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インドネシアの環境に対する市民意識と環境関連政策 日本貿易振興機構 海外調査部

インドネシアの環境に対する市民意識と環境関連政策 - JETRO...関する環境影響分析「Analisa Dampak Mengenai Lingkungan Hidup(AMDAL)」の必須 条件として、環境への影響評価(Environmental

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インドネシアの環境に対する市民意識と環境関連政策

日本貿易振興機構

海外調査部

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地球温暖化問題への関心を受け、各国では環境関連政策の整備が進み、政府の啓発活動に

伴い市民の環境に対する意識が高まりつつある。

環境意識の高まりは地球温暖化問題だけに向けられているものではなく、健康、安心・安

全、居心地の快適さ、バリアフリーなどへの関心と相まっており、意識の高まりに伴い、市

場が大きく変化する兆しを見せている。こうした動きは先進国だけでなく新興国でも見られ、

特に台湾や ASEAN ではビジネス環境の急転が見込まれている。サッカー・ワールド・カッ

プとオリンピックを控えているブラジルでも、政府や自治体は市民に対する環境教育にいっ

そう力を入れるようになった。

こうした世界的なトレンドを受け、ジェトロでは、主要 30 カ国・地域を選び、市民の環境

への意識および環境関連政策について、概要を取りまとめることとした。

環境関連政策としては、(1)電力・エネルギー、(2)廃棄物処理、(3)交通、(4)住宅・建築をと

りあげた。また、ビジネスの参考として、環境関連の経済指標および当該国・地域の気候関

連情報についても盛り込むこととした。

本レポートは、この一連の調査のインドネシア版である。

なお本レポートは、 環境政策関連のデータベースを運用する民間のシンクタンク、Enhesa,

Inc.1に委託した調査の報告書「Environmental Policy Research 2010 」を基に、ジェトロが

編集・改訂を行ったものである。

2011 年 1 月

海外調査部

「環境に対する市民意識と環境関連政策」レポート掲載国・地域一覧

EU、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、スウェーデン、ハンガリー、ポーラ

ンド、デンマーク、チェコ、サウジアラビア、UAE、インド、シンガポール、マレーシア、

インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、カンボジア、台湾、中国、韓国、オーストラ

リア、カナダ、米国、メキシコ、ブラジル、チリ。

1 www.enhesa.com

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1. 位置・気候

インドネシアは、インド洋と太平洋の間に位置する 1 万 7,500 余りの島々から成る東南ア

ジアの国である。南北は南緯 10 度から北緯 5 度の間にほぼおさまる。国土面積は 190 万

4,569km2。インドネシアに属する大きな島々としては、スマトラ島(47 万 3,606km

2)、ジ

ャワ島(13 万 2,107km2)、カリマンタン島(53 万 9,460km

2)、スラウェシ(18 万

9,216km2)があり、ニューギニア島の西半分(41 万 2.981km

2)も領有している2。低緯度の

ため、温暖な気候の高地を除くと、気候は高温多湿である。

インドネシアには、ブラジルとコンゴ民主共和国に次ぐ世界で 3 番目の規模を持つ熱帯雤

林があり、固有の生物学的豊富さと生物多様性を誇る。この国にはまた、世界で最大規模の

マングローブ林が存在する。しかし、同時に経済的な利益を目的とした森林伐採や交通イン

フラ、電力インフラなどの開発による森林損失は、世界で最も深刻な水準にある3。

2. 環境に対する市民意識

一般的に、環境保護に対する意識、あるいは持続可能な方法によって活動を行うことに対

する市民意識の育成は、インドネシアにおいて重要な課題となっている。環境への市民意識

は主として政府主導で、企業やその他の法人を通じて啓発が図られてきた。

1978 年に環境問題に取り組む当局(Kantor Menteri Negara Kependudukan dan

Lingkungan Hidup)が設立されて以来、環境問題は国が取り組むべき優先事項の一つとな

ってきた。政府は環境問題に関する立法作業を継続的に行い、環境保護の分野での市民や企

業の功績に対して表彰や賞の贈呈を行っている。

1981 年、環境省は「Kapaltaru award」を導入し、自らの意志で環境保護に貢献した社会

の構成員を表彰している。

開発事業においては 1986 年から、経済活動により引き起こされる環境破壊からの保護に

関する環境影響分析「Analisa Dampak Mengenai Lingkungan Hidup(AMDAL)」の必須

条件として、環境への影響評価(Environmental. Impact Assessment; EIA)を行っている。

EIA は現在、環境への影響の評価に関する 1999 年の政府による規程第 27 号に基づき管理さ

れている。

1986 年以降、大気の質に関する基準や廃水に関する基準など、様々な分野に対応するため

EIA の適用範囲は拡大され、環境に関する必要条件についての定めが増えた。また、EIA の

必要条件の対象外となる小規模なビジネス活動主体、その他の組織も、環境を管理および監

視するための能力があることを表明しなければならない。

しかしながら貧困、資金不足、市民教育の遅れ、環境維持に必要な各種施設・設備の不足、

当局による不十分な規制などは、今日なお環境問題を引き起こし易い原因になっている。

環境省が一定期間内に条件を満たさない企業に対して期間を延長して義務の履行の努力を

させるなど、「猶予」を繰り返し与えていることもあり、EIA で定める必要条件が政策の期

待通りに履行されているとは言い難い面もある。

2 http://www.indonesia.go.id/id/index.php?option=com_content&task=view&id=112&Itemid=1722 3 http://www.globalforestwatch.org/english/indonesia/overview.htm

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1995 年、環境省は「Program Penilaian Peringkat Kinerja(PROPER)4」として知られ

る企業の環境性能評価計画を導入した。この計画は当初、清浄河川計画、および水質汚染管

理の評価活動として開始された。PROPER 計画に基づく評価では、最高級の評価であるゴー

ルドから、グリーン、ブルー、ブルー・マイナス、レッド、レッド・マイナス、ブラックに

至る色付けによる評価制度を採用している5。

02 年には対象を、環境务化を水質以外の要因にも拡大した。参加する企業はこれに基づき、

水質汚染管理、大気汚染管理、有害および有毒廃棄物の管理も含め、環境への影響の評価を

実施する。この措置は、企業の環境性能を一般に開示し、環境に対する意識を高めることで

環境に関する規定に対する企業の準拠性を高めることを目的としている。

この措置の直後の 02 年から 03 年において PROPER に参加した企業は 85 社であったが、

08 年から 09 年は 1,750 社と、この間に参加する企業は大幅に増加した。

2. 環境関連政策

インドネシアで制定された最初の近代的な環境法は、1982 年の法律第 4 号である。この法

律は、将来の世代のために環境資源の枯渇と务化を防ぎ、環境資源を保護および保存するた

め、環境の利用を規制・管理するあらゆる取り組みの基盤を確立するものであった6。

1997 年 9 月 19 日には 1982 年の法律第 4 号に代えて Environmental Management Act

No. 23 of 1997 (EM 23/1997)を公布した。この法律は、廃棄物の排出、環境への影響の評価、

および有害物質と有毒物質の管理などの諸問題を考慮することで、持続可能な環境の重要性

を強調したもので、環境を管理する手段として、許可証の発行の重要性も強調している。

2009 年 10 月 3 日、EM 23/1997 は Environmental Protection and Management Act No.

32 (EPMA 32/20097) に置き換えられた。新しい法律は、環境に関する規定を現在の世界の

水準に照らしてインドネシアの環境に関する法律を改定したもので、「弱い」規制を強化し、

政府の権限を強化している。

インドネシアでは、国の利害に関わる事項を除き、地方の政府と議会(地域下院)が独自

に立法活動を行うことを認めている。33 の州が存在し、各州は県(Kabupaten)と市

(Kota)に区分されている。中央政府または環境省は国の政策、規定、および基準を策定す

る責任を担う一方、地方政府はそれらの政策の実施と監視を行う責任を担っている。

環境問題に関して、EPMA 32/2009 は地域(州、県、および市)が自律性を持って地域の

状況に即した条件を定める規定(Peraturan Daerah - Perda)の重要性を強調している。

かつては中央政府が管理していた収入を地方政府に移管することで地域の経済が活性化さ

れたことから、地方自治のシステムはインドネシアにとって良好な影響を与えていると考え

られている。その一方で、地方自治レベルにおける立法措置や行政の裁量過程での恣意的な

利権の誘導は、良好な行政の遂行を妨げる障害とされ、地方自治システムがむしろ地方によ

4 http://www.menlh.go.id/proper/proper%20baru/Eng-Index.html

5 http://www.menlh.go.id/proper/proper%20baru/Eng-Index.html 6 なおインドネシアの環境関連法の変遷については以下に詳しい。

http://www.ide.go.jp/English/Publish/Download/Asedp/pdf/074_9.pdf#search='Environmental Protection and Management Act No. 32 indonesia'

7 http://adaptasi.dnpi.go.id/index.php/main/contents/25

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る天然資源の搾取を助長しているとの批判もおきている。中央政府は Act No. 30 of 2002 on

Anti-Corruption Commission を制定し、独立した委員会( Komisi Pemberantasan

Korupsi8)を設置してこうした課題に取り組んでいる。

投資に関して、07 年に政府は Investment Act No. 259を制定し、すべての投資者に対し環

境の保護を義務付けた。特に天然資源開発などのための自然破壊を伴う投資については、投

資者が事業に使用する地域の自然を回復させるために資金を段階的に割り当てることを求め

ている。

現在のインドネシアでは、09 年制定の Environmental Protection and Management Act

No. 32 が環境の保護と保存を目的とした法的基盤となっている10。この法律は、すべての国

民が環境の保護と環境汚染や環境破壊の管理に努める義務があると定めている。

(1)電力・エネルギー政策

07 年の Energy Act No. 3011は、化石、地熱、大規模な水力エネルギーおよび原子力エネ

ルギーといった一連のエネルギー源を国によって管理すると規定している。

中央政府は、新しいエネルギー開発の管理、推進、研究、および開発について責任を担っ

ている。また中央政府は、エネルギーに関連したビジネス活動の効率性と競争性の担保を全

面的に支援している。

エネルギーの価格は公正に決められる。中央政府は、より財政的に厳しい地域、開発が進

んでいない地域、村、および遠隔地へのエネルギー供給を優先させることを目的に、政府が

設立した基金から資金を拠出し支援している。

エネルギーを生産した地域はエネルギーを優先的に消費することができる。エネルギーの

価格と助成金の規模は法律の規定に従って決められる。

エネルギー法は、エネルギーに関連した活動が、設備の基準、セキュリティ、安全性、業

務上の安全性、衛生状態などについて定める法律の条件を満たす、環境に配慮した技術を採

用することを求めている。

新しいエネルギー源の開発については、着手から採算がとれるまでの期間、各種のライセ

ンス取得手続きや税務などでのインセンティブが中央政府または地方政府から得ることが可

能である。省エネ装置の製造者に対するインセンティブも整えられている。

原油とガスに関わる生産活動について、財務省は国内で入手できない、または国内でまだ

製 造 され てい ない 輸入 機 械類 、材 料に対 す る輸 入税 の免 除に つ いて は、 No.

177/PMK.011/2007 で規定している。輸入税の免除は、掘削基地、海上または海底での生産活

動に対しても適用される。

同年の Energy Act No. 33 に基づき、大統領が議長を務める国家エネルギー評議会が設置

された。国家エネルギー評議会は、関係する閣僚を含む 7 人の政府高官、および利害関係者

の代表 8 人によって構成される。評議会は、国のエネルギー政策を立案・策定し、国のエネ

8 http://www.kpk.go.id/ 9 http://castleasia.co.id/Opinion/Investment%20Law%202007%20-%20Commentary%20-%20Update.pdf#search='Investment

Act No. 25 indonesia' 10 http://www.menlh.go.id/home/index.php?option=com_content&view=article&id=107&Itemid=132&lang=id 11

http://www.esdm.go.id/prokum/uu/2007/uu-30-2007-en.pdf

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ルギーに関する基本計画を決定し、エネルギー危機と緊急時への対応策を決定し、エネルギ

ーに関する部門横断的な政策の遂行を監視し、予備エネルギーを管理する責任を担っている。

政府は、10 年 1 月 8 日付大統領令 2010 年第 4 号で、2014 年までに新たに 10,000MW の

新規電源を開発する計画「第 2 次クラッシュプログラム 2010-2014」を策定した。

この電源開発計画は、先に制定された第1次クラッシュプログラム(同じく10,000MW:

2006-2009)に続くものだが、第1次クラッシュプログラムが中小規模石炭火力のみを対象と

していたのに比べ、①地熱(39%)や水力(12%)など再生可能エネルギーの開発に重点を

おいたこと、②独立発電事業者が電力会社に売電するIPP方式を全体の49.6%に導入すること、

といった特徴がある。再生可能エネルギー重視は、地球環境問題への関心の深まりと、発電

コストが燃料市況に左右されにくいことが背景にあるとみられる。

クラッシュプログラム概要

第1次クラッシュプログラム 第2次クラッシュプログラム

計 画 年  2006年 ~ 2009年  2010年 ~ 2014年

開 発 方 式  PLN 100%  PLN 50.4% : IPP 49.6%

電 源 開 発 量  10,000MW  10,000MW

 再生可能エネルギー 計51%

   (地熱発電39%,水力発電12%)

 化石燃料 計49%

   (石炭火力33%,ガス火力16%)

電 源 種 別  石炭火力 100%

第2次クラッシュプログラムに続き、政府は10年1月29日付の財務相令

No.24/pmk011/2010で、再生可能エネルギーを利用した事業に対する以下の税制優遇措置を

導入した12。対象は地熱、風力、バイオ燃料、太陽光、水力、海流・海洋温度差などで、政府

が再生可能エネルギー開発に注力する姿勢がうかがえる。

①所得税(pajak penghasilan)控除

投資合計額の 30%相当額の課税対象額からの控除(6 年間にわたり各年 5%)、固定資産

償却期間の短縮、国外への利益送金の源泉徴収税率について 10%への低減、欠損金繰越

期間の最大 10 年までの延長。

※政令 2007 年第 1号施行規則 16/PMK.03/2007 に準じ、これらの事業に適用拡大。

②付加価値税(Pajak Pertambahan Nilai)免除

特定戦略的な関連機械・機器の輸入時の付加価値税の免除。

※政令 2001 年第 1 号に準じ、これら事業の関連機械・機器に適用拡大。

③関税(Bea Masuk)免除

関連機械・機器の関税免除。

※財務相令 154/PMK.011/2008 および 176/PMK.011/2009 に準じ、これらの事業に関連

する機械・機器に適用拡大。

12 http://www.beacukai.go.id/library/data/24PMK.011_2010.pdf

インドネシア石油協会による英訳が次のURLに掲載されている。 http://www.ipa.or.id/download/report/REGULATION_-_Exemption_of_VAT_on_Exploration_Goods_-_24PMK.011_2010_-_English_15.pdf

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④税優遇

政府予算に基づく税優遇。

※戦略的な機器類・部品の輸入に対する輸入関連の税軽減を図る。

(2)廃棄物処理政策

08 年 5 月 7 日、政府は廃棄物(「sampah」)の管理の複雑さ、その性質、人口増加によ

って生じる廃棄物の量的増加と種類の増加、および消費パターンの変化に対応するため、Act

on Waste Management No. 18 (Act 18/200813) を制定した。Act 18/2008 は、すべての者が

家庭廃棄物およびその他の同様の家庭廃棄物の発生を最小限に抑えることを求めている。集

合住宅の地区、およびその他の地区/施設(地域/州および地方の政府)の責任者は、09 年

5 月 7 日までに廃棄物を分別するために入手可能な方法を提供する義務を課せられた。

Act 18/2008 は、廃棄物(「sampah」)の種類について、①家庭廃棄物、②その他の同様

の家庭廃棄物(商業分野、産業分野などで発生する廃棄物)、および③特定廃棄物(有害廃

棄物と有毒廃棄物、建物の残骸など)と定義している。また廃棄物の管理を実施するため、

政府に 2 つの活動を行うことを求めている。

1)廃棄物の発生源の制限、リサイクル、再利用による廃棄物の発生量の最小化。これを実

行するため、該当する政府は以下を実施しなければならない。

・製造者による環境に配慮していない材料の使用に対して適用する制限を決めること。

・グリーン/環境に配慮した技術の応用を可能にすること。

・環境に配慮したラベリングの実施を可能にすること。

・再利用/リサイクルの活動を可能にすること。

・市場でリサイクル製品の入手を可能にすること。

2)廃棄物処理の改善。許可を受けた廃棄物の管理施設は以下を行わなければならない。

・廃棄物が種類、量、および性質に基づいて分類されること。

・廃棄物を発生源から収集して廃棄物の移動エリアに移すか、統合化された廃棄物処理

エリアから最終処理エリアに移すこと。

・再利用、更なる処理、または環境に戻すことができるように、廃棄物の性質、構造、

および量を把握し、廃棄物または残留物を環境に戻す形で廃棄物の最終処理を行うこ

と。

インドネシアの法律では、廃棄物を示す言葉として「limbah」と「sampah」が用いられ

ている。一般的に「sampah」は固形廃棄物を指し、「limbah」は液状廃棄物、または有害

廃棄物および有毒廃棄物を指すものと理解されている。しかし、Act 18/2008 は「sampah」

という言葉を固形廃棄物として定義して用いている一方、09 年の Environmental Protection

and Management Act No. 32 (EPMA 32/200914)は廃棄物(「limbah」)を廃棄物としての

種類に関係なくビジネス活動によって生じた残留物であると定義している。今後、法的に言

葉の定義が明確にされることが望まれている。

13 www.menlh.go.id/dokumen_sampah/Waste%20Management%20Act%20Number%2018%20Year%202008.pdf 14 http://ecotas.org/wp-content/uploads/2010/11/UU_32_Tahun_2009.pdf

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なお、EPMA 32/2009 は、廃棄物(「limbah」)またはその他の物質を環境の中に投棄す

ることの禁止措置について定めている。投棄は、許可を得ている場合にのみ行うことができ、

廃棄物(「limbah」)またはその他の物質の投棄は、指定された場所でのみ行うことができ

るとしている。

財務省は法人を対象に、廃棄物管理・処理に係る機械・設備の輸入に対し、インセンティ

ブを設けている。対象企業は、自社が発生させた廃棄物を管理すること、廃棄物の処理を目

的とした機械、設備、または生物学的また化学的な物質を輸入する必要がある廃棄物の管理

活動を遂行する業務を管理することを望む工業系の企業で、「環境汚染を防止するために使

用される装置と物質に対する輸入税の免除に関する規定 No. 101/PMK 04/2007」の適用により、

税関総局を経由して財務省に対し、輸入税の免除を申請することができる。

有害廃棄物と有毒廃棄物を管理する施設は、環境省の承認を得なければならない。しかし、

有害廃棄物と有毒廃棄物の処理によって生じる生成物は、SNI(Standar Nasional

Indonesia)として知られる国家基準、国際基準、または国内で認知されている、あるいは国

際的に認知されているその他の基準を満たしていなければならない。ただし、それらの生成

物をリサイクルなどに使用するために許可を得る必要はない。

有毒廃棄物の管理を主活動とする施設(収集者、輸送者、処理者など)は許可を必要とす

る。主たる活動ではないが有毒廃棄物の輸送に関わる者は、環境汚染の危険性に対する保証

額 50 億ルピア(1 ルピア=0.01 円)以上の保険を付保しなければならない。

(3)交通政策

インドネシアでは鉄道は一部で発達しているに過ぎない。ジャワ島では道路を使用した輸

送が大きな割合を占めているが、インドネシア全体でみると、海洋の内水域、河川、非機械

の輸送を含むあらゆる交通手段がそれぞれの役割を果たしている。

国が管理する 111 の港が島々に点在している。カリマンタン島とスマトラ島では内陸の水

路も多く用いられている。いくつかの孤立地域では、航空機を使用する以外にアクセスする

ことが難しい15。1997 年の外貨流動性危機から経済が回復して以降は、航空輸送手段が用い

られる場合が急速に増えた。

運輸に関する規定と方針は法律によって中央政府が管理する一方、具体的な行政措置は主

として地方政府が担っている。

輸送手段と公共輸送は運輸省(Departemen Perhubungan)が、道路などのインフラの整備は

公共事業省(Departemen Pekerjaan Umum)が管轄する。危険物の輸送は運輸省と環境省

(Kementrian Lingkungan Hidup)が共同で管轄する。

都市部では自動車の増加が課題となっており、十分な量の道路が新たに建設されておらず、

渋滞は悪化の一途をたどっている。渋滞を軽減するために、ジャカルタ首都特別州は 04 年に

「Trans Jakarta16」という高速バス・システムを導入した17。バス専用レーンを設け、プラット

ホーム式のバス停、バス優先の信号などで所要時間を短縮するシステムで、迅速性と正確性

15http://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/COUNTRIES/EASTASIAPACIFICEXT/EXTEAPREGTOPTRANSPOR

T/0,,contentMDK:20458729~menuPK:2066318~pagePK:34004173~piPK:34003707~theSitePK:574066,00.html 16 http://www.transjakarta.co.id/page.php 17 なお、このシステムはブラジルのクリチバ市が開発したもので、クリチバ式とも言われる。クリチバではボル

ボが開発した最大 270 人を一度に輸送できる三重連のバスが導入されているが、ジャカルタではこのタイプの

バスはまだ導入されていない。

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で利用客を呼び込む。現在までに全長 123,35 km に及ぶ全 8 路線が開業し、1 日に 25 万人

が利用している。なお、このシステムはブラジル・クリチバ市で開発されたバス・システム

を模倣したものである。

中央政府は、インフラの提供における民間企業と政府機関の協力に関する大統領令第 67 号

を補足した 10 年の大統領令第 13 号により輸送インフラの整備に民間の参入を呼びかけてい

る18。公共の輸送手段以外にも、政府は道路建設(幹線道路や橋梁)に民間企業が参入する機

会を与えている。

10 年 11 月 4 日に開催された第 6 回国家エネルギー評議会において、運輸部門におけるガ

ス燃料の使用に関する報告書が提出された。その報告書の中で指摘された要点は次のとおり。

1)運輸部門におけるガス燃料の使用に関する大統領令の施行。

2)大都市における公共の輸送手段へのガス性燃料の使用の義務付け。

3)政府によるガス燃料政策遂行のために必要なインフラの提供。

4)国内におけるガス燃料の価格の輸出価格に従った調整、ないし助成措置の導入。

5)交通の手段や施設を建設するための財務的なインセンティブ、または税務上のインセン

ティブのコンバーター・キットの製造者や施設を含む国営企業や民間企業を対象にした

提供。

6)プロジェクトへの輸送事業とガス流通事業を専門的に行う国営企業や民間企業の優先参

加。

鉄道はオランダ時代に広軌が採用されたが、建設費に鑑み狭軌が併用され、日本の軍政時

代に狭軌に統一された。独立後は十分な維持管理がなされなかった区間もあるが、首都圏や

幹線を中心に世界銀行やドナー国の支援で改修が進められた。

国鉄は公社化を経て 1999 年に政府が 100%の株式を持つインドネシア鉄道会社 (PT.

Kereta Api19)に衣替えした。インフラ整備と運行は、上下分離式が採られている。

同社はジャカルタの通勤鉄道として日本の ODA により整備された KA Commuter

Jabodetabek (8 路線、路線距離約 160km)20も運行している。この路線は日本の主要鉄道

と、軌間、架線電圧などの規格が同じで、日本から多くの中古車両が有償で輸出されて

いる。

なお、ジャカルタ特別州は独自の MRT の建設計画を持つ。一部区間はインドネシア初

の地下鉄区間となる。この計画については、09 年 3 月に日本政府とインドネシア政府と

の間で第一期事業に対するタイド・ベースの円借款の交換公文が交わされている。

(4)住宅・建築政策

インドネシアの経済発展とともに、特に都市部において商用ビルと住宅の開発が進められ

ている。ただし低所得層向けの住宅や小規模商業用の施設は、建設許可が取得されていない、

18 http://www.infrastructureasia.com/speakers100416/100416-asiapasificparallel1railtransport-tundjunginderawan-dirjenkeretaapidishub.pdf#search='Presidential Decree no.13 2010 indonesia'

18http://www.esdm.go.id/siaran-pers/55-siaran-pers/3821-sidang-anggota-ke-6-dewan-energi-nasional.html 19 http://www.kereta-api.co.id/ 20 8路線中、1路線は実質的に休業中。

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建物が技術的要件の必要条件を満たしていない、建物が空間計画に従って建設されていない

などの諸問題に直面している。

建築分野の国家規定は、02 年まで導入されていなかった。同年制定された Building Act

No. 28 は、行政上および技術上の必要条件に従って建物が建設されるように求めている。行

政上の必要条件は、土地に関する権利、土地の権利所有者から得る土地の使用に関する許可、

建物の所有権、建設の許可などの事項に関したものである。

技術上の必要条件は、構造的および内装的な諸事項が含まれる。構造的な諸事項には、建

物の構造、強度、建物の周辺環境への影響に関する評価などが含まれる。内装的な諸事項に

は、安全性、衛生性、快適性、高齢者・障害者によるアクセシビリティなどが含まれる。

都市部での建設にあたっては、地元の空間計画に配慮して地方政府から建設許可を取得し

なければならない。建物と建設について責任を担う労働省は、建築に関する法律と技術的な

ガイドラインを定める一方、地方政府はそれらの法律とガイドライン、住居に関する政策の

実施について責任を担う。

工業地区のオーナーによって開発・管理される工業地区での建設は、産業省が管掌する。

工業地区はオーナーが環境への影響に関する評価を行っており、入居者は環境管理活動

(Upaya Pengelolaan Lingkungan)と環境監視活動(Upaya Pemantauan Lingkungan)の実施と、

工業地区に定められた行動規範への準拠だけが求められる。また入居者は、場所の使用許可、

迷惑行為に関する許可、配置計画の承認(pengesahan rencana tapak tanah)などを取得する義

務が免除される。

環境に配慮した建物の基準と認定に関する 10 年の環境相令第 8 号21には、環境に配慮した

建物として分類される建物の建設によって満たされるべき基準が定められている。

すべての基準を満たす建物は環境に配慮した建物として認定される。この認定の有効期間

は 2 年である。

環境省は、建物の所有者が持続可能な環境保護の活動に参加することを促す目的でこの法

令を発布した。現在のところ、環境に配慮した建物の建設は任意によって行われる。しかし、

環境保護の制度において環境に配慮した建物としての認定の取得が必要条件の一つとなる可

能性がある。

次に、環境に配慮した建物として認定されるための基準を示す。

1)エコラベル証明が貼付された建材や地元で製造された建材など、環境にやさしい建材を

使う。

2)水の使用量を計測し、水源を保全し、雤水を使用するためのシステムなど、水質の保全

を目的とした手段、設備、およびインフラを整備する。

3)再生可能エネルギーの使用やエネルギー消費量が低い照明設備や空気循環システムなど、

エネルギーの保全と多様化のための手段、設備、およびインフラを整備する。

4)空調や消火器などの設備にオゾン破壊物質を使用しない。

5)廃水の処理、および処理された排水の再利用を目的とした手段、設備、およびインフラ

を整備する。

6)水を分類する手段を整備する。

21 http://www.menlh.go.id/Peraturan/PERMEN/PermenLH08-2010.pdf

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7)新鮮な水の循環設備を整え、自然光を利用し、健全な植物のある屋外空間、雤水の集水

施設、などを通じて持続可能な植栽の専有面積を確保し、微気候と気候変動の一般的な

問題を考慮した、空間計画に従った建設計画を採用し、計画に沿った建物の管理手法を

整える。

8)自然災害(洪水、嵐、雪崩)の早期警報システムなど、災害を想定した対応手段、設備、

およびインフラを整備し、極端な気象条件(豪雤や渇水)への対応能力に優れた建材を

使用する。

UNDP による支援

国連開発計画(UNDP)は持続可能な環境の実現に向けてインドネシア政府を支援し、気

候変動に関する諸問題を含む環境政策を策定している。UNDP の計画は、

①気候変動に関する提言、政策支援

②財政メカニズム

③持続可能なエネルギー、持続可能な天然資源の管理

の 3 分野を対象にしている。UNDP が支援している現在進行中の計画例は次のとおり。

1)エネルギー基準やラベリングの導入を妨げる障壁の撤廃に関する計画。

家電製品を使用することで消費されるエネルギーの節約を目指すエネルギー基準とラ

ベルの導入と遂行を早めることを目的とする。計画期間は 09 年から 13 年まで。

2) マイクロタービン熱電伴給技術装置に関する計画。

エネルギーをより効率的に生成し、従来のディーゼル発電機と比較して二酸化炭素の

排出量が尐ないマイクロタービン型の熱電伴給技術の推進を目的とした計画。技術は業

務活動において熱と電気が使用される中規模産業での応用を目的としている。13 年まで。

3) 森林破壊と森林务化による二酸化炭素排出の削減に関する計画(UN-REDD)

複数の利害関係者の間で話し合いと情報交換を活発に行うことで、透明性があり、公

正 で 偏 り の な い REDD (Reducing Emissions from Deforestation and Forest

Degradation)体制確立を目指す中央政府の支援を目的とする。この計画の成果として、

インドネシアの熱帯林が保護され、森林破壊が抑制されることになる。

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.経済指標

①鉄道総延長 6,797 km (2009年)②鉄道旅客輸送キロ 194 百万人・km (2008年)③鉄道貨物輸送キロ 19,443 百万トン・km (2007年)④高速道路・アウトバーン総延長 772 km (2009年)⑤国道総延長 36,318 km (2009年)⑥水路総延長 21,579 km (2008年)⑦住宅戸数 N/A⑧住宅建築着工許可件数 N/A⑨非住宅建築着工許可件数 N/A⑩乗用車登録台数 9,859,926 台 (2008年)⑪商用車登録台数 7,729,844 台 (2008年)⑫乗用車普及率(1,000人あたり) 42 台 (2008年)⑬商用車普及率(1,000人あたり) 33 台 (2008年)⑭廃棄物量 N/A⑮廃棄物埋め立て処理率 N/A ⑯廃棄物焼却処理率 N/A ⑰水資源使用量(地表水)    82.78 k㎥ (2000年)⑱一人当たり水使用量 372 ㎥ (2000年)⑲CO2排出量    385.4 百万トン (2008年)⑳CO2一人当たり排出量 1.69 トン (2008年) 注:インドネシアは住居用建物と非住居用建物とを区別していないが、Badan Pusat Statistik Republik

Indonesia22によれば 2008年現在の「建物の軒数」は 13 万 9,322 軒であった。

出所:①インドネシア運輸省、②~⑤インドネシア統計局、⑥CIA、⑩~⑬インドネ

シア統計庁、⑰⑱WWO、⑲⑳IEA

以上

添付資料:インドネシアの気象データ

22 http://dds.bps.go.id/eng/tab_sub/view.php?tabel=1&daftar=1&id_subyek=04&notab=3

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気象データ

総合的な気候平均データは、インドネシア気象・気候・地球物理学庁23が発表している。

ジャカルタ24

月間平均気温

月間湿度

23 http://www.bmg.go.id/pindah.html 24 http://iklim.bmg.go.id/image/JAKARTA.jpg

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アンボン25

月間平均気温

月間湿度

25 http://iklim.bmg.go.id/image/AMBON.jpg

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参考: WMO による気象データ26

ジャカルタ: Month

Mean Temperature °C Mean Total Rainfall (mm) Mean Number of Rain

Days

Daily Min Daily Max

Jan 24 30 385 26

Feb 24 30 310 20

Mar 25 32 100 15

Apr 25 33 258 18

May 25 33 133 13

Jun 25 31 83 17

Jul 25 32 31 5

Aug 25 32 34 24

Sep 26 33 29 6

Oct 26 33 33 9

Nov 25 31 175 22

Dec 25 32 84 12

アンボン:

Month

Mean Temperature °C Mean Total Rainfall (mm) Mean Number of Rain

Days

Daily Min Daily Max

Jan 22 32 21 4

Feb 22 32 44 10

Mar 23 32 101 13

Apr 23 32 299 26

May 23 30 402 22

Jun 22 29 817 27

Jul 22 29 647 26

Aug 22 29 457 22

Sep 22 30 241 16

Oct 22 31 239 15

Nov 23 33 196 17

Dec 24 33 175 19

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26http://worldweather.wmo.int/043/c00310.htm