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三菱重工技報 Vol.53 No.1 (2016) 機械・設備システム特集
製 品 紹 介 27
新型中型電動射出成形機 MEⅢシリーズ
Mitsubishi Electric Injection Moulding Machine MEⅢ series
三 菱 重 工 プラスチックテクノロジー(株 )
営 業 部
三菱重工プラスチックテクノロジー(株)(以下,MHI-PT)の中型電動射出成形機は,2000 年に
販売開始した ME シリーズについて改善を加えながら 2004 年に MEⅡシリーズにモデルチェンジ
するなど,10 年以上にわたって市場で高い評価を得てきた。油圧式射出成形機に対する電動射
出成形機の成形安定性,省エネの優位性が当たり前となった現在,成形プロセスの更なる高精
度化が望まれている。
MHI-PT は,そのニーズを鑑み,“成形プロセスの高精度リアルタイム統合制御”を実現する新
型制御装置 MAC-Ⅸを開発し,新型電動射出成形機MEⅢシリーズ(型締力 550tf~850tf)へ搭
載したので,その特徴を紹介する。
|1. MEⅢシリーズの仕様
表1に新型電動射出成形機MEⅢシリーズの仕様を示す。
表1 仕様(その1)
型 式
550MEⅢ 650MEⅢ
50 70 100 70 100 160 200
増圧 標準 増圧 標準 増圧 標準 増圧 標準 増圧 標準 増圧 標準 標準
射
出
スクリュ径 mm 62 70 70 80 80 90 70 80 80 90 90 105 115
理論射出容量 cm3 1055 1345 1540 2010 2260 2860 1540 2010 2260 2860 3340 4540 5450
射出質量 ポリスチレン(PS)
g 970 1240 1410 1845 2080 2630 1410 1845 2080 2630 3070 4180 5010
ポリエチレン(PE) 780 995 1140 1490 1670 2120 1140 1490 1670 2120 2470 3360 4030
大射出圧力 MPa
(kgf/cm2)
206
(2100)
177
(1800)
206
(2100)
177
(1800)
206
(2100)
177
(1800)
206
(2100)
177
(1800)
206
(2100)
177
(1800)
206
(2100)
177
(1800)
147
(1500)
大保持圧力 177
(1800)
147
(1500)
177
(1800)
147
(1500)
177
(1800)
147
(1500)
177
(1800)
147
(1500)
177
(1800)
147
(1500)
177
(1800)
147
(1500)
123
(1250)
射出率
標 準(S)
125mm/sec
cm3/s
375 480 480 630 630 795 480 630 630 795 - - -
高 速(H)
160mm/sec 485 615 615 805 805 1015 615 805 805 1015 1015 1385 1660
超高速(U)
250mm/sec 755 960 - - - - - - - - - - -
可塑化能力 ポリスチレン(PS)
kg/hr 180 250 230 320 350 470 230 320 350 470 445 630 610
ポリプロピレン(PP) 105 150 135 190 210 285 135 190 210 285 270 380 370
スクリュ 高回転数 rpm 210 200 160 200 160 152 113
型
締
型締力 kN(tf) 5390(550) 6370(650)
型盤寸法(H×V) mm 1330×1330 1530×1410
タイバー間隔(H×V) mm 900×900 1070×970
型締ストローク・ 大 mm 900 1000
デイライト・ 大 mm 1700 2000
金型厚さ mm 400~800 400~1000
エジェクタ 押出力 kN(tf) 127(13.0) 196(20.0)
ストローク mm 180 200
一
般
ヒータ容量 kW 15.5 19.7 25.1 19.7 25.1 35.3 38.6
機械寸法(L×W×H) m 8.5×2.3×2.2 8.8×2.3×2.2 9.6×2.3×2.3 9.4×2.6×2.4 10.2×2.6×2.4 10.7×2.6×2.4 10.9×2.6×2.4
機械質量 t 29 31 35 36 40 44 44
三菱重工技報 Vol.53 No.1 (2016)
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表1 仕様(その2)
型 式
850MEⅢ 850MEⅢW
100 160 200 100 160 200
増圧 標準 増圧 標準 標準 増圧 標準 増圧 標準 標準
射
出
スクリュ径 mm 80 90 90 105 115 80 90 90 105 115
理論射出容量 cm3 2260 2860 3340 4540 5450 2260 2860 3340 4540 5450
射出質量 ポリスチレン(PS)
g 2080 2630 3070 4180 5010 2080 2630 3070 4180 5010
ポリエチレン(PE) 1670 2120 2470 3360 4030 1670 2120 2470 3360 4030
大射出圧力 MPa
(kgf/cm2)
206
(2100)
177
(1800)
206
(2100)
177
(1800)
147
(1500)
206
(2100)
177
(1800)
206
(2100)
177
(1800)
147
(1500)
大保持圧力 177
(1800)
147
(1500)
177
(1800)
147
(1500)
123
(1250)
177
(1800)
147
(1500)
177
(1800)
147
(1500)
123
(1250)
射出率
標 準(S)
125mm/sec
cm3/s
630 795 - - - 630 795 - - -
高 速(H)
160mm/sec 805 1015 1015 1385 1660 805 1015 1015 1385 1660
超高速(U)
250mm/sec - - - - - - - - - -
可塑化能力 ポリスチレン(PS)
kg/hr 350 470 445 630 610 350 470 445 630 610
ポリプロピレン(PP) 210 285 270 380 370 210 285 270 380 370
スクリュ 高回転数 rpm 160 152 113 160 152 113
型
締
型締力 kN(tf) 8335(850) 8335(850)
型盤寸法(H×V) mm 1590×1590 1900×1900
タイバー間隔(H×V) mm 1070×1070 1320×1320
型締ストローク・ 大 mm 1200 1200
デイライト・ 大 mm 2300 2300
金型厚さ mm 500~1100 500~1100
エジェクタ 押出力 kN(tf) 196(20.0) 196 (20.0)
ストローク mm 200 200
一
般
ヒータ容量 kW 25.1 35.3 38.6 25.1 35.3 38.6
機械寸法(L×W×H) m 10.9×2.6×2.6 11.4×2.6×2.6 11.6×2.6×2.6 10.9×2.9×2.6 11.4×2.9×2.6 11.6×2.9×2.6
機械質量 t 50 53 53 55 59 59
注) 1. 本表の数値は予告なしに改良変更することがあります。 2. 可塑化能力は,弊社標準試験条件による値です。 3. 射出質量・射出率・可塑化能力は,使用樹脂・成形条件により異なります。
能力一杯でご使用の時は弊社にご相談下さい。
|2. MEⅢシリーズの特徴
図1に示すように,MEⅢシリーズは,(1)ワイド型盤,(2)高応答射出 DD(ダイレクトドライブ)サ
ーボモータ,(3)UB(ダブルフライト)スクリュ,(4)新制御装置 MAC-Ⅸほか,油圧コア・ゲートバル
ブ用ビルトイン油圧装置,電力回生サーボアンプなどの 新技術により,成形プロセスのリアルタ
イム統合制御を実現した新型中型電動射出成形機である。
図1 MEⅢシリーズの特徴
三菱重工技報 Vol.53 No.1 (2016)
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(1) ワイド型盤
MHI-PT の中型電動射出成形機は,トグル式型締装置を採用している。近年の樹脂成形品
の大型化,複雑化に伴い,成形用の金型サイズも大型化している。このニーズに対応するた
め,新型機では型盤をワイド化すると共に,型盤を箱型形状にすることで高剛性化を図ってい
る。
なお,従来機対比では 650tf 機の型盤をワイド化,850tf 機にはワイド型盤タイプをラインナッ
プした。
(2) 高応答射出 DD サーボモータ
成形精度を安定化するためには,射出速度の立ち上がり,充填から保圧への切換時におけ
る射出スクリュの急減速停止の応答性が高いこと,及び計量精度(可塑化完了位置の保持)や
射出速度・圧力波形の繰り返し精度が高いことが必要となる。以上の要求仕様から,高応答・
高精度の電動射出制御が重要となる。
高応答を実現する為には,射出ボールねじ駆動部の慣性を小さくする必要があり,MHI-PT
が独自に開発した低回転高トルク特性の大容量 DD サーボモータを射出装置に採用した。薄
肉成形で射出速度を急減速した際,DD サーボモータが低慣性なため,オーバシュートやスプ
リングバックが発生せず,成形不良を低減できる効果がある。
また,DD サーボモータの採用により,タイミングベルトの伸びや同期ベルトのずれ等の影響
が無く,低騒音を実現。更にベルト張力調整やベルト交換のメンテナンスが不要で,長期にわ
たって射出精度が安定するメリットがある。
(3) UB スクリュ
MHI-PT は,高可塑化能力でかつ高混練・高分散を両立させるため,ロングバリアゾーンをも
つダブルフライトタイプの UB スクリュをいち早く標準スクリュとして適用し,長く好評を得ている。
MHI-PT の UB スクリュは,ダムクリアランステーパの“クローズドダム”により高可塑化能力を
維持したまま,未溶融樹脂を残すことなく完全溶融させるので,樹脂温度分布の変動が少ない
という特徴がある。
(4) 新制御装置 MAC-Ⅸ
制御装置 MAC-Ⅸの開発では,従来の大型液晶画面の採用と見易さを追求したグラフィカ
ルでかつシンプルな画面デザインとタッチパネルにより構成した MAC-Ⅷに対して,操作方法
を継承しながら,更なる簡単操作性や,視認性を徹底追及した。
図2に制御装置 MAC-Ⅸを示す。
図2 制御装置 MAC-Ⅸ
三菱重工技報 Vol.53 No.1 (2016)
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|3. MAC-Ⅸの詳細
さらに進化した新制御装置 MAC-Ⅸの詳細は以下のとおりである。
(1) 操作性向上
15.6 インチ独立2画面を採用する事によって,次に示すように画面切り替え回数の低減など
操作性の向上を図った(図3)。
① 成形条件を2画面同時表示
(例1:射出画面,型開閉画面,など)
② プロセスモニタを視認しながら,関連成形条件を設定
(例2:射出グラフを見ながらゲートバルブの開位置設定など)
③ 縦長画面によりトレンドリストの従来1画面 15 ショットを 30 ショット表示
(従来設定画面が2画面であった条件設定を1画面に集約)
④ 射出波形記憶
・ 任意の良品波形を記憶し,成形条件として保存可能
・ 成形不良発生時の射出波形と良品波形を比較可能
図3 成形条件を2画面同時表示
(2) 高速高精度成形プロセスリアルタイム統合制御による高精度成形の実現
高速 CPU 搭載の FA-PC を用いて,EtherCAT 高速通信とパネル制御・サーボモーション制
御・温調・シーケンスの各制御モジュールをリアルタイム統合制御するソフトウエアシステムを構
築した。web サービス対応も実現可能である。
高応答の DD サーボモータをより高速で制御することにより,以下の高精度成形を実現した。
【650MEⅢ-100H 成形試験結果】
・ 射出時間 11.92s±0.00s
・ 大射出圧 38.8MPa±0.02MPa
・ 成形品質量ばらつき( 大― 小)/平均 0.041%
図4に MEⅢの 大射出圧,VP切換位置,VP切換圧,クッション量の成形プロセストレンドを
示す。
(3) 高応答収束温調制御による 短かつオーバーシュートレスな昇温の実現
成形プロセス中のシリンダヒータの加熱特性を解析して温調制御することで,昇温時のオー
バシュート量を大幅低減し,目標温度到達時間を半減した。
図5に昇温時のオーバーシュート,目標到達時間の低減事例を示す。
三菱重工技報 Vol.53 No.1 (2016)
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図4 MEⅢの成形プロセストレンド
図5 高応答収束温調制御
(4) グローバル対応
グローバルマンマシンインタフェース対応として,以下の機能を有している。
① セキュリティ機能
・ID カードによるログインで管理者と作業者を認識。
・3階層の操作権限管理
・操作履歴がトレース可能となりトレーサビリティ管理が容易になった。
② ユーザサポート
・アラーム発生時にフロー形式のアラームガイド表示
・e-マニュアル(画面上で取扱説明書を閲覧可能)
・ドライブレコーダ機能は,大容量 HDD にトラブル発生時の入出力データを自動取得し,
そのデータを分析する事で,原因究明に要する時間を短縮する効果が得られる。
③ グローバル仕様
・UPS(無停電電源装置),サージキラー標準装備
・多言語対応(日英中西泰のほか8言語)
・絵文字スイッチ(ISO 準拠)
・シーケンスラダーIEC61131-3 準拠