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港湾法・海岸法の概要
平成26年10月 港湾海岸課
平成26年度 愛媛大学講義資料-1
はじめに(1)本県の港湾・海岸の状況
①港湾
・港湾数51港(全国994港) 全国5位
・県管理港湾23港(公告水域1港を含む)
・市町管理港湾28港(新居浜港務局管理を含む)
②海岸
・海岸延長約1,700km 全国第5位
・海岸保全区域約1,189km 全国第3位
・土木部所管県管理海岸保全区域延長439km(208海岸)
1
1.港湾 (1)「港(みなと)」
津々浦々(全国いたるところ)という言葉からもうかがえるように、島国である我が国の沿岸では、古くから海上交通が盛んであり、自然条件に恵まれた入り江や河口などを船着場として利用してきた。
「津」、「湊」、「泊」といった名の付く地名は、こうした「みなと」の名残りである。
現在、我が国の「みなと」の数は4千余りであり、このうち、港湾法の適用を受ける「港湾」は994港である。
「港湾」以外の「みなと」はいわゆる「漁港」である。
我が国の海岸線延長が約3万5千kmであることからすると、「港湾」は概ね海岸線35kmごとに存在することとなる。
2
1.港湾
●江戸時代の湊と泊(出典 長尾義三「物語日本の土木史」鹿島出版会(1985)
3
1.港湾
●現在の重要港湾位置図 4
1.港湾
(2)港湾法(昭和25年制定)の目的(港湾法第1条)
《定義》
河川法や道路法では、「河川とは」、「道路とは」といった法律上の定義が
あるが、港湾法では、「港湾とは」といった法律上の定義はなされていない。
港湾の概念は必ずしも明瞭ではなく、各種の法令においても「港湾」という
用語が用いられ、それぞれの法律の目的に従って種々の意義において使用
されている。
《概念》
「港湾」の一般的な概念は、『海陸交通の結節点として、船舶が安全に
出入及び碇泊(停泊)できる水面を有し、水陸交通の連絡設備を有した人
流・物流拠点であり、更に、臨海工場に代表される生活活動の場であり、国
土の開発発展の拠点となり、また、レクリエーション活動の場であり、沿岸域
の環境保全・創造に貢献してゆく場』と言える。
『交通の発達及び国土の適正な利用と均衡ある発展に資するため環境の保全に配慮しつつ、港湾の秩序ある整備と適正な運営を図るとともに、航路を開発し、及び保全する』ことを目的とする。
5
1.港湾(3)港湾法の理念
①港湾行政の統一
昭和25年に港湾法が制定されるまで、港湾行政は基本となる法律が
整備されないまま時々に応じて発せられた断片的な法律、勅令、訓令等
に基づいて行われてきた。
(昭和39年制定の河川法には明治29年制定の旧河川法が、昭和27年
制定の道路法には大正8年制定の旧道路法がある。)
港湾法の制定によって、従前、バラバラで統一性に欠けていた港湾の
開発、利用及び保全に関する権限が地方公共団体の設立する港湾管理
者に付与され、港湾行政を統一。
②港湾管理主体の一元化
従前の港湾管理主体は不明確な点が多く、国営港、府県営港、市町
村営港、私有港に区分することしかできない状態であった。
港湾法においては、港湾の管理主体を地方公共団体が設立する港湾
管理者に一元化し、港湾区域にある他の者の港湾施設に対して必要な
規制を行うこととした。 6
1.港湾(3)港湾法の理念
③地方自治の尊重
港湾法は、港湾の管理主体から国及び私企業を排除して港湾
管理者となるべき者を地方公共団体に限定し、さらに、国は、国家
的利益を確保するために必要最低限の範囲で港湾管理者を監督
することとし、国の一般的な監督規定を置かずに事項ごとに個別に
規定するにとどめている。
④私企業への不干渉
港湾法は、港湾における民間企業の活動について、港湾の基本
となす事項を除いて、その自由意思に任せることを建前にしている。
港湾管理者は、民間企業が行いえない公共的、非営利的分野に
おける港湾施設の管理、役務の提供、環境の整備等の業務を行
い、民間企業に対しては、港湾計画その他港湾の総合的な開発、
利用及び保全に支障がある場合に必要最小限度の干渉を行うに
とどめている。 7
1.港湾⑤港湾の機能
8
1.港湾(4)港湾計画
①港湾法第3条の2
(港湾及び開発保全航路の開発等に関する基本方針)
国土交通大臣は、港湾の開発、利用及び保全並びに開発保
全航路の開発に関する基本方針を定めなければならない。
2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 港湾の開発、利用及び保全の方向に関する事項
二 港湾の配置、機能及び能力に関する基本的な事項
三 開発保全航路の配置その他開発に関する基本的な事項
四 港湾の開発、利用及び保全並びに開発保全航路の開発に
際し配慮すべき環境の保全に関する基本的な事項
五 経済的、自然的又は社会的な観点からみて密接な関係を
有する港湾相互間の連携の確保に関する基本的な事項
9
1.港湾
②港湾法第3条の3(港湾計画)
国際戦略港湾、国際拠点港湾又は重要港湾の港湾管理者は、
港湾の開発、利用及び保全並びに港湾に隣接する地域の保全
に関する政令で定める事項に関する計画を定めなければならな
い。
2 港湾計画は、基本方針に適合し、且つ、港湾の取扱可能貨物
量その他の能力に関する事項、港湾の能力に応ずる港湾施設の
規模及び配置に関する事項、港湾の環境の整備及び保全に関
する事項その他の基本的な事項に関する国土交通省令で定め
る基準に適合したものでなければならない。
10
(5)港湾事業の進め方港湾管理者が、国の補助金や県市町の単独費で埋立地や防
波堤などを整備する。埋立地を港湾関連の企業に売却した場合の代金、または使用
の場合の使用料金で、埋立工事などに要した建設費や施設の維持管理費をまかなうといった営業的な業務も行う。
1.港湾
●港湾空間における機能の要素と配置イメージ 11
1.港湾《参考》
行政が行っている港湾整備直轄 :松山港外港地区(‐13m岸壁整備)
東予港中央地区(‐7.5m耐震強化岸壁)愛媛県:松山港外港地区(コンテナターミナル整備)
東予港中央地区(臨港道路、防災緑地等)三島川之江港(緑地)宇和島港(防災緑地等) など。
市町 :新居浜港、今治港、長江港(上島)、堀江港(松山市)
※なお、松山港外港地区、及び、東予港中央地区における国、県の施行区分については、港湾法、及び、港湾法施行規則に基づき決定している。
12
(1)海岸法(昭和31年制定)の目的(第1条)
(2)海岸保全区域の所管区分
海岸法第40条の規定による主務大臣の区分により海岸保全区域の所管
が区分される。
①海岸法第40条第一項
港湾区域、港湾隣接区域、公告水域及び特定離島港湾区域:
国土交通大臣
→ 国土交通省港湾局所管
②海岸法第40条第二項
漁港区域:農林水産大臣
→ 農林水産省水産庁所管
『津波、高潮、波浪その他海水または地盤の変動による被害から海岸を防護するとともに、海岸環境の整備と保全及び公衆の海岸の適正な利用を図り、もって国土の保全に資する』ことを目的とする。
2.海岸
13
2.海岸③海岸法第40条第三項
土地改良法の規定による土地改良事業等に係る海岸保全施設の存する海岸保全区:農林水産大臣
→ 農林水産省農村振興局所管
④海岸法第四〇条第四項農地の保全のために必要な海岸保全区域:
農林水産大臣及び国土交通大臣→ 農林水産省・国土交通省の共管
⑤海岸法第四〇条第六項①~④以外の海岸保全区域:国土交通大臣
→ 国土交通省水管理・国土保全局所管
(3)海岸保全の計画制度防護・環境・利用の調和のとれた総合的な海岸管理が適正に行われるよう、国が「海岸
保全基本方針」を定め、さらにこれに基づき、都道府県知事が「海岸保全基本計画」を定めることとし、施設整備等については市町村、地域住民等の意向を反映する手続きをとっている。
14
2.海岸(4)海岸と災害
①高潮高潮は、気圧低下により海面が吸い上げられ(気圧が1hPa低くなると、海面は約1cm
上昇する)、さらに強風により海水が海岸に吹き寄せられるなどにより、海面の高さ(潮位)が長時間にわたって平常時よりも高くなる現象をいう。
南北に長く南側に口を開けた内湾では台風が湾の西側を北上すると湾奥で顕著な高潮が発生しやすい。一方、東西に長く東側に口を開いた内湾では台風がその内湾を横断するコースを通った場合、湾奥に顕著な高潮が発生しやすい。
●高潮発生のイメージ等
15
2.海岸②侵食
侵食は、海浜に供給される土砂の量と流出する土砂の量のバランスが崩れ、流出する土砂の量が上回ることによって汀線が後退するもの。原因としては、一般的にダム等の建設による河川からの供給土砂の減少や防波堤や導
流堤などの構造物設置による沿岸の土砂移動の遮断などが考えられる。
●海岸における漂砂
●浸食による砂浜の消失状況 16
2.海岸③津波(TSUNAMI)
津波は海溝型地震による地殻変動などによっては発生する波長の非常に長い波(海水の流れ)
●津波の概要等
17
2.海岸(5)海岸事業の進め方
海岸管理者が、国の補助金や県市町の単独費で海岸堤防や護岸などの防護施設を整備する、津波、高潮、波浪などから、国民を対象とした生命財産を守る事業
高潮
対策
事業
直轄
事業
補助
(交付
金)事
業侵
食対
策事
業
津波
・高潮
危機
管理
対策
緊急
事業
海岸
耐震
対策
緊急
事業
海岸
堤防
等老
朽化
対策
緊急
事業
海岸
環境
整備
事業
補助
(交付
金)事
業
その
他海
岸(保
安林
、鉄
道護
岸、
道路
護岸
、飛
行場
、天
然海
岸等
)
海岸
海岸
事業
で整
備す
る海
岸
海岸
事業
の実
施体
系(港
湾局
の例
) 国土
保全
及び
人命
財産
の防
護と
合わ
せて
砂浜
や遊
歩道
、植
栽等
を整
備し
、快
適な
海岸
環境
を保
全、
創出
する
事業
老朽
化等
によ
り所
要の
機能
が確
保さ
れて
いな
い海
岸保
全施
設で
あっ
て、
緊急
にそ
の機
能の
回復
又は
強化
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もっ
て人
命や
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護を
図る
事業
積極
的に
海岸
線の
活用
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りな
がら
、国
土の
保全
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命の
財産
を防
護す
る施
設の
整備
堤防
・護岸
等の
耐震
対策
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岸管
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域の
実状
に応
じて
緊急
的に
実施
する
こと
によ
り、
地震
発生
に伴
う堤
防・護
岸等
の防
護機
能低
下に
よる
浸水
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止し
、も
って
人命
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業
津波
、高
潮、
波浪
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被害
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につ
いて
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岸保
全施
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新設
・改良
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行う
事業
海岸
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る被
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る地
域に
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て、
海岸
保全
施設
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設・改
良等
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う事
業
既存
の海
岸保
全施
設の
緊急
的な
防災
機能
の確
保及
び避
難対
策を
促進
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こと
によ
り、
津波
又は
高潮
発生
時に
おけ
る人
命の
優先
的な
防護
を推
進す
る事
業
国土
の保
全と
人命
財産
の防
護を
目的
とし
た施
設の
整備
18
2.海岸(6)愛媛県の海岸線概要
全国第5位の海岸線延長 約1,700km
●本県の海岸線
741km
574km
19
2.海岸(7)海岸保全基本計画
本県の海岸保全施設整備の基本的な方向性を示す計画で、知事が策定。現基本計画は平成15年度に策定しており、高潮・波浪対策を対象にしてい
ることから、今年度中に、地震・津波対策にも対応した基本計画に改定予定。
●現行計画のイメージ
20
2.海岸(8)地震・津波対策
①海岸保全施設の耐震設計海岸保全施設の耐震設計は、施設の供用期間中に1~2度発生する確率を有する地
震動(レベル1地震動)に対して所要の構造の安全を確保し、かつ、海岸保全施設の機能を損なわないものとしている。さらに、海岸保全施設のうち、施設の機能及び構造、施設背後地の重要度、地盤高、
当該地域の地震活動等に基づいてより高い耐震性能が必要と判断されるものに係る耐震設計は、現在から将来にわたって当該地点で考えられる最大級の強さを持つ地震動(レベル2地震動)を想定し、これに対して生じる被害が軽微であり、かつ地震後の速やかな機能の回復が可能なものとしている。
●地震動の区分と規模21
2.海岸②設計津波水位
東日本大震災による甚大な津波被害を受け、内閣府中央防災会議では、新たな津波対策の考え方を示しており、本県においてもこの考え方に基づき、発生頻度の高い津波(L1津波:概ね数十年から百数十年に一度の発生頻度)を対象に、堤防等の施設設計の基礎となる設計津波水位を設定した。
●津波のレベル
22
2.海岸【設計津波水位の検討結果】○設計津波水位:
宇和海沿岸 T.P+2.4~5.4m(津波高1.3~4.3m)瀬戸内海沿岸 T.P+2.7~3.3m(津波高0.9~1.5m)
○県内最高水位:T.P+5.4m(津波高4.3m 愛南町 深浦漁港付近)
○これまでの高潮対策との相違点:
宇和海沿岸:堤防高さが不足するため堤防等の嵩上げ等の整備が必要。
瀬戸内海沿岸では、軟弱地盤が想定されるため耐震対策が必要。(一部区間では堤防高さが不足するため堤防等の整備が必要。)
23
3.事例(1)港湾事業
①松山港
24
3.事例(1)港湾事業
②東予港
25
位 置 図
立岩海岸 旧北条市
(現松山市)
(2)立岩海岸環境整備事業
事業実施区間事業実施区間
26
被災状況
過去10年間における被災歴
日付 被災内容 備考
H3.9.27 高潮による通行止め 死者1名
H4.8.8 高潮による通行止め
H5.9.3 高潮による通行止め
H8.8.14 高潮による通行止め27
年間利用者数と砂浜幅の関係
28
利用状況写真
(H3.8.10)
(H9.8.10) 29
整備の必要性・効果
<越波の防止>
本海岸背後には、唯一の生活道路である直轄国道196号がひかえている。しかしながら、越波や高潮により死者を含む被害が発生し、非常に危険な状況である。このため、本施設を整備することによりこれらの被害を防止することができる。
<前浜の復元>
度重なる台風及び波浪の影響で、年々浜が後退し平成元年度約20mあった浜幅が約10年間で5m減少している。それに伴い当海岸の利用者数が半減している。このため沖合いに離岸堤の設置及び養浜工の実施により汀線の後退を防ぎ、利用者の増加が期待できる。
<周辺事業と一体となった整備>
当海岸周辺には現在北条スポーツセンターがあり、地元北条市民がスポーツやレクリエーションに親しめるように施設が整備されている。また、「道の駅」及び背後を走る直轄国道196号の視距改良及び歩道整備工事が実施され、海浜利用者の増大が見込まれる。
<海岸における野外学習、環境教育、スポーツレクリエレーション、の支援>
本海岸は、平成12年度「いきいき・海の子・浜づくり」事業に認定され、地元北条市は野外学習プログラムとして本海岸及び北条市スポーツセンターを利用し、地元小学校と他の小学校との交流会を実施しているが、今後本海岸の整備により、より一層の野外学習の充実が図られるものと期待できる。
また、ビーチバレー・ビーチサッカー等のレクリエーションの場としての活用が見込まれる。
30
計画外力
・潮位
H.H.W.L +2.75m
(H3.9.27松山港実測潮位)
設計諸元(1)
31
波浪
・50年確率波浪護岸天端高の決定、消波ブロックや被覆材質量の決定に用いる。
沖波:H0=3.2m,T0=5.8s,L0=52.5m,主方向 WSW
根拠:SMB法,U=28.6m/s,Fett=25.73km
・年数回程度来襲する波浪養浜材の岸沖方向の移動判定に用いる。
沖波:H0=1.1m,T0=3.7s,L0=21.4m,主方向 W
根拠:SMB法,U=11.5m/s,Fett=25.73km
設計諸元(2)
32
平面計画図
33
標準断面図(A工区)
34
標準断面図(B工区)
35
完成(A工区)
36
完成(B工区)
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利用状況(平成16年時点)
38
海岸の地震・津波対策
平成26年10月 港湾海岸課
平成26年度 愛媛大学講義資料-2
資2-42
1.東日本大震災の発生
2011年3月11日午後2時46分
1
43
2.東日本大震災による被害
津波の浸水 津波の堤防からの越流
河川への津波遡上 海岸堤防の破堤2
3.津波対策の考え方
平成23年3月11日に発生した東日本大震災による甚大な津波被害を受け、内閣府中央防災会議専門調査会では、新たな津波対策の考え方を平成23年9月28日に示しています。
津波種類 津波レベル 基本的考え方
最大クラスの津波
(L2津波)発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす津波(数百年から千年の頻度)
○住民等の生命を守ることを最優先とし、住民の避難を軸にソフト・ハードのとりうる手段を尽くした総合的な対策を確立していく。
○被害の最小化を主眼とする「減災」の考え方に基づき、対策を講ずることが重要である。そのために、海岸保全施設等のハード対策によって、津波による被害をできるだけ軽減するとともに、それを超える津波に対しては、ハザードマップの整備や避難路の確保など、避難することを中心とするソフト対策を実施していく。
発生頻度の高い津波
(L1津波)
最大クラスの津波に比べて発生頻度は高く、津波高は低いものの大きな被害をもたらす津波(数十年から百数十年の頻度)
○人命・住民財産の保護、地域経済の確保の観点から、海岸保全施設等を整備していく。○海岸保全施設等については、比較的発生頻度の高い津波に対して整備を進めるととも
に、設計対象の津波高を超えた場合でも、施設の効果が粘り強く発揮できるような構造への改良も検討していく。
ソフト対策を講じるための基礎資料の「津波浸水想定」を作成
堤防整備等の目安となる「設計津波の水位」を設定
L1津波の水位
L2津波の水位
海面
L2津波による浸水高台、津波避難ビル、津波避難タワー等
⇒ 海岸保全施設等の整備の目安とするL1津波(設計津波の水位)
L2津波に対して避難するための対策(ソフト対策)
<L1津波・L2津波と基本的考え方イメージ>
3
※平成25年6月公表済み
※今回設定
4.「設計津波の水位」の設定方法
「設計津波の水位の設定方法等について(平成23年7月8日付け:海岸4省庁通知)」に基づき、以下の手順により、各地域海岸の設計津波の水位を検討しました。
「地域海岸の設定」例
4
設計津波は、地域海岸ごとに設定することを基本。
【地域海岸】 沿岸域を「湾の形状や山付け等の自然条件」等から勘案して、一連のまとまりのある海岸線に分割したもの。
①過去に発生した津波の実績津波高さの整理
②シミュレーションによる津波高さの算出
③設計津波の対象津波群の設定
④「設計津波の水位」の設定
痕跡高調査や歴史記録・文献等を活用。
十分なデータが得られない時には、再現シミュレーションを実施してデータを補完。 今後、中央防災会議等において検討が進み、想定地震の規模や対象範囲の見直
しが行われた場合は適宜見直すことが必要。
①、②の結果から、地域海岸ごとに、津波高と発生年で整理したプロット図を作成。 一定の頻度(数十年から百数十年に一度程度)で発生すると想定される津波の集合
(=L1津波の対象津波群)を選定。
1.設計津波の設定単位
2.「設計津波の水位」の設定方法
上記で設定した対象津波群の津波を対象に、隣接する海岸管理者間で十分調整を図ったうえで、設計津波の水位を海岸管理者が設定。※)
※)堤防等の天端高は、設計津波の水位を前提として、環境保全、周辺景観との調和、経済性、維持管理の容易性、施工性、公衆の利用、住民の意向等を総合的に考慮して海岸管理者が適切に設定。
4-(1)地域海岸の設定
「沿岸の向き」、「島嶼部」、「岬・岩崖」、「湾形状」および「津波シミュレーション結果」より、愛媛県沿岸部を「同一の津波外力を設定しうると判断される」38の地域海岸に分割。
伊予灘海岸② 燧灘海岸
燧灘島嶼部海岸
伊予灘島嶼部海岸
伊予灘海岸①
三崎海岸①・②
愛南南海岸①~④
愛南北海岸①~④
津島海岸①~⑤
宇和島・西予海岸①~⑥
八幡浜・西予海岸①~⑤
伊方海岸①~③
鹿島海岸
津島島嶼部海岸
宇和島島嶼部海岸
八幡浜島嶼部海岸
5
4-(2)設計津波の対象群の整理①
これまでに愛媛県沿岸に影響を及ぼした既往津波を整理。
愛媛県に影響が大きい津波は南海トラフや日向灘沖を震源とする地震津波を選定。
6
684年 ○白鳳南海地震(M8.0~8.3)
887年 ○仁和地震(M8.0~8.5)
1096年 ○永長地震(M8.0~8.5)
1099年 ○康和地震(M8.0~8.5)
1361年 ○正平地震(M8.4)
1498年 ○明応地震(M8.6)
1596年 ○慶長豊後地震(M7.0)
1605年 ○慶長地震(M7.9)
1662年 ○日向灘沖地震(M7.5~7.7)
1707年 ○宝永地震(M8.6)
1854年○安政東海地震(M8.4)○安政南海地震(M8.4)
1944年 ○東南海地震(M7.9)
1946年 ○昭和南海地震(M8.0)
1960年 ○チリ地震(M9.5)
1968年 ○日向灘沖地震(M7.5)
2011年 ○東北地方太平洋沖地震(M9.0)
南海地震東南海
地震東海地震 その他
日向灘
沖地震
203年
209年
262年
137年
107年
102年
147年
90年
306年
1968年日向灘沖地震(M=7.5,愛媛最大津波高=1.6m)
1854年安政南海地震(M=8.4,愛媛最大津波高=4m)
1707年宝永地震(M=8.6,愛媛最大津波高=5m)
1946年昭和南海地震(M=8.0,愛媛最大津波高=1.2m)
××
××
4-(2)設計津波の対象群の整理②
愛媛県沿岸部の実績高さ確認のため、津波痕跡データを収集・整理。
実績津波高さとして考慮するデータは沿岸部の痕跡で信頼性の高いデータを抽出。
愛媛県沿岸部では信頼性の高いデータが少ないため、実績津波高さは「再現シミュレーション」により推計。
7
■痕跡収集に用いたデータベース・資料※1)津波痕跡DB : 「津波痕跡データベース
(東北大学・原子力安全基盤機構監修)」※2)日本被害津波総覧 : 「日本被害津波総覧
(第2版)」 渡辺偉夫著 東京大学出版社※3)H24文献調査 : 「平成24年度 津波痕跡調
査業務」(愛媛県危機管理課)
手順①:津波痕跡データの収集
<作業手順>
■「津波痕跡DB」で規定される、信頼度A、B、Cのデータ(津波痕跡DB以外の痕跡データでは、同等の信頼度を持つデータ)の抽出
手順②:痕跡信頼度の整理
■手順②までで抽出された各痕跡について、痕跡位置の地形条件を確認し、「内陸部の痕跡」や「斜面や階段をかけ上がった津波の痕跡」等のデータを棄却し、沿岸部の実績津波高さとして考慮する痕跡を選定。
手順③:地形条件を確認し考慮する痕跡データを選定
愛媛県沿岸部では信頼性の高い津波痕跡が少ないため、実績津波高さは再現シミュレーションにより算出。
Case1 Case2 Case3 Case4Case5 Case6 Case7 Case8Case9 Case10 Case11
0
2
4
6
8
1600 1650 1700 1750 1800 1850 1900 1950 2000 2050 2100
津波
高さT.P.(m
)
年(西暦)
再現シミュレーション
2003年中防2連動想定地震
2003年中防3連動想定地震
宝永・安政・昭和重ね合せ(新たなモデル)(参考値)
1707年宝永地震(新たなモデル)
1854年安政地震(新たなモデル)
1946年昭和地震(新たなモデル)
※T.Pに換算
発生頻度の高い津波郡 2012年南海トラフ巨大地震(参考値)
(Case‐5又はCase‐11)
宝永地震
安政地震宝永・安政・昭和重ね合せ
2003_中防2連動
2003_中防3連動昭和地震
日向灘地震
最大クラスの津波
過去300年間で1度の津波
22年92年
想定地震
計画堤防高(最大値および最小値)
設計津波の対象津波群
4-(2)設計津波の対象群の整理③
実績津波高さから、地域海岸ごとに背後に保全すべきものが存在する区間における、各地震の最大津波高をプロットし、「設計津波対象群グラフ」を作成。
設計津波対象群グラフから、概ね数十年から百数十年の間隔で発生している「発生頻度の高い津波(L1津波)」の津波群を抽出。
発生頻度の高い津波群より、設計津波水位の対象津波を選定。
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各地域海岸において検討した結果、愛媛県沿岸では、数十年から百数十年に一度程度の頻度で発生する津波群として、「1854年 安政地震」、「1946年 昭和地震」、「1968年 日向灘沖地震」、「2003年中央防災会議想定地震(2連動)」、「2003年中央防災会議想定地震(3連動)」の5つ地震を選定。
設計津波の設定は対象津波群のうち地域海岸内の最高水位とするため、対象津波の群のうち津波水位が高い「1854年 安政地震」、「2003年中央防災会議想定地震(2連動)」、「2003年中央防災会議想定地震(3連動)」の計3つの地震モデルを対象に設計津波水位設定の津波シミュレーションを実施。
4-(3)「設計津波水位」の設定①
検討対象津波の津波シミュレーションを実施し、設計津波の水位を設定。
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初期水位(朔望平均満潮位)
津波せり上がり
設計津波水位T.P(m)
①初期水位 ③シミュレーション領域
②地形データ
④沿岸条件
・県内検潮所の観測データより直近5ヵ年~10ヵ年の朔望平均満潮位の平均値または各港湾で設定している朔望平均満潮位を採用。
・地震波源~愛媛県全沿岸(最少メッシュ間隔 10m)
・2012年に内閣府「南海トラフ巨大地震モデル検討会」から公表された津波解析データを基に作成。
・地盤変動は地震に伴う海底地形の隆起・沈降を考慮。
・海岸堤防前面位置で津波が浸入しない条件(壁立て境界)でシミュレーションを実施し、せり上がりを考慮した水位(=設計津波水位)を算出。
シミュレーション条件
←海岸堤防前面位置(壁立て位置)
基準面(T.P±0m)
(T.P:東京湾平均海面)
内閣府提供データ
港湾等の深浅測量データ等により更新
※1)地域海岸とは「湾の形状や山付け等の自然条件」,「文献や被災履歴等の過去に発生した津波の実績津波高さ
及びシミュレーションの津波高さ」から同一の津波外力を設定しうると判断される一連の海岸線に分割したもの.
※2)一つの地域海岸に対しては,一つの設計津波の水位を基本とするが,設計津波の水位が当該地域海岸内の海
岸線に沿って著しくことなる場合,複数の設計津波の水位を定める.
※3)海岸堤防高は,設計津波の水位に初期地盤変動量・余裕高を含めた堤防高と高潮・波浪で決まる堤防高を比
較したうえで,環境保全,周辺景観との調和,公衆の利用,住民の意向,地盤の液状化に伴う沈下等を総合的
に考慮して,海岸管理者が適切に堤防高を設定する。
4-(3)「設計津波水位」の設定②
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単位:m(T.P.)
※)1
2.7 ~ 4.3
-0.4 ~ -0.2
-0.8 ~ -0.7
-0.7 ~ -1.4
-0.6 ~ -0.5
地域海岸名 主な海岸
2003年中央防災会議想定地震(2連動)
1854年 安政地震(2013年内閣府モデル)2003年中央防災会議想定地震(3連動)
1854年 安政地震(2013年内閣府モデル)2003年中央防災会議想定地震(2連動)2003年中央防災会議想定地震(3連動)
対象地震
設計津波
現況堤防高
3.3
2.7 ~
~ 5.4 1.2
1.25.3
~ 3.4 1.3 ~
設計津波水位※)2
初期地盤変動量(m)〔マイナスは沈降を示す〕
2003年中央防災会議想定地震(2連動)2003年中央防災会議想定地震(3連動)
2003年中央防災会議想定地震(2連動)
2003年中央防災会議想定地震(2連動)
1854年 安政地震(2013年内閣府モデル)2003年中央防災会議想定地震(2連動)2003年中央防災会議想定地震(3連動)
1854年 安政地震(2013年内閣府モデル)2003年中央防災会議想定地震(2連動)
燧灘海岸 燧灘海岸島興部
伊予灘海岸①~② 伊予灘島興部海岸
三崎海岸①~②
伊方海岸①~③
八幡浜 ・ 西予海岸①~⑤ 八幡浜島興部海岸
1854年 安政地震(2013年内閣府モデル)2003年中央防災会議想定地震(2連動)
~ 7.2船越海岸、御荘港須ノ川海岸、魚神山漁港鹿島海岸
~ 7.6中玉海岸、中玉漁港深浦漁港、船越漁港
成浦海岸、柿之浦漁港田之浜漁港、岩松港北灘海岸、結出漁港
2.8 ~ 3.5 1.2 ~ 7.4
2.4 8.0
石応漁港、宇和島港大福浦海岸、吉田港玉津港、本浦漁港
1.6 ~ 8.3下泊漁港、三瓶港八幡浜港、川之石港真網代漁港、大島漁港
-0.7 ~ -0.3
-0.2 ~ -0.2
7.5
伊方漁港、伊方港九町漁港、田之浦漁港大久漁港
3.1 ~ 5.1 2.4 ~ 8.2
-0.2 ~ -0.2
-0.1 ~ -0.1
-0.1 ~ -0.2
4.2
今治港、東予港三島川之江港、伯方港新居浜港、弓削港
愛南南海岸①~④
愛南北海岸①~④ 鹿島海岸
津島海岸①~⑤ 津島海岸島興部
宇和島 ・ 西予海岸①~⑥ 宇和島島興部海岸
三机港、長浜港松山港、菊間港中島港
2.9 ~ 3.0 2.0 ~ 6.8
2.9 ~ 1.8 ~ 8.4
三崎港、佐田岬漁港
2.7 ~ 3.3 2.0 ~
「粘り強い構造の考え方」
・津波が天端を越流しても、施設が破壊、倒壊するまでの時間を少しでも長くする工夫
・避難のためのリードタイムを長くする。
・浸水面積を低減し、浸水被害を軽減する。
・施設の被害軽減により、迅速な復旧を可能とする。
資2-52
耐震対策・粘り強い構造
・津波到達前に機能を損なわないよう耐震対策・液状化対策を実施。
地震発生
必要な堤防高を確保
1. 耐震対策の考え方1. 耐震対策の考え方
2. 海岸堤防等の粘り強い構造2. 海岸堤防等の粘り強い構造
「粘り強い構造」の例
液状化のイメージ
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3.海岸施設における地震・津波対策の今後の取り組み①
1 海岸堤防高の考え方
海岸堤防高は、津波に対する堤防高(「設計津波の水位(L1津波:今回設定)」に初期地盤変動量と余裕高を加えた高さ)と高潮・波浪に対する堤防高を比較し設定する。
2 海岸堤防等の整備高さ
海岸堤防等の整備は、地震発生と同時に起こる広域的な地盤沈下を考慮し、今回設定した「設計津波の水位」から背後地を守るために必要な高さでの整備を基本とする。
現況堤防と比較して「設計津波の水位」が著しく高い場合などは、津波からの避難時間を稼ぐために必要な高さでの整備など、地域の状況に応じた整備を検討する必要がある。
また、地震発生時の液状化による沈下等に対しては、耐震補強等を行い、背後地への津波の浸水を防止するよう、堤防機能を確保する。
※海岸堤防等の整備高さは、上記を基に、環境保全、周辺景観との調和、沿岸の利用、住民の意向等を総合的に考慮して適切に設定する。
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3.海岸施設における津波対策の今後の取り組み②
河川施設の津波遡上対策と連携し、津波から沿岸域の一体防御を目指す。
防災拠点や医療拠点、緊急輸送道路、人口集中度等の背後地の状況や津波被害の危険度を踏まえ、重要度の高い箇所から、順次施設整備に取り組む。
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☆「設計津波の水位」については、最新の科学的知見に基づいた津波解析結果により設定しているが、南海トラフの巨大地震が発生した時には、瞬時にどういった津波が襲来するのかわからない。住民の生命を守ることを最優先にするため、海岸施設を整備した場合でも「まずは逃げる」の避難意識の徹底が重要。
3 海岸施設の整備方針
津波対策
海岸堤防と河川堤防が一体となって防護
(参考資料)用語の説明①
用語 解説
設計津波 海岸堤防等の海岸保全施設の設計に用いる津波。設計津波は、愛媛県沿岸に対し、数十年~百数十年の頻度で来襲する津波としている。
地域海岸 沿岸域を「湾の形状や山付け等の自然条件」及び「過去に発生した津波の実績津波高さ及びシミュレーションの津波高さ」から、同一の津波外力を設定しうると判断される一連の海岸線に分割したもの。
設計津波の対象津波群 地域海岸ごとで設計津波に成り得ると考えられる津波の集合。
設計津波の水位 設計津波において、防護ライン(海岸堤防前面等)位置でせり上がりを考慮した水位(東京湾平均海面(T.P.)から津波水面までの高さ)
せり上がり 来襲した津波が、堤防前面においてせり上がり、海域(沖側)の津波高さよりも高くなる現象。
初期地盤変動量 地震や津波を引き起こす断層やプレートのすべりなどの地殻変動によって、地盤に沈降や隆起が生じることに伴う津波来襲前の初期の地盤変動量。
津波の高さ 津波の水位(東京湾平均海面(T.P.)から津波水面までの高さをmで表示)
朔望平均満潮位 朔(新月)および望(満月)の日から5日以内に現れる、各月の最高満潮面の平均値。 14