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1 アメリカにおける2012年農業法をめぐる 動きについて-経営安定対策を中心に- 農林水産政策研究所 国際領域 2108回定例研究会 報告資料(2010.7.202 2108農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.201. はじめに 2. アメリカ農業の現状 3.経営安定対策の現状 4. 2012年農業法をめぐる動き 5. おわりに

アメリカにおける2012年農業法をめぐる 動きにつ …...1 アメリカにおける2012年農業法をめぐる 動きについて-経営安定対策を中心に-

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1

アメリカにおける2012年農業法をめぐる

動きについて-経営安定対策を中心に-

農林水産政策研究所 国際領域

吉 井 邦 恒

第2108回定例研究会報告資料(2010.7.20)

2

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

報 告 事 項

1. はじめに

2. アメリカ農業の現状

3.経営安定対策の現状

4. 2012年農業法をめぐる動き

5. おわりに

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

1.はじめに

4

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

1-1 農業法とは

農業法は、恒久法である1938年農業法と1949年農業法を修正する形で

制定され,一定期間(最近では5,6年)のアメリカの農業政策の全体的な方向を決めるもの

農業法はほとんどの農業政策分野を含む一括法(omnibus bill)方式に

より具体的なプログラムの内容や財源措置を規定

一括法方式によって、議会、大統領府、利害関係者が農業・食料政策に関わる今日的問題をより包括的な形で解決(2008年農業法では、Title Ⅰ~TitleⅩⅤ)すること、また、既存の独立法のうち現状に合わなくなっ

たものや法律として独立法を制定できないものに対応することが可能

ただし、一括法のため、法案の内容に関連する利害関係の調整に時間を有することが多く、また、最近では、法案の賛否が接戦になる傾向

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

1-2 これまでの主な農業法

1933年:農業収入安定・確保(価格支持融資と生産調整の

組合せ)

1973年:不足払いの導入

1985年 環境・保全支払いの導入

1996年 直接(固定)支払いと作付け自由化への移行

→不足払いと生産調整の廃止

2002年 価格変動対応型支払い(CCP)の導入

2008年 収入変動対応型支払い(ACRE)の導入

2008年農業法の期限は2012年9月30日

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

2.アメリカ農業の現状

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

2-1 アメリカ農業の現状(項目)

財政状況

農業構造

農業所得

政府支払い

WTO

8

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

-1500

-1000

-500

0

500

1000

1970

1972

1974

1976

1978

1980

1982

1984

1986

1988

1990

1992

1994

1996

1998

2000

2002

2004

2006

2008

2010

2012

2014

2016

2018

2020

Actual 2002.1予測 2007.1予測 2010.1予測

Billion $

-14142009年

資料:CBO,The Budget and Economic Outlook.

2-2 連邦政府の財政状況(予測と現実)

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

2-3 農業関係予算の内訳

栄養 農産物 作物保険環境保全・森林 地域開発 試験研究 安全・規制 その他 合計

2009 77,848 15,255 7,962 8,670 1,735 2,607 3,394 546 118,017(構成比) 66.0 12.9 6.7 7.3 1.5 2.2 2.9 0.5 1002010予測 97,945 18,188 7,033 10,406 3,033 2,998 3,751 781 144,135(構成比) 68.0 12.6 4.9 7.2 2.1 2.1 2.6 0.5 100

(単位:百万ドル,%)

資料:USDA, FY 2011 Budget Summary and Annual Performance Plan .

10

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

2-4 日米の農業比較(2008)

日 本 アメリカ農家戸数 販売農家   175万戸 220万戸

(主業農家 36.5万戸)農地面積 販売農家     2.2ha 169ha

(主業農家  5.1ha) [74ha]農業所得 販売農家   108万円 24,460ドル

(主業農家 420万円) 253万円農業生産額 8.5兆円 31.3兆円

作物69%,畜産31% 作物56%,畜産44%

資料:農林水産省『農業構造動態調査 』、『農業経営統計調査 』、『生産農業所得統計 』

USDA/NASS, ERS

注.1ドル=103.36円で換算

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

7.2

18.7

16.4

42.3

4

16.5

21.6

7

11.8

5

12.6

12.7

4.3

55.9

25.7

14.9

9.7

1.5

4.1

5.3

2.8

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

生産額

経営面積

農家数

リタイア農家 副業的農家 販売額10万ドル未満

販売額10~25万ドル 販売額25~50万ドル 販売額50万ドル以上

非農家経営

2-5 農家類型別の農業構造(2008)

資料:USDA/ERS

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

64 64126

391

490

801

563

165

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

リタ

イア

農家

副業

的農

販売

額10万

ドル

未満

販売

額10~

25万

ドル

販売

額25~

50万

ドル

販売

額50万

ドル

以上

非農

家経

平均

ha

2-6 農家類型別の平均農場面積(2008)

資料:USDA/ERS

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

-50

0

50

100

150

200

250

300

リタ

イア

農家

副業

的農

10万

ドル

未満

10~

25万

ドル

25~

50万

ドル

50万

ドル

以上

平均

千ドル

農外所得

農業所得

家計平均 6.8万ドル

2-7 農家類型別の農家所得(2008)

資料:USDA/ERS

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

2-8 主要農産物の農家受取価格

0

2

4

6

8

10

12

14

1990

1992

1994

1996

1998

2000

2002

2004

2006

'07.

2

'07.

4

'07.

6

'07.

8

'07.1

0

'07.1

2

'08.

2

'08.

4

'08.

6

'08.

8

'08.1

0

'08.1

2

'09.

2

'09.

4

'09.

6

'09.

8

09.1

0

09.1

2

10.

2

'10.

4

'10.

6

ドル/ブッシェル

大豆

小麦

とうもろこし

資料:USDA/NASS

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

2-9 農業純所得と政府支払い(1995~2009P)

資料:USDA/ERS

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009P

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

農業純所得 政府支払い 政府支払いの割合

Billion $%

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

2-10 農地の価格と地代

資料:USDA/NASS

1,340 1,400 1,460 1,5101,590

1,6601,750

2,060

2,300

2,530

2,7602,650

66.567.5

7071 71.6

73

76.578

79.577.5

85.5

90

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

60

65

70

75

80

85

90

95

100ドル/エーカー

地価

地代

ドル/エーカー

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

2-11 政府支払いと農業保険金の推移(実績)

資料:USDA/ERS,RMA

注.農業保険金は、生産者負担保険料を控除した金額である.

0

5

10

15

20

25

30

1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009P

直接支払い CCP 価格支持融資 保全管理 緊急援助 その他 農業保険金

Billion $

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

2-12 受給者1人当たり政府支払額(2007)

8.305 7.024 6.984 5.613 4.845

34.685

0

10

20

30

40

50

直接

支払

CC

P

LD

P/M

LG

保全

支払

特別

緊急

援助

農業

保険

千ドル

注.農業保険金は受給者支払保険料を控除した金額である.

資料:USDA/ERS,RMA

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

2-13 農業収入に占める政府支払いの割合

0

5

10

15

20

25

30

35

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

小麦 とうもろこし 果樹・野菜 肉牛

養豚 酪農 農家平均

20

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

2-14 現金農業所得に占める政府支払い

0

50

100

150

200

250

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

小麦 とうもろこし 果樹・野菜 肉牛

養豚 酪農 農家平均

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

2-15 AMSの通報状況

6.2 5.9 6.2

10.4

16.9 16.814.4

9.67.2

12.1 12.5

7.7 6.3

0

5

10

15

20

25

1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

Billion $

資料:WTO

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

2-16 綿花をめぐるブラジルとの紛争

ブラジルが2002年にアメリカの綿花補助金をWTO協定違反と提訴。WTO上級パネルは、2005年にブラジルの主張を認

める最終的な裁定

綿花の補助金(Step2)、価格支持融資、CCP等は、綿花の世

界価格を低下させている

その後、アメリカがWTO裁定を履行しているかを検証する遵

守パネル、ブラジルの報復措置を決定するための仲裁パネル設置の設置

2010年6月の合意で、輸出補助的プログラムの改善、技術協力基金として名年1.47億ドル拠出等により、ブラジルの報

復措置を回避

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

2-17 アメリカ農業の現状(まとめ)

2009年度は史上最大の財政赤字となり、厳しい財政状況

2006年末から農産物価格が高騰し2008年中頃にピークを迎えたが、その後下降ないし横ばい推移。高騰前の2006年頃

よりは高い水準を維持

高価格のため価格低下に対応した政府支払いは減少しているが、農業保険金は増加

WTOへ通報するAMSは低い水準。ブラジルとの紛争は敗訴。今後、価格支持融資、CCP等について所要の措置を講じる必要(2012年農業法対応?)

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

3.経営安定対策の現状

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

3-1 主な経営安定対策

価格所得政策 直 接 支 払 い

環 境 政 策 土壌保全留保計画(CRP)

価格変動対応型支払い

○○

R○

C○

R○C×

××

××

○○

×○

生産価格

注.表中、Rは収入保険、Cは作物保険を示す。

価 格 支 持 融 資 制 度

農 業 保 険

A C R E

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

3-2 2008年農業法によるパッケージ

従来通りのプログラムの組合せ

直接支払い

価格支持融資制度

価格変動対応型支払い

(CCP)

新たに選択可能になったプログラムの組合せ

直接支払い×80%

価格支持融資制度(ローンレート×70%)

ACRE(Average Crop Revenue

Election)

従来どおりの組合せが初期設定。ACREを含む

組合せは 申請により適用

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

3-3 直接支払いの概要

1996年農業法により、直接固定支払いの導入

「不足払い+生産調整」から「直接固定支払い+作付け自由化」へ

1回契約で1996~2002年度まで毎年度支払い(段階的に削減)

2002年農業法では、「直接支払い」

単年度契約で2002~07年度まで、毎年度支払い

支払対象作物(大豆等)の拡大と支払単価を引上げ

一回限りとして基準面積と平均収量の更新を実施

2008年農業法でも直接支払いは継続

支払額は減額(2009~11年まで2%削減 支払割合85%→83.3%)

28

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

3-4 価格変動対応型支払いの概要

価格変動対応型支払い(Counter-Cyclical Payments)を2002年農業法により導入

作物別に目標価格を設定し、当該年度の市場価格またはローンレートの高い方に直接支払いを加えた額が、目標価格を下回った場合に、その差額を補てん

過去における作付作物の生産実績に基づく支払い支払額=(基準面積×0.85)×平均単収× CCP単価

基準面積は直接支払いと同じ

補てん(CCP単価)には上限あり

不足払いに類似しているが、「純粋な不足払い」とは異なる

2008年農業法によるCCPの変更目標価格のリバランシング(2010年度から)

小麦、大豆等は引き上げ、綿花は引き下げ

2009年度以降の対象作物の拡大による基準面積、支払単収の調整(2002年農業法と同様の運用)

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

3-5 価格変動対応型支払いの支払い状況

30

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

3-6 価格支持融資の概要

融資期間9ヶ月

価格

ローンレート

市場価格A

市場価格B

☆価格Aのケース

市場で農産物を販売し、融資を返済

☆価格Bのケース①農産物を引き渡して融資の返済免除、②市場価格で買い戻し市場で売却

①、②ともLR-MP分の返済は免除

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31

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

3-7 価格支持融資からの受益額

32

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

3-8 ACREの概要

平均作物収入選択プログラム (ACRE: Average Crop Revenue Election) 収入変動対応型支払い

当該州の過去5中3年平均収量に過去2年の全国平均販売価格を乗じて得られる州ベースの収入額の90%を保証(2009年度は07及び08販売年度の平均価格)。支払いは現行の作付面積ベース(DCPの基準面積が上限)

支払いを受けるためには、州ベースと農家ベースの両方の発動要件を満たす必要

ACREを選択すると、DPが20%減額され、ローンレートも30%引き下げて適用。従来の価格ベースのCCPには加入できない

2009年度以降選択可能だが、一度選択すると、08年農業法期間中は変更不可

支払いは販売年度の価格を用いて算定されるため、収穫の約1年後(2009年度分の支払いは2010年秋以降)

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33

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

3-9 ACREの加入実績(2009)

8.5

0.520.03

9.9

7.17.7

15.6

0.2 0.01

15.3

12.7 12.8

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

とうもろこし 綿花 米 大豆 小麦 全作物

戸数加入率

面積加入率

資料:USDA/FSA

34

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

3-10 ACREの予想支払単価

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

2009年5月 6月 7月 8月 10月 12月 2010年1月 2月 3月 4月 5月

ドル/ブッシェル

大豆

とうもろこし

小麦

資料:USDA/FSA,NASSのデータを用いて筆者が計算

注.単収は過去5年中3年平均に等しいとして計算.単収が低ければ支払単価は上昇.

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35

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

3-11 ACREの2009年度支払額(予測)

36

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

3-12 農業保険の概要

作物保険(収量保険)

自然災害等による収量の減少を保証対象

穀物、油糧種子、果樹、野菜、工芸作物等を対象MPCIとCAT(足切り5割)の2段階の保証が選択可能

収入保険収量の減少または価格の低下による収入の減少を保証対象主要な作物関係プログラム• 穀物、油糧種子、綿花など(IP, CRC, RA, GRIP)• 農業経営単位(AGR)

その他、果樹の収入保険や家畜の価格保険(LGM,LRP)

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37

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

3-13 農業保険加入面積の推移

資料:USDA/FCIC as of May 10 2010

25 2753 66

90 95116 130 126 139 145 151 151

100 105 11792 93

9193

81 8268

6091 74

98 92 92

115 8865 62

5348 41 38 34 32

28 28

28 30 22

0

50

100

150

200

250

300

1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

収入保険 作物保険 CAT

百万エーカー

38

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

3-14 農業保険の財政負担

946 955 9511772 1741 2042 2477 2344 2681

3823

5691 5425

492 559 621

743 758811

1012 9841081

1451

21191731

-2000

0

2000

4000

6000

8000

10000

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

引受利益

運営費補助

保険料補助

百万ドル

注.保険料補助は事業統計ベース、運営費補助等は予算実績ベース。

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39

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

3-15 FAPRIの主要農産物の価格予測

0

2

4

6

8

10

12

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019

$/bu

とうもろこし

小麦

大豆

資料:FAPRI、 USDA/NASS

40

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

3-16 FAPRIの政府支払いの予測

資料:FAPRI, USDA/ERS and RMA

0

2

4

6

8

10

12

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019

直接支払い 価格支持融資 CCP ACRE 農業保険

Billion $

注.農業保険金はLoss-Ratioを0.8として筆者が再計算した.

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21

41

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

3-17 政府支払いの実績と予測

資料:FAPRI, USDA/ERS注.2-11と3-13を結合したもので、2-11の保全管理等一部プログラムは除外した.

0

5

10

15

20

25

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019

直接支払い CCP 価格支持融資 ACRE 特別緊急援助 農業保険

Billion $

42

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

4.2012年農業法をめぐる動き

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

4-1 次期農業法と議会の動き

下院農業委員会は、4月21日から公聴会開始(13回)Peterson委員長は、2011年中の農業法起草を目指す

農務長官、学者、農務省高官

業界団体(農業・農産物、加工)

州(IA、ID,CA,WY,GA,AL,TX,SD)

上院農業委員会も6月30日から公聴会開始

農務長官、農業団体、農業者

最大の関心事項は、厳しい予算制約の下で、「どのようなセーフティネットを構築するのか」であり、特に、農業保険とACREが議論の中心

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

4-2 2008年農業法制定時の関心事項

予算制約(pay-as-goルール)の下で、栄養、環境保全等の

プログラムの拡大

農産物プログラムの見直し(農産物価格が高水準)

新しいリスク管理プログラム(ACRE:収入変動、SURE:

災害援助)の導入

政府支払いの受給資格の厳格化

2002年農業法の手厚い保護プログラムの維持

果樹・園芸作物への助成

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23

45

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

4-3 2008年農業法の利害関係者

・改革派+USDA・国際交渉者(WTO協定は考慮外)

・綿花生産者(目標価格引下げ)

・作物保険プログラム(予算削減)

・大規模農家(支払要件厳格化)

・栄養プログラム(都市住民)

・園芸作物生産者

・環境保全関係プログラム

・バイオ・エネルギー・プログラム

敗 者勝 者

農業法といっても、農業経営安定対策に関する部分を除くと、農業関係者よりも、都市住民・環境団体等の方が利害関係が深くなっている。

伝統的な政府プログラム対象作物関係者は既得権維持に懸命な一方で、これまで政府プログラム対象外の園芸作物関係者が攻勢

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

4-4 2012年農業法とセーフティネット議論

厳しい財政事情の下で、現行の予算ベースラインを超えて、追加財源を確保することは不可能という議会の共通認識

行政府の関心は、栄養プログラム、地域開発等にあり、経営安定対策には極めて冷淡(2010年度及び2011年度予算で予算カットを提案)。大統領は児童栄養プログラムの更新に意欲的。大統領夫人も児童肥満問題に関心

次期農業法において、経営安定対策の財源が狙われることは必至

マスコミ、環境保護団体は、経営安定対策を批判(無駄遣い、生産刺激による環境負荷等)

経営安定対策を重複のない、有効で効率的なセーフティネットとして構築することが、財源を確保する上で必要不可欠

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

4-5 現行の経営安定対策の問題点

現在の経営安定対策は3つのタイプに分類

1 伝統的な特定農産物への価格・収入対策—直接支払い、CCP、価格支持融資、ACRE

2 作物共通なリスク管理—農業保険、NAP

3 災害援助—SURE、緊急災害援助

問題点

高価格水準の下でも支払われる直接支払い(無駄遣い、政策効果等)

農業保険とCCP、ACRE、価格支持融資の重複

農業保険の財政負担

複雑な仕組み(ACRE及びSURE)と加入率(ACRE)

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

4-6 経営安定対策間の関係(その1)

販売収入

価格支持融資

Counter-Cyclical Payments

直接支払い目標価格

ローンレート

市場価格

価格

生産量

現在の作付作物の生産量に基づく

現在の作付作物及び生産量に関係しない

農業保険金

平年収量実収量

<市場価格がローンレートよりも低い場合>

収入保険の場合、重複する可能性あり

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

生産量

価格

直接支払い

ローンレート

目標価格

ACRE保証価格

市場価格

平年収量

販売収入

ACRE

農業保険金

ACREと農業保険金との支払額は、

一部重複する可能性

実収量

<市場価格が高く、ACREが選択された場合>

直接支払いは20%減額

4-7 経営安定対策間の関係(その2)

50

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

4-8 農業経営安定対策と収量・価格の変動

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26

51

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

4-9 ACREの加入をめぐる問題

2009年度の予想外の低加入率(戸数8%、面積13%)

ACRE加入に当たって、予想すべき要素

収量:加入年度以降の州と自分の収穫期の予想収量

価格:加入年度以降の生産物の販売年度の市場価格(大豆9月~8月)

収入:上記収量と収入を組み合わせて、加入年度以降のACRE支払いの得失(DP20%削減、ローンレート30%引下げ)

過去の収量に関する記録の整備

仮に、ACREに加入した方が「得」と判断した場合でも、地主

が理解できるように説明して承諾を得る必要

2010年度の加入期限6月1日、結果は???

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

4-10 セーフティネットをめぐる議会と行政府

農務長官

Rural America: “Know Your Farmer, Know Your Food”中小規模の農家、果樹・野菜への助成

下院農業委員長

大規模農家こそ、アメリカ農業の担い手

大規模農家への政府支払いの制限等は除くべき

長期的には、経営単位の収入保険のようなものへの移行が望ましいのではないか

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53

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

5.おわりに

54

第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

5-1 生産額に占める政府支払いの割合

0

10

20

30

40

50

60

70

Corn Wheat Rice Uplandcotton

Soybeans Peanuts

2003~06平均 2007~09平均

資料:USDA/ERS

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

5-2 単位面積当たり政府支払額

0

50

100

150

200

250

300

350

Corn Wheat Rice Uplandcotton

Soybeans Peanuts

2003~06平均 2007~09平均

ドル/エーカー

資料:USDA/ERS

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

5-3 単位面積当たり直接支払額

24

15

94

33

11

45

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

Corn Wheat Rice Uplandcotton

Soybeans Peanuts

ドル/エーカー

資料:USDA/FSAの資料から計算

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第2108回 農林水産政策研究所 定例研究会報告資料(2010.7.20)

5-4 2012年農業法をめぐる議論から

セーフティネットへの評価に地域差

農業保険に対しては一定の評価

助成対象作物間の財源争奪(議会と行政府)

議員がWTOを意識した発言(綿花紛争敗訴の影響?)

環境保護派の動向(Cap and Trade、バイオエネルギー等へ

の関心と従来型の環境保全)