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Instructions for use Title 陸奥湾におけるマダラGadus macrocephalusの初期生活史に関する研究 Author(s) 高津, 哲也 Citation 北海道大学. 博士(水産学) 乙第5419号 Issue Date 1998-12-25 DOI 10.11501/3146391 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/32724 Type theses (doctoral) File Information 5419.pdf Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

陸奥湾におけるマダラGadus macrocephalusの初期生活史に ......とっても生残に十分な餌密度と判断された。1989年から1998年まで,うしお丸を用いてマダラ仔稚魚の分布調査を行った。その結

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Page 1: 陸奥湾におけるマダラGadus macrocephalusの初期生活史に ......とっても生残に十分な餌密度と判断された。1989年から1998年まで,うしお丸を用いてマダラ仔稚魚の分布調査を行った。その結

Instructions for use

Title 陸奥湾におけるマダラGadus macrocephalusの初期生活史に関する研究

Author(s) 高津, 哲也

Citation 北海道大学. 博士(水産学) 乙第5419号

Issue Date 1998-12-25

DOI 10.11501/3146391

Doc URL http://hdl.handle.net/2115/32724

Type theses (doctoral)

File Information 5419.pdf

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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学位論 文内容の要旨

一仰の名称| 博 一 ) 氏 名 | 高 津 哲 也

学位論文題名

陸奥湾におけるマダラGad些 macrocephalusの初期生活史に関する研究

青森県陸奥湾はマダラの産卵場のひとつであり(川村・小久保, 1 950; Hattori旦 al.,

1992),毎年12月から2月にかけて産卵回遊群が底建網および底刺網などで漁獲されてい

る。陸奥湾におけるマダラ漁獲量のおよそ3分の2を占める脇野沢村では, 1985-1990年

度!こ720-1,305トンの高い漁獲水準を記録したがその後減少し, 1996年度漁期には16ト

ンにまで落ち込んだ(青森県水産増殖センター, 1995;青森県,未発表)。このため1991年

よりs青森県水産増殖センターと日本栽培漁業協会によってマダラ稚魚の種苗放流が行

われている。陸奥湾における本種の生活初期に関してはs 仔魚の形態Onaba,1931),仔

稚魚の採集修U(J11村・小久保, 1950),生活史のレビュー(Yusa註豆ュ 1977)以外の報告はな

く,餌生物環境を含めた検討は陸奥湾を含めて過去に行われたことがない。本研究は陸

奥湾に出現するマダラ仔稚魚の時空間分布,食性,餌生物環境を調べて初期生活史を

明らかにすることで,マダラの資源量変動機構の解明を試みた。

青森県陸奥湾において1989年3月, 5月, 7月と1990年4月 6月に北海道大学水産学部研

究調査船うしお丸(107.85トン)を用いて,ビームトロールネット(網口:2.0m x 2.5m,胴尻目

合:0.33mm)の中層曳きとオッタートロールネット(網口:4.4m x 5.9m,胴尻目合:12mm)の着

底曳きによってマダラ仔稚魚を採集し,消化管および胃の内容物を調査した。全長7mm以

下のマダラ後期仔魚は初期餌料として体幅範囲67.5-195μmのかいあし類ノープリウス,

特lこPseudocalanus属および旦些旦呈属のノープリウスを捕食した。また,全長7-70mmの

仔稚魚はかいあし類カラヌス目コペポダイ卜を, 70mm以上の個体はヨコエビE目と魚類を

主に捕食した。浮遊性巻貝,エビ類ゾ、エア,力ニ類メガ口パといった大型餌生物は,主要

餌生物がカラヌス目からヨコエピE目や魚類に転換する間,代替の餌生物として重要な役

割を果たしているものと推察された。

1991年および1992年冬季の陸奥湾において,うしお丸と青森県水産増殖センター所属

のなつどまり(24.96トン)を用いて,マダラ仔魚の初期餌料であるかいあし類ノープリウス標

本を採集し同定と計測を行った。体幅67.5-195μmのノープリウスは,湾内では表層域

で,湾口部では密度躍層内で分布密度が高いことが明らかになった。ノープリウスの分類

群組成は採集年によって大きく異なり, 1991年2月にはCentropages属が, 1992年1-2月に

はOithona属ノープリウスが優占したoこのような違いは津軽暖流水と湾内水との間!こ生じ

る密度差に起因する津軽暖流水の流入量の年変化と,メス成体が卵を抱えて運ぶか

(Pseudocalanus属や旦生盟主属),卵を水中に放出するか(C.~bdominalis)といった,かいあ

し類の再生産戦略の違いに起因するものと判断された。 1992年1月上旬・下旬の水深10m

層におけるノープリウスの分布密度は中央値で14.7inds..r1, 13.3 inds..r1と幾分低かっ

たが,1991年2月と1992年2月の水深15m層における中央値はそれぞれ22.4inds..r1と

32.8 inds. .r1であった。マダラ仔魚と形態的に類似し,同様なノープリウス分類群を餌とし

て利用するスケトウダラ仔魚の知見(Paul,1983; Haldorson註豆;.t1989; Paul et al., 1991)を

適用して考えると, 20 inds..r1を上回る両年2月下旬のこれらの分布密度はマダラ仔魚に

2

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とっても生残に十分な餌密度と判断された。

1989年から1998年まで,うしお丸を用いてマダラ仔稚魚の分布調査を行った。その結

果, 2月および3月にはマダラ前期仔魚と小型の後期仔魚は湾口部で採集されたことか

ら,陸奥湾ではマダラの産卵は主に湾口部で行われているものと推察された。また,湾口

部海底上で瞬化した仔魚は中層域へ浮上することで,十分な餌密度(かいあし類ノープリ

ウス)を獲得するだけではなく,密度躍層よりも上層を占める津軽暖流水を利用して餌密

度の高い湾内へ移動していた。 4月にはマダラ仔稚魚は湾内に広く分布し主要餌生物で

あるかいあし類力ラヌス目コペポダイ卜の分布密度が高い水深層に分布した。5月以降の

マダラ稚魚は昼間カラヌス呂コペポダイトの分布密度が高い海底直上に分布し,稚魚の

分布密度が高い水域には採集年による変動がみられた。また,マダラ稚魚の生息上限水

温は約120Cと推定され, 6月以降湾内の高水温と餌不足を避けて湾外へ移動するものと

考えられた。

1991年, 1993年, 1995年にはマダラ着底稚魚の体重の増加に伴って胃内容物重量示

数(8CI=胃内容物重量(g)x100/{体重(g)ー胃内容物重量(g)))は減少していたが, 1997年

には他の年に比べて摂餌強度が高く,大型の餌を捕食する割合が高かった。対応分析

(Hill, 1973)を用いてマダラ着底稚魚の食物組成の座標づ、けを行った結果,食物組成はま

ず第1に餌のサイズで規定され,そこへヤムシ類や浮遊性巻貝,エピ類ゾエアといった特

異的に出現する餌生物が食物組成を大きく変化させるものと考えられた。マダラ着底稚魚

が力ラヌス目から大型の餌生物に転換する全長は年によって差がみられ, 1991年のよう

にカラヌス目の分布密度が1.0・104inds.・m-2を超える場合には餌の転換は大型の体サイ

3

ズで生じたが,逆lこ1997年には小型の全長で餌を転換していた。着底稚魚の全長一体重

関係の相対成長式と食物組成を比較した結果,全長70mm以下の小型の稚魚では力ラヌ

ス目が餌として重要であり,全長70mmよりも大型の稚魚では力ラヌス目よりも大型の餌

(仔稚魚,エビ類ジュベナィル,ワレ力ラ,ヤドカリ類メガロパ,力ニ類メガロパ,ヨコエビE

目,クラゲノミE自など)に遭遇する確率が高いことが生き残りに重要であると考えられ

た。

陸奥湾脇野沢村におけるマダラ成魚の漁獲量と 2月のマダラ仔稚魚の平均分布密度

との聞には比例関係がみられ,成魚の漁獲量と1995年を除いた4月の仔稚魚の分布密度

との聞にも比例関係が認められた。これらの結果から,冬季から4月までの陸奥湾ではマ

ダラ仔稚魚の生残に著しく不利に働く条件はほとんどなく,年級群変動を生じさせる原因

は4月以降にあると推定した。 1995年と1997年のそれぞれ4月と6月におけるマダラ仔稚魚

の分布密度と相対成長式の比較から大型個体の栄養状態が良かった1997年の方が

1995年に比べて生残率も高かったものと判断した。また,マダラが湾外へ移動するのに適

した水温期間が長いことが,稚魚の生き残りに有利に働く可能性も考えられた。

今後は資源量変動を説明する様々な仮説を検証するために,耳石の微細構造解析に

基づく絶対成長の評価,マダラ仔稚魚を捕食する生物の特定親魚の年齢構成や産卵履

歴の違いによる卵および仔魚の生残率の違い,稚魚が湾外へ移動した後の減耗要因を

解明する必要があると考えられた。

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図書掛

北海道大学大学院水産学研究科博士論文

陸奥湾におけるマダラGadusmacrocephalusの

初期生活史に関する研究

平成10年 12月

高津哲也

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目次

ページ

緒言・・・・・・・・............................................................・・・・2

1.マダラ仔稚魚の成長に伴う食物組成と餌サイズの変化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

材料および方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10

考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19

II.マダラ仔魚の餌生物としてのかいあし類ノープリウスの分類群組成と分布密度・25

目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25

材料および方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25

結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29

考察 ...................................................................42

m.マダラ仔稚魚とかいあし類の時空間分布・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52

目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52

材料および方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ J・・・・・・・・・・52

結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・56

考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・75

1V.マダラ着底稚魚の食物組成と相対成長の年変動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・84

目的..........................................ー.......... ..... ..... ...84

材料および方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・84

結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・88

考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 113

v.マダラ仔稚魚の分布密度の年変動と生残過程・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 115

目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 115

材料および方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 115

結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 117

考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 120

要約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 129

謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 132

文献・・・・・田・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 133

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緒言

本邦周辺海域にはマダラ旦到些 macrocephalus,スケトウダラZ也盟庄呈

chalcogrammaおよびコマイ旦盟盟主皇自cilisの3種のタラ科(GADIDAE)魚類が分布する。

これらのうちマダラは朝鮮半島西岸の黄海からアメリカ合衆国カリフォルニア沖に至

る北太平洋大陸棚上と陸棚斜面に広く分布し(Ketchen,1961),本邦では島根県以北

の日本海および茨城県以北の太平洋から北海道沿岸において様々な漁法により漁

獲されている。青森県陸奥湾はマダラの産卵場の1つであり(川村・小久保, 1950;

HaUori 旦到~ 1992),毎年12月から2月にかけて産卵群を対象とする底建網および底

刺網漁業が行われている。陸奥湾における漁獲量のおよそ3分の2を占める脇野沢

村では, 1985年度(1985年12月......1986年2月)から1990年度にかけて720トンから1,305

トンと高い漁獲水準を記録したがその後減少し 1996年度漁期には16トンにまで落ち

込んだ(青森県水産増殖センター, 1995;青森県,未発表;Fig.1)。このため1991年よ

り,青森県水産増殖センターと日本栽培漁業協会によって陸奥湾においてマダラ稚

魚の種苗放流が行われている。

マダラ受精卵は直径0.98-1.08mm(lnaba, 1931)であり,産卵直後は若干粘性のあ

る沈性卵である(内田, 1936; Thomson, 1963; For問 ster,1977)。卵は6.3-7.000の水温

で10日で瞬化し瞬化直後の仔魚はおよそ4mmである(lnaba,1931)。マダラの初期生

活史に関連する知見は,飼育実験による様々な環境要因に対する卵発生の観察(遊

佐, 1954;遊佐, 1961; Forrester, 1964; Forrester and Alderdice, 1966 ; Alderdice and

Forrester, 1971; Forrester, 1977),タラ科仔稚魚の形態と分類(lnaba,1931;内田・田

福, 1958;橋本・阿部, 1962; Matarese 旦豆~ 1981; Dunn and Vinter, 1984; Matarese旦

ι1989),後期仔魚および稚魚期の食物組成(宮藤, 1929;内田, 1936;竹内, 1961;

橋本・阿部, 1962; 8arraclough et al., 1968;橋本, 1974;輿世田ら, 1992),仔稚魚の分

布(Walters,1984; 80ehlert旦ι1985;Rugen and Matarese, 1988;興世田ら, 1992),

および生活史の概要(内田, 1936 ; Yusa_旦al., 1977; Dunn and Matarese, 1987)など

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1 .400

1 .200

1 .000

400

800

600

200

(

C

O

H

ω戸』

)工

O

H

冊。 O '75 '96 '93 '90 '87 '84 '81 '78

d

Fig.1. Commercial catches (metric ton) of Pacific cod at Wakinosawa Village from the 1975

fishing period (November 1975-March 1976) to the 1996 fishing period (from Aomori

Prefectural Aquaculture Research Center, 1995; Aomori Prefecture, unpublished).

3

O r I e p g n h s Fi

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の報告がある。しかし陸奥湾における本種の初期生活史に関連する知見は,

Inaba(1931 )が仔魚の形態を記載し川村・小久保(1950)が仔稚魚の採集例を報告し

Yusa et al.(1977)が生活史に関する既往の知見をまとめた以外にはなく,摂餌生態や

餌料環境,初期生残過程に関する知見は未詳のままとなっている。

Hjoは(1914)は「摂餌開始期の餌不足によって仔魚の大量減耗が生じ,その死亡の

程度によって年級群豊度が決定する」というrcritical period仮説」と r摂餌を行う水域

から餌の少ない水域に多量の仔魚が移送されると大量の減耗が生じる」という「輸送

仮説」を提唱した。しかしその後1970年代までは,野外調査に基づく同oはのこれらの

仮説の検証はほとんど行われていなかった。 1970年代に入ると耳石田周輸による成

長履歴解析法の確立に伴って,海産魚類の資源量変動の主要因を明らかにすること

を目的として,このHjoはの2つの仮説,特にrcritical period仮説」が野外調査に基づ、い

て検証されるようになった。以来,現在までに「海の安定度仮説(Lasker.1975)J.rマッ

チヨスマッチ仮説(Cushingand Dickson. 1976; Cushing. 1978)J.r被食仮説(Hunter.

1981; Van der Veer. 1985; Van der Veer and Bergman. 1987; Houde. 1987)J. r卵質

仮説的esbuet到:..!1996; Solemdal. 1997)Jなど,様々な仮説が提唱されてきた。これ

らはそれぞれが独立したものではなく,多かれ少なかれ「仔魚の出現時期と餌生物あ

るいは被食者との遭遇タイミングJを考慮する「マッチ・ミスマッチ仮説(Cushingand

Dickson. 1976; Cushing. 1978)Jの概念を取り入れている。また,最近では摂餌開始期

などの短期間における大量死亡よりも,一定期間継続する死亡過程の累積効果のほ

うが年級群豊度を決定する重要な要因であり,成長速度が早ければ累積死亡率を低

く抑えることが可能であるという仮説(Watanabe旦豆ュ 1995;Campana. 1996; Meekan

and Foはier.1996)が提示されている。

本研究では陸奥湾に出現するマダラ仔稚魚の時空間分布,食性,餌生物環境を調

べることで「マッチ・ミスマッチ仮説」の検証を行い,マダラの資源量変動機構の解明を

試みた。

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1 .マダラ仔稚魚の成長に伴う食物組成と餌サイズの変化

目的

マダラ仔魚の消化管からは,かいあし類の卵,ノープリウス幼生,コペポダイトがみ

られ(Barraclough旦到.:..!1968;興世田ら, 1992),稚魚の閏からはかいあし類や端脚類

などの様々な甲殻類がみられると報告されている(宮藤, 1929; 内田, 1936;竹内,

1961 ;橋本・阿部, 1962)。しかし,陸奥湾におけるマダラ仔稚魚の食物組成は知られ

ていない。仔魚の餌利用度は死亡率と年級群変動に影響を与える重要な要因の1っ

と考えられており,野外における餌利用度の評価を行うためには,まず仔稚魚の食物

組成と餌サイズを明らかにする必要がある。ここでは陸奥湾に分布するマダラ仔稚魚

の体長の増加に伴う食物組成の変化を明らかにすることを目的とした。

材料および方法

マダラ仔稚魚の採集

マダラ仔稚魚は1989年3月1-4日, 5月19-23日, 7月22日と1990年4月26日, 6月13日

に青森県陸奥湾で採集した(Fig.1-1)0 3月と4月には仔稚魚はビームトロールネット(網

口:2.0m x 2.5m,目合:20mm,胴尻目合:0.33mm,前田ら, 1979;中谷, 1987)の中層

曳きによって採集し, 5月から7月には稚魚はオッタートロールネット(網口:

4.4m x 5.9m,目合 90mm,胴尻目合 12mm,前田ら, 1979;中谷, 1987)の着底曳き

によって採集した。これらの採集器具の曳網水深はネットモニタ((株)力イジョー)で監

視し約1.5m 'sec-1の速度で10-15分間曳網した。採集は昼間,北海道大学水産学

部研究調査船うしお丸(107.85トン)で、行った。船上で仔稚魚は直ちに5-10%中性海水

フォルマリン溶液で固定し, 24-36時間後には硬組織の脱灰を防ぐために70%エタノー

ル溶液に移した。なお,本研究において稚魚の固定・保存液による全長の収縮や体

重の損失は考慮していないが, 6月に当海域で本研究と同様の方法で採集・固定・保

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A

d

ωωの

C

Fig.ト1.Location of Mutsu Bay (A), contours of depth and three locations of spawning

grounds of Pacific cod (checkers) reported by Kawamura and Kokubo (1950) (B),

and the locations of net sampling stations for gt比andstomach contents analysis of

Pacific cod (C).

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存したマダラ稚魚が, 206日経過後に全長が採集直後の96切に体重が64%に減少す

ることがわかっている(吉田, 1998)。

タラ科仔稚魚の同定

陸奥湾にはマダラ仔稚魚とともにスケトウダラ仔稚魚が出現する(高津ら, 1992)。標

準体長(standardlength, SL)20mm以下のこれら2種はMatarese旦.i!l(1981),Dunn

and Vinter (1984), Matarese旦豆よ1989)1こ従い,体表の黒色素胞の分布パターンに

より判別した。標準体長20mmを超えるマダラの腹膜表面には, 2~Jの小型黒色素胞

が並ぶが(Matarese 旦~ 1989) この2列の黒色素胞は陸奥湾で採集された標準体

長28.10mmを超える個体では1列に変化する(Fig.ト28-C)。これに対し,標準体長

20mmを超えるスケトウダラの腹膜表面には黒色素胞が散在するが,決して列は形成

せず(Fig.Iー2F-I),標準体長32.60mmを超える個体では腹膜表面に黒色素胞はみら

れなくなる(Fig.I-2J)。

マダラの触髭の長さは標準体長21.40mmで0.32mm,標準体長23.54mmでは

0.35mmであった(Fig.I-2A)。一方スケトウタラの触髭の長さは,標準体長34.70mmで

0.15mmであったが(Fig.I-2J),これより小型のスケトウダラには触髭がみられなかっ

た(Fig.ト2F-1)。

上顎と下顎の前後関係については,標準体長47mmを超えるマダラでは上顎が若

干下顎よりも前方に突出するが,スケトウダラの上顎は成魚になるまで決して下顎よ

りも前方に突き出ることはなかった。

以上より,標準体長20-22mmのマタラとスケトウタラは腹膜表面の黒色素胞の分

布パターンにより判別し,標準体長22mmよりも大型の個体は触髭の長さを用いて同

定した。さらに標準体長50mmを超える個体は,上顎と下顎の前後関係および触髭の

長さによって同定を行った。

マダラの仔魚と稚魚、の区分

橋本・阿部(1962)は全長付。tallength, TL)27mmを超えるマダラはすでに化骨が完

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F G

O

{i 40ヨヨ11

Fiι ト2.Dia即 osticsketches showing ventral views of Pacific cod (白血豆 macrocephalus);A-E

and walleye pollock (工h豆白区呈 chalcog悶mm~); F-J. Samples we問 collectedin Mutsu 8ay.

A, 23.54mm SL (26.97mm TL); 8, 28.1 Omm SL (32.18mm TL); C, 31.13mm SL (34.73mm TL);

D, 32.26mm SL (35.53mm TL); E, 35.68mm SL (39.71 mm TL); F, 23.34mm SL (25.69mm TL);

G, 27.78mm SL (30.50mm TL); H, 31.50mm SL (34.32mm TL); 1, 32.60mm SL (36.36mm TL);

J, 34.70mm SL (39.07mm TL).

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了していると報告している。内田・回福(1958)は全長17.5mmのマダラは仔魚期に属し,

全長26.0mmの個体は稚魚期に属すると報告している。本研究ではマダラの仔魚と稚

魚の区分は,すべての鰭のうちで、最も形成が遅い胸鰭の鰭条数で、行った。白井

(1983)によれば標準体長286-412mmのマダラの胸鰭鰭条数は18-19の範囲にある。

しかし陸奥湾で1989年7月に採集された全長60mmを超えるマダラの胸鰭鰭条数は

20-22の範囲にあった(N=10,平均±標準偏差=20.4:t: 0.70)0 1989年3月および1990

年4月に陸奥湾で採集された全長14.0-24.2mm(標準体長12.5-21.4mm)のマダラの胸

鰭鰭条数は17-19であり,全長25.0-32.2mm(標準体長22.4-28.5mm)の胸鰭鰭条数は

20-21であった。したがって本研究では全長25mm(標準体長22mm)以下の個体を仔

魚としそれを超える個体を稚魚として扱った。

魚体測定と食物組成の解析

全長11mmを超えるマダラ仔魚では胃と腸を明瞭に判別できる。そのため全長

11mmを超えるマダラ仔稚魚は胃内容物のみ解析し,全長11mm未満の仔魚は消化

管全体の内容物を解析した。 1989年3月には,産卵場(川村・小久保, 1950)1こ近い湾

口部Stn.10,西湾Stn.19および東湾Stn.31で採集したマダラ仔魚の胃あるいは消化

管内容物を解析した(Fig.1-1)0 1990年4月, 1990年6月および1989年7月には,仔稚魚

が多く採集されたStn.33, Stn. 43, Stn. 9"のそれぞれ各月1地点で閏内容物を解析し

た。 1989年5月には食物組成の地理的変化を明らかにするために, Stn.13とStn.38の

湾内2地点で閏内容物を解析した。

マダラ仔稚魚は電子ノギスを用いて全長および標準体長を0.01mm単位で測定し,

電子天秤を用いて体重を1mg.単位で計測した。全長10mm以上の個体についてはさら

に口帽を0.01mm単位で測定した。消化管および閏内容物は実体顕微鏡下で同定し,

個体数を計数した。かいあし類ノープリウスは第1触角および尾部後端の保護器官の

特徴をもとに生物顕微鏡下で同定を行った(Oberg,1906; Lebour, 1916; Gibbons and

Ogilvie, 1933;花岡, 1952; Ogilvie, 1953;古賀, 1960; Faber, 1966; Lawson and Grice,

9

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1970; Lawson and Grice, 1973;古賀 1984;Pinchuk ,1997; Siefert, 1998)。消化管と

閏から出現した餌生物は実体顕微鏡および生物顕微鏡の接眼マイクロメータにより

1.25μmあるいは12.5μm単位で最大体帽を測定した。甲殻類の卵は卵径を,巻貝は殻

径を計測した。 4月から7月までの胃内容物は,主要な分類群ごとに1mg単位で湿重

量を計測した。消化管および胃内容物は分類群ごとに出現頻度(F%),個体数組成

(N%),重量組成(W%)を求めた。出現頻度(F%)と個体数組成(N%)の地点聞の差はG検

定を用いて検討した。 Sokaland Rohlf (1983)はG検定を用いる場合,ウィリアムスの

修正を常に行い,期待頻度が5を下回る分類群は他の分類群と一緒にして検定を行

うことを推奨しており,ここでもそれに従った。

結果

3月におけるマダラ仔魚の食物組成

1989年3月上旬,湾口部Stn.10の中層域(45m層)において11個体のマダラ前期仔

魚が採集され,その全長範囲は3.20mmから5.30mmであった(平均土標準偏差ご4.41

土0.650mm)。そのうち5個体は未だ開口しておらず,残りの6個体は開口していたが消

化管内に餌生物はみられなかった。調査期間中採集された前期仔魚はこの11個体

のみで, 4月以降は採集されなかった。

同じ時期に採集された後期仔魚の餌生物は主に,甲殻類の卵(Tableト1;F%=45 ,

N%=49.0),かいあし類力ラヌス目 Pseudocalanus属のコペポダイト(成体を含む,

F%=63, N%=20.5),かいあし類ノープリウス幼生(F%=28,N%=13.1)であり,餌生物全体の

個体数組成(N%)は地点によって有意に異なっていた(G検定, G叫=163.5,df=12,

P=1.0. 10-28)。甲殻類卵の出現頻度(F%)は地点聞で有意に異なっていたが(G検定,

G

られなかつた(ωG検定, G

リウスが高い比率で捕食されていた(伊F%炉=6ω0,N%=34.9)。全長5.00mm以下のマダラ仔

10

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J F

Tableト1. Percent frequency of occurrence (F%) and percent by number (N%) of food items

in guts and stomachs of Pacific cod post-Iarvae in MarchJ~ê~

Stn.10 Stn.19 Stn.31 Total

Food organism F% N% F% N% F% N% F% N%

Evadne nordmanni 。。 。。 5 0.4 2 0.2

Calanus pacificus O 。 5 0.5 。。 2 0.2

Paracalanus parvus 35 8.1 55 9.3 20 1.8 37 6.3

Pseudocalanus spp. 50 17.2 65 22.3 75 21.5 63 20.5

Centropazes abdominalis 。。 45 7.0 5 0.4 17 2.6

Acartia Q盟虹H 15 1.6 30 2.8 15 1.3 20 1.9

Unidentified calanoid copepods 30 5.9 45 6.5 30 2.7 35 5.0

Oithona spp. 5 0.5 35 3.3 。。 13 1.3

Copepod nauplii 60 34.9 10 2.8 15 4.9 28 13.1

Crustacean eggs 25 31.7 40 45.6 70 66.8 45 49.0

Mean number of food organisms 9.3+14.3 10.8+10.4 11.2土 11.1 10.4+12.1

and s

Number of fish examined 20 20 20 60

Number of empty guts and 3 5

stomachs

Mean TL(mm) of fish examined 6.94 11.97 15.46 11.46

Range of TL(mm) 4.35-20.07 4.40-21.34 4.54-22.57 4.35-22.57

11

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魚の個体数組成(N%)は97.1%がかいあし類ノープリウスによって占められていた

(Fig.ト3)。また,全長5.01-7.00mmではノープリウスのN%は69.8%に減少し全長

7.01-9.00mmではさらに21.1%に減少し全長8.02mmを超える個体には捕食されてい

なかった。一方甲殻類の卵とPseudocalanus属コペポダイトのN%はそれぞれ,全長

5.01-7.00mmの2.3%および9.3%から全長7.01-9.00mmの21.1%および21.1%に増加した。

以上のように全長7.00mmを超える個体は,全長7.00mm以下の主要餌生物であるか

いあし類ノープリウスから甲殻類の卵およびPseudocalanus属コペポダイ卜に変化させ

ていた。 Table1-2にはマダラ後期仔魚に捕食されていたかいあし類ノープリウスの属

組成を示した。同定に必要な形体が失われて同定できなかった個体を除いて,全体

としてPseudocalanus属ノープリウスが最も多く捕食されていた(N%=27)。全長5.00mm

以下の個体ではPseudocalanus属が21%,Earacalanus属が15%捕食されていたが,全

長5.00mmを超える個体では主にPseudocalanus属と旦血盟主属のノープリウスが捕食

されていた。 1989年3月上旬におけるマダラ後期仔魚の餌生物の体l幅分布をFig.ト4

に示す。全長5.00mm以下の仔魚は体幅67.5μm(Oith盟主 N IIおよびParacalanusN

m)から129μm(Pseudocalanus N IV)の範囲のノープリウスを捕食した。この時期に捕

食されていたすべてのノープリウスのうち, Pseudocalanus属(83.8-195μm)は他のノー

プリウス(67.5-129μm)よりも比較的大型であった。一般に環境中の餌生物のサイズ

組成は不連続であるため,捕食者と餌生物のサイズの関係を検討すると,捕食者が

ある体長に達すると突然大型の餌を捕食するようにみえる。このため捕食者と餌の最

大サイズの関係は階段状になる。マダラ後期仔魚の場合でも,全長5.30mm,7.07mm,

17.53mmlこ突然大型の餌が出現しそれぞれ245μm(Centropagesabdominalisコペポ

ダイト), 313~m (1:seudocalanus ne盟型1adult), 503~m (坐担山主巴豆坐笠コペポダイ

ト)という大型の餌を捕食していた。しかし,甲殻類の卵のサイズは比較的小型であり,

73.8-135μmの範囲にあった。

12

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8

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4

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abdominalis

calanoids

Paracalanus 口皿centrooaaes

圏 Unidentified

図 Oithonaspp.

圏 Crustacean

Calanus oacificus

spp.

図 Pseudocalanus

.Acartia旦旦虹H

図 Copepod

図 Evadnenordmann

nauplii

eggs

13

Fig. 1-3. Diet compositions (percent by number) of Pacific cod post-larvae by size

groups in Mutsu Bay on 1-4 March 1989.

Page 18: 陸奥湾におけるマダラGadus macrocephalusの初期生活史に ......とっても生残に十分な餌密度と判断された。1989年から1998年まで,うしお丸を用いてマダラ仔稚魚の分布調査を行った。その結

,. ,r

J

Tableト2. Composition of copepod nauplii in guts of Pacific cod post-Iarvae in March 1989

4.35-5.00mm(TL) 5.01-7.00mm(TL) 7.01-8.02mm(TL) Total

T axa composition of nauplii Number

N% Number

N% Number

N% Number

N% of inds. 。finds. 。finds. of inds.

Paracalanus 5 15 4 13 5 10 12

Pseudocalanus 7 21 12 40 3 16 22 27

Centropa~Ees 3 9 3 10 。。 6 7

Acartia 2 6 。。 。。 2 2

Oithona 2 6 7 23 4 21 13 16

Unidentified 14 42 4 13 11 58 29 35

Total 33 100 30 100 19 100 82 100

Number of fish examined 10 9 7 26

Number of empty guts 2 。 3

Number of guts containing 7 6 4 17

copepod nauplii

14

Page 19: 陸奥湾におけるマダラGadus macrocephalusの初期生活史に ......とっても生残に十分な餌密度と判断された。1989年から1998年まで,うしお丸を用いてマダラ仔稚魚の分布調査を行った。その結

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Total length (mm)

+皇呈担旦旦呈 Pacificu~ copepodite

・ Pseudocalanu~ spp.

X Acartia omorii

口paracalanu~ nauplii

6.C entropage ~ nauplii

-Crustacean eggs

.Paracalanu~ .I?旦E主旦豆

ACentropages abdominalis

・自由旦naspp.

opseudocalanu ~ nauplii

<>0 ithon ~ nauplii

Fig.ト4.Relation between total length of Pacific cod post-Iarvae (mm) and their prey

width (μm). Samples were collected in Mutsu Bay on 1-4 March 1989.

15

25

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4月から6月までのマダラ仔稚魚の食物組成

4月から6月までマダラ仔稚魚は主にかいあし類力ラヌス目を捕食していたが,主要

餌種は採集月によって変化していた(Tableト3)04月にはPseudocalanus属が高いN%

を占めたが(N%=42.3),5月と6月には低い割合であった。 5月はStn.13では

centropages abdominalisの割合が比較的高く(N%=45.5),Stn. 38でAcartia旦旦笠Eが同

定できたカラヌス目の中で最も高いN%を占めた(N%=31.2)06月にはマダラ稚魚は主と

してCentropagesabdominalisを捕食した(同=100,N%=72.5)。重量組成(W覧)では, 5月

のStn.13で十脚類腿行E目短尾族メガロパ幼生(Repta川ia8rachyura megalopa,カ

ニ類)が比較的高い割合を示したが(W炉 36.5),4月から6月まで常に力ラヌス目が最も

高い割合を占めた(W%=61.4-97.4)。

円gure1-5は4-6月におけるマダラ仔稚魚の全長と餌生物の体幅の関係を示してい

る。 4月に捕食されていた豆到担盟巴豆坐笠のコペポダイトと成体(体幅344-888μm)は

他の力ラヌス目(196-450μm)1こ比べて大型であった。 5月にはカラヌス目の最大体幅

は441μmで,浮遊性巻貝(GASTROPODA,294-699μm)や十脚類腿行E目短尾族メガロ

パ幼生(885-1,580μm)は力ラヌス目に比べて大型であった。 6月には1,000μmより大型

の餌生物は出現しなかったが,十脚類遊泳E目(Natantia,エビ類)のゾエア幼生

(441-919μm)と空豆担巴巴豆生虫(441-613μm)は他の餌生物に比べて大型であった。

7月におけるマダラ稚魚の食物組成

7月にはマダラ稚魚は主に底生性の端脚類ヨコエピ亜目(AmphipodaGammaridea,

F%=80, N%=33.2, W%=23.3)と魚類(PISCESadult and juvenile, F泊二25,N%=5.8, W覧=64.7)

を捕食していたが(Tableト3),6月まで主食としていたカラヌス目のW%は0.2%と著しく

低かった。ヨコエビ亜目のうち Svnchelidium属の 1種 (N%=13.9)と全巴盟主

ampulloide~(N%=11.7)が高いN%を占めた。魚類ではスケトウダラ稚魚のW%が高かった

(W%=64.3)。全長135.26mm未満のマダラ稚魚は魚類を捕食していなかったが,全長

135.26mm以上の稚魚(5個体)はスケトウダラ稚魚を5個体,カレイ目を3個体,同定不

能であった魚類を5個体捕食していた。ヨコエビE目(血盟主主 ampulloide5,

16

Page 21: 陸奥湾におけるマダラGadus macrocephalusの初期生活史に ......とっても生残に十分な餌密度と判断された。1989年から1998年まで,うしお丸を用いてマダラ仔稚魚の分布調査を行った。その結

T able 1-3. Percent frequency of occurrence (F%), percent by number (N也), and percent by weigl可t仰覧)of food items in stomachs

of Pacific cod post-Iarvae and juveniles

担己旦盟Stn.33

F% N略。。o 0 o 0

July, 1989 stn.9"

F% N覧 W覧

o 0 0 15 3.1 <0.1 5 0.4 2.4

附一

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川一剣山山

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15 <0.1

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附一

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13.5 10.3

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4.4 9.2

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100 75 100 100 5

100 o 30 100

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1.1 3.6 0

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31.2 46.1

100 0 55 80 o

100 o

100 100

95.3 61.4 0.2

4.1 23.9 0

45.5 <0.1 1.9

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100 45 95 95 0

95 15 70 100

73.0 97.0 8.4 0.8

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13.0 o o 8.4

100 85 50 100 0 85 0 O 95

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17

6.9:t28.3

20 0

33.79 20.94-42.72

GASTROPODA

BIVALVIA POLYCHAETA CRUSTACEA

Cladocera (T otal)

邑虫g註盟国盛i島組盟盟国盟盟旦i

Copepoda Calanoidaσ。tal)♀単盟盛田単色民

白盟盟担盟主目立盟主Pseudocalar山崎~ spp.

S∞lecithricella出 血E

♀盟辺国鐙呈些血出血H呈Pseudodia口,tom田担割盟主

企盟副旦盟叫Unidentified Calanoida

Cyclopoida

白血盟.!!spp. Poecilostomaωidaσotal)

♀盟笠旦 spp.

Co血盟盟主 sppHarpacticoida

Cumacea

Amphipoda Gammarideaσ'otal)

企盟国主盟国血辺監

主皿陸自担!!!sp. Other Gammaridea

Hyperiidea Caprellidea

Euphausiacea calyptopis Decapoda Na生antiaadult and juvenile Natantia zoea Reptantia brachyura megalopa Reptantia brachyura zoea

Crustacean egg Sagittoidea PISCES adult and juvenile (Total)

工出盟国chalc唱町百mm.!!juvenilePleuronectiformes Unidentified PISCES

PISCES egg

1Jnidentfied food Mean number of food

organisms and s Mean weight of food

organisms (mg) and s Number of fish examined Number of empty stomachs Mean TL(mm) of fish examined Range of TL(mm)

Food organism

Page 22: 陸奥湾におけるマダラGadus macrocephalusの初期生活史に ......とっても生残に十分な餌密度と判断された。1989年から1998年まで,うしお丸を用いてマダラ仔稚魚の分布調査を行った。その結

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+ Calanus pacificus

• Paracalanu~ Q.豆E笠旦豆

• Pseudocalanu~ spp.

企 Centropagesabdominalis

x Acartia omorii

-Corycaeu~ spp.

)1( Evadne nordmanni

Fig. 1-5. Relation between total length of Pacific cod post-Iarvae and juveniles

(mm) and their prey width (μm). Samples were collected in Mutsu 8ay on

19-23 May 1989, 26 April1990, and 13 June 1990.

18

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synchelidium sp., .e些lis担巴豆皇室, Ampeliscasp.)は7月に採集されたほとんどすべて

の全長範囲のマダラ稚魚に捕食されており(Fig.ト6),稚魚の胃から出現した

Synchelidium属の1種と全巴盟主 ampulloidesの体幅範囲はそれぞれ0.39-1.17mmと

1.32-3.68mmであった。かいあし類力ラヌス目が閏中から出現したマダラの最大サイ

ズは全長97.53mmであった。全長135.26mmの稚魚は体幅4.52mmのエビジャコ

(豆旦旦巴旦盟国豆)を捕食し全長169.50mmのマダラ稚魚は体幅7.26mmのスケトウダラ

稚魚を捕食していた。

考察

多くの海産魚類が,卵黄吸収中の前期仔魚から摂餌を開始することが知られてい

る。 Last(1978)は体長3.0-3.9mmの大西洋マダラ(坐虫sm笠出呈)仔魚(主に前期仔魚)

の28%がすでに摂餌していることを示した。しかし本研究では,開口していた6個体の

マダラ前期仔魚すべてが摂餌していなかった。興世田ら(1992)は能登島に近い日本

海沿岸でマダラ後期仔魚(6個体:3.79-4.77mm TL)がかいあし類ノープリウスを捕食し

ていたことを報告している。本研究では全長7mm以下のマダラ後期仔魚が,かいあし

類ノープリウスを主食としていることが示された(Fig.ト3)0Pseudocalanus属ノープリウ

スは他のノープリウスに比べて大型で(Fig.ト4),最も多く捕食されていた(Tableト2)。

全長7mmよりも大型の仔魚は,かいあし類ノープリウスからPseudocalanus属のコペ

ポダイトと成体,甲殻類の卵を多く捕食するようになった(Fig.ト3)。以上のようにマダ

ラ仔魚にとってPseudocalanus属は,ノープリウス期から成体に至るまですべての発

育段階で重要な餌生物であることが明らかとなった。一方甲殻類の卵は主として全長

11mmを超える仔魚に捕食され, Pseudocalanus属やOithona属の成体とともに消化管

あるいは閏から出現しており(Fig.ト3),卵を抱えたかいあし類の成体とともに捕食さ

れた可能性が高い。これらの甲殻類卵は他の餌生物に比べて小型であり(Fig.ト4,

Fig.ト7),消化管が未発達である仔魚!こは消化されにくい餌と考えられている(Hunter,

1977; Bjorke, 1978;田中,1980)。したがって甲殻類の卵はマダラ仔魚にとって補助的

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-、E E 、--"

...c +-' 可コ

〉、

ω 1...

8

• 7

6

5 X

4

3 口目 日

目 口 ロ ロ

2 。 口 日<>

O 8 。♂

8金銭ぶ o@. <>

日首会

。70 100 150 180

Total length (mm)

+calanus pacificus

-corycaeu ~ spp.

企 Centropagesabdominalis

)t(Crangon affinis

08ynchelidiu m sp.

b.B笠bli三japonlca

x Acartia omorii • Paracalanu ~Q.旦E笠旦豆

・Natantiazoea

口 Anonyxampulloides

• Walleye pollock juvenile

<> Ampelisc~ sp.

Fig. 1-6. Relation between total length of Pacific cod juveniles (mm) and their prey

width (μm). Samples were collected in Mutsu Bay on 22 July 1989.

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PISCES Natantia juveniles and adult

C alanus oacificus Rllanktonic gastropods

atantia zoea

8rachyura Reptantia

10mm

5.0mm

1.0mm

500μm

100μm

¥

L

n凶

』斗

m

u-nU

FO 200 100 50 10

m

m

Total length

区三ヨ:main food

匿翠望 alternativefood

Fig.ト7.Schematic model of relation between total length of Pacific cod larvae

and juveniles and their prey width in Mutsu 8ay in 1989 and 1990.

Regression line between total length of Pacific cod and their mouth width

is shown as LoglO(MW)= 1.13・Log10(TL)ー1.25(N=110, r2=0.987, TL range:

10.1-174mm).

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な餌(subsidiaryfood)にすぎないものと考えられる。

内田(1936)は,朝鮮半島近海においてマダラ仔稚魚は主にかいあし類を捕食し,

全長30mmを超える稚魚は端脚類と魚類仔魚を,全長70-90mmの稚魚は小型の力

ニ・エビ・イ力・魚類や多毛類を捕食すると報告している。竹内(1961)によると,北海道

沿岸において標準体長29.3-74.0mmの稚魚の主要餌生物はかいあし類,特に

Paracalanus属およびPseudocalanus属であり,副次的な餌として十脚類の幼生,端脚

類ヨコエビE目,オタマボヤ科である。橋本・阿部(1962)は,全長27-81mmの稚魚の

主要餌生物はかいあし類力ラヌス自(主にPseudocalanus属と豆到担些属)であり,浮遊

性の端脚類が副次的な餌であるとしている。陸奥湾ではマダラ仔稚魚の主要な餌生

物は4月から6月までかいあし類カラヌス目であった(Tableト3)。副次的な餌生物には

海域間で差があるものの,全長70mm未満のマダラ稚魚の主要餌生物はかいあし類

カラヌス目であると考えられる。

マダラ稚魚が捕食する餌の体幅は稚魚の口幅のおよそ3-30%であったが(Fig.ト7),

全長70mm前後のマダラ稚魚の主要餌生物(カラヌス目とヨコエビE目)は稚魚の口

幅に対して小型であり,およそ3-10%程度であった。また,マダラ稚魚の胃から出現し

た餌生物の平均重量を求めると, 1個体の浮遊性巻貝,十脚類遊泳亜日ゾエア幼生,

十脚類腿行亜目短尾族メガロパ幼生はそれぞれ,カラヌス目の1.3倍, 3.9倍, 29倍に

相当する(Tableト4)。これらの大型餌生物は主要餌生物ではなかったが,全長70mm

前後の稚魚が十分捕食できる体幅範囲にある(約8-30%,Fig.ト7)07月にはマダラ稚

魚は主に底生性の端脚類ヨコエピ亜目および魚類を捕食するようになるが,浮遊性

巻貝,十脚類遊泳E目ゾエア幼生,十脚類腿行亜目短尾族メガロパ幼生などの副次

的な餌生物は,主要餌生物が力ラヌス目からヨコエビE目や魚類に転換するまでの

聞の, alternative prey(代替の餌生物)として重要な役割を演じているものと考えられ

る。またこれらのalternativepreyが主要餌生物にならなかったのは, 1989年および

1990年におけるalternativepreyの環境中の豊度が十分でなかった可能性がある。し

たがってこの主要餌生物の転換期には他の採集年についてもさらに食物組成を調べ

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Tableト4.Mean weight of m可orfood organisms in stomachs of post-Iarval

and juvenile Pacific cod in Mutsu 8ay. These values were calculated

from the data obtained in May and July, 1989 and April and June, 1990

Food organism T otal weight T otal number of Mean weight

(mg) individuals (μg)

Evadne nordmanni 3 236 12.7

Calanoida 1.439 19,714 73.0

GASTROPODA 11 118 93.2

Decapoda Natantia zoea 26 92 283

Decapoda Reptantia 262 122 2,148

8rachyura megalopa

Gammaridea 568 87 6.529

PISCES adult and juvenile 1,535 13 118,077

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る必要があるものと考え第W章で検討した。

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IT.マダラ仔魚の餌生物としてのかいあし類ノープリウスの

分類群組成と分布密度

目的

前章では全長7mm以下のマダラ後期仔魚が初期餌料としてかいあし類ノープリウ

ス,特にPseudocalanus属および旦生盟主属のノープリウスを捕食することを明らかに

した。また,かいあし類ノープリウスは多くの海産魚類の初期餌料として重要であり

(田中, 1980),魚類の初期生残機構を解明するためには,餌料密度の時空間変化を

明らかにする必要がある。そこで1991年と1992年の冬季に,陸奥湾においてマダラ仔

魚が捕食する体幅67.5-195μmのかいあし類ノープリウスの空間分布様式と分布密度

を明らかにし摂餌開始期のマダラ仔魚の生残に与える影響を検討した。

材料および方法

野外調査

調査海域である陸奥湾を湾口部,西湾北部,西湾南部,東湾の4つに区分し,これ

らのうち湾口部を除いた水域を湾内とした(Fig.11-1)0 1991年2月26-27日(13地点),

1992年1月9日(7地点), 1992年1月29日(5地点), 1992年2月25-26日(13地点)の4回に

わたり,北海道大学水産学部研究調査船うしお丸(107.85トン)と青森県水産増殖セン

タ一所属のなつどまり(24.96トン)で,合計57本のノープリウス標本を採集した

(Table 11-1)。採集を行った地点の水深範囲は36-64mであり,すべての標本採集は昼

間行われた。ノープリウスはうしお丸ではバンドン採水器で20.eの試水を採取しなつ

どまりでは水中ポンプで汲み上げられた30.eの試水を採取して,それぞれ40μmのハン

ドネットでろ過して得られた。ノープリウスの鉛直分布を明らかにするために, 1991年2

月26日には東湾Stn.30, 1992年1月9日には西湾北部Stn.13, 1992年1月29日には

西湾南部Stn.20', 1992年2月25日には湾口部Stn.10においてそれぞれ5-6層で標

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Fig.II-1. Location of Mutsu 8ay (A), contours of depth (8), and locations of sampling

stations (C). Locations of a station at 410QQ'N, 14QoQQ'E in the Japan Sea and a

station 0汗 Tairadateare shown in A and C, respectively, with stars.

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Table Iト1.Zooplankton sampling data in Mutsu Bay

Sampling Number of Number Number of samples used for

Vessel Date Mesh size sampling 。f developmental staging and gear

stations samples body size measurement

Ushio-maru 26-27 Feb. 1991 Van-Dorn 40μm 13 19 19 ~ -.l

NORPAC 0.33mm 13 13 3 (only for Oithona spp.)

25-26 Feb. 1992 Van-Dorn 40μm 13 18 18

NORPAC 0.33mm 16 16 3 (only for Oithona spp.)

Natsudomari 9 Jan. 1992 Pump 40μm 7 11 11

29 Jan. 1992 Pump 40μm 5 9 9

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本を採集した。また,ノープリウスの水平分布を明らかにするために鉛直分布調査地

点に加えて, 1991年2月26-27日には湾内11地点の水深15m層, 1992年1月9日には

湾内6地点の水深10m層, 1992年1月29日には湾内5地点の水深10m層, 1992年2月

25-26日には湾内および湾口部の12地点の水深15m層でノープリウスを採集した。た

だし, 1991年2月26日のStn.25とStn.30, 1992年2月25日のStn.10では水深15m層で

採集を行わなかったので,水深10mと20m層のデータの平均値を15m層のデータとし

て用いた。

かいあし類ノープリウスとコペポダイトの分布密度の関係と,水塊交替とコペポダイ

トの分類群組成の関係を調べるために, 1991年2月26-27日の13地点と1992年2月

25-26日の16地点では, NORPACネット(口径:0.45m,側長:1.8m,目合:O.33mm)の海

底直上から水面までの鉛直曳きによってコペポダイトを採集した(Table11-1)。採集さ

れたすべての動物ブランクトン標本は直ちに5%中性海水フォルマリン溶液で固定し

た。

各調査地点では1991年2月はDBTにより水温を 1992年2月にはCTDを用いて水

温・塩分を測定し表層と15m層で採水した試水は実験室に持ち帰り,サリノメータで

塩分値を測定した。さらに1992年1月の2回の調査ではノープリウスを採集した水深で

棒温度計を用いて水温を測定した。

かいあし類ノープリウスとコペポダイトの計測と解析

かいあし類ノープリウス標本は60個体を上回るように適宜分割し,同定と各発育段

階の判別を行った。ノープリウスは生物顕微鏡の接眼マイクロメータを用いて前体部

幅(Prosomewidth, PW)の計測を行った。 NORPACネットで採集された型生旦豆属成体

は種まで同定したが,分類学的制約からコペポダイト期の3期から5期(C3-C5)までの

旦生盟主属lま, Oi血盟主豆旦盟主とその他の型生盟呈属に分離した。すべての旦血盟主属の

成体およびコペポダイ卜もノープリウスと同様に前体部幅(PW)を計測した。

摂餌開始期のマダラ仔魚の利用可能な餌の分布密度は,前体部幅67.5ー195μmの

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かいあし類ノープリウスが1リットルあたり!こ含まれる個体数Onds..Jrl)として求めた。コ

ペポダイトの相対分布密度は1平方メートルあたりの個体数Onds.'m-2)であらわした。

ノープリウスの分類群組成はG検定を用いて標本間の有意差の有無を検討した。母

集団分布の同一性の比較には, 2標本聞の場合はマン・ホイットニーのU検定を, 3つ

以上の標本間の場合にはクラスカル・ウオリス検定を用いた。すべての検定の有意

水準は0.05とした。

海況データの解析

1991年2月下旬には荒天のために,予定していた湾口部の調査が不可能であった。

この時期の陸奥湾に流入する津軽暖流水の海水密度を推定するために, 1991年3月

11日と1992年2月29日に青森県水産試験場が日本海の1地点(41oOO'N, 140000'E)で

行った表層から100m水深までの平均水温・塩分値を引用した(Fig.II-1-A,青森県水

産試験場, 1995a; 1995b)。ただしこの時期の日本海1地点の水温と青森県水産増殖

センターが平舘沖(Fig.11-1-0)で観測しているテレメータブイ45m層の水温の聞には,

1979年から1994年の聞に有意な相闘がみられ(N=16,P=3.0・10-4,Fig. 11-2;青森県水

産増殖センター, 1976, 1979-1997;青森県水産試験場, 1972-1995),平均で平舘沖

が1.10C低い水温になっていた。そこで日本海1地点の水温値から1.1

0C低下させた値

を陸奥湾に流入する津軽暖流水の水温と推定した。また,青森市における9月から12

月の合計降水量は,気象庁月報から引用した(気象庁, 1973-1997)。

結果

1991年と1992年の冬季における陸奥湾の海況

冬季および春季の陸奥湾には津軽暖流水(TWO)が主に湾口部西側の表層および

中層から流入する(大谷・寺尾, 1974)。冬季と春季には湾内へ流入した水塊は冷却さ

れ,湾口部東側の海底近くから湾外へ流出する。湾口部の中層には津軽暖流水と湾

内の水塊との聞に密度躍層が形成される。

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Mar. 1 2

1 0

4

8

6

(O。)ωLコ一vmwLωaεωト

2 '64 '94 '91 '88 '85 '82 '79 '76 '73 '70 '67

Sea 一←Japan

4壬-Tairadate

---o-Ohshima

--*-East Bay

Fig.II-2 Annual fluctuations of water temperatures at a station of 41 oOO'N, 140000'E in

the Japan Sea (mean temperature from surface to 100m depth), a station 0仔

Tairadate (45m depth), a station 0仔 Ohshima(50m depth), and a station in East Bay

(46m depth) in March 1964-1994 (Aomori Prefectural Fisheries Experimental Station,

1972ー1997;Aomori Prefectural Aquaculture Research Center, 1976, 1979-1997).

30

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1991年2月26-27日には湾内水深15m層の水温・塩分値の範囲は, 4.2-5.90C,

33.18-33.42 PSUで、あった(Fig.11-3-A)。水深15m層における海水密度σtの平均値は

26.32 kg・m-3であり,その範囲は26.29kg'm-3(Stn. 35)から26.35kg・m-3(Stn. 31)で、あっ

た(Fig.11-3-C)。ノープリウスの鉛直分布を調べたStn.30では,表層から海底直上ま

でほぼ均一の水塊で占められており水温範囲は5.16-5.18oC,塩分値は

33.34-33.35 PSUであった。

1992年 1月9日の水深 10m層の水温は, 7.4 Ocから 10.10Cの範囲にあった

(Fig. 11-4-A)0 1992年1月29日の水深10m層は, 6.9-10.00CIこ低下した。 (Fig.11-4-8)。

1992年2月25-26日には,水深15m層の水温範囲は4.5-8.60Cで、あり(Fig.11-3-8),高

水温・高塩分値は湾口部西側にみられ,低水温・低塩分値は東湾の北側寄り!こみら

れた。この時期の水深15m層における海水密度σtは, 1991年2月に比べて水平的な

勾配が大きく,低密度の水塊が湾口部西側にみられた(Fig:11-3-D)。湾内15m層の平

均σtは26.62kg・m-3であった。

1992年1月9日のStn.13と1992年1月29日のStn.20'における水温の鉛直較差は小

さく(Fig.11-5),水温範囲はそれぞれ8.7-9.0oC, 8.2-8.8 oCであった。 1992年2月25日

のStn.10では,水深20m以浅では8.2-8.50C,水深21-57mでは徐々に低下し,水深

58m以深では4.97-4.99oCであった(Fig.11-5)。この時塩分値と σt値は表層の

33.90 PSUと26.33kg'm-3から水深64mの33.68PSUと26.63kg・m-3にそれぞれ変化し

た。

かいあし類ノープリウスの鉛直分布

1991年2月26日の東湾Stn.30では,かいあし類ノープリウス(体幅67.5-195μm)は水

深1m層で最も高い分布密度を示し(25.0inds.' ,e-l) ,最低値を示した水深40m層

(12.2 inds..,e-l)のおよそ2.0{音であった(Fig.11-6)。採集水深による分類群組成には有意

差はみられなかった(G検定, G叫=21.4, df=20, P=0.37)。最も分布密度が高かった分

類群はCentropages属であり(7.4-16.0inds..,e-l, 57-67%),次いで旦虫盟主属が高い分

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A C

B D

26.6く

Fig. 11-3. Distributions of water temperature (00, solid lines in A and B), salinity (PSU,

dashed lines in A and B), and sigma-t (kgo m-3, solid lines in 0 and D) at 15m depth

during 26-27 February 1991 and 25-26 February 1992.

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Fig. 11-4. Distributions of water temperature (OC, solid Iines) at 10m depth on 9 January

1992 and 29 January 1992.

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Salinity (PSU) (,.)心3 心3 ら) (,.)

ふ) (,.)心3 心) .t.

(J)、」 α) co 0

( Oc ) Temperature

1 2 1 0 8 6 4 0

30

50

60

1 0

40

20 ε

ZHaω

J

N

0・吋

m

M

0・agb

'K

L

M

∞・印fk

ド2

0

(,.)

Sigma-t

l

N

∞・h担

7 0

一日一 Stn.13 9 Jan. 1992 Stn.10 25 Feb. 1992 ーー Salinity

ート Stn.20' 29 Jan. 1992 Stn.10 25 Feb. 1992

ーーー Stn.10 25 Feb. 1992 S gma-t

Fig. 11-5. Vertical distributions of water temperature (00) at three sampling stations from

9 January to 25 February 1992, and salinity (PSU), and sigma-t (kge m-3) at Stn. 10

on 25 February 1992.

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2 5 「寸

(inds.・f-1 )

2 0 「下「

Nauplii

1 0 「丁「

O 17

25.0

1 0 22.4

2 0 E

1 3.1

3 0 工科丘

ω

1 8.7

40 30

1 991

Stn.

Fe b. 26

1 2.2

14.1 5 0

図 Pseudocalanus ・Acartia-

S一

S一

一一e一

u一-

t

n一4J

一a一

a一}

El一rkaM一

a一O一n一

C一r一

O一

a一日

h一

rE一v'一一

一川一

4L一

a一e一・l一

P一C一O一

::;

:

i

:

図 Others

Fig. 11-6. Vertical distribution of copepod nauplii measuring 67.5-195μm in prosome

width obtained by filtering 20e water collected with a pair of Van-Dorn bottles at

Stn. 30 on 26 February 1991.

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布密度を示した(2.5-6.0inds.. r1, 16-27%)。これらに対してPseudocalanus属の分布

密度は低かった(0-0.4inds..r1, 0-1.6%)。

1992年1月9日の西湾北部Stn.13における67.5-195μmPWの分布密度は水深20m

層の10.4inds.. r1から5m層の19.2inds.. r1の範囲にあり,その中央値は15.5inds.. r1

であった(Fig.11-7)。採集水深による分類群組成には有意差はみられず(G検定,

Ga<li=12.5, df=8, P=0.13),すべての採集水深で旦血盟主属が優占した

(6.9-13.9 inds..r1, 57-72%)0 Pseudocalanus属はいずれの水深でも採集されなかっ

。た

1992年1月29日の西湾南部Stn.20'における67.5-195μmPWの分布密度の中央値

は11.6inds.. r1であった(Fig.11-7)。採集水深による分類群組成の差はみられず(G検

定, G吋=23.1,df=24 , P=0.51), Oi血盟主属が優占した(6.3-10.1inds..,e-l, 60-78%)。

Pseudocalanus属の分布密度は低かった(0.1-0.7inds..,e-l, 1.1-6.7弘)。

1992年2月25日の湾口部Stn.10における67.5-195μmPWのノープリウスの鉛直分

布は,密度躍層内(Fig.11-5)の水深30m層(13.8inds..,e-l)と40m層(12.9inds.. Rつで分布

密度が高く, 30m層は1m層の約4.3倍の分布密度を示した。水深による分類群組成に

は有意差がみられ(G検定, G叫 =43.5,df=10, P=4.0・10ーな全体として旦生担豆属が優

占し(2.2-9.9inds..,e-l, 48-74%),次いでParacalanus属が高い分布密度であったが

(0.4-2.6 inds..,e-l, 11-39%), Pseudocalanus属は低い分布密度であった

(0.1-0.6 inds..,e-l, 2.2-6.8%)0 Figu問 11ー7の中ではその他"Othe悶"に含めたが,旦虫笠豆

属とCorycaeus属は水深1-10m層で相対的に高い割合を占めた(白旦旦 5.7-7.8%,

Gorycaeu5: 3.1-5.7%)。

かいあし類ノープリウスの水平分布

1991年2月26-27日のStn.25およびStn.30では水深15m層でかいあし類ノープリウ

スの採集を行わなかったので,水深10mと20m層における67.5-195μmPWのノープリ

ウスの平均分布密度を用いた。それら2地点の水深10mと20m層の分類群組成の間

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20

19.2

13.9 Stn.13 9 Jan. 1992

(inds.圃 g-1)1o 15

p

u

au N51

OI R

d

20

30

40

1 0

20

Stn. 20' 29 Jan. 1992

15 --ro

14.4

10 r-r

5 。5

1 0

20

30

40

E

ZHaω

。 20 r----,

15 1一一寸

10 「一寸

5 O

13.8

1 0

20

30

Stn. 10 25 Feb. 1992

nununU

4

5

6

4.0

園 Pseudocalanus口Paracalanus

圃Acartia 冨Centropages

図 Others図Oithona

Fig. 11-7. Vertical distributions of copepod nauplii measuring 67.5-195~m in

prosome width obtained by filtering 30e pumped water at Stn. 13 on 9

January and at Stn. 20' on 29 January 1992, and by filtering 20e water

collected with a pair of Van-Dorn boUles at Stn. 10 on 25 February 1992.

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にはそれぞれ有意差がみられなかった(G検定, S凱tn.2お5:G

Stn. 3ωo : Ga<li=5.0, df=4, P=0.29)。水深 15m層における分布密度は

17.8 inds.. g-l(Stn. 30)から26.8inds..g-1(Stn. 31)の範囲にあり,中央値は22.4inds.. g-1

であった(Fig.11-8)0 13地点における15標本聞に分類群組成の差がわずかにみられた

(G検定, G叫=81.8,df=56, P=0.014)。また,すべての採集地点でGentropages属が優

占し(最小値一中央値一最大値:9.2-12.8ー18.4inds.. g-l, 46-55-72%),次いで白血盟主属

が高い分布密度を示した(4.0-5.6-8.8inds.. g-l, 19-25-40%)0 Pseudocalanus属の割合

は低く(0-0.1-1.2inds.. g-l, 0-0.5-5.4%), 湾口部に近いStn.16で最も高い分布密度を

示した。

1992年1月9日の水深10m層における分布密度は11.5irids.. g-1から22.9inds.. g-1の

範囲にあり,中央値は14.7inds..g-1であった(Fig.11-9-A, C)。分布密度はStn.30およ

びStn.42で高かった。 1992年1月初日の水深10m層における分布密度は8.8inds..g-1

から18.7inds..g-1の範囲にあり,中央値は13.3inds..g-1であった(Fig.11-9-8, C)O 1992

年2月25-26日の水深15m層における分布密度は,湾口部で低く(Stn.8,9, 10, 11:

6.2-7 .4-15.2 inds.. g-l, Fig. 11-10) ,東湾で高かった(Stn.30, 35, 42, 45, 50:

21.2-36.8-44.0 inds..g-1)。かいあし類ノープリウスの分類群組成の採集地点による違

いは, 1992年1月9日(G検定, G叫=23.1,df=12, P=0.027)と1992年2月25-26日(G検定,

Gadj=311ム df=65, P=7.7・10-34)には有意差がみられたが, 1992年1月29日(G検定,

G叫 =3.7,df=8, P=0.88)にはみられなかった。 1992年1月9日のStn.20'とStn.30を除い

て1992年の1月から2月まではOithona属が優占し(30-85%),次いで1月9日(30-58%)と

1月29日(20-26%)にはParacalanus属が, 2月25-26日には湾内でCentropages属

(5.4-16%)の割合が高かった。 1992年2月25-26日lこOithona属の割合は湾口部で低く

(2.2-3.4-8.6 inds.. g-¥30-49-57%) ,東湾では高かった(16.0-30.8-35.2inds..g-¥

76-80-85%) 0 Pseudocalanus属は湾内に比べて湾口部Stn.8とStn.9で高い割合を

占めたが(それぞれ2.2inds..g-1と1.8inds.. g-l, 30%と24%),9entropages属と全盟国宝属

は逆の状態を示した。 1992年2月の東湾で採集されたOithona属ノープリウスには発

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(inds.. ,e-1) 3 0

23.6

22.4

州日

u

a

M川B

Stn.16

Stn.30

Stn.25

Stn.29

Stn.19

26.8 Stn.31

x:恥札 0:10,0:30,0:100

(inds.. ,e-1) Stn.33

Stn.35

Stn.42

Nauplii

Stn.43

四冨

Stn.45

Stn.50

園 Pseudocalanu口Paracalanus

.Ac a rt i a 昌 Centropages

圏 Others回 Oithona

Fig. 11-8. Horizontal distribution of copepod nauplii measuring 67.5-195~m in prosome width

obtained by filtering 20e water collected with a pair of Van-Dorn bottles at 15m depth

during 26-27 February 1991. Numerals show station numbers, and the area of each circle

is proportional to the concentration (jnds.イー1,A). Values at Stn.25 and Stn.30 with

asterisks are mean densities of 10m depth and 20m depth samples.

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NaypillJi15

Stn.131I~ ~ ~ ~ ~ ~: m ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

Stn. 19 1 11~illilili::iiii:i111:11 Stn. 20 'l ~j~:mj~1~j] 1

Stn.30 I mWmiiiiiii約三Wml22.9

Stn.35I1: ~ i : ~ : i : : : : : : : : : : : i : i : : : :

Stn.421 E主主主~~ ~ II 姐20.3

Stn .4 711::::::::::::::::::::::~1

C J a n. A

1992

堅四8.8

ii:i:::jj::U:i:i:i/閥13.3

国言語:i13.3

5i主主主主調10.9

E::::::: :::::::1:1:宗主主主自18.7

29 Jan. 1992

回Pseudocalanus

a-s

・l-¥

・門一副

a一h

c-t

A一0

・図

口Paracalanus

国 CentropagesX:山 , 0:10,0:30,0:100

(inds.. f-1)

Ja n. B

回OithonaNauplii

Fig. 11-9. Horizontal distributions of copepod nauplii measuring 67.5-195f..tm in prosome width

obtained by filtering 30.e pumped water at 10m depth on 9 January and 29 January 1992.

Numerals show station numbers, and the area of each circle is proportional to the concentration Cinds. .e-1, A-B).

40

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5 0

Cinds.. g-1) 40

25-26 Feb. 1992

3 0

Nauplii 2 0 1 0

B

Stn.8

Stn.9

A

OF

ωs

。M

O

× Nauplii

園 Pseudocalanu口Paracalanu

.Ac art i a 圏 Centropages

圏 Others回 Oithona

Fig. 11ー10.Horizontal distribution of copepod nauplii measuring 67.5-195μm in prosome width

obtained by filtering 20.e water collected with a pair of Van-Dorn bottles at 15m depth

during 25-26 February 1992. Numerals show station numbers, and the area of each circle

is proportional to the concentration Cinds.' g-1, A). The value at Stn.10 with asterisk is

mean density of 10m depth and 20m depth samples.

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達した油球を持つ個体がしばしばみられたが,それらの個体の計数は行っていない。

1991年と1992年2月におけるかいあし類コペポダイトの分布密度と分類群組成

1991年2月の西湾と東湾, 1992年2月の湾口部,西湾,東湾の5つの水域において,

NORPACネットの鉛直曳きにより採集されたかいあし類力ラヌス目コペポダイトの分布

密度の中央値は水域聞で異なっていた(Fig.11-11)。クラスカル・ウオリス検定による比

較ではこの5つの水域間に有意差がみられた(KW=18.1,df=4, P=1.2・10-3)01991年と

1992年の両年ともに西湾と東湾の聞で,分布密度に有意差はみられなかった(U検定,

1991年:Us=29, n=9,4, P>0.1 0; 1992年:Us=20, n=8,4, P>0.20)。両年ともに採集が行

われた地点は湾内の9地点であり,これらの地点で分布密度を比較すると 1991年は

1992年に比べて有意に高かった(U検定,Us=76, n=9,9, Pく0.002)01991年は1992年よ

りも ParacalanuS 限立止と Centropages abdominalisの分布密度が高く,逆に

Pseudocalanus属の分布密度が低かった。

1991年2月の3地点では,型血盟主属全体に対してOithonasimilisが占める個体数割

合は低かった(Fig.11-12) 0 1992年2月も湾口部Stn.8および西湾北部Stn.19でもO.

豆回li豆の割合は低かったが,東湾Stn.50では高い割合を占めた(51%)。巴凶旦出生旦と

息 longispinaの成体はともに暖海性穫であり(西田, 1997),陸奥湾では1992年にのみ

採集された。 NORPACネット(0.33mm目合)で採集されたすべての旦血盟主属の体幅

(PW)は, 127μmから344μmの範囲であり,全計測個体の99.6%が体幅330μm未満で

あった。このため,両年の聞で旦生盟呈属の分布密度の比較は行わなかった。

考察

前体部幅(PW)67.5ー195μmのかいあし類ノープリウスは,湾口部Stn.10では密度躍

層に集中し,鉛直的な分布密度の差は最大4.3倍と大きかった(Fig.11-5, Fig. 11ー7)。一

方湾内ではノープリウスの分布密度は常に表層域で高かったが,鉛直的な分布密度

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26-27 Feb. 1991

6.0 25-26 Feb. 1992

(Nlε

5.0

4.0 cn "'c c 0 g 3.0 Cコ

4

守・園

、ーJ

KA

判一

ωcω

2.0

1.0

9

8

West

B a y

EastBay

B a y Mouth

West

B a y

E a 5 t

B a y

口Paracalanu ~I!.旦E主旦豆 四PseudocalanusSpp.

田Centropagesabdominalis圃Acartia 旦旦旦工11

国 Other calanoida

Fig. 11-11. Median densities of calanoid copepods collected by vertical

hauls with a NORPAC net (O.33mm mesh) in Mutsu Bay during 26-

27 February 1991 and 25-26 February 1992. Each numeral and

vertical bar shows sample size and median +1 standard deviation,

respectively.

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100(%)

N=47

N=62

N=57

5 0 O

Stn.16

Stn.50

Stn.1 9 F

O

O

,......

N=94

N=103

N=208

ーーー四ーーー田ーーーーー・ーーーーーー目ーーーーーーーーーー四ーー回目ーー園田 a

-ー園田ーーーー田園田ーー国ーーーーー--四ーー曲目ー.・ーーーーー-ー四ーーーーーー園田ーー園田ーー園田ーー一一一一一一・ーー四ーーー四ーーーーーーーーーーー田ーー園田ー

・ーーー田ーーー恒ーーーーーーーーーー園田ーー圃 i

-四ーーーーーー圃ーーー田ーーーーーーーーーー四・ーー園田ー園田ーー園田ーーーーーー園田ーー圃ー.ーーーーーー園田ーー四ーーー田ーー園田ーーー四ー・ーー田ーーーーーーー四ーーーー-ー四ーーーーー.ーー回目ーーーーー園田ーー圃ーーーーーー園田ーーー.

ーー由ーーー四ーーーーー目ーー田ーーーーーーー-. -ーーーーーーーーーーー・ーーー田ーーー田ーー皿・ーーーーーーーー回ーーー'ーーー園田ーーーーーー-E 四ーーー回ーー回目ーー

8

Stn.19

Stn.50

Stn. N

0

0

T圃圃

目立. atlantic a C6♀ 8Q.. ~ imili 5 C 6♀

・旦.P lumifer a C6♀ 目立. 5 imili 5 C 5♀

図O.Ionglspln a C6♀ 口旦.5 imili 5 C 6♂

日Oithon a spp. C3 & C4-C5♀ (not include旦ム simili 5)

Fig. 11-12. Species and developmental stage composition of 0並h旦E呈spp.collected

by vertical hauls with a NORPAC net (O.33mm mesh) in Mutsu Bay during 26-27

February 1991 and 25-26 February 1992. 0些h旦naspp. copepodites

(copepodite stage 111 to V) were distinguished between旦豆旦血豆 andother

Q並h旦E亘spp.N: number of individuals examined.

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の差は2.0倍以下であった(Fig.11-6, Fig. 11-7)0 1992年2月25日のStn.10ではノープリウ

スの分類群組成に鈴直的な差がみられ,旦並旦豆属は水深30-40m層で(Fig.11-7),

Paracalanus属は水深20-40m層で, Oncaea属は水深ト10m層で分布密度が高かった。

これらの結果から,ノープリウスは鉛直混合が進んだ冬季の湾内では,湾口部に比

べると分布密度の鉛直的な差は小さいものと考えられる。また湾口部ではノープリウ

スは密度躍層に集中し表層を覆う津軽暖流水にはノープリウスは少ないものと考え

られる。このような躍眉の有無によるノープリウスの鉛直分布密度の違いは Inczeet

al. (1996)1こよっても観察されており,ある程度一般的なものと考えられる。

1991年2月にはCentropages属ノープリウスの割合が高く(46-72%,Fig. 11-8),分類群

組成の水平的な違いは有意ではあったが(P=0.014),1992年2月(P=7.7・10-34)に比べ

るとその差は小さかった。 1992年は1月, 2月ともに主として旦並旦豆属ノープリウスが

優占した(30-85%,Fig. 11-9, Fig. 11-10)。また,水深15m層におけるかいあし類ノープリ

ウスの分布密度の変動係数(CV%)は, 1991年に比べて1992年は大きかった

(T able 11-2)。このような違いはおそらく津軽暖流水(TWC)の陸奥湾への流入量の差を

反映した結果と考えられる。♀ abdominalisとPseudocalanus属のコペポダイトは,秋季

の陸奥湾には出現しない(永峰ら, 1981)。北海道沖合の太平洋においてP.newmani

と巳旦也旦笠は10月にそれぞれ50m以深と200m以深に分布する(山口・志賀, 1997)。

陸奥湾に冬季に出現するPseudocalanus属コペポダイトは湾外から輸送され, 1992年

2月は1991年2月よりも分布密度が高かった(Fig.11-11)0 Pseudocalanus属(Corkett

and McLaren, 1978)や旦血盟主属はメス成体が卵を抱えて運ぶため,ノープリウスは

普通成体とともに出現するが,全 abdominalisは成体が出現しなくても湾内海底上に

分布する休眠卵からノープリウスが瞬化する(Kasahara旦i!h1975)0 C. ~bdominalis

のコペポダイトは1991年2月には分布密度が高かったが, 1992年は低かった

(Fig. 11ー11,T able 11-2)。つまり1991年は湾外と湾内の水塊交替量が少なかったため

に内湾を起源とするCentropages属ノープリウスが卓越し, 1992年は交替量が多かっ

たためにPseudocalanus属をはじめとする湾外を起源とする分類群の分布密度が高

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σトムコ

Table Iト2.卜Iydrographicconditions. abundance and taxa of nauplii measuring 67.5-195μm in prosome width as prey for Pacific cod post-Iarvae. and Oalanoid

copepodites in Mutsu Bay in February 1991 and in January and February 1992. Numerals show minimum-median-maximum values. respectively

Hydrographic Salinity (PSU)

conditions at 10m T emperature (00)

and 15m depth Sigma-t (kg'm-3)

Nauplii at 10m Concentration of suitable and 15m depth size (67.5-195μm PW) as

prey for Pacific cod larvae

Cinds.,[l)

CV%

Order of dominance

(high to low) 2

3

4

Oalanoid Copepodites Density (10.000 inds.' m-2)

CV覧

Order of dominance

(high to low) 2

3

4

26-27 Feb. 1991 9 Jan. 1992 29 Jan. 1992 25-26 Feb. 1992

Inner pa比 ofthe bay Inner pa比 of Inner part of Inner part of the bay Bay mouth

33.87-33.91-33.93

7.1-8.5-8.6

(West & East Bay) the bay the bav (West & East Bay)

33.18-33.34-33.42 33.64-33.78-33.89

4.2-5.0-5.9

26.29-26.32-26.35

17.8-22.4-26.8

13施

Centrooae:es

旦血盟皇

Paracalanus

企盟国呈

1.0-3.1-7.4

48児

Gentrooae:es

Paracalanus

全盟出皇

Pseudocalanus

7.4-9.0-10.1

11.5-14.7-22.9

27%

Oithona

Paracalanus

Acartia

Oncaea

6.9-8.6-10.0 4.5-5.6-7.7

26.44-26.62-26.68 26.34-26.35-26.51

8.8-13.3-18.7 21.2-32.8-44.0 6.2-7.4-15.2

28% 27% 46%

Oithona 旦出血.5! 0出盟盆

Paracalanus Gentrooae:es Paracalanus

Oncaea paracalanus Pseudocalanus

Centropages A旦出.5! Q虫謹呈

1.0-1.6-3.5 0.23-0.74-1.4

41% 67%

Paracalanus Pseudocalanus

Acartia Paracalanus

centrooae:es Acartia

Pseudocalanus Metridia

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かったものと考えられる。ところで、Oithona属のコペポダイト1期から5期まで(C1一C5)は

種レベルで同定できないため,冬季湾内に出現する旦血盟主属のノープリウスの起源

が秋季に湾内に分布する成体か,湾外に分布する種であるのか不明である。ただし

1992年2月の東湾Stn.50では色豆出!註の占める個体数割合が他の地点よりも高く

(Fig. 11-12),この時期の東湾ではよく発達した油球を持つ旦生旦豆属のノープリウスが

O. similisのメス成体とともに出現していた。これらの結果より, 1992年2月に東湾でみ

られた旦並盟主属ノープリウスの高い分布密度は,主に色豆出Ii呈!こよって支えられて

いたものと推察される。

1991年2月には,湾口部での海況データが得られていないが,湾内の水温と海水

密度の水平勾配は1992年よりも緩慢であった(Fig.11-3)0 1991年3月11日と1992年2月

29日の日本海の1地点(41000'N,140000'E)における海面から100m水深まで、の平均水

温および塩分値はそれぞれ, 9.30Cと33.81PSU, 9.20Cと33.87PSUであった(青森県

水産試験場, 1995a; 1995b)。水温を1.10C低下させてから求めたσtの値は, 1991年が

26.31 kg-m六1992年が26.37kg・m-3で、あり,両年の聞で、σtの値に大きな差はみられ

ない(Fig.11-13)。湾内における水深15m層の平均海水密度は1991年が2"6.32kg・m六

1992年が26.62kg・m-3であり(Table 11-2),鉛直的にほぼ均質の水塊であった。これら

の値からも1992年は水平的に広がったフロントが津軽暖流水と湾内水の聞に生じ,

密度流によって大量の水塊が交換されたものと考えられる。しかし1991年は,これら2

水塊聞の海水密度の差は小さく, 1992年に比べてあまり水塊の交替が進まなかった

ことを裏付けているものと考えられる。 1991年2月の湾内にみられた低密度水は,前

年1990年秋季の多量の降水量に起因する淡水の流入があったため生じたものと考

えられる(Fig.11-14,青森市における9月から12月の全降水量, 1990年:669mm ; 1991

年:390mm,気象庁, 1973-1997)。以上のように陸奥湾における冬季のかいあし類

ノープリウスの分類群組成は,地域的な気象条件に起因する海洋構造の年変動に

よって変化するものと結論付けられる。

Paul (1983)は,摂餌開始期のスケトウダラ仔魚が必要とするかいあし類ノープリウ

47

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Feb.1992 Fig. 11-13. Diagram of oceanographic structure in Mutsu Bay and offshore waters in

Tsugaru Strait during 26-27 February 1991 and 25-26 February 1992.

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'83 '85 '87 '89 '91 '93 '95 Fig. 11-14. Annual fluctuations of total precipitation at Aomori City from September to

December in 1973-1996 (The Japan Meteorological Agency, 1973-1997).

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スの分布密度を飼育実験により8inds..r1から10inds..r1以上と推定している。

Haldorson et al. (1989)はスケトウダラ仔魚が十分な摂餌を行うためには全長

150-350μmのノープリウスが20inds..r1以上必要であると推定している。 Paulet alニ

(1991 )は1986年から1989年の調査によってアラスカ州オーク湾では,おおよそ

10-15 inds..r1とし可分布密度が,大量のスケトウダラ仔魚を死亡させる原因とはなら

ないことを示した。マダラ仔魚が必要とするノープリウスの分布密度は知られていな

いが,摂餌開始期の仔魚が捕食するノープリウスのサイズはすでに前章で明らかに

した通り体幅67.5ー195μmであり,スケトウダラ(体幅84μm以上;Nakatani, 1995)に比

べてやや小型のノープリウスも捕食する。しかしマダラ仔魚の形態(Matarese旦豆2

1981; Dunn and Vinter, 1984; Matarese旦豆ュ 1989)と生活様式(後述)は,スケトウダ

ラのそれ.と非常に似通っており,同様なかいあし類ノープリウス分類群を利用する

(Kendall弘単品 1987,第 I章)。ノープリウス(67.5-195μmPW)の分布密度の中央値は

1992年1月9日の水深10m層では14.7inds..r1, 1992年1月29日の水深10m層では

13.3 inds." r1であった(Table 11-2)。また1991年2月下旬と1992年2月下旬の水深15m層

における分布密度の中央値はそれぞれ22.4inds." r1と32.8inds." r1であった。スケトウ

ダラ仔魚の知見を適用して考えると,20 inds."r1を上回る両年2月下旬のこれらの中

央値はマダラ仔魚の生残にとっても,十分な分布密度であろう。しかし1992年1月に

は13-15inds."r1と低く仔魚の生残に対する影響をさらに検討する必要があるものと

考えられる。

前章でも述べたようにPseudocalanus属ノープリウスは,マダラ仔魚とスケトウダラ

仔魚の両者にとって相対的に大型の餌であり,他のノープリウスに比べて消化管から

出現する割合が高い(Kendallet al., 1987,第 I章)。また陸奥湾ではPseudocalanus

属ノープリウスの分布密度は津軽暖流水の流入量に関連していた。 1991年は津軽暖

流水の流入量が少なかったため,分離浮遊卵であるスケトウダラの卵および表層近く

に分布する仔魚は,湾外の産卵場(おそらくは日本海,高津ら, 1992)から湾内へ輸送

される個体が少なかったものと考えられる。一方マダラ成魚は湾内で産卵するため

50

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(JII村・小久保, 1 950; HaUori 註豆:.!1992), .Eseudocalanus属を除いた湾内に高密度

に分布するノープリウスを 1991年と1992年の両年ともにマダラ仔魚は捕食可能で

あったものと思われる。すなわち,陸奥湾はスケトウダラに比べてマダラの成育場とし

て,より適している可能性がある。この差は産卵場が形成される場所と,海洋構造の

年変動に起因するものと考えられる。

本章では摂餌開始期のマダラ仔魚の餌であるかいあし類ノープリウスの分布密度

を検討した。今後マダラ仔魚の生残率や成長様式を検討するためには,マダラ仔魚

にとって必要な限界餌料密度を明らかにする必要がある。

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m.マダラ仔稚魚とかいあし類の時空間分布

目的

第 I章では全長7mm以下のマダラ後期仔魚が初期餌料としてかいあし類ノープリ

ウスを捕食し,全長7-70mmの仔稚魚はかいあし類コペポダイトを 70mm以上の個体

は端脚類ヨコエピ亜目と魚類を主に捕食することを明らかにした。また,第E章では

かいあし類ノープリウスの空間分布と分布密度を明らかにした。マダラ仔稚魚の空間

分布に関しては, Walters (1984), Boehleは旦到ュ (1985),Rugen and Matarese (1988),

興世田ら(1992)の報告があるが,陸奥湾における知見はない。魚類の初期生残機構

を解明するためには,年級群変動を決定付けると考えられる仔稚魚期の時空間分布

を明らかにする必要がある。ここでは陸奥湾におけるマダラ仔稚魚とその餌生物の空

間分布との関係を明らかにすることを目的とした。

材料および方法

野外調査

調査は1988-1997年の2月から7月までの期間,陸奥湾において北海道大学水産

学部研究調査船うしお丸(107.85トン後に128トン)と練習船おしょろ丸(1,383トン)を使用

して行われた(Fig.11ト1,Table 11ト1)0 2月から4月の期間,マダラ仔稚魚はプランクトン

ネット(口径:1.0m,目合:0.33mm),稚魚ネット(口径:1.3m,目合:0.62mm,胴尻目合:

0.33mm),ビームトロールネット(第 I章参照)の水平各層曳きによって採集した。この

ビームトロールネットは,網口から胴尻に向かつて順に13mm,3.1 mm, 0.33mm

(1989-1990年)あるいは13mm,3.1mm, 0.72mm (1991-1997年)の目合で構成され,

3.1mm目合の開口面積は0.90m2,0.33mmおよび0.72mm目合の開口面積は0.16m2で

ある。 5月から7月には稚魚はオッタートロールネット(第 I章参照)の中層あるいは着

底曳きによって採集した。プランクトンネットと稚魚ネットにはフローメータを取り付け

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Fig: 11ト1.Location of Mutsu 8ay (A), contours of depth and three locations of spawning

ground of Pacific cod (che色kers)reported by Kawamura and Kokubo (1950) (8), and

locations of sampling stations (0).

53

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Table 11ト1. Number of sampling stations and samples in Mutsu Bay. Samplings were carried out by T /S Oshoro-maru (asterisks) and R/V Ushio-maru

Number of Number Date Sampling gear Target sampling 。f

stations samples

7-8 Feb. 1990 Ring net vertical haul Pacific cod larvae 8 17 Larva net horizontal haul Pacific cod larvae 5 6

Beam T rawl net Pacific cod larvae 5 6 25-26 Feb. 1992 Beam Trawl net Pacific cod larvae 9 12 26-27 Feb. 1991 Beam T rawl net Pacific cod larvae 6 8 1-6 Mar. 1989 Beam T rawl net Pacific cod larvae 18 23 2 Mar. 1989 Larva net horizontal haul Pacific cod larvae 2 4

* 7-9 Apr. 1991 Beam T rawl net Pacific cod larvae and juveniles 6 15

* 9 Apr. 1991 MTD nets Calanoids 2 9 9-11 Apr. 1991 Beam T rawl net Pacific cod larvae and juveniles 14 14 12-15 Apr. 1993 Beam Trawl net Pacific cod larvae and juveniles 8 12 14-16 Apr. 1992 Beam Trawl net Pacific cod larvae and juveniles 12 16 15-16 Apr. 1992 MTD nets Calanoids 2 6 24-27 Apr. 1990 Beam Trawl net Pacific cod larvae and juveniles 11 17 25-26 Apr. 1990 MTD nets Calanoids 3 9 18-23 May 1989 Otter Trawl net (mid-water) Pacific cod juveniles 5 6

Otter Trawl net (bottom) Pacific cod juveniles 13 13 3-6 June 1997 Otter T rawl net (bottom) Pacific cod juveniles 7 7

4-6 June 1996 Otter Trawl net (bottom) Pacific cod juveniles 6 6

5 June 1998 MTD nets Calanoids 3 7-8 June 1995 Otter Trawl net (bottom) Pacific cod juveniles 6 6

11-14 June 1991 Otter Trawl net (bottom) Pacific cod juveniles 5 5 13-14 June 1990 Otter T rawl net (bottom) Pacific cod juveniles 5 5 22-24 June 1993 Otter T rawl net (bottom) Pacific cod juveniles 6 6

MTD nets Calanoids 3 9 28-30 June 1994 Otter T rawl net (bottom) Pacific cod juveniles 7 7 12-18 July 1988 Smith-Mclntyre grab Gammarids 22 66 18-22 July 1989 Otter Trawl net (mid-water) Pacific cod juveniles 4 4

Otter Trawl net (bottom) Pacific cod juveniles 11 11

54

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て漏水量を推定した。 1990年2月には各調査地点で,プランクトンネットによる海底直

上から海面までの鈴直曳き採集を行い, 0.5 m'sec-1の速度で1-3回繰り返した。稚魚

ネットは1.0m 'sec-1の速度で10分間水平曳きした。ビームトロールネットおよびオッ

ターートローjレネットは約1.5m'sec-1の速度で、目的とする水深層で10-15分間曳網した。

曳網水深は稚魚ネットの場合はワイヤの繰り出し長と傾角によって求めた。ビームト

ロールネットとオッタートローjレネットはネットモニタ((株)カイジョー)で曳網水深を監視

し,ワイヤ長によって曳網水深を維持した。マダラ仔稚魚は採集後直ちに5-10%の中

性海水フォルマリン溶液で固定し, 24-36時間後!こ70施工タノール溶液に移した。

1990-1992年4月と1993年6月 1998年6月には,フローメータを取り付けたMTDネッ

ト(口径:0.56m,目合:0.33mm, Motoda, 1971)の3層同時曳網によってかいあし類力ラ

ヌス目コペポダイ卜を採集した(Table111-1)。動物プランクトン標本は採集後直ちに5%

中性海水フォルマリン溶液で固定した。 1988年7月12-18日には端脚類ヨコエピE目

の水平分布密度を調べるために, Smith-Mclntyre型採泥器(採泥面積:0.1 m2)による

標本採集を行った(Table川一1)。各地点3回づっ採集された22地点分の表底堆積物は

1.0mmの簡上で洗浄した後残存物を10%中性海水フォルマリン溶液で固定した。各

観測点では水温・塩分をVARIOSENS111 (lmpulsphysic GMBH), CTD (Neil Brownおよ

びSeaBird Electronics), DBT (METOCEAN 水温のみ)で計測した。

魚体測定と数値解析

実験室でマダラ仔稚魚の個体数を計数し,電子ノギスで全長を測定した(仔魚は

0.05mm単位,稚魚はO.lmm単位)。ビームトロールネットの開口面積は2-3月には

0.16m2, 4月には0.90m2とし,これに目的とする水深層を曳網する聞に電磁口グによっ

て積算された曳網距離を掛け合わせて漉水量を推定した。ただしここではビームト

ロールネットの漉水効率を100%と仮定している。また,全長19mmの仔魚の体高は

3.1mmであり, 1989年3月上旬に採集された個体の97%がこの全長19mm以下であり,

4月に採集された仔稚魚の90%はこの全長を上回っていたために,これらの開口面積

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を用いた。オッタートロールネットの開口面積は25.96m2(網口:4.4mx5.9m)とし,ビーム

トロールネットと同様に目的とする水深層を曳網する聞の曳網距離を掛け合わせて

漏水量を推定し, j慮水効率を100括と仮定している。

3標本以上の全長の比較には,一元配置の分散分析とシェフェのS検定による多重

比較を用いたが,パートレット検定によって分散の等質性が保証されない場合は対数

変換した全長を用い,対数変換した全長においてもパートレツト検定によって等分散

が仮定できない場合は,一元配置の分散分析のかわりにクラスカル・ウオリス検定を

用いた。ただし1989年3月と5月の標本では全長組成のヒストグラムに対称性がみら

れなかったため,パートレツ卜検定によって等分散が仮定されたとしても, 2標本間の

全長の比較ではマン・ホイツトニーのU検定を, 3標本以上の比較ではクラスカル・ウオ

リス検定とシェフェのS検定による多重比較を用いた。 1991年4月のStn.32におけるマ

ダラ仔稚魚の鉛直分布を昼間・日没時・夜間の3つの時間帯聞で比較するために,対

数変換した分布密度を二元配置の分散分析によって検定した。 2水域聞の稚魚の分

布密度の比較には,標本数が十分ではなかったためにマン・ホイットニーのU検定を

用いて検定した。有意水準はすべて0.05を用いた。

結果

2月および3月におけるマダラ仔魚の空間分布

卵黄を持っている前期仔魚は1990年2月上旬と1989年3月上旬の湾口部Stn.10で

のみ採集された(Table111-2)0 1990年2月上旬には,全長3.95mmの前期仔魚1個体が

Stn.10の水深 30m層で採集された (Fig.111-2-8) 0 1989年3月上旬には全長

3.20-5.30mm (平均±標準偏差=4.4主0.65mm)の前期仔魚がStn.10の水深45m層から

採集された(Fig.111-3, Table 11ト2)。これら12個体以外の前期仔魚は他のいずれの地

点・時期にも採集されなかった。

卵黄をすでに吸収し尽くした後期仔魚は, 1990年, 1991年, 1992年各年の2月には,

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Table 11ト2. T otal number of individuals, weighted mean total length (TL), and TL

range of Pacific cod in Mutsu Bay from 1989 to1997. Weighted mean lengths

were calculated by cod densities at each sampling station

Number of individuals sampled Totallen甚h(mm)

Sampling date Yolk-sac Post

Juveniles Weighted Minimum M larvae larvae

mlmum MaXlmum mean

7-8 Feb. 1990 12 5.22 3.50 10.20 25-26 Feb. 1992 46 13.32 4.55 19.95 26-27 Feb. 1991 42 9.54 3.60 15.50 1-6 Mar. 1989 11 1,348 7.00 3.20 26.8 9-11 Apr. 1991 116 195 25.8 5.05 36. 1 12-15 Apr. 1993 2 19.45 17.50 21. 40 14-16 Apr. 1992 15 50 31. 3 13.00 46.3 24-27 Apr. 1990 3 167 37. 9 20.94 56. 7 18-23 May 1989 1.099 59.3 37.0 107.6 3-6 June 1997 1,135 62.8 37.0 90.2 4-6 June 1996 902 54. 1 36.4 86. 1

7-8 June 1995 420 67.8 41. 4 94.8

11-14 June 1991 525 69.4 51. 7 87.4 13-14 June 1990 161 69. 1 43.0 84.4 22-24 June 1993 250 64.9 52.3 86. 1 28-30 June 1994 227 70. 9 49. 9 106.6 18-22 July 1989 一 139 103.2 73.8 174.0

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Larva net (*) &

Beam Trawl

C

x:O,・:1 -1 0,・:11-30,.:31-

Density (inds./1 ,OOOm3)

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ロ Eコ E二コ回:1ト 20,四 :21-40,IZZI :41-80.

・ ・・ -E二コ E二二二コ~:81-160 , vzzzA:161--Density (inds./1 ,OOOm3)

Fig, 111-2. Spatial distributions of Pacific cod larvae (yolk-sac larvae and post-Iarvae)

collected by vertical hauls with a ring net in A, horizontal hauls with a larva net in B

with an asterisk, and a beam trawl net in B-D with contours of water temperatures

(solid lines) at 15m depth in February 1990-1992. The densities of each towing

depth in B-D were grouped into three strata. Each numeral shows station number.

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depth ~日

depthや:0,日 :1-40,

depth占・

12-20m

21-35m

36-45m

M a r. -6 A

ロロ回 :41-80,回 :81-160,• • 亡コ c二コE司:161-320, 1lZZJ:321-640. --l,/////~1: 641 -

Density (inds.・1,OOOm-3)

;::ι;斜 17ド=2320~111 ;Stn.;16 N=57

:: 1~Eιぷn. 1子4 m ~=

!?12050:::

tn.i 24 N=90 一一

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Fig. 111-3. Spatial distribution of Pacific cod larvae and juveniles with contours of water

temperatures (solid lines) at 15m depth (A) and length frequency distributions (8) of cod

collected by horizontal hauls with a beam trawl net in 1-6 March 1989. The densities of

each towing depth were grouped into three strata. Each numeral in A shows station number.

Yolk-sac larvae and post larvae are separately shown in 8. N: number of fish measuring.

59

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水深10mから45mまでの範囲で採集された(Fig.111-2-8 -D入1990年2月には全長

3.50-5.30mm (平均±標準偏差=4.4土0.62mm)の後期仔魚9個体が湾口部から採集され,

これらの個体とは別に全長5.15mmの1個体が西湾南部Stn.20'の水深30m層で採集

された(Fig.111-2-A-8)。さらに比較的大型の仔魚2個体(全長9.00mmおよび10.20mm)

が東湾脇野沢沖のStn.29でプランクトンネットの鉛直曳きで採集された(鉛直曳き1回

のみ実施 Fig.111-2-A)。

1991年2月下旬には,調査は湾内のみで行われた(Fig.111-2-C)。水深11-17m層に

おいては,東湾Stn.45で最も高い分布密度を記録した(81inds.・1,000m勺。東湾

Stn.30では水深によって後期仔魚の全長に有意差は認められず(クラスカル・ウオリ

ス検定, KW=0.22, df=2, P=0.90),最も小型の仔魚(3.60mmTL)は,水深29m層で採集

された。全長4.95mmと5.10mmの小型仔魚はそれぞれ東湾Stn.50とStn.45で採集さ

れた。これらを除く仔魚の全長範囲は6.00ー15.50mmであった。

1992年2月下旬には後期仔魚は湾内に広く分布し,東湾 Stn.33(170 inds. .

1,000 m勺で最も分布密度が高く,この地点では水深15m層の水温が最も低かった

(Fig. 111-2-D)。西湾では2個体の小型後期仔魚(全長4.55mmおよび5.00mm)と, 3個

体の大型仔魚が採集された(全長13.65-14.65mm)。東湾における後期仔魚の全長は

8.65mmから19.95mmの範囲にあり,小型の仔魚はみられなかった。

1989年3月上旬には合計1,348個体の後期仔魚と1個体の稚魚が採集された

(Table 111-2)。後期仔魚はStn.28およびStn.29の水深8mおよび10m層で採集された

が,表層と水深5mでは採集されなかった(Fig.111-4)。またこの時期,後期仔魚はビー

ムトロールネットによって主に水深12-20m層で採集された(Fig.111-3-A)。湾口部

Stn.10で採集された後期仔魚の全長の中央値は,水深15m層で5.1mm(N=97),水深

31m]冒で5.8mm(N=47),水深45m層で5.0mm(N=33)であった。これらの全長には有意

差がみられ(クラスカル・ウオリス検定, KW=29.3, df=2, P=4.3・10-7),シェフェの多重比

較では水深15m層と水深31m層の聞と(S検定:lr巧1=44.3,V E=2,218, df=2, 174,

P=2.2・10-6),水深31m層と水深45m層の聞には有意差がみられたが(S検定:

60

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Fig. 11ト4.Vertical distribution of Pacific cod post-Iarvae by horizontal hauls with a larva

net at Stn. 28 and Stn. 29 0仔 Wakinosawaon 2 March 1989.

61

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IXj一円1=53.2,P=9ん 10-6),水深15m層と水深45m層の聞には有意差がみられなかった

(S検定:|x「巧1=8.86,P=0.65)。すなわち水深31m層における後期仔魚は相対的に大型

であった。西湾北部Stn.19における全長の中央値は,水深20m層では6.0mm(N=129),

水深30m層では5.9mm(N=79),水深41m層では5.5mm(N=17)であり,標本聞に有意差

はみられなかったのラスカル・ウオリス検定, KW=3.74, df=2, P=0.15)。東湾脇野沢沖

のStn.30における全長の中央値は,水深15m層で5.3mm(N=30),水深30m層では

6.6mm(N=15)であり,標本聞に有意差はみられなかった(U検定:仇;::288瓦 n=30,15,

P=0.13)。

この1989年3月上旬には,水深12-20m層におけるマダラ後期仔魚の最も高い分布

密度は湾口部Stn.8でみられた(1,200inds.・1,000m六Fig.111-3)。水深12-20m層にお

けるすべての採集地点をまとめた全長組成では, 12.05-13.00mmの階級を境として小

型個体と大型個体がみられ,最頻値(モード)は4.05-5.00mmにみられた。また,水深

12-20m層における全長組成の最頻値は, Stn.34'では6.05-7.00mmrこ, Stn.42では

8.05-9.00mmにみられたが,その他の地点は4.05-5.00mmあるいは5.05-6.00mmにみ

られた。全長4.00mm以下の小型の後期仔魚は主に湾口部にみられたが(全28個体),

他の水域では西湾北部Stn.16で1個体のみ出現しただけであった。また,湾口部では

全長13.00mmを超える仔魚はStn.8で1個体, Stn.10で2個体しか出現しなかった。

4月におけるマダラ仔稚魚とかいあし類カラヌス自の空間分布

第 I章において述べたように,マダラ仔稚魚の4月から6月までの主要餌生物はか

いあし類カラヌス目コペポダイトである。 1990-1992年4月の昼間には,仔稚魚とカラヌ

ス目コペポダイトは様々な水深に分布したが,カラヌス目の昼間の鉛直分布が得られ

ていない1991年のStn.32を除いて,カラヌス目の分布密度が高い水深で仔稚魚の分

布密度も高かった(Fig.111-5, Fig. 111-6)。ただし1990年4月下旬には, Stn.10付近で海

底近くlこ底建網が設置されていたために,ビームトロールネットによるマダラ稚魚の

鉛直分布はStn.10のかわり!こStn.13で調査を行った。

62

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Fig. 111-5. Spatial distributions of Pacific cod post-Iarvae and pelagic juveniles collected

by horizontal hauls with a beam trawl net with contours of water temperatures (solid

lines) at 30m depth in April 1990ー1993. The densities of each towing depth were

grouped into three strata. Each numeral shows station number.

63

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。15 Apr. 1992

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(C alanus pacificu ~, N eocalanus

plumchru~, Neocalar】uscristatus, and

Mesocalanus tenuicornis)

図 Other CALANOIDA

Fig. 111-6. Vertical distributions of calanoid copepods collected by horizontal hauls with

three MTD nets in April 1990 (A, Takatsu ~主主h 1992), 1991 (8), and 1992 (C).

64

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1990年の Stn.13ではマダラ仔稚魚の高い分布密度は水深13m層でみられ

(5.6 inds. '1,000 m勺,カラヌス目はStn.13に近いStn.10において水深15m層で高い分

布密度がみられた(450inds.・mてFig.111-5-A, Fig. 11I-6-A,高津ら, 1992)0 Stn. 19で

は仔稚魚と力ラヌス目はそれぞ、れ42m層(8.0inds.・1,000m-3)および45m層(730inds.'

m-3)で, Stn.31ではそれぞれ42m層(14.4inds.・1,000m勺および45m層(310inds.' m勺

で分布密度が高かった。 1991年4月にはマダラ稚魚とカラヌス目は,西湾Stn.16'では

それぞれ水深40m層(43.1inds.・1,000m勺および45m層(230inds.・mてFig.11川11ト-5-目目屯-目-召.

Fig. 111-6-8)で分布密度が高く,東湾Stn.32ではマダラ稚魚が水深15m層に多く出現

した(39.5inds.・1,000m-3)0 1992年4月にはマダラ稚魚の分布密度は西湾Stn.19にお

いて水深31m層で8.0inds.・1,000m六46m層で5.6inds.・1,000m-3を示し,カラヌス目

は水深 29m層で 620inds.・m-3,43m層で 600inds.・m-3を示した (Fig.111-5-0,

Fig. 111-6-0)0 1992年4月東湾Stn.43では,マタラとカラヌス目はそれぞ、れ水深42m層

と40m層で高い分布密度を示した(12.0inds. '1,000 m-3および930inds.'m勺。

1991年4月には東湾Stn.32において,マダラ仔稚魚は昼間,水深15m層で最も分

布密度が高かったが,日没直後と夜間はともに水深24m層で分布密度が高かった

(Fig. 111-7-A)。しかし,採集層が昼間・日没時・夜間のそれぞれで3層しかなかったこと

もあり,統計的には日周鉛直移動は有意で、はなかった(二元配置の分散分析,採集

時刻による分布密度の差:P=0.33,採集層による分布密度の差:P=0.35, T able 11ト3)。

マダラ仔稚魚の全時刻を通じた全長範囲は12.8-36.1mmであり,平均値と標準偏差

は27.1士4.19mmで、あった(N=176,Fig. 111-7-8)。合計9回の採集標本間で,平均全長

には有意差がみられ(一元配置の分散分析, P=7.7・10-6),昼間よりも夜間で大型にな

る傾向がみられた。しかしそれぞ、れの時間帯内における採集水深聞の平均全長に

は有意差はみられなかった(一元配置の分散分析,昼間:P=0.43,日没時:P=0.84,夜

間:P=0.057)。この1991年4月のStn.32におけるカラヌス目鉛直分布は,昼間は不明

であるが日没時と夜間にはいずれも水深40m層で高い分布密度を示し(Fig.111-6-8,

日没時:45 inds.・mサ;夜間:63 inds.・m勺,マダラ仔稚魚の鉛直分布とは一致しなかっ

65

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(20:43-21 :51) -・・・:Nighttime

Fig. 11ト7.Diel vertical distribution (A) and length frequency distributions (B) of Pacific

cod post-Iarvae and pelagic juveniles collected by horizontal hauls with a beam trawl

net at Stn. 32 in East Bay on 9 April 1991. Upside-down triangles in B show the

locations of mean TLs.

66

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Table 111-3. Result oftwo-way ANOVA of log densities* of Pacific cod

larvae and juveniles collected with a baem trawl net at Stn. 32 in

Mutsu Bay on 9 April 1991

Source

Sampling layer a

Sum of

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F

1.364

P

0..354

Samplig period b O. 192 2 1. 467 o. 333

Error 0.262 4

*: IOg10 (density + 1) conve比

a: Upper (14-15m depth), middle (23-24m depth), and lower (33-40m depth) layers.

b: Daytime (16:01-17:10), dusk (18:18-19:33), and nighttime (20:43-21 :51 ).

67

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た(Fig.11I-7-A)。

1990-1992年4月においてマダラ仔稚魚は陸奥湾湾内に広く分布した(Fig.III-5-A-

c)。水深30m層の水温分布についてみると,各年とも湾口部西側に高水温域がみら

れた。水深12-20m層において,各年とも湾口部Stn.8のマダラ仔稚魚の分布密度は

Stn.10よりも低かった。 1991年4月の湾口部Stn.2およびStn.5の水深15m層では,そ

れぞれ全長5.05mmと6.10mmの合計2個体しか採集されなかった。

昼間に限定すれば,マダラ仔稚魚の7回の鉛直分布調査のうち6回は採集層別の

平均全長に有意差はみられなかった(一元配置の分散分析, 1990年のStn.13:

P=0.21, Stn. 19: P=0.20, Stn. 31 : P=0.20, 1991年のStn.16': P=0.28, Stn. 32(前述):

P=0.43, 1992年のStn.43: P=0.17), (1992年のStn.19: P=0.015)。このため採集層を考

慮せずに平均全長を各地点で比較すると 1990-1992年の3年間でいずれの年でも

有意差がみられ(一元配置の分散分析すべてPく0.001),主に小型の仔稚魚は湾口

部に,大型の稚魚は東湾に出現した。

5月から7月におけるマダラ稚魚の空間分布と6月におけるかいあし類カラヌス目の鉛

直金査

1989年5月にはマダラ稚魚は主に海底直上に分布し, 1989年7月には海底上以外

に分布する稚魚はみられなかった(Table 111-4)。第 I章で述べたように,全長70mmよ

り小型の稚魚の主要餌生物はかいあし類カラヌス目コペポダイトである。このカラヌス

目コペポダイトは湾内3地点において1993年6月の昼間,海底直上に高密度に分布し

ていた(Fig.111-8)。一方湾口部では1998年6月の昼間,海底直上よりも中層域で高密

度であった(水深69m層:9.5 inds."m勺。

5月から7月においてマダラ稚魚の分布密度が高かった地点は,年によって様々で

あった(Fig.111-9)0 1989年の5月と7月には,東湾とそれ以外の水域の分布密度には有

意差がみられなかった(U検定, 1989年5月:Us=30, rF7,6, P>0.20; 1989年7月:Us=18,

rF8,3, P>0.20)0 1990-1991年と1993ー1997年の6月には東湾とその他の水域の同様

な比較は,十分な曳網回数が得られなかったために0.05水準で、U検定は行えなかっ

68

Page 73: 陸奥湾におけるマダラGadus macrocephalusの初期生活史に ......とっても生残に十分な餌密度と判断された。1989年から1998年まで,うしお丸を用いてマダラ仔稚魚の分布調査を行った。その結

Table 11ト4. Densities of Pacific cod juveniles collected with an otter trawl

net in Mutsu Bay on 18-23 May and 18-22 July 1989. Densities are

shown as number of individuals per 1,000 cubic meters filtered

Distance from the bottom (m)

Month Station 0 (bottom) 5 10 20 30

May 1989 2 11 . 4 0

5 5. 8 。13 3.9 0.25 0.19

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July 1989 5 。 。13 1.3 。19 O. 2 。30 0.2 。

69

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。r町、

24 June 1993

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-t: 52m depth

+1 4 a. ω40

也窟|。話器部部~国語母語同部融商圏由民国時時国国国語国蹴繍

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由-m重量

23 June 1993 Stn.43

44m depth

40 認時器時器部詩話~諒話器部時時閣時時田部~時時時母語盟関側

。20

5 June 1998

Stn.5 80m depth

一-・E・~40

60 老橿---ヨ総給総捌

~ 80 臨時話路網悶随時部国国詰田部国随時国磁器国間臨時欄

圏Pseudocalanωspp. 冒CALANIDAE

.Centropages abdominalis 圏OtherCALANOIDA

口Acartiaomorii

Fig. 111-8. Vertical distributions of calanoid copepods collected by horizontal

hauls with three MTD nets on 22-24 June 1993 and 5 June 1998.

70

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h 司1-'

Density Cinds.・1,OOOm-3) 必需号、

x:O,ω1・0.9,0:1,ω ,@:1o,③:30,j;:;:;::;;;23:100 Fig. 111-9_ Horizontal distributions of Pacific cod juveniles collected by horizontal hauls with an

otter trawl net on the bottom from May to July 1989-1997. The area of each circle

(と1.0inds_・1,OOOm-3)is proportional to cod density.

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た。 5月から7月の海底直上における分布密度が最も高かったのは, 1991年6月の西

湾北部Stn.13であり(64.2inds.・1,000m-3) ,その他に1989年5月の東湾Stn.38

(21.5 inds.. 1 ,000 m勺, 1991年6月の東湾Stn.43 (34.8 inds..1 ,000 m-3), 1991年6月の

湾口部Stn.12 (32.9 inds.・1,000mーな 1995年6月の東湾Stn.37 (50.1 inds.・1,000m勺,

1997年6月の東湾Stn.43(41.1 inds.・1,000m勺で相対的に分布密度が高かった。ま

た, 5月から6月上旬に調査が行われた年(1989年5月, 1995年6月, 1996年6月, 1997

年6月)は最も分布密度が高かった地点が東湾にみられたが, 6月下旬から7月(1989

年7月, 1993年6月, 1994年6月)には西湾北部あるいは湾口部でみられた。 6月中旬

では1990年が東湾で, 1991年は西湾で分布密度が高かった。水温とマダラ稚魚の分

布密度の関係に注目すると, 1989年5月中下旬と1996年6月上旬には,海底直上の

水温が低い陸奥湾中央部には稚魚はあまり多くは出現していなかった。一方1989年

7月には,稚魚はほぼ水温120C未満の水域に出現していた。

1989年5月の全長には地点によって有意差がみられたのラスカル・ウオリス検定,

KW=166.4, df=12, P=2.5・10-29,Fig.III-10)。西湾と湾口部では青森市沖Stn.25を除い

て55.1-60.0mmTLの階級に最頻値がみられ, Stn.25では50.1-55.0mmTLにみられ

た。東湾ではStn.51では50.1-55.0mmTLに Stn.47では55.1-60.0mmTLに

Stn. 38とStn.42では65.1-70.0mmTUこ最頻値がみられ,採集個体数が少なかった

Stn.30およびStn.35を除いて南から北に向かって稚魚は大型化していた。また東湾

では,全長82.6mmよりも大型の個体はみられなかったが,西湾および湾口部ではこ

のような大型の個体が出現し,特に西湾南部Stn.20では82.6mmよりも大型の個体が

42%を占めた。

Figure-!Iト11は稚魚採集の曳網回数と採集個体数が比較的多かった1997年6月の

全長組成を示している。全長には1989年5月と同様に地点間で有意差がみられた(ク

ラスカル・ウオリス検定, KW=76.6, df=6, P=1.8・10-14)。全長の中央値が最も小さかっ

たのは西湾北部Stn.19であり(55.0mmTL),逆に最も大きかったのは東湾Stn.37で

あった(65.7mmTL)。湾口部Stn.12,西湾Stn.13およびStn.19,東湾西端のStn.30で

72

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Stn.30 lN=17

Stn.38 iN=l 05

Stn.35 iN=6

E寓-

Stn.42 iN=89

Stn.47 ¥N=59

Stn.51 ¥N=37

=1.099 Total

100 120

(m m)

Stn.19 ¥N=40

nunununununununununununununununununununununununununU

8642864286428642864286420

-hd

400

Stn.20 ¥ N=201

1-i......1

100

Stn.21N=105

1--.l-1

50 nu

tnd

nununununununununununununununununununununununununununununu

8642864286428642864286428642

的一

mwコ万一〉一刀

C一恥

O

L

ω

A

Eコ

Z

]300 120

200 (m m) length T 0 t a I

100

一oa

一5t

O

T

-nu

!内1u

nu

length

Fig. 11ト10.Length frequency distributions of Pacific cod juveniles on the bottom in Mutsu

Bay collected during 18-23 May 1989. N: Number of fish measuring.

73

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Stn112 N=239

s出13N=147

叫19N=34

Stn130 N=227

St円=162

s山3N=256

stnj50N=70

TotalfN=1,135

100 120

(m m)

]o

nununununununununununununununununununununununuqu

642422426428642250505

J』nJ』

4E4E

ω一mwコ万一〉一万

Z

EコZ

句ー。

length

Fig. 11ト11.Length frequency distributions of

Pacific cod juveniles on the bottom in Mutsu

Bay collected during 3-6 June 1997. N:

Number of fish measuring.

74

T 0 t a I

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は,全長50mm以下の稚魚が6.8-32.4%を占め,全長の標準偏差は9.16-11.8mmの範

囲であった。一方,東湾Stn.37, Stn. 43, Stn. 50では全長50mm以下の個体が占める

割合は1.4-2.0%と低く,標準偏差も7.61-7.79mmの範囲にあり小さかった。またStn.13,

Stn. 19, Stn. 30では二峰型の全長分布を示していた。

1988年7月における端脚類ヨコエビ亜日の水平分布

第 I章で述べたように,端脚類ヨコエビE目は魚類とともに全長70mmを超える稚

魚の主要餌生物である。端脚類ヨコエビE目は1988年7月には主に湾口部に分布し

ていた(Fig.111-12, 40.0-443.3 inds.・m勺。湾内では水深42mよりも浅い水域でわずか

な個体が採集されたが(0-23.3inds.・mη 水深43-65mの範囲では, Stn.14(水深64m,

10.0 inds."m勺を除いてヨコエピ亜目は採集されなかった。

考察

川村・小久保(1950)は1940年代の調査に基づいて,マダラの産卵は12月から1月の

期間,湾内の泥砂質で行われていると報告している(Fig.lll-トB)。本研究においてマ

ダラ前期仔魚は陸奥湾湾口部でのみ採集され,全長4.00mm以下の後期仔魚も主に

湾口部で採集された。したがって,マダラの産卵は少なくとも最近では主に湾口部で

行われているものと推察される(Fig.111-13, Fig. 111-14)。奥世田ら(1992)は日本海能登

島沖で海底上に分布するマタラ卵を採集し,産卵は主に水深60mで行われていると

述べている。陸奥湾の湾口部もおよそ60m前後の水深であるが,マダラ卵の分布に

ついては明らかではない。このため産卵場を特定するには12月から1月に湾口部から

湾内において受精卵と前期仔魚の分布調査を行う必要があるものと考えられる。

第 E章で述べたように,湾内表層域はかいあし類ノープリウスが高密度に分布す

る(Fig.11-6, Fig. 11-7, Fig. 111-13)。しかし1989年3月上旬には,マダラ仔魚は表層から

水深5m層では採集されなかった(Fig.111-4)0 Olla and Davis(1990)の室内実験によれ

ば,スケトウダラ仔魚(体長4-8mm)は,表層域の擾乱と強い光を避けて水槽内の下

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1 8 J u 988

日:iX215ニ0:300 :1,000

Fig. 11ト12.Horizontal distribution of gammarid amphipods on the bottom

collected with a Smith一Mclntyregrab (covering 0.10m2) three times at

each station during 12-18 July 1988. The area of each circle is

proportional to the gammarid density.

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。-. 1 0 E

,-, 20

工 30

・+-'4 0 a. ω50 0 60

70

Copepod Nauplii

Post larvae

Feb.-Mar. Larvae and iuveniles (Apr,)

、、,,,FE

nv A

,,目、、CM

Ju o

nv e

nv o

pu

S

てU

mm

一w

E一剖2

u

pu

e

n

u

BU

ra nv

M

M

M

一A

(E)F-Haω

210

,-, 20

..c:: 30

240

ω50 0

60

70

July

Calanoid copepods (June)

uveniles

(May-June)

>120C Water

Juveniles

Fig. 11ト13.Schematic model of vertical distribution of Pacific cod larvae and juveniles

and their food organisms in Mutsu Bay and its bay mouth from February to July.

Naupliar patch was shown asと10inds.,,e-1 consumed by Pacific cod larvae (67.5-

195J.tm in prosome width) from the result of January-February 1992. Calanoid

copepod patches in April and June were shown asと300inds.・m-3andと30inds.'m-3

from the result of MTD nets hauls, respectively. TWC in each figure indicates that

Tsugaru Warm Current water entered the bay.

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Fig. 11ト14.Schematic diagram of the current pattern in T sugaru Strait and Mutsu Bay

(from Hakodate Marine Observatory, 1964; Ohtani and Terao, 1974; Ohtani and

Nakamura, 1985; A), and schematic model of horizontal distribution of Pacific cod

larvae and juveniles in Mutsu Bay and its bay mouth from February to July (B-E).

Arrows in boxes B-E mean cod migrations estimated from cod size and current

patterns. In box D, abundant areas of Pseudocalanu~ spp. and Centropages

abdominali~ in mid-Iate May are superimposed.(T akatsu豆主旦L1992)

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方に分布することを観察している。おそらくマダラ仔魚も同様な理由によって表層域を

避けて分布しているものと考えられる。

冬季および春季の陸奥湾には,主に湾口部西側の表層と中層域から高温・高塩分

の津軽暖流水(TWC)が流入し流入した水塊は湾内で希釈・冷却されて湾口部東側

海底近くから湾外へ流出する(大谷・寺尾 1974)01989年3月上旬には湾口部Stn.10

において水深45m層でマダラ前期仔魚が11個体採集されたが,後期仔魚は水深15m

層で多く採集された(Fig.111-3)。この時Stn.10では水深43m層から50m層にかけて水

温躍層(6.6-7.8QC)が形成されていた。この躍層は津軽暖流水(水深42m以浅,

7.9-8.4QC, 34.0 PSU以上)と,湾内から流出する水塊(水深51-61m,6.4-6.5QC,

33.9 PSU未満)との間に形成されていた。津軽暖流水中に分布する仔魚は湾内へ移

送されるものと考えられ,仔魚の全長組成の地理的変化は湾内への輸送過程を反映

しており,湾奥ほど大型個体が出現していた(Fig.111-3)。第E章で明らかにした1月と2

月のかいあし類ノープリウスの鉛直分布から判断して,湾内と湾口部のいずれにお

いても海底直上のノープリウス分布密度は,表層に近い層あるいは密度躍層に比べ

て低いものと考えられる(Fig.11ト13)。また,表層に近い層ではノープリウスは湾口部

よりも湾内で分布密度が高かった。したがって湾口部海底上で瞬化した仔魚の浮上

は,単に十分な餌密度を獲得するためだけではなく,密度躍層よりも上層を占める津

軽暖流水を利用して餌密度の高い湾内へ移動するものと考えられる。

Paul (1983)は,スケトウダラ仔魚が捕食可能な限界照度はO.4luxであり,その照度

はベーリング海では水深30mlこ匹敵することを明らかにした。 Hillgruberet al. (1995)

は,ベーリング海に分布するスケトウダラ仔魚にとって水深30m層は適水温かつ餌密

度も高い水深層であり,そこでは仔魚の体長が水柱中で最も大型であったと述べて

いる。 1989年3月上旬に湾口部Stn.10の水深31m層では,他の水深に比べてマダラ

仔魚が大型で、あり(Fig.111-3-8),スケトウダラ仔魚と同様に大型の仔魚ほど餌密度が

高い層に集中することを示している可能性がある。ただし本研究では1989年3月の

Stn.10におけるノープリウスの鉛直分布の結果は得られていない。また,湾内(1989

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年3月のStn.19とStn.30, 1991年2月のStn.30)ではマダラ仔魚の鉛直的な全長の差

がみられなかった(Fig.111-3-8)。このことは,湾内のようにノープリウスの分布密度が

最大でも2倍程度の差しかない場合には,仔魚の鉛直的なサイズの差は生じないの

かもしれない。今後はマダラ仔魚とかいあし類ノープリウスの同時採集と仔魚の捕食

可能照度の測定を行って,仔魚の鉛直的なサイズの差とノープリウスの鉛直分布密

度の関係を確認する必要がある。

80ehlert旦豆ニ (1985)は7月のオレゴン州沖合において,標準体長9ー19mmのマダラ

仔魚が昼間水深20-30m層で分布密度が高<.夜間は海底に近い水深50mよりも深

い層に分布したことを報告している。本研究でも1991年4月にマダラ仔稚魚の夜間沈

降が認められたが統計的には有意ではなく,その程度はおおよそ10m以内であった

(Fig. 111-7-A)。現在のところこの夜間沈降の原因は明らかではないが,少なくとも仔稚

魚の摂餌活動に起因するとは考えられない。なぜなら,マダラ仔稚魚は昼間には力ラ

ヌス目コペポダイトの高密度層に分布したが(Fig.111-5, Fig. 111-6),夜間にはこれらの

一致がみられず(Fig.111-6-8, Fig. 11ト7-A),主に昼間摂餌を行うと考えられるからであ

る。また,昼間に水深による仔稚魚サイズの差はみられず,後述するような水温120C

を上回るような仔稚魚の分布を制限する水温は4月には観測されていなかった。これ

らの事実は, 4月のマダラ仔稚魚に生じた鉛直分布の地理的変異は,仔稚魚の個体

発生的な移行を反映したものというよりは,力ラヌス目の鈴直分布に応じて分布層を

変化させている状況を示していると考えられる。ただし夜間には昼間に比べて平均

全長の増加が認められたことから,魚体の大型化に伴ってビームトロールネットの採

集効率が減少しており, 4月の昼間に採集されるマダラ仔稚魚のサイズおよび分布密

度を過小評価している可能性がある。

5月下旬以降マダラ稚魚は主に海底直上に分布し(Table111-4), 6月には力ラヌス目

コペポダイトも湾内では海底に近い層に集中していた(Fig.111-8)。陸奥湾とその湾口

部におけるマダラ稚魚の全長の地理的変異は,津軽暖流水による輸送過程を示すも

のと考えられる(Figs.111-10, Fig. 11ト11,Fig. 111-14)。産卵期の早い時期と遅い時期に

80

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産まれた個体は主に西湾と湾口部に出現し,中間的な時期に生まれた個体は主に

東湾に分布したものと考えられる。 1989年5月中下旬と1996年6月上旬には多くの稚

魚が,湾口部を除いた湾内の比較的水深の浅い水域に出現した(Fig.111-9)0 1989年5

月には,マダラ稚魚の主要餌生物である Pseudocalanus属や Centropages

abdominalisなどのカラヌス目は,海底直上の水温が相対的に低い(およそ90C以下)水

域で分布密度が高く(高津ら, 1992; Fig. 111-15, Fig.III-16),稚魚とその餌生物の水平

分布の一致はみられない(Fig.111-9)。これは,マダラ稚魚の着底が主に水深30m前後

の浅海域で生じ,その後稚魚は水温の上昇と力ラヌス目の減少に伴って水深の深い

水域に移動するためと考えられる(Figs.111-13, Fig. 11ト14)04月にはマダラ仔稚魚は湾

口部にはほとんど分布していなかったが(Fig.111-5), 1989年5月には稚魚は湾口部に

も分布していた(Fig.111-9)。このことは5月中下旬には一部のマダラ稚魚は湾外へ移

動し始めることを示しているものと考えられる。

マダラの成魚および未成魚は水温120Cを上回る水域にはほとんど出現しない(内

田, 1936; 111村・小久保, 1950;橋本, 1974)0 7月のマダラ稚魚は主に端脚類ヨコエビ

E目とスケトウダラ稚魚を捕食し(第 I章),ヨコエビ亜自は主に湾口部に分布した

(Fig. 111-12)。また餌となるスケトウダラ稚魚も, 6月以降陸奥湾から湾外へと移動する

(高津ら, 1992)。したがってマダラ稚魚は高水温と餌不足を避けて,湾外へ移動する

ものと考えられる。

本章では陸奥湾におけるマダラ仔稚魚の時空間分布を明らかにし仔魚期から稚

魚期を通じて湾内のかいあし類ノープリウスと力ラヌス目コペポダイトの再生産を通じ

て成育場として利用していることが確認された。 4月および6月におけるマダラ仔稚魚

の分布密度の年変動については次章以降で検討する。

81

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A M a r.

。。

×刈:氾0, 。寸叩:3泊測3ω捌0∞0,。け:汁1,叩W叩,00川川0∞卿肌0∞00,仏'叫 ∞肌 0:ω:汁1叩似仰叩0仏叩叩,0川0∞帆0Density (inds."m白 3)

Fig.1Iト15.Monthly change in distributions of Pseudocalanu~ spp. collected by vertical

hauls with a NORPAC net (0.33mm mesh) during 1-4 March 1989 (A), 24-27 April

1990 (8), 18-23 May 1989 (C), and 13-14 June 1990 (D) (Takatsu e主旦L1992).

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A

D

×刈:氾0,。づ叩:3却湖3初捌0∞0,。け:1,叩W叩,0川川肌0∞側000,∞00,札, 叫 ∞000,0ω:汁1叩

Densi 比ty (μinds."m-3)

Fig.11ト16.Monthly change in distributions of 0entropae:es abdominali~ collected by

vertical hauls with a NORPAO net (0.33mm mesh) during 1-4 March 1989 (A), 24-27

April 1990 (8), 18-23 May 1989 (0), and 13-14 June 1990 (D) (Takatsu ~主主L 1992).

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lV.マダラ着底稚魚の食物組成と相対成長の年変動

目的

前章で示したように陸奥湾で採集されるマダラ稚魚は,年によって採集個体数が大

きく異なることが明らかとなった。ここでは個体の生残に直接作用する要因の1つとし

て着底稚魚の食物組成を調べ,その年変動が稚魚の栄養状態におよぼす影響を検

討した。

材料および方法

マダラ着底稚魚の採集と魚体・胃内容物の測定

陸奥湾の湾内および湾口部におけるマダラ稚魚の胃内容物組成を1991年は5地点,

1993年は4地点 1995年は5地点 1997年は7地点 1998年は湾口部の1地点で調べ

た(Fig.IV-1)。マダラ稚魚は前章と同様に,オッタートロールネットの着底曳きによって

採集し, 5-10%の中性海水フォルマリン溶液で24-36時間固定した後, 70%エタノール

溶液に移して保存した。また各採集地点ではNORPAOネット(目合:0.33mm)による海

底直上から海面までの鉛直曳きによってかいあし類力ラヌス目コペポダイ卜を採集し

た。

合計513個体の稚魚の全長(O.lmm単位),体重(lmg単位),胃内容物重量(lmg単

位)を計測し,胃内容物の同定・計測・計数を行った。食物組成は各採集地点ごとに出

現頻度(F%),個体数組成(N%),湿重量組成(W%)であらわした。胃内容物重量示数

(501)は各個体ごとに以下の式で計算した。

閏内容物重量示数(501)=胃内容物重量(回x100/{体重(g)ー胃内容物重量(回}

個体の体重(胃内容物重量を除く)と胃内容物重量示数(501)の関係を検討した際には,

閏内容物中において湿重量で最も高い値を示した餌項目と,その餌の体サイズ(体

幅)をもとに,稚魚を5つのカテゴリーに分類した。カテゴリーはまず「力ラヌス目を主食

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n一

y

r

a

e

B

ihtt

rrs

oa一

e

Npum

S.Q.ulh.e.Y'.h

p.artof West.Bay

Fig. IV-1. Locations of net sampling stations for stomach contents analysis of Pacific

cod juveniles and contours of bottom depth. Samplings were conducted on the sea

bo坑omwith an otter trawl net.

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としていた稚魚(Calanoidfeeder)Jと「カラヌス目以外を主食としていた稚魚」に分けた

のち,後者はさらに主食としていた餌のサイズをもとにして,小型餌食者(Small-sized

p問 yfeeder, S,力ラヌス目を含まない平均体幅0.6mm以下の餌生物食者),中型餌食

者(Middle-sizedprey feeder, M,平均体幅0.6mmより大きく1.0mm以下の館生物食者),

大型餌食者(Large-sizedprey feeder, L,平均体幅1.0mmより大きく2.0mm以下の餌

生物食者),超大型餌食者(Very-Iarge-sizedprey feeder, LL,平均体幅2.0mmを超え

る餌生物食者)の4つに分類した。胃内容物から出現した各餌生物の体幅は

Table IV-1に示した通りである。

マダラ着底稚魚の食物組成の座標づけ

マダラ稚魚の食物組成が採集年や地点ごとに,どのような要因によって変化する

のかを明らかにするために,餌項目×地点の出現頻度ヂータ(胃からその餌が出現

したマダラ稚魚の個体数)に対応分析(correspondenceanalysis, CA; Hill, 1973)を用い

て座標づけ(ordination)を行った。座標づけによる解析は,餌項目と地点のデータを分

類可能であるだけではなく連続的に変化するデータの相互関係を多次元空間中に

散らばる位置づけとしてあらわし各次元の座標軸の持つ意味を解釈することで,

データを変化させる因子との関係を求めることができる(小林, 1995)。なお,種×地点

の個体数データ!こCAを適用する場合の注意点などについては, HiII and Gauch

(1980), Digby and Kempton (1987),小林(1995),品川・多部回(1998a,1998b, 1998c)

に詳しく述べられている。対応分析の計算にはMVSPPlus Ver.2.2i (Kovach, 1995)を

使用した。

マダラ着底稚魚の相対成長と食物転換サイズの解析

マダラ稚魚の全長と体重との関係式は,摂餌量が体重の最大9.8%を占める個体も

あったため,本研究では体重から閏内容物重量を引いた値を用いて求めた。なお,

稚魚の固定・保存液による全長の収縮や体重の損失は,この解析では考慮していな

い。

86

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Table IV-1. Truncated names and body width (Minimum-Mean-Maximum in mm) of干oodorganisms in stomachs of Pacific cod juveniles in Mutsu 8ay in June. N: Sample size of food items measured. Class: Size class of five categories u~ed in Fig. IV-3 (C: Calanoida. S: Small-sized prey. M: Middle-sized prey. L: Large-sized prey. LL: Very-Iarge-sized prey)

Body width of food Mean & Range

(mm) 0.29-0.54ー0.890.20-0.34-0.66 0.29-0.51-0.66 0.20-0.26-0.31 0.22-0.28-0.33 0.23-0.36-0.49 0.21-0.27-0.34

Truncated Food organism

μ血盟inasp. Calanoida (T otal)

♀単盟些阻豆ficu呈ParacalanuS 目立些

Pseudocalanu~ spp. Gentropa~es abdominalis Acartia omorii Other Calanoida Unidentified Calanoida

Corvcaeu~ spp.

2za

imM

m一.悶

m

a-Ma

nH『

nH

・MH一LC

Corycaeus Cumacea Gammarid Hyperiid Caprellid Euph-fur Nat寸uvNat-zoea RA-zoea RA-megal R8-zoea R8-megal Sagittoid PISCES

Cumacea Gammaridea Hyperiidea Caprellidea Euphausiacea furcilia Natantia juvenile Natantia zoea Reptantia Anomura zoea Reptantia Anomura megalopa Reptantia 8rachyura zoea Reptantia 8rachyura megalopa Sagittoidea PISCES larva and juvenile

87

0.20-0.25-0.28 1.46-1.48-1.50 0.40-0.74-1.58 0.33-0.89-1.70 0.11-0.68-1. 67 0.43-0.51-0.58 1.04-2.41-3.70 0.34-0.69-1.26 0.58-0.61-0.64 0.74-1.10-1.80 0.41-0.76-1. 36 O. 88-1. 66-3. 40 0.32-0.36-0.40 1.28-2.36-3.32

-3040961

N一2223203

n

L

4

E

'

nHM噌

tkununonHundnL白

OnOQUnO

2

4

2

4

2

3

4

4

1

cu 前一

scocococosLMMMSLMMLMLS上

'

L

E

t

c-

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マダラ稚魚がかいあし類カラヌス白から,大型の餌に転換するサイズを検討するた

めに各採集地点ごとに転換全長(ShiftedTL)を以下の式で求めた。

転換全長(ShiftedTL, mm)= [max{TL1}+ min{TL2}]/2

max{TL1}:力ラヌス目を主として捕食していた最大個体の全長

min{TL2}:力ラヌス目より大型の餌を主として捕食していた最小個体の全長

ここで「主として捕食していた餌」とは,各個体ごとに胃内容物中において湿重量で最

も多く捕食していた餌生物のことである。なお,餌生物を十分捕食しておらず, r主とし

て捕食していた餌」を判定できない個体は解析から除外した。また,同一地点で解析

を行ったすべての個体がカラヌス目を捕食していた場合,転換全長は解析を行った

個体の最大全長より大きいと判断し逆にすべての個体が力ラヌス目より大型の餌を

捕食していた場合は,転換全長は解析を行った個体の最小全長より小さいと判断し

た。

結果

マダラ着底稚魚の摂餌強度の時刻変化

陸奥湾の湾内および湾口部におけるマダラ稚魚の摂餌強度を採集時刻ごとに胃

内容物重量示数(SCI)の中央値で示した(Fig.IV-2)。全22回の採集のうちで最も早い

時刻(08:41)に採集された1991年の湾口部Stn.12においてSCIの中央値は0.07と低

かったが, 09:01に採集された1997年の東湾Stn.50では2.0と比較的高い値を示した。

1 0:08 -11 : 13には相対的に高い値(1997年のStn.19と1997年のStn.37)と低い値

(1995年のStn.43, 1997年のStn.12, 1995年のStn.13)がともにみられ, 11:13-13:13

にはSCI=0.5以下の中央値がみられなかった。しかし, 13:13-15:08までは再びSCIの

中央値が高い地点と低い地点がともにみられた。採集時刻が比較的近く(14:13-

15:08),同一地点で採集が行われた1991年, 1993年, 1995年, 1997年のStn.30では,

いずれの年も力ラヌス目を多く捕食しており(後述), SCIの中央値は1991年と1997年

88

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f;~ 九Median

25%' o June 1998 ・June1997

口June1995

・June1993

<>June 1991

3

30

2

50

5

4

2

3

F

l

(

〉〉

“・工切一

ω〉〉

¥戸℃

om)・OOF-〉〉

OωH一Oω

O

6: 0 0 1 8 : 0 0 1 5 : 0 0 1 2: 00 9: 00

day

Fig. IV-2. Ohanges with time in stomach contents indices (801) of Pacific cod juveniles

in Mutsu Bay in June. Numerals show station numbers.

89

In Ti me

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に高く, 1993年と1995年に低かった(1991年:1.7, 1993年:0.87, 1995年:0.76, 1997

年:1.8)。

次に稚魚の個体ごとの801値と体重の関係をFig.IV-3に示した。 1991年にみられる

801値が0.5未満の低い値を示した個体はすべて08:41に8tn.12で採集された個体で

あり,これらを除くと閏内容物重量(80W)はO.Olgから0.05gの範囲にあった。また

801=0.5以上の個体は4個体を除いてすべて力ラヌス目を捕食しており,稚魚の大型

化に伴って801値が減少する傾向がみられた。このような801値の減少は1993年と

1995年にも観察されたが, 1995年の8tn.37で採集された大型の2個体のうち体重

4.8g(全長 TL:92.5mm)の個体が主にワレカラ(Oap問lIidea)を,体重 5.0g(全長

TL:92.4mm)の個体がコモチジヤコAmblychaeturichthys笠出也豆を捕食しており,それ

ぞれ801値0.9と3.4という大型個体にしては高い値を示した。一方1997年には大型個

体でも高い801値を示す個体が多数みられ,他の年には全くみられない801値6以上

の個体が218個体中9個体出現した。この年,カラヌス目を主食としていた個体の最大

胃内容物重量(80W)は0.026gであり, O.lg以上を示した個体の多くは体幅2.0mm以上

の仔稚魚(LL,Very-Iarge-sized prey)と十脚類遊泳亜日ジュベナィル(Natantia

juvenile,エビ類, LL)を捕食していた。採集時間の中央値に年変動はあるが, 1991年

の8tn.12を除いて各年の摂餌量の中央値を求めると, 1991年(採集時刻の中央値:

11 :54)は0.021g, 1993年(13:13)は0.020g,1995年(11:20)は0.007g, 1 997年(11:24)は

0.018g, 1998年(13:13)は0.014gであった。また,摂餌量には採集年によって有意な差

が認められ(クラスカル・ウオリス検定, KW=52.7, df=4, P=9.9・10-11),1995年とその他

の年の聞には有意差が認められた(シェフェのS検定:Ix,-xjl=115.1, V E=19,563,

df=4, 504, P=1.9・10-9)。

マダラ着底稚魚の食物組成

マダラ稚魚の各年各地点別閏内容物組成を出現頻度(F%,Table IV-2),個体数組

成(N%,T able IV-3, Fig. IV-4),重量組成(W%,T able IV-4, Fig. IV-5)で示した。 1991年

90

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0012345

Body weight (g, exclude SCW)

Fig, IV-3, Relation between body weight and stomach contents index (801) in Pacific cod

juveniles in Mutsu Bay, Ood juveniles were categorized into five groups by the size

of the main prey items,

4

3

June 1991

2

x .. ω-て3

C ・ー 0

0 a斗

n

d

n

,ι

ω

一FCω

一FC

0

0

ぷ=

O

<0 1

E 0 4・, 0:CJ) V

4

.A.

O. 0 1 • 2 3 4

3

June 1995

2

× 0.0 1

91

10

4

1997 • 8 • • • 6 • 2

500

6

5

4

3

2

2 345

June 1998

0.01

5 0 o 1 2 3 4 5

Bodyweight (g, exclude SCW)

• 10 Calanoid feeder (Mean BW=O.34mm)

口 Small-sized prey feeder (Mean BW:s:O.6m-m, e-xclude Calanoida)

企 Middle-sized prey feeder (O.6mmくMean BW三1.0mm)

x Large-sized prey feeder (1.0mmくMean B Wぎ2.0mm)

• Very-Iarge-sized prey feeder ( M e a n -B W > 2 . O m m)

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Table IV-2. Ooourrenoe of food items based on number of Paoi官。∞djuveniles and peroent frequenoy of ooourrenoe of f,∞d items (F弛.in pa問 ntheses)in Mutsu Bay in June. Corresp。ndenoeanal)Isis (GA)was performed using this table based onjuveniles' number o'f individualswith ast.erisks atthe Ie代 of"F∞dorg;anism" oolumn

1991 1993 1995 1 9 9 7 1 9 9 8 FoodorganismSUI.12Stn.13 Stn.20SU130Stn.43 Stn.13 S,tn.30 Stn.37S,tn.43 Stn.13SM.30SUE.37SU3.43 S,tn.50S,tn.12Stn.13S,tn.19Stn.30 Stn37 Stn43SU3.50 S,tn.5

*以虫箆担呈 sp. 0 2 3 2 0 0 0 2 6 19 0 0 0 6 3 9 14 5 (0) (10) (5) (15) (10) (5) (0) (0) (0) (5) (5) (10) (30) (95) (0) (0) (0) (19) (9) (28) (44) (16)

* Calanoida (TotaJ) 13 20 20 20 20 22 7 13 19 17 19 16 16 20 9 13 4 30 5 18 3 30 (65) (100) (100) (100) (100) (100) (100) (100) (95) (85) (95) (80) (80) (100) (28) (43) (13) (97) (16) (56) (9) (94)

Calan且呈E割E呈且呈 6 20 20 20 20 22 6 13 18 3 4 8 0 3 4 5 2 20 5 2 12 (30) (100) (100) (100) (100) (100) (86) (100) (90) (15) (20) (40) (0) (15) (13) (17) (7) (65) (3) (16) (6) (38)

Paraoalanus E呈立盗 3 20 9 0 21 3 0 17 0 2 0 0 0 2 2 25 0 3 2 0 (5) (15) (100) (45) (0) (95) (43) (0) (85) (0) (10) (5) (0) (0) (0) (7) (7) (81) (0) (9) (6) (0)

Pseudooalanus spp. 2 18 20 20 20 14 2 18 14 19 16 13 17 0 4 2 17 0 5 0 9 (10) (90) (100) (100) (100) (64) (14) (15) (90) (70) (95) (80) (65) (85) (0) (13) (7) (55) (0) (16) (0) (28)

Centr'ooaEes abdominalis20 20 20 20 3 10 8 16 18 15 8 16 2 5 3 27 2 13 2 0 (5) (100) (100) (100) (100) (14) (14) (77) (40) (80) (90) (75) (40) (80) (6) (17) (10) (87) (6) (41) (6) (0)

全E呈出呈 omorii 0 8 3 4 0 0 0 3 2 2 0 2 0 0 3 2 0 0 (0) (40) (15) (20) (0) (5) (0) (0) (15) (10) (10) (5) (0) (10) (3) (0) (0) (3) (9) (6) (0) (0)

Other Calanoida 18 14 13 8 0 4 0 0 0 0 4 2 0 3 29 (5) (5) (9ω(70) (65) (36) (0) (8) (20) (0) (5) (0) (0)ω(13) (7) (3) (3) (0) (9) (3) (91)

Unidentified Calanoida 5 20 20 20 20 19 6 11 19 9 8 13 3 2 0 0 0 7 0 0 0 (25) (100) (100) (100) (100) (86) (86) (85) (95) (45) (40) (65) (15) (10) (0) (0) (0) (23) (0) (0) (0) (3)

キCorvoaeusspp. 5 17 20 11 16 16 6 6 16 12 8 2 3 6 0 3 3 4 0 2 0 8 (25) (85) (100) (55) (80) (73) (86) (46) (80) (60) (40) (10) (15) (30) (0) (10) (10). (13) (0) (6) (0) (25)

* Cumaoea 2 2 2 5 2 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 tNo (10)(10)(10)(25)(10)(5)(14)(O)(O)(O)(O)(O)(O)(O)(6)(O)(O)(0)(0)ω(3) (0)

ネ Gammaridea 2 0 3 0 0 0 0 3 3 3 2 13 15 22 5 3 3 10 (10) (0) (15) (0) (0) (0) (0) (8) (15) (15) (15) (5) (5) (10) (41) (50) (73) (16) (9) (3) (9) (31)

* Hyperiidea 0 0 6 0 0 0 5 0 0 8 8 17 4 3 11 (5) (0) (5) (0) (5) (27) (0) (0) (0) (25) (5) (0) (5) (0) (25) (27) (57) (13) (9) (3) (3) (34)

* Caprellidea 0 0 2 2 3 3 10 2 4 7 3 0 0 19 13 16 9 17 18 0 (0) (5) (0) (10) (10) (14) (14) (23) (50) (10) (20) (35) (15) (0) (0) (63) (43) (52) (28) (53) (56) (0)

* Euphausiaoea如roilia 20 20 16 4 20 0 0 0 4 5 0 2 3 6 0 0 0 25 (5) (100) (100) (80) (20) (91) (0) (0) (0) (20) (25) (5) (0) (5) (3) (7) (10) (19) (0) (0) (0) (78)

* Natantiajuvenile 0 0 0 O' 2 0 0 0 5 3 3 0 4 2 7 0 2 0 2 0 (5) (0) (0) (0) (0) (9) (0) (0) (0) (25) (15) (15) (5) (0) (13) (7) (23) (0) (6) (0) (6) (0)

* Natantia zoea 7 5 2 0 4 3 13 17 15 7 0 0 0 12 3 4 2 2 2 2 (5) (35) (25) (10) (0) (18) (43) (100) (85) (5) (75) (35) (0) (0) (0) (40) (10) (13) (6) (6) (6) (6)

キReptantiaAnomura zoea 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 2 2 0 0 0 0 0 0 3 0 (0) (0) (5) (0) (15) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (10) (10) (0) (3) (0) (0) (0) (0) (0) (9) (0)

ホ ReptantiaAnomura megalopa 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 5 10 13 0 6 9 26 0 (0) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (10) (5) (0) (0) (0) (16) (33) (43) (0) (19) (28) (81) (0)

本 ReptantiaBraohyura zoea 2 4 3 6 16 0 2 4 4 4 10 4 4 7 0 0 7 (10) (20) (15) (5) (30) (73) (0) (15) (5) (20) (20) (20) (5) (50) (13) (13) (23) (3) (0) (0) (22) (3)

キ ReptantiaBraohyura megalopa 0 0 0 0 0 0 4 3 11 3 0 0 16 9 2 0 9 19 0 (0) (0) (5) (0) (5) (0) (0) (8) (0) (20) (15) (55) (15) (0) (0) (53) (30) (6) (0) (28) (59) (0)

集 Sagittoidea 5 0 0 3 13 0 0 0 0 0 2 0 8 2 27 30 0 22 (25) (0) (5) (0) (15) (59) (14) (0) (0) (0) (0) (5) (0) (10) (0) (27) (7) (87) (94) (3) (0) (69)

*PISCESlarvaandjuvenile 0 0 0 0 0 0 3 3 2 0 2 0 0 2 3 4 0 4 6 0 (0) (0) (0) (0) (0) (0) (43) (8) (15) (10) (0) (10) (0) (0) (6) (10) (13) (0) (13) (3) (19) (0)

Others 16 20 20 20 9 7 7 20 12 10 11 11 20 2 14 10 8. 15 5 10 (5) (80) (100) (100) (100) (41) (100) (54) (100) (60) (50) (55) (55) (100) (6) (47) (33) (26) (47) (16) (31) (3)

Digested f.∞d 16 17 19 20 18 12 2 12 12 16 6 9 14 7 20 6 19 14 6 18 12 8 (80)(85) (95) (100)(90) (55) (29)(92) (6080)(30)(45) (70) -(35) (63) (20) (63)(45) (19) (56) (38) (25)

Number offish examined 20 20 20 20 20 22 7 13 20 20 20 20 20 20 32 30 30 31 32 32 32 32 Nu.mller of emJl!y_stomaohs 4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4 0 0 0 0

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Table IV-3. Percent by number (N%) of food items in stomachs of Paci宵ccod juveniles in Mutsu Bay in June

1991 1993 1995 1997 1998 Stn. Stn. Stn. Stn. Stn. Stn. S甘1 Stn. Stn. S廿1 Stn. Stn. Stn. Stn. Stn. Stn. Stn. Stn. Stn. Stn. Stn. SU1.

Food organism 12 13 20 30 43 13 30 37 43 13 30 37 43 50 12 13 19 30 37 43 50 5 Limacina sp. O 0.2 <0.1 <0.1 く0.1 0.1 O O O 0.3 0.3 0.3 2.7 73.8 O o o 0.7 0.9 7.4 14.2 1.2 Calanoida (T otal) 26.3 62.6 65.5 97.5 83.9 72.3 79.1 84.9 85.1 76.1 89.9 87.0 65.6 15.3 11.3 12.2 13.1 86.4 0.5 13.7 13.8 33.5

Calanus paci苛cus 15.8 24.6 16.5 4.2 8.3 51.3 55.3 58.9 5.2 0.6 0.5 3.7 o 0.1 5.7 1.7 0.6 0.7 0.1 1.1 1.1 0.4 Paracalanus 目 立 些 1.1 0.4 3.1 0.2 O 15.2 11.2 o 17.6 O 0.1 0.1 o O O 1.7 0.9 11.0 O 0.7 0.7 11.2 Pseudocalanus spp. 2.1 8.7 22.8 64.9 5.9 2.0 0.6 0.5 45.1 25.4 50.8 35.8 50.0 8.6 O 1.7 1.1 2.3 O 2.0 2.0 0.7 CentropaEes abdominalis 1.1 15.3 9.4 18.1 50.8 0.2 0.3 17.5 2.7 41.8 33.6 31.1 14.1 6.4 1.4 6.6 10.2 71.9 0.2 6.5 6.5 O

A旦出g.Q盟副i O 0.6 0.1 く0.1 O 0.1 O o 0.1 0.3 0.3 0.1 o く0.1 0.7 O o く0.1 0.3 2.7 2.7 O Other Calanoida 1.1 0.7 4.0 0.3 0.6 0.6 o 0.1 0.2 O 0.1 O O O 3.5 0.7 0.3 く0.1 o 0.7 0.7 21.0

cto o Unidenti罰edCalanoida 5.3 12.2 9.6 9.9 18.2 2.8 11.8 7.9 14.2 8.1 4.5 16.0 1.5 0.1 O O O 0.4 o O O 0.2

Corv~spp. 14.7 5.6 26.9 0.2 0.7 7.4 9.7 0.8 9.7 10.0 0.9 0.6 0.7 0.2 O 1.7 2.0 0.2 o 0.4 O 0.9 Cumacea 3.2 0.2 <0.1 0.1 く0.1 0.1 0.3 O O O O O o o 1.4 o 。o O o 0.2 O

Gammaridea 2.1 。0.1 O o O o 0.1 0.1 0.6 2.1 0.1 0.2 <0.1 11.3 9.2 35.5 0.2 0.3 0.2 0.8 1.2 Hyperiidea 1.1 。く0.1 o く0.1 0.5 o o o 0.8 0.1 O 0.2 O 52.5 5.6 10.5 0.2 0.6 0.2 0.2 1.1 Caprellidea o 0.1 o く0.1 く0.1 0.6 0.9 0.4 0.7 0.3 0.2 2.7 0.7 o o 14.9 6.0 1.4 1.9 5.6 11.0 O

Euphausiacea furcilia 4.2 27.0 2.6 0.4 0.1 4.7 o O o 0.6 0.6 0.1 O く0.1 3.5 0.7 0.9 0.2 O O O 50.6 Natantia juvenile 1.1 o o 。o 0.1 o o O 0.8 0.3 0.4 0.2 o 2.8 0.7 2.3 o 0.2 o 0.4 o Natantia zoea 3.2 0.8 0.1 く0.1 o 0.5 2.6 12.4 3.2 0.3 4.1 1.6 o O o 7.6 1.7 0.1 0.2 0.7 0.4 0.1 Reptantia Anomura zoea o O <0.1 o 0.1 。O o o o O 0.6 0.5 O 0.7 O o o O O 0.6 O

Reptantia Anomura megalopa O o O o 。 o o o o 0.3 0.1 o o o 7.8 10.9 11.1 o 1.1 2.9 29.7 O

Reptantia Brachyura zoea 2.1 0.2 0.1 <0.1 0.3 2.0 o 0.3 <0.1 0.7 0.2 1.1 0.2 0.4 5.0 1.3 2.8 <0.1 o O 2.5 0.1 Reptantia Brachyura megalopa O O く0.1 o く0.1 o o 0.1 。 1.0 0.2 1.9 0.7 O o 8.6 4.0 0.1 o 8.7 16.9 o Sagittoidea 41.1 O く0.1 o 0.1 11.2 0.3 O o O O 0.1 o 0.1 o 13.5 0.6 10.3 85.9 0.2 O 11.2 PISCES larva and juvenile O o O o o O 7.1 0.3 0.3 0.3 O 0.6 o o 1.4 1.0 1.4 o 0.4 0.2 1.5 o Others 1.1 3.4 4.6 1.7 14.7 0.6 く0.1 0.8 0.9 8.1 1.1 2.9 28.0 10.2 2.1 12.2 8.2 0.3 7.8 59.6 7.6 0.1 Number of骨shexamined 20 20 20 20 20 22 7 13 20 20 20 20 20 20 32 30 30 31 32 32 32 32 Number of empw stomachs 4 o O o O o O O o O o O 4 。 O O O

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Table IV-4. Percent by wetweight (~覧) of food items in stomachs of Paci育ccod juveniles in Mutsu 8ay in June

1991 1993 1995 1997 1998 Stn Stn. Stn. Stn. Stn. Sむ1. Stn. Stn Stn. Stn. S廿1 S甘1 Stn Stn. Stn. Stn. Stn. Stn. Stn. Stn Stn. Stn

FooiLorganism 12 13 20 30 43 13 30 37 43 13 30 37 43 50 12 13 19 30 37 43 50 5 Limacina sp. O く0.1 く0.1 く0.1 く0.1 く0.1 O 。o く0.1 8.8 く0.1 6.2 74.9 O O O 0.5 0.1 1.5 3.4 0.8 Calanoida 1.6 50.5 54.8 70.1 68.0 69.0 71.4 51.5 49.6 34.7 44.1 15.1 19.8 14.6 2.5 0.3 0.2 34.0 く0.1 1.0 0.3 19.7 Corvcaeus spp. <0.1 0.9 11.5 <0.1 く0.1 0.8 く0.1 く0.1 5.3 く0.1 く0.1 く0.1 く0.1 く0.1 O く0.1 く0.1 く0.1 o く0.1 O 0.1 Cumacea 3.2 0.7 0.5 0.7 0.6 く0.1 く0.1 o O O o O O O 5.0 o O O O O 0.2 o Gammaridea 9.5 O 0.7 O O o o く0.1 1.2 6.3 4.0 0.8 1.2 1.4 22.4 5.4 19.3 1.5 0.4 0.1 0.6 9.9

t,ムo Hyperiidea く0.1 。く0.1 O く0.1 0.5 O 。 O 2.1 く0.1 o く0.1 O 16.6 3.2 9.8 0.9 1.4 0.1 1.4 0.7 Caprellidea o 0.5 o <0.1 く0.1 3.3 く0.1 く0.1 4.9 <0.1 0.9 16.7 11.1 o O 23.6 4.4 19.0 4.5 9.9 15.9 O Euphausiacea furcilia 1.6 28.1 5.8 1.3 0.2 2.9 O O O く0.1 0.9 <0.1 O 0.3 0.8 く0.1 く0.1 く0.1 o O O 52.2 Natantia juvenile 33.3 o o O O 9.6 O O O 6.3 5.3 5.3 11.1 O 33.6 12.4 35.9 O 0.4 O 0.2 O Natantia zoea 4.8 1.8 1.4 0.1 O 0.5 3.3 38.6 17.9 1.1 26.4 0.8 o O O 2.5 0.5 0.3 0.1 0.9 0.1 0.2 Reptantia Anomura zoea o o <0.1 O 0.4 o O 。。 O O 1.6 1.2 o 0.4 o O O O O 0.3 O Reptantia Anomura megalopa O o o O o o o o O 1.1 2.2 o o O 5.0 12.3 6.5 o 2.2 7.2 29.0 o Reptantia 8rachyura zoea く0.1 く0.1 く0.1 0.1 0.4 1.8 O 0.3 0.4 く0.1 く0.1 く0.1 く0.1 0.3 1.7 0.2 0.7 0.1 o O 0.4 く0.1Reptantia 8rachyura megalopa O o 0.2 O 0.2 o O 0.6 O 9.5 0.4 9.0 17.3 o O 19.1 5.0 0.9 o 22.0 13.4 O Sagittoidea 7.9 o <0.1 O く0.1 7.0 く0.1 O o O o <0.1 o 1.4 o 2.3 く0.1 36.1 61.4 く0.1 O 15.6 PISCES larva and juvenile O o o O O O 23.1 0.3 1.6 2.1 o 40.3 o o 3.7 2.5 8.0 O 24.6 47.2 22.5 O Others く0.1 く0.1 4.4く0.1 3.2 0.3 く0.1 0.6 0.4 く0.1 く0.1 2.7 6.2 4.1 0.8 12.2 8.0 3.3 4.3 5.5 9.8 く0.1Digested food 38.1 17.6 20.7 27.6 27.1 4.4 2.2 8.1 18.7 36.8 7.0 7.7 25.9 3.1 7.5 4.0 1.7 3.3 0.7 4.3 2.3 1.0 Number of育shexamined 20 20 20 20 20 22 7 13 20 20 20 20 20 20 32 30 30 31 32 32 32 32 Number of empty_stomachs 4 O O o O O O O O O O 。 4 o O 。 O

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80 「一r--t

40 F一r--t

20 O Stn. r

1 2

1 3

20

30

43

F

I----議努腐;;;;;jilli;:~22 , 56.4-84.3mm i:i22522関係'///;//,17,57.0-78.6mm

I2323i剛 20,56.7-84.7mm

限設設朝13,66.9-86.1 mm

E,--_.三:欄間醐20,45.5-92.9mm

盟国20,53.6-88.0mm

欄 醐 醐 由 醐20.47.6-86.5mm

塵臨調20,57.6-92.6mm

師園田20.41.6-82.4mm

43圏的

盟富盟語盟富富富富富盟富富器誼癌謹趨醐

ha∞-

32, 43.2-80.5mm

l量級協~例会:~:~:~:~:~::132 , 48.1-72.6mm

α3

~I 5

口Calanoida

図Cumacea

図Hyperiidea

図Euphausiaceafurcilia

困Natantiazoea

図ReptantiaAnomura megalopa

図Reptantia8rachyura megalopa

図PISCESlarva & juvenile

固 Limacin~ sp.

日 corycaeu~ spp.

固Gammaridea

図Caprellidea

目Natantiajuvenile

図ReptantiaAnomura zoea

図Reptantia8rachyura zoea

図Sagittoidea

固Others

Fig. IV-4. Diet compositions (percent by number) in stomachs of Pacific cod juveniles by

sampling stations in Mutsu Bay in June. N: number of fish examined.

95

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W九406080 100

IN, TL range

凶笠選圃圃圃圃圃圃圃圃圃圃20,65.5-81.4mm

麟忽務妨勿勿~ー・・20, 52.7-78.0mm

lzizi:i:::三穆忽~匝週・・・・・・ 20, 53.4-77.6mm 陸・ー・・・・・20,61.5-87.4mm

髄圏圃圃圃圃圃圃・20,55.5-81.5mm

20 「ーr-"1

騒窟聖観

O Stn. 1 2

1 3

20

30

F

O

∞F

認掴22,56.4-84.3mm

7. 57.0-78.6mm

E22itilli提民会設吾輩廻・・・・・20,56.7-84.7mm

~~ぬ~ぬ否決姻圃 13 , 66.9-86.1 mm

43

の∞∞戸

瞳藤喜三割穏鐙鐙圃圃圃圃圃圃・・・・20,45.5-92.9mm

器提言設設設設宣投苔酒圃20.53.6-88.0mm

醸鰯鶴屋三雪j際線怒綴怒駒田・・・・・・20.47.6-86.5mm

20. 57.6-92.6mm

30臨盟43醐

回∞白戸

20, 41.6-82.4mm

32, 38.7-86. 7mm

30, 47.4-82.9mm

30, 38.3-77.8mm

31, 38.7-83.8mm

32, 49.7-90.2mm

32,43.1-84.7mm 欝諜i主犯22;;jjj;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;111;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ji222滋務ぞ2222223怒号

盟蝿盟盟盟蝿輯盤罷盛欝盟盟盟趨盤

151iE

。Lndnunun-u守

InU

414141nda且TndFO

haoF

32, 43.2-80.5mm

α3

~I 5 臣室部~:::::::~:~:::~:~:~:~:~132, 48.1-72.6mm

口Calanoida

図Cumacea

図Hyperiidea

図Euphausiaceafurcilia

回Natantiazoea

図ReptantiaAnomura megalopa

図Reptantia8rachyura megalopa

図PISCESlarva & juvenile

圃Digestedfood

I 固 Limacin~ sp.

日 Gorycaeu~ spp.

固Gammaridea

困Caprellidea

国Natantiajuvenile

図Reptantia Anomura zoea

図Reptantia8rachyura zoea

図Sagittoidea

固Others

Fig. IV-5. Diet compositions (percent by wet weight) in stomachs of Pacific cod juveniles

by sampling stations in Mutsu Bay in June. N: number of fish examined.

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および1993年には摂餌強度が低かった1991年のStn.12を除いてF%,N%, W%ともにか

いあし類カラヌス目が高い値を示した(1991年:Stn. 12を除いてF%=100,N%炉=6位2.β6か一9幻7.5

W%俳=5印0.5ト-7刊0.1,1叩99ω3年:アF%炉=9釘5-寸10∞0,N%=72.3-85.1, W%=49.6-71.4)o 1991年のStn.12

ではN%ではヤムシ類(SagiUoidea,主に豆盟主主到豆旦旦呈)が高かったが(41.1%),W%では

十脚類遊泳E目ジュベナイルが高い割合を占め(33.3%),これは体重1.62g(全長

74.5mm)の1個体が0.021gのエピ1個体を捕食していたためである。

1995年もStn.50を除いた4地点で力ラヌス目のF%とN%が高い値を示した(F略=80-95,

N%=65.6-89.9) 0 W%でも力ラヌス目はStn.13,Stn.30, Stn.43の3地点で消化物

(Digested food)を除いて第1位を占めたが,その範囲は19.8-44.0%であり1991年およ

び1993年に比べて低かった。このうちStn.43では20個体中3個体が十脚類腿行軍目

短尾族メガロパ幼生(Reptantia8rachyura megalopa,力ニ類)を捕食し, W%で17.3%と

比較的高い値を示した。 Stn.37では20個体のうち2個体が魚類を捕食し(1個体のマダ

ラ稚魚がコモチジャコを捕食し,他の1個体は同定不能の魚類を捕食), W%は40.3%を

占めた。 Stn.50ではN%とW%ともに浮遊性巻貝Lim笠恒呈属の1種が卓越した(F%=95,

N%=73.8, W%=74.9)。

1997年はStn.30で力ラヌス目の捕食比率が高く(F%=97%,N%=86.4%, W%=34.0%),そ

の他の地点ではいずれも低かった(F%=9-56%,N%=0.5-13.8%, W%=0.0-2.5%)o 1997年

の平均W%で上位から11慣に,仔稚魚(PISCESlarvae & juveniles, 15.5%),ヤムシ類

(14.3%),十脚類遊泳亜目ジュベナィル(11.8%),ワレカラ(Caprellidea,主にイバラワレ

カラ豆笠盟lIaaca川hogaster,11.0%),十脚類腿行E自歪尾族メガロパ幼生(Reptantia

Anomura megalopa,ヤドカリ類, 8.9%),十脚類腿行E目短尾族メガロパ幼生(8.6%),ヨ

コエビE目(Gammaridea,7.0%),クラゲノミ亜目(Hyperiidea,4.8%,同定可能な個体は

すべてE盟国豆島巴豆旦)などの様々な餌生物が捕食されていた。 Stn.43で「その他

(Others)JがN%で59.6%を占めたのは, 32個体のマダラ稚魚のうち4個体が合計169個

体の二枚貝の幼生(8IVALVIAlarva)を捕食していたためである(N炉 37.9)。

1998年のStn.5ではオキアミ目ファーシリア期(Euphausiaceafurcilia)が多く捕食さ

97

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れ(F略=78,N目=50.6,W覧=52.2),次いでカラヌス目の占める割合が高かった(F%=94,

N%=33.5, W%=19.7)。

個体数組成で力ラヌス目の占める割合が高かった地点で,力ラヌス目の種組成を

みると (Fig.IV-6) , C到忽旦皇陛豆坐日三が優占した地点は 13地点中 4地点,

Pseudocalanus属は6地点, Centropagesabdominalisは3地点であった。 1991年には地

点によってN%の高い種が様々であり, Stn.13では♀巴豆坐旦が, Stn. 20とStn.30で

はPseudocalanus属が, Stn.43では全 abdominalisが多く捕食されていた。 1993年はC.

回豆生虫が比較的多く捕食されていたが, Stn. 13, Stn.30, Stn.43ではParacalanus

但些些の割合が他の年(0-12.8%)に比べて 16.6-21.1%と高かった。 1995年は

Pseudocalanus属と巴 abdominalisが多く捕食され,その他の種の割合は4.2%以下で

あった(同定不能であった力ラヌス目を除く)01997年のStn.30ではC.abdominalisが多

くみられた。

マダラ着底稚魚の食物組成の座標づけ

マダラ稚魚の買にみられる餌の出現頻度をマダラ稚魚の個体数であらわしたデー

タ(TabeIIV-2)を対応分析(CA)にあてはめて座標づけを行い,閏内容物組成の特徴

を解析した。 CAによって得られた第1軸から第5軸までの固有値はそれぞれ, 0.364,

0.212, 0.163, 0.140, 0.078であり(Fig.IV-7,Table IV-5),各軸の寄与率は31.7%,18.4%,

14.2%, 12.2%, 6.8%と計算された。また,第1軸から第4軸までの累積寄与率は76.5%,

第1軸から第5軸までの累積寄与率は83.3%となった。第4軸と第5軸の固有値には大き

な差がみられ(Fig.IV-7),第4軸までの要素が大きく影響すると判断されたため,第1

軸から第4軸までの餌生物別スコア(TableIV-5)と採集地点別スコア(Table IV-6)結果

を示した。また,各軸間の地点別座標づけの結果はFig.IV-8のA-CおよびGー1Iこ,餌

生物別座標づけの結果をFig.IV-8のD-FおよびJ-L/こ示した。

地点別座標づけの結果のうち,最も変動要素が大きい第1軸とそれに続く第2軸の

座標づけをみると(Fig.IV-8-A), 1991年のStn.12を除いて同じ年の採集地点はそれ

98

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1 0 0 r-J

40 「一r-r

20 「一r-r

O Stn. r 1 3

童三重量重量圃圃

富皇室霊童書..

20

30:

43

FOOF

E~主主主主;;;.

出歯揺闇l

匡・・・・・

主主主主主主主主亘書-

37

30

43

3 7

1 3

め∞∞戸

由。∞F

nu nd

hoo-

回Neocalanusplumchrus

固 Paracalanu~Q旦日旦豆回 Clausocalanu~sp.

図Metridiapacifica

図Acartiaomorii

口calanuspacificus

図 Mesocalanustenuicornis

図 Pseudocalanu~spp.

園Scolecithricellaminor

国 Centropaaesabdominalis ・Unidentified

Fig. IV-6. Calanoid copepods compositions (percent by number) in stomachs

of Pacific cod juveniles by sampling stations in Mutsu Bay in June.

99

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(渓

)ωocgL何〉恥

O一言

ωOLωaω〉一制帽一コ

εコO

nu nu

50

0.4

ω0.3 コ伺

20.2 ω b.O

w 0.1

t60 O

O 15 10 5 Axis

percent Cumulative

of variance

ー口一『・-Ei g e n v a I u e

Fig. IV-7. Eigenvalues of correspondence analysis (CA) ordination of the 22 stations and

16 prey categories based on the prey occurrence from the stomachs in Pacific cod

juveniles collected in Mutsu Bay in June.

100

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Table IV-5. Prey scores derived from correspondence analysis (CA) of stomach contents in Pacific cod juveniles in Mutsu 8ay in June

Axis Food organism 2 3 4

Limacina sp. 0.51 -0.61 3.09 一1.63Calanoida -0.73 一0.22 0.34 0.11 Corvcaeus spp. -1.46 -0.74 -0.25 0.15 Cumacea -1.61 -0.61 -0.63 一1.60Gammaridea 1.13 0.71 -2.05 ー0.66Hyperiidea 0.80 1.25 -1.98 -1.09 Caprellidea 1.33 -0.15 0.53 1.08 Euphausiacea furcilia -1.82 0.39 一0.52 一1.13Natantia juvenile 1.13 0.02 一1.91 ー0.72Natantia zoea 一0.40 -1.13 -0.73 2.73 Reptantia Anomura zoea 0.62 -1.68 1.11 -1.44 Reptantia Anomura megalopa 2.77 -0.43 0.03 -0.86 Reptantia 8rachyura zoea -0.19 一0.51 0.03 -1.18 Reptantia 8rachyura megalopa 2.01 一1.25 0.27 0.07 Sagittoidea 0.00 3.37 1.12 0.96 PISCES larva and juvenile 1.54 -0.22 -0.46 0.96 Eigenvalue 0.364 0.212 0.163 0.140 Percent of variance 31.7弘 18.4% 14.2% 12.2% Cumalative percent of variance 31.7% 50.1% 64.3% 76.5%

101

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T able IV-6. Station scores derived from correspondence analysis (CA) of stomach contents in Pacific cod juveniles in Mutsu Bay in June

Axis Station number

and sampling year 2 3 4 Stn.12, 1991 一0.56 0.30 -0.04 0.00 Stn.13, 1991 -1.10 -0.30 -0.10 -0.12 Stn.20, 1991 -1.01 一0.21 ー0.20 一0.19Stn.30, 1991 -1.08 -0.24 0.02 -0.34 Stn.43, 1991 一0.68 一0.26 0.19 -0.22 Stn.13, 1993 一0.68 0.26 -0.06 -0.20 Stn.30, 1993 一0.48 一0.34 一0.07 0.60 Stn.37, 1993 -0.37 ー0.61 一0.17 0.97 Stn.43, 1993 一0.33 -0.52 -0.17 0.89 Stn.13, 1995 一0.08 一0.21 一0.34 -0.20 Stn.30, 1995 -0.28 -0.43 -0.25 0.45 Stn.37, 1995 0.03 -0.42 0.59 一0.28Stn.43, 1995 0.36 一0.51 0.12 0.30 Stn.50, 1995 一0.25 -0.28 1.03 ー0.67Stn.12, 1997 0.63 0.20 -0.98 -0.65 Stn.13, 1997 0.80 0.00 -0.29 0.27 Stn.19, 1997 1.01 0.14 一0.79 -0.29 Stn.30, 1997 -0.03 0.74 0.41 0.31 Stn.37, 1997 0.59 1.44 0.45 0.47 Stn.43, 1997 0.81 一0.37 0.58 0.06 Stn.50, 1997 1.46 -0.53 0.44 一0.29Stn.5, 1998 -0.50 0.75 -0.07 一0.21

102

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1.5 A .'97-37

1.0

*98-5・97-30

を。0'91-1293-13 .・97-12,.・'97-19。

-'97-13 '91-20 31-4395企-'914Eロ 口

'91-13~ '93?30企.

95-43 ・97-50・。95-〈5'9333-L347:

ー0.5

一1.0

4.0

3.0

2.0 N

(/)

ヌ1.0〈

o

-1.0

-2.0

{

D ーSagittoid

eHyperiid

eGammarid eEuph-fur

Nat-juv,

_C・uGmoaryecedaa3eaulsa・nIE gfzoea ヤPISCES

-LL.Irnao.ina caprellid ・eNa

-zoea RA-meEall

・RA 南B-r問 galzoea

-1 .5 -1.0 -0.5 0 0.5 1.0 1.5 -3.0 -2.0 -1.0 0 1.0 2.0 3.0

AXIS 1

1.5 B

1.0 必95-50

陣95-37 ・97-43ー'97-30 ・'97-37'97-50・

企,'95-43'91-30rc

9113 3: '91-20ロ 5

」h- .'97-13

'93-13

43 7 "97-19

を o

-0.5

-1.0 .'97-12

4.0

3.0

2.0

σ3 (/)1.0

x <( 0

自1.0

-2.0

-3.0

AXIS 1

E eLimacina

Sagittoid eRA-zoea Qaprellid

Calanoida・ e' ~-megal 畠 ー

eCorycaeus F B-zoea RA-megal' Euph-fure・CumaceaeN

eplSCES eNa -zoea

HI1阿id・・2訴 vd an

ー1.5 -1.0 -0.5 0 0.5 1.0 1.5 -3.0 -2.0 -1.0 0 1.0 2.0 3.0

1.5

1.0

Z05

x 〈

o

-0.5

C

'9'91-1-132口0口

'91-30口

AXIS 1

6O9'39-33-74L B

。'93-,30"'95-;同 .'97-37

1197-3Q‘,'95-43・'97-13:91-12 "97:-43

令'Y99官31--914833 44h

'97-19・'97-5. C

'*9 .'97-12

3.0

2.0

寸1.0(/)

x 〈 o

-1.0

AXIS 1

F eN2 -zoea

eqaprellid Sagittoid ・PISCES

Corycaeus・Calar】oida EB-megal • -GNaamt-marid

Euphイure RB-zoea・ eHyperiid eRA-zoeaRA-mega

.Cumacea eLimacina -1.01 ・・ -2.0

-1.5 -1.0 -0.5 0 0.5 1.0 1.5 -3.0 -2.0 -1.0 0 1.0 2.0 3.0 AXIS 1 AXIS 1

Fig. IV-8. Corr田 pondenceanalysis (CA) ordination of the 22 statlons ~A':"C, G-I) and 16

prey categories (D-F, J-L) based on the prey occurrence from the stomachs in

Pacific cod juveniles collected in Mutsu Bay in June. Each code on the station

score shows 'sampling year-station'. Each code on the prey score is truncation of

the taxonomic name in T able IV-1.

103

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/

1.51G

め 0.5

c/)

>< 0 〈

-0.5

一1.0

'95-50.

'95-37_'97-43 '97-50・ '97-30・

"97-12

4.0

3.0

2.0 '97-37・

σ3 C/)1.0

'98-5 >< <( 0

-1.0

-2.0

J .Lima I:)lna

RB-i :lea

megal Sagittoid.

RB-gegal Jaatapnro ellid ida

Corycaeus・ヨECES

.・ eEuph-fur 判at-zoea Cumac 同a

~atてiu.v eHyperiid

Gammarid

ー1.5-1.0 -0.5 o 0.5 1 .0 1.5-3・32o -1.o o 1.02.0304.0

AXIS 2

1.5 H

<>'~3=-~7 <>'93-43

1.0

<>'93-30 企'95-30 '97-37・

'-95-43 '97-13・97-30・.'97-43

姿。

品 f詰 司副1・12

u2O.'gQ下・9139-13 会・98-5

91-30'.'95_5 p ・f97-12-0.5

ー1.0

一1.5

3.0

2.0

寸1.0c/)

x 〈 o

ー1.0

K eNat-zoea

CaprCeEllSid' , PIS

• G o

・ryca・臥e u

RB-megal

Na

RA-megal・RB-zoea・Rtzoear1C..lUn l

AXIS 2

Sagittoid・~Ian州a

eGammarid

llnlaEacuctnpea ha イur・Hyperiid

-1.0 -0.5 o 0.5 1.0 -2.0

1.5 -2.0 -1.0 0 1.0 2.0 3.0 4.0

1.5

1.0

305

>< 〈

o

一0.5

-1.0

'97-19・'97-12・

AXIS 2

:;ロa8'93-30<>

'95-30. .'97-37

'97-13・&-4r9HO

n1_11') 1197-43

;;持和97-50

.'95-50

3.0

2.0

寸1.0c/)

>< 〈

o

ー1.0

-2.0

AXIS 2

L Nat-zoea・

PISCES・ .Cap-rlSaligd Ittoid

Corycaeus・~司noida代目ー町、egal

dNamatmてjaurvid

RA-megal -HypeEEiiudph-・fur RB-zoea

.RA-zoea Cumacea・ Limacina・

a E

-1.5 -1.0 -0.5 0 0.5 1.0 1.5 ~3.0 -2.0 -1.0 0 1.0 2.0 3.0 4.0

AXIS 3 AXIS 3

Fig.IV-8. (cont.)

104

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ぞれまとまって分布し,年による出現頻度の相違が地点による相違よりも大きい結果

となった。餌生物の中で、は相対的に小型であるカラヌス目を主食としていた1991年の

4地点は,第1軸の値が小さい座標系の左側の狭い範囲に位置したのに対して, 1997

年は逆に右側に位置し,また1991年よりも第2軸方向に広がって配置された。 CAでは

餌生物別座標づけの結果は地点別座標づけの結果と位置的に対応関係がとられる

ように配置されるので,たとえば相対的に座標系の左側に位置した1991年の4地点で

捕食頻度が高い力ラヌス目も左側に座標づけされる(Fig.IV-8-A, Fig. IV-8-D)。また,

座標系で最も右側に位置づけられた十脚類腿行亜目歪尾族メガロパ幼生(言己号:

RA-megal)は, 1997年のStn.30以外の6地点で頻繁に捕食されたため(F%:16-81%),

地点別座標づけでもやはり右側に配置された。餌生物別座標づけでヤムシ類が第2

軸のスコアが高く(Fig.IV-8-D),地点別座標づけではヤムシ類を相対的に頻繁に捕

食していた1997年のStn.37(問=94)や1997年のStn.30(同=87),1998年のStn.5

(F%=69), 1993年のStn.13 (同=59)が第2軸に関するスコアが高かった(Fig.IV-8-A)。

第1軸と第3軸の座標づけの結果をみると,餌生物別座標づけでは浮遊性巻貝の

μ旦笠恒豆属の1種が第3軸に関して大きな値をとり(Fig.IV-8-E),この餌を頻繁に捕食

していた1995年のStn.50 (F%=95)の標本も地点別座標づけで他の地点よりも上方に

プロットされた(Fig.IV-8-B)。

第1軸と第4軸の座標づけでは,餌生物別座標づけでは十脚類遊泳E自のゾエア

幼生(Natantiazoea)が第4軸に関して大きな値をとり(Fig.IV-8-F),この餌を頻繁に捕

食していた1993年のStn.37 (F炉 100),1993年Stn.43 (F%=85), 1 995年Stn.30 (F%=75)

の標本も地点別座標づけで他の地点よりも上方にプロットされた(Fig.IV-8-C)。第2軸

と第3軸,第2軸と第4軸,第3軸と第4軸の座標づけの結果は, Fig.IV-8のG-Lに示し

た。

次に第1軸から第4軸までの生態学的な意味を解釈するために,各軸のスコアと関

連が想定されるヂータをスピアマンの順位相関係数(rs)(こよって相関の有無を調べ

(Table IV-7-1, T able IV-7-2),その結果をプロットした(Fig.IV-9, Fig. IV-10)。まず胃

105

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Table IV-7-1. Spearman's rank correlation coefficients between mean body

widths of preys and prey scores derived from correspondence analysis (CA)

of stomach contents in Pacific cod juveniles in Mutsu Bay in June

Axis

Character

Mean prey width

* : Significant at 0.05 **: Significant at 0.01.

0.597*

3

-0.447 氏u

nHV

4-D

nu

Table IV-7-2. Spearman's rank correlation coefficients between biotic/abiotic

characters and station scores derived from correspondence analysis (CA) of

stomach contents in Pacific cod juveniles in Mutsu Bay in June

Axis

Character 2 3 4

Occurrence of Sagittoidea a 0.028 0.726柿 0.262 0.094

Occurrence of L..imacina sp. a 0.126 一0.046 0.801梓 -0.357

Occurrence of Natantia zoea a -0.116 -0.316 一0.402* 0.705紳

Distance from Stn.5 0.241 -0.569紳 0.590悼 0.188

Water temperature at station -0.082 0.183 ー0.418* 0.541柿

* : Significant at 0.05

**: Significant at 0.01 a : based on number of官sh.

106

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nU

内L

E」

3 RA-megal・

RB-megal・PISCES圃

-RB-zoea -Nat-zoea

Caprellid-

Gammarid-

-Calanoida ・Coryoaeus

rs=0.60,

Pく0.054

6

8

戸の一〉〈〈hFou吉岡w庄

-RA-megal

-RB-megal PISCES・

Natてjuv・_ClIprellid -Giammarid

_-RA弓按riid、Limaoinaー園田幽回同副由備-'-幽

Sagittoid _悶宮廷22-Calanoida

-Coryoaeus -Euph-fur

2

。4Ea

A

ω一〉〈〈

-Cumaoda

。15 10 {l Rank of mean prey width

百7-37-'98-5・.

'91-12・

-Euph-fur 16

18J 20 2.5

-Cumaoea

Meari ~rey width (mm)2

-2

-3 o

. ,'97-30 ¥ 1'93-13 ¥'97-13

.必?j643::おこ.~g

rs=0.73,

Pく0.01・'97-12

nu E

E

n

U

F

O

n

U

4

E

4

t

。ι

N

∞一〉〈〈h

4cS斗

5 '97-37・

-'97-30 '98-5・

82.0

1.5

505 ぜ91-12 圃'93-13

697ァ19:97-13

-'95-43

::n=gij

o ;f9143

-0.51・、95-50

2~0 1'5 1'0 5 b Rank of Sagittoidea in occurren ce 0,

G rs=0.80,

Pく0.01

-1.0~ u . 10 20 30 35

Number of cod juveniles fed on Sagittoidea

c 1.51

1.0

-'98-5 ・'91-13nunuqU

44

4tFHupo

ngngnuu

内巳

ungn4

f『

F守

F

/QUQMQM

P44

d内

d

nunu

n

U

F

h

u

n

U

4

E

4

E

η

L

ω一〉〈〈hFou-cmw庄

5 '95-50・

-'97-50 σ) 0.5 (J)

X 〈

nu e

c

n

e

v-VE

5u

G

FU o

nvm

4EnF

S

2H

一n-

Fag -a一m一

EL

一od

q'』LRn

a

nR

RU

EU内

4。ι

r,,=0.71, ,/" "of .__ _~3-30・Pく0.01'97寸前

'97-30・

H

1 mb附e町JroJPPλんんiLいω刈∞叫州叫o吋州d刈り山jL

D 1.5

-.'91-:,13 .'9F20 ・'93-13

四、・'97-19・、'97司 50、'91-30

'97-431 '91-12・

角。守

I44

4

・・Ru

hudnHV

n

U

R

u

n

U

4

E

4

1

n

L

ω一〉〈〈h

icS比

5 -'93-37 ・'93-43

圃'95-30・'97-13

1.0

ぜ9みd印

J;鶏!313

寸 0.5(J)

X 〈 o

。ιnU

4E砕同

u-一守,許町

u

nwxua

''

••••

ー1%51015.i023520151050Number of codjuveniles fed on Natantia zoea R'ã~k of~Ñatant'i~ zoe~ln occurrence

Fig. IV-9. Relationships between mean prey width and score of prey ca企egorγinthe axis 1 (人 E),occurrence of Sagittoidea合omstomachs and score of station in the axis 2 (8, F), occurrence of Lim型cinasp. from stomachs and score of station in the axis 3 (C, G), and occurrence of Natantia zoea from st占而記両ζandscore of station in the axis 4 (D, H). Each rs shows Spearman's rank correlation coefficient.

107

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rs=ー0.57,'97里37P<0.01 '97-30・.98-5

圃'91-12.'93-13

'97-12 .97-19

圃'91-20

.'91-43 ・'95-50

守,内ぺV句

nMV

• nu

RU 『,

E

・3quq叫

6aTaa守--

RU

角。白》白u

'93-30圃

'95-30・

'95-13・

DO

u

n

u

p

o

n

U

4

1

4

1

n

L

Nω一〉〈〈

hFou-c同区

2.0 A

.'97-37 1.5

1.0

.'97-30 '98-5 瓜l

妥0.5

'

I

qu内

O

-

-

n

u

nvRdquRu

ranu内田-

tr.-,・幻

J-L

句。内ぺU内

d内

d

4444

----

44『

IEUnφ

9999

-,・,圃,

nununuhu

nζ内

d内

d内

d

-一--

46曾

'q叫

RU

9999

dN¥w

、、圃--

.'~1-12.'93-13 圃'97-12・・'97-19

主主u.91-13 .・95-13

o

一0.5

o 5 Stn.5 (n m )

25 25 20 15 10 Rank of distance from

in the bay mouth

35 30 20 10 一1.00

'95-50・'95亘37'97-43・'97i37

'97-50・'97-30・

'91-43・'95-43・

rs=0.59, Pく0.01

o E

from Stn.5

mouth (nm) Distance

in the bay 1.5 B

σ3

c/)

>< 10ト'91-12・<( --¥ '93-13・‘←悶8-5・V '91-13・さ15

'" 巴

'91-30・

5

.'95-3 ・'97-3

'95-50・

• 3

m

3

d

凋『よ、

a『A『

---一

I『

I1Ahd

9399

'

'

'

圃--

.'97-30

'93i37 ・'93-43・'91-20・'95-30• '97-13 ・'95-13.'97-19

20

圃'93-3

.'97-19

ofUi

1.0

0.5

。.'97-12

20 15 10 5 Rank of Distance from Stn.5

in the bay mouth

25 25

"97-12

35 20 30 from Stn.5 mouth (nm)

10 Distance

in the bay

-1.0

-1.5O

nU E

E

1.5 C '93-37・'93-43・

'93-30・'97-37・

'97-30・'95-43・

'97-13・'97-43・

'91-12・'91-13・

rs=O.54, P<0.01

'95-30・

'91-20・'95-13・'93!13

圃'97-19

• '98-5 '91-43・J

r・'95-37.'97-50

・'91-30

民d

n

U

E

u

n

U

4

E

4

E

η

L

寸の一〉〈〈h

ちu主同

wz

'95-30・・'97-37'97-13・園田'97-30

'95-43 37-43・..'91-12

ち1-13圃 4

'91-43・ 司圃・~9l=20 ・ '93-1391一泊・ '95-37・F V '95-13 F' I ,",V- - -;~.:; -~~/ ¥ '97-19

一0.5十 '97-50' ¥'98-5 '95-50・・'97四 12

.'93-37

.'93-30

.'93-43 1.0

0.5 寸

ω一〉〈〈 。

• '97-12 圃'95-50

25 25 20 Rank of マ,

nU

4.

10 5 0 temperature

Fig. IV-10. Relationships between geographical distance from Stn.5 and score of station in the axis 2 (A, D), geographical distance from Stn.5 and score of station in the axis 3 (8, E), and water temperature on the sea boUom and score of station in the axis 4 (C, F). Each rs shows Spearman's rank correlation coefficient.

108

15 wate r

13 12 (OC)

8 9 10 11 Water temperature

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内容物中に出現した餌生物の平均体幅(mm)と餌項目に関する第1軸から第4軸まで

のスコアを比較すると,第1軸のスコアとの聞に有意な正の相闘がみられた(rs=0.597,

Pく0.05,Table IV-7-1, Fig. IV-9-A, Fig. IV-9-E)。すなわち,第1軸は餌生物のサイズ

を示しており,スコアが大きいほど大型の餌であると考えられる。別の見方をすれば

第1軸の値が高い地点は相対的に大型の餌を多く捕食していたことになり, 1998年を

除いて採集年が進むにつれて大型の餌を捕食する傾向があるといえる(Fig.IV-8-A)。

次にヤムシ類の出現頻度と地点に関する第1軸から第4軸までのスコアを比較すると

第2軸のスコアと有意な正の相闘がみられた(rs=0.726,Pく0.01,T able IV-7-2 ,

Fig. IV-9-B, Fig. IV-9-F)。すなわち,ヤムシ類の出現頻度は第2軸との関連性が強い。

浮遊性巻貝Limacina属の1種の出現頻度と地点に関する第1軸から第4軸までのスコ

アを比較すると,第3軸のスコアと有意な正の相闘がみられた(rs=0.801,Pく0.01,

Table IVー7-2,Fig. IV-9-0, Fig. IV-9-G)。また,十脚類遊泳E目ゾエア幼生の出現

頻度と地点に関する第1軸から第4軸までのスコアを比較すると,第4軸のスコアと有

意な正の相闘がみられ(rs=0.705,Pく0.01,Table IV-7-2, Fig. IV-9-D, Fig. IV-9-H),

相関係数の絶対値は小さいが第3軸のスコアとも有意な負の相闘がみられた

(rs=-0.402, Pく0.05,Table IV-7-2)。すなわち,第4軸は十脚類遊泳E目ゾエア幼生の

出現頻度を示すが, Li旦笠恒呈属の1種とは逆の出現様式を示すものと考えられる。

湾口部Stn.5から湾内最深部に沿って測った距離(mile)と地点に関する第1軸から

第4軸までのスコアを比較すると,ヤムシ類を多く捕食していた1997年のStn.37

(F略=94)はこの関係からはずれてプロッ卜されたが,第2軸のスコアと有意な負の相闘

がみられ(rs=-0.569,Pく0.01,Table IV-7-2, Fig. IV-10-A, Fig.IV-10-D),第3軸のスコ

アとの聞にも有意な正の相闘がみられた (rs=0.590,P<0.01, Table IV-7-2,

Fig.IV-10-B, Fig.IV-10-E)。また,マタラ稚魚が採集された海底直上の水温(OC)と地

点に関する第1軸から第4軸までのスコアを比較すると,第4軸のスコアと有意な正の

相関がみられ(rs=0.541,Pく0.01,Table IV-7-2, Fig. IV-10-0, Fig. IV-10-F),第3軸の

スコアとの聞にも有意な負の相闘がみられた(rs=-0.418,Pく0.05,T able IV-7-2)。この

109

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ように生物および非生物要因と地点に関する第2軸から第4軸までのスコアと聞の

対応関係は必ずしも一義的ではなかった。

マダラ着底稚魚の相対成長の年変動

Figu陀 IV-11にマダラ稚魚の全長一体重関係を採集年ごとに示した。求めた回帰

式の聞には共分散分析(ANCOVA)によって相対成長係数(指数部分)1こ有意差がみら

れた(P=2.4・10・り。 1991年は他の年に比べて約70mm以下の全長で体重が重く,始原

成長示数(定数部分)は8.31・1σ8と他の年よりも大きく,小型個体が太っていたことを

示している。また1991年の大型個体では1993年とほぼ同様な体重であった。 1993年

は1995年と類似した全長一体重関係であったが,すべての全長範囲で1995年に比べ

て体重が重かった。 1997年は他の年に比べて始原成長示数が最も小さく(1.32・10-6),

相対成長係数は最も大きかった(3.35)。また小型個体では1993年とほぼ同様な体重

であったが,大型個体で体重が重くなっていた。 1991年と1997年の交点は全長74mm

であった。 4年間のうちですべての全長範囲で体重が最も軽かった1995年を基準に

比較を行うと,全長55mmでは1991年, 1993年, 1997年の体重はそれぞれ+22%,+7%,

+8%であり,全長80mmではそれぞれ+8%,+4%, +12%であった。

マダラ着底稚魚の食物転換サイズ

マダラ稚魚が力ラヌス目からより大型の餌に転換するサイズと環境中のカラヌス

目の分布密度との関係を検討した。 6月の昼間,陸奥湾湾内においてカラヌス目は,

マダラ稚魚が分布する海底直上に主として分布し湾口部では海底直上よりも中層

域で分布密度が高かった(Fig.111-8)。このため湾内でNORPACネットの鉛直曳によっ

て採集されたカラヌス自の分布密度をマダラ稚魚にとって利用できる力ラヌス目の豊

度とみなし湾口部のNORPACネット資料および食物転換サイズの資料はこの解析

では用いなかった。転換全長が計算できた地点のみで回帰分析を行うと有意な相関

は認められなかったが(P=0.14),力ラヌス目の分布密度が高くなるほど転換金長が大

型になる傾向がみられた(Fig.IV-12)。カラヌス目の分布密度が湾内4地点ともに1か

104 inds.・m-2を上回っていた1991年は,閏内容物を解析した80個体のうち, Stn.13で

110

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~

JJ¥1995

991¥

5

+J

..c bO

u 主0.5〉、

てコ。∞

(〉〉

民凶)

ω℃コ一

oxc

100 60 80

length (mm) 40 Tota I

0.2 30

一一一一1991:Bwt-SCW (g)=8.31・10-6・TL2.93, N=99,戸0.968

…聞'1993:Bwt-SCW (g)=2.49・10-6・TL3.20, N=76, r=0.969

・・…・・・1995:Bwt-SCW (g)=l. 78・10-6・TL3.26, N=l 00, 戸 0.990

-ー『ー1997:Bwt-SCW (g)=1.32・10-6・TL3.35,N=218, r=0.991

Fig.IV-11. Allometric growth of Pacific cod juveniles between total length (mm) and

body weight (g, exclude stomach contents weight) in Mutsu Bay in June.

111

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95 ・・ 93• 93い.J97

95 97 97 97 95 T

97i T

103 104 105

density+1 (inds-m-2)

Shifted TL

above Maximum TL

.......... ------A

iA i91 A

ム 9191

E100

E 90

80

.」ト)

Shifted TL

Shifted TL

below Minimum TL

• V・・・・・

-91 5

9J5

E9

70

60

ωN-ω

一F

恥一工

ωWV-2-Eliz---

50

ω・』円比

40

3 0 1 02

Calanoid

Fig. IV-12. Relation between density of calanoid copepods Ondividuals per square meter)

collected by vertical hauls with a NORPAC net (O.33mm mesh) and prey shift size in

total length of Pacific cod juveniles (mm) in Mutsu Bay in June. Each prey shift size

was calculated from the maximum total length of calanoid feeder and the minimum

total length of other large-sized food feeder in each sampling station.

112

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採集された3個体(オキアミ目を主食)を除いて残りの77個体(96.3%)が力ラヌス目を主

食としており,全4地点の転換全長はいずれも71.5mm以上であった。一方1997年は湾

内で主食としていた餌生物が判定できた181個体のうち,力ラヌス目を主食としていた

個体はわずか21個体であり(11.6%),湾口部Stn.12を除く6地点の転換全長はいずれ

も61.6mm以下であった。このようにマダラ稚魚の食物転換サイズには年変化がみら

れた。

考察

マダラ着底稚魚の摂餌活動の日周性は不明陳であったが, 11 :13 -13:13に低い

SCI値がみられないことその後SCI値は徐々に低下することから,消化速度を上回る

摂餌は主に正午前に行われるものと推察される(Fig.IV-2)。稚魚の体重とSCI値との

関係をみると(Fig.IV-3), 1997年を除いて体重の増加に伴ってSCI値は減少しており,

1997年には他の年に比べて摂餌強度が高い大型個体がみられた。

マダラ稚魚の食物組成の座標づけを行った結果,各軸のスコアと固有値から6月の

マダラ稚魚の食物組成を変化させる要因は,まず第1に餌のサイズで規定され,続い

てヤムシ類やLim笠担呈属の1種,十脚類遊泳E目ゾエア幼生といった採集地点に特

異的に出現する餌生物が食物組成を大きく変化させるものと考えられる。 FigureIV-8

のD-F,J-Lをみてもわかるようにこれらの餌生物は,他の餌生物とはかけ離れて第2

軸,第3軸および第4軸のスコアで大きく,たとえばカラヌス目やGorycaeus属のように

閉じ採集年であれば地点によってあまり出現頻度が変わらない餌に比べて,突発的

に出現することが多い(TableIV-2)。これらの特異的な餌生物は,通常マダラ稚魚が

捕食する餌が環境中に豊富に存在しない場合摂餌される餌と考えられ,カラヌス目に

比べれば大型であり(Fig.ト7,Table IV-1)代替の餌生物 (alternativeprey)となり得る

が(第 I章),稚魚にとっての重要性はそれほど高くないものと考えられる。第E章で

も述べたように6月の陸奥湾においては,比較的水温が高い水域では冷水性の力イ

アシ類の豊度が相対的に低い。また,第2軸,第3軸,第4軸は,湾口部からの地理的

113

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距離や水温とも有意な相闘がみられたことから(Fig.IV-1 0),カラヌス目の豊度が低

い高水温域ではヤムシ類,Li旦笠恒豆属の1種,十脚類遊泳E目ゾエア幼生などが捕

食されやすいことを反映しているものと考えられる。

1991年のように1か 104inds.・m-2を超える力ラヌス目の分布密度に稚魚が遭遇した

場合,マダラ稚魚は餌生物を探索する時聞が少なくて済み,摂餌コストを低く抑えるこ

とができるためにカラヌス目を優先的に捕食し結果的に大型の餌に転換する体サイ

ズが大型化するものと考えられる。しかしこのようなカラヌス目の高い分布密度に稚

魚が遭遇して力ラヌス目を専食したとしても,全長およそ70mm(胃内容物を除いた体

重約2.1g)までの個体にしか有効な餌とは考えられない。なぜならこの1991年は,摂餌

強度が大型個体ほど低く(Fig.IV-3),全長一体重関係でみても全長70mm以上の個体

の体重は他の年に比べて重くはない(Fig.IVー11)。またカラヌス目を主食としていたが,

1.0・104inds.・m-2未満の分布密度で、あった1993年と1995年も,一部の大型個体を除い

て摂餌強度は大型個体ほど低く(Fig.IV-3),餌の種類に拘らず相対的に痩せており

(Fig.IVー11),結果として十分な量の摂餌を行っていたとは考えられない。一方他の年

に比べて1997年には,小型の全長で、餌を転換していたが(Fig.IV-12),約70mm以下

の小型個体は1991年のように太つてはいなかった(Fig.IV-11)。これは1997年の小型

個体にとって,その餌の大きさゆえに捕食した場合の利益は大きいが,捕食成功率

が低いかあるいは餌の消化時間を含めた処理時間(handlingtime)が力ラヌス目よりも

多く必要となるために,十分な体成長には至らなかったものと考えられる。また1997

年の大型個体で、は他の年に比べて十分太っており,カラヌス目より大型の餌を十分

捕食できた餌生物環境にあったものと考えられる。

以上をまとめると全長70mm以下の小型の稚魚にとっては力ラヌス目が餌として重

要であり,全長70mmよりも大型の稚魚にとっては力ラヌス目よりも大型の餌(たとえば

仔稚魚,十脚類遊泳E目ジュベナィJレ,ワレカラ,十脚類腿行E目歪尾族メガロパ幼

生,十脚類~行E目短尾族メガ口パ幼生,ヨコエビE目,クラゲノミ亜目などの餌生

物)が重要であると考えられる。

114

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v.マダラ仔稚魚の分布密度の年変動と生残過程

目的

第E章ではs奥湾のマダラ仔稚魚の時空間分布パターンを明らかにした。また第

W章では6月に陸奥湾に分布する着底稚魚は,稚魚の体サイズと捕食する餌生物の

違いによって栄養状態が異なることを指摘した。本章では,陸奥湾におけるマダラ仔

稚魚の分布密度の年変動(1990ー1997年)を示し,陸奥湾の海況と餌生物環境の変動

が稚魚の生き残りに与える影響を検討した。

材料および方法

マダラ仔稚魚の採集

マダラ仔稚魚の採集は第E章で述べた通りである。ただし本章ではこれらに加えて

北海道大学水産学部研究調査船うしお丸(128トン)を使用して, 1994年2月16-18日,

1994年4月18-20日 1995年4月26-28日, 1996年4月22-24日, 1997年4月21-22日に

それぞれ7回, 13回, 10回, 10回, 5回のビームトロールネットの斜行曳きによって採

集したマダラ仔稚魚を扱った。 1993年まで行ったビームトロールネットの水平曳きの

かわりに斜行曳きで採集した理由は,限られた調査船利用日数の範囲でなるべく広

範囲に分布調査を行うためである。ビームトロールネットの水平曳きと斜行曳きの違

いは,ワープの繰り出し速度と停止時間,および曳網水深にあり,船速や網の仕様な

どは同一である。水平曳では目的とする水深層まで約0.6m"sec-1の速度でワープを

繰り出し(対水速度約0.9m "sec-1),その水深層に達するとワープの繰り出しをとめて

10ー15分間曳網し(対水速度約1.5m"sec-1),再び0.6m"sec-1の速度で回収した(対水

速度約2.1m" sec-1)。これに対して斜行曳きは表層から海底上2mまで0.35m" sec-1の

速度でワープを繰り出し(対水速度約1.15m"sec-1),海底上2mで1分間停止させた後,

表層まで0.35m" sec-1の速度で回収した(対水速度約1.85m" sec-1)。水平曳きの場合

115

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着水してから回収するまでの時間は19分から27分の範囲であったのに対し,斜行曳

きは15分から26分の範囲であった。また,陸奥湾ではマダラ仔稚魚は水深8m以深で

採集されたので(Fig.11ト4),水平曳きも斜行曳きも水深8mより深い層にネットがあった

時の曳網距離と開口面積0.16m2(2月)あるいは0.90m2(4月)の値を用い,漏水率100%

を仮定して分布密度を推定した。また第E章で述べたように, 4月にはマダラ仔稚魚

が高密度に分布する水深は場所によって異なる(Fig.111-5)。そこで本章では水平曳き

の採集層による違いは無視して平均分布密度を求めた。求めた平均分布密度の精

度に問題があるかもしれないが,マダラ仔稚魚のおおよその分布密度を反映してい

るものとして解析を行った。 1990-1997年6月のマダラ稚魚の平均分布密度は第E章

で得られたオッタートロールネットによる着底曳きの値の平均である。なお, 1992年6

月と1993年2月は調査船の代船建造のために調査は行っていない。

1994年2月, 1994年4月, 1995年4月, 1996年4月, 1997年4月にそれぞれ8地点, 18

地点, 17地点, 15地点, 9地点においてCTDを用いて水温・塩分値を測定し, 2月と4月

は表層と水深15mで, 6月は表層と海底直上で採水を行い,サリノメータで塩分値を求

めた。 1991年, 1993年, 1995年, 1997年の4月および6月には CTD観測を行った地点

でNORPACネット(口径:0.45m,側長 1.8m; 目合:0.33mm)の海底直上から水面まで

の鉛直曳きによって,かいあし類力ラヌス目コペポダイ卜の採集を行った。

1975-1994年度11月......3月の脇野沢村漁業協同組合のマダラ漁獲量データ(青森

県水産増殖センター, 1995)および1995-1996年度の漁獲量(未発表)を陸奥湾に来遊

したマダラ親魚量の指標として用いた。また水温については,青森県水産増殖セン

ターlこよって観測されているテレメータブイのデータ(青森県水産増殖センター, 1976,

1979-1997)も用いた。

116

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結果

マダラ仔稚魚の分布密度の年級群変動

第四章で示した1991ー1992年2月の水平曳き採集と1994年2月の斜行曳き採集に

よって得られたマダラ仔魚の平均分布密度, 1990-1993年4月の水平曳き採集と

1994ー1997年4月に斜行曳き採集によって得られたマダラ仔稚魚の平均分布密度,

1990-1997年6月の海底上に分布する稚魚の平均分布密度と,陸奥湾脇野沢村にお

けるマダラ成魚の漁獲量の関係をFig.V-1に示した。 1994年2月には湾内で7回の採

集を行ったがマダラ仔魚は全く採集されなかった(FiιV-1-A)。また2月におけるマダ

ラ仔魚の平均分布密度は3年間でみる限り, 11-3月のマダラ成魚の漁獲量にほぼ比

例していた。 4月におけるマダラ仔稚魚の平均分布密度は, 1995年級群(1995年1-2

月生まれ)を除いて11-3月のマダラ成魚の漁獲量に比例していた(Fig.V-1-B)o 6月の

マダラ着底稚魚の平均分布密度はマダラ成魚の漁獲量とは明陳な関係がみられず

(Fig. V-1-C), 1991年6月におけるマダラ稚魚の平均分布密度は高かったが, 1990年,

1993-1997年の6月は1991年の2分の1以下の分布密度を示した。また, 6月のマダラ

着底稚魚の平均分布密度は, 4月の平均分布密度とも関連がなく(Fig.V-1-D), 1997

年は4月の仔稚魚の分布密度に比べて6月の稚魚の分布密度が高く,逆に1990年お

よび1995年は4月の仔稚魚の分布密度に比べて6月の稚魚の分布密度は低かった。

4月および6月の海洋構造の年変動と1991年, 1995年および1997年のカラヌス目の分

布密度

Figure V-2は, 1990-1997年の4月における表層の水温・塩分値の分布を示してお

り,各図中左上の数字は津軽暖流水が流入する湾口部Stn.8における表層の塩分値

を示している。また斜線部分はStn.8の塩分値よりも0.5-1.0PSU低い水域を,点を

打った水域は1.0PSUよりも低い水域を表している。各年4月の調査時期が中旬から

下旬にわたっているため水温の高低は単純に比較できないが, 1991年は他の年に比

べて明らかに低塩分の水塊が広範囲に湾内表層を覆っていた。 1995年も1991年ほど

117

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A C φ;;-40r 叩 E〉-cコ

ーg30ト

『ー

O φ20ト

てコ〉、 c~ -10ト

切 4コ三~ _1I Q¥:9ι , 山口、,

Q 三官o 500 1 ,000 1 ,500 Catch of adult cod (metric ton)

~;'101 B 'e E 0) 0 2空0,_0

oð~

g J5ト

と45豆 z

o 〉、」~a.

~<( 0) c o ....

• '91

• '92

~ '95 • '90

• '91

• '92

,'97 ~'9H,/'93

O~I~ o '¥'94 1 ,000 1 ,500

Catch of adult cod (metric ton)

(め

'EOOORF・.ω百戸』乙

ocコ勺C一

切。=co〉コ一半O

K

A

H

一ωzoo

(m'EoooJ・.ω百戸』一

)OCコ勺C一

切。=co〉コ「半O

K

A

H

一ωcoo

30 .'91

20ト

'90 1-..ーは

'94 o ;:1..,. 500 1 .000 1 .500 Catch of adult cod (metric ton)

D

30← • '91

20ト

回'97

10ト 回'95

ï ,~ ~96

05古」Density in Apr.

a.'Q01

5 10 of larvae&juveniles (inds.'1,000m-3)

Fig. V-l. Relation among commercial catch (metric ton) of Pacific cod at Wakinosawa Village

(from Aomori Prefectural Aquaculture Research Center, 1995; Aomori Prefecture,

unpublished), mean density of Pacific cod larvae with a beam trawl net in February Clnds.' 1 ,OOOm-3) , mean density of Pacific cod larvae and juveniles in April with a beam trawl net

(inds.・1,OOOm-3) , mean density of Pacific cod juveniles in June with a otter trawl net (inds.・

1,OOOm-3). Hatched characters show the samples collected by oblique tows with a beam

trawl net and solid characters show the samples collected by horizontal tows with a beam

trawl net or an otter trawl net.

118

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18-20 Apr. 1994

14-16 Apr.J992

Fig. V-2. Horizontal distributions of water temperature and salinity at the

surface in April 1990-1997. Each numeral in italic shows the salinity at

Stn. 8 (off Tairadate). Hatched area shows the area 0.5-1.0PSU lower

than the salinity at Stn. 8 and doUed area shows the area >1.0PSU lower than the salinity at Stn. 8.

119

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ではないが低塩分水が観測された。 6月の表層と海底直上の水温・塩分値の水平分

布をみると(Fig.V-3), 1991年6月は1991年4月と同様に東湾を中心として表層域で低

塩分水がみられ,海底直上でも相対的に低い塩分値が観測された。このことは1991

年の場合6月になっても湾内水と津軽暖流水の交替量が少なかったことを示している。

1991年4月の湾内表層の塩分値は他の年に比べて平均0.99PSU低く(Fig.V-2),表層

と15m層の密度差(σt)も平均0.78と大きかったが, 1991年を除く4月の平均密度差

は-0.02から0.39の範囲であった(Fig.V-4)。第E章で述べたように, 1991年冬季は前

年秋の降水量によって(Fig.11-14),津軽暖流水と湾内水の聞の海水密度の差が小さ

くなり(Fig.11ー13),津軽暖流水と湾内水の交替量が少なく, 4月以降も低塩分水が湾

内の表層に停滞したために(Fig.V-2)強い成層が維持され,表層は加熱されたが底

層は逆に昇温し!こくかった。結果として1991年6月の海底直上の水温は他の年よりも

およそ1.5-2.00C低くなったと考えられる(Fig.V-3)。

全長70mm未満のマダラ稚魚の重要な餌生物であるかいあし類カラヌス目(第 I

章,第W章)のうち,最も分布密度が高かったPseudocalanus属コペポダイトの分布密

度をFig.V-5fこ示す。 1991年4月の分布密度は1990年, 1993年 1995年および1997年

に比べて湾口部・湾内ともに分布密度が低かった。しかし6月には4月とは逆に1991年

に分布密度が高く,他の年は低い値を示した。

考察

第E章では, 1991年2月と1992年2月における体幅67.5-195μmのかいあし類ノープ

リウスの分布密度は20inds..g-1を上回っており,マダラ仔魚の生残にとって十分な分

布密度と考えられた。しかし1992年1月には13-15inds..g-1と低く,仔魚の生残にとっ

て十分な分布密度であるか否か結論を下せなかった。陸奥湾脇野沢村におけるマダ

ラ成魚の漁獲量と2月のマダラ仔稚魚の平均分布密度はわずか3年分ではあるが比

例関係がみられた(Fig.V-1)o 1995年4月にはPseudocalanus属(Fig.V-5)をはじめとす

るカラヌス目の分布密度が他の年に比べて高かったことは, 1995年の高い仔稚魚分

120

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80 ttom

22-24 June1993

Fig. V-3. Horizontal distributions of water temperature and salinity at the

surface (left) and on the boUom (right) in June 1990-1991 and 1993-

1997. Each numeral in italic shows the salinity at Stn. 8 (0汗 Tairadate).

Hatched area shows the area 0.5-1.0PSU lower than the salinity at Stn. 8

and doUed area shows the area >1.0PSU lower than the salinity at Stn. 8.

121

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4-6 June 1996

s urface

3-6 June 1997

Fig. V-3. (cont.)

122

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2.5 Surface-15m depth in Apr. 2.0

Tli門γよ

1.5

1.0

0.5

'92 '93 '94 '95 '96 '97

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4.0

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'90 '91

0.0

-0.5

3.0

2.0

1.0

'92 '93 '94 '95 '96 '97 '90 '91 0.0

Fig. V-4. Annual fluctuations of the differences in sigma-t (kg. m-3) between surface and

15m depth in April and between surface and bottom in June. Each square shows

the mean and each vertical bar shows the range.

123

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HNhH

x:O一叩…0∞0.0:ω:Density (inds."m一2)

Fig. V-5. Horizontal distribution of Eseudocalanu~ spp. collected by vertical hauls with a NORPAC net (0.33mm mesh) in

April and June. Mean densities are shown at bottom right corners in panels. Data in 1990 was quoted from T akatsu

豆主主L1992.

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布密度と関連があるのかもしれないが, 4月以前の調査を行っていないので明らかで

はない。この1995年を除いた4月のマダラ仔稚魚の分布密度は成魚の漁獲量に比例

しており,マダラ成魚の漁獲量が多い年に4月の仔稚魚の分布密度が低い事例は,

1990-1997年の8年間では全く観測されていなし、。このことは少なくとも調査を行った

期間については,冬季陸奥湾のノープリウス分布密度はマダラ後期仔魚に飢餓を生

じさせるような低い分布密度ではなかったものと考えられる。また1990-1997年の冬

季から4月までの陸奥湾では,マダラ仔稚魚の生残に極端に不利な条件がみられな

かったことを意味し年級群変動を生じさせる原因は4月よりも後の時期にある可能

性が高いものと考えられる。

1995年と1997年の4月と6月の調査はほぼ同じ時期に行われた(4月から6月の経過

日数は1995年:42日 1997年:45日)。また両年6月における稚魚の分布密度が最も

高かった地点は東湾にあったことから湾外へ移動している稚魚は少なく(Fig.111-9),両

年のマダラ仔稚魚の4月から6月にかけての分布密度の低下過程の差違は,ほぼ生

残率を反映しているものと考えられる。第IV章でアロメトリー式(Fig.IV-11)から求めた

栄養状態は, 1997年6月の大型個体の体重が重く,逆!こ1995年は4年のうちで最も摂

餌強度が低く全長に対する体重が軽かった。また, 1997年は4月の仔稚魚の分布密

度に比べて6月の稚魚の分布密度が高く(Fig.V-1-D), 逆に1995年は4月の仔稚魚

の分布密度に比べて6月の稚魚の分布密度は低かった。したがってマダラ稚魚が餌

をカラヌス目からより大型の餌に転換するサイズが小さいほど栄養状態がよく(第W

章),栄養状態から生残率を推定できる可能性を示すものとして重要と考えられる。

1991年級群(主!こ1991年1-2月生まれ)が,陸奥湾産卵群の主群をなす4-5歳魚

(桜井・福田, 1984)となって陸奥湾に回帰したと考えられる1994年度(1994年11

月一1995年3月)と1995年度の脇野沢における漁獲量はそれぞれ88トンと62トンであり,

さらに1996年度には戦後最低の12トンを記録した(緒言Fig.1)。すなわち, 1991年級群

の着底稚魚の分布密度は高かったが,その後の生き残りがよかったとは考えられず,

6月以降の生残過程にも年級群変動を引き起こす要因があることが示唆される。マダ

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ラ稚魚が餌を底生性の大型生物に転換したあとは,低温でしかも広い海域を利用で

きると思われる湾外にいかに早〈移動できるかが生き残りの鍵となる。しかし,陸奥湾

の湾口部は狭隆で浅く,高温の津軽暖流水に曝されている。平舘ブイが記録する底

層のデータ(半旬ごとの平均値)によると,湾口部底層の水温が120Cを超える時期は

年によって異なっている(Fig.V-6)。年級群豊度が高く,その後の高水準の漁獲量に

つながったと考えられる1984-1986年級群が成育した年は少なくとも湾口部の水温上

昇が遅かった年であり,マダラが湾外へ移動するのに適した水温期聞が長いことが,

その後の生き残りに有利に働いた可能性がある。 1991年6月の東湾は他の年に比べ

て低水温であったが(Fig.V-3), 6月上旬の湾口部平舘フ、イの水温は対馬暖流水と連

動して平年と同様に100C以上であった(Fig.V-3, Fig. V-6)。このように, 1991年6月の

マダラ稚魚の平均分布密度は1990年以来最高の値を示したが湾外への回遊経路

に当たる津軽海峡の高温が障壁となって生残率が低下したのかもしれない。

寒海性魚種のうちで初期生残過程が重点的に研究されているスケトウダラでは,

当歳稚魚の死亡率が加入量に影響を与える年もあるが,摂餌開始期から仔魚期の

終わりまでの死亡率が最も加入量に影響し,この時期の仔魚の移送,降水量に起因

する傾圧不安定渦の存在,風による表層での乱流が主な原因と考えられている

(Megrey旦豆ュ 1996;Kendall旦豆ュ 1996)。しかし,陸奥湾のマダラの場合,年級群変

動を生じさせる死亡率変動が大きい時期は4月以前の仔魚期にはなく, 4月以降の着

底期とそれに続く湾外への移動過程における海洋環境と餌生物環境が年級群強度

を決定しているのではないかと考えられる。陸奥湾のマタラ稚魚にとって最も生残に

有利な条件は,全長70mmまではかいあし類力ラヌス目の豊度が高く,その後は餌と

する底生大型生物に遭遇する確率が高いことであろう。また低い水温は力ラヌス目の

豊度を高〈維持するが(Fig.V-3, Fig. V-5), 120Cを超える水温と急激な水温上昇は稚

魚にとって不利であると考えられる(Fig."'-9)。マダラの再生産戦略として12月以前に

産卵を終了すれば稚魚期の高水温を避けられるが,陸奥湾湾口部の水温は11月末

までは例年120Cを超えており,親魚が湾内に回遊できる水温環境にはない。このよう

126

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Feb. I Mar. Apr. May June July

611234561123456112345611234561123456

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o :10.1-12.0oC, 三三:>12.10C

Fig. V-6. Water temperatures at 45m depth of a station 0仔 Tairadate by five days from

February to July in 1977-1995 (Aomori Prefectural Aquaculture Research Center,

1979-1997).

127

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な水温環境は,別の見方をすれば,陸奥湾がマダラの産卵場としてほぼ南限に位置

することを示す証拠とも考えられる。

最近では摂餌開始期などの短期間における大量死亡よりも,一定期間継続する累

積死亡率のほうが年級群豊度を決定する重要な要因であり,成長速度が早ければ

累積死亡率を低く抑えることが可能であるとし巧仮説が提唱されている(Watanabeet

ι1995; Campana, 1996; Meekan and Foはier,1996)。陸奥湾におけるマダラの初期

生活期において累積的死亡と年級群豊度との関係は,着底期以降の減耗過程が大

きく作用するものと考えられるが,今後相対成長だけでなく耳石の微細構造解析に基

づく絶対成長の評価を行うことで明らかにする必要があるものと考えられる。「海の安

定度仮説(Lasker,1975)Jは外洋域において植物プランクトンの成層が維持されると仔

魚の生残率が高まるという仮説であり,いわば鉛直的な仔魚と餌とのマッチ・ミスマッ

チを中心に考えており,摂餌開始期に注目している点で陸奥湾のマダラについて適

用することは難しい。「被食仮説(Vander Veer, 1985; Van der Veer and Bergman,

1987;卜loude,1987)Jは生残率が仔魚期あるいは稚魚期の被食量に依存し,捕食者と

の時空間的なマッチ・ミスマッチを問題とする。「卵質仮説(附esbuet al., 1996;

Solemdal, 1997)Jは,生残率の高い卵および大型の仔魚を産む高齢魚は産卵期の初

期に偏って産卵し,高水温年には初期餌料であるかいあし類ノープリウスも産卵期の

初期に分布密度が高いため,結果として高水温年に発生した年級群の豊度が高くな

るという仮説である。これらの仮説を陸奥湾のマダラについて検証するには,マダラを

捕食する生物の特定と,親魚の年齢構成や産卵履歴の違いによる卵・仔魚の質の違

いを調査する必要があり,現時点で評価することはできない。また今後は稚魚が湾外

へ移動した後の減耗要因を解明する必要がある。

128

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要約

陸奥湾に出現するマダラGadusmacrocephalus仔稚魚の時空間分布,食性,餌生

物環境を調べ,マダラの資源量変動機構の解明を試みた。

1.全長7mm以下のマダラ後期仔魚が初期餌料としてかいあし類ノープリウス,特に

Pseudocalanus属および旦虫盟主属のノープリウスを捕食し,その体幅範囲が

67.5-195μmであることを明らかにした。

2.全長7ー70mmの仔稚魚はかいあし類カラヌス目コペポダイトを, 70mm以上の個体

は端脚類ヨコエビE目と魚類を主に捕食した。浮遊性巻貝,十脚類遊泳亜目ゾエ

ア幼生,十脚類腿行E目短尾族メガロパ幼生といった大型餌生物は,主要餌生

物が力ラヌス目からヨコエビE目や魚類に転換する間,代替の餌生物として重要

な役割を果たしているものと推察された。

3. 1991年および1992年冬季の陸奥湾において,マダラ仔魚の初期餌料であるかい

あし類ノープリウス(体幅:67.5-195μm)の空間分布を調査し湾内では表層域で,

湾口部は密度躍層内で分布密度が高いことを明らかにした。

4.ノープリウスの分類群組成は採集年によって大きく異なり I 1991年2月には

Centropages属がI 1992年1-2月は型血盟呈属ノープリウスが優占した。このような

違いはかいあし類分類群による再生産戦略の違いと,陸奥湾に流入する津軽暖

流水の流入量の違いに起因することを明らかにした。

5. 1992年 1月水深 10m層におけるノープリウスの分布密度は中央値で

13.3-14.7 inds..g-1と幾分低かったがI 1991年2月と1992年2月の水深15m層におけ

る中央値はそれぞれ22.4inds..g-1と32.8inds.' g-1であり,両年2月のこれらの値は

マダラ仔魚の生残にとって十分な分布密度と判断された。

'6. 2月および3月には,マダラ前期仔魚と小型の後期仔魚は湾口部で採集されたこと

から,陸奥湾ではマダラの産卵は主に湾口部で行われているものと推察された。

また,湾口部海底上で瞬化した仔魚は中層域へ浮上することで,十分な餌密度を

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獲得するだけではなく,密度躍層よりも上層を占める津軽暖流水を利用して餌密

度の高い湾内へ移動していた。

7. 4月にはマダラ仔稚魚は湾内に広く分布し主要餌生物であるかいあし類力ラヌス

自コペポダイトの分布密度が高い水深層に分布し,カラヌス自の高い豊度を通じ

て陸奥湾を成育場として利用することが確認された。

8. 5月以降のマダラ稚魚は昼間力ラヌス目コペポダイトの分布密度が高い海底直上

に分布し,稚魚の分布密度が高い水域には採集年による変動がみられた。また,

マダラ稚魚の体長組成の地理的変異から,産卵期の早い時期と遅い時期に産ま

れた個体は主に西湾と湾口部に出現し中間的な時期に生まれた個体は主に東

湾に分布する移動過程を推定した。マダラ稚魚の生息上限水温は約120Cと推定

され, 6月以降湾内の高水温と餌不足を避けて湾外へ移動するものと考えられた。

9. 1991年, 1993年, 1995年にはマダラ着底稚魚の体重の増加に伴って胃内容物重

量示数(SCI)は減少していたが, 1997年には他の年に比べて摂餌強度が高く,大

型の餌を捕食する割合が高かったことを明らかにした。

10.対応分析を用いてマダラ着底稚魚の食物組成の座標づけを行った結果,食物組

成を変化させる要因は,まず第1に餌のサイズで規定され,続いてヤムシ類や浮

遊性巻貝Limacina属の1種,十脚類遊泳E目ソ‘エア幼生といった採集地点に特異

的に出現する餌生物が食物組成を大きく変化させるものと考えられた。

11.マダラ着底稚魚、が力ラヌス目から大型の餌生物に転換する全長は,年によって差

がみられ, 1991年のように力ラヌス目の分布密度が1.0・104inds.. m-2を超える場合

には餌の転換は大型の体サイズで生じたが,逆に1997年には小型の全長で餌を

転換していた。

12.着底稚魚の全長一体重関係の相対成長式(アロメトリー式)と食物組成を比較した

結果,全長70mm以下の小型の稚魚、ではカラヌス目が餌として重要であり,全長

70mmよりも大型の稚魚ではより大型の餌(仔稚魚,十脚類遊泳E目ジュベナイjレ,

ワレカラ,十脚類随行E目歪尾族メガロパ幼生,十脚類腿行亜目短尾族メガ口パ

130

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幼生,ヨコエビE目,クラゲノミ亜日などの餌生物)が重要であると考えられた。

13.陸奥湾脇野沢村におけるマダラ成魚の漁獲量と, 2月のマダラ仔稚魚の平均分布

密度との聞には比例関係がみられ,成魚の漁獲量と1995年を除いた4月の仔稚

魚の分布密度との聞にも比例関係が認められた。マダラ成魚の漁獲量が多いに

もかかわらず4月の仔稚魚の分布密度が低い年は, 1990ー1997年の8年間では全

く観測されなかった。これらの結果から,冬季から4月までの陸奥湾ではマダラ仔

稚魚の生残に極端に不利な条件はほとんどなく,年級群変動を生じさせる原因は

4月以降にあると推定した。

14.1995年と1997年のそれぞれ4月と6月におけるマダラ仔稚魚の分布密度と相対成

長式の比較から,大型個体の栄養状態が良かった1997年の方が1995年に比べて

生残率も高かったものと推定した。また,全長70mmまで、はかいあし類カラヌス目

の豊度が高く,その後は餌とする底生大型生物に遭遇する確率が高いことが生き

残りに重要であると考えられた。

15.過去のマダラ成魚の漁獲量とマダラ稚魚が湾外へ移動する時期の湾口部底層水

温の年変動データから,マダラが湾外へ移動するのに適した水温期聞が長いこと

が,稚魚の生き残りに有利に働く可能性を示した。

今後は資源量変動を説明する様々な仮説を検証するために,マダラ仔稚魚の相対

成長だけでなく耳石の微細構造解析に基づく絶対成長の評価,マダラ仔稚魚を捕食

する生物の特定と,親魚の年齢構成や産卵履歴の違いによる卵および仔魚の生残

率の違い,稚魚が湾外へ移動した後の減耗要因を解明する必要があるものと考えら

れた。

131

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謝辞

本論文を取り纏めるにあたり,終始御指導をいただき御校闘を賜った北海道大学

水産学部高橋豊美教授,同菅野泰次教授,中谷敏邦助教授,本研究をはじめる機

会を与えて下さった同前田辰昭名誉教授,貴重な御意見を賜った同池田勉教授,

磯田豊助教授,村上敬教官に対して,深甚なる謝意を表する。また,貴重な標本

を提供していただいた青森県水産増殖センター早川豊氏,塩垣優博士,涌坪敏明

氏,松原久氏をはじめ,同センターの各位,青森県水産試験場の各位に対して心か

ら御礼申し上げる。洋上での採集に多大な御協力をいただいた北海道大学水産学部

練習船おしょろ丸元船長増田紀義名誉教授はじめ1991年当時の乗組員の方々,同

研究調査船うしお丸元船長松島寛治教官ならびに船長大越金蔵教官はじめ乗組員

の方々,青森県水産増殖センター調査船なつどまりの乗組員の方々,北海道大学水

産学部漁場学講座・資源生態学講座元大学院生横山信一博士藤岡崇氏,武藤

卓志氏,宮本孝則氏,軍司康博氏,大矢正樹氏,筒井浩之氏,羽生勝和氏,高

木繁郎氏,津村正幸氏,松本明男氏,伊勢諭至氏,高木(佐々木)美枝子氏,吉田

裕幸氏漁具漁法学講座元大学院生米沢崇氏,現資源生態学講座大学院生井口

謙氏,小岡孝治氏,杉本晃一氏中神正康氏鈴木祐輔氏蜜谷法行氏梅崎真大

氏の各氏ならびに昭和63年度~平成10年度講座学生諸氏に対して,厚〈感謝の意を

表する。

132

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