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官庁会計事務データ通信システム(ADAMS) 刷新可能性調査報告書 平成17年3月25日 財務省会計センター

官庁会計事務データ通信システム(ADAMS) 刷新 …4.官庁会計事務データ通信システム (2)システム見直しのための行動計画 イ. システム刷新可能性調査の実施

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官庁会計事務データ通信システム(ADAMS)

刷新可能性調査報告書

平成17年3月25日

財務省会計センター

目 次

1.調査報告の背景-------------------------------------------------------------------------------------- 01

2.刷新可能性調査の概要----------------------------------------------------------------------------- 03

3.刷新可能性調査の各項目への対応-------------------------------------------------------------- 04

(1)安全性及び信頼性、セキュリティ、効率性----------------------------------------------- 04

(2)現行システムの経済性-------------------------------------------------------------------------- 05

(3)システム見直しの可能性----------------------------------------------------------------------- 09

(4)データ通信サービス契約の見直し----------------------------------------------------------- 20 (5)ハードウェアとソフトウェアのアンバンドル(分離調達)化----------------------- 26 (6)システム見直しの経済性----------------------------------------------------------------------- 30

4.オープン化スケジュール-------------------------------------------------------------------------- 35

本報告書では、複数の文献から引用を行っていますが、引用に際しては原文に手を加

えることなく行っています。

1. 調査報告の背景 本報告書は、官庁会計事務データ通信システム(以下、「ADAMS」

*1という。)について、「財務省電子政府構築計画(平成15年7月17

日)」*2で定められた「レガシーシステム見直しのための財務省行動計画

(アクション・プログラム)*3(以下、「財務省アクション・プログラム」

という)」に基づき、システムの刷新可能性調査を実施した結果を取りま

とめたものである。 調査は、ADAMSと関係のない外部の第三者である新日本監査法人

及び中央青山監査法人にコンサルティングを委託し、財務省アクショ

ン・プログラムの各項目の中から、現行システムの経済性、システム見

直しの可能性及びシステム見直しの経済性について調査、分析及び評価

を実施する方法で行われた。 調査の参考資料として、ADAMSの費用対効果に係る委託調査の報

告書である「官庁会計事務機械化の効果に関する分析・評価(平成16

年3月31日、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所(以下、「N

TTデータ経営研究所」という)」及び会計センターが株式会社エヌ・テ

ィ・ティ・データ(以下、「NTTデータ」という)の協力を得てADA

MSの刷新可能性を調査するための資料として最新技術動向等の調査結

果を取りまとめて作成した「ADAMSオープンシステム化に関する調

査資料」を提供した。 本報告は、委託先二者から提出されたコンサルティング報告書を基に

して、ADAMSの刷新可能性について総合的に取りまとめたものであ

る。 *1 官庁会計事務データ通信システムの略称について ADAMS (アダムス)

Governmental Accounting affairs Data Communication Management Systems *2 各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定、財務省行政情報化推進委員会了承 *3 「財務省電子政府構築計画」(抜粋) Ⅱ IT 化に対応した業務改革 1 業務・システムの最適化

(略) また、旧式(レガシー)システムについては、業務・システムの最適化の一環として、「レガシー

システム見直しのための財務省行動計画(アクション・プログラム)」(別添 2)に基づき、必要な

見直しを行う。 (別添2) レガシーシステム見直しのための財務省行動計画(アクション・プログラム)(抜粋)

1

4.官庁会計事務データ通信システム (2)システム見直しのための行動計画

イ. システム刷新可能性調査の実施 2004年度(平成16年度)を目途に、当該システムと関係のない外部専門家によるコンサルティ

ングを活用してシステムの刷新可能性調査を実施し、その結果を公表する。 本調査は、以下の点を踏まえ、実施するものとする。

(イ) 安定性及び信頼性 国庫会計システムとしての重要性を踏まえ、安全性及び信頼性確保の観点から、現行システ

ムの構成(ハードウェア、ソフトウェア、データベース、ネットワーク及び開発・運用環境等)及び

その運用状況を検証する。 (ロ) セキュリティ

データのバックアップを含め、セキュリティ確保の観点から、現行システムの構成及びその運

用状況を検証する。 (ハ) 効率性

会計事務のフロ-(流れ)及びその業務量を踏まえ、現行システムの構成が効率的かつ合理

的なものとなっているかについて検証する。 (ニ) 現行システムの経済性

データ通信役務契約について、使用料の算定方法の妥当性を検証するとともに、契約方式を

変更する場合の課題及び問題点について検討する。 併せて、汎用コンピュータ及び専用端末を使用している現行システムについて、オープンシス

テム化等への移行の可能性を検討する。 (ホ) システム見直しの経済性

費用対効果の観点から、現行システムを見直すことにより、どのような改善効果が得られるかを

検討する。

2

2. 刷新可能性調査の概要 ADAMSは、主として予算の執行から決算の過程における会計事務

を電子情報処理組織を使用して処理することによりその効率化等を図る

とともに、関係情報の迅速な把握により適切な財政運営に資することを

目的としたシステムとして、昭和52年度以降数次に渡る機械化計画が

進められた。独自処理官署を除く全官署にADAMS導入が図られる見

通しとなったことから、平成15年度のシステム更改時期に合わせ、国

の決算作成まで統一的に処理できる官庁会計事務処理体系の確立を図る

ことを目標として、平成9年の「会計事務機械化長期計画ガイドライン」

から平成14年度の「会計事務機械化次期ADAMSの概要」までの各

年度において、会計事務機械化長期計画専門部会を設置し次期計画につ

いて検討のうえ、各府省会計課長等で構成される会計事務電子化連絡協

議会の了解を得て、4次ADAMSに関する検討及び開発を行ってきた

ところである。 したがって、今回の刷新可能性調査の内容としては、

① システムに関する技術や性能の向上に伴うレガシーマイグレーショ

ンの可能性 ② システムの利便性を低下させることなくライフサイクルコストを低

減させるシステム構築の可能性 ③ データ通信サービス契約から競争性、透明性及び公正性のある契約

形態への見直し ④ ハードウェアとソフトウェアのアンバンドル(分離調達)化の可能

性 を主な課題としたところである。

また、ADAMSの信頼性・安全性及び効率性の向上の観点から、シ

ステム運用状況を正確に把握するため、本年1月から経済産業省策定

「システム監査基準」に準拠したシステム監査(運用監査)を新日本監

査法人に委託し、本年3月末を報告期限とした監査を実施中である。

3

3. 刷新可能性調査の各項目への対応 財務省アクション・プログラムに定められた各項目ごとに実施した刷

新可能性調査の結果は次のとおりである。 (1)安全性及び信頼性、セキュリティ、効率性

4次ADAMSについては、基本検討終了段階の平成12年度にシス

テム監査(計画監査)を実施し、「第四次機械化計画に係る官庁会計事

務データ通信システムのシステム監査報告書(平成12年12月8日、

監査法人太田昭和センチュリー)」により、システムの安全性、効率性、

信頼性、可用性、有効性などの面についての問題点の分析・評価が行わ

れ、その結果、明確にされた改善指摘事項については必要な改善策を講

じた上で開発されたところである。 当該監査報告書では、基本検討の内容は極めて詳細かつ優良なもので

あると判断*4されており、かつ今回のコンサルティングにおいても現

行システムの構成(ハードウェア、ソフトウェア、データベース、ネッ

トワーク及び開発・運用環境等)をベースとしたシステム構成の刷新可

能性が検討されていることからも問題は見られない。 現行システムの運用状況については、システム監査(運用監査)を実

施中であり、その監査結果を待って整理する。

*4

監査法人太田昭和センチュリー 平成 12 年 12 月 8 日

「第四次機械化計画に係る官庁会計事務データ通信システムのシステム監査報告書」(抜粋)p11

2.システム監査結果

2.1 総括意見

今回のシステム監査は、第四次機械化計画に係る官庁会計事務データ通信システムに関し、

基本検討終了段階を監査点として、主として、基本検討書にあたる「ADAMS4次システム提案

書」及びその要件書にあたる「第四次機械化計画の検討結果報告」を対象として、これら関連ドキ

ュメントに記述された企画内容のレビュー並びに大蔵省会計センター及び株式会社 NTT データ

の管理責任者及び担当者へのインタビューによって実施されました。

(略)

その結果、基本検討の内容は極めて詳細かつ優良なものであると判断いたしました。

4

(2)現行システムの経済性 現行システムの費用対効果については、「官庁会計事務機械化の効果

に関する分析・評価(平成16年3月31日、NTTデータ経営研究所)」

の中で、定量的効果としては投入費用総額1,821億円に対し導入効

果2,101億円で効果が費用を280億円(1.15倍)上回ってい

ると推定されている*5。この調査結果については、今回のコンサルテ

ィングにおいて、客観的な評価を行い、費用対効果の妥当性について検

証を実施し、総じて合理的かつ妥当なものであると報告*6されている。 また、今回のコンサルティングでは、「費用の内容については業者の

見積内訳書における費目について、重複や漏れがなく妥当である。」と

の検証結果*7も得ている。 *5

NTT データ経営研究所 平成 16 年 3 月 31 日

「官庁会計事務機械化の効果に関する分析・評価」(抜粋)p49

第 3 章 ADAMS 導入における費用対効果

(1)全体的な費用対効果

(a)複数年度に渡る総額ベースでの費用対効果

①全体

第 1 次システムの運用開始年度である昭和 52 年度から、第 4 次システムの運用終了予定の平

成 22 年度までの 34 年間に渡る ADAMS 導入における費用対効果を金額換算したところ、導入

効果は総額 2,101 億円であり、投入費用は 1,821 億円であった。

ADAMS 導入による費用対効果の比率(導入効果÷投入費用)で見ると、導入効果は投入費

用の1.15倍である。導入効果から投入費用を差し引いた金額(導入効果-投入費用)は、効果が

費用を 280 億円上回っていることから、ADAMS 導入による効果は投入費用を大きく上回ってい

ることが認識された。

*6

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅠ-1,2,5,10

Ⅰ 現行システムの経済性の分析

1.現行システムの費用対効果の妥当性の調査

ここでは、NTT データ経営研究所が作成した「官庁会計事務機械化の効果に関する分析・評

価(平成 16 年 3 月 31 日)」について、その分析方法及び評価内容が妥当かどうかを検証してい

る。

1.1 調査分析方法の妥当性

5

1.1.1 分析モデルの妥当性

(4) 分析モデルの妥当性に関する評価

分析モデルの基本的なフレームワーク、調査対象の費用項目及び効果項目の内容は、合理的

かつ妥当なものであり、特別な問題点は見当たらない。

1.1.2 実態調査方法の妥当性

(3) 実態調査方法の妥当性に関する評価

アンケート調査におけるサンプリング数、調査項目、インタビュー調査によるアンケート調査の補

完など実態調査の方法と内容は、合理的かつ妥当なものであり、特別な問題点は見当たらない。

1.2 費用対効果の妥当性に関する検証

1.2.1 定量的な費用対効果の内容

(11) 定量的な費用対効果分析の内容に関する評価

定量的な費用対効果分析は、第 1 次システム運用開始年度である昭和 52 年度から、第 4 次シ

ステムの運用終了予定の平成 22 年度まで 34 年間に渡る ADAMS の費用対効果を金額換算し、

それを大別して次の切り口で分析している。

① 経年別の分析

② 運用システムの世代別の分析

③ 経年別、世代別の増減要因の分析

④ 分析における変動要素

⑤ 官署等の分類別に整理した各種分析

⑥ ADAMS 活用による費用対効果の構成要素等の分析

これらの定量分析は、次の理由から合理的かつ妥当であり大きな問題は見当たらないと考え

る。

・期間、システムの世代(バージョン)、主要システム構成、処理事務(主要機能)、システム利

用対象(府省、官署等)など、一般的にシステムの定量的な費用対効果を行う上での分析が、

要素別に行われており、重大な漏れは見当たらない。

・各種分析結果内容において、問題となるような不整合はない。

・さまざまな変動要素について分析が行われている。

また、ADAMS 導入により新たに発生した費用分析を行っており、費用として見なす項目(費

目)について、大きな漏れは見当たらない。

ただし、今後のため、次の点で留意が必要である。

・この費用対効果分析結果をベースに、今後は、システム評価を継続的に実施することが望

まれる。

・分析は、第 4 システム運用期の最終年度予定である平成 22 年度までの予測値を含んでい

る。これ自体は妥当であると考えられるが、今後のシステム評価の中で実績と比較すること

が望まれる。

6

なお、上述した通り、これらの定量的な費用対効果の分析は、アンケートによる実態調査の集計

結果の数値に基づいて行われている。したがって、第三者として、その正当性を検証するため、次

の資料を閲覧することによって、当分析及び調査等分析に関わる作業が真摯に実施されたことを

確認した。

・調査後に回収された調査票の現物サンプル

・「処理事務別・経年別の費用対効果(総額ベース算出基礎と位置づけられる)」を作成する

基となった資料(集計表)

中央青山監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)p32

Ⅱ.調査内容

1.現行システムの経済性の分析

(1)現行システムのコスト

(略)

ハードは、その構成により、コストが異なるため、一概に比較できない面がある。ADAMS は、レ

ガシーとはいいながらも、現在のようにネットワーク社会が成熟する以前に構築された通信システ

ムであり、開発時点の通信システムの信頼度等を勘案すると開発当初のコストについては単純な

現状との比較が困難な面がある。また、現行システムは、唯一統合化された国庫支払システムで

あり、各府省の帳票への対応、分析等の多くの作業ステップがあり、ADAMS 創設当時からのソフ

トウェアを引き継いでいることから、通常のソフトウェアのプログラミング費用よりも高額になっている

ことは否めない。

現行システムとベンチマークする適当な事例が国内に見当たらないことから、現状については、

このコストを所与のものとして、オープン化により、コスト削減が可能か否かの検討をする。いずれ

にしてもこれらのコストは既に支出が決定された埋没原価であり、また、過去の調査で手作業から

ADAMS 導入による作業時間の削減効果がそのコスト回収を可能にしていることが実証されてい

る。

*7

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅠ-13

Ⅰ 現行システムの経済性の分析

1.現行システムの費用対効果の妥当性の調査

1.2.3 費用の妥当性

費用の妥当性について、第4次 ADAMS のデータ通信サービスに関する見積書を閲覧し、費

用項目についてレビューを行い、漏れや重複がなく、常識的な内容であることを確認した。主要な

内容は、次のとおりである。

7

月額使用料は、センター設備使用料、端末設備使用料及び回線使用料から構成されてい

る。

センター設備使用料は、ハードウェア使用料、ソフトウェア使用料及びビル使用料から構成

されている。

ハードウェア設備使用料は、創設費(物品費、設備工事費及び諸掛費)に基づく創設費回収

額、保守費、利子、租税公課、継続利用する磁気ディスク使用料などから積算されている。

ソフトウェア使用料は、創設費(工費及び諸掛費)に基づく創設費回収額、保守費、利子など

から積算されている。工費には、人件費のほかに、コンピュータ機器、回線、ツール、消耗品、

ビル使用料などソフトウェア開発に必要な費用が含まれている。

ビル使用料は、バックアップセンターに関するマシン室及び電力室の使用料、電力設備料、

電気料が積算されている。

8

(3)システム見直しの可能性 総論としては、ADAMSをオープンシステム化する可能性はある。

ただし、そのためには各府省の業務・システム最適化及び行政インフラ

(霞が関WAN及び各府省LAN等)見直しとの整合性を調整する必要

があり、かつ年々進化を続けているオープンシステム分野であることか

ら、稼動時に陳腐化させないよう技術革新への対応方針を策定しておく

必要もある*8。 システム構成要素毎のオープン化実現方式を整理すると以下のとお

りとなる。 ① センター構成

メインフレームを中心とした集中型のシステムから複数のサー

バを1箇所の拠点に集中配置する構成*9とする。 なお、オンライン処理とバッチ処理を効率的に実施するための

サーバ配置や処理方法、APサーバやWebサーバの負荷分散等

について更に詳細に検討する必要がある*10。 ② ネットワーク

ADAMSは、商用の専用回線(フレームリレー網、ISDN、

ATMほか)を使途目的別に使い分けている。 最適化ガイドラインでは霞が関WAN、各府省LAN及び総合行

政ネットワーク(LGWAN)を活用するとされている*11が、

その場合には単一の端末から複数のシステムを利用することにな

り公衆網に接続する場合と同様のリスクがすべて存在するため、

利用者の利便性を損なうことのないよう配慮しつつ、万全なセキ

ュリティの対策及び管理が必要*12である。 なお、霞が関WAN及び政府認証基盤(GPKI)については、

平成16年度末までに最適化計画が策定*13されることとなって

おり、また、各府省ネットワークについては、平成17年度末ま

でのできるだけ早期に最適化計画が策定*14されることとなって

おり、それらの検討の状況に応じて要望を出すなどの調整が必要

である*15。 また、行政インフラが必要なセキュリティ要件を満たしていな

い場合には専用回線との併用などによる段階的移行などについて

関係機関との調整を図ることとなる*16。 具体的なセキュリティの対策及び管理として考慮する点は以下

のとおり*17である。 ・ 内部ネットワークへの不正侵入の防止のためのファイアウォ

9

ールや侵入検知システムの設置 ・ 帯域制御などによるアクセスコントロール対策 ・ 接続状況を監視するためのアクセスログ取得機能 ・ Webベースでの利用を想定しているため、暗号化通信(S

SL)による情報保護や利用者認証へのワンタイムパスワード

やバイオメトリクス(生体認識)の採用 ・ GPKIのインフラを利用した本人確認や官職証明の取得 ・ コンピュータウイルス等による被害の防止のためのソフトウ

ェアの採用 ③ 端末

最適化ガイドラインでは情報システムを利用する職員のコンピ

ュータ端末は各府省で整備されるLANの利用端末を用いること

とされている*18が、パソコン及びプリンタについては正常な動

作環境の継続的な確保が大きな前提となり、各府省のパソコンの

搭載OS及び環境設定やスペック等がADAMSのアプリケーシ

ョンの正常な実行に対して大きな影響を与える可能性が高く、こ

れらの情報交換伝達手段及び動作検証手順等についても事前に各

府省等と取り決めておく必要がある*19。 ④ 汎用パッケージソフトウェア

今回のコンサルティングでは、業務アプリケーションソフトウ

ェアに汎用パッケージソフトウェアを利用することについて、そ

の可否の意見が二分している。 ADAMSが対象とする国家予算執行から決算にいたる業務モ

デルを国家という規模で実現する業務システムは、専用システム、

汎用パッケージを問わず国内には存在しないので、ERPパッケ

ージソフトウェア等の汎用パッケージソフトウェアを適用すると

いう選択肢は見当たらないという報告*20がある一方で、地方自

治体で利用されているパッケージのカスタマイズあるいは海外で

利用されているERPパッケージの利用可否について、ベンダー

から提供された情報に基づきADAMSの主要機能とのフィット

アンドギャップを検証したところ、いくつかの前提をクリアでき

れば利用の可能性ありとの報告*21もあった。 ERPパッケージソフトウェア等の利用については、今後、更

に詳細な検証を行う必要があるとともに、機能による分析の他に

法定手続とのフィットアンドギャップ分析を行う必要*22があり、

他の業務システムとの連携を考慮したデータの整理(標準化や抽

10

象化)等が予め実施できていることが前提であり、十分な調査検

討が必要である。 なお、システムの運用や開発における基盤部分を構成する各要

素(オープンシステム環境で利用できるミドルウェア等)につい

ては、汎用パッケージソフトウェアを可能な限り適用*23する。

*8

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅡ-59

Ⅱ システム見直しの可能性の分析

1.3 オープンシステム化の実現可能性評価と課題

「Ⅱ-1.1オープンシステム化の前提」に対して「Ⅱ-1.2 オープンシステム化の個別方針」で述べ

たとおり、ADAMSの4次システムを、既存プログラムを流用して、オープンシステム化することは、

基本的には可能である。

しかしながら、ADAMSのオープンシステム化を成功裡に完成させるためには、Ⅱ-1.2の中でも

述べてきたように、さまざまな課題や検討を必要とする事項が存在しており、これらを総合的に俯

瞰した結果として次の3つの大きな課題を解決する必要があると考える。

1.各府省の「業務・システム最適化」との整合性

2.行政インフラの段階的な導入との適合性

3.オープンシステムの技術革新への対応

*9

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅡ-16

Ⅱ システム見直しの可能性の分析

1.2 オープンシステム化の個別方針

1.2.1 新システムを構成する要素と実現方式

(1) センター構成(集中/分散)

(略)

そもそも、オープンシステムにおいて「分散配置」が選択肢の一つになっているのは、数年前ま

では各拠点間に広帯域のネットワークを敷設するのに対して非常なコストがかかり、一般的にメイ

ンフレームシステムよりも大きなネットワークトラフィックを必要としたオープンシステムにとっては、1

拠点のサーバによって低帯域ネットワーク経由でサービスを行った場合に、満足な運用ができな

かったということが大きな一因となっている。

ある程度広帯域なネットワーク接続を前提とするのであれば、拠点間連携における整合性確保

などの課題も発生せず、システムの運用性及び保守性の面でも容易な「集中配置」が優れている

11

ものと考えられる。

*10

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅡ-32

Ⅱ システム見直しの可能性の分析

1.2 オープンシステム化の個別方針

1.2.1 新システムを構成する要素と実現方式

(3)システム構成・方式

(3)-6 システム構成

「原調査資料」では、総括としてオープンシステム化に際しての、サーバ構成は下記の「表Ⅱ

-1.2.1-1 システム構成一覧」及び「図Ⅱ-1.2.1-2 システム構成概要」の形態を想定しており、基本

的には、サービス機能単位で、別サーバにして構成することが前提となっている。

これらのサーバ構成を最終化する段階においては、性能面、運用面の観点から、サーバの分

割や、統合を検討する必要がある。

「(3)-1 オンライン処理方式」でも述べたように、「AP/DB サーバ」「WEB サーバ」に関しては、

性能面から見たサーバの機能分割や負荷分散を目的とした複数サーバ構成などが検討の対象

になる。特に「AP/DB サーバ」については、少なくとも「AP サーバ」と「DB サーバ」に分割して構

成するのが妥当であると思われる。

さらには、各サーバの利用頻度や負荷を想定した後に、別目的のサーバ間で相互待機のクラス

タリング構成を構築するなどの手段によって、サーバ台数を減らすことも別途検討する必要があ

る。

中央青山監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)p35

Ⅱ.調査内容

2.システム見直しの可能性の分析

(2)センターの刷新

センターの刷新可能性については、主にハードウェアの刷新について検討する。

オープン化に関するここでの議論は主に、メインフレームからPCサーバへの移管の問題である。

一般的にメインフレームは PC サーバよりも処理速度が高く、その運用も安定している。特に

ADAMS のようにバッチ処理が主体である場合は、その処理能力は重要であり、オープン化により、

利便性を落とさない、すなわち処理能力が落ちないことが必須の条件となる。特に ADAMS はバ

ッチ処理が多く、その処理能力の確保と支払システムであることから、システム障害による支払の

遅延を起こさないことが最大の要件となる。

従来、バッチ処理を PC サーバで実現することは困難とされているが、バッチ処理のパラレル化

12

という手法で実現した例がある。その手法とは、複数台のバッチ・サーバを用意し、管理単位等で

細分化した複数のバッチ処理を並列実行させるもので、バッチ処理の稼動状況を管理し、処理の

失敗などが起きればその処理だけを再実行させることでリカバリ時間も短縮する。トータルでは従

来のメインフレームで行っていたバッチ処理の最長時間の大幅な短縮を実現した。当然 PC サー

バの利用により、ハードウェアの運用コストを削減することも可能となる。なお、1台のサーバ上に仮

想化で複数の処理を実現することもある。

*11

「業務・システム最適化計画策定指針(ガイドライン)、第4版」平成 17 年 2 月 2 日

各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議事務局」

別添3

指針 4-4

府省間を結ぶネットワーク回線及び国の行政機関と地方公共団体を結ぶネットワーク回線は、

それぞれ霞が関 WAN 及び総合行政ネットワーク(LGWAN)を活用するものとする。

*12

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅡ-19

Ⅱ システム見直しの可能性の分析

1.2 オープンシステム化の個別方針

1.2.1 新システムを構成する要素と実現方式

(2) 行政インフラ活用

(略)

特にネットワーク資源を行政インフラと共用するにあたっては、ADAMS が対象としていない拠

点からも接続され、かつ不特定多数の機器が物理的に接続している状態を前提にした安全性対

策が必要となってくる。「最適化ガイドライン」においても、「情報システム内及び情報システム間で

やりとりする情報の重要性及び脅威を評価し、適切な環境基準を設定する。」とあり、ファイアウォ

ール設置、暗号化などの対策があげられている。

*13~14

「電子政府構築計画」平成 16 年 6 月 14 日、各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定

第 2 施策の基本方針

Ⅱ IT 化に対応した業務改革

3 共通システムの最適化

「共通システムの見直し方針」(2004 年(平成 16 年)3 月 25 日行政情報システム関係課長連絡

会議了承)に基づき、霞が関 WAN(電子文書交換システムを含む。)及び政府認証基盤について

13

は、行政情報システム関係課長連絡会議における検討を踏まえ、CIO 連絡会議の下、総務省が

中心となって、2004 年度末(平成 16 年度末)までに、また、府省内ネットワークについては、各府

省において、2005 年度末(平成 17 年度末)までのできる限り早期に、それぞれ最適化計画を策

定し、システムの見直しを進める。

*15~16

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅡ-19

Ⅱ システム見直しの可能性の分析

1.2 オープンシステム化の個別方針

1.2.1 新システムを構成する要素と実現方式

(2) 行政インフラ活用

(略)

また、各府省システムも行政インフラを活用する前提での最適化及び刷新が計画中であり、ネッ

トワーク資源に関してはかなりの広帯域が準備されていないと、アクセスの集中が発生し、運用に

十分な性能の確保が難しくなる危険性が考えられる。このため、システム毎の帯域割当てを要望

するなどの検討も状況に応じて実施する必要がある。

ただし、行政インフラに関しては、「共通システムの見直し方針」(平成 16 年 3 月 25 日 行政情

報システム関係課長連絡会議了承)にあるように、霞が関 WAN 及び政府認証基盤(GPKI)につ

いては、行政情報システム関係課長連絡会議における検討をふまえ、各府省情報化統括責任者

(CIO)連絡会議の下、総務省が中心となって平成 16 年度末までに最適化計画を策定することと

なっており、各府省ネットワークについては、各府省において平成 17 年度末までのできるだけ早

期に最適化計画を策定することになっている。

(略)

ADAMS のオープンシステム化の改変実施時期によっては、稼働当初に ADAMS が求める要

件をすべての行政インフラが満たしている状況は難しい可能性が高く、一部については ADAMS

専用部分を残し、段階的に行政インフラに移行してゆくなどの計画を立てる必要があり、さらにこ

れらの最適化検討に対しては、ADAMS からの要望を適時提示するなど、関係機関との調整を図

る必要がある。

*17

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅡ-28

Ⅱ システム見直しの可能性の分析

1.2 オープンシステム化の個別方針

1.2.1 新システムを構成する要素と実現方式

14

(3) システム構成・方式

(3)-4 ネットワーク及びセキュリティ

オープンシステム化にあたって、通信ネットワークとして行政インフラを利用して接続する場合に

は、公衆網に接続する場合と同様のリスクが全て存在する。

したがって、次のようなセキュリティの対策及び管理が必要である。

a)セキュリティポリシー

・ ISO17799 の管理目標をベースラインとした、セキュリティ管理を行う

b)ADAMS センターのネットワーク構成

・DMZ(De-Militarized Zone)を利用したネットワークアーキテクチャを採用し、センター内

LAN 上の資源、行政インフラに接続される資源、両者を橋渡しする DMZ 上に配置する資源

の厳密な切り分けを行う。

c)WAN 間通信プロトコルに関する考慮点

・FTP プロトコルを利用する場合には、Stateful Inspection Firewall の機能を有する IPSec

準拠のファイアウォールを採用する

・Web の通信においては、必要に応じて相互を認証する方式の暗号通信(SSL)を利用する

・VPN(相互認証、IP トンネリング、暗号通信)によって回線上の通信メッセージを保護する

d)認証に関する考慮点

・①Identification(個人識別)、②Authentication(本人確認)、③Authorization(権限確認)

に基づく基本的なアクセス・コントロールを厳密に実施する

・全官署の ADAMS 担当事務官にデジタル証明書を発行し、GPKI のインフラを利用して、通

信メッセージの改ざん検知、本人確認及び否認防止を行う

e)サーバ及びクライアントに関する考慮点

・バンダル(悪意のあるコード)にも効果のある抗ウイルス・ソフトウェアを採用する

中央青山監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)p38

Ⅱ.調査内容

2.システム見直しの可能性の分析

(3)ネットワーク

イ.TCP/IP

(略)

ネットワークで最も考慮しなければならないことは、ネットワーク・セキュリティである。セキュリティ面

については、インターネット等の外部ネットワークとの接続がなければ、現行の ADAMS システムと

遜色のないセキュリティが実現できると考えられる。

しかしながら、下記のようなセキュリティ面の考慮は一般的に必要とされる。

・ファイアウォールや侵入検知システムの設置などによる内部ネットワークへの不正侵入の

15

防止

・利用者認証による不正アクセスやなりすましの防止

・アクセス制御の実施による不正アクセスや盗難の防止

・機密データの暗号化による情報漏洩の防止

・コンピュータウィルスやスパイウェアによる被害の防止

・アクセスログ取得による内部牽制の実施

・セキュリティホールに対する継続的対応

*18

「業務・システム最適化計画策定指針(ガイドライン)、第4版」平成 17 年 2 月 2 日

各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議事務局」

別添 3

指針 4-3

情報システムを利用する職員のコンピュータ端末は、各府省内で整備される LAN の利用端末

を利用するものとし、また、情報システムのサーバ機能及びこれを利用する職員のコンピュータ端

末の間を結ぶネットワーク回線は、府省内で整備される LAN その他の基盤となるネットワークを活

用するものとする。

*19

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅡ-19

Ⅱ システム見直しの可能性の分析

1.2 オープンシステム化の個別方針

1.2.1 新システムを構成する要素と実現方式

(2) 行政インフラ活用

(略)

ネットワーク及び認証基盤に関しては、信頼性と安全性の確保が、職員用パソコン及びプリンタ

に関しては正常な動作環境の継続的な確保が大きな前提となり、これらの前提を満たさないかぎり

は ADAMS 専用の資源を用意し使用する必要がある。

(略)

職員用パソコン及びプリンタについても、各府省の業務・システムの最適化計画によって新たな

整備の検討が進行中である。

(略)

しかし、職員用パソコンやプリンタに関しては、パソコンの搭載 OS 及び環境設定やスペック等

が、ADAMS のアプリケーションの正常な実行に対して大きな影響を与える可能性が大きく、これ

らの情報交換伝達手段及び動作検証手順等についても事前に取り決めておく必要がある。

16

*20

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅡ-15

Ⅱ システム見直しの可能性の分析

1.1 オープンシステム化の前提

1.1.2 前提要件

(3) その他の要件

1) 汎用パッケージソフトウェアの適用

「最適化ガイドライン」においては、「ERP パッケージソフトウェア等の汎用パッケージソフトウェ

アの活用を図る。」とあるが、I-2 の類似システム調査でも述べたとおり、ADAMS が対象とする国

家予算執行から決算にいたる業務モデルを国家という規模で実現する業務システムは、専用シス

テム、汎用パッケージを問わず、国内には存在しない。

中央青山監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)p57

Ⅱ.調査内容

2.システム見直しの可能性の分析

(6)汎用パッケージソフトウェアの利用の可能性

国庫のシステムは中央政府独自であり、ひとつしか存在しないものであり、ベンダーによっては、

適合するパッケージは無いとの回答もあった。

*21

中央青山監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)p57,59

Ⅱ.調査内容

2.システム見直しの可能性の分析

(6)汎用パッケージソフトウェアの利用の可能性

(略)

地方自治体で利用されているパッケージのカスタマイズの検討、ERP パッケージの適合度の検

証は、会計処理のデータと他の業務システムとの連携を考慮する際に参考となると思われるため、

ADAMS の主な機能とのフィットアンドギャップを実施し、パッケージの活用の可能性を検討した。

(略)

ロ.パッケージ調査

(ⅰ)機能分析

機能についてはパッケージにより適合度にかなり開きがある機能もあった。ベンダーによっては

国のシステムに適合するパッケージは無いとの回答もあったが、機能の抽象度の高い柔軟な

17

ERP パッケージにおいては、主要な機能はカバーできる可能性があると考えられる。単にライセン

ス料のみで計算すると初期導入コストは同様のソフトウェアを最初から作成するよりは低減される

可能性がある。

(ⅱ)画面、帳票の追加開発

(略)

(ⅲ)運用、保守コスト

(略)

パッケージ選定にはいくつかの前提がある。

1 ADAMS の想定する規模に対応できる拡張性あるパッケージであること

2 機能が一定以上カバーできること(少なくとも保守費が削減できる範囲であること)

3 データの整理がなされていること(標準化と抽象化)

4 画面、帳票の開発コストを削減可能なツールが提供されていること

5 導入するシステムは Web ベースであること

6 ユーザ利用アプリケーションを容易に変更できる仕組みが用意されていること

現状のADAMSの試算においては、想定される個別開発費用を見込んでもコスト面での削減

の可能性はあり、Web ベースへの移行を前提とした場合に利用の可能性はあるとの結論に達し

た。

*22

中央青山監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)p57

Ⅱ.調査内容

2.システム見直しの可能性の分析

(6)汎用パッケージソフトウェアの利用の可能性

(略)

パッケージについては主な機能によるフィットアンドギャップ分析をしている。官庁の場合は、機

能による業務分析の他に法令による業務手順とのフィットアンドギャップ分析が必要である。この点

については、次期の最適化計画で検証する必要がある。

*23

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅡ-15

Ⅱ システム見直しの可能性の分析

1.1 オープンシステム化の前提

1.1.2 前提要件

(3) その他の要件

18

1) 汎用パッケージソフトウェアの適用

(略)

ADAMS のオープンシステム化においては、システムの運用や開発における基盤部分を構成

する各要素に対して、可能なかぎり汎用パッケージの適用を行うものとする。

19

(4)データ通信サービス契約の見直し データ通信サービス契約は、初期費用の多額の負担が平準化されるこ

と、新たな外部システムのインターフェース増加など保守費、運用費が

年度で変動しないというメリットがあるが、契約の競争性、透明性及び

公正性が排除されていること、ソフトウェアの著作権がベンダー側にあ

りシステム開発をしたベンダーが随意契約で運用保守を請負うことか

らベンダー主導のシステム開発となる点などが問題視されており、それ

らの問題を解決するには、データ通信サービス契約を解除し、競争入札

等により供給者を選定することが可能な契約形態への移行が必要とな

る*24。 ADAMSのデータ通信サービス契約については、遅くとも4次AD

AMSのソフトウェア開発費を使用料として払い終えることとしてい

る平成22年度末までには解約することでNTTデータから基本的な

合意を得ている。 また、次期システム開発でADAMSのソフトウェア資産を有効に

活用するためにADAMSのソフトウェアを国が利用できるようにす

ることが必要となるが、データ通信サービス契約(約款)では著作権は

NTTデータに帰属すると規定されていることから、まずは国がいつか

らどのような形でソフトウェアを使用できるようにする必要があるの

かを整理することが先決である*25。 その解決策としては、4次ADAMSに係るソフトウェア開発費を

全額払い終えた時点(計画では平成22年度末、今後数年の前倒しも

検討)でソフトウェアの商用利用許諾を得るという考え方を基本とし

つつ、最適化計画に基づく新たなシステム開発に当たって資源の有効

利用を図る観点から、ソフトウェア開発費全額を払い終えるまでの間

は次期システムの設計、製造、試験の目的に限定して、利用許諾を得

ることとしてNTTデータから合意を得ている。 そこで、データ通信サービス契約の解除に伴う課題として、ソフト

ウェア開発費の残額の支払時期及び予算措置、次期システム開発経費

の予算措置があり、その解決策を検討しておかなければならない*26。 ソフトウェア開発費の残額の支払は、契約解除時に一括支払する方

法と予め契約解除時期を決めて毎年度の支払額を調整することによっ

て解除時に残額を発生させない方法があるが、いずれの場合において

も既定予算額への上積みが必要である*27。 また、ADAMSのデータ通信サービス契約を解除する時点で、切

れ目なく次期システムを稼動させる必要があるため、契約解除前から

20

次期システムの開発を行うこととなり、その開発経費が新たに発生す

ることとなる。次期システム開発費は、ライフサイクル期間中一定で

はなくハードウェアの調達方法(買取又はリース)やシステムの設計、

製造、試験工程に分かれて年度毎に変動すること、開発期間が複数年

にわたるため国庫債務負担行為を活用する必要があることから、その

予算措置について特段の配慮が必要である。 また、次期システム開発期間中は、ADAMSの使用料と次期シス

テムの開発費が重複計上となることにも留意する必要がある*28。

*24

中央青山監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)p63

Ⅱ.調査内容

2.システム見直しの可能性の分析

(7)契約方式の見直し

従来の契約方式は初期費用の多額の負担が平準化されること、新たな外部システムのインター

フェース増加などの保守費、運用費が年度で変動しないことがメリットであるが、ソフトウェアの著作

権はベンダー側にあるため、システム開発をしたベンダーが随意契約で運用保守を請負うため、

ベンダー主導のシステム開発となる。

調達の競争性、公平性の確保と費用の透明性を高める意味で、ハードとソフトの分割発注をす

ることが望ましい。

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅡ-62

Ⅱ システム見直しの可能性の分析

2 新たな契約形態に変更する場合の課題と解決策に関する調査

2.1 契約形態見直しの可能性

2.1.2 契約方式の見直し

(2)現行の契約方式の問題点と解決策

データ通信サービス契約は、契約の競争性、透明性及び公正性が排除されていることが問題

視される。これらが問題視される要因を大別すると下記のとおりとなる。

1) データ通信サービス契約は、供給者が制限される。

2) データ通信サービス契約は、現行業者が行う電気通信役務に対してサービス利用料を支

払うという契約方式であるため、第三者からコスト構造が見えにくい。

これら2つの問題を解決するには、データ通信サービス契約を解除し、供給者を選定することが

可能な契約形態への移行が必要となる。また、供給者の選定においては、システム全体としての

21

信頼性及び安定性を十分に担保できる供給者を選定することが必須となるため、選定要件、評価

項目等については別途検討する必要がある。

*25

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅡ-69

Ⅱ システム見直しの可能性の分析

2 新たな契約形態に変更する場合の課題と解決策に関する調査

2.2 データ通信サービス契約解除に伴う課題と解決策

2.2.2 ソフトウェアの著作権に関する課題と解決策

(1)課題

データ通信サービス契約方式から新たな契約方式に変更する場合、変更時におけるソフトウェ

アの著作権の扱いが問題となる。ADAMSでは、データ通信サービス契約約款に基づき、ソフトウ

ェアの著作権は現行業者が保有している。このため、ソフトウェアの改変が必要となっても、国が現

行業者以外の供給者に改変を依頼することができず、他の供給者の参入が困難な状況にある。

現行業者が著作権を保有したままであっても、国として既存資産を活用することが可能となる解

決策を検討する必要がある。

*26

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅡ-63

Ⅱ システム見直しの可能性の分析

2 新たな契約形態に変更する場合の課題と解決策に関する調査

2.1 契約形態見直しの可能性

2.1.2 契約方式の見直し

(3)契約方式見直しの可能性 2)データ通信サービス契約では、サービス解除時に、ソフトウェア開発費未償還残額(残額)を一

括で支払わなければならない。残額支払いに要する予算の確保を調整する必要がある。

*27

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅡ-66

Ⅱ システム見直しの可能性の分析

2 新たな契約形態に変更する場合の課題と解決策に関する調査

2.2 データ通信サービス契約解除に伴う課題と解決策

2.2.1 ソフトウェア開発費の支払と予算措置に関する課題と解決策

22

(1) 課題

1) ソフトウェア開発費の支払

データ通信サービス契約方式から、新たな契約方式に変更する場合、既にデータ通信サービ

ス契約のソフトウェア開発費の支払が完了していれば問題ないが、支払完了時期がまだ到来して

いない場合、契約変更時におけるデータ通信サービス契約のソフトウェア開発費の残額の支払が

問題となる。

(略)

(2) 解決策

1) ソフトウェア開発費の支払

① 平成23年3月末にデータ通信サービス契約を解除する場合

ADAMS(4次システム)のシステムライフタイムは、平成15年4月から平成23年3月末までの8年

間である。ADAMSではサービス開始時期の違いによらず、ソフトウェア開発費の支払はすべて平

成23年3月末までに完了する予定になっている。

したがって、契約解除の時期が平成23年3月末であれば、ソフトウェア開発費支払残額の観点

からは、問題なくデータ通信サービス契約を解除できる。

平成15年4月

(サービス開始)

平成23年3月末

(データ通信サービス契約解除)

ソ フ ト ウ ェ ア 開 発 費 (※)

平成23年3月末にソフトウェアの支払い残額がゼロになる

※データ通信サービス契約による

ソフトウェア開発費の支払いは

毎年同額と想定する。

図 2.2.1-1 ソフトウェア開発費の支払①

② 平成23年3月末以前にデータ通信サービス契約を解除する場合

データ通信サービス契約の解除を平成23年3月末以前に実施することになった場合は、データ

通信サービス契約の契約期間内の解除なので、ソフトウェア開発費の未償還残額を一括支払す

る必要がある。

他の支払方法として、支払期間の変更を実施し、契約解除の数年前から支払額を従来よりも上

積みし、解除に伴う一定の支払である残額は発生させない方法もある。

いずれにせよ、データ通信サービス契約のソフトウェア開発費の残額を支払えば、データ通信

サービス契約及び新たな契約方式へ移行することは可能である。

23

↓残額の一括支払いが必要

↓平成 21 年 3 月末にソフトウェアの

支払い残額がゼロになる

残額一括支払

平成 21 年 3 月末にデータ通信サービス契約を 解除することを想定

ソ フ ト ウ ェ ア 開 発 費

平成 23 年 3 月末 平成 21 年 3 月 (データ通信サービス契約解除)

平成 15 年 4 月(サービス開始)

図 2.2.1-2 ソフトウェア開発費の支払②-1

平成15年4月

(サービス開始)

平成23年3月末

ソ フ ト ウ ェ ア 開 発 費

平成21年3月末にデータ通信サービス契約を解除することを想定

↓支払い期間についても平成21年3月末に変更

↓平成21年3月末にソフトウェアの

支払い残額がゼロになる

支払額上積み

        平成21年3月末

   (データ通信サービス契約解除)

図 2.2.1-3 ソフトウェア開発費の支払②-2

*28

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅡ-66

Ⅱ システム見直しの可能性の分析

2 新たな契約形態に変更する場合の課題と解決策に関する調査

2.2 データ通信サービス契約解除に伴う課題と解決策

2.2.1 ソフトウェア開発費の支払と予算措置に関する課題と解決策

(2) 課題

2)予算措置

データ通信サービス契約方式解除に伴い、これに代わる次期システムを開発する必要がある。

この次期システムの開発経費に対する予算措置も問題となる。

(略)

(2)解決策

(略)

24

2)予算措置

データ通信サービス契約の解除に伴い、次期システムを稼動させる必要があるため、解除前か

ら、次期システムの開発経費が発生することになる。この場合、ライフサイクル期間での費用発生

パターンは、年度ごとに変動するため、 これを踏まえた予算措置とするために、国庫債務負担行

為を活用する必要がある。

また、一般的にメインフレームと比較してオープンシステムでは初期投資は少ないが、システム

メンテナンス費用が大きいことから、これを踏まえた予算措置とする必要がある。ハードウェア買取

の場合、利子、諸税公課のコスト削減が図られるが、これらも考慮する必要がある。

平成15年4月(サービス開始)

平成23年3月末

現 行 シ ス テ ム 利 用 料

次期システム開発費上積み

データ通信サービス契約解除↓

次期システム開発費発生

        平成21年3月末   (データ通信サービス契約解除)

図 2.2.1-4 次期システム開発費についての予算措置

次期システム開発経費が上積みされることにより、データ通信サービス契約の使用料と重複し、

予算が従来より多額となる。この上積みとなった多額な予算については、当該システムのみではな

く、国全体としての予算措置を講じる必要がある。

25

(5)ハードウェアとソフトウェアのアンバンドル(分離調達)化 ハードウェアとソフトウェア開発のアンバンドル化(分離調達)につ

いては、システム開発全体を一貫して統合的にプロジェクト管理できる

ような人材及び組織体制を整備することにより可能*29となる。 その理由としては、ミドルウェア、OS及びハードウェアはアプリケ

ーションプログラムを稼動させることが可能な製品に限定され、ミドル

ウェアはOS及びハードウェアの構成に依存し、OSはミドルウェアが

動作する製品に限られ、ハードウェアはアプリケーションプログラム、

ミドルウェア及びOSが起動可能な製品に限られるという複雑な相関

関係があり、ハードウェアとソフトウェアを分離調達する場合には、そ

の相関関係による制約を考慮したシステムの全体像を描き、調達仕様を

決定しなければならないから*30である。 もうひとつの理由としては、開発工程においては、統合的プロジェク

ト管理とアプリケーション開発とハードウェア調達及び設定に分離す

ることは可能ではあるが、それぞれの供給者間に契約関係が無いことに

より円滑な開発が行えない場合に、システム開発全体を一貫して統合的

に管理するプロジェクト管理者がその解決を図らなければならないか

ら*31である。 この統合的プロジェクト管理を会計センターが行うことは現体制で

は困難であることから、民間のSI(システムインテグレーション)供

給者に統合的管理を委託することが考えられるが、残る課題としてSI

供給者とソフトウェア供給者、ハードウェア供給者の間に契約関係がな

いために作業分担と責任範囲が不明確であり、SI供給者の作業指示に

強制力がないため責任分界点が曖昧なこと、追加稼動等に対する追加費

用の負担等が生じた場合の負担ルール等の解決策をどのような契約方

式で講じるか整理しておく必要がある*32。 *29

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅡ-82

Ⅱ システム見直しの可能性の分析

2 新たな契約形態に変更する場合の課題と解決策に関する調査

2.3.5 システム開発の統合性に関する課題と解決策

(1)前提条件

(略)

システム開発を成功させるためには、企画から開発・運用管理までのプロセスを、一貫して統合

26

的に管理する役割が必須となる。また、各システムの構成要素(ハードウェア構成及び OS・ミドル

ウェア・アプリケーションプログラム)の整合性等を考慮して開発を進める必要がある。

中央青山監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)p69

Ⅱ.調査内容

2.システム見直しの可能性の分析

(7)契約方式の見直し

ニ.ハードウェアとソフトウェアのアンバンドル化の推進

(略)

このような状況に対応して、調達側の経費やプロジェクト管理負担等の増加を招かないことを前

提とした場合、ハードウェアとソフトウェア、更にはソフトウェアの開発プロセスを適宜分離し、分割

調達をすることは有効であると考えられる。

但し分割調達を実施する場合には以下の条件に留意する必要がある。

・一括調達と比較して品質及び価格上劣ることがないこと。

・分割調達をマネジメントできるような人材及び組織体制を整備すること(例えば外部のPM支

援の専門家を雇い入れることも考えられる)。

・「ガイドライン」を基にしたソフトウェア開発作業及び作業内容、さらにはドキュメント作成に対

する標準化を進め、開発の分担・引継ぎが円滑に行えること。

*30

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅡ-77

Ⅱ システム見直しの可能性の分析

2 新たな契約形態に変更する場合の課題と解決策に関する調査

2.3.3 システムの構成要素による分離調達可能性の検討

(2)課題

上記のシステム構成要素は、相関関係による制約条件がある。

1)アプリケーションプログラム

業務及びシステム要件など、ユーザの目的を実現するのは、アプリケーションプログラムである。

アプリケーションプログラムには、次の制約がある。

①ミドルウェアにより実現できる機能が異なるため、業務要件及びシステム要件を実現可能な

ミドルウェアを選定する必要がある。

②アプリケーションプログラムが使用可能なハードウェア及びOSの構成を選定する必要があ

る。

2)ミドルウェア

27

①ミドルウェアの動作は、ハードウェア及びOSの構成に依存する。

②ミドルウェアのライセンス数は、搭載するハードウェアの台数やCPU数などに依存する。

3)OS(オペレーティングシステム)

①搭載するミドルウェアが、動作する製品に限られる。

②複数のハードウェアに搭載されているOSの互換性が必要となる。

③OSのライセンス数は、搭載するハードウェアの台数やCPU数などに依存する。

4)ハードウェア

上記したアプリケーションプログラム、ミドルウェア、OSが、起動可能なハードウェアを選定する

必要がある。

(3)評価

1)システム開発全体像の必要性

課題1)~4)で述べたように、システムの構成要素である、ハードウェア・OS・ミドルウェア・アプリ

ケーションプログラムの間には、複雑な相関関係があり、システム開発を成功に導くためには、全

てを考慮する必要がある。

ハードウェア及びソフトウェアを分離調達する場合、各社に調達を依頼する前に、財務省が相

関関係による制約を考慮した、システムの全体像を描き、必要な仕様を決定しなければならない。

2)バンドル化(一括調達)の検討

システムの構成要素間の、複雑な相関関係を考えると、現行の財務省会計センター管理運用

部の体制では、全体像を描くことが困難であると想定される。

SI供給者を選定し、SI供給者が全体像を描き、調達を行う形態が望ましいと考えられる。

*31

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅡ-79

Ⅱ システム見直しの可能性の分析

2 新たな契約形態に変更する場合の課題と解決策に関する調査

2.3.4 システム開発における工程ごとの分離調達可能性

(2)課題

2)開発

開発工程における分離調達の可能性としては、

①システムの統合的管理者

②アプリケーションの開発

③ハードウェア調達及び設定

に分離することは、可能ではある。

システムの各構成要素が相関関係を持つため、システムを統合的に管理する役割が必要にな

る。

28

その場合、統合的管理者は、設計者が行うことが前提となる。しかし、統合的管理者とアプリケ

ーション開発者・ハードウェア供給者の間に契約関係がないため、円滑な開発が行えない可能性

がある。

*32

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅡ-97

Ⅱ システム見直しの可能性の分析

2 新たな契約形態に変更する場合の課題と解決策に関する調査

2.3.10 総括

(2) 分離調達(アンバンドル化)の可能性

分離調達(アンバンドル化)に伴うシステムの統合性に関する課題については、次の二つの体

制案について検討した。

1)財務省会計センター管理運用部による統合的管理体制案

財務省会計センターの現行の体制で各供給者を統合的に管理することが可能であれば問題は

ないが、財務省会計センター管理運用部の体制を強化することは、経済性を考えると、現実的で

はない。

2)SI 供給者による統合的管理体制案

課題の多くが、財務省が直接的に複数の供給者と契約関係を締結することで、実際に統合的

管理を行うSI供給者と他のハードウェア供給者及びアプリケーション開発者と契約関係を持たな

いことから発生する。

責任範囲、作業指示強制、費用負担ルールの各課題は、契約関係を持たない場合、あらゆる

関係者(財務省及びSI供給者、ハードウェア供給者、アプリケーション開発者)にとってリスクが高

く、実行が困難である。

統合的管理者としてSI供給者を採用するだけでは、実際の管理は困難であり、SI供給者とハ

ードウェア供給者及びアプリケーション開発者の間に、契約関係があることが望ましい。

29

(6)システム見直しの経済性 ハードウェア関連コスト、ソフトウェア関連コスト、その他関連コス

ト、システム見直しに伴うライフサイクルコストを積算し経済性を分析

した結果及び国内外において相当の費用削減効果が確認されている事

例があることから、オープン化による経済性効果は高いことが認められ

るので、オープンシステムへの移行は妥当*33と考える。 理想的なモデルは、利便性と費用の両面で優れているWebベースへ

の移行であり早期に全体構成を見直すことが最も経済的で望ましいと

報告*34された。 ただし、職員PCや行政インフラの利用については、セキュリティ要

件を満たしているかどうか等を見極める必要があるため、各府省の最適

化計画での検討状況を考慮し、具体的な移行計画を定める必要*35があ

り、専用端末や専用回線の利用が残る場合にはその分経済性効果が薄く

なりかねない。 また、ソフトウェアについては、アプリケーションプログラムのうち

業務系プログラムの大半がコンバージョン可能と想定しており、新規に

作成する場合の費用と比較すると相当の経済性効果が見込まれる*36。 *33

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅢ-14

Ⅲ システム見直しの経済性の分析

1.現行システム見直しに伴う経済性の観点からの改善効果の調査

1.1 ハードウェア関連コスト

1.1.5 経済性分析

ハードウェア関連コスト、ソフトウェア関連コスト、その他関連コスト、システム見直しに伴うライフ

サイクルコストを積算し、経済性を分析した結果、オープン化による経済性効果は高いため、オー

プンシステムへの移行は妥当と考えられる。

(参考)ライフサイクルコストについて

新日本監査法人による報告書においては、現行のメインフレームを継続した場合と、次期システム

であるオープンシステムの年度別の費用発生パターンを比較し、経済性効果の分析がされた。

条件として、ハードウェアの耐用年数は 4 年、支払は便宜上平成 20 年度より発生することとされて

おり、加えて平成 24 年度にはハードウェアのリプレース費用が発生することを想定している。支払は

発生時払いである。

その結果、本番稼働 5 年後の平成 25 年度以降には、オープンシステムへの移行による経済性が

30

発揮されると報告された。

平成21年1月開始(発生) (単位:億円)

20 年度 21 年度 22 年度 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度 27 年度

ハードウェア 合計 オープン化 108.3 124.0 139.7 155.4 275.5 291.2 306.9 322.6

現行維持 9.6 48.1 86.6 125.1 163.6 202.1 240.6 279.1

ソフトウェア 合計 オープン化 165.9 176.9 187.9 198.9 209.9 220.9 231.9 242.9

現行維持 10.9 54.5 109.0 163.5 218.0 272.5 327.0 381.5

その他 合計 オープン化 0.6 3.0 5.4 7.8 10.2 12.6 15.0 17.4

現行維持 4.1 20.5 36.9 53.3 69.7 86.1 102.5 118.9

合計 オープン化 274.8 303.9 333.0 362.1 495.6 524.7 553.8 582.9

現行維持 24.6 123.1 232.5 341.9 451.3 560.7 670.1 779.5

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(一部抜粋)p11

中央青山監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)p91

Ⅱ.調査内容

3.システム見直しの経済性の分析

(1)類似又は同等システムの事例

システム見直しの経済性を分析するに当たって、レガシーシステムからオープンシステムへの移

行形態として 3 つのパターンが存在すると仮説を立て、それぞれのパターンごとに類似又は同等

システムの事例を基にシステム見直しの経済性分析を行った。

イ.3 つの仮説

まず、仮説を立てた 3 つの移行パターンを以下に紹介する。

①パターン 1

現行プログラムはレガシーシステムで利用しているものを受け継ぎ、ハードウェアのみをオー

プンシステムへ移行する。

②パターン 2

レガシーシステムから関係型データベース(RDB)を利用するクライアントサーバ方式のオー

プンシステムへ移行する。

③パターン 3

レガシーシステムから関係型データベース(RDB)を利用するWeb型処理方式のオープンシ

ステムへ移行する。

これらのパターンごとに、他組織における類似又は同等システムのオープン化事例(ベストプラ

クティス)を参考にし、それぞれの組織で実現できた効果について述べる。

31

(2)システム見直しの経済性分析の要約

パターン 経済性分析の要約

パターン 1 ベストプラクティスなし。参考

パターン 2 ・A 市(海外)

5 年間で 90~100 億円削減

・K 県(国内)

印刷物出力 33%削減(コスト不明)

パターン 3 ・T 省(米国)

184 億円削減(5 年間)

・地方自治体(国内)

400 日以上(40%以上)業務時間削減

1200 帳票以上(70%)帳票削減(コスト不明)

・F 県(国内)

処理時間 50%削減(コスト不明)

*34

中央青山監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)p115

Ⅲ.結論

イ.理想

理想的なモデルは、パターン 3 の Web 型への移行である。

この型への移行は、利便性と費用の両面で優れている。

パターン 1 の既存プログラムの活用は既存のプログラムを利用することで、プログラムの安定性、

業務との親和性など短期的なメリットもあるが、長期的なプログラム及びデータの保守コストを考え

ると割高になる。また、技術的に相対的に安価で強固なセキュリティを確保する方法もオープン化

の方向にあることから、できるだけ早期にパターン 3 に移行することが望まれる。

*35

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅢ-14

Ⅲ システム見直しの経済性の分析

1.現行システム見直しに伴う経済性の観点からの改善効果の調査

1.1 ハードウェア関連コスト

1.1.5 経済性分析

(略)

しかし、特に効果の大きい行政インフラの流用については、ADAMS が扱う業務の重要性を考

32

えると、行政インフラが性能、安全性及びセキュリティ等の要件を満たしているかどうか、各府省の

最適化計画を考慮し、移行計画を定める必要がある。

*36

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅢ-16

Ⅲ システム見直しの経済性の分析

2.現行システムからの引継資産ソフトウェアの活用による経済性の調査

2.2 既存資産流用の経済性

(1)評価

引継資産を流用した場合の開発費用を分析する。

コンバージョン対象の開発費用は、4 次システムの開発費用の 1/4 と仮定する(アプリケーション

の作成だけでなく、プロジェクト管理や環境作成などの工数も含む)。下図の通り、コンバージョン

した場合の開発費用は、4 次システムの 63%となるため、4 次システムの開発費用の 258.9 億円

より、258.9 億円×63% = 163.1 億円 となる。

このことから、すべて新規作成した場合のソフトウェア開発費用を 4 次システムと同等の 258.9

億円と仮定すると、既存資産のコンバージョンにより、およそ 95.8 億円の経済性効果(258.9 億円

-163.1 億円)が見込まれる。

なお、4 次システムにおいても、1~3 次システムまでの引継ぎ資産があるため、すべて新規作

成した場合のソフトウェア開発費用は、4 次システム開発費用より大きいと考えられる。

ただし、1 次システムから 20 年以上に渡って見直しが行われていない「歳入システム」などにお

いては、陳腐化による保守作業の生産性の低下や困難性などが懸念されるため、新規開発との

経済性について、詳細な比較検討が望まれる。

中央青山監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)p99

Ⅱ.調査内容

3.システム見直しの経済性の分析

(4)現行システムからの引継資産ソフトウェアの活用

イ.COBOL アプリを UNIX に移行

従来、OS を変更するということはアプリケーションを再構築しなければならないことが多く、既存

のソフトウェア資産活用のために特定の OS に縛られていた。しかし、現在では、各プラットフォー

ムのソフトウェア環境が整備され、COBOL や C 言語でもソース互換やバイナリ互換が進んでいる。

具体的には COBOL プログラムや JCL(ジョブ制御言語)をそのまま UNIX サーバに移植するマイ

グレーションがこれにあたる。

マイグレーションは業務アプリケーションの機能を変えることがないため、ユーザ部門にはほとん

33

ど影響がない。一般にこのようなソース互換やバイナリ互換を行う場合、作業量の関係上変換ツー

ルが用いられる。つまりプログラムの修正はツールで変換できる程度に抑えられることから、この手

法を採用する場合は、基本的に業務の改革には一切手を加えないことが前提となる。

またツールによるプログラムの変換は完璧なものではなく、一定の修正を必要とする場合がある。

例えばメインフレーム向けの「COBOL/S」とオープン系の「COBOL85」では全く同一のものとい

うわけではなく細部は相違している。こういった場合は、すべての COBOL プログラムを精査して

修正するか、プログラム実行環境のカスタマイズが必要となる。

現状の ADAMS のプログラム数を基に算出した結果、プログラムを変換する費用は、プログラ

ムを COBOL で新規に作成するよりも約38億円低減されると見込まれる。

34

4. オープン化スケジュール ADAMSのハードウェアは、それぞれ耐用年数(メーカ通常保守期

限)を有しており、主装置であるメインフレームの利用期限は平成20

年12月である。4次システム更改の当初計画では、平成21年1月か

らはメインフレームをリプレースして利用することとしていたが、今回

の刷新可能性調査結果を踏まえると平成21年1月をADAMSのオー

プンシステム化の時期として開発スケジュールを検討することが可能で

ある*37と考えられる。 オープンシステムへの移行については、並行運用期間を設けないなど

移行後の運用を複雑化させないために、一括移行によることとする。ま

た、移行時期については、移行作業を確実に実施するために、システム

の運転を長時間停止できる期間とする必要があり、平成20年及び21

年の運転停止可能日を考慮すると、9日間停止することが可能な年末年

始(12月27日~1月4日)が適していると考えられる。 ただし、その実現のためには、データ通信サービス契約の解除、契約

解除に伴うソフトウェア開発費残額の予算措置、次期システム開発費の

予算措置、次期システムの契約形態(アンバンドル化も含む)及びベン

ダー選定方法の決定等に係る課題を前もって解決することが重要となる。 ADAMSのオープンシステム化については、「業務・システム最適化

計画」の策定までの間に更に詳細な検討を重ねていく必要がある。

*37

新日本監査法人 平成 17 年 1 月 31 日

「官庁会計事務データ通信システム刷新可能性調査結果報告書」(抜粋)pⅡ-36

Ⅱ システム見直しの経済性の分析

1.2 オープンシステム化の個別方針 1.2.1 新システムを構成する要素と実現方式

(4)-2 移行

「原調査資料」においては、4次システムで導入している主要なハードウェアの利用期間が、平

成20年度までと計画されていることから、これらのハードウェアの利用期間が終了するまでに、オ

ープンシステム化への移行を完了する必要性があると述べている。

移行の一連の作業及び処理が複雑かつ大量のものとなる事から、上記の前提に立った場合に

は、平成 21 年 1 月に新しいシステムの稼働を開始する事が最適であるということになる。

「(2) 行政インフラ活用」でも述べたとおり、行政インフラの全面活用にいたるまでには、段階的

な移行が必要となる可能性が高いため、新システム稼働開始時点での専用資源利用部分と共用

資源利用部分をどのようにするかを、早期に決定してこれを基にした移行計画を策定する必要が

35

ある。

なお、平成 21 年 1 月稼働を実現するためには、並行稼働のテストなどを含めると約 3 年近くの

開発・テストの期間が必要であると思われるため、平成 18 年度には開発を開始し、その前提となる

基本設計作業は平成 17 年度中に開始されなくてはならないことが考えられる。

このスケジュール前提で考えた場合、行政インフラをはじめとする他府省の最適化計画が十分

には固まっていないことも考えられるため、新システムの稼働開始時における環境等の想定につ

いては、他府省との情報交換を密に行い、適時計画の微調整を行う必要がある。

36