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実践報告書(鈴木美保子) - JICA · 実践報告書(鈴木美保子) グローバルとは、国際理解、開発教育とは何か。生徒たちがそれに対して「自分たちは何ができる

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実践報告書(鈴木美保子)

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実践報告書(鈴木美保子)

グローバルとは、国際理解、開発教育とは何か。生徒たちがそれに対して「自分たちは何ができる

のか」を考える前に、「知ることそして興味を持つことの大切さ」を感じとり、今後いろいろな場面

で意欲的に取り組むことができる人間に成長してもらいたく、授業を組み立ててみました。

まずは何も話さない前に今のブラジル感をそれぞれ認識し、それから私たちが研修で訪れた所のあ

りのままを膨大な記録写真からのぞき感じ、日本探しをしながら発見していくという形でブラジルに

ついての理解を深めていきました。

4人から6人のグループになり「共有する」場面を多くして進めていきました。

1時間目

① ブラジル感1と題して、授業の最初で今現在ブラジルについて知っていることを挙げていき、付

箋1枚に1個書き込んでいく。

② グループで KJ法でまとめていき、共有する。→自分たちの今現在のブラジル感について確認する。

③ ブラジル感1についてグループから全体に発表。

2時間目

① 膨大な写真記録をスライドショーでひたすら見続ける。

※見ながら生徒たちには自分たちの知っているものを見つけたら記録するように指示。

※3時間目と4時間目に話さない内容を中心に簡単な説明をしながら見せる。

カシューナッツ

胡椒(白・黒)

ブラジルの楽器 ブラジルの通貨 アサイーでできたお土産

3時間目

① 2時間目に引き続きスライドショーで写真を見せる。

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実践報告書(鈴木美保子)

② 見つけたものが何か、

グループで共有させる。→

③ 移民についてパワーポイントで作ったものを生徒が説明者になりきって発表する。

4時間目

① 交番システムについて考える

② アグロフォレストリーについて考える

ブラジルの土は赤土であった。

関連して野菜は移民した日本人が持ってきたもの

日本で販売されている明治製菓のチョコレート

日本で輸入販売されているカンタのジュース

③ ブラジルの地球の肺について考える

アマゾンの原生林の写真をみる

交番勤務の警官の顔写真と名前が紹介されている。そしてその警官の担当区域の道路が色分けされていて誰が見てもわかるようになっている。

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伐採した大木を積むトラックの写真をみる

≪生徒の反応・成果について≫

生徒より

ブラジル感1

・カーニバルやサンバなど明るい面もあるけど、貧富の差や人種差別など暗い面もあって表裏のある国

だと感じる。柄の悪い、怖いイメージがある。

・スポーツが強い。サッカーが強い。明るく陽気な国民性。

・コーヒー豆、黒人、黄色・緑色・黒色。

・自然がとても多く動植物が多い。資源が採れそう。

・BRICsの中の1国であり、発展途中である。

日本にあるもの、知ってるものを見つけて

・ブラジルは日本と関わりが深いことを初めて知った。

・思っていたよりたくさん日本に馴染みのあるものが多くてびっくりした。日本の裏側なのに繋がって

いるんだなと感じた。

・算盤・和紙など今はあまり使わないものが普通にあった。

・日本の良いところが普及していて、とても嬉しい気持ちがある。

・こんなに日本の文化や習慣が遠く離れたブラジルにたくさんあることに驚きました。また、「日本」

が感じられる国だと思いました。

・ブラジルには日本のものが多いけれど日本にはブラジルのものがあまりなく、残念だと思いました。

・ブラジルには沢山の日本があり、びっくりしました。日本にもブラジルがあるか気になりました。

・遠い国なのに繋がりがあるということはすごいなと思いました。日本のものが国境を越えて受け入れ

られていることが嬉しいです。

・ブラジルの学校に三世さんがいて日本に来ていないのに日本語がペラペラなのに驚いた。

移民:一世の苦労のパワーポイントを見て

・一世が日本のことを広めていってそれが二世・三世にしっかりと受け継がれていることがすごいと思

った。今のブラジルがあるのはこうして移民した日本人の努力もあるということが分かった。自分の

住んでいる国をよくしたいという考えがあり、私も見習わなければならないと思った。私たちもいろ

んな文化を取りいれて共存していけたらいいなあと思いました。このことをもっと、人々に伝えられ

たらいいなと感じました。

・一世の人たちは私たちが知らないような苦労を多くして、その人たちのおかげで今のブラジルとの関

係があるという事を私たちはきちんと知っているべきだと思いました。

・ブラジルについてこんなに深く考えたことがなかったので今回授業で全く知らなかったことがたくさ

んありました。ブラジルに渡った日本人の方たちは知らない土地で何もない状態から今のブラジルの

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実践報告書(鈴木美保子)

農業などを築いて本当に苦労や大変な思いをしたと思います。そういった文化の違いや言葉の壁を乗

り越えてきた方たちは素晴らしいなと思いました。長い年月をかけて、なんども失敗したと思います

が、そういう生き方をしている人は本当に強い人だと思いました。

・歩き方の違いなど日本人の誠実さを改めて考えさせられました。外国ではお釣りをごまかされるなど

日本では考えられないようなことがあるのに驚きました。

・移民した人たちがたくさんいるのだ、と思った。また、その一人一人に一世(日本人)である誇りが

あるのだと分かった。また、あたりまえだけど「日本人」がいるのに驚いた。

・ブラジルに移住することは、あまりすんなりといかなかったこともあったと知りました。でも、日本

とのかかわりが両国にとって大きなことであったのは確かだと感じました。ブラジルに初めて行った

日本人は部屋に吸い殻一つ落としてくことなく、しっかりと並んで待っていたなどの礼儀の正しいこ

とが当然のようにできていて、日本人の私からしても素晴らしいと思った。もし、礼儀を知らない日

本人ばかりが行っていたら今とは違うブラジルとの関係になっていたかもと思いました。インタビュ

ーの中でも日本人は周囲のことを考えられたり思いやれるといっていました。そのような話を聞いて

いる中で、日本人で良かった。そして日本人であることを誇りに感じました。また、日本人のことを

評価してくれている人ががっかりしない様な日本人でありたいと思いました。

・ブラジルに移動するのにも様々な苦労があったと思った。不当な労働で低賃金だったりひどい扱いも

あったけど一世の人たちが耐え、努力したから日本人が認められ、今日の日伯関係が友好的にうまく

いっているんだと思いました。日本人の礼儀正しさや謙虚さを誇りに思いました。

・パワーポイントを見て、日本人とブラジルは風習も違うし、普段の生活からしても異なることばかり

の環境なのに、粘り強く頑張った一世はとても素晴らしいと思った。また、日本に住んでいる日本人

よりもブラジルに住んでいる日本人の方がゴミを落とさないなど礼儀正しい生活をしているなと思っ

た。見習わなければいけない!!と思う。

・日本人が他国へ行って活躍していて嬉しい。すべて、一世のおかげ。ありがとう。

・日本人はとても真面目で人に迷惑をかけることはあまりしないことが分かった。

・移民した人は、大変な状態が待っているなんて知らずに行って、すごく後悔をしたと思うし、つらい

思いもしたと思う。けれど、投げ出さずに成功させた努力や強さがすごいと思った。「日本人は正確に

きちんと仕事をする」と言われ続けているのは、一世の人の努力があったからと思う。

・正直、今まで移民といわれてもパッとしなかったけど、移民の人(一世)がいなかったらブラジルに

とっても日本の良いところや技術、野菜など新たなものを取り入れることができず、新たな一歩が踏

み出せなかったかもと思った。ブラジルと日本は遠く離れているけれど、お互いに良いところは真似

してこれからどんどん進歩できたらいいなと思った。

ブラジル感2

・日本に対する印象、ブラジルに対する印象、どっちも変わりました。日本人は真面目な国民性なんだ

と改めて分かったし、ブラジルには日本のものが沢山あって驚いたし、やっぱり明るい活気のある国

だった。今回の授業を受けて、ブラジルには日本のモノ、文化が伝わっているのに日本にはブラジル

のことが伝わってないことが残念に思いました。それなので、これからは自分の生活の中にブラジル

のことを理解し、取り入れていければと思います。

・先生の話や写真を見て、すごく遠い存在だと思っていたブラジルを身近に感じることができました。

ブラジルは日本のように豊かな生活、便利な暮らしではないかもしれません。でもブラジルには自然

など日本よりもっと良いところも沢山あることがわかりました。

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実践報告書(鈴木美保子)

・ブラジルは本当にたくさんの日本人、日本文化があふれていると思いました。

・この授業を受け、初めて知ることばかりだった。移民のことや、日本の技術。ODA の活動など、今

回の授業では普段知る機会のないことが沢山知れて、とても勉強になった。私たちは何気なく当たり

前だと思っていることがブラジルにはなく、今住んでいる日本の環境は当たり前のことではないと改

めて知ることが出来た。

・ブラジルと日本は地球の反対側のため、あまり知らないし、関わりもないと思っていましたが、写真

を見て、日本の文化が多かったことや、日本とのかかわりが沢山あることを知り、深い関係だと感じ

ました。これからは、バレーの試合で日本 vsブラジルは日本を応援するけど、ブラジルの試合も日本

と戦ってないときは応援したいと思いました。

・日本と反対側のブラジルでとても日本が近いと思いました。私の思っていた以上に進んでいました。

車が普通に走っていたり人工の街が作られたりしていました。自然と発展が共存していると思いまし

た。

・この4時間の授業で思ったことは、第一に日本とブラジルの関係の深さでした。一世の苦労は大変な

ものだったと思うし、あの時、日本人が移民していなかったらブラジルに野菜はなかったんだと思い

ます。今ブラジルにある会社はすごく日本のモノが多かったです。その次にアマゾンの写真を見たと

きはとても感動しました。本当に森林が世界から消えている中で、地球の肺と呼ばれているアマゾン

に誰も手を付けていない森がありとても感動しました。私もそういうことに興味があるのでもし時間

があったらブラジルのアマゾンへ行ってみたいと思いました。ありがとうございました。

・最初は本当に治安が悪く怖い国なんだろうと自分で思っていました。ですが先生が見せてくれた写真

を見て、それだけで自分が思っていた国とは全く違う国が見られて今まで思っていた事がなんだか恥

ずかしく思ってしまいました。ブラジルの人々は本当に愉快で町も綺麗で、しかも日本の文化を多く

取り入れてくれている事をこの時初めて知りました。最近、TVでブラジルを見ました。私はこの授業

を受けていたので、わかることは親に学校で習ったんだと自慢できました。ブラジルだけでなく、こ

れからも他の国を知っていきたいと思いました。

・ブラジルはすごく遠い国だし、言葉も違うけど日系人がたくさん住んでいるし、日本の文化や日本の

モノなど伝わっていて、遠く離れた国だけどすごく近く感じるし、親近感が湧いた。

・交番は住民と密着していて良いなと思った。授業を受けて、前はブラジルを上から目線で見ていたけ

ど、逆に日本もブラジルから学ぶことがいくらでもあると思った。

・4時間の授業を受ける前は、やっぱり暗いイメージ・悪いイメージが強かったけど、そんなに悪い国

ではないと思った。遠い所で簡単には行くことが出来ないけど、写真や話を見聞きして実際にブラジ

ルに行ってみたいと感じた。移民した一世の人達は全員が行きたくて行った訳ではないと思うけどブ

ラジルに日本の文化を伝えてくれたことはすごく感謝している。これから、ブラジルの良い文化を日

本にも伝えて、一番遠くて一番繋がっていられるようになるといいなと思う。

・ブラジルについて、写真を見てきてこれまで自分が思っていたことと現場のブラジルは全然違う事ば

かりだと感じました。まず日系人が多いことや日本の文化、モノなど日本と接しているところがたく

さんあることに驚きを感じました。ブラジルは黒人の国だと思っていました。日系人の存在がこんな

にあってそれを受け入れているブラジルの人達の思いが伝わりました。また、自分たちが生きていく

ために自分たちでできることをして、それを現地の人に伝え、現地の人と一緒に生きていく、それを

見て日本人ってすごいんだなと思いました。ブラジルという外国ではなく、もう一つの日本だと感じ

ました。これからもブラジルと関わりを大切にしていきたいと思いました。

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実践報告書(鈴木美保子)

・発展していて平和な日本で暮らしている私はこれが当たり前と思って毎日過ごしているけど、知らな

いことが沢山あって知らなきゃいけないことが沢山あると改めて思った。実際、ブラジルと日本の関

係は知らなかった。こんなにも日本と関わりが深いという事に驚いた。言葉という壁はあるけれど、

確かな絆を感じられた。

・日本とブラジルとの繋がりはちょっと前までは全然知らなくて「日系人」という言葉を聞いた事があ

るだけでした。ですが、ブラジルでの様子を見たり聞いたりしているうちにブラジルには日本の物が

沢山あって日本の文化も受け継がれている事にとても感心しました。ですが、日本にブラジルの文化

や習慣がないので、これからブラジルの文化が取り入れられるといいなと思います。

・日本との交流が意外にあってとても驚いた。交番や野菜など、日本から伝わったものもあって嬉しか

ったです。

・日本に住んでいるのに、日本のことをブラジルを通して学ばせてもらった気がする。

豊かさとは?一言

・豊かというのはお金だけではないと改めて思えた。人それぞれに「豊」の基準があって、私から見た

ら「豊」じゃなくてもその人から見たら「豊」だったりするものなんだと思った。

・自分自身が誰かと一緒に住めて食べられて着るものがあったらいいなぁと思います。暮らすのに大変

でも、誰もが笑顔でいられることが豊かだと思うし、一生懸命になれることがあったらいいなぁと思

いました。

・私たちは、昨年 3 月 11 日に地震を体験しました。私たちよりも怖くて辛い経験をした人が沢山いま

す。移民の一世の人も沢山のことがあったけど、今はとても楽しく過ごしているようです。東北、日

本全国の人もいつかは本当に心から笑える日が来ると思え希望がもてました。その土地や地域で違う

豊かさがあるけれど、今日という日を笑って過ごすことが出来ればよいと思います。これから一日一

日を大切にしたいです。今の生活ができることが良いことだと思うから私たちはそれをもっと意識す

べきだ。

・日本みたいになんでも物があり不自由しないことだけが幸せではないんだな、とこの4時間の授業を

通して感じました。

・お金や物が豊富にあることだけではなく、人々の関わり、絆、思いが築かれている中での生活が豊か

な人生だと思いました。

・一日一日を充実して過ごせる人生

・豊かな人生を送るためにはお金も地位も必要かもしれない。けれど、一番大切なのは心の豊かさで、

それがなければ人生も豊かにはならないと思った。

≪所感・反省点・改善策≫

写真と動画の記録が膨大で整理し取捨選択するのに大変時間がかかりました。ブラジルについて予備

知識として調べ学習ができると話をもっと深めることができたと残念に思います。伝えたいことが多す

ぎて絞り込むのに苦労しました。生徒自身に考えさせてグループでまとめてと作業に時間がかかるので、

一時間で進められる内容は大きく分けて最大 2個までです。自由に感じ、それを仲間と意見交換しなが

ら共有し主体性を持ってまとめていく生徒の姿は楽しそうでした。意欲的に取り組めたと思います。興

味を持ち知ることで相手に対しての理解が深まり、違いを受け入れられるようになる。また、その違い

を楽しむ事が出来るようになれば豊さと結びついていくのではと考えました。生徒達の今後を期待しま

す。