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METI/JETRO 1 INDE/West JEC 平成 17 年 地球環境・プラント活性化事業等調査 「テカンブロ地熱発電所建設計画」 (グァテマラ) 報告書要約 平成 18 年 3 月 西日本技術開発株式会社

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METI/JETRO 1 INDE/West JEC

平成 17 年 地球環境・プラント活性化事業等調査

「テカンブロ地熱発電所建設計画」

(グァテマラ)

報告書要約

平成 18 年 3月

西日本技術開発株式会社

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要 約 グァテマラにおける地熱資源量は,800~4,000MW の範囲内と推定されるが,1,000MW

相当が開発に妥当な数値を考えられる。既存の野外調査情報に基づいて算出された国

内の地熱確定資源量は現在 480MW が見積もられている。この数値は新たな調査が実施

されることによって追加されることになる。平成 16年度国際協力銀行(JBIC)発掘型

案件形成調査において西日本技術開発株式会社(WJEC)が実施した“中米プエブラ・パ

ナマ計画支援に繋がる再生可能エネルギーを活用した基盤整備調査”では,グァテマ

ラの地熱地域の内,テカンブロ地域が最大の資源量(190MW)を有することが明らかに

された。テカンブロ地域が融資対象として魅力的な資源量を有していることから,日

本政府は中米プエブラ・パナマ計画地域(PPP)の再生可能なエネルギー開発を継続し

て支援することとなった。平成 17 年度,日本貿易振興機構(JETRO)は,経済産業省

(METI)の資金援助により,テカンブロ地熱地域の先導的な予備的FS調査を実施した。

本調査は 2005 年9月から 2006 年1月の期間にグァテマラ電力公社(INDE)と JETRO

との間の共同探査として実施された。

調査対象地域は,テカンブロ火山の北西麓 35km2にわたる地域である。この火山地域

はグァテマラ国南東部の Santa Rosa 州に位置し,首都グァテマラシティから南東 48km

地点に位置する。テカンブロ火山は中央アメリカ火山ベルトに配列する多くの火山の

一つであり,約 1,900m の標高を有する(周辺地域からの比高 800m)。本地域周辺約

400km2にわたって,地球内部からの熱の上昇部である多くの熱水徴候が見られる。

本 FS調査の内容は,次の4項目に大別される。

1) 電力事情調査(国内エネルギー需要における本プロジェクトの位置付け)

2) 発電可能な地熱資源量評価

3) 開発可能資源量に合致した地上発電設備概念設計

4) プロジェクト実施可能性を探るための環境および経済性評価。

以上の4項目を評価する目的で,本報告書は以下の9章から構成されている。

第1章:前書き;本調査の背景・必要性を説いた全体概要を説明。

第2章:電力事情調査;グァテマラ国の電力需要における本プロジェクトの位置付け

および電力産業の構造を解析

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第3章:プロジェクト事業化可能性に関する技術的検討;プラントの規模,主要発電

設備,地熱井(生産井,還元井)の仕様およびターゲット,坑井基地,流体

配管設備,付帯設備,変電・送電設備などの技術的な各種条件を検討

第4章:プロジェクト事業化可能性に関する環境面の検討;テカンブロ地域を対象と

した環境影響調査がこれまでに全く実施されていなかったことから,将来の

本格的調査に向けたグァテマラ関係機関への環境影響評価に関する総合的な

提言

第5章:プロジェクト実施スケジュール;プロジェクト実施に関する作業工程に対す

る提案。さらに,JBIC 発掘型案件形成調査において報告されている開発方針

に則った各種開発形態(政府による地下蒸気生産と民間による発電所建設運

転からなる官民連携開発,民間企業による蒸気生産・建設運転一貫開発,INDE

を実施機関とした政府による蒸気生産・建設運転一貫開発)を提案

第6章:経済・財務評価;プロジェクトの経済性および財務に関する定量的評価

第7章:実施機関の能力評価;提案した開発形態に従って,プロジェクト実施機関と

なる INDE の技術的・財務的能力評価

第8章:日本企業の参画可能性;コンサルティングサービスおよび発電設備分野にお

ける日本企業の参入状況調査

第9章:プロジェクトの資金調達;速やかなプロジェクト実現のための資金調達に関

する提言

以下に,各調査項目の要約を示す。

1. 電力事情調査(国内エネルギー需要における本プロジェクトの位置付け)

JBIC 発掘型案件形成調査の報告から,地熱エネルギーは PPP 地域に関しても,地球

環境問題に関しても,重要な役割を示すことがわかった。報告書では,地熱エネルギ

ーは中米地域でのベース電源の役割を果たすだけの資源量が存在することわかり,そ

の中でグァテマラ国内で最も有望とされる地熱地域も特定された。テカンブロ地熱地

域は,グァテマラ国内で優先順位第1位にランクされ,資源量も 190MW と推定され

た。しかしながら,JBIC 報告書の中では,この国産の再生可能なエネルギー開発が妨

げられていることが結論のひとつとして重要視された。

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JBIC 調査では,開発リスクの低減を行うために政府が積極的な初期の資源探査を行

うことによって,民間企業が参入し易い環境を創設するか,もしくは,政府自ら資源

開発から発電所建設運転まで一貫開発を行うことが,この障害を克服する唯一の方法

であると結論している。

PPP 計画の中では,グァテマラはエネルギー開発調整国を担当している。JBIC 報告

書では,国際的な開発銀行の支援の下で特定された有望プロジェクトの実施を行い,

さらには途上国同士の協力によって地熱開発における初期資源開発リスクや多くの障

害を克服すべきであると述べている。これは,PPP 地域において天然に賦存している

再生可能エネルギーの開発を促進するための第1歩である。

電力事業の産業構造も,資源開発リスクほど大きな問題ではないけれども,障害の

一つとなっている。地熱資源による電源開発は初期投資が大きいことから,市中銀行

から借入れに対し,短期償還を要求される場合などは,電力市場における競争力は低

下することになる。そのため,グァテマラにおける電力産業の構造および運営形態を

調査することにより,その市場構造に特有な問題点を把握することが重要ある。

電力事業への民間参入のケースとして,一つは発電所建設に関するハード面,もう

一つは電力卸売市場参入に関するソフト面の両面で展開されてきた。

前者のケースは,電力需要の伸びが大きな役割を果たしてきた。グァテマラのこれ

までの電力需要の伸びは,年率6~7%であった。2008 年までに PPP 全加盟国および

コロンビアを対象に 230kV の中央アメリカ送電網(SIEPAC)が連結されることは,国

内外の民間企業の投資を促進させている。国内発電設備容量 1,763MW の内,70.89%

(1,250.2MW)は,電力事業自由化後の 10 年間に民間企業によって建設・運転された

ものであり,INDE の建設・運転によるものは 29.11%(513.5MW)に過ぎない。しかし

ながら,この自由化は,期待に反してアンバランスなエネルギーミックス(混合比)

を招いてしまった。民間企業参入以前は,政府は国産の天然エネルギーを活用するこ

とを政策としていた(現在の INDE のエネルギー混合比は,水力 64.44%,火力 14.02%)

が,民間企業は初期投資の短期償還および投資回収を速やかに行うために高い発電所

効率を志向したため,輸入燃料による発電方法を採用した。今日の民間企業による発

電事業のエネルギー混合比は水力 11.93%,火力 85.15%であり,INDE との PPA 契約に

基づいた地熱発電はわずか 2.92%である。グァテマラ国全体の発電設備容量比率では,

火力 66.44%,水力 33.49%,地熱 2.07%である。SIEPAC の完成によって予想されるシ

ナリオとしては,発電規模のより大きな化石燃料を用いた火力発電へと志向するであ

ろう。これらは外国からの輸入に依存することから,各国とも貿易収支バランスを悪

化させることになりかねない。地熱エネルギー(自給可能な国産資源)の活用は,電

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力供給の面において信頼性が高く,輸入燃料への依存度を軽減し,外貨流失を抑える

ことになる。また,地下高温部からの熱を総合的に利用することによって,地球環境

の問題や地域社会への開発にも貢献するものである。

後者(市場価格)のケースは,一次エネルギー用燃料コストが低い時には,電気料

金が低くなり,このため消費量が増え,その結果,輸入燃料の増加・燃料購入費用の

増加(外貨の流出)に繋がる。低電力コストによる経済成長は,生み出された収入は,

自国内に留まらない。一次エネルギーに国産資源を活用することは,国内の経済発展

に繋がる。すなわち,このような国産資源が競争力を維持できるような電力供給シス

テムを形成させなければならない。輸入化石燃料の低コスト時に,この施策が実施さ

れれば,燃料コストが高騰した際には,その効果は一層顕著なものとなる。

上記のような議論は,一次エネルギーとして5つの本質的な優位性(高稼働率の高

さ,供給の独自性,貿易収支の好転,環境に優しい,多目的利用による地域開発)を

有する地熱エネルギーに対してのみ例外的に適用できる。

しかしながら,幾つかの障害によって,地熱エネルギーの活用は影響を受けている。

その主たるものが資源開発リスクである。開発段階で投資が進むにつれて,このリス

クは低減する。地熱資源の開発促進の方策としては,官(政府)の役割が重要であり,

地表調査や資源量評価のための探査井掘削等の初期開発リスク克服を実施する必要が

ある。このようなことは,スニール-I,スニール-II やアマティトランの開発において,

INDE は既に実施しており,テカンブロ地域の開発においても,最も推奨される方法で

ある。

2. 発電可能な地熱資源量評価

テカンブロ火山は,第四紀更新世(10 万年前~4万年前)に噴出した安山岩起源の

複合火山である。頂上付近の硫黄鉱山採掘跡では,今なお活発な噴気が存在し,北西

麓では 2,900 年前に形成された直径 500m 程度の陥没状構造(Ixpaco 湖)があり,多く

の酸化硫黄分に富んだ温泉や泥火山が見られる。テカンブロ地熱地域は第四紀火山活

動と関連し,その主要な熱源はマグマからの貫入の可能性があり,最近の熱水活動に

影響与えている。それ故,マグマ溜りが上昇隆起した結果,本地域北西部周辺の深部

で,貫入岩や岩床を形成している可能性がある。さらに,最近の活発な地震活動によ

って新たなマグマ起源の貫入岩が形成されている可能性がある。

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テカンブロ地域は,地表付近が第四紀河川性堆積物で厚く覆われていること,また,

坑井掘削が十分に行われていないことから,詳細な地質構造は解明されていないが,

本調査で実施した物理探査の結果から断層や破砕帯の可能性が高い3本の電気的不連

続線が確認された。直径4km の Chupadero 陥没構造のカルデラ縁が調査対象地域の北

部や西部に連続している。この Chupadero 陥没構造の中心付近に,酸性(pH3以下)で

硫黄分に富んだ Ixpaco 湖が存在する。

Ixpaco 湖周辺とテカンブロ火山頂上部での噴気ガス組成が極めて類似していること

から地熱貯留層は,この複合火山地帯の中央深部に存在しているものと思われる。テ

カンブロ火山と周辺の火山ドームや Ixpaco 湖の近くに噴気や温泉が多く点在している。

これら温泉・噴気の試料分析の結果は,地化学温度で150℃から300℃に範囲内を示し,

その最高温度は Ixpaco 湖地点から採取したものである。

坑井 TCB-1 で確認された蒸気卓越型貯留層は,Ixpaco 湖周辺で見られる地表熱水徴

候の存在とも関連していることから,浅部における流体流動の上昇の中心は Ixpaco 湖

付近と思われる。

地熱貯留層は,Chupadero カルデラの北西部および北東部付近に広がり,カルデラの

形状に沿って分布している。Finca San Lorenzo や Finca El Chorro などに地下の蒸気伝導

熱による温泉も形成されている。開発有望地域は高温度異常域の伸長が見られること

から,本地域北西部付近と考えられる。物理探査の結果から,カルデラ内北西部への

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高温異常を示している,また,その分布はカルデラ縁に沿っていることから貯留層の

分布範囲を示しているのかもしれない。

地熱構造概念モデルに基づき,開発対象貯留層の分布が最も妥当と思われる範囲は

6.45 km2であり,その平均温度は 240℃である(次図参照)。また,分布範囲を控えめ

に見た最小限範囲は電気的不連続線およびカルデラ縁に沿った範囲(3.12km2)を対象

とし,最大限範囲はカルデラの輪郭から推定して半径2km の枠内(12.56km2)とした。

貯留層の厚さは MT 探査および掘削想定深度に基づき 2,000m 程度とした。貯留層の体

積は,これらの乗算からもとめられることとなる。最小限範囲および最大限範囲の推

定平均温度は,それぞれ 220℃と 300℃程度とし,貯留層分布域,温度分布,その他の

岩石物性のデータから,モンテカルロ解析による容積法によって開発対象資源量が計

算された。

容積法による資源量の計算結果から,20~220MWe の範囲内に分布することが推定

された。最も頻度が高い資源量域は 60~70Mwe である。50~90MWe の資源量が存在

する確率は 50%以上である。一方,30MWe 以下および 160MWe 以上となる確率は,

それぞれ5%以下である。また,少なくとも開発資源量が 50MWe 確保できる確率も

75%以上となった。

上記の結果から,将来建設されるテカンブロ発電所の発電能力を 50MWe と設定す

ると,Chupadera カルデラの周縁断層をターゲットとして,2掘削基地から合計 10 本

の生産井を掘削する必要がある。この場合の掘削深度は少なくとも 1,500m 以上が推奨

される。さらに,7本の還元井を東部の電気的不連続線 R3 に沿って設定した。還元井

の掘削深度は約 1,000m である。

3.開発可能資源量に合致した地上発電設備概念設計

地形,敷地,アクセス,坑井掘削プログラム,蒸気・熱水配管,環境条件等を考慮し

て,発電所建設に最適な場所を選定した。

50MW 級の地熱発電所を建設するためには,Chupadero カルデラの北西部に 25MW

シングルフラッシュ型の発電機2基を設置することが望ましい。発電関連設備は,同

カルデラの西部に集約されることになり,セパレータや蒸気・熱水配管関連機器なども

この 50MW 発電設備周辺に設置される。

地熱発電所の蒸気・熱水配管設備(FCRS)は,一般に次の二つのシステムが考えら

れる。

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a. セパレータ1基を発電所近くに設置して,蒸気・熱水の二相状態で地熱井から地

熱流体を送る二相流配管システム

b. 地熱井の近くに個々のセパレータを設置し,発電所までの蒸気用と還元基地ま

での熱水用の2種類の配管を敷設するシステム。

本地熱地域の場合には,以下の理由から二相流配管システムが望ましい。

① 生産基地,発電所位置および還元基地周辺の急峻な地形は二相流配管による

蒸気・熱水供給に適している。

② 生産ライン配管1系統,地熱井と発電所間のセパレータ数1~2機および還

元ライン配管1系統のシンプルなレイアウトとなることから二相流管によ

る配管の方がより経済的である。

③ 二相流配管の場合,より高温の状態で行われ,凝集水の生成も少ない。さら

に,還元配管の長さが個別配管の場合に比べて短くなり,種々の問題発生が

軽減される。

二相流配管の径は,地熱流体の流動が安定することを考慮しなければならない。地

熱井周辺の枝管に関しては 10~16 インチ,セパレータまでの主配管は最大 40 インチ

程度が望ましい。

セパレータからの分離熱水は,セパレータ圧力と地形落差による重力を利用して還

9

2

75 76 77 78 79 80 81 82

1300

LagunaIxpaco

Rio

San

Nic

olas

TCB-1

R1

R2

R3

A

A'

B

B'

240oC

260oC280oC

300oCPad A

Pad B Pad C

Pad D

TCP-1TCP-2

TCP-3

TCP-4

TCP-5

TCP-6

TCP-7

TCP-8TCP-9

TCP-10

TCR-1

TCR-2TCR-3

TCR-4

TCR-5TCR-6

TCR-7

Make-Up Well (Production)

Make-Up Well (Reinjection)

Mimimum Reservoir Area ( 3.5 sq km )

Most Likely Reservoir Area ( 6.64 sq km )

Maximum Reservoir Area ( 12.56 sq km )

Legend

Plant site

Reinjection

Production

発電プラントおよび地熱井の位置

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METI/JETRO

元井へ送られる。サイレンサーからの凝集水や冷却塔からの冷却水は一時的に還元池

に蓄えられ,後にポンプを用いて還元井に送られる。各還元井には熱水流量センサー

が設置され,中央監視センターにて遠隔制御される。

提案しているテカンブロ地熱発電所の候補位置は,既設の2系統の送電ライン(69kV

と 138kV)に挟まれている。最も近い変電所は,69kV 用の Pastoria 変電所であるが,

69kV 用 Los Esclavos 変電所および 138kV 用 Chiquimulilla 変電所も比較的近傍にある。

テカンブロ発電所の場合,既設 69kV 送電ラインでは容量的に不足する可能性があるこ

とから,138kV に接続することが望ましい。138kV ライン接続の場合には,Escuintla

変電所と Chiquimulilla 変電所との間に新規変電設備を設置したT-結合による接続と

138kV 用 Chiquimulilla 変電所への直接接続の 2 ケースが考えられる。テカンブロ地域

と Chiquimulilla 変電所間の距離は約 22km であるが,T-結合による接続の場合は,そ

の半分程度の距離である。そのため,T-結合による接続および新規変電設備を建設し

た方が,Chiquimulilla 変電所にて接続するよりも経済的である。

INDE/West JEC

発電設備のレイアウト

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METI/JETRO INDE/West JEC

4. 経済・財務評価および実施スケジュール

地熱井掘削,蒸気・熱水配管設備,発電設備,138kV 送電ライン,エンジニアリング

サービス,管理費,予備費および建中金利を考慮してプロジェクトコストを算出した。

プロジェクトコスト推定額は 121.08 百万ドルであり,外貨分は 97.85 百万ドル,残

りの現地通貨分は 176.54 グァテマラケッツァール(GTQ)となる。外貨分と現地通貨

分の比率は,81%と 19%である。下表に示された日本政府からのローン条件を考慮す

ると,FIRR が 6.091%,EIRR が 33.5%となる。

さらに,地熱資源はグァテマラ国産のエネルギーであることから,石油換算にして

年間 110,963t の原油消費を抑えることになり,本プロジェクトの経済性をより高める

ことに繋がる。

以上の結果をもとに,実施形態を検討すると選択肢は以下の通りである。

a. グァテマラ政府関係機関(INDE)による地下蒸気開発と民間企業による発電所の建

設・運転,

b. 官民連携による地下蒸気開発および発電所の建設・運転(一貫開発),

c. 民間企業による地下蒸気開発および発電所の建設・運転(一貫開発),あるいは

d. INDE による地下蒸気開発および発電所の建設・運転(一貫開発)

推奨される選択肢は b. と d.であるが,本報告書では d.のケースを検討した。

5.環境面への配慮

全ての地熱熱水と冷却塔からの排水は還元井を通して地下に還元されることから,

テカンブロ地熱開発プロジェクトは二酸化炭素(CO2)排出削減に寄与する。CO2排出

削減量を計算するために,グァテマラ国内で類似の地熱構造を示すアマティトラン地

域でのガス濃度を参照して計算した。テカンブロ地熱開発地域を対象にした CO2 削減

量は,年間 290,338t である。

本プロジェクト実施地域では,放牧業を中心として営まれている。カルデラ中央部

の比較的広範囲の平坦部では,過去から今日に至るまで農作物は栽培されていない。

Chupadero カルデラの周辺部にはコーヒープランテーションが存在するが,掘削候補地

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METI/JETRO

Project Name

Loan Condition FC LCJBIC Other Bank

Interest(%) 0.75% 12.00%Grace Period(year) 10 0Repayment Period (year) 30 12Share (%) 75% 25%(Note: Grace period + Repayment period = Loan period)

WACC 2.55%

Step-1Start of Construction 2009Construction Year 3Commissioning 2012Operation Years 30Capacity Factor 88%House Use Rate 7%T&D Loss 0.20%Tax Rate 4% First ten years 31% FollowingO&M Costs (¢/kWh) 0.80

Exchange Rate as of January 20061US dollar = 114 JPY1US dollar = 7.6 Quezal 15.00 JPY/GTQ

Electricity Tariff (¢/kWh) 4.00

Fuel Price ($/bbl) 73.500

Tecuamburro Geothermal Power Plant Project

からは距離があり,掘削中および掘削後に実施する各種試験が環境問題を引き起こす

可能性はほとんど無い。掘削用および発電開始時に使用する水は,近傍の小河川もし

くは水井戸から確保できる。稀少動植物種の棲息も報告されていない。本地域は耕地

整理が行き届いており比較的平坦なことから,有毒ガスが濃集することもない。発電

所位置および配管ルートは,地域住民の日常活動に影響が無いように配置した。コー

ヒー価格が低迷していることから,住民は発電所の建設・運転・維持管理を通して,雇

用機会を得ることができる。また,発電所建設によって広域的な電源供給の拠点とな

ることから,社会的・経済的な面で地域開発の引き金となり得る。この点に関しては,

グァテマラ政府のプロジェクト実施形態にも大きく依存している。

6.結論および提言

テカンブロ地熱プロジェク

ジェクトである。しかし,ス

プロジェクトの経済・財務指標

INDE/West JEC

トは,技術的・経済的・財務的観点から事業化可能なプロ

ニール-I,スニール-II およびアマティトラン地熱開発で

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METI/JETRO INDE/West JEC

実施されたように,グァテマラ政府によって地熱蒸気確認のための初期調査(投資)

が行われるならば,財務的実現可能性は一層好転する。この初期調査実施のための資

金確保が実現すれば,日本政府からのソフトローン活用をより容易にさせることがで

きる。