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肺容量の区分
• 肺の容量区分は4つに区分される
• 肺活量は年齢,性別,身長,体重できまる
肺容量の区分• 肺の容量区分は4つに区分される
肺容量
• 予備吸気量 2.7l……①
• 一回換気量 0.5l……②
• 予備呼気量 1.0l……③
• 残気量 1.5l……④
• 全肺気量=①+②+③+④ 5.7l機能的残気量=③+④ 2.5l肺活量=①+②+③ 4.2l
基本記号
基本記号
記号
死腔(dead space)
• 血液とのガス交換に関与しえない容量
(≒気道の容量)
を生理学的死腔あるいは機能的死腔という.
成人の場合通常150ml程度
気 道
浅い呼吸と深い呼吸
• 肺胞換気量(alveolar ventilation):浅くて早い呼吸よりも深くて遅い呼吸のほうが
VA dotが大きい.
• VA dot=(一回換気量-死腔)×呼吸数(回/分)
• 分時肺換気量(pulmonary ventilation, respiratory minute volume)=一回換気量×呼吸数(回/分)
浅い呼吸と深い呼吸
浅くて早い呼吸
• 分時肺換気量(pulmonary ventilation, respiratory minute volume)=一回換気量300×呼吸数30(回/分)
=9000ml/分
• VA dot=(一回換気量300-死腔150)×呼吸数30(回/分)
=1500ml/分深くて遅い呼吸
• 分時肺換気量(respiratory minute volume)=一回換気量600×呼吸数15(回/分)
=9000ml/分VA dot=(一回換気量600-死腔150)×呼吸数15(回/分)
=6750ml/分
肺活量
• 年齢,性別,身長によって異なる
• 正常予測値との比較率(%VC)で評価
• 肺活量の予測値は,♂ VC=(27.63-0.112×年齢)×身長(cm) ♀ VC=(21.78-0.101×年齢)×身長(cm)
%VCが80%以上が正常である.
• 80%未満は拘束性障害
• 肺の線維化,胸膜疾患,横隔膜の運動障害などによる一回換気量の低下を意味する.
努力呼気肺活量(forced vital capacity;FVC):
• 最大呼気位から努力呼出したときのガス量
• この時間的経過をみたものが努力性呼気曲線(forced expiratory volume curve;FEV curve)
• 初めの1秒間に呼出した量は1秒量といい,[1秒量/努力性肺活量]をGaensler(ゲンズラー)の1秒率(FEV1%)という.
1秒率
• 1秒率(FEV1%) =1秒量/努力性肺活量
70%以上が正常
70%以下は閉塞性換気障害という
気管支炎・肺気腫など
換気障害のパターン
クロージングボリューム
• クロージングボリュームは末梢気道の閉塞の程度を表す.
• 一回呼吸N2曲線は,最大呼出後に純酸素を最大吸気位まで吸入させ,その後ゆっくりと同じ速さで呼出させ,N2濃度と呼気量を測定しプロットしたものである
クロージングボリューム
第Ⅰ相:死腔中のガスが呼出される.N2濃度はゼロ.
第Ⅱ相:死腔ガスと肺胞ガスの混合気が呼出される.
クロージングボリューム
第Ⅲ相:肺胞ガスが呼出される.
第Ⅳ相:肺尖部~肺中部の肺胞ガスが呼出される.N2濃度は高い.(肺尖部のガス濃度は肺底部よりも高くなっている)
IIIからIVの移行部で肺底部の肺胞が閉塞したことを意味する
肺コンプライアンス
• 肺の柔らかさ(広がりやすさ)を表す
肺コンプライアンス
肺は胸壁と横隔膜に囲まれた胸郭内にあり,胸郭の運動は膜腔を介して肺に伝わる.胸腔内圧は肺胞内圧より常に低いので,肺胞は膨らむ.
胸膜腔の圧: 安静呼気時 -2~-4cmH2O,安静吸気時 -6~-7cmH2O
この圧差の変化ΔPに対する肺の容量変化ΔVを肺コンプライアンス(compliance)といい,肺の広がりやすさを表す.なお,胸腔内圧の変動を食道内圧の変化としてみることがある。
C=ΔV/ΔP (l/cmH2O)成人の正常値は0.21 l/cmH2O
肺コンプライアンス
肺コンプライアンス
肺における表面張力
• Laplace’s law
P= r2T
P1 P2<やがて肺胞は虚脱する
肺における表面張力• サーファクタント
• レシチンを含むリポタンパク
• 第II型内皮細胞Type II肺胞細胞から分泌
• 表面張力を減少させる
• 単位あたりの量が増加すると表面張力を減少させる性質がある
• 肺胞が拡張していると表面張力が増加(吸気)
• 肺胞が縮小していると表面張力が減少(呼気)
肺における表面張力
• サーファクタントの欠乏や活性低下
肺コンプライアンス低下
肺胞のふくらみが悪い
肺機能低下
IRDS ( idiopathic respiratory distress syndrome:新生児呼吸窮迫症候群)
無気肺・肺水腫・低酸素血症・肺梗塞など
呼吸(換気)抵抗
• =気道抵抗+肺組織抵抗+胸郭抵抗
呼吸(換気)抵抗
気道抵抗
• 肺気量が増大すれば気道抵抗は低下する
• 吸気中は気道抵抗が減少
• 呼気中では気道抵抗が増大
(強制呼気時)
• 安静呼吸ではわずか
呼吸(換気)抵抗
圧容量曲線
• 呼吸運動における胸腔内圧と肺容積の関係は肺の圧―容量曲線として得られる.肺の圧―容量曲線は,吸息期には下に凸の曲線(ABC),呼息期には上に凸の曲線(CEA)であり,ヒステレシスループ(hystereisis loop)を描く.
• 呼吸運動の仕事は肺の圧-容量曲線から求められる。
• 呼吸気が吸息時になす仕事の量は、
粘性仕事量(面積ABCD:肺
の粘性および気道抵抗に対する仕事)
+全弾性仕事量(面積ADCFA:肺および胸郭の弾性に対する仕事)である。
不均等換気
• 立位では
肺尖部の換気量<肺底部換気量となる
• 肺尖部すでに大きく肺が膨張、肺圧は高い
コンプライアンス低い
肺循環
• 肺循環は低圧系である
• 肺動脈系
• 気管支動脈系(生理的短絡;肺循環に流入)
• 肺循環系の血圧は,
肺動脈圧25/10mmHg(平均15mmmHg),肺毛細管圧10mmHgである
総循環血液量の10~20%を占める(0.5~1L)
肺循環
肺循環
肺血管内圧
• 毛細管血管内圧8~10mmHg• 細動脈における圧低下は少ないが、毛細血管ではさらに5mmHg程度の低下がある。
• 毛細血管が肺内血流分布調節に重要
肺循環
肺血流分布
• 立位では肺上部ほど血流が少ない
肺動脈圧15mmHg (高さ1cmあたり0.77mmHg減少する)
肺動脈圧が肺胞内圧より低くなり毛細血管は閉塞
• 肺の下方ほど肺血流は大きい(肺動脈、肺静脈圧とも肺胞内圧より大きい)
• 不均等換気に関連する
肺循環
低酸素性肺血管収縮
• 肺血管は低酸素状態で血管が収縮する
• 肺胞側からの低酸素作用であろうとされている。
• その発生機序は?(平滑筋への直接作用・プロスタグランジン?)
• 十分換気されない肺胞ではPAO2が低下し、局所血流が低下、その分他の肺毛細管に血流を振りわける
肺循環
• 肺毛細血管内外圧差と肺水腫
• 肺はどうして水浸しにならないのか?
毛細血管ろ過圧8~10mmHg
コロイド浸透圧
血管壁 肺胞
吸水圧15mmHg
肺内に少量の食塩水を入れても肺はすぐ吸収できる左心不全や過量輸液などで肺毛細管圧が20mmHgを超えると組織間や肺
胞内へ血液成分が漏れる肺水腫
ガス拡散面積の減少・拡散距離の延長呼吸困難
肺のガス交換
ガスは受動的な拡散によって移動する
ガス拡散に影響する因子は
• ガスの溶解度
• 面積
• 距離
• 肺血流量
• 拡散抵抗
肺のガス交換
分圧差
肺のガス交換
ガス拡散に影響する因子は
• ガスの溶解度
CO2の溶解度はO2の溶解度の20倍あるのではるかに拡散しやすい
• 面積
肺胞毛細血管面積(50~100m2)で決まるが、肺疾患で減少、運動時増加
• 距離
肺毛細血管膜(肺胞表面の液膜、肺胞上皮、組織間液、基底膜、毛細血管内皮)は0.5μm以下、これが肥厚する(肺疾患、肺水腫など)と拡散障害が起こる
肺毛細血管におけるO2の拡散
肺胞入り口 PO2 40mmHgPAO2 100mmHg
肺胞 血液へO2 は拡散
Hbとすぐに結合するので肺胞酸素濃度平衡時
間は0.25秒かかる
拡散障害
低酸素時
分圧勾配が低下するのでさらに時間がかかる
肺毛細血管におけるO2の拡散
肺胞におけるCO2の拡散
• CO2の拡散はO2の20
倍あり、肺胞で拡散障害はあまり認められない。
• 肺で放出されるCO2はHCO3-に由来し、これ
は炭酸脱水素酵素活性に依存
換気・血流比VA/Q ratio
換気と血流のバランスはVA =4.0l/min, Q= 5l/minVA/Q=0.8
VA/Qの小さいところが増えるとA-aDo2(肺胞気ー動脈血PO2較差)の低下を生じる
PaO2の低下(低酸素血症)
VA/Q=0 右ー左シャントVA/Q=∞ 肺胞死腔
不均等換気と血流不均等
肺胞100
mあたりの
VAま
たは
Q
VA/
Q比
1
2
3
0.05
0.10
0.15
0 100 200mm
l/min
肺上部
肺底部
立位
VA
Q
立位の肺内換気・血流不均等と換気/血流比
静脈血混合と動静脈シャント
• VA/Q=0 解剖学的シャント・動静脈シャントVA/Qの低下(0<VA/Q<0.8)
静脈血混合
吸入酸素濃度をあげれば、判別できる。
VA/Q=0の場合吸入酸素濃度をあげても
PaO2に変化ない
血液ガス
•酸素の運搬
血液の酸素運搬機能
血液の酸素運搬機能
• 酸素は血漿への溶解度は小さい
• ほとんどがHbと化学結合している。
• 酸素運搬は
赤血球内のヘモグロビンと
その変動要因を考えればよい。
血漿の要因は4%程度
血液の酸素運搬機能
• ガスが血液に“溶けている”状態は,物理的溶解(分子状態のまま溶液中に分布する状態)と化学的溶解(溶液中の物質と結合する状態)がある.血液100mlに物理的に溶解しうるO2量は,酸素分圧95mmHgでは0.29mlにすぎない.
• 化学的溶解では,O2はヘモグロビンに結合する。還元ヘモグロビン(Hb)は酸素と結合するとオキシヘモグロビン(HbO2 )になる.
• 全ヘモグロビンに対するオキシヘモグロビンの割合[HbO2 /(Hb+HbO2 )]を酸素飽和度(oxygen saturation)という.血中の酸素分圧が高まると酸素飽和度は高まり,酸素分圧が100mmHg以上ではほぼ100%になる.
酸素解離曲線
ヘモグロビンと酸素の結合強度を表す酸素供給量は?○肺で酸素化された血液(Po2=100mmHg,Pco2=40mmHg, SpO2=98%)末梢組織(Po2=40mmHg,Pco2=45mmHg, SpO2=75%)
98%-75%=23%が末梢組織に運ばれたことになる。○Hb1gあたり1.34mlの酸素と結合する
Hb15g/dlの血液100mlは1.34ml×15g×0.23= 4.6ml の酸素を供給する
酸素解離曲線
• 解離曲線のシフト
ミオグロビン:筋肉内酸素がかなり低下しないと酸素が解離しない。酸素貯蔵に役立つ
胎児ヘモグロビン:胎盤で酸素受容しやすい
• S字カーブ
酸素分圧の低いところでは酸素をより多く離す。
酸素解離曲線の変動
• 右方移動・左方移動
• P50(全Hbの50%が酸素と結合するPO2の値)
で決めることが多い(増加すれば右方移動)
酸素解離曲線の変動
• 右方移動(酸素親和性低くなる・酸素を離しやすい)
温度上昇
pH低下(pH>6.5)Pco2上昇
Cl-増加
2,3-DPG増加
右方移動(酸素親和性低くなる・酸素を離しやすい)
温度上昇結合・解離平衡は解離側へ
pH低下(pH>6.5)アルカリBohr効果
Pco2上昇Carbamino-hemoglobin
Pco2 とpH効果は区別しにくい• 組織代謝が高まり、熱上昇・pH低下・CO2上昇がもたらされると末梢組織で酸素解離が促進される。
• 合目的性がある。
アルカリBohr効果
• pHが低下(H+が増加)酸素との結合が弱くな
る
右方移動(酸素親和性低くなる・酸素を離しやすい)
• 2,3-DPG(2,3-diphosphoglycerate)• 嫌気的解糖系中間産物
• ヘモグロビンと結合すると酸素親和性が低下
• HbFは2,3-DPGの効果弱いため、胎児では左方移動が見られる。(本来HbFは右方シフトしている。2,3-DPGの効果の方が高い)
• 酸素を受け取るのに都合が良い
• 保存血では2,3-DPGが不足しているため、酸素供給量が不足する。
左方移動(酸素親和性高くなる・酸素を離しにくい)
• 温度低下
• pH上昇
• CO2低下
• 2,3-DPGの低下
• CO中毒・NO中毒・メトヘモグロビン血症
血液による炭酸ガスの運搬
• 組織でO2が消費され,CO2が生じる.
• CO2は血液(溶解),
赤血球へ拡散する
• 溶解
• 重炭酸イオン(血漿中)
• カルバミノCO2
として運ばれる
血液による炭酸ガスの運搬
• 物理的溶解によるCO2運搬は
CO2運搬量の1割であり,
9割は化学的溶解により運ばれる.
• 炭酸ガスの物理的溶解は,分圧40mmHgでは血液100ml当たり2.6mlである
血液による炭酸ガスの運搬
CO2+H2O⇔H2CO3⇔HCO3-+H+
• 肺では ←
• 組織では →
• 反応時間:38℃で40秒• 炭酸脱水酵素存在下では1秒
肺におけるガス交換が可能に!
• 炭酸脱水酵素:赤血球内に存在
血液による炭酸ガスの運搬
•H2CO3⇔H++HCO3-
重炭酸イオンは赤血球より濃度勾配に従い、血漿中へ移動(拡散)、その際その代わりとして、赤血球内にCl-が流入し電気的中性が保たれる。
chloride shift (Hamburger’s shift)
肺においてCO2が放出されるときはその逆
重炭酸イオン
CO2の水和により炭酸は直ちに解離する。H2CO3⇔H++HCO3
-
ここで生じたH+はHb-・血漿タンパク(Pr-)・有機リン酸塩によって中和される。H2CO3+Hb- HHb + HCO3
-
H2CO3+Pr- HPr + HCO3-
Hbは緩衝能力が強いので主に赤血球内で生成されるHCO3
-が多い
重炭酸イオン
Hbの脱酸素化に従い次の反応が進行する
HbO2+H2O+CO2 HHb+O2+HCO3
還元Hbが酸素化されると炭酸ガスが遊離する
Haldane効果という
血液による炭酸ガスの運搬
• カルバミノCO2
• Hb分子中のN末端のα-NH2と反応
• HbNH2+CO2 HbNHCOOH
呼吸による酸塩基調節
• 生物代謝の結果絶えずCO2の産生がおこなわれる
• ヒトCO2排泄量 200ml/min(1日13000mmol)
CO2が排出されないとアシドーシスとなる。
CO2排泄は
呼吸
腎臓(40~70mmol/day)いかに呼吸が大切かわかる
呼吸による酸塩基調節
• 炭酸ー重炭酸緩衝系
CO2+H2O⇔H2CO3⇔HCO3-+H+
• 左端は肺と接し自由拡散し、換気によって体外へ排出
• 右端は常にCO2の供給を組織から受けてい
る
• しかもPCO2は換気により厳密に調節される
実は強力な緩衝系である
呼吸による酸塩基調節