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お酒と腎臓
東邦大学医療センター佐倉病院 腎臓学講座 大橋 靖
Toho University
成人8人に1人は慢性腎臓病(CKD)
いろいろな種類の腎臓病
腎硬化症
糖尿病性腎症
慢性糸球体腎炎
多発性のう胞腎
その他
CKDの定義
腎臓に障害がある、腎臓の機能が低下しているという状態が3ヶ月以上持続している
慢性腎臓病(CKD)は様々な原因で起きる腎臓疾患をひとつの疾患群としてとらえ,患者さんや腎臓医ではない先生方にもわかりやすく病気を理解していただくために定められた慢性的に腎機能が低下する可能性の高い腎臓病の総称です。
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年齢別の慢性腎臓病 (CKD) 患者さんの頻度
日本腎臓学会では,全国 10 の都道府県(北海道,山 形県,福島県,茨城県,東京都,石川県,大阪府,福岡 県,宮崎県,沖縄県)で行われた 574,024 名の健診の データ(男性 240,594 名,女性 333,430 名)をもとに, 2005 年の国勢調査に基づき年齢別の CKD 患者頻度を推 定した。図 7 に示すように,男女とも年齢が高くなるほ ど CKD 患者頻度は高くなる。特にステージ3が多く, 60 歳代では,男性の 15.6%,女性の 14.6%,70 歳代で は男性の 27.1%,女性の 31.3%,80 歳以上では,男性 の 43.1%,女性の 44.5% が相当する。
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慢性腎臓病 (CKD) が進行すると… CKDの リスク
1
CKDの リスク
2
末期腎不全のリスク
脳卒中・心筋梗塞のリスク
腎臓の働きがとうとう10%以下にまで低下すると、自分の腎臓では自分のからだを浄化しきれなくなり、老廃物が蓄積して倦怠感、食欲低下、悪心、嘔吐、頭痛などの尿毒症状が出現したり、体液のバランスがとれなくなり、心不全や肺水腫を起こし、息切れや呼吸苦が出現しやすくなります。放っておけば命にかかわってしまいます。不本意だとは思いますが、命をつないでいくために、ご自身の腎臓をあきらめて、代わりに透析療法で血液を浄化する必要がでてきます。
慢性腎臓病(CKD)があると、狭心症や脳卒中、心筋梗塞の発症率が高くなり、それが原因で亡くなる場合も多いことがわかってきました。
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お酒と利尿(脱水に注意しましょう)
1つ目として、アルコールによる利尿作用が上げられます。お酒を飲んだ以上に尿として水分が出ていってしまうためです。特にビールは利尿作用が強く、1リットルのビールを飲むことで、1.1リットルの水を失うと言われています。アセトアルデヒドがどんどん作り出される前に水分が失われその排出が遅れ、二日酔いになりやすい状態を招いてしまいます。 2つ目の理由は、アルコールを分解する際に水が必要なためです。 アセトアルデヒドは体内で酢酸(お酢に含まれる酸味成分)に分解され、さらに二酸化炭素と水になり、尿や汗、呼気等になって排出されます。その分解過程で必要となる酵素の働きに、水が必要となります。
出典: Copyright ©1996-2019 AJINOMOTO CO.,INC.
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お酒とむくみ (二日酔いになるほど飲まない)
出典: Copyright © TAIHO PHAMACEUTICAL., CO., LTD. 1997-2012
脱水にならないように口渇が刺激されて水を過剰に摂取したり,おつまみに塩分が多いとむくみの原因になります。アルコールが代謝される過程でアセトアルデヒドが産生され,二日酔いの原因となります。 肝機能を増強する食品やカリウムが多く含まれる食品が二日酔いやむくみの解消によいとされています。*なお腎臓病の方はカリウムが多く含まれる食品はおすすめできません。
アルコールの腎臓への影響
アルコールが腎臓に悪影響を及ぼすという明白な根拠のある報告はありません。しかし,中等度以上のアルコール摂取は腎予後に影響があるかもしれません。間接的に肥満や中性脂肪の上昇にも関係します。生活習慣病は慢性腎臓病のリスクになります。節度を持ってお酒を楽しみましょう。
• アルコール類は夕食をつまみにして,食後の晩酌は避けましょう。
• つまみは塩分やたんぱく質,プリン体が多く含まれているものが多いので注意しましょう。
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アルコール多飲者の電解質異常 Beer potomania
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0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
2013年10月 2014年10月 2015年10月 2016年10月 2017年10月 2018年10月
Na K Cl Cr UA GOT GPT γGTP
64歳 男性 聾唖,元ビール工場勤務,アルコール多飲と偏食
めまい,脱水,低血圧 急性腎障害
電解質異常 肝障害 外来点滴
めまい,脱水,低血圧 肝障害 急性腎障害
電解質異常 母,脳梗塞で倒れる
【46歳男性】 【主訴】腹部膨満感 【現病歴】20XX年4月11日に腹部膨満感を主訴に近医受診.5年前から健診でアルコール性肝障害を指摘されており,1ヶ月前から下腿浮腫・尿量低下を認め,体重が49kgから61kgと急激に増加した.近医より4月25日に消化器内科に紹介され,高度の蛋白尿を認めたため,腎臓内科に相談があった。
アルコール肝硬変と腎臓病
<血液検査 >
T-P 5.7 g/dl
ALB 1.6 g/dl
BUN 17 mg/dl
Cr 1.66 mg/dl
eGFR 37.1 ml/min/1.73㎡
AST 44 U/L
ALT 16 U/L
γ-GTP 90 U/L
<尿一般> pH 5.0
蛋白 3+
潜血 3+
<免疫グロブリン> IgG 934 mg/dl IgA 741 mg/dl IgM 100 mg/dl
アルコール肝硬変と腎臓病
コントロール IgA
血中IgAの増加, 血中IgA型免疫複合体(IgA-IC)の出現により, IgA-ICが腎糸球体メサンギウムに沈着し、補体を活性化することで発症する ① IgA、IgA-ICの肝クリアランスの低下 ② 腸管粘膜で産生されたIgAの腸肝循環の障害 ③ 門脈大循環シャントの存在によりIgA-ICが肝で処理されない ④ アルコールの消化管粘膜障害により, 粘膜固有層内および血中のBリンパ球のIgA産生が亢進
Everybody pees
いいお酒といい人生をお楽しみください