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Hitotsubashi University Repository
Title 所得再分配効果の測定 : 不平等性の擬順序と再分配関数
Author(s) 吉岡, 慎一
Citation 一橋研究, 5(2): 51-68
Issue Date 1980-09-30
Type Departmental Bulletin Paper
Text Version publisher
URL http://doi.org/10.15057/6351
Right
5j
所得再分配効果の測定一不平等性の擬順序と再分配関数*一
吉 岡 慎 一
はじめに
現代の財政政策の諸目標の一つである所得・富の再分配の問題には,種々の
側面がある。個人間の分配,世帯間の分配,産業間の分配,地域間の分配等が
考えられるが,小論は世帯間の所得分布を平等化する意図をもった財政の所得
再分配効果を租税と社会保障によって,検討しようとするものである。
従来この分野の研究は再分配効果の時系列的な比較がほとんどであるがω,
小論では世帯人員グループ別の横断面分析を行なう。世帯の分類には,公共政
策の目的によって何等かの意味付けが必要である。社会的公正の観点から次の
二つの公平原則が要請されよう。同一二一ドの世帯には同一所得が要請され
(水平的公平性),二一ドの異なる世帯にはその二一ドに応じた所得が要請され
る(垂直的公平性)。
世帯の二一ドは世帯規模(人員数)と世帯の年令構成によって基本的に決ま
るものであるが,ここでは資料の制約上,世帯規模によって二一ドが表わされ
ると想定し,所得と世帯規模によって二元分類された資料が用いられる。また
分析の力点は水平的公平性に置かれる。従っでこのような意味で,小論は財政
による再分配政策への部分的な接近である。
ところでNichols㎝一Britton〔12〕はジニ係数を利用してイギリスの所得再
分配効果を計測しているが,この論文に対して,Levitt〔1O〕やHarrison〔5〕
は次のような方法論上の問題点を指摘している。
(1)ジニ係数(或いはその他の不平等測度)で順位付けを行う前に,口・一レ
ソツ曲線の交叉の有無を調べるべきであるω。
52 一橋研究 第5巻第2号
(2)ジニ係数の標準誤差を計測しなければ,二つのジニ係数の相違が統計的
に有意であるか否かを判定できたい㈹。
更に次の問題点を指摘できよう。
(3)順序数にすぎない不平等測度の増減の度合によって,再分配効果の度合
を論じることには,問題があろう。
Atkins㎝〔1〕やDasgupta et al.〔4〕が示すように,ローレンツ曲線が
交叉する場合,狭義S凸関数型の測度の集合の中で,異なる判断を示す測度の
組が必ず存在する。また我が国の実証分析において,ローレンツ曲線の交叉に
しばしば直面するω。従って(1)の指摘は特に重要である。そこで小論は不平等
性比較のための二つの擬順序に対する二つの曲線を吟味する立場を採り,特定
の測度は採用されない。更に擬順序による判断を統計的に検定するために再分
配関数が特定化され,推定される。このような方法によって,(2)及ぴ(3)の難点
が間接的に回避される。
1.分析方法
1.1所得再分配の定義
m人の個人からなる社会において,第ξ個人の課税前の所得をγo{(ξ=1,
・・,m)で表わすとき,課税前の所得分布は,
(1)η=(恥,γ。。,・…・・,r。皿).
で与えられる。次に第ε個人の租税をτ。とするとき,課税後の所得は,
(2)K=γorハ,ξ=1……,m.
で表わされるから,その分布は,
(3〕r=(γ。,γ。,……,γ冊).
と書ける。租税分布,
(4)τ=(τ、,τ雪,一・・,τ。).
において,乃<Oの場合,負の所得税や社会保障給付等の便益を表わすと解釈
するなら,τは一般に所得再分配の表現ヘクトルである。
「の各要素は所得の関数であると仮定,
(5)乃=/(γ。互),{=1,……,m.
所得再分配効果の測定 53
すると,所得再分配は12)及ぴ15)式によって規定されるから,関数!を再分配関
数と呼ぶ。
さて所得再分配の基礎になる所得は「実収入」であるから,以下では単に所
得或いは課税前所得というとき,「実収入」を意味することにする。実収入γo
に基づく次の三種類の所得を比較することによって,財政による再分配効果が
論述される。
16)γI=γo-Tl,
(7)γ皿=γ。一(TI+丁皿),
(8)γ皿=γ。一(rI+丁皿十∫).
ここにT1は勤労所得税,τ皿はその他の税ω,sは社会保障費‘6,を夫々表わ
す。γIを所得税引後の所得,γ皿を課税後所得,γ皿を財政政策後の所得と
夫点呼ぷ場合がある。
1.2不平等性の比較の方法
複数個の所得分布を比較する場合,最低限次の二つの条件を満たす擬順序を
採用する必要がある。
(TP) ピグー・ドルトンの移転原理:高所得者から低所得者への,所得順位
を逆転させることのない所得移転によって,不平等度は減少するω。
(A) 無名性:個人所得の並べ変えによって,不平等度は変化しないω。
そのような擬順序の中で,現在実証分析に利用可能な擬順序はローレンツ擬順
序(L.Q.O.)とAI襯1噴序(A.I.Q.0.)とであるω。二つの分布の総所得
が等しい場合は,この二つの襯11頁序は同一の結果をもたらす。
いわゆるローレンツ曲線が交叉しないときにのみ,不平等性の比較を行なう
L.Q.0.は上の二条件の他に次のr相対不変性」を満たす。
(RI) 相対不変性1凡べての個人所得が等比例的に変化したとき,不平等は
不変である。
他方(RI)の定義において,「等比例的に」をr等額だけ」で置き換えたものを
(AI)r絶対不変性」と呼ぶ=1o,。A.I.Q,O.は(TP),(A)及ぴ(AI)を満た
す襯順序である。L.Q.0.に対応するローレンツ曲線と同様に,A.I.Q.0.に
54 一橋研究 第5巻第2号
対応する曲線を作成できる{11〕。A.I.Q.O.とは次の直交座標点を結んだ曲線
(9)が交叉しないとぎにのみ,不平等性の比較を行なうものである。
(・)(ゴ軌払唯1).
ここに石が第プ階級の世帯数,巧が第プ階級の平均所得,μが分布全体の平
均所得,wが階級数を夫々表わすとき,
屹 σΦ Z此=Σ石・(乃一μ), 后=O, 1, ・・・… , M、
トO
と書ける。
性質(RI)と(AI)とは二つの分布において総所得が異なる場合に対する異
なる価値判断であるから,実証研究においては,二つの擬順序を併用すること
が望ましい。従って小論では不平等性の比較の方法として,両者を採用する。
さて,再分配関数がある特定の形をしているなら,ローレンツ曲線や曲線(9)
を実証的に調べたくとも,L.Q.0.やA.I.Q.0.による判断が可能であり,
また得られた結果が統計的に有意か否かを検定することができる。現実の租税
関数は必ずしも線形ではないがt12〕,近似的に次式で表わされると想定する。
⑩ 乃=α十βγ01,ξ=1,……,m.
ここに,α及びβはパラメターである。
次に再分配関数ωを評価するために二つの擬順序に対応する一般的な測度を
導入する。周知のように(TP)及ぴ(A)を満たす不平等測度は狭義∫凸関
数で与えられるが,この関数の内,(RI)((AI))を満たす測度を相対不変(絶
対不変)測度と呼ぴF(G)で表わす。(1),(2),(3),(4〕及ぴω式から,
⑫ γ=一αη十(1一β)I㌔.
を得る。ここにη=(1,1,・・・…,1)はm個の1を要素にもつベクトルである。
このとき,
㈹ F(r)くF(η),αくO,
Φ4 F(r)>F(I㌔), α>O,
㈲ G(r)くG(η),0くβ<1,
Φ⑤ G(r)>0(一㌔), β<O.
所得再分配効果の測定 55
の判断が得られる。ここにF(γ)(G(r))は分布γの測度F(G)による不
平等度を表わし,記号く(>)は左辺の分布の方が右辺の分布より不平等でな
い(ある)ことを表わす。従ってω式において,α(<O)の値が小さいほどL.
Q.0.の意味で,β(>O)の値が1に近づくほどA,I.Q,0.の意味で再分配後
の所得分布「は平等化する。
2.不平等性の擬順序による再分配効果の比較
2.1世帯人員グループ別の再分配効果のローレンツ擬順序による比較
〈L.Q.0.による比較〉第1表は『全国消費実態調査』の勤労者世帯の現金
実収入階級別データを利用して,世帯人員グループ別に,種々の再分配前後の
所得分布の不平等性をL.Q.0.で比較した結果である㈹。ローレンツ曲線が
交叉しない分布間では,一般的な相対不変測度Fによって不平等性の表現がで
きるから,次の観察が得られる。
(2.1)世帯人員グループ目,目及び(匂において,
舳)・・(η)・^工1二1二
が成り立つ。
(2.2)世帯人員グループ四及び㈹において,
F(η)>F(rI)、
が成り立つ。
(2.3)世帯人員グループ㈲において,
肌)・^二1二1:>舳
が成り立つ。
これらの観察を再分配効果の有無で言い換えると,次の結論を得る。
(2.4) グループ目,目,㈲及ぴ㈹において,所得税とその他の税に再分配
効果がある:14〕。
(2.5) グループ㈲及ぴ㈹において,所得税にのみ再分配効果がある。
(2,6) どの世帯グループにおいても,社会保障費には再分配効果がない。
56 一橋研究 第5巻第2号
第1表 世帯人員別再分配前後の所得分布のL.Q.O.による比戦
目人世帯 I II ㎜
O > 〉 〉
I 〉 >
II X(1〕
目人世帯
O > 〉 〉I > >II X11〕
(四人世帯
O > x(1〕 X(1)
I X(1) X11〕
II X(2〕
㈲人世帯
O > 〉 >I > x(1〕
II x12〕
㈹人世帯
O > X(I〕 X(1〕
I X(1〕 X(2〕
II X(1〕
㈹人世帯
O > 〉 〉I > >II X(1)
(資料)
(注)1。
2.
3.
総理府統計局r全国消費実態調査報告』1974年版により計測。
×:回一レンツ曲線が交叉することを表わす。()内の数字は,交叉の
回数を示す。
O:課税前の所得(実収入)分布 I:所得税引後の所得分布
皿:課税後の所得分布 皿:財政政策後の所得分布
>:左側の分布の方が右側の分布より不平等であることを表わす。
所得再分配効果の測定 57
次にローレンツ曲線が1及ぴ2個所で交叉する場合を取り出すと第2表を得
る。分析対象とする世帯にかなり強い制限を設けると,次のような観察が可能
である。
(2・1・1)巨人世帯において,低所得階級から約80%を優先するなら,分布
皿は分布Iより平等である。
(2.1.2)㈲人世帯において,低所得階級から約1%を無視するなら,分布
Iは分布Iより平等である。
(2.1.3)㈲人世帯において,低所得階級から約3%を無視するなら,分布
皿は分布Iより平等である。
また第2表から,観察(2.6)の原因が削る。この原因は,二人世帯を除いた各
々の世帯グループにおいて,ローレンツ曲線の中央部付近(累積世帯で36%~
61%)で,課税後の所得分布皿と財政政策後の分布皿とが交わっていることに
よる。例えば三人世帯において,低所得階級から約57%以下の世帯を「優先す
る」なら,社会保障費に再分配効果があるといえるが,逆に約57%以上の世帯
をr優先する」なら,マイナスの再分配効果を得る。従ってローレンツ曲線が
交叉している場合,分布全体としての判断は(2.6)にたる仙〕。
策2表 ローレンツ曲線が1点及ぴ2点で交叉する場合
1 交点の位置 ! 分布の組合せ1 交叉部分㍉ !世帯(%) 所得(%)
皿一皿2 6-6 80.1524 67.2620
皿一I
㈲
O-IO-1皿
I一皿I一皿I一皿
5-5
2-22-2
2-22-22-25-5
57.0428
0.6958
0.6630
0.9961
0.7720
0.6214
47.5209
42.1301
0.1275
0.n58
0.2373
0.1564
0.1003
34.8544
58 一橋研究 第5巻第2号
I一皿I一皿
2-22-26-6
O,2431
0.2842
61.6998
0-IO一皿I一皿I一皿
皿一I
皿一I
2-22-23-32-28-8
5-5
1.0986
0.5075
3.1167
0.6565
97.7982
42.2350
5-5 36.0189
0.0296
0.0437
47.2209
0.2996
0.1040
1.0451
0.1547
94.7411
28.9832
22.9256
(資料)
(注)1。
2,
3.
4.
第1表に同じ。
交点が1個の場合,交点を境に全世帯は低所得階級から順に二つの階級
A・Bに分けられる。このとき・左側の分布は・階級Aで右側の分布より
平等である。交点が2個の場合・同様に三つの階級A・B・Cに分けられる。このとき・左側の分布は・階級Aで右側の分布より平等である。
第1表に同じ。
データが9階級であるから,ローレンツ曲線は9個の線分をもっている。
低所得階級の方から順に線分に番号を付ける。
世帯グルーブの番号は第1表を参照。
2.2世帯人員グループ別の再分配効果のAI擬順序による比較
<A.I.Q.0.による比較〉A.I.Q.0.によって,第1表と同様の不平等性
の比較を行ったのが第3表である。世帯人員グループ別には,すべての分布が
比較可能である。従って一般的な絶対不変測度Gによって,次の観察が得られ
る。
(2.7) すべての世帯人員グループにおいて,
0(η)>G(rl)>0(r画)>G(r皿).
が成り立つ。
このことはA.工Q.O.によると,すべてのグループにおいて,所得税,その
他の税及び社会保障費に再分配効果があることを意味する。
所得再分配効果の測定 59
算3表 世帯人員別再分課前後の所得分布のA.1.Q.O.1こよる比蚊
。 I II ㎜
OIu 〉 〉〉 >>〉
日
OIlI
> 〉〉 >〉〉
㈲
OIu > 〉> 〉〉>
㈲
0111
〉 >> >>>
㈹
OIn > 〉> 〉>>
㈲
OIn > >〉 >>〉
(資料)第1表に同じ。
(注)11世帯グループの番号は第1表を参照。
2.第1表に同じ。
3.第1表に同じ。
60 一橋研究 第5巻第2号
3.再分配効果の有意性の検定
ここでは前節で得られた記述的な結果が統計的に有意な結果であるか否かが
検定される㈹。ただし所得再分配の表現ベクトル「の要素が所得の関数であ
ると想定できる場合のみが検討される。
3.1線形租税関数の推定と比較
第4表は世帯人員グループ別に線形租税関数
①カ τj=α1+β1γω十εゴ, ノ=1,・・・… ,」V.
を推定した結果である。ここにTは勤労所得税,γOは課税前所得,α1,β1はパ
ラメター,εは誤差項07〕,wは階級数を夫々表わす。すべてのグループにお
いて,切片α1の符号はマイナスでありu8〕,かつ仮説亙。:α1=0が有意水準
5%で棄却される。また0<β、<1であり,かつ仮説Ho:β、=Oが有意水準
1%で棄却される。従って統計的に有意な次の結果を得る。
第4表 線形租税関数の推定
硯1 βI 重相関係数I
1巨人世帯 一6138 「 O・0705! (一・.…)榊」(・…)榊・1
」目
!__
」㈲
1㈲
1㈲
一5049
(一3,158)淋
一4192
(一2,838)**
一5164
(一3,277)紳
一3639
(一2,542)榊
一2187
(一2,859)*ホ
O.0566
(8,879)*榊
O.0459
(7,423)榊*
O.0471
(8,123)ホ*‡
O.0346
(5,958)***
O.0229
(7,212)*榊
O.945
0.952
0.933
F 比
68,164*ホ*
78,841***
55.105*}*
0.944 65,980*ホ*
O.901
0.930
35,501*}“
52,024*‡*
(資料)第1表に同じ。
(注)1・ 自由度修正済の重相関係数。
2・()内の値は,仮説∬:α=O(orβ=O)に対するま統計量である。
3.*:有意水準10%,榊:有意水準5%,榊*:有意水準1%.
所得再分配効果の測定 6j
(3.1)線形の租税関数を想定すると,すべての世帯人員グループにおい
て,L.Q,O.とA.I.Q.0.との意味で所得税に所得再分配効果がある。
これは所得税に関する前節の結果を統計的に検証している。
次にα・の値を基準にしてL.Q,O.の意味で再分配効果の大きい順にグルー
プを並べると,
(O.1) C⇒,㈲,目,四,内,㈹
を得る。またβ、の値を基準にしてA.I,Q.0.の意味で再分配効果の大きい順
にグループを並べると,
(O.2) 〔⇒,日,㈲,四,㈹,㈹
を得る。そこでグループ間におけるこのような再分配効果の差異を検定する必
要がある。従って二つの回帰式の対応する係数ごとに,その差異を検定する。
そのために,⑰式ヘダミー変数,
・一^11慧11種1:二111;:ll::貫;憲二1
を導入し,次のモデルを想定する。
⑱τ戸α螂十β出汁(αrα螂)D+(βrβリ)D・γ。汁ミゴ,
=γoリ十r1口γoゴ十γ舳ρ十佃エρ・γoゴ十εゴ,
プ=尻、,……,加,8ユ,一・・,9〃,
尻=目,目,・…・・㈹,
9=目,㈲,……,㈹,(尻≠9).
⑱式を推定した結果が第5表である。グループ(κ)とグループ(g)の切片
の相等性を検定するためには,仮説Ho:γ舳=α九一α。=Oを検定すればよい。
直ちに次の観察を得る。
(3.2)L.Q.O.によると,所得税の再分配効果に世帯グループ間で有意な
差はない。
従って(O.1)の順位付けは無意味である。しかし仮説Ho:γ3切=β九一β藺=O
の検定から,(0.2)の順位付けの一部が立証される。巨人世帯の再分配効果は
㈲,㈲,㈹及び㈹人世帯の効果より大きく,色人世帯の効果は㈹及ぴ㈲人世帯
の効果より大きく,㈲及び囚人世帯の効果は㈹人世帯の効果より大きいα帥。
62
(bト(9〕1
1⇒}
目一㈲
1⇒一㈲
■←㈲
一ト㈲
ぼ←因
嘗←㈲
偉ト㈱
目←旧
四一㈲
㈲一㈹
国一同
㈲一㈹
㈲一㈲
㈲一㈲
い・1
一橋研究 第5巻第2号
策5表 線形租税間数の比較
γl l・.川γ・ γ・ 1震編纂
一5049〔1841〕
一4192〔1831〕
一5164〔1765〕
一3639〔1787〕
一2187〔1597〕
一4192〔1569〕
一5164〔1542〕
一3639〔1529〕
一2187〔1289〕
一5164〔1465〕
一3639〔1439〕
一2187〔1176〕
一3639〔1569〕
一2187〔1338〕
一2187〔1166〕
O.05661(7,712)榊
一1089 0.0140(一〇、414) (1,316)
00459「一1945(・二…)榊1(一M・・)
O.0246(2,317)榊
(1蜘1(二。1;1、)!(1蜘
O.0346(4,773)‡**
一2499(一〇.986)
O.O・・91一・…
(3・455)榊P(一1・761)
O.0360(3,493)***
O,0476(5,160)‡榊
O.0459(6,991)榊
一 857 1 0.0107(一㈹・)1(・・…)
O.945
0.940
0.943
0.937
0.948
0.0471(8,304)*榊
O.943
l15(0,05王プ
O.0094 0,945
(1,090)
O.0346 -1411
(5578)榊」(一0657)
・.・…1一・…(4・282)榊u(I1・597)
O.0471(8,739)榊
O.0346(5,927)榊*
O.0229(4,693)**ホ
O.0346(5,436)榊
O.0229(4,125)榊
O.0229(4,732)榊
972(O.447)
一554(一〇.269)
一2005(一1,206)
一1526(一〇.712)
一2977(一1,645)
一1451(一一〇.889)
O.0220(2,552)榊
O.0337(4,613)**}
O.938
0.951
_O.001210,934(一肌…):
O.0114(1,341)
O.0230(3,318)*榊
O.0126(1,514)
O.917
0.932
0.928
(3,395)*榊
帆02・21仏941
0.0116(1,738)
O.904
F比
48,502‡ホ}
44,280***
46,309**‡
42,125*ホ#
51一.170‡ホ*
46,130***
48,555***
42,125***
55,010*‡*
40,933***
30,861***
38,774***
36,058ホ*ホ
44,448**ホ
26,420‡ホホ
(資料)第1表に同じ。(注)1.世帯人員グループκとグループ8の比較。 2・ 自由度修正済の重相関係数。 3・〔〕内の値は標準誤差・()内の値は・仮説 ∬:佃=O(力=1・2・3)に 対する2統計量である。
l1蓑搬管蓄蕊,聾猫脇∬、伍ユ。。の検定を参胤 6。⑱式において,~(〃)はグループκ(8)の第皿階級を表わす。
所得再分配効果の測定 63
従って少なくとも次の統計的観察が要約される。
(3.3)A.I.Q.O.によると,巨人世帯の所得税の再分配効果は㈲,㈲,㈹
及び㈲人世帯の効果より大きく,また㈹人世帯の再分配効果は目,目,働及
び㈲人世帯の効果より小さい。
3.2線形社会保障費関数の推定と比較
第6表は租税関数の場合と同様に社会保障費関数,
⑲S戸α。十β,γ。ゴ十εゴ,ゴ=1,……,〃
を推定した結果である。五人世帯グループに関する仮設”。:α,=Oは有意水
準10%で棄却されるが,その他のグループにおいては,棄却されない。しかし
すべてのグループにおいて,Oくβ・<1であり,かつ仮説∬o:β,=Oが有意水
準1%で棄却される。従って次の統計的観察を得る。
(3.4)線形社会保障費関数を想定すると,目,目,㈲,内及ぴ㈹人世帯に
おいて,L.Q.0.の意味で社会保障費に所得再分配効果がなく,㈲人世帯に
策6表 線形社会保障資開教の推定一 一 . ユ 皿 一 一 一 一 一 一
。, i β, 重相関係数1 F比一 一 一 I
巨人世帯2236 0.0386 O.930 52,403‡**
(1,710) (7,239)榊
一 ■ 一 一 一 一 I ■ ■ ■
@ 一
貝2016 O.0415 O.956 85,354ホ榊
(1,787) (9,239)榊
L
㈲1819 O.0436 O.961 1 96,478榊
(1,715) (9,822)榊 i『 … I I
㈲3146 O.0346 O.901 35,438榊ホ
(1,994)‡ (5,953)*榊
㈹1224 O,0477 O.970 1271622*榊
(1,174) (11,297)榊ホ
旧187 O,0507 O.991 424,897紳‡
(O.315) (20,613)榊*
(資料)第1表に同じ。
(注)1、 第4表に同じ。
2.第4表に同じ。
3.第4表に同じ。
64 一橋研究。 �T.巻第2号
算7表 線形杜一保障資歴籔の比蚊
(11片一(9〕I・
卜目
■ト国
■ト㈲
目一㈹
仁ト㈲
目一㈲
目一㈲
目ト㈹
目一㈲
国一㈲
㈲一㈲
㈲一㈹
同一㈹
㈲一出
㈲一㈲
γ0 γ1
2016〔1208〕
1819〔1201〕
3146〔1405〕
1224〔1178〕
187〔1027〕
1819〔1116〕
3146〔1345〕
1224〔1095〕
187〔925〕
3146〔1308〕
1224〔1041〕
187〔859〕
1224〔1409〕
187〔1294〕
187〔861〕
1(9:9鍔榊
0.0436(8,673)*‡ホ
O.0346(6,685)納ホ
O.0477(1O,O02)ホ‡*
O.0507(11.888)榊*
O.0436(9,339)榊*
O.0346(6,982)淋*
O.0477(1O.766)*ホ*
O.0507(13,191)キ榊
O.0346(7,181)*榊
O.0477(11,321)***一
O.0507(14,219)***一
O.0477(8,366)榊*
O.0507(9,431)*榊
O.0507(14,172)*榊一
γ宮1・・@霧懐 F比
220(O.128)
一一 E・・…1・・…
(’O・425)1
44,606*}‡
418(O,248)
一〇.0050(一〇、722)
O.943
一910(一〇.439)
1012(O.605)
2050(1,421)
198(O.127)一
O.0040 1 0,909(O・495)i
一〇、0091「
(一1,347)O.951
一〇、0121
(一2,038)ホ
一〇.0021(一0,328)
O.964
0.955
一1130一!
(.O・576)i(1釧O・924
792(O.515)。
一〇.0062(一1.O03)
1830(1,421)
一〇、0091(一1,744)
一ユ328(一〇.683)
O,0090(1,172)
594(OI399)
一〇.0041(一〇.671)
1632(1,344)
1922(O,999)
一〇.0071
(一1,394)
一〇.0131(一1,760)
O.961
0.973
0.925
0.964
0.976
0,935
46,457ホホ*
27,868***
54,869中**
76,270ホ*ホ’一
60,256ホ**
34,017}**
691762ホ**
103,280ホ**
34,716***
74,839***
116,423}**
40,506***
2960(1,690)
1’(二蝪榊10’948 50,824*非ま
1038(O.861)
一〇.0029(一〇.595)
O.979 132,176}**
(資料)
(注)1.
2.
3、
4、
5.
第1表に同じ。
第5表に同じ。
第5表に同じ。
第5表に同じ。
*:有意水準10%,軸:有意水準5%,榊*1有意水準1%、
仮説”:γo=Oの検定は,第6表の仮説”:α2:Oの検定を参照。
所得再分配効果の測定 65
おいて,マイナスの再分配効果がある{20〕。
(3.5)線形社会保障費関数を想定すると,すべての1世帯グループにおい
て,A.I.Q.O.の意味で社会保障費に再分配効果がある=31〕。
上の観察から,グループ間のα,の差異を論じても無意味であるが,β。の差
異の検定は重要である。β。の値を基準にしてA.I.Q.0.の意味で再分配効果
の大きい順にグループを並べると,
(O.3) ㈹,㈹,㈲,目,(=〕,㈲
となる。租税関数の場合と同様に⑱式を仮定して,ニグループの回帰式ごとに
係数の検定を行った結果が第7表である=舳。仮説∬o:舳Fβ1、一β螂=Oの検
定により,次の統計的観察を得る。
(3.6)A.I.Q.0.によると,㈲人世帯の社会保障費の再分配効果はO及ぴ
㈲人世帯の効果より大きい。
おわりに
小論は再分配要因一所得税,その他の税,社会保障賢一の個々の所得再分配
効果を中心に論じた。最後に財政政策後の最終的な所得分布が当初の所得分布
より平等化したのか,否かを要約しておこう。第1表と観察(2.7)とから次の
結論が得られる。
(411)L.Q,O.によると目,目,国及び㈲人世帯において,財政政策後の
所得分布は当初の所得分布より平等化する。しかし㈲及び㈹人世帯において
は平等化しない。
(4.2)A.I.Q.O.によるとすぺての世帯グループにおいて,財政政策後の
所得分布は当初の分布より平等化する。
小論ではこれらの原因を,再分配関数を導入して間接的にではあるが,統計的
に検証した。
ローレンツ曲線や曲線(9)が交叉していない場合,擬順序による記述的結果は
再分配関数に線形性を仮定する「粗い」基準による統計的結果とほぼ同一のよ
うである。だが曲線が交叉する場合,曲線の両端近くの微妙な交叉は無視する
という「粗い」基準による記述的結果は,線形再分配関数による統計的結果と
66 一橋研究 第5巻第2号
必ずしも同一ではない(観察(2.1,1)と(3.4)との対比)。従来のこの分野で
利用されている不平等測度による分析法は,前者の「粗い」基準による記述的
方法に対応する。従って曲線が交叉する場合,測度による記述的結果も再分配
関数による統計的結果と必ずしも一致しないと思われる。しかし小論のように
擬順序と再分配関数とを併用する方法によって,曲線が交叉していない場合,
記述的結果が統計的に検証可能になり,また曲線が交叉する場合,測度の誤用
のために所得分布についてどのような情報が失なわれるのかを明示することが
できる。
擬順序を表わす曲線の推定には,各大の所得階級内では完全平等であるとい
う仮定に基づいて,多角形関数が利用されたが,これは一次のスプライン関数
を推定したことになっている。曲線の「滑らかさ」の観点から,例えば三次の
スプライン関数による近似も考えられよう。
(注)
*
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
(8)
(9)
(lO)
(11)
(12)
小論の計算はrFACOM230-25システム」(一橋大学産業経営研究所)を利
用して行なわれた。
貝塚・新飯田〔17〕,村上〔18〕及び石〔15〕を参照。但し石〔16〕第2章におけ
る『所得再分配調査報告』(厚生省)の世帯業態別データを用いた横断面分析は
唯一の例外であろう。
Levitt〔10〕,p.340,Harriso皿〔5〕.p.347.
Levitt〔lO〕、p.340.
この点は吉岡〔22〕において予想され,八束・吉岡〔20〕において確認されてい
る。
固定資産税,住民税,自動車税,相続税,登録税,関税等。
厚生年金保険料,国民年金保険料,失業保険料,健康保険料等。
Dalton〔3〕を参照。
Kolm〔7〕では,不偏性(impartiality)或いは無差別性(mn-discrimation)
と呼ばれている。
LorenzQuasi OrderiIlgとAbsolutely IIlvariaIlt Quasi Orderingの略
である。
絶対不変型の測度はKolm〔8〕,〔9〕において提案されている。
Yama㎜oto_Yatsuka〔14〕.
データが異なれば平均税率丁/γoの方が線形関数に近似するという批判につ
いては,村上〔19〕(特に脚注8,p.371)を参照。
所得再分配効果の測定 67
(13)世帯人員グループ間の所得分布の(タイル測度による)比較については吉岡
〔21〕を参照。ローレンツ曲線の交叉状況を調べると,同資料に関する限り,タイ
ル測度は約O.67%以下の低所得世帯を無視している。
(14)所得分布が租税によってL・Q・O.1の意味で平等化するということは・租税
が累進的であることを意味する。ローレンツ曲線による累進度の測定については
Khetan-Poddar〔6〕を参照。
(15) しかしこのような場合・社会保障の目的から考えて・二・三・六及び七人世帯
において低所得階級では再分配効果があると判定するなら,交叉が2個所ある四
及び五人世帯においてはマイナスの効果があると判定される。
(16)Reynolds-Smolensky〔13〕はローレンツ曲線の関数形を特定化することによ
って,ジニ係数の差異を間接的にチ目ウ検定している。
(17)誤差は互いに独立に正規分布N(O,σ2)に従うと仮定する。
(18)現行の税制が「負の所得税」の体系を採用していることを意味する訳ではな
い。これはL.Q.O.の意味で所得分布を平等化する累進構造を示しているので
ある。
(19)一「帯人数が少ないグルーブほどA.I.Q.0.の意味で再分配効果が大きいとい
えそうである。
(20)(3.4)の前半部分は観察(2.6)を統計的に検証している。
(21)(3・5)は観察(2・7)の一部を統計的に検証している。
(22) ここでは,τは社会保障費∫を意味する。
参 考文 献
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〔22〕 ..。..「所得不平等測度の変動傾向」『一橋論叢』821979年 pp.
111-125.
(筆者の住所:国立市東2-4 一・橋犬院生寮)