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豊かな森川海 2014 1.20 第9号 【住吉川流域シンポジウム】記憶を共に創る時代へ ……………… 24 【会員紹介】田畑和男さん …………………………………………… 5 【神戸市の稀少生物-5】ニホンウナギ(後編) ………………… 68 【会務報告】 …………………………………………………………… 910 【表紙のことば】 ……………………………………………………… 11 【編集後記】 …………………………………………………………… 11 特定非営利活動法人 豊かな森川海を育てる会

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豊かな森川海 2014 1.20 第9号

目 次 【住吉川流域シンポジウム】記憶を共に創る時代へ ……………… 2~4 【会員紹介】田畑和男さん …………………………………………… 5 【神戸市の稀少生物-5】ニホンウナギ(後編) ………………… 6~8 【会務報告】 …………………………………………………………… 9~10 【表紙のことば】 ……………………………………………………… 11 【編集後記】 …………………………………………………………… 11

特定非営利活動法人 豊かな森川海を育てる会

【住吉川流域シンポジウム】 去る 12 月 6 日に「人と自然のかかわりが地域社会にもつ意味を考える」をテ

ーマに第 3 回住吉川流域シンポジウムを開催しました。本号では、福永真弓准

教授の講演内容を紹介します。

記憶を共に創る時代へ:流域文化を支える記憶の共有と継承の先に

大阪府立大学 21世紀科学研究機構 現代システム科学域 准教授 福永真弓 『住吉川アルバム』というはじまり

古い写真を集める、ということは簡単なよ

うでいて非常に難しい。特にありふれた日常

を映す写真はなかなか見出すことができない。

現在の私たちもそうであるように、「普通のこ

と、見慣れたいつもの風景」を気に留めるこ

とも、記録に残そうとすることもそもそも少

ないからだ。有名な景勝地や出来事、祭事、

記念日、旅行など、特別な場所や特別な時間

の記録写真であるならば別だが、家の前の特

徴も何もない(とその時には思われる)道路

と周辺の家々、店などを撮ろうとは思わない

ものだ。 だが、幸運なことに残った写真がもしあれば、わたしたちはそこからさまざ

まなことを知り、誰かの記憶をたどることができる。写真が見せる過去から、

現在の風景が思いがけない履歴を持っていることに気づき、驚く。たとえば、『住

吉川アルバム』の中の一枚に、段差のある道路を写したものがある。何もなけ

れば看過してしまう何気ない光景だが、その段差こそ、かつて浜にあった堤防

の名残だと知れば、少しいつもの景色は違った色をまとう。その端にたって、

そこから先は海だったのだと思えば、頬にあたる風の潮の匂いをひときわ強く

感じるような気もする。写真は、いつか来たはずなのに、気に留められること

なく忘れられた来し方について辿り、その記憶を呼びおこす重要なきっかけを

もたらす。

何気ない風景をたどり、ノスタルジーの先へ

何気ない住宅や商店のならぶ町並みだが、その並びや雰囲気が「そのようで

ある」には理由がある。町並みはその町の産業や人びとの生活の構造がどのよ

うなものであるのかをおのずから語るものでもあるからだ。昨今、映画

『ALWAYS 三丁目の夕日』のヒットを背景に、昭和 30 年代の懐かしい街並み

が話題となり、その懐かしさを伴う風景がいたるところで金太郎飴のような「新

しいテーマパーク」として再建されている。だがこの再建は、『住吉川アルバム』

が試みている記憶の共有や継承とは決

定的に違う営みである。 ノスタルジーとは、ないものを振り返り、

それがない現在と比べた際に、それを持ち

えない現在の状況に対する哀惜やなくな

ったものに対する愛おしさゆえの切なさ

などの感情を意味する言葉である。しばし

ばノスタルジーに基づいた過去の再建が

テーマパーク化するのは、現在がその再建

された過去との結びつきをもたない、ある

いはその結びつきが実感のある形で人びとの間に根づくような再建ができず、

現在と切断されたままであるからである。 だが住吉川で現在行われている試みは、単なるノスタルジーの再建ではない。

風景をたどり、記憶をとらえようとする『住吉川アルバム』が目指しているの

は、現在の私たちの流域との関わりを見つめなおし、再びその関係性を結びな

おすことである。 記憶の共有と継承

その関係性を結びなおす鍵となるのが、人びとがそれぞれに持つ記憶を住吉

川流域にかかわる人びとの間で共有し、それを次代へ継承する営みであろう。

記憶はきわめて個人的なものだが、それは集合性を持ちうる。フランスの社会

学者モーリス・アルヴァックスは、そのような性質を持つ記憶のことを集合的

記憶と名づけ、概念化した。その後さまざまな学問分野に影響を与えたこの言

葉は、集合的記憶というものが、アイデンティティや社会の中での自分の位置

づけを支える、いわばある人の人生という物語の背景を形作る、重要な役割を

担っていることを指摘してきた。大水や阪神淡路大震災といった災害の記憶、

だんじりなどの祭事の記憶、マツタケなど季節になると必ず食べる食べ物の記

憶、商店街を行き来する人々とその商店で買い物をした記憶、そのような記憶

は個人のものでありながら、その地域に住み、同じような経験を共有する人々

のあいだで共有されている集合的記憶である。その集合的記憶を持つからこそ、

人びとは自分が一体どこに帰属するの

か、何がわたしの周囲を取り巻き支え

てきたのか、自分はいったいどのよう

な人や自然と結びついてきて、自分は

いったい何者なのかを見出すことがで

きる。平たく言えば、そのような記憶

があるからこそ、住吉の人々は「住吉

人」としてのアイデンティティを持ち

うるし、自分をそのような人間だと位

置づけることができる。

昔の甲南本通(魚崎町誌より)

昔の魚崎海岸(「むかしの神戸 絵はがきに見る

明治・大正・昭和初期」より)

『住吉川アルバム』が持つ可能性はこの記憶と集合的記憶を写真によって見

出そうとしているところにあるだろう。ノスタルジーに留まることなく、人び

との記憶を写真から呼び起こし、そこから現在の流域と人々の関わりをてこに

新たな関係性のあり方を探る。その営みは同時に、現在社会の中では見えにく

いものの、私たちの日常と人生を精神的・物理的に支えている「流域」の姿を、

再度描き出してみようという営みに他ならない。 再び、五感をめぐる旅から

『住吉川アルバム』が出来上

がる過程でおこなった座談会

において、出席したある方が思

わずといった形でこぼした言

葉があった。「あるのに、わか

らない」。象徴的な言葉だと思

う。わたしたちは普段生活して

いる限り、「流域」という単位

を意識しながら生活すること

はない。個々の生活の中に生き

る風景と体感は数多い。散歩す

る際に歩く川べり、毎日通学しながらふと仰ぎ見る山の姿、季節ごとに色を変

える街路樹や異なる匂いを運ぶ風、そのようなものを感じ、何気なく目にしな

がら私たちは毎日を過ごしていく。ところが、散歩する川べりから見る水の量

や質が、仰ぎ見る山とどのような関係にあるのか、感じる風がなぜこの時期に

その匂いをまとっているのかを知る機会はあまりない。別の言葉を用いれば、

個々の事象の間にある繋がりを想像し、確かめることが平生はない。だが写真

が呼び起こした誰かの記憶は、鮮やかにその関わりを私たちの目の前に広げて

見せることができる。誰かの五感を通じて語られる記憶を複数照らし合わせる

ことによって、その関わりはある明確な姿を私たちに示してくれる。 その関わりの中から見える姿こそが、「あるのに、わからない」流域の姿であ

る。記憶は語ることによって人びとの間で共有され、継承できる形を持つ。そ

こから描いた流域を、私たちは他ならぬ自分の五感を用いて共に確認すること

もできる。「豊かな森川海を育てる会」の活動を通じて、記憶の中から描いた流

域の姿が、実際にはどうなっていて、これからどうなりうるのかを自分の五感

を用いて確かめることができる。 『住吉川アルバム』は一つの到達点だが、上述してきた営みをはじめるため

の重要な最初の第一歩でもある。ここから住吉人がどのような集合的記憶を見

出し、流域の姿をとらえ、ほかならぬ「わたしたちの流域とそこに生きる私た

ちの文化=流域文化」を未来に向けて作り出せるのか。その最初の歩みに、こ

れから多くの人びとが続いていくよう、五感を用いた流域の記憶をめぐる旅を

促す営みを続けてほしいと思う。

魚崎浜での海水浴(大正 8 年、絵葉書資料館)

【会員紹介】 田畑和男さん

本会の川の活動でアドバイザーというこ

とでお世話になっておりますので、本欄では

私のアユ履歴のうわ言を呟きます。 生まれ( 1946)育ちは京都で、賀茂川で

産湯を使い、今では世界遺産の下鴨神社を遊

び場にしていました。長ずるに及んで親元を

離れたいという本能?から当時京都から一

番遠隔地であった北海道へと渡り( 1964)、そこで魚の研究のイロハを学びました。そし

て最初に職を得た地が岡山県でした。そこで

二人子供ができ岡山名物に因んで桃子と太 郎という名前を付けました。

それはともあれ、アユとのかかわりはそこ が最初でした。岡山県は当時(1968)大変

アユに力を入れており、黎明期であったおかげでアユ種苗生産(人

工的に稚魚を作ること)の開発研究の一片を担うことができました。

その後、兵庫県に移ってから「琵琶湖産(以下湖産)アユのふ化仔

魚は海水中では生き残らない」ということを問題提起のつもりで書

いた論文( 1986)が結果的に湖産アユの河川放流に大きな影響を与

えたので私としては思い出深いものがあります。一般的には、アユ

は川の下流で産卵し、ふ化後、海に下り、春先に川に稚魚として戻

ってくるという生活史は皆さんご存知のはずですが、湖産由来のア

ユの場合は確かに産卵、ふ化、降海まではするのですが、春に溯上

してこない(海が絡むと再生産しない)ということなのです。 湖産アユの放流の歴史はたいへん古く、大正時代に東京帝国大学

の先生が琵琶湖では大きくならないアユ(小鮎)を川に放流すると

大きなアユに育つという研究結果を発表され、それ以来、湖産アユ

の放流が積極的に全国的に行われてきた経緯があります。しかし、

再生産の面ではその否定につながることだったので大きな反響にな

ったわけですが、その説の確からしさは遺伝子調査を含む実態調査

から裏づけされ今日に至っています。 最後にひと言。魚道とのかかわりはアドバイザーとしては数多く

あり、代表的なのは円山川支流の田路川の自然石を用いた魚道群で

す(1990 年代)。機会があれば一度ご覧ください。 (完)

但因国境の扇の山での

山スキー

【神戸市の稀少生物-5】ニホンウナギ(後編)

~シンボルフィッシュを決めて河川の環境を守れないか?~

兵庫・水辺ネットワーク 安井幸男

5.都賀川や住吉川の事例

都賀川や住吉川では、アユをシンボルに市民団体が市や県と協働し、川の環境を守る取り

組みを展開しています。図1は、2012年 11 月の美野丘小学校の都賀川下流域の観察会の様

子です。子供たちはアユの卵(図2)を見つけることができました。住吉川でも本庄小学校

の住吉川下流域の観察会でアユの卵を見つけることができました。このように子供たちが川

に入り遊び学ぶようになれば、ゴミは減り、どんどん川はきれいになり、川の生態系も守ら

れると思います。また、行政も川の生態系や親水性向上に努めるでしょう。

6.神戸市内の河川のシンボルフィッシュの候補は?

シンボルフィッシュの候補は、そこに生息している種(外来種や移入種を除く)であれば、

住民や子供たちが親しみやすく、名前をよく知っている種であれば何でもよいと思います。

魚類にこだわる必要はなく、両生類、鳥類、爬虫類、甲殻類、貝類でもかまいません。要は、

身近な生きものをシンボルに決めて、地元住民、小中学校、区役所、河川管理者等が協働す

ることにより、多様な生きものが生息し子供たちが水遊びのできる川に復活できないだろう

かと思うのです。表1に神戸の都市河川を例にシンボル種の案を提示してみました。

表1 河川ごとのシンボル種の案 河川名 シンボル種の案 選択する理由など

住吉川 アユ、カワムツ アサリ、クロベンケイガニ(河口部) カジカガエル、タゴガエル(上流)

清流のさかなのイメージがあるアユか

な?

都賀川 アユ、カワムツ、サワガニ アサリ(河口部)

清流のさかなのイメージがあるアユか

な?

生田川

カワムツ、ウキゴリ アサリ(河口部) カジカガエル(上流)

カジカガエルもいいかな? 河口部のウキゴリもユニークな候補。「ゴ

リ押し」という言葉の語源と説明すればも

っと楽しくなる?

湊川 ウナギ、カワムツ 湊川にウナギが生息しているなんてほと

んどの人が知らない。

福田川 カワアナゴ、クロベンケイガニ(汽水部) ウナギ(汽水部~上流まで)

カワアナゴは神戸市レッドリスト A ラン

クだが、知名度が低い。やっぱり、ウナギ

がベスト!!

明石川 ナマズ、ウナギ、ヌマムツ、オイカワ 知名度のあるナマズかな。

江戸時代までナマズが地震を起こすと考

えられていたエピソードも楽しい。

図1 美野丘小学校の都賀川観察会の様子 図2 美野丘小学校観察会で見つかったアユの卵

7.福田川でウナギをシンボルにすると

垂水区の福田川を例にとり、ウナギをシンボルにして、川 づくりを考えてみたいと思います。 (1)はじめに川の現状・特徴を知る

①福田川は須磨区の落合池を源流とする約 8km、高低さ

109m の典型的な都市河川です。上流部まで都市開発が進み、

流域すべてが市街地となっています。 ②図3のように、川の両壁はコンクリート壁ですが、川底には

ごろた石、砂地が残されています。川岸は穴のある多自然型工

法が採用され、狭いながらも土手があり、雑草も茂っていま

す。 ③高低差が小さい川なので、河口から 500m くらいまで潮

がさし、汽水域を形成しています。汽水域が長いのは福田川の

特徴です。 ④汽水域にはウナギ、カワアナゴ、マハゼ、ウロハゼ、アベハ

ゼ、シマイサキなどが生息し、残された土手にクロベンケイガ

ニ(図4)も生息しています。上流部にはウナギ、メダカが生

息しています。しかし、中下流部には外来種のアカミミガメが

多数生息し、親水公園のビオトープにはカダヤシ(住民の方は

メダカと思っている)が生息しています。なお、コイが多数 放流されています。 ⑤上流部では親水公園、多自然型工法など先進的な取り組みも行われていますが、川底に岩

がコンクリートで固定され生息間隙がないなど、生きものにやさしい構造になっていないケ

ースもあります。 ⑥市民団体が結成され、清掃や観察会活動が行われています。また、近隣小学校の川の観察

会が行われています。 (2)ハード面(物理的・化学的な環境)を考える

まず災害防止策を図ったうえで、ウナギの立場に立って川のあり方を考えてみることです。

ウナギの赤ちゃんがマリアナ海溝から日本にたどり着き、福田川で生きていくためには、 ①川に上ることができる= コンクリートの大きな段差がない ②水が涸れず、水質がよい= 汚水や排水流入の防止 ③餌がある= エビや小魚が安定的に繁殖 ④生きていくための生息空間(瀬や淵、砂地・ごろた石、水草、岸辺にはヨシ原や灌木の根

っこ部などの隠れ場)がある= 大水が出たときも避難所となる。⇒真の意味での多自然型

工法が必要 ウナギの立場からは、川幅はできるだけ広く、川は蛇行して瀬や淵、中州、干潟、砂地、

ごろた石場、干潟等を自由に造れるように、また、水中には水草が生え、川岸にはヨシ原や

柳などの潅木が育つ環境であれば一番いいのですが、都市河川ではそうはいきません。 福田川では、両壁は直立のコンクリートですが、幸いなことに川底には砂地・ごろた石・

大きな岩が残されているためウナギやカワアナゴが生息でき、川岸には狭いながらも雑草や

潅木が残されているためクロベンケイガニが生息でき、河口にはささやかながらも干潟があ

るためアサリが生息しています。ウナギの立場から、川(底や岸や干潟も含め)をどうすれ

ば住みやすい構造にするかを考えることが大切だと思います。また、海にとっても川は大切

な栄養塩や砂の運搬路です。山~川~海のつながりを断ち切らないことが大切です。

図3 川底は砂やごろた石、川原には雑草がある ここも汽水域である。

図4 絶滅危惧種のクロベンケイガニ

(3)ソフト面(人と自然との共生)を考える

ウナギと人間の立場の両面から、理念は「里」(里山・里地・里海)の復活だと思います。

かつて川はこの 3 つの里を繋ぐ動脈血管でした。そこにウナギをはじめ多様な生きものが生

息していました。しかし、現在の福田川は放水路(溝)としての機能が最重要視される都市

河川です。あまり無茶も言えません。そこで、 ①災害防止を図りながら、人も生きものも川を利用させていただく = 人も魚もカニも住

民、「川がき」の復活など ②生きものにやさしい構造を考える = 少なくとも川底は自然状態で残し、川岸にはどの

ような多自然型工法を採用するかを住民参加で検討する ③行政、河川管理者、地域住民の協働 = 防災と生息環境を考えた構造にする ④生きものの調査や観察会の継続 = 小学生たちの地域学習、環境学習などに利用する ⑤ゴミの不法投棄、汚水排水流入の防止 = 住民の清掃活動などを継続する 人間は生態系のピラミッドの頂点に乗せてもらっている(君臨ではない)のです。「里」

は、人間が水を得て、食料を得て、燃料や家畜の餌も確保し、さらに遊び場として自然環境

を利用させてもらってきたという意味です。一方、ドジョウ、フナ、ナマズ、メダカ、トノ

サマガエルなどは、人間の造り出した小川や田んぼやあぜの水路をうまく利用して生きてき

ました。福田川流域もかつては豊かな里山里地里海だったことでしょう。簡単ではありませ

んが、ソフト面からも水系のつながりや生態系を取り戻す努力をし、人間を含め生きとし生

けるものすべてが生き残れる環境を保つことが大切だと思います。 福田川では、福田川クリーンクラブを中心に、流域の小学校、区役所が協働し、ウナギを

シンボルフィッシュに川の生態系保全を図れないか検討を開始したところです。できるとこ

ろから、かつての豊かな里海、里地、里山を少しずつでも復活させていきたいと思います。

4 さいごに

さいごに、川の生態系を守るために気をつけてほしいなと思うことがあります。それは人

為的な生きものの放流の問題です。 図5は伊川(明石川水系)の観察会を行ったときに採集し展示した外来種 3 種(オオクチ

バス、ブルーギル、カムルチー)です。他にウシガエル、アカミミガメなどもはびこってい

ます。生態系保全のために外来種を絶対に放流しないでほしいと思います。 また、国内の移入種にも気をつけていただきたいのです。例えば、生田川でオヤニラミ、

住吉川でハリヨ(図6)を確認しています。国内の在来種であっても本来自然分布しない種

等を放流することも慎まなければなりません。「その地域が育んできた生態系を保全し、そ

の地域の生物多様性を図っていくこと」が、真の生物多様性保全だと思います。

図5 伊川で採集した外来種 3 種

(オオクチバス、ブルーギル、カムルチー) 図6 住吉川で確認した移入種ハリヨ

【会務報告】 1.活動報告

1)写真集「住吉川アルバム」の刊行

戦後急速に変貌した住吉川流域の風景や文化の記憶を

各世代が共有し、これからのまちづくりを考えるために、

今と昔の風景を対比した写真集「住吉川アルバム -未

来につなぐ森・川・海の記憶-」を 11 月 30 日に刊行し

ました。写真集は会員をはじめ、関係機関、図書館、教

育機関等に配布しました。昔の写真を集めるのに大変苦

労しましたが、苦労の甲斐あって各方面から好評をいた

だきました。

2)森づくり

11月 17日(日)に五助の森で植樹活動を行いました。

神戸夙川学院大学の学生さん達と一緒に総勢 29名で、ウ

リハダカエデ、コナラなどの落葉広葉樹の苗木 10本を植

樹しました。

11月 27日(水)には東お多福山の「草原再生

保全活動に参加しました。

12月 7日(土)には、団体会員の兵庫県漁業協

同組合連合会主催の虹の仲間で森づくり(漁業者

の森づくり)がグリーンピア三木で行われました。

県下の漁業者を中心に約 200名が参加し、19班に

分かれて森づくりに汗を流しました。当会からも

13名が参加しました。汗を流したあとは、瀬戸内

海と日本海の海の幸満載のバーベキューが実に

美味しかった。

3)川づくり

11月 21日(木)に兵庫県神戸土木事務所において住吉川流域連絡協議会・住吉川川づくり

の会を開催しました。住吉川の魚道づくりは 4 年目になりますが、この 2~3 月に設置予定の

第 8~10号の新設工事及び昨年度設置した魚道の改良工事について協議しました。

4)第3回住吉川流域シンポジウム

12月 6日(金)にコープこうべ生活文化センターにおいて「人と自然のかかわりが地域社会

にもつ意味を考える」というテーマで第3回住吉川流域シンポジウムを開催しました。第Ⅰ部

の報告会では島本理事長から「住吉川流域における自然再生活動の取り組み」と題してこの5

年間の総括的な報告を行いました。第Ⅱ部の講演会では、はじめに住吉歴史資料館事業推進委

員内田雅夫氏より「住吉川流域の伝統文化について」、続いて大阪府立大学 21世紀科学研究機

構の福永真弓准教授より「記憶を共に創る時代へ:流域文化を支える記憶の共有と継承の先に」

と題した講演をいただきました。当日は流域住民をはじめ各方面から 44 名の方が参加し、活

発な議論が交わされました。なお、福永准教授の講演要旨を巻頭に掲載しました。

5)武庫川流域圏ネットワークとの情報交換

武庫川流域圏ネットワークの行事に参加し、積極的に情報交換を行いました。

11月 30日(土)には神戸女学院大学で武庫川市民学会主催の研究発表会があり、「住吉川に

おけるアユの棲みやすい川づくり」と題して島本理事長が口頭発表を行いました。

12月 14日(土)には神戸女学院大学で武庫川流域圏ネットワーク主催の活動報告会が開催

され、特別講演として「流域の自然再生とまちづくり」と題して島本理事長が講演を行いまし

た。同じ阪神間の市民団体として有意義な情報交換ができました。

2.活動計画

1)多聞台緑地の整備活動

平成 26 年の新しい取り組みとして、多聞台緑地の整備活動が 4 月から始まります。多聞台

緑地は神戸市垂水区多聞台にある約2haの都市公園ですが、公園とは名ばかりのウバメガシや

ナラの原生林が鬱蒼と茂る放置されたままの暗い森で、かねてより地域で問題視されていまし

た。昨年より地元自治会組織である「多聞台ふれあいのまちづくり協議会」より相談を受けて

いましたが、このたび管理者である神戸市との協議が進み、この 4月から神戸市及びまちづく

り協議会と協働して整備活動に取り組むことになりました。詳細は決まり次第お知らせします

が、4月以降毎月 1回、第 2日曜日の午前に整備活動を行う予定です。未整備の都市公園の森

づくりに会員各位のご参加をお待ちしています。

2)魚道づくり

年度末の 2~3 月に住吉川の魚道設置工事が行われます。今年は昨年度設置箇所のさらに上

流に 3基の魚道を設置する予定です。これによって、河口から阪急電車鉄橋まで魚道が設置さ

れることになります。3月には魚道見学会を計画していますのでご参加下さい。

3)平成 26年の活動計画(予定)

    平成26年 豊かな森川海を育てる会 活動計画

年 月 住吉川流域 連絡協議会 多聞台緑地整備活動 砂問題研究会 その他

連絡協議会 森の活動 川の活動 海の活動 (都市公園の森づくり)

(森づくり) (アユの棲みやすい川づくり) (里海づくり)

平成26年 1月 連絡協議会・川づくりの会 幹事会・勉強会(17)理事会(28)会報発行

2月 魚道設置工事開始(1~)

3月魚道現地見学会魚道設置工事完了(25)

海岸清掃(19)

4月 連絡協議会・川づくりの会 東お多福山(9) 海岸清掃(18) 森づくり(13)理事会会報発行

5月 東お多福山(14) 稚アユ遡上調査住吉浜祭り・大阪湾生き物一斉調査(16)

森づくり(11) 幹事会・勉強会通常総会・記念講演会

6月 海岸清掃(13) 森づくり(8)

7月東お多福山(23)五助の森(27)

アユの生息状況調査兼魚道効果調査

海岸清掃(14) 森づくり(13)理事会会報発行

8月 海岸清掃(11) 森づくり(10)

9月 連絡協議会・川づくりの会 海岸清掃(9) 森づくり(14) 幹事会・勉強会

10月 東お多福山(8) 森づくり(12)理事会会報発行

11月 連絡協議会・川づくりの会五助の森(9)東お多福山(26)

森づくり(9)

12月 住吉川流域シンポジウム 漁業者の森づくり 森づくり(14) 幹事会・勉強会

( )内の数字は実施日あるいは実施予定日

【表紙のことば】 かまくらっておもしろいですね。雪の中で暖まろうという発想が。 神戸は雪が少ないけれど、私なりに冬の楽しみを見つけて暖かい気持ちで過ごしたいと思い

ます。(ありむら あや) 【編集後記】 ◆年末に写真集「住吉川アルバム」が届いたことと思いますが、いかがでしたか。熟年世代の

方には子供の頃の懐かしい風景がよみがえり、若い世代の方にはある種新鮮な驚きを感じられ

たのではないかと思います。座談会でも参加者から子供の頃の懐かしい話しが尽きませんでし

た。記憶はきわめて個人的なものですが、その時代の人々が共有する記憶(集合的記憶)はそ

の時代に生きた人々にとって、アイデンティティや社会の中での自分の位置づけを支える重要

な役割を担っているそうです。 ◆神戸市民にとっての衝撃的な集合的記憶といえば、平成 7 年 1 月 17 日に起こった阪神淡路

大震災が思い出されます。当時、神戸市民は恐ろしい体験を共有しながら互いを思い遣り、同

じ被災者として体験したことのない一体感を共有しました。あれから 19 年が経った現在、震

災体験を共有していない市民も増え、記憶の風化を懸念する向きもあります。安心して暮らせ

る安全なまちづくりのために、これからも震災の記憶を共有し継承に努め、防災意識の向上と

助け合いの精神を市民全員が共有していくことが重要です。 ◆阪神淡路大震災のような衝撃はありませんが、本当に住みやすい環境とはどういうものか、

私たちの子供や孫にはどのような環境のもとで育ってほしいか、「住吉川アルバム」を通じて

望ましい生活環境や未来に向けたまちづくりに思いを馳せていただければ大変ありがたいこ

とです。 ◆写真集の制作には、実に多くの方々のご協力とご尽力をいただきました。写真集に魂を吹き

込んでいただいた大阪府立大学の福永真弓准教授、資料収集に文字通り大汗をかいていただい

た倉田克彦事務局長、本づくりの専門家としてお世話をいただいた神戸新聞総合出版センター

の西真奈美さん、座談会で貴重なお話しをいただいた方々ほか枚挙にいとまがありません。改

めて心から感謝申し上げます。 ◆日本人に馴染みの深いウナギが、とうとう絶滅危惧種に指定されてしまいました。前号と本

号の2回に分けて、当会会員で兵庫・水辺ネットワークの安井幸男さんにウナギの記事を投稿

していただきました。現在、安井さんは神戸市垂水区を流れる福田川で、流域の小学校や市民

団体と協働して、ウナギをシンボルフィッシュとする取り組みを企画されています。どのよう

な取り組みになるのか楽しみで、成果を期待しています。 ◆一年で最も寒さの厳しいこの時期は、梅

の開花が待ち遠しい季節です。もうひと月

もすれば梅の便りもちらほら聞こえてくる

ことでしょう。寒空に 5 枚の花弁をもつ可

憐な花を見ると、春のぬくもりを感じてほ

っこりします。梅の実は健康食品として日

本人の食生活になくてはならないものです

が、梅には 300 種以上の品種があるそうで

す。ちなみに梅の花言葉は「高潔・潔白」

だそうです。

豊かな森川海 第9号

2014年 1月 20日発行

発 行 特定非営利活動法人 豊かな森川海を育てる会

〒655-0007 神戸市垂水区多聞台 3-11-12-603

TEL・FAX 078-782-3164

編 集 白井信雄

イラスト 有村 綾

E-mail [email protected]

http://www7b.biglobe.ne.jp/~yutakana-morikawaumi/