足度をはじめとするこれらの業績指標でも成果を出し始めているのです。

企業文化とプロセスの課題が デジタルトランスフォーメーション を阻害自社内のデジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みが成功した最も重要な要因についての質問に対し、85%という大多数の回答者が、適切な技術、プロセス、企業文化をバランスよく確立していることが非常に重要だと回答しました。これは驚くべきことではありません。「ITが創るあらゆる変化においては、人々、プロセス、技術が常に背後で特別な機能を果たしてきました」と、バブソン大学の情報技術・経営学部学長特任教授トーマス・H・ダベンポートは言います。しかし、企業は、とりわけ企業文化の変革という課題に苦しんでいます。半数以上の回答者が、企業文化は自社のデジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みにおける大きな課題であると答えています。一方、プロセスが大きな課題としたのは43%、技術が大きな障壁であると答えたのは3分の1未満でした。図2 興味深いことに、デジタルトランスフォーメーションの先導企業(回答者のうち、デジタルトランスフォーメーションに向けた自社の取り組みが非常に有効であると評価した13%)も同様のレベルでこれらの課題について報告しており、これらの問題が彼らには無縁だったというわけではない、ということです。

多くの企業にとっての問題は、リーダーがデジタルトランスフォーメーションの間違った部分に焦点を当ててしまっていることであるとウェスターマンは指摘します。「『変革』が重要であるのにもかかわらず、彼らは『デジタル』に注目しているのです。モバイルアプリを持っているかどうか

しかし、自社のデジタルトランスフォーメーションの取り組みが非常に有効であると評価した回答者は、成果を改善しようとする他の企業に対し、知見を提供しています。デジタルトランスフォーメーションを先導する企業は、企業文化や、プロセス、技術に関して、他の回答者とよく似た障壁に直面したことを報告しています。それでも、こうした問題を克服してきたのです。先導企業の集団ではより多くの回答者が、より透明で、オープンで協力的な企業文化を持っていることがわかります。また、アジャイルやDevOpsアプ

図 1

デジタルトランスフォーメーションの進展デジタルトランスフォーメーションに向けた貴社のこれまでの取り組みは、どの程度有効だと思いますか?[1~10段階。1=全く有効でない、10=極めて有効]

非常に有効 [8~10]

13%

中程度に有効[4~7]

79%

全く有効でない [1~3]

8%

出典:ハーバード・ビジネス・レビュー・アナリティクス・サービスによる調査、2018年7月

図 2

デジタルトランスフォーメーションへの障壁デジタルトランスフォーメーションに向けた自社の取り組みにおいて、以下の各項目が重大な阻害要因/課題であると回答した回答者の割合

企業文化

55%

プロセス

43%

技術

30%

出典:ハーバード・ビジネス・レビュー・アナリティクス・サービスによる調査、2018年7月

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3ハーバード・ビジネス・レビュー・アナリティクス・サービスパルスサーベイ | デジタルトランスフォーメーションの再評価

大半の企業の 文化は、 デジタルトランスフォーメーション とは真逆の状況にあります。

87%73%

79%69%

70%64%

70%60%

出典:ハーバード・ビジネス・レビュー・アナリティクス・サービスによる調査、2018年7月

図 3

デジタルトランスフォーメーションの主な文化的特徴以下の文化的特徴が、自社においてデジタルトランスフォーメーションを実現するために非常に重要だと回答した回答者の割合

• デジタルトランスフォーメーションの先導企業 • 全回答者協力(例:業務の分担に向けたサポートがある、プロジェクトの立ち上げ時にはグループが形成される、他のプロジェクトグループと効果的に連携して機能横断的チームが構築される)

適応性(例:情報がスムーズに巡っている、個人に判断したり変化する状況に対応したりすることが認められている、実験と学習が奨励されている)

透明性(例:個人やチームが日常的に自社の計画、製品、またはプロセスを複数の利害関係者に伝えている、意思決定者がデータやリソースを開示している)

受容性(例:フィードバック、またはプロジェクトや活動についての学習を提供する確立された経路がある、リーダーとプロジェクトチームが多様な視点の提供を積極的に促す、集団的または協力的な意思決定のプロセスがある)

ちたったの約4分の1から3分の1近くでした。デジタルトランスフォーメーションの先導企業はこれらの文化的特徴を示す割合がより高く、半数以上が自社には4つの特徴がかなりの程度存在すると評価しています(1~10段階で8~10の評価)。図4 大半の企業文化は、デジタルトランスフォーメーションとは真逆の状況にあります。「どの企業に足を踏み入れても、そこにあるのは長いリストです。リーダーをどう育成するか、報奨はどう体系化するか、KPIはどう設定するか。こうしたことは、デジタルトランスフォーメーションに役立たないばかりか、直接的な阻害要因ですらあります。」と、スウィフトは述べています。

変革を必要とする企業には、AmazonやFacebook、Google社などをデジタル先導企業へ発展させた考え方が足りないのかもしれません。「旧態依然とした企業では、リーダーに起業家精神がありません。締切とスケジュールを守り、いい仕事をしようとしますが、大局を見てはいないのです」と話すのは、Constellation Research社のバイスプレジデント兼 主任アナリストのディオン・ヒンチクリフです。継続的な学習に向けた心構えも、

の話ではありません。全く別の顧客体験を生み出すという話なのです。アナリティクスの導入の話ではなく、1対1でパーソナル化できるかどうかの話です。こうした技術に関するさまざまな議論が、時折、企業を変革するために考えるべき事項を遠ざけてしまうのです」 これには、企業文化とプロセスの変化が必要となります。

「デジタルトランスフォーメーションの領域で文化固有の取り組みを行った企業はほとんどありません。彼らは多くの技術を買い、そして場合によってはプロセスを変えます。」と、ダベンポートは述べています。「しかし、よりデジタル化された、またはデータ駆動型の方向性へと企業文化を本当に変えようとしているケースは稀です。」

デジタル企業の文化的特徴企業がこれまでの自社の取り組みを評価して明らかになりつつあるのは、もはやこうした企業が文化の問題を無視することはできないということです。「私たちは、興味深い瞬間に差し掛かっています。誰もがまずは技術に、そしてその次にプロセスに手をつけました。彼らが行った、これらのとても、とても大きな投資は今や鈍化したか、または完全に止まってしまいました」とスウィフトは言います。「彼らは今、本来最初に手を付けるべきだったところ、すなわち文化的な部分に取りかかっています。世界のお金すべてを技術に費やしたとしても、人々が働き方を変えようとしないのであれば、変革は成功しないでしょう。」

企業は、デジタルトランスフォーメーションの最も重要な特徴が何であるかをよく理解しています。デジタル変革を成し遂げた企業における4つの基本原則の重要度をランク付けする質問では、回答者は、業務の分担についてサポートが行われ、プロジェクトの立ち上げ時にはグループが形成され、機能横断的なチームが構築される協力的な企業文化を持っていることが最も重要であると評価しました。 次いで、適応性、透明性、受容性が重要という評価でした。デジタル変革においてこれらの特徴のそれぞれがカギであると回答したデジタルトランスフォーメーションの先導企業の数はさらに多いものでした。図3

しかし、これらの点で自社の企業文化に高い評価を付けたのは、回答者全体のう

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「 このデジタル化のプロセスを進ませてより多くの実験が必要になってくると、それには行動と構造をひっくり返す 必要があることに気づきます。」 コーン・フェリー社、 シニア・クライアント・パートナー、 メリッサ・スウィフト

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5ハーバード・ビジネス・レビュー・アナリティクス・サービスパルスサーベイ | デジタルトランスフォーメーションの再評価

問題の一つに、 従来の文化を デジタルの文化へと変革させる 青写真がないことがあげられます。

57%32%

59%21%

56%25%

52%25%

出典:ハーバード・ビジネス・レビュー・アナリティクス・サービスによる調査、2018年7月

図 4

デジタル先導企業において見られるより多くの企業文化貴社にはこれらの文化的特徴がどの程度見られますか?

• デジタルトランスフォーメーションの先導企業 • 全回答者適応性(例:情報がスムーズに巡っている、個人に判断したり変化する状況に対応したりすることが認められている、実験と学習が奨励されている)

協力(例:業務の分担に向けたサポートがある、プロジェクトの立ち上げ時にはグループが形成される、他のプロジェクトグループと効果的に連携して機能横断的チームが構築される)

透明性(例:個人やチームが日常的に自身の計画、製品、またはプロセスを複数の利害関係者に伝えている、意思決定者がデータやリソースを開示している)

受容性(例:フィードバック、またはプロジェクトや活動についての学習を提供する確立された経路がある、リーダーとプロジェクトチームが多様な視点の提供を積極的に促す、集団的または協力的な意思決定のプロセスがある)

有効なデジタルトランスフォーメーションは「どのようにして全く別の会社になるかについての非常に強力なビジョン」を持つことから始まる、とウェスターマンは述べています。「そのビジョンがしっかりと伝わった後、次のステップとして、より協力的、データ駆動型、実験的な企業文化を作り出すことで、そうした変化を実現させることができるのです。」

企業が、これらの文化の変化を一度にすべて成し遂げることはできません。しかし、最も重要なものを先に追求し、そこから広げていくことは可能です。「企業文化とは、一つのものだけを言うのではありません。様々な層が重なり合っているのです」とスウィフトは言います。「従業員の行動に最も大きな影響があるものは何か、例えばそれは組織構造や報奨制度なのかということについて検討すれば、それに照準を合わせていくことができます。」

変革を推進するアジャイルエンジンデジタルトランスフォーメーションを可能とするプロセスの変化については、回答者の半数以上が、継続的インテグレーション/継続的デリバリー(CI/CD)、アジャイル開発とプロジェクト管理の各プロセス、そしてDevOpsが不可欠であると回答しています。図5

適応性の高い企業文化と組織を構築する上で欠くことのできない要素です。これには、実験をして、上手く行ったことから学びを得るという環境が必要となります。Adobe社のバイスプレジデント兼CIOであるシンシア・ストッダードはかつてこう述べています。「失敗の企業文化を醸成することが何よりも重要です。人は失敗から学ぶのですから。失敗に対してあまり高い評価をしていないなら、それはすなわち、あなたが本当に十分な努力を払ってチームに仕事を取り組ませてはいない、ということです。」

デジタル文化の変化を後押し企業文化をこうした方向性、すなわち協力、適応性、透明性、受容性の強化に向けて動かしていくには、「モチベーションが大事である」とヒンチクリフは言います。「報奨が明確なら、それは上手く機能します。これは変化を成功させるための主な要因の1つです。変化に向けた報奨を作り出す方法を考えることのできる賢い人々が必要です。」

問題の一つに、従来の文化をデジタルの文化へと変革させる青写真がないことがあげられます。「技術にお金を費やすのは簡単なことです。事業プロセスを変えることは、それよりもいくらか難しくなります。しかし、一番難しいのは企業文化を変えることです」と、ダベンポートは言います。「データ駆動型の企業文化を作るのに手法というものは存在しません。これには、上級経営陣による多くの介入と注目が必要となります。」

スウィフトは、着手すべき点の一つとして、現行の会社で物事がどのように上手く機能しているかを棚卸しすることがあげられると言います。「これはつまり、人々の採用方法や会社で働いてもらう人々の選択方法から、何に対して人々に報奨を与えるかまで、あらゆることを検証する、ということです。」 長年にわたり、企業は、良く働いてくれる人材を採用してきました。今、企業が求めるのは高い能力を持った革新者です。しかし、こうした根本的な転換を支える既存の組織構造はほとんどないのです。スウィフトは次のように言います。「現代の企業は、限りなく最適化されています。これはすなわち、方程式から失敗を取り除く作業です。このデジタル化のプロセスを進ませてより多くの実験が必要になってくると、それには行動と構造をひっくり返す必要があることに気づきます。」

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6 パルスサーベイ | デジタルトランスフォーメーションの再評価ハーバード・ビジネス・レビュー・アナリティクス・サービス

相当数の回答者が、アジャイル開発を導入したと回答していますが、DevOpsとCI/CDについてはその数はより少ないものとなっています。デジタル先導企業では、これらのプロセスの変化を実現した割合がより高くなっています。図6

ヒンチクリフは次のように言います。「デジタルトランスフォーメーションでは、アジャイル、DevOps、そしてリーン開発が重要な役割を果たします。これらのプロセスの多くは、実験を迅速に行い、動くソフトウェアをできるだけ早く顧客の前に差し出せるよう構築し、そこから学び、正しいものを作り上げることで機能します。」 Toyota North America社の最高デジタル責任者兼CIOであるザック・ヒックスはかつて、アジャイルとは「顧客に依頼されたものだけを提供してそれ以上のものは提供せず(実用上最小限の機能を持つ製品=MVP)、その後何が好ましく何がそうでなかったかを顧客から聴取してその次の製品を作ること」である、と述べています。

デジタルトランスフォーメーションを模索する企業幹部がITに対して持つ大きな不満の一つに、あまりにも遅いことがあげられます。アジャイルは、その解決策の一つになるかもしれません。有用なのは、ITだけではなく企業全体でアジャイルなアプローチを取ることです。「真にアジャイルな企業では、現場のプロジェクトリーダーたちは、製品について重要な決断を下す権限を与えられています」とヒンチクリフは言います。「アジャイルは、多くの大手企業が現在有している従来型のプロジェクトやプログラムの管理制度と統合すると、機能しなくなります。リーダーシップに至るレベルでアジャイルに投資しない限り、その恩恵を最大限に受けることはできません。」

まだアジャイル開発のアプローチを導入していない半数近い回答者と、それよりさらに多数のアジャイルなプロジェクト管理の導入に失敗した回答者は、「既にゲームに乗り遅れている」とウェスターマンは言います。企業全体で、アジャイルを一度にすべて導入する必要はないものの、ITから始めるというのは良い方法です。「アジャイルなITが上手く機能していると、他の経営者との協業が進み、こうした人々から体験談を聞いてそれをさらに他の人々と共有し、それにより、さらに弾みがつき活動が広がっていくのです。」

72%52%

65%63%

45%23%

42%26%

55%33%

9%21%

出典:ハーバード・ビジネス・レビュー・アナリティクス・サービスによる調査、2018年7月

図 6

デジタル先導企業では新しいアジャイルプロセスを導入デジタルトランスフォーメーションの実現のために以下のプロセスの変化を実施したと回答した回答者の割合

• デジタルトランスフォーメーションの先導企業 • 全回答者アジャイルな開発プロセス

アジャイルなプロジェクト管理プロセス

継続的インテグレーション/継続的デリバリー

DevOpsアプローチ

リーン/スタートアップ開発

上記のいずれも該当しない

73%67%

78%65%

76%62%

70%51%

61%49%

出典:ハーバード・ビジネス・レビュー・アナリティクス・サービスによる調査、2018年7月

図 5

デジタルトランスフォーメーションのプロセス促進要因デジタルトランスフォーメーションの実現に以下のプロセスの変化が非常に重要だと回答した回答者の割合

• デジタルトランスフォーメーションの先導企業 • 全回答者継続的インテグレーション/継続的デリバリー(CI/CD)

アジャイルな開発プロセス

アジャイルなプロジェクト管理プロセス

DevOpsアプローチ

リーン/スタートアップ開発

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7ハーバード・ビジネス・レビュー・アナリティクス・サービスパルスサーベイ | デジタルトランスフォーメーションの再評価

86%73%

74%65%

82%58%

66%55%

出典:ハーバード・ビジネス・レビュー・アナリティクス・サービスによる調査、2018年7月

図 7

デジタルトランスフォーメーションの技術的能力デジタルトランスフォーメーションに向けた自社の取り組みにおいて、以下の技術的能力が非常に重要だと回答した回答者の割合

• デジタルトランスフォーメーションの先導企業 • 全回答者顧客の要求に迅速に対応する

システムを効率的に更新する

新しいアプリケーションを開発し、迅速に市場に投入する

革新により多くの予算を割くため保守費用を抑制する

例えば、AT&T社は、市場展開のスピードを2年で45%向上させるという目標を立てて、企業全体にアジャイル手法を拡張しました。この取り組みを始めて1年後には、既に37%まで到達していました。そこから、これらのアジャイルアプローチをオペレーションチームへと展開する手法として、アプリケーション開発とオペレーションチームの統合であるDevOpsが登場します。「これらのデジタルシステムを管理可能で、運用可能で、安全なものとするためには、彼らを除外することはできません」とヒンチクリフは述べています。Walmart社では、多くの企業と同様に、アプリケーションの提供スピードと品質の向上のためにIT部門においてDevOpsが導入されました。

デジタル企業の技術的能力技術的能力については、回答者の4分の3近くが、自社のデジタルトランスフォーメーションにおいて、顧客の要求に迅速に対応する能力が非常に重要だと回答しました。次いで、効率的なシステム更新、新しいアプリケーションの迅速な開発と提供、革新により多くの予算を割くための運用費用の抑制があげられました。これらの数値は、デジタルトランスフォーメーションの先導企業ではさらに高いものでした。図7

しかし、これらの能力の実現において、自社のインフラストラクチャーとアプリケーションアーキテクチャーを高く評価した回答者が4分の1以下である一方、デジタルトランスフォーメーションの先導企業の半数以上が自社のITアーキテクチャーでこれらの能力を実現することが可能であると回答しています。図8

企業が自社のデジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みにおいて持つ技術的な目標と、その現状の能力とのギャップは、惰性的な企業文化とプロセスという観点から説明することも可能でしょう。しかし、それだけではないとヒンチクリフは言います。「デジタルの新製品・サービスを作るのには非常にお金がかかるのです。多くの企業では、一度運用を始めた後は優秀なチームを外し、保守チームを投入してずっと安上がりに運用するのです。」 そうすると、顧客の要求に迅速に対応するには不可欠な、時間をかけた進化や改良がデジタルシステムに生じないという結果になります。

59%24%

56%25%

56%18%

58%24%

出典:ハーバード・ビジネス・レビュー・アナリティクス・サービスによる調査、2018年7月

図 8

インフラストラクチャーとアプリケーションアーキテクチャーの状況現行のインフラストラクチャーとアプリケーションアーキテクチャーが、以下の能力の基盤として非常に有効であると回答した回答者の割合

• デジタルトランスフォーメーションの先導企業 • 全回答者顧客の要求に迅速に対応する

革新により多くの予算を割くため保守費用を抑制する

システムを効率的に更新する

新しいアプリケーションを開発し、迅速に市場に投入する

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8 パルスサーベイ | デジタルトランスフォーメーションの再評価ハーバード・ビジネス・レビュー・アナリティクス・サービス

ジタル変革に対する最大の阻害要因であると回答しているにもかかわらず、デジタルトランスフォーメーションの成功を判定するために企業文化の変化を計測している企業は10%にも達していません。図9

企業文化がデジタルトランスフォーメーションに対して持つ重要性を踏まえれば、デジタル先導企業においてすらも文化的影響を計測している企業がそれほど少ないという事実は問題です。しかし、やることはできます。「企業文化とは、行動と姿勢の集積です。姿勢の計測は、非常に簡単です。行動の方はやや難しくなりますが、業績測定で評価することができます」と、ダベンポートは言います。「デジタルトランスフォーメーションに本気で取り組むのであれば、計測を始める必要があります。デジタルを取り入れた行動と姿勢が将来の成功につながると本当に考えるなら、これらを定義し、計測するのは当然です。」

デジタルトランスフォーメーションの先導企業では、収益成長、業務効率、市場ポジション、顧客の定着率とロイヤルティ、従業員満足度、そして新製品・サービスの革新を指標として変革の進展を計測している割合がより高くなっていました。しかし、成功しているこれらの企業においてすら、改善の余地は大いにあります。

企業にとって有効な指標となり得るものとしてアイデア創発率をあげるスウィフトは、「今現在、革新の計測は上手く行っていません」と述べています。「しかし、これに似た指標は他に多くはないのです。計測可能な多くのものは、実際には変革を押し戻そうとするのです。」

デジタルトランスフォーメーションに標準的な指標がまだ存在しないことは、驚くことではありません。「私たちが直面しているのは100年にわたる産業革命ではなく、12年にわたるデジタル時代です」と、ヒンチクリフは言います。「デジタルトランスフォーメーションを進めている取締役や最高責任者クラスのリーダーと話をすると、彼らが最もよくする質問は、『これに対する我が社のKPIは何になるのだろう?』です。現実は、今はまだ時期が早すぎて、標準的な指標がないということなのです。」

しかし、企業はベストプラクティスの登場を待つべきではありません。そのときにはもはや手遅れになってしまいます。指

ヒンチクリフは次のように述べています。「工業化時代には、私たちにとって成長よりも効率化がはるかに大きな関心事でした。そして、ただコストを下げることだけに注力していたその世界に今も生きている企業があまりにも多いのです。こうした企業は、継続的改善のモデルを導入しなければなりません。」 このうちいくらかは、デジタル文化への転換とプロセスの改善を進めることによって解決するかもしれません。

ITに適切に投資することも同じく重要です。「多くの企業では、インフレについていくのがやっとの変化のないIT予算しか組んでいません」と、ヒンチクリフは言います。一方、デジタル先導企業がITにかける費用はその2倍にもなる傾向があり、その結果、競合企業への対処状況はよいものとなります。ヒンチクリフは次のように述べています。「旧態依然とした企業では、IT費用はいまだに間接経費とみなされているのです。こうした企業も、ITを収益の源泉だと考え方を変えていく必要があります。それができるまでは、技術への投資が足りず、顧客をないがしろにすることになります。」

デジタルトランスフォーメーション達成状況の計測デジタルトランスフォーメーションのような根本的な、そして破壊的な変化においては、その進展状況を計測することが重要です。事実、全回答者が最も有効なKPIについて同じ意見を示しています。先導企業も、遅滞層も、デジタルトランスフォーメーションの進展を計測する最善の方法は、顧客の定着率とロイヤルティ、成長と収益の創出、業務効率、従業員定着率、そして企業文化の変化に関する指標であるとしています。

44%が成長と収益の創出の指標に、39%が収益性に関する数値に着目する一方で、多くの企業では、自社の進展の評価に最も役立つだろうと考えているまさにその指標を導入することができずにいます。ウェスターマンによると、最善かつ最も追跡しやすい指標カテゴリーの一つである業務効率のモニタリングをしているのは3分の1未満でした。回答者の大半が、顧客の定着率とロイヤルティを成功の主要な指標にあげていますが、現在これを使用していると回答したのは回答者のたった26%でした。文化的障壁がデ

有用なのは、 ITだけではなく 企業全体で アジャイルな アプローチを 取ることです。

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9ハーバード・ビジネス・レビュー・アナリティクス・サービスパルスサーベイ | デジタルトランスフォーメーションの再評価

標がない中でリーダーは、「経験と勘を頼りに管理」しているとヒンチクリフは言います。「優先順位付けをするのがより難しくなり、わからないので失敗を止めたり成功を拡大したりすることができません。彼らには先を読む力が必要なのです。」

デジタルトランスフォーメーションに全力で取り組んでいる企業は、デジタル化の進展を計測する新しい言語をいくらか検討することができます。その際は、人々とプロセスに関する面で、より実体がつかめず、それでいて重要性の高いことの多いものを創造するようにするといいです。「デジタルネイティブな企業は、計測に取り憑かれているかのようです。これがデジタル化の進展を促進するのです」と、スウィフトは述べています。

デジタルトランスフォーメーションの効果企業文化、プロセス、技術面での不足、そして成功のための新しい指標の創造に対する投資の不足といったこれらすべての理由から、デジタルトランスフォーメーションに向けたこれまでの取り組みの恩恵は、多くの回答者にとって限定的なものとなっています。業務効率が大幅に改善したのは回答者の4分の1、市場ポジション、収益の創出、顧客の定着率とロイヤルティ、新製品・サービスの導入に関して大幅な改善が見られたのは約20%です。「この理由の一部には、多くの企業では、デジタルトランスフォーメーションを実際的な変化のプロセスとして明確に特定していない点があります」と、ダベンポートは言います。「デジタル化について話はしますが、それが意味するところや、過去20年間にしてきたこととどう違うのかは、はっきりしないのです。」 事実、近年、デジタルトランスフォーメーションに多額の投資をした、GE、Procter & Gamble、ナイキ社などの注目度の高い複数の企業が、想定していた効果を得ることができずにその取り組みを縮小しています。また、ダベンポートは次のように述べています。「多くの場合明確な優先順位もなく、何もかもが曖昧すぎるのです。企業は、やめてしまうか、注力するかのいずれかを選択しなければなりません。そして取り組みにおける目標をもっと絞り、 進捗を計測できるようになる必要があります。」

54%38%

26%

51%59%

44%

49%39%

30%

47%38%

21%

45%23%

9%

43%52%

27%

39%41%

39%

34%25%

16%

33%32%

19%

30%25%

12%

15%15%

17%

11%13%13%

出典:ハーバード・ビジネス・レビュー・アナリティクス・サービスによる調査、2018年7月

図 9

デジタルトランスフォーメーションの指標以下のKPIが、デジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みの成功についての良い指標となると回答した全回答者の割合、ならびに現在これらの指標を自社のデジタルトランスフォーメーションの進展の計測に使用していると回答した全回答者およびデジタルトランスフォーメーションの先導企業の割合

• 非常に重要 • 現在使用しているデジタルトランスフォーメーションの先導企業 • 現在使用している全回答者

顧客の定着率/ロイヤルティ

成長/収益の創出

業務効率

従業員満足度

企業文化の変化

市場ポジション対競合企業

収益性

市場展開のスピード

新製品/サービスの導入

顧客の生涯価値

IT保守費用対新プロジェクト費用

運用費対設備投資

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「 企業文化とは、行動と姿勢の集積です。姿勢の計測は、非常に簡単です。 行動の方はやや難しくなりますが、 業績測定で評価することができます。」 トム・ダベンポート

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一方、デジタルトランスフォーメーションの先導企業では、市場ポジション、収益成長、業務効率、従業員満足度、新製品・サービスの導入、そして顧客の定着率とロイヤルティの領域で、大きな効果があったと回答する割合が多くなっています。図10

これらのデジタルトランスフォーメーションの先導企業は、文化、プロセス、技術に関して他社とまったく同様の阻害要因に直面し、デジタルへの転換を始めるために必要となるであろう、主要な企業文化、プロセス、技術的転換を特定しました。こうした企業は、より協力的で、適応性の高い、透明な企業文化を築くことができたのです。彼らは、アジャイルなプロセスによって、顧客のニーズの充足など、自社が求めるような能力を実現する新しいシステムとプロセスが提供されることを確信しています。

こうした成功企業にもまだやるべきことがあり、彼らもまた、取り組みを進める中で今後も課題に直面することでしょう。しかし、彼らは正しい道を歩んでいます。ヒンチクリフは次のように言います。「人々を変えることなしに技術を変えることはできません。技術と企業文化の変化は切っても切れない関係にあります。両方が変われば、ずっと簡単に前に進むことができます。高い業績を生み出している企業では、企業文化の変化と技術の変化は統合されています。」 そして、こうしたデジタルトランスフォーメーションの先導企業は、その成果を手にし始めているのです。

自社のデジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みを改善しようとしている他の企業にとっても、それは有益な先例です。新しい技術ソリューションに資金を投じることにだけではなく、より受容性と適応性の高い、協力的な企業文化を創造することに対しても全力で取り組み、アジャイルやDevOpsアプローチといったプロセスの利用を拡大し、デジタルトランスフォーメーションという目標を支える適切なインフラストラクチャーを導入することで、他の企業も同様の効果を手にし始めることができるのです。

39%26%

44%21%

41%20%

31%19%

34%19%

37%17%

34%15%

26%15%

25%12%

10%10%

22%10%

8%4%

出典:ハーバード・ビジネス・レビュー・アナリティクス・サービスによる調査、2018年7月

図 10

デジタルトランスフォーメーションの成果デジタルトランスフォーメーションに向けた自社の取り組みの結果、以下の企業業績指標が大きく改善したと回答した回答者の割合

• デジタルトランスフォーメーションの先導企業 • 全回答者市場ポジション対競合企業

成長/収益の創出

業務効率

従業員満足度

新製品/サービスの導入

収益性

顧客の定着率/ロイヤルティ

企業文化の変化

市場展開のスピード

顧客の生涯価値

IT保守費用対新プロジェクト費用

運用費対設備投資

「 デジタルネイティブな企業は、計測に取り憑かれているかの ようです。これがデジタル化の進展を促進するのです」と、 スウィフトは述べています。

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12 パルスサーベイ | デジタルトランスフォーメーションの再評価ハーバード・ビジネス・レビュー・アナリティクス・サービス

調査手法と参加者の概要ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)の読者から集められた回答者合計 734名(雑誌/電子ニュースレターの読者、顧客、HBR.orgユーザー)が本調査に回答しています。

企業の規模

42% 従業員 10,000名以上

30% 従業員 1,000~9,999名

9% 従業員 500~999名

19% 従業員 499名以下

職位

26% 執行幹部/ 取締役

38% 上級 経営陣

21% 中間 管理職

15% その他の 職位

主な業種

13% 技術

12% 金融 サービス

10% 製造

8%以下その他の 業種

地域

44% 北米

21% ヨーロッパ

21% アジア太平洋

7% 中南米

5% 中東/ アフリカ

2% その他の国・ 地域

数値には端数処理が行われており、合計が100%にならない場合があります。

職務

26% 経営全般/ 経営執行

9% マーケティング/ PR/広報

8%以下 その他の職務

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