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国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部 1 国立保健医療科学院 レセプト分析法 マニュアル 国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部

レセプト分析法 マニュアル · 2017-01-25 · とにレセプトを作成するが,初・再診料は1 診療科で のみしか請求できない。その場合,初・再診料の請求のないレセプトでも日数は記載される。

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国立保健医療科学院

レセプト分析法

マニュアル

国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部

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1,レセプトのしくみ

レセプト情報を活用するには当然ながら,レセプトのしくみを知らねばならない。

図は医科外来のレセプト様式であり,電子レセプトも基本的にはこの紙レセプトの内容をそのまま数字に

翻訳(コード化)しただけにすぎない。

レセプトは医療機関ごとに作成請求されるが,旧総合病院については外来レセプトは診療科ごとに作成さ

れる(この扱いは2010年3月診療分まで)。被保険者当たりレセプト件数を受診率と呼んでいるが,総合病院

を多数抱える地域の保険者は患者数は同じでもレセプト件数は多くなることがあることに留意する必要が

ある。筆者は,ある村のレセプト分析で,同一病院の 5 診療科を毎月受診し,一人で年間 60 件の外来レセプ

トがでていた例を見た経験がある。

レセプト上部には基本的な3情報,医療機関,保険者そして患者情報が記載される。レセプトは医療費の請

求書の一部(明細書)であるから,どの医療機関が,どの

患者について,どの保険者に請求するか,の 3 つは必須

情報である。保険者情報には,保険者番号と各患者の被

保険者証に記載された記号・番号も記載される。保険

と公費併用の場合は,この他に公費負担者情報も追加

される。

一番上の〇年〇月分とあるのは診療月を指す。通常

は診療月の翌月に請求され,それが請求月となり,レセ

プト調査はたとえば6月審査分,というふうに請求月

で分析されることが多い。6月審査分の大半は5月診

療分であるが,診療報酬請求権は翌月から2年間なの

で,2月以上前の古いレセプトも少数ながら混じって

いる。そうしたいわゆる「月遅れ」レセプトの大半は,

翌月に提出したものの,不備があったりして医療機関

に突き返された(返戻,へんれい)ものであり,そうし

たレセプトは翌々月以降に再提出される。疾病の流行

等は診療月で分析すべきだが「真」のその診療月の患

者数は時効にかかる 2 年間待たなければ確定しない

ので通常は審査月で分析されることが多い。

右上にある診療実日数とは暦日数であり,それゆえ

31 日を超えることはあり得ない。外来の場合,概ね

受診回数とみなしてよいが,同一日に2回以上受診し

た場合(電話再診も含む),再診料は 2 回請求されても

日数は 1 日となる。また旧総合病院外来は,診療科ご

とにレセプトを作成するが,初・再診料は 1 診療科で

のみしか請求できない。その場合,初・再診料の請求のないレセプトでも日数は記載される。

●傷病名欄

レセプトで重要な医学情報を含むのが傷病名欄である。レセプトは診断書ではなく,医師の記名押印も必

要ない。したがって傷病名欄の病名記載も医師である必要はない。当然ながら診断書のような事実証明の法

的効果もなければ虚偽記載に対する罰則もない。レセプト病名は審査のための参考資料にすぎず,実際にあ

る病名でも,その月のレセプト請求に無関係な病名は記載されないことも多い(低薬価薬剤の適応症等)。レセ

プト病名を医学研究に用いる上でその信頼性が常に問題とされるゆえんである。

傷病名欄の記載は 2002 年より大きく変わり,記載できる病名は原則として電子請求のための傷病名コー

ド(マスター)に記載された傷病名のみ,また複数傷病の場合は原則として一つの主傷病を明記する,とされた。

が,未だよく守られておらず,主傷病を明記していなかったり,複数の主傷病を明記してあるレセプトも多

い。また電子請求では傷病名コード(7 ケタ) に変換することとされるが,現在の請求ルールでは,

0000999(未コード化傷病名)として文字で入力してもよいとされ,コード化の面倒さからそのまま文字入力

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してあるものもかなりある。

診療開始日は,発病日ではなくその医療機関の診療開始日であり,同じ医療機関であっても保険が変わる

と診療開始日もその保険での開始日に変わる。転帰は,治癒,中止,死亡の 3 つがある。死亡とあれば,

その医療機関で治療中に死亡したことがわかる。

なお,傷病名は通常のレセプトとDPCレセプトとでは扱いが異なる。通常レセプトで主傷病といっても

その定義は明確にされていないが,DPC は「医療資源を最も投入した傷病」で分類され,その決定は主治

医が行う,とされる。DPC では,より高い点数にするためのアップコーディングのおそれがあり,レセプ

ト審査においても,通常レセプトでは記載された傷病名の妥当性は問われないが,DPC レセプト審査では

選択された傷病名の妥当性そのものが審査対象となる。

●点数欄と摘要欄

レセプト中央の左が点数欄,右が摘要欄と呼ばれ,診療内容が記載される。

点数欄は診療内容の回数と点数をまとめた部分で,左端に12 再診,21内服というように2ケタの診療識別が振られている。それぞれのワク内に,請求された回数(薬剤では単位数)と合計点数が記載される(薬剤点

数は,薬価ではなく所定単位当たりの点数であり,所定単位とは内服薬は1剤1日分,頓服薬は1回分,外用薬

は1調剤,を指す。また内服薬の1剤とは「一回の処方において2種類以上の内服薬を調剤する場合にも,服用

時点及び服用回数が同じであるものは1剤」と扱われる)。

摘要欄は診療内容の全てが記載され,いわば点数欄の明細である。診療行為,薬剤そして特定機材等が記

載される。コード化せず文字入力が許容される傷病名とは異なり,これらの内容は電子請求では必ずコード

化しなければならない。摘要欄は,点数欄の明細であるから,点数欄の診療識別の順番に記載される。紙レ

セプトでは,摘要欄が厖大になると紙を継ぎ接ぎ(続紙)していたが,電子レセプトではこうした手間は不要

となる。

●請求・決定点数・・・請求される点数の合計が請求点数,審査の結果査定された点数が決定点数である。

査定は減点査定が大半なので決定点数<請求点数となる。

2-電子レセプトを覗く

支払基金から保険者等には,2006年2月以降,有料でレセデータが提供され,社保では1,600近い健康

保険組合,共済組合等のうち1,484保険者(協会けんぽ含む)が提供を受けている(2010年10月提供分)。

●サンプルデータのダウンロード

支払基金はまた以下のサイトでサンプルデータを提供しており,研修でも専らこの医科,調剤そしてDPC

データを使用する。ZIPで圧縮するほどファイルサイズが大きいのは,画像ファイルも含まれているためで

ある。

http://www.ssk.or.jp/goannai/jigyonaiyo/jigyonaiyo_03.html

ZIPファイルの解凍にはWinRAR等のフリーソフトが必要であり,無い場合はダウンロードする必要があ

る。必要なソフトがあればクリックすると以下のように表示されるので「開く」をクリックする。

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すると以下のようにMEDSAMPLEというファルダーが生成され,その中にcsvファイルが含まれている。

実際のデータは毎月DVD(4.7GB)又はCD-ROM(700MB)で提供され,よほど大規模の保険者でない限り

DVD1枚におさまる。もちろんセキュリティのため内容は暗号化され,前の月のDVDと合わせてパソコ

ンに挿入することで復号化される。DVDの中身は下のような5つのフォルダーからなり,電子レセプトデ

ータは0_COMMON001というフォルダーに含まれている。残る4フォルダーはレセプトの画像ファイル

であり,これが容量の大部分を占める。復号化にかなり時間がかかるが残念ながら必要なテキストファイル

のみの復号化はできないことになっている。

0_COMMON001フォルダーには,csvファイルが含まれ,00_INFORMATION.CSVには全体の件数が

記録されている。PECULIARTEXTINFOというファイルは「固有テキスト情報」の訳(きわめてpeculiar

な訳ですが・・・)で,傷病や点数の要点だけを紙レセプトも含めて全件データが含まれる。それに対して

薬剤や診療行為といったレセプトの全内容が含まれるのは,電子媒体で提出されたレセプトのみであり,

RECODEINFOという csvファイルである。本研修でも専らこのファイルの分析方を主眼におく。

その他4つのフォルダーには医DPC歯薬の全レセプトの画像ファイルが保存されている。

まず11_RECODEINFO_MED.CSVを覗いてみる。

プログラム->アクセサリー->メモ帳を開き,ファイル->開くでレセプトデータを開いてみよう。大ファイルだ

と時間はかかるかもしれないが,以下のような画面が浮かびあがってくる。

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数字と英字は意味不明だが,上の3行には医療機関の所在地と名称と患者名らしき文字が見える。少なくとも

人間に理解できる数字と文字からなっている,いわゆるテキストファイルというシンプルなデータであることが

わかる。Excelを使いこなしている方なら,これがテキストファイルでもcsv(カンマで区切られた)データであり,

即 Excel に読み込めることが分かるだろう。そう,電子レセプトデータは,実は Excel でも十分 分析できるシ

ンプルなデータ形式なのである。

医療機関や患者氏名は文字だが,その他は全て数字とアルファベットである。電子レセプトにおいて,全ての

情報は数字(コード)に置き換えられる。そういわれると岡本太郎,1,3350621の患者名に続く数字は性,生年月日を

表す,と想像がつく。岡本太郎,男,昭和 35 年6 月 21日生・・・と。しかし 8833421 が高血圧症,610443074は

タミフルとは想像できない。

「そんなまだるっこしいことなでせずに,紙レセプトの内容をWordかExcelでそのまま送ってくれたらいいの

に」と思われる向きもあるだろう。たしかに後述のように傷病名の中にはコード化せずに病名をそのまま書き込

みことも認められている。コード化が面倒で傷病名を文字のまま入力している医療機関もまだ多数ある。しかし

データ分析と活用の面からみると,コード化されたデータの方が絶対有利である。

映画「ダ・ビンチコード」の中で主人公のラングドン教授は「シンボルは幾千もの言葉を話す」と述べている。

田中医院という名称の医療機関は全国に多数あるだろう。しかし医療機関コードがあれば,それがどの県のどの市

の,医科か歯科かといったことまでわかる。電子レセプトデータはExcel やAccess にもとりこめることがわかっ

たが,むろんそれだけでは分析はできない。そのためには,それぞれのコードの位置と意味を理解する必要がある。

オーダーメードのソフトならそれを全部やってくれるが,柔軟で多様な分析を行うにはやはりコードの中身を理

解し自らデータ処理を行うにしくはない。

●参考書のダウンロード

電子レセプトの仕様等の情報源は支払基金サイト[http://www.ssk.or.jp/rezept/]と厚生労働省保険局「診療報酬

情報提供サービス」[http://202.214.127.149/]であり,厖大な資料が掲示されている。医科作成手引きだけでも237

頁にもなるが,学習にあたってはやはりプリントアウトして,できたら製本して読みやすくするのが有利と思う。

以下のうち別表は重要であるが,別紙は本研修ではあまり必要ないので面倒ならプリントアウトを略してもよい。

電子レセプト作成手引き(2012年7月版)

医科(全248頁・・・うち別表104~118頁,別紙119~237頁)

http://www.ssk.or.jp/rezept/iryokikan/download/files/jiki_i01.pdf

DPC(全126頁・・・うち別表100~118頁,別紙119~126頁)

http://www.ssk.or.jp/rezept/iryokikan/download/files/jiki_d01.pdf

調剤(全85頁・・・うち別表66~77頁,別紙78~85頁)

http://www.ssk.or.jp/rezept/iryokikan/download/files/jiki_t01.pdf

3,電子レセプトの構造

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電子レセプトをメモ帳で開いたら,まず大まかな構造を理解しよう。レセプトは医療機関から支払基金に提出さ

れ,そこで審査された後保険者に送られる。その過程で,医療機関からのデータに支払基金によってデータが追加

される。保険者が受領するのは両方であり,まず両者の区別をつけることが重要になる。

電子レセプトでは同一レセプトをかためて配置されるが,その上下と左端にデータが追加される。下図では周囲

の黄色い部分が基金による追加データである。まず左端の1又は2はデータ識別と呼ばれ1が医療機関からの「請

求データ」,2が基金による「支払決定データ」である。審査によってたとえばある検査が査定されて点数が変更

されると,その行だけ2で始まる行が下に追加される。逆に査定されなかった部分に2で始まる行は追加されない。

下図の例は全く査定をうけなかった例である。分析では,たとえばレセプト共通レコードをとりだすときは

(SELECT * FROM MED WHERE RS=’RE’ AND DS=’1’

とDS=’1’という条件を追加し医療機関からの請求ベースで集計した方がよい。なぜなら査定を受けることによっ

てREレコードが2つ以上あるレセプト(DS=’2’)があるからである。とくに総点数を含むHOは査定を繰り返し

て3つ以上あることもある。DS=’1’という条件を追加せずに単純合計すると1件のレセプトの点数が2倍,3倍

としてカウントされるので要注意!

左端のデータ識別に続いて,2 つの数字が追加されている。一つ目は行番号,次は枝番号であり,ひとつのレセプ

ト内での通し番号である(お気づきのように全ファイルの通番はふられていない。このような場合,さらに左端の

全体の通番を挿入しておくことをお勧めする。さまなくばソートしたりすると元に戻せなくなる)。下のレセプト

は行番号は 10,20,30・・・160 と 16 行からなっていることがわかる。このレセプトはシンプルなので枝番号は

全て0である。

行・枝番号に続いてアルファベット2文字がある。これはレコード識別情報と呼び,大変覚えやすい略語となっ

ている。SIは診療行為のシ,IYは医薬品のイヤと覚えれば,レセプト点検に従事してきた方ならその続きは容易に

想像できよう。2文字の単語をたった18語覚えるだけで,電子レセプトはグッと身近なものに感じられる。

一番上に来るMNはMANAGEMENTのMNで基金が付加したレセプト管理レコード。ここには基金独自の

管理番号(9ケタ)と医療機関の所在地が文字として記録される。一番下に付加されるのはRCすなわちレコード管

理レコードであり 30 ケタの 1~9 までの数字と a~f の英字が並んでいる。これは審査支払機関がレセプトを識

別する目的で記録するもののようで,おそらくは16進数の数値である。30ケタあると16の30乗という途方もな

い数になるのでいくらわが国のレセプト件数が年間 18 億件とはいえ,全レセプトを特定できる固有番号をふるこ

とが可能である(本稿で示すレセプトは架空のものであり,この30ケタの暗号も筆者による創作)。

4,電子レセプトと紙レセプトの関係

電子レセプトは紙レセプトの体裁をなるべくそのままコード化翻訳している。以下に両者を対比させつつ電子

レセプトの仕様を解説する。

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●IR(医療機関)

IR,審査支払機関,都道府県,点数表,医療機関コード,診療科コード,名称,請求年月,マルチボリューム識別,電話番号

IR,1,13,1,1310130062,厚生労働病院,41802,00 とは,審査支払機関が支払基金(1),東京都(13)にある医科(1)の医療

機関コード1310130062の厚生労働病院から平成(4)18年2月請求されたレセプト,という意味。マルチボリュー

ム識別は,磁気媒体が 1 枚の場合は 00,2 枚目以降は 01,02 というふうに記載される。電話番号は略されることも

ある。

●RE(レセプト共通)

RE,レセプト番号,レセプト種別,診療年月,氏名,性,生年月日,給付割合,入院年月日,病棟区分,一部負担金,特記事項,

病床数,カルテ番号,割引単価,予備,予備,個別診療科(基金と協議の上,必要に応じ診療科コードを記録)

RE,55,1116,41711,樋口 一葉,2,3220725,,,,,,199,1116 55,,,,01 とは,厚生労働病院にこの月提出された 55 番目

のレセプト,レセプト種別は1116(医科・医保単独・家族・入院外),平成17年11月診療分の樋口一葉(姓名間に空

白挿入),女(2),昭和22年7月25日生,199床病院,カルテ番号は内243の意味(レセプト種別コードと診療科コード

は「電子レセプト作成の手引き」にそれぞれ別表1,3として掲載されている)。

●HO(保険者)

HO,保険者番号,被保険者証記号,同番号,診療実日数,合計点数,(予備),食事療養回数,食事療養金額,職務上,証明書番

号(記載略),一部負担金額,国保減免区分(記載略),国保減額割合(記載略),国保減額金額(記載略)

HO,06139992,55,55,1,1441,,,,,,,,,とは,保険者コード 06139992(東京都の健康保険組合)の記番号 55・55,診療実

日数1日,1441点の意味。

●SY(傷病名)

SY,傷病名コード,診療開始日,転帰修飾語コード,傷病名称,主傷病

SY,2500014,4171005,1,8002,,とは1型糖尿病(2500014),平成17年10月5日診療開始,転帰は継続(1),修飾語は「疑

い(8002)」の意味。従来,レセプトの傷病分析はひとつの主傷病で分類することが多かったが,電子レセプトで

は全傷病名がコード化して記載される。傷病名コードがふられていない未コード化病名については傷病名コード

を0000999として傷病名称に文字で入力することが認められている。実際にはコード化が面倒で傷病名を記載し

ている例も多く傷病分析の上で問題となる。

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●SI(診療行為)および IY(医薬品)

SI or IY,診療識別,負担区分,診療行為 or医薬品コード,数量,点数,回数

SI,12,1,112007410,,58,1 は,診療識別 12(再診),負担区分 1(医療保険のみ),診療行為コード 112007410(再診(病

院)),58 点 1 回。IY,21,1,610443013,2.000,16,56 は,診療識別 21(内服),医薬品コード 610443013(リピトール錠

5mg)2錠16点56回の意味。

診療行為,医薬品そして特定材料(TO),コメント(CO)の4レコード識別は合わせて摘要欄情報と呼び,レセプ

ト情報の心臓部分である。これまでレセプトは診療月はわかっても各薬剤や診療行為が何日に投与されたのかわ

からないという限界があったが,2012 年4月診療分より全レセプトについて,各月の何日に各何回提供された

記入されるようになった。診療行為も医薬品も7列目の回数と実施日の回数の合計が一致するようになっている。

5, 辞書(マスター)

医薬品,診療行為といったデータはコード化されており,データを判読するにはコードを翻訳する「辞書」が必

要となる。コードといってもたとえば都道府県コードのような単純かつ不変なものは,記録条件仕様の中で別表

として示される。しかし診療行為や医薬品のような厖大,複雑かつ頻繁に更新されるものはそれ自体独立したコ

ード体系として整備される。情報科学ではこうしたコード体系をマスターファイル,あるいは単にマスターと呼

ぶ。レセプトデータの中のレコード識別はアルファベット2文字で表されるが,マスターファイルはアルファベ

ット一文字で表される点に留意。B(ビ)はビョウメイ,Yはヤクザイと容易に覚えられる。

マスターには,傷病名,診療(調剤)行為,医薬品,特定機材,修飾語等以下のものがあるが,全てユニークな数字になっ

ている。たとえば9ケタの数字でヒトケタ目が6なら医薬品,7なら特定器材である。それゆえ単にコードだけが

必要なら全てのマスターファイルを結合してグランドマスターファイルにすることも可能である(マスターファ

イルのフォーマットはそれぞれ異なるが)。

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レセプト情報の心臓部である摘要欄は,これらマスターに含まれるコードで満たされる。

●マスターファイルと仕様説明書のダウンロード

マスターはいずれも厚生労働省保険局のサイト(http://www.iryohoken.go.jp/shinryohoshu/downloadMedu/)か

らダウンロードできる。

2008年版医薬品マスターは18115品目もの医薬品が収載されている。しかも単に医薬品コード610443074が

「タミフル 75mg カプセル」という名称であることに翻訳するだけでなく,309.1 円という薬価にも翻訳できな

ければならない。その他を加え,一つの医薬品に実に34項目もの情報が含まれる。Excelで開いても34列の何列

目に薬価が記載されているのかを知らねばならない。そのためにファイルレイアウトのファイルも提供されてい

る。そのファイルレイアウトにもコードが使われており,いわば辞書を理解するための辞書も必要になる。その辞

書の辞書が「マスターファイル仕様説明書」であるが,この文書は保険局サイトではなく支払基金サイト

[http://www.ssk.or.jp/tensuhyo/kihonmasta/]で提供されている。

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以上の他,保険者のマスターについては㈱社会保険研究所が「保険者,公費負担者番号・記号表」(7600 円)とし

て毎年刊行しており,磁気媒体でも販売している(新規価格は126,000円,更新84,000円)。

全国の医療機関コードを網羅するマスターファイルはつい最近までは一般には入手が困難だったが,幸にも

2010年になって保険医療機関の指定・監督を行う地方厚生局がそのサイトでPDFファイルで提供するようにな

った。リンクは以下の通り。

【参考】厚生局サイトの保険医療機関一覧表

●北海道(医歯薬別に小さいファイルに分割されている)

http://kouseikyoku.mhlw.go.jp/hokkaido/gyomu/gyomu/hoken_kikan/code_ichiran.html

●東北(東北厚生局管内の保険医療機関・保険薬局の指定一覧(全体:平成22年1月1日現在)各県とも医歯薬がひとつのファイルになっている。

http://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tohoku/gyomu/gyomu/hoken_kikan/index.html

●関東信越(関東信越厚生局管内の保険医療機関・保険薬局の指定一覧)

http://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/gyomu/gyomu/hoken_kikan/index.html

●北陸東海(コード内容別医療機関一覧表)医歯薬にわかれている

http://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/gyomu/gyomu/hoken_kikan/shitei.html

●近畿(近畿厚生局管内の保険医療機関・保険薬局の指定一覧(全体))

東北と同様,医歯薬が県ごとにひとつのファイルになっている(大阪府は14MB, 1492頁もある)。

http://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/gyomu/gyomu/hoken_kikan/index.html

●中四国(中国四国厚生局管内の保険医療機関・保険薬局の指定一覧(全体:平成22年2月))

中四国となっているが中国地方のみ。四国は下の支局。

http://kouseikyoku.mhlw.go.jp/chugokushikoku/gyomu/gyomu/hoken_kikan/index.html

●四国(四国厚生支局管内の保険医療機関・保険薬局の指定一覧(全体))

http://kouseikyoku.mhlw.go.jp/shikoku/gyomu/gyomu/hoken_kikan/index.html

●九州(九州厚生局管内の保険医療機関・保険薬局の指定一覧(全体)(平成22年1月13日更新))

http://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kyushu/gyomu/gyomu/hoken_kikan/index.html

6, コードを解きあかす

コードは一見無意味な数字の羅列に見えるが,仕組みを理解して「解読」すれば驚くほど多くの情報を提供して

くれる。ダ・ビンチコードのラングドン教授の言うとおり「シンボルは幾千の言葉を話す」のである。それゆえ

各種コードの基本構造を理解すればデータ活用の可能性はグンと広がる。

●医療機関コード

10 ケタのコードの最初の2 ケタは都道府県,3 ケタ目は点数表区分(医 1,特定健診・保健指導機関 2,歯 3,薬4,

老人保健施設5,訪問看護ステーション6),続く2ケタは郡市区を示す。郡市区コードを使えば医療機関所在地の

郡市区単位の分析が可能となる。なお医科歯科併設医療機関は医科歯科二つの医療機関コードを有しているので

注意。また現在のコード体系は 1976 年通達に基づくものであり,それ以前からある医療機関のコードは必ずし

もこのルールに従っていないので合わせて注意が必要。

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●傷病コード

傷病コードの最初の4ケタが傷病分類であるが,現在の電子レセプトコード体系の骨格が告示された1991年9

月 27 日当時の疾病分類は ICD9 であったため現在でもそのままである。残念ながら ICD9 は下記のようにコー

ドが大中小と体系だっていないため分析しにくい。

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1995年より ICD10が導入されたが,レセプト傷病コードはそのままとなった。そのため医療情報システムセン

ターが開発した ICD10対応電子カルテ標準病名マスターと並立して混乱が生じた。2001年7月支払基金に傷病

名マスター検討会(開原成允座長)が設置され2つのマスター統一の方針決める。2002年6月内容を一致させたマ

スターが完成した。ICD10 の方が ICD9 より体系だっていて分析しやすいため,傷病マスターファイル(B)には

ICD10コードが含められている(14列)。傷病マスターファイルと結合させれば大分類ならRIGHT(B.ICD10,2),

中分類ならRIGHT(B.ICD10,3)小分類ならRIGHT(B.ICD10,4)で容易に分析できる。

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●医薬品コード

医薬品コードは6で始まる9ケタで,2ケタ目は剤型(内服薬1,注射薬4そして外用薬6),続く3ケタは薬効分類

を示す。3ケタの薬効分類は総務省が定める日本標準商品分類に基づき,最初の1ケタは大分類,2ケタ目は中分類

そして3ケタで小分類という階層構造になっているのでわかりやすい。

例)625抗ウイルス薬(作用部位,目的,薬効)

62 化学療法剤(成分又は作用部位)

6 病原生物に対する医薬品(用途)

日本標準商品分類は,全ての商品に総務省が分類番号を付与しているもので,総務省統計局サイトで検索できる

[http://www.stat.go.jp/syohin/Search/Search.aspx]。

たとえば 87396 というコードは医薬品(87)→代謝性医薬品(3)→その他代謝性医薬品(9)→糖尿病薬(6)とたどれば

糖尿病薬であることがわかる。最も細かい分類では,スルフォニル尿素(1),ビグアナイド(2)そしてその他(9)と

3つに分類される。実際にはもっと多くの種類の糖尿病薬が開発されているが,残念ながら商品分類はあまり頻

繁には改定されないので現時点ではここまでの薬効分類しかできない。

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レセプトの医薬品コードで困るのは,一部医薬品の薬効分類に040~047という全く異なる番号が振られている

点。たとえば抗ウイルス薬のタミフルの医薬品コードは610443074と,薬効分類が本来の625ではなく044とな

っている。さて,医薬品は同一製品にもレセプト医薬品コードの他に薬価基準コードという英字を含む 12 ケタの

別のコードも付与されており,医薬品マスターには32列目に記録されている。このコードは最初の4ケタが薬効

分類なので,薬効分類をするときは薬価基準コードを使う。たとえばタミフルの薬価基準コードは 6250021M1027であり,最初の 625 という番号から抗ウイルス薬であることがわかる(抗ウイルス薬はこれより細かい分類

はなく 6250のみ)。

薬価基準コードの仕組みは以下のとおり。ジェネリック品とブランド品が代替できるのは薬価基準コードの左

9ケタが同一の場合である。

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●診療行為コード

9ケタの2~3ケタ目は診療識別で,紙レセプト左の点数欄に記載場所を示す。8ケタ目は取扱区分で,基本項目

(1)は初診料や再診料といった項目,加算項目(7)とは乳幼児加算や深夜加算等それのみでは単独で請求できない項

目,そして合成項目(3)とは「乳幼児の深夜の再診」のように基本項目と加算項目からデータ分析の便宜上派生的

に生成されるものである。

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7,レセプトデータをアクセスに読み込む

アクセスを立ち上げ上のメニューより「外部データ」→「テキストファイル」を選択し,csv ファイルを読み込

む。レセプトデータは雑多であり,全ての行(レコード)に共通するのは最初の4ケタ(フィールド)のみである。そ

れゆえ,読み込み時には最初の4フィールド名を以下のように定義する。フィールド名は自由に定義してよいが,

とりあえずデータ識別(DS),レセプト内通番(TSUBAN),枝番(EDABAN)そしてレコード識別(RS)とせよ。それ

以降のフィールド名はアクセスが自動的に「フィールド5」・・・とふっている。このままでもよいがフィールド

名はF2・・・というふうに修正した方がよい。なぜフィールド5をF2にした方がよいか?というと「作成の手

引き」を参照するときに見やすいからである。またデータ型は通番と枝番以外はテキスト型に統一しておく。テ

キスト型だと数値をそのままでは計算できないが,たとえばF3というフィールドはABS(F3)という関数を使え

ば数値に変換できる。

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実際のデータ分析では「作成のてびき」を頻繁に参照するが,その時にフィールド名と番号を合わせておけばわ

かりやすい。

「作成の手引」を頻繁に参照するのは煩雑なので,何番目の列が何なのか,すぐにわかるように下のような早見表

を作成しプリントアウトして座右に置くのも一方である。

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通番を挿入する。アクセスでは「主キーを自動的に設定する」をチェックしておけば ID というフィールド名で

自動的に挿入してくれる(SQLServerにはこの機能は無いのでやっかい)。次に「インポート先のテーブル名」を

聞かれるがここでは簡単なMEDという名称に変えておこう。

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8,レセプト IDや分析に便利なフィールドを挿入する

支払基金から提供されるレセプトデータを分析する上での最初の困難は,各行にどのレセプトかを特定させる

IDが振られていないことである。また実際の分析では,性別,診療年月別,個人別,入院外来別でやることが多い。こ

れら重要な分析項目は「レセプト共通レコード(RE)」に入っているのでそれなら最初からこれらのフィールドを

各行に追加しておくと後々便利である。

●フィールドの追加

読み取ったMEDテーブルを右クリックしてデザインビューを開き,RSの下で右クリックして6行を挿入する。

フィールド名はRSPTID,PID,SHINRYOYM, SEX,DOB,NYUGAIとしよう。

なお科学院では慣例的に以下のような略語を使用している。担当者が変わってもとまどわないようにするためで

あり,本コースでもその変数を使うのでそれに統一されたい。

RSPTID・・・レセプト ID(これにより同一レセプトを識別する)。これが最初の作業であり,RSPTID

がなければ以下の作業は行えない。

PID・・・personalID,個人識別。レセプト共通レコード(RE)の 5 列目(F5)に氏名がある。暗号に変換

されていたらその暗号がPIDになる。

SHINRYOYM,SEX,DOB・・・診療年月,性,生年月日。レセプト共通レコードの4,6,7列目。

NYUGAI・・・入院レセプトはレセプト種別(レセプト共通レコードの3列目)の末尾が奇数,外来は偶

数なので,それぞれ0,1に変換して区別する。

SQL 文の基礎

AccessでもSQL Serverでも,SQL(structured query language,構造化された問合わせ言語)と呼ばれるデー

タベース言語を用いる。文字通り複雑で膨大なデータから条件にあったデータのみを抽出する言語である。

Access,SQL Server,オラクル等で若干違いはあるが 90%くらいは同じなので Access で習得したらすんなり

SQL Serverでも使用できる。

SQLは英語であり,中学校レベルのボキャブラリーがあればできる(なお大文字小文字は区別しない)。

表示させるにはまず,作成→クエリデザインをクリックし,使用するテーブル名をクリックして「閉じる」。する

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とクエリ1というシートが表示されるので左上の「表示」をプルダウンしSQLビューを選択する。

するとあらかじめ

SELECT * FROM MED

と表示されるのでそのまま左上の!をクリックすると,テーブルMED

の中身がそのまま表示される。元のSQLビューに戻すには左上の「表

示」をプルダウンし,SQL ビューに戻せばよい。後は最初に表示され

たSQL文を自在に修正すればよい。

最も基本的なもの。テーブル名に含まれたある変数名を全て表示せよ

SELECT 変数名(, 変数名) FROM テーブル名

例)SELECT ID, RS, F2 FROM MED

一定の条件に見合うものだけを抽出するにはテーブル名の後に

WHERE 条件を追加する。

SELECT 変数名 FROM テーブル名 WHERE 条件

上の基本文例だけでSQLの半分近くを理解したことになる。

レセプト共通レコード(レコード識別がRE)だけ表示させたかったら

例)SELECT ID, RS, F2 FROM MED WHERE RS=RE

しかし,これを実行すると右のようなエラーがでる(RE って何かわかりません!という SQL からのメッセージ)。

SQL ではデータ型(数値か文字か)を厳格に区別している。RS フィールドのデータ型は文字列であり,文字は必ず

シングルクオーテーションでくくらなければならない。

SELECT ID, RS, F2 FROM MED WHERE RS=’RE’

●レセプト IDの挿入

変数にデータを挿入するにはUPDATEというコマンドを用いる(一旦UPDATEしたら元には戻せないので注

意)。

UPDATE 更新するテーブル名 SET 更新する変数名=挿入するデータ

具体例)

UPDATE MED set RSPTID=ID-TSUBAN

●その他のレセプト共通レコードの挿入

患者の氏名,性,生年月日,診療年月,レセプト種別といったレセプトの基本情報はレセプト共通レコード(レコード

識別が RE)に入っている。これら項目は,分析で頻繁に使うので,全レコードに追加する。RSPTID を挿入したら,

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レセプト共通レコード(レコード識別が RE でかつデータ識別が1である(理由は前述)であるレコード)を抽出して RE

という別名を与え, 全レコードと inner joinし,挿入する。

レセプト共通レコードを抽出するには

SELECT * from MED where RS=’RE’ and DS=’1’

これ全体を()でくくり as REとつけるとカッコ内の結果がそのままREというテーブルとして扱われる(以下,分かり

やすくするためカッコ内のSQL文は小文字で表記する。SQLでは大文字も小文字も区別しないので見やすくするため

に自由にかえてよい)。MED テーブルと RE テーブルを同一レセプト ID 同士で結合させ,たとえば診療年月

(SHINRYOYM)はRE.F4, 患者ID(PID)はRE.F5をそれぞれ挿入すれば全ての行に診療年月と患者IDが挿入される。

この操作は下記のように,SETの後にカンマで区切って複数の操作を同時に行うことができる。

UPDATE MED inner join (select * from MED where RS=’RE’ and DS=’1’) as RE on MED.RSPTID=RE.RSPTID

SET MED.SHINRYOYM=RE.F4, MED.PID=RE.F5, MED.SEX=RE.F6, MED.DOB=RE.F7

inner join, left join, right joinの仕組みは以下の通り。onの後に,どの変数名が同じもの同士くっつけるか指定する。

複数のテーブルを,たとえば同一のレセプト(RSPTID)同士,同一の個人(PID)同士と自在に JOIN(結合)できるところ

が SQL の真骨頂である。たとえばジェネリック医薬品かどうかの区別が医薬品マスターファイル(Y)に含まれており,

ジェネリック品とそれ以外の薬を抽出したければ MED テーブルの医薬品レコードと医薬品マスターファイルとを同

一医薬品コードで結合させればよい。

●NYUGAIの挿入(以下のSQLを2回にわけて行う)

医科レセプトでは入院レセプトと外来レセプトの区別も重要なので NYUGAI という変数を挿入し,入院は 1,外来は 0

を挿入する。入院か外来かの区別はレセプト種別(レセプト共通レコードの F3)の右端 1 桁が奇数は入院,偶数は外来な

ので区別できる。右端1桁が1 の条件はRIGHT(変数名,1)=1で表せる。さらに‘1’,’3’,’5’,’7’,’9’のいずれか,を意味する場

合は

RIGHT(変数名,1) in (‘1’,’3’,’5’,’7’,’9’)

で表せる(文字列なのでシングルクオーテーションで囲む。必ず半角!)。ACCESS は CASE 文がないので,下記のよ

うに二つのSQLを実行しなければならない。

UPDATE MED inner join (select * from MED where RS=’RE’ and DS=’1’) as RE on MED.RSPTID=RE.RSPTID

SET MED.NYUGAI=’1’ WHERE RIGHT(RE.F3,1) IN (‘1’,’3’,’5’,’7’,’9’)

UPDATE MED inner join (select * from MED where RS=’RE’ and DS=’1’) as RE on MED.RSPTID=RE.RSPTID

SET MED.NYUGAI=’0’ WHERE RIGHT(RE.F3,1) IN (‘0’,’2’,’4’,’6’,’8’)

SQL Serverとの違い

上の式はSQLサーバーでは以下のように表記される。ACCESSもSQLサーバーも90%以上同じだが,微妙に異なる

のでSQLサーバーで分析する場合は違いに注意されたい。CASE式は,奇数なら1,偶数なら0を一つの操作で行え

るきわめて便利な機能だが SQL サーバーにあるがACCESS には無い(だからACCESS では上述のように奇数の場合

と偶数の場合と二回行なわねばならなかった)。

UPDATE MED SET SHINRYOYM=RE.F4, PID=RE.F5, SEX=RE.F6, DOB=RE.F7 from MED inner join (select *

from MED where RS=’RE’ and DS=’1’) as RE on MED.RSPTID=RE.RSPTID

UPDATE MED SET NYUGAI=CASE WHEN RIGHT(RE.F3,1) in (‘0’,’2’,’4’,’6’,’8’) THEN ‘0’ ELSE ‘1’ END from

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MED inner join (select * from MED where RS=’RE’ and DS=’1’) as RE on MED.RSPTID=RE.RSPTID

【課題1】男女別の合計点数を求めよ

1) 点数は保険者(HO)レコードのF6にある。

SELECT F6 FROM MED WHERE RS=’HO’

2) 点数を合計するにはSUM関数を使う

SELECT SUM(F6) FROM MED WHERE RS=’HO’

3) 男女別に合計するにはGROUP BYを使う

4) SELECT SEX, SUM(F6) FROM MED WHERE RS=’HO’ GROUP BY SEX

【課題2】主傷病名称ごとの合計点数を求めよ

傷病はSYレコード,点数はHOレコードそして傷病名は傷病マスターファイル(B)にある。inner joinを 3つ入れ子に

する。

1) 傷病コードは傷病(SY)レコードのF2にある。

SELECT F2 FROM MED WHERE RS=’SY’

2) 主傷病かどうかはF7にある(主傷病は01,その他空白)

SELECT F2 FROM MED WHERE RS=’SY’ and F7=’01’

3) 主傷病とその他傷病の数を求めてみる(count(*)とは単純に行数を数え

よということ)

SELECT F7, count(*) FROM MED WHERE RS='SY' group by F7

右のように主傷病は54あることがわかる。

4) MED テーブルと傷病マスターファイル B(傷病コード CODE,

傷病名称MEISHOと ICD10を含む)を結合させる。

SELECT * from (select * from MED where RS=’SY’ and F7=’01’)

as SY inner join B on SY.F2=B.CODE

5) 上の 4)全体をカッコでくくり別名として SSB(主傷病の略)とし

て HO と同一レセプト(RSPTID)同士結合させる(点数は査定さ

れることが多いので HO には DS=’1’つまり医療機関からの請求

点数を条件に追加する)

SELECT * FROM (select * from MED where RS=’HO’ and DS=’1’) as HO inner join (4)をそのまま) as SSB on

HO.RSPTID=SSB.RSPTID

6) 上記のSQLの初めを SELECT SSB.MEISHO, SUM(HO.F5)に変え,末尾にGROUP BY SSB.MEISHOを追加

SELECT SSB.MEISHO, SUM(HO.F5)

FROM (select * from MED where RS=’HO’ and DS=’1’) as HO inner

join (4)をそのまま) as SSB on HO.RSPTID=SSB.RSPTID

GROUP BY SSB.MEISHO

7) もし点数の大きい旬に並べたかったら末尾にさらに ORDER BY

SUM(HO.F6) DESCを追加する

【課題3】主傷病名称ごとの集計では44もあったので,ICD10の左1桁のアルファベットで集計する。

A 感染症 N 腎尿路生殖器系の疾患B ウイルス・寄生虫症 O 妊娠,分娩及び産褥C 悪性新生物 P 周産期に発生した病態D 良性新生物・血液免疫疾患 Q 先天奇形,変形及び染色体異常E 内分泌,栄養及び代謝疾患 R 症状,徴候及び異常臨床所見F 精神及び行動の障害 S 損傷,中毒G 神経系の疾患 T 他の外因の影響H 眼・耳の疾患 V 交通事故I 循環器系の疾患 W 他の事故J 呼吸器系の疾患 X 環境要因K 消化器系の疾患 Y 不明の外因L 皮膚及び皮下組織の疾患 Z 保健サービスの利用M 筋骨格系及び結合組織の疾患  

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調剤レセプト分析

調剤レセプトのしくみ

調剤レセプトの基本単位は「処方」であり,医師はひとつの処方箋で複数の処方を行うこともある。以下

の例では,一人の医師が 3 回処方箋を発行し,各処方箋に 3 つの処方が含まれている。この場合,薬局の

処方箋受付回数は3回(医科レセプトの日数に相当)となるが,処方した医師も患者も同一でも,その患者が

毎回同じ薬局で調剤を受けるとは限らない。したがって,別の薬局から同一の処方に基づく調剤が請求され

ることもある。

●処方・・・処方には剤形,用法(服用時点および服用回数),医薬品が記載される。以下の例では剤形は内

服,用法は「一日一回就寝前」とある。医薬品は複数のこともあるが,保険診療では,内服薬の場合,用法

が同一であるものは一剤として扱う。保険診療では薬剤料は「所定単位」の薬価を「五捨六入」して所定単

位点数とする。内服薬の場合一剤一日分,頓服薬は一回分,外用薬は 1 調剤分が所定単位である。以下の

例では,アローゼン1g (薬価8.6円),コンスタン0.4mg錠(11.1円),バイミカード10mg錠(88.4円)の3種

類で1剤とされ,その一日分薬価(108.1円)を五捨六入した11点が単位薬剤料点数となる。

●調剤・・・医師の処方に基づいて薬剤師は調剤する。同一処方でも医師は異なることがあるので調剤レセ

プトの頭には医師の氏名と番号が記載され,処方箋ごとに医師番号がふられる。調剤情報は 1 行なので同

一行に記載される。調剤数量とは,所定単位を何単位分調剤したかを示し,内服薬なら何日分,頓服薬なら

何回分か,意味する。単位薬剤料点数×調剤数量がその調剤の薬剤料点数となる。以下の例では11点×14

日分=154点である。他に調剤料(63点)と加算料がつく。向精神薬であるコンスタンが含まれているので向

精神薬加算8点がつく。

●医薬品・・・所定単位に含まれる薬剤がリストアップされる。記載方法は医科と同様である。規格が複数

ある薬剤は必ず規格も記載する。たとえばコンスタンは0.4mgと0.8mgの2種の規格があるので処方され

たものが0.4mgならそう記載する。用量は所定単位量,たとえば内服なら一日量である。下の処方3はFK

散3.9gを3回服用なので,一回に服用する量は1.3gとなる。

電子調剤レセプトのしくみ

電子調剤レセプトの中身は医科と同様で,csv と呼ばれるテキストファイルである。上の調剤レセプトが

電子化された内容をパソコンのメモ帳で開くと以下のようになる。左端のアルファベット 2 文字はレコー

ド識別と呼ばれ,その行が調剤レセプトのどの情報を含んでいるかを示している。

トップの YK は薬局情報レコード,RE はレセプト共通レコードであり,患者の氏名,性,生年月日なら

びに処方した医療機関および医師氏名(最大 20 人まで記録可)が記録される。HO は保険者レコードで,保

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険者番号,患者の被保険者証の記号,番号,処方箋受付回数そして請求点数が記載される。これらレコード

は各レセプトに一つだけ記載され,RE・HOレコードで患者個人の特定が可能となる。

その後に続く,SH(処方),CZ(調剤),IY(医薬品)レコードは複数回出現する。ワクで囲った部分が上のレ

セプトの 2 番目の処方を示している。SH レコードは必ず一つだが,CZ および IY レコードは複数回出現

し紙レセプトに記載された情報がコード化されて表示されている。

下図は紙レセプトと csvファイルを対比させたもの。

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保険診療では,複数の薬剤を処方しても「服用時点と回数が同一であるものは一剤とみなす」ため,上の例で

は「一日一回朝食後」に服用するロンゲスとフルイトランは合わせて 1 剤として薬剤点数 8 点(80 円)とな

っている。それが4月7日,16日,26日にそれぞれ14日分(調剤数量)調剤された。処方日と調剤日が異なる

(処方日が必ず前)こともあるが,医師が診断した日の把握を重視するなら処方日で集計することとなる。

調剤レセプト分析のための前処理 csvファイルのACCESSへのインポートは医科レセプトと同様,DS,TSUBAN, EDABAN,RS,F2,F3・・・

と変数名をつけてインポートする。しかし医科レセプトはF46くらいまでだったが調剤レセプトは最大149

もある。これは薬学管理料(レコード識別 KI)が 147 フィールドもあるためだが実際にはそんな長いレセプ

トはめったになく全てインポートすると厖大なサイズになるので,通常は F12(レセプト共通レコードの医

療機関コードの記録位置)までで十分である。

インポートすると医科レセプトと同様の方法(RCを別テーブルへ抽出)でレセプト IDを全行に挿入する。

医科レセプトはそれで分析にかかれたが,調剤レセプトはさらにやっかいな処理が必要となる。通常調剤レ

セプトは薬効分類とか薬剤ごとに分析することが多いだろうが,調剤レセプトは医薬品レコード(IY)だけと

りだして分析しても,その患者にどういう薬が投与されたか意外は何もわからない。すなわちたとえばタ

ミフルを投与されたことのある者をリストアップせよ,というだけの分析ならレセプト IDをふってwhere

RS=’IY’で抽出すれば可能だが,薬効分類ごとの薬剤点数を算出せよ,となってくると不可能である。その

ためにはさらなる前処理が必要となる。

上でみたように,処方,調剤そして薬剤レコードが順番にならんでいるだけで,どの薬剤がどの処方(服

用方法)によりどれだけ調剤されたか(数量,たとえば14日分等)がわからない。全ての調剤も薬剤も処方に

基づくので,まず全ての調剤(CZ)と薬剤(IY)レコードに処方 ID(SHOHOID.どの処方かを識別する ID)を挿

入しなければならない。処方 IDとはSHレコードの ID番号とする。

この作業は,2段階を踏まねばならないので複雑である。すなわち

1) CZ と IY レコード(CZIY という別名をつける)の ID とSH レコード(SH という別名をつける)の ID の

対応を示す蝶番テーブル(テーブル名はHINGEとする)を作成・保存する。

2) PHAとHINGEテーブルを inner joinし,処方 IDにSHレコードの IDを挿入する。

HINGEの作成にはおなじみの inner join ではなく cross joinを使用しなければならない。下図をジック

リみて,inner join, left join そして cross joinを理解されたい。なお cross joinはA,Bというふうに2つの

テーブルをカンマで区切ることで作成する。

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1)は以下のようなSQLを使う。

select CZIY.ID as CZIYID, MAX(SH.ID) as SHID into HINGE from

(SELECT * from PHA where RS='SH') as SH,

(SELECT * from PHA where RS in ('CZ','IY')) as CZIY

where SH.RSPTID=CZIY.RSPTID and SH.ID<CZIY.ID group by CZIY.ID

2)は

UPDATE PHA inner join HINGE on PHA.ID=HINGE.CZIYID set PHA.SHOHOID=HINGE.SHID

同一の処方 IDをふったら,同一処方 IDごとに,調剤×薬剤の総当たり組合せ(=直積, cross join)を作成す

る。処方,調剤,医薬品の各レコードの関係は下のようなリボンを想像するとわかりやすい。医薬品と調剤

は処方を要としてつながっている。よって,たとえばある薬剤 2 の調剤数量の合計をしりたければ IY と

CZ を同一の処方 ID 同士で総当たりをつくり CZ に含まれる調剤数量を合計しなければならない。概念的

には

SELECT IY.医薬品コード, SUM(CZ.調剤数量) from IY, CZ where IY.処方 ID=CZ.処方 ID group by IY.医薬品コード

となる。

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DPCレセプト分析

DPC はいうまでもなく急性期病院の対象疾患患者に対する包括払いシステムで,包括払いなら本来はレセ

プトに出来高内容を記載する必要はない。しかし,たとえば小児患者に片っ端から敗血症の合併症をつけて

より高額の DPC 請求をする,いわゆる「アップコーディング」が問題になり,2009 年1月よりコーディ

ングデータ(レコード識別 CD)と呼ばれる出来高部分も含めなければならなくなった。出来高医科レセプト

でいうと摘要欄(‘SI’, ‘IY’,’TO’, ‘CO’)に相当するものだが,医科レセプトの摘要欄は医薬品や診療行為レコー

ドでフォーマットがまちまちで非常に分析しにくい。その点,DPC レセプトのコーディングデータは分析

しやすい体裁となっている (支払基金はDPCレセプトのコーディングデータを集計して出来高点数を算出

し,DPC点数と著しく乖離していると,アップコーディングでは?と審査している)。

●出来高とDPCの混在

DPC でやっかいなことは,同じ病院の同じ患者でも同一月に DPC レセプトと通常の出来高レセプトが

混在することがある,こと。DPC 病院に入院したら全ての患者が DPC になるのではなく,あくまで特定

の疾患のみであり,また当初DPCで入院しても特定入院期間をすぎるとその日から出来高にかわる。その

場合は同一月に DPC レセプトと出来高レセプト(入院レセプトと呼ぶ)を別々に出す。そして混在する場合

は両者を併せた総括レセプトも添付される。レセプト共通レコード(RE)に総括区分コード(F19)があり,そ

れによってこのレセプトは DPC 単独か,出来高付きかを判断できる(DPC レセプト作成の手引き3~4

頁参照)。

こうした混在レセプトはDPCの3~4割もあり,支払基金のサンプルデータでも30件中5件がそうである。それゆえ下にのべるような追加的な前処理が必要となる。

DPC レセプトのレセプト共通レコードのみ抽出したら下のように,きわめて複雑であることがわかる。19

列目の総括区分の重要性がわかる。

Page 28: レセプト分析法 マニュアル · 2017-01-25 · とにレセプトを作成するが,初・再診料は1 診療科で のみしか請求できない。その場合,初・再診料の請求のないレセプトでも日数は記載される。

国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部

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医科,調剤レセプトではまずRSPTID列を追加し

UPDATE MED set RSPTID=ID-TSUBAN

で各行がどのレセプトに属すか判別する RSPTID を挿入したが DPC ではこれだけでは分析できない。な

ぜなら総括レセプト,DPCレセプトそして出来高(医科入院)レセプトが同一RSPTIDに混在するからである。

異なるレセプトを区別するのはレセプト共通レコード(RE)であることが上からもわかるので,RSPTID に

RE.IDを挿入する。そのためには

1) まず上のSQLでRSPTIDを挿入する

2) DPC の各 ID(DPCID)と直前の RE の ID(REID)を対応づける蝶番ファイル(HINGE)テーブルを下の

SQLにより保存する。

SELECT DPC.ID as DPCID, MAX(RE.ID) as REID into HINGE from

DPC, (select * from DPC where RS='RE' and DS='1') as RE

where DPC.RSPTID=RE.RSPTID and DPC.TSUBAN>=RE.TSUBAN group by DPC.ID

3) そしてRSPTIDをHINGE.REIDで置き換える

UPDATE DPC inner join HINGE on DPC.ID=HINGE.DPCID set DPC.RSPTID=HINGE.REID

出来高レセプトと DPC レセプトは構造が全く異なっており混在していると分析しにくい(たとえば,診療行

為の実施日や摘要欄等)。そこで純粋なDPC でないレセプト(総括区分 1 と 3)のものはDPC テーブルから

分離して別名(たとえば DEKIDAKADPC)で保存し,DPC テーブルから削除した方がよい(また総括レセプ

トもレセプト分析では通常必要ないのでこれも削除する)。

SELECT * into DEKDAKADPC from DPC where RSPTID in (select RSPTID from DPC where

RS='RE' and F19='3')

DELETE from DPC where RSPTID in (select RSPTID from DPC where RS='RE' and F19 in (‘1’,’3’))

これらの操作でDPCテーブルは「晴れて」純粋なDPCレセプトの集まりとなる。

●コーディングデータのフォーマット

「作成のてびき」96 頁にあるように,コーディングデータは,診療行為,医薬品,特定器材,コメント等

出来高レセプトなら‘SI’, ‘IY’,’TO’, ‘CO’と別々のフォーマットで記録されるもので全て共通のフォーマット

になっており,分析しやすくなっている。

医薬品(Y),診療行為(S)等のコードは全て9ケタで,最初のヒトケタが以下のようになっているため,単にど

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ういったコードなのかさえ把握できればよいのなら,Y, S, T,Cのマスターファイルをいちいち使い分けな

くても全コードを一つにしたグランドマスターファイルでまとめて紐付することも可能である。

全コードは以下のようにF6に配置されており,実施年月日はF2に配置されている。 1・・・医科診療行為 3・・・歯科診療行為 4・・・調剤行為 6・・・医薬品 7・・・特定器材 8・・・コメント

レセプトの限界は,診療行為はわかってもその行為が診療月の何日に実施されたのかわからないことにある。

しかしDPCレセプトのコーディングデータ(CD)には,各診療行為が何日に実施されたのかの実施日がレコ

ード識別の次に含まれている。これにより入院中の何日にどの薬品が投与されたかどの処置が行なわれたか,

の分析ができる。

※2012 年4月より全診療行為の実施日を記載義務づけられるので出来高レセプトでも同様の分析が可能になる。ただし,DPC レセプトとは異なり,1日から 31 日までズラリと並べた日計表の形式である(本マ

ニュアル8ページ参照)。