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高学歴女性の人材浪費のメカニズムと生涯学習の重要性
日本女子大学 大沢真知子
発表のアウトライン
(1)他の先進国と比較して日本の高学歴女性が活躍していない。
(2)初期のキャリア形成において女性には男性と同じ教育訓練の機会が与えられず、仕事のやりがいが感じられず、有能な女性が離職している。
(3)離職期間が長くなると再就職時に以前のような待遇の仕事が見つかりにくい。(外部労働市場が未整備・未発達)
(4)セカンドチャンスを得るための学び直しの機会が教育機関によって提供されていない。
大学進学率の推移(1954~2011)
0%
20%
40%
60%
FemaleMale
※文部科学省「学校基本調査」より作成
大卒女性の就業率の国際比較
81.1 75.6
67.1 60.0
0%
20%
40%
60%
80%
100%
France United States Japan Korea
25~64歳の大卒女性の就業率(2010)
※OECD Education at a Glance 2012より作成
大卒女性が仕事を辞める理由
32% 38%
63%
49%
74%
30% 26% 16%
育児 介護 仕事への不満 行き詰まり感
日本人女性 米国人女性
PULL PUSH
家族・コミュニティ等からの 発生する要因
仕事周辺にある要因
出典:2011 Center for Work-Life Policy
RIWAC 「女性とキャリアに関する調査」について
• 調査対象 年齢 25〜49歳の女性 学歴 短大・高専・大卒以上 地域 東京、神奈川、埼玉、千葉 • 調査時期 2011年11月25〜27日 • 調査方法 (株)マクロミル登録モニターのインター ネットを利用したアンケート調査
• 回答人数 5155人
*調査対象者の就業形態の偏りを避けるために『労働力調 査(平成22年)』に基づいた就業形態の割り付けを行った。
大卒女性の働き方の5パターン
Ⅰ 18.5%
Ⅱ 33.1% Ⅲ
20.0%
Ⅳ 26.8%
Ⅴ 1.5%
Q1 現在までのあなたの働き方についてあてはまるものを1つ選んでください。 (n=3337) Ⅰ 初職継続型618人:学校卒業後、最初に就
いた仕事を現在も継続している Ⅱ 転職型1106人:現在仕事に就いているが、 これまでに1年未満の離職期間があった (転職経験あり) Ⅲ 再就職型669人:現在仕事に就いているが、 これまでに1年以上の離職期間があった (再就職経験あり) Ⅳ 離職型893人:現在仕事に就いていないが、 かつては仕事に就いていた Ⅴ 就業経験なし51人:学校卒業後一度も 仕事に就いたことがない
※出所:日本女子大学現代女性キャリア研究所紀要 現代女性とキャリア第4号(2012)
高学歴女性の働き方の5パターン (全サンプル)
0%
20%
40%
60%
80%
100%
25才~29才 30才~34才 35才~39才 40才~44才 45才~49才
Ⅴ就業経験
なし(n=61)
Ⅳ離職型
(n=1603)
Ⅲ再就職型
(n=1206)
Ⅱ転職型
(n=1524)
Ⅰ継続型
(n=761)
1.2%
31.1%
23.4%
30.0%
14.8%
出所:RIWAC調査、2011年
高学歴女性の初職を辞めた理由の 出生年別変化
学卒時に就業継続意欲の高い女性ほど転職をしている
• 1年未満に転職をしている高学歴女性の学卒時の就業意欲をみると、学卒時に就業意欲の高い女性が多い。
「好きな仕事についてその仕事を一生つづけたい」(36%)
「仕事の内容にこだわらないが一生働き続けたい」(40%)
統計的差別とは
• 従業員が離職すれば、企業の訓練コストが回収されない。
• 女性は将来結婚や育児により離職する確率が高い。それを考慮して雇用や賃金に男女で差を設けることは合理的である。
(フェルプスの統計的差別理論)
統計的差別への反証 • 予言の自己成就― 女性労働者の離職を予測し
て予防策を立てることが逆に離職を合理的な選択としてしまい、女性の離職を促進してしまうこと。
• 逆選択―「情報の非対称性」のもとで一律に賃金
を低くすると、より高い賃金がふさわしいと思っている女性ほど先に辞めてしまう。
→統計的差別は非合理な結果を生み出す。 女性に男性と同じ能力開発や昇進の機会が与えられないことが問題。
高学歴女性のキャリアパターン別 初職をやめた理由
24.0
13.0
9.3
2.0
14.8
9.0
22.1
12.6
13.7
6.9
27.2
12.4
0 20
他にやりたい仕事があったから
仕事に希望がもてなかったから
結婚のため
妊娠・出産・育児のため
Ⅱ転職型
Ⅲ再就職型
Ⅳ離職型
(%)
再就職に際して重視した条件
26.9
38.3
6.4
23.8
4.6
0 20 40
給与など職場の待遇
やりがいなど仕事の内容
職場の人間関係
仕事と家庭の両立
その他
(%)
転職後の企業規模の比較
14.6
26.8
13.8
19.0
17.5
15.9
18.9
13.6
33.4
22.0
1.8
2.7
0% 20% 40% 60% 80% 100%
初職
現職
Ⅱ転職型
30人以下 31~100人 101~300人 301~1000人 1001人以上 官公庁
13.2
33.7
13.8
17.8
12.8
14.0
19.5
10.2
38.6
18.9
2.0
5.3
0% 20% 40% 60% 80% 100%
初職
現職
Ⅲ再就職型
転職後の雇用形態の変化
73.5
49.0
8.2
10.8
12.6
21.3
5.4
17.0
0.3
1.9
0% 20% 40% 60% 80% 100%
初職
現職
Ⅱ転職型
正社員・正規職員 有期契約社員・嘱託社員 パート・アルバイト 派遣社員 在宅ワーク・内職
77.9
23.4
5.7
6.9
13.0
54.7
2.9
10.9
0.5
4.1
0% 20% 40% 60% 80% 100%
初職
現職
Ⅲ再就職型
転職後処遇が下がっている ひとが多い
40.9
29.4
54.1
43.8
45.9
41.8
50.0
58.0
27.9
31.8
32.3
40.7
42.1
48.8
42.5
37.3
31.2
38.8
13.6
15.5
12.1
9.5
7.5
4.7
0% 20% 40% 60% 80% 100%
Ⅱ転職型
Ⅲ再就職型
Ⅱ転職型
Ⅲ再就職型
Ⅱ転職型
Ⅲ再就職型
Ⅱ転職型
Ⅲ再就職型
給与
などの
職
場の
待遇
やりがいなど
仕事の内容
仕
事と家庭の
両立
職
場の
人間関
係
満足(よくなった+ややよくなった) どちらともいえない 不満(悪くなった+やや悪くなった)
転職後待遇が良くなった人の 学生時のキャリア意識
33.1
7.9
18.0
17.2
13.1
2.0
1.0
7.7
0 10 20 30
好きな仕事に就いて、その仕事を一生続けたい
仕事の内容にはこだわらないが、一生働き続け
たい
家庭や私生活と両立しながら、長く働き続けたい
出産・育児などで中断するかもしれないが、でき
れば仕事は続けたい
家庭や私生活を優先させたいので、就業にはこ
だわらない
結婚・出産をする、しないにかかわらず、できれ
ば仕事には就きたくない
その他
特に何も考えていなかった
転職後待遇が良くなった人の 初職を辞めた理由
24.0 7.3
9.0
11.5
6.4
1.1
6.9
3.3
9.3
4.9
10.3
3.8
1.0
0.9
0.1
0.2
0 10 20
他にやりたい仕事があったから
留学・進学などのため
病気・ストレス・けがなど心身の不調のため
仕事に希望がもてなかったから
解雇・倒産・人員整理・契約切れなど会社側の理由
会社側の不当な圧力
仕事の量的な負担が大きく、体力的にきつかったから
仕事の責任が重いなど、精神的な負担が大きかった…
待遇が悪かったから
人間関係がよくなかったから
結婚のため
妊娠・出産・育児のため
親の介護のため
配偶者・パートナーの転勤のため
配偶者・パートナーの反対のため
家庭と両立していく自信がなかったから
女性人材浪費のメカニズム(1)
女性の就労意欲やキャリア意識が低いことが離職につながっているわけではなく、意欲の高い女性ほどやりがいのある仕事に出会えずに離職している。
初職で正社員として入社する 高学歴女性が減少している。
50%
60%
70%
80%
90%
100%
(出生年)
多様な働き方が生み出されていない
再就職をめざす高学歴女性の労働市場が整備されていない
社会人入学の国際比較(男女)
20.9 17.9
1.7 0%
20%
40% 25歳以上の入学者の割合(国際比較)
※出典:OECD教育データベース(2008) ただし、日本の数値については、「学校基本調査」及び文部科学省調べによる社会人入学生数
再就職のために求められる支援
33.3
27.7
24.3
15.8
11.7
8.9
7.0
1.2
2.9
7.1
0% 10% 20% 30%
専門的知識・スキル
実践的知識
情報提供
資格取得のための知識
就職のための実践的情報
講座の条件
カウンセリング
ネットワーク・人脈
必要なし
その他
大学に期待する支援 (n=4108) 複数回答
※出所:日本女子大学現代女性キャリア研究所紀要 現代女性とキャリア第4号(2012)