12
1 September 2018 訪日外客の急増とともに拡大する観光関連 ビジネス 日本政府は 2003 年より「Visit Japan」を標榜し、積極的に訪 日外客の誘致を進めています。日本政府観光局 (JNTO) の統計に よると、2017 年の訪日外客は 2,869 万人を超え、その消費額は 約 4.4 兆円と過去最高を記録しました(図表1)。政府はこれま で「東京オリンピック・パラリンピック開催の 2020 年までに訪 日外客の受け入れ数、年間 2,000 万人達成」を目標に掲げていま したが、2016 年 3 月には、「2020 年までに年間 4,000 万人」、 「2030 年までに年間 6,000 万人達成」と目標値の大幅な上方修 正を行いました。 1.全体概況 出所:日本政府観光局 (JNTO)「訪日外客数の動向」 国土交通省 観光庁「訪日外国人消費動向調査」 観光関連ビジネス Tourism-related business Attractive Sectors 特に、2012 年から訪日外客数が急増しており、その背景には、 政府による継続的な訪日旅行プロモーションの効果に加え、アジ アの所得水準の向上による旅行需要の増加や円安の影響のほか、 東南アジア・中国を中心とするビザ発給要件の緩和、2014 年 10 月に始まった消費税免税制度の拡充等の政策が奏功していること が挙げられます。また、クルーズ船寄港数の増加や LCC を含む 航空路線の拡充も訪日外客の増加に寄与しており、2017 年は円 高に転じたにも関わらず、訪日外客数は増加し続けており、魅力 的な観光地としての日本の評価は定着してきています。 政府はインバウンド消費額を 2020 年に 8 兆円にすることを目 標に掲げ、訪日外客によるさらなる消費拡大を促すため、訪日外 客の受入体制や法制度などの整備を進めており、外国企業にとっ ても日本のインバウンド市場におけるビジネスチャンスはさらに 拡大することが予想されます。 訪日外客数及び旅行消費額の推移 0 訪日外客数 10,000 8,135 8,135 2,869 2,404 1,974 1,341 1,036 836 622 4,000 6,000 10,861 10,861 14,167 14,167 20,278 20,278 34,771 34,771 37,477 37,477 44,162 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 7,000 (億円) (万人) 80,000 80,000 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2020 (目標) 2030 (目標) 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 90,000 旅行消費額

観光関連ビジネス - JETRO観光関連ビジネス Tourism-related business 3 September 2018 訪日外客数のシェアの比較 2,403万9千人 2,869万1千人 韓国 714.0

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1 September 2018

訪日外客の急増とともに拡大する観光関連ビジネス

日本政府は 2003 年より「Visit Japan」を標榜し、積極的に訪

日外客の誘致を進めています。日本政府観光局 (JNTO) の統計に

よると、2017 年の訪日外客は 2,869 万人を超え、その消費額は

約 4.4 兆円と過去最高を記録しました(図表1)。政府はこれま

で「東京オリンピック・パラリンピック開催の 2020 年までに訪

日外客の受け入れ数、年間 2,000 万人達成」を目標に掲げていま

したが、2016 年 3 月には、「2020 年までに年間 4,000 万人」、

「2030 年までに年間 6,000 万人達成」と目標値の大幅な上方修

正を行いました。

1.全体概況

出所:日本政府観光局 (JNTO)「訪日外客数の動向」国土交通省 観光庁「訪日外国人消費動向調査」

観光関連ビジネスTourism-related business

Attractive Sectors

特に、2012 年から訪日外客数が急増しており、その背景には、

政府による継続的な訪日旅行プロモーションの効果に加え、アジ

アの所得水準の向上による旅行需要の増加や円安の影響のほか、

東南アジア・中国を中心とするビザ発給要件の緩和、2014 年 10

月に始まった消費税免税制度の拡充等の政策が奏功していること

が挙げられます。また、クルーズ船寄港数の増加や LCC を含む

航空路線の拡充も訪日外客の増加に寄与しており、2017 年は円

高に転じたにも関わらず、訪日外客数は増加し続けており、魅力

的な観光地としての日本の評価は定着してきています。

政府はインバウンド消費額を 2020 年に 8 兆円にすることを目

標に掲げ、訪日外客によるさらなる消費拡大を促すため、訪日外

客の受入体制や法制度などの整備を進めており、外国企業にとっ

ても日本のインバウンド市場におけるビジネスチャンスはさらに

拡大することが予想されます。

訪日外客数及び旅行消費額の推移

0

訪日外客数

10,0008,1358,135 2,8692,4041,974

1,3411,036836622

4,000

6,000

10,86110,86114,16714,167

20,27820,278

34,77134,771 37,47737,47744,162

6,000

5,000

4,000

3,000

2,000

1,000

0

7,000(億円)(万人)

80,00080,000

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2020(目標)

2030(目標)

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

90,000

旅行消費額

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観光関連ビジネスTourism-related business

2 September 2018

世界の中で観光地としての評価が高まる日本

国連世界観光機関 (UNWTO) 発表の世界観光動向によると、2017 年の世界主要国の「外国人旅行者受入数ランキング」で、日本は世界 12 位、アジアでは 3 位となっており(図表2)、2013 年の 27 位(アジアで 8 位)から大幅に順位が上昇しました。これらを主に牽引しているのはアジアからの観光客で、アジアの所得水準の向上を背景に海外旅行への需要が増加し、2017 年の訪日外国人旅行者数の 8 割以上をアジア諸国が占めています。とりわけ中国(約 736 万人)と韓国(約 714 万人)からの旅行者数で全体の 50% を超えるほか、香港・台湾・インドネシア・フィリピン・マレーシア・ベトナム等からの旅行者数も数年で 2 ~ 3倍に増加しています(図表 3)。

2017年外国人旅行者受入数ランキング

出所:国土交通省 観光庁「入国者数ランキング」

※本表の数値は 2018 年 9 月時点の暫定値である。※★印を付した国は 2017 年の数値が未発表であるため、2016 年の数値を採用した。 ※本表で採用した数値は、日本、ロシア、韓国、ベトナム、台湾、豪州を除き、原則的に 1 泊以上した外国人訪問者数である。※外国人訪問者数は、数値が追って新たに発表されたり、さかのぼって更新されることがあるため、数値の採用時期によって、その都度順位 が変わり得る。※外国人旅行者数は、各国・地域ごとに日本とは異なる統計基準により算出・公表されている場合があるため、これを比較する際には注意を 要する。

0 20,000

17,924

18,200

18,400

20,798

24,390

25,948

27,194

27,885

28,69129,460

35,381

37,452

37,601

37,651

39,298

58,253

60,740

75,868

81,786

86,918

40,000 60,000 80,000 100,000(千人)

ポーランド

オランダ

カナダ

日本

ロシア

ギリシャ

香港

マレーシア

オーストリア

タイ

メキシコ

ドイツ

英国

トルコ

★ポルトガル

イタリア

中国

スペイン

★米国

フランス

日本は世界で12位日本は世界で12位アジアで3位アジアで3位

2012・2013年

2015・2016年

27位

2017年

12位2014年22位

16位

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観光関連ビジネスTourism-related business

3 September 2018

訪日外客数のシェアの比較

2,403 万 9千人 2,869万 1千人

韓国714.0

中国735.6

台湾456.4

フランス

カナダ

イタリア

英国

ドイツ スペイン

その他その他

米国137.5米国137.5

欧米豪11.3%

東南アジア+インド10.6%

豪州

シンガポールマレーシア

インドネシアフィリピンベトナムインド

東アジア74.2%

香港223.2

タイ98.7タイ98.7

ロシア

( 単位:万人、%) ( 単位:万人、%)

+19.3%+19.3%

フランス

カナダ

イタリア ロシア

英国

ドイツ スペイン

その他その他

米国124.3米国124.3

欧米豪12.3%

東南アジア+インド11.0%

東アジア72.7%

豪州

シンガポール

タイ90.2タイ90.2

マレーシアインドネシアフィリピンベトナムインド 韓国

509.0

中国637.4

台湾416.8

香港183.9

出所:JNTOプレスリリース「訪日外客数(2017 年 12月および年間推計値)」

2016年 2017年

日本全国に広がる多様で豊富な観光資源を考慮すれば、新規の

訪日外客のみならず、リピーターの取り込みなど、今後も訪日外

客数のさらなる増加や、それに伴う観光関連ビジネスの市場拡大

の余地は十分にあると考えられています。2020年東京オリンピッ

ク・パラリンピックに向けて、ホテルなどの宿泊施設の新設・増

設や、航空会社やクルーズ船、旅行代理店 (OTA) などの旅行関

連産業の拡充のほか、訪日外客を対象としたレストランや娯楽施

設の開業、訪日外客の日本滞在中の買い物に付随した新たな金融

サービスの提供など、観光に関連する様々な分野で市場の拡大が

見込まれており、外国企業にとっても大きなビジネスに繋がると

期待されています。特に、民泊サービス等の日本企業にとっては

まだ新しいサービス形態では、外国企業が所有するノウハウを提

供する絶好の機会となっています。

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4 September 2018

2.政府の取り組み

観光立国をめざし、規制緩和や法整備を積極的に推進

日本政府は訪日外国人旅行者の誘致拡大に向けて、2016 年 3月に「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」にて目標値を発表しました(図表4)。観光産業を日本の基幹産業へと育成すること(観光先進国の実現)を目指し、様々な規制緩和や法整備を積極的に推進しています。

出所:内閣府「明日の日本を支える観光ビジョン」

国際線の発着枠の拡大政府は、訪日外国人旅行者の拡大を目指し、日本との往来の増

加が見込まれる国・地域へのオープンスカイ(企業数、路線及び便数に係る制限を二国間で相互に撤廃すること)を推進し、国際線のネットワーク拡充を行っています。国土交通省は 2014 年 3月に、羽田空港の国際線の発着枠を年間 3 万回増枠(6 万回から9 万回。国内線とあわせて 45 万回の発着枠)するとともに、成田空港の年間発着枠(国際線、国内線の合計)も 30 万回に増枠し、羽田・成田あわせた首都圏空港の年間発着枠数を 75 万回まで拡大しました。2020 年までに、首都圏空港の機能強化により年間発着枠数を約 83 万回まで増やすことで、訪日外国人旅行者の受け入れ環境を整備していく予定です。

1

クルーズ船受入の更なる拡充1回の寄航で大勢の訪日外国人旅行者が見込めるクルーズ船は

消費拡大など、地域経済への波及効果が大きく、政府もクルーズ船の受入拡充に力を入れています。2020 年に訪日クルーズ旅客数を 500 万人にすることを目標に掲げており、2016 年の訪日クルーズ旅客数は 199.2 万人(前年比 78.5% 増)、クルーズ船の寄港回数は 2,018 回(同 38.8% 増)となり、いずれも過去最高を記録しました。また、法務大臣が指定するクルーズ船の外国人乗客を対象に、簡易な手続で上陸を認める「船舶観光上陸許可」制度(ビザ免除プログラム)を 2015 年より実施しています。クルーズ船の需要急増や大型化に対応し、2017 年7月には、旅客ターミナル施設を整備した民間企業に港湾の優先使用権を認める「改正港湾法」が施行され、クルーズ船受入拠点の強化を行っています。

2

戦略的なビザ発給要件の緩和2013 年7月より、ASEAN 諸国を中心とするアジアからのビ

ザ発給要件を緩和した結果、アジアからの訪日外国人旅行者の急増に繋がりました。日本政府は引き続き、訪日外国人旅行者の増加が見込める潜在力の高い市場のうち、5 か国(中国・フィリピン・ベトナム・インド・ロシア)を重点市場とし、さらにビザの発給要件について戦略的な緩和を進めています。(※1)

(※1)外務省「最近のビザ緩和」

3

訪日外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充訪日外国人旅行者向け消費税免税制度が 2016 年 5 月より改正

され、免税の対象となる最低購入金額が「5,000 円以上」に引き下げられました(図表5)。化粧品や医薬品、トイレタリー製品など単価の低い消耗品や、地方への波及効果が見込まれる民芸品・伝統工芸品についても、免税で購入しやすくなることで、訪日外国人旅行者のインバウンド消費を促進しています。財務省と観光庁はさらに 2018 年度税制改正で、一般の物品と消耗品の購入額を合算し 5,000 円以上になれば免税対象とする改正を行いました。その他、免税購入物品の海外直送手続きの簡便化や免税手続きカウンター制度の利便性向上など、訪日外国人旅行者のより快適な買い物を後押ししています。

4

ビジネスジェットの地方空港への受け入れ世界主要国の中で日本のビジネスジェット就航数は大きく下回っ

ていました。2015 年3月に、日本政府は対日直接投資推進会議にて、「外国企業の日本への誘致に向けた5つの約束」を発表し、外国企業のビジネス拠点や研究開発拠点の日本への立地を促すため、全ての地方空港において、短期間の事前連絡の下、ビジネスジェットを受け入れる環境を整備することを目指しています。

国土交通省主導のもと、羽田・成田の主要空港では、ビジネスジェット等が利用する公用機等の発着枠制限の緩和や駐機スポットの整備、ビジネスジェット専用ターミナルからビジネスジェット用駐機スポットまでの新ルートの整備など、空港内の移動時間の短縮、利便化が急ピッチで進められています。また、関西国際空港での訪日外国人のビジネスジェット利用者も使用可能なファーストレーンの設置や、静岡空港でのビジネスジェット格納庫の供用開始等、地方空港ではビジネスジェット受け入れの体制整備が積極的に進められています。

5

5,000円以上

5,000円以上

2016年改正後

合算で5,000円以上50万円以下

2018年改正後

「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」による目標値(2016年 3月発表 )

地方部での外国人延べ宿泊数 7,000万人泊 1億3,000万人泊

外国人リピーター数 2,400万人 3,600万人

日本人国内旅行消費額 21兆円 22兆円

訪日外国人旅行消費額 8兆円 15兆円

訪日外国人旅行者数 4,000万人 6,000万人

項目 2020年 2030年

消耗品 5,000円超

一般物品 10,000円超

品目 改正前

消費税免税制度の概要

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観光関連ビジネスTourism-related business

5 September 2018

民泊サービスに向けた法整備現在、世界各国で話題となっている空き住居や空室を宿泊用に提

供する「民泊」は、日本においても訪日外国人旅行者誘致の大きな柱の一つとして注目を集めています。しかし、日本で宿泊サービスを提供するには、旅館業法による「簡易宿泊所」の許可が必要です。

これまで政府は、一部の自治体 (※4) で国家戦略特区として例外的に民泊サービスの提供を認め、民泊条例を施行してきました。サービスのルール化や、行政が一定の関与をすることにより、安全性・衛生面に配慮した滞在施設を提供する環境を整備しています。

さらに全国的に民泊サービスの健全な普及を図るため、「住宅宿泊事業法」が 2017 年 6 月に公布され、2018 年 6 月15 日に施行されました。同法は、民泊サービスの提供者となる住宅所有者、仲介業者、代行会社に対し、明確なルールを設定することを目的としており、民泊サービスは一層の拡大が期待されています。

(※4)2017 年 3 月現時点で、東京都大田区、大阪府、大阪市及び北九州市が対象。

7

統合型リゾート施設(カジノを含む)による 事業モデルの推進

2016 年 12 月、「IR 推進法 ( 通称︓カジノ法 )」が成立しました。IR(Integrated Resort、統合型リゾート)とは、カジノのほかにホテル、劇場、映画館、ショッピングモール、レストラン、文化ホール、MICE 施設(国際会議施設や展示会)などによる統合型の施設のことを指します。娯楽施設などの設立が伴うため、経済効果を期待して北海道、横浜市、大阪市、福岡市、沖縄県など多くの自治体が誘致に関心を示すほか、諸外国からの注目も集まっています。ギャンブル依存症やマネーロンダリングを懸念する声も多数あるものの、2018 年 7 月 20 日、日本政府は IR 実施法を可決しました。当面、IR の施設の設置数は全国 3 ヶ所までとし、日本人のカジノ入場料は 1 日 6,000 円、入場回数は週 3 回、月 10回までと定めました。

8 通訳案内士制度の規制緩和2017 年 6 月に公布された「通訳案内士法及び旅行業法の一部を

改正する法律」が、2018 年 1 月 4 日に施行されました。急増する訪日外国人旅行者の需要に対応するため、通訳ガイドの一定の質を確保しつつ、量的確保をすることを目的としています。

通訳案内士法の主な改正内容① 「業務独占資格」から「名称独占資格」(※3) へと規制を見直

すことにより、幅広い主体による通訳ガイドを可能とする(「通訳案内士」の有資格者以外でも、有償の通訳ガイドが可能に)。

② これまでの全国対応のガイドである「全国通訳案内士」に加えて、地域に特化したガイドである「地域通訳案内士」の資格制度を創設(地方での人材不足に対応)。

③ 「全国通訳案内士」の試験科目に実務項目を追加するなど、適正化と共に、定期的な研修の受講を義務付け(通訳案内士の品質確保と旅行者のニーズに合ったサービスの提供)。

(※3)資格を有さない者が、当該資格の名称や類似名称を用いることができな いとする規制。

6

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観光関連ビジネスTourism-related business

6 September 2018

ホテル・宿泊施設①市場動向

2015 年の日本国内の延べ宿泊者数は、5.04 億人泊(前年比6.5%増)と過去最高を記録しました。2016 年の日本国内の延べ宿泊者数は合計 4.93 億人泊(同 2.3%減)と若干減ったものの、外国人の延べ宿泊者数は 6,939 万人泊(同 5.8%増)と過去最高を記録し、宿泊施設の需要は拡大しています(図表 6)。

また、2016 年の日本での国内旅行消費額における宿泊費は 2兆 6,328 億円となり、過去 6 年間で最大の市場規模となりました

(図表 7)。訪日外国人旅行者が急速に増加する一方で、東京・大阪・京都・千葉・福岡等の大都市や、北海道、沖縄等の観光名所では、宿泊施設が不足した状況になっています。

2020 年には、2015 年の稼働に対し、4.4 万室ほどの客室数の不足(東京 1 万 7,728 室不足、大阪 1 万 4,273 室不足)が予想されています。政府は客室の供給(宿泊施設の用意)を大幅に増やすための規制緩和も推し進めており、日系企業のみならず外資系企業にとっても大きなビジネスチャンスとなっています。

1

3.魅力的な注目市場分野

本レポートにおいては、インバウンド市場における魅力的な分野として、以下の 6 分野を取り上げます。

ホテル・宿泊施設航空サービスクルーズ船旅行代理業 (OTA)レジャー・娯楽サービス消費税免税店と金融サービス

1

2

3

4

5

6

出所:観光庁「宿泊旅行統計調査」

また、地方都市においても外国人宿泊者が増えています。2015 年の地方ブロック別延べ宿泊者数は、すべての地域で増加しています。特に、外国人延べ宿泊者数の伸び率では、10 地域のうち7地域で50%を超える高い伸び率となっています(図表8)。

出所:観光庁「平成 28 年版観光白書」

延べ宿泊者(全体)、外国人延べ宿泊者数の地域ブロック別対前年比(2015年)

0%

80%

70%

60%

50%

40%

30%

20%

10%

北海道

3.8%

40.9%

47.2%

2.1%

6.9%

10.6% 9.0

%8.8%

9.1%

3.7%0.9

%1.4%

36.2%

50.8%50.8%

74.1%74.1%

52.2%52.2%

65.9%65.9% 62.0

%62.0%

69.0%69.0%

64.0%64.0%

関東東北 北陸信越

中部 近畿 中国 四国 九州 沖縄

外国人延べ宿泊者数の平均48.1%

延べ宿泊者数(全体)の平均

6.7%

延べ宿泊者数(全体) 外国人延べ宿泊者数

国内旅行消費額における宿泊費の推移

出所:観光庁「旅行・観光消費動向調査」※2017 年以降は 2011 年 -2016 年の年平均成長率よりジェトロが推計。

0

3,500(10億円)

3,000

2,500

2,000

1,500

1,000

500

2011 20132012 2014 2015 2016 2017(予)

2018(予)

2019(予)

2020 (予)

2,1162,1742,203

2,029

2,4092,633

2,7512,8753,004

3,140

※人泊:宿泊人数 × 宿泊数

0

日本人 外国人

600(100万人泊)

500

400

300

200

100

201226.3 33.5

413.2

439.5

432.4

465.9

44.8

428.7

473.5

65.6

438.5

504.1

69.4

423.1

492.5

2013 2014 2015 2016

延べ宿泊者数の推移

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観光関連ビジネスTourism-related business

7 September 2018

③外資系企業の参入が進む民泊サービス

宿泊施設の需要拡大や法改正を背景に、一般住宅に旅行客を有料で泊める民泊仲介サイトや関連サービスを提供する外国企業の動きもみられています。日本では少子高齢化社会に伴い、約 820 万戸の空き家があると推計されています。民泊サービスによる宿泊施設不足への対応としての有効活用や、交流人口の増加や新産業開発の切り口として、都市再開発、空き家対策、地方創生、中心市街地活性化等における活用方法についても関心が高まっています。

②外国企業の参入状況

外資系ホテルが増加した背景には、訪日外国人旅行者などの需要が見込めること、地価の下落により再開発が活発化したこと、ディベロッパーによる外資系ホテル誘致が進んだことなどの要因があります。また、インバウンド需要を見込んだ M&A も活発になっており、米国投資会社ベインキャピタルは、温泉旅館チェーン「大江戸温泉物語」を運営する大江戸温泉ホールディングスを買収するなど、外資による業界参入の形態も多様化しています。

④関連法規・許認可

2018 年 6 月からの「住宅宿泊事業法」の施行が決まり、家主は自治体に届出をすることで年間 180 日を上限として民泊サービスが行えるようになります。2020 年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて需要が高まることから、国内外から企業が市場に参入してきており、登録物件の獲得に向けて競争がさらに激しくなることが予測されます。

民泊サービスに参入した主な外国企業の例

Airbnb Japan 米国

企業名 本社所在地 日本市場での主な動向

2014年5月に日本法人Airbnb Japanを設立。2016年には約400万人以上の訪日外国人が同社の登録物件に宿泊。2017年11月時点の登録部屋数は5万室以上。包括的な旅行サービスへの事業拡大予定。

中国人富裕層の開拓に注力するほか、旅館予約サイト「relux」との提携により、日本の高級旅館の予約受付を開始。途家 中国

出所:各社プレリリース、報道資料

近年日本のホテル・宿泊施設市場に参入した外国ブランドや企業名

アマン シンガポール

外国企業/ホテルブランド名 本社所在地 日本における主要事業内容

2014年に東京に「アマン東京」、2016年に三重県志摩市に「アマネム」を開業。

ミレニアム・ホテルズ・アンド・リゾーツ シンガポール2015年に三井不動産グループと共に、東京・銀座にホテルチェーン「ミレニアム 三井ガーデンホテル東京」を開業。

上海豫園旅游商城 中国 2015年11月、北海道の星野リゾートトマムの買収を発表。

フォーシーズンズホテルアンドリゾーツ(フォーシーズンズ)

中国春秋グループ 中国サンフロンティア不動産と「Spring Sunny Hotels & Resorts」を展開。2016年、「スプリングサニーホテル名古屋常滑」をオープン。

カナダ 2016年、京都に「フォーシーズンズホテル京都」を開業。

ヒルトンワールドワイド 米国 2017年、大阪・中之島に「コンラッド大阪」を開業。

ジェネラルホテルマネジメント シンガポール 北海道に「チェディ苫小牧」を開業予定。

ハイアットグループ 米国2015年「ハイアットリージェンシー那覇沖縄」開業。今後、銀座や沖縄、千葉県に異なるブランドでホテルを開業予定。

スターウッドホテル&リゾート(シェラトン、ウェスティン) 米国

2015年、京都嵐山に「翠嵐ラグジュアリーコレクションホテル京都」、北海道に「ウェスティンルスツリゾート」を開業。

ランガム 香港 六本木に5スターチェーン「ランガム」ブランドのホテル開設予定。

マンダリンオリエンタル 香港2005年、日本橋に国内初となる「マンダリンオリエンタル東京」を開業。今後、京都など次の進出先候補を検討中。

デュシタニ タイ2017年4月、カラーズインターナショナルと合弁会社を設立。2020年までに京都に最高級ブランド「デュシタニ」のホテル開業予定。

ザ・リッツ・カールトン 米国すでに東京、大阪、京都、沖縄でホテル展開。今後、栃木県日光市や北海道ニセコ地区でホテル開業予定。

ベインキャピタル 米国投資ファンドのベインキャピタルは、全国約30か所で温泉旅館や温浴施設を運営する大江戸温泉ホールディングスに出資。

出所:各社プレリリース、報道資料

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8 September 2018

航空サービス①市場動向

日本への出入国者数の増加に伴い、外国航空会社各社は、活発に日本への就航便数の増加や路線拡張を進めています。国土交通省(※5)によると、 2018 年 3 月 25 日~ 10 月 27 日の運航便数(認可時点)は、旅客及び貨物便合計で過去最高の 5,474.5 便 / 週に上りました。国際線・旅客便を見ると、アジア方面の便数が全体の約 80%を占めており、アジアの中で最多は韓国方面で、次いで中国方面、台湾方面の順となっています。LCC(Low Cost Carrier)の比率は全旅客便数の 27.1%となっており、特に韓国社による増便が牽引しています。LCC の利用者は従来の FSA

(Full-Service Airline)の利用者を減少させることなく拡大しており、市場全体の底上げが見られます(図表 11)。

(※5)国土交通省「2018 夏季スケジュール 国際線定期便の概要」

②地方空港の受入体制整備

首都圏空港(羽田空港・成田空港)の国際化と機能強化(図表12)に加え、国全体の取組として、2016 年より地方空港のインバウンド拡大に向けた取組が始まっています。LCC をはじめとする国際線の地方空港への就航を推進するため、着陸料軽減や新規就航時の経費支援、旅客受入環境の整備に係る経費補助等の支援を行っています (※6)。

その結果、2010 年から 2017 年までの 7 年間で地方空港の国際線定期便数は約 2.2 倍に増加しています (※7)。特に LCC やチャーター便の就航が相次いでおり、一部の空港では、地方自治体が新規就航路線は 1 年間着陸料を減免するなど、就航誘致に積極的に取り組んでいます。また、地方空港のゲートウェイ機能強化を図るため、北海道など複数空港の一体運営(コンセッション等)の推進や空港運営の民間委託なども進めています。

(※6)国土交通省「地方空港におけるインバウンド拡大に向けた取組」(※7)夏ダイヤ (3 月末~ 10 月末 ) の 1 週間当たりの便数。2010 年の 436 便

から 2017 年は 950 便に増加した。

2

③関連法規・許認可法規・許認可

航空法により「国内定期航空運送事業」を運営する日本の航空会社と持ち株会社は、外国人の役員や議決権の割合は 1/3 未満と定められ、日本の航空サービス市場参入には、国内の適切なパートナー探しが肝要となります。

出所︓国土交通省「我が国の LCC 旅客数の推移」

出所︓国土交通省「交通基本政策(2015 年)」、 「航空関係予算決定概要(2015 年)」

出所︓国土交通省、各空港ウェブサイト等

国際線旅客数の推移

0

FSA利用者数LCC利用者数

10

20

30

40

50

60

70

80

90

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

44.5 48.5 47.5 53.2 53.9 56.3 62.1 64.5

首都圏空港の国際線就航都市数(旅客便)

首都圏空港の年間合計発着枠

首都圏空港(羽田空港・成田空港)の整備強化の動き

+76.2%2009年 ⇒ 2016年

0.71.1 1.6

2.9 4.16.1

9.715.1

(100万人) 2013年︓88都市 ⇒ 2020年︓アジア主要空港並みになる見込み。<参考>仁川・金浦空港(ソウル)︓143都市香港空港︓138都市チャンギ空港(シンガポール)︓134都市世界主要都市では、ロンドンは343都市、パリは270都市、ニューヨークは139都市となり、日本は遅れが見られる(2013年-2014年データ)。

2013年度︓71.7万回 ⇒ 2020年度︓74.7万回+7.9万回(関係自治体と協議中)

仙台空港

地方空港名 主な取り組み

中部空港 2019年度にLCCターミナル供用開始予定。

那覇空港、福岡空港 滑走路の増設。那覇空港は2020年に、福岡空港は2025年に供用予定。

LCCを軸とした路線の拡充や東アジア便を増設。旅客減少時に着陸料の負担を軽減する制度を導入。

地方空港の取り組み

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9 September 2018

クルーズ船2017 年の訪日クルーズ旅客数は前年比 27.2%増の 253.3 万

人に達しました(図表15)。また、2017年の日本の港湾へのクルーズ船の寄港回数は前年比 37.1%増の 2,765 回と過去最高を記録しました(図表 16)。世界的なクルーズ船旅行の人気に加え、外務省による個人観光一時ビザの申請手続きの簡略化等の法改正も増加の一因となっています。

こうした動きに伴い、外国籍クルーズ船についても日本の港への寄港が増加しています。以前は大型連休時にスポットでチャーター運航される程度でしたが、2017 年からはコスタ・クルーズ(イタリア)が、2018 年からはプリンセス・クルーズ(米国)が日本発着クルーズの通年化を予定する等、利用者増加によるビジネスチャンス拡大が期待されています。

3

本社所在地

日本に進出した外国航空会社

企業名(日本法人名) 概要

Jetstar Airways Pty Ltd.(ジェットスター・ジャパン)

オーストラリア

春秋航空股份有限公司(春秋航空日本株式会社)

中国

イベリア航空(イベリア航空日本支店)

エアアジア(エアアジア・ジャパン)

スペイン

マレーシア

2011年設立。国内路線数日本国内最大のLCCとして国内外の主要都市と就航中。

2012年設立。成田を拠点とした定期国内線の他、中国の武漢や重慶、天津等の主要都市と定期国際線を就航中。

1998年に日本から一時撤退したが、2016年に東京に支店を設立し、2016年10月よりマドリード・成田直行便運航を再開。

2012年にANAホールディングスとの合弁で日本進出後、2013年に合弁を解消したが2014年には楽天など異業種の出資を受け、再進出した。

外国航空会社の参入状況

出所:国土交通省港湾局 「2017 年の訪日クルーズ旅客数とクルーズ船の寄港回数」

出所:国土交通省港湾局 「2017 年の訪日クルーズ旅客数とクルーズ船の寄港回数」

0

100

200

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400

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2013 2014 2015 2016 2017 2020

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

20112010 2012 2013 2014 2015 2016 2017

外国船社が運航するクルーズ船寄港回数

日本船社が運航するクルーズ船寄港回数

訪日クルーズ旅客数

国内港港湾への寄港回数

目標 500万人

17.4

338

591

929

476 373653

965

1,443

2,014

629628

551

489

574

751

1,1051,001

1,204

1,454

2,017

2,765

177

631

808

41.6

111.6

199.2

253.3

(万人)

(回)

韓国

韓国

韓国

スクート

済州航空

ティーウェイ

シンガポール

本社所在地企業名 概要

韓国のソウル(仁川)から成田、高松、静岡等の便を増設。

エアソウル(アシアナ航空の子会社)

関空や成田とシンガポールや台湾などの都市を就航。2017年7月には台湾のタイガーエと合併、スクートブランドに統一された。

ソウル(仁川)と東京、大阪、福岡等の都市をそれぞれ増便。

主に成田とソウル(仁川)間の便を増便。

日本に発着便を増設・新設した外国航空会社

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10 September 2018

Booking.com オランダ日本国内オペレーションの拡充に向けて、コールセンターの人員や各種営業担当者を大幅に増員。

AAE Japan

オンライン旅行サイト「エクスペディア・ジャパン」を運営する。2006 年に日本語サイトを設立し、2015 年に名古屋支社開設。航空券、ホテル、パッケージ旅行など80 を超えるサイトを運営する。

CTRIP JAPAN(携程旅行網)

中国初の OTA。2014 年12 月に日本法人設立。訪日中国人旅行客の利便性向上や新サービスの開拓に注力。2016 年 4 月には、同社のホテル事業部が大阪支店を開設。関西地域でブランドの浸透を図る。

日本春秋旅行

2012 年に日本法人を設立。同グループ傘下の春秋航空会社と連携し旅行パッケージを提供。訪日中国人旅行客向けにランド・オペレーター機能を提供する。

出所:各社ウェブサイト、報道資料

本社所在地企業名 日本での事業展開

シンガポール

中国

中国

ダイヤモンドビッグ( 旅行ガイドブック出版 )

百度

百度の日本法人と業務提携。「地球の歩き方」が持つ訪日外国人向け情報の中国語版を百度の旅行ウェブサイトに提供。

日本航空( 航空会社)

百度の日本法人と業務提携。同社のフライト情報を百度グループ傘下のオンライン旅行検索サイトに提供。

一休 (ホテル・旅館・レストラン予約サイト)

携程旅行網(Ctrip)

中国最大のオンライン旅行サイト「Ctrip」と訪日中国人向けに

「食」をテーマにした旅行メニューを提供。

高島屋( 百貨店 )

CTRIP の利用者に高島屋の割引サービスを提供。

HIS( 旅行代理店 )

同程国際旅行社(LY.com)

中国の同程国際旅行社と訪日旅行促進に向けた合弁会社を日本で設立。HIS の商品を中国人に販売。

出所:ジェトロセンサー 2016 年 4 月号、各社プレスリリース

百度

携程旅行網(Ctrip)

中国ネット企業日本企業 提携内容

日本でOTAサービスを展開する主な外資系企業 インバウンド観光関連分野での日本企業と中国ネット企業の提携事例

旅行代理業(OTA)①市場動向

日本へのリピート訪問が増加するなど、個人旅行の機会も増えるにつれ、東京・箱根・富士山・名古屋・京都・大阪といった従来のゴールデンルートのみならず、各自が関心のある地方都市の周遊を行うなど、自由に旅行先や日程をアレンジする外国人の旅行スタイルが増加しています。

こうした個人旅行へのニーズに応えるため、海外発 OTA (Online Travel Agent) が日本向け商品の強化を行っています。米国のエクスペディアは日本を重要市場と捉え、国内ホテルやJNTO、自治体関係者約 300 名を招いたパートナーイベントを開催し、戦略的な提携に取り組んでいます。

また、急増する中国人訪日客向けに日本進出をした OTA 等、海外 OTA と国内企業・機関の協業により新たなサービスが相次いで登場しています。

4

②関連法規・許認可

日本で旅行業や旅行業者代理業の経営を行うことに関しては、外国企業に対する出資規制は特にありません。旅行業法により、

「報酬」を得て「旅行業務を取り扱うこと」を「事業」とする場合には、旅行業の登録が必要となります。また、登録の条件には旅行業務取扱管理者の選任や財産基準があります。

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11 September 2018

レジャー・娯楽サービス①遊園地・テーマパーク

日本の遊園地・テーマパークの市場規模(売上高)は 2000 年の 2,985 億円から 2017 年は 6,835 億円となり、2 倍以上に拡大しました。金融危機や東日本大震災等により、一時業績が低迷した時期もありましたが、2012 年以降は景気回復や訪日外国人の増加に伴い、活況を見せています。入場者数に比べて売上高の伸び率が大きく、客単価の上昇も顕著になっています(図表 19)。入場料や、アトラクション料金等の施設利用料が当該業界の基

本的な収入形態ではありますが、キャラクター商品・オリジナルグッズや飲食による収益貢献も大きく、小売店や飲食店においても顧客を引き付ける工夫が求められています。国内のテーマパークの中でも外資企業により運営されている次

の 2 社が注目されています。株式会社ユー・エス・ジェイは、米国法人ユニバーサル・シティ・スタジオ・プロダクションズ他ユニバーサルグループ各社から、知的財産の利用についてライセンスを受けてテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」を運営しています。また、英国のマーリン・エンターテイメンツは、2012 年より屋内型施設「レゴランド・ディスカバリー・センター」を運営してきましたが、日本における集客力の高さを評価し、2017 年には名古屋に屋外型大規模テーマパーク「レゴランド・ジャパン」を開業しました。また、フランスの TEJIX は、日本市場の需要拡大を見込み、大

型テーマパークの音響や照明、特殊効果システムを提供する日本法人を設立しています。このように、テーマパーク等娯楽サービス関連分野として、システム開発やコンサルティングサービスを提供する外資企業の参入も見られます。

5

②地方都市のリゾート施設

地域本来が持つ雄大な自然環境や自然や地域特性の魅力に注目した外国企業による積極的な投資の動きが見られます。長野県白馬村は、上質な雪や日本らしい山岳の景観が人気を集

めています。ハクバホテルグループ (HHG) は、オーストラリア人の投資家数名が出資し設立されました。白馬地域のリゾートホテルや山荘等の施設には、オーストラリアやシンガポールから宿泊者が増加しています(※8)。また、2015 年には中国の上海豫園旅游商城が北海道の星野リ

ゾートトマムの全株式の取得を発表しました。トマムはスキー場のほか、大型ホテルやゴルフ場などを備える総合リゾート施設として、外国人旅行客の人気を集めています。こうした地方都市においては、リゾート施設の利用だけでなく、

農業就業体験や民家での料理体験等のグリーン・ツーリズムも提供されており、地域と一体化した新たな需要創出も見込まれています。(※8)ジェトロ「ビジネス短信:訪日客の受け皿が拡大する白馬村、第 2次ブームに-インバウンド市場と注目企業-」

出所:経済産業省「特定サービス産業動態統計 :遊園地・テーマパーク」

遊園地・テーマパークの売上高と入場者数の推移

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20

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00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17入場料金・施設利用料金 直営の食堂・売店 入場者数

(10億円) (100万人)

(年)

142 179 225 218 205 204 211 212 225 215 231 214 249 288 298 313 308 316

157184

221 209 205 201 211 230 231 224 231216

252283 308

343 351 36856

59

73 75 73 71 71 71 70 67 7064

7276 78

81 80 79

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12 September 2018

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日本貿易振興機構(ジェトロ)www.investjapan.orgCopyright (C) 2018 JETRO. All rights reserved.

Travelex※(英国)

両替外貨両替、外貨宅配サービス、旅行会社・金融機関向けの外貨卸サービスを展開

クレジットカード

三井住友銀行との提携によりATM での出金・残高照会サービスや日本国内における銀聯カードでの支払決済サービスを提供

テンセント(ウィーチャットペイ)(中国)

電子決済 スマートフォンを使った決済サービスを本格化

電子決済ペイパル(米国)

日本旅館協会と提携し、協会の会員旅館の予約サイトにペイパルの事前決済サービスを導入外国人旅行者の取り込みを実施

スクエア(米国)

スマートフォンを利用したカード決済システム

携帯電話を利用したカード決済サービスシステムの提供

出所︓各社ウェブサイト※ジェトロウェブサイト「サクセスストーリー︓Travelex」

2016 年度の税制改正 (※10) により、地方における消費拡大等を図る観点から、一般物品の購入下限額の引下げ等、消費税免税制度の更なる拡充が実現しました。訪日外国人の購買活動における利便性向上のため、外貨両替業務やクレジットカードや電子決済など、金融サービス分野においても多くの外国企業による参入が見られています。

スイスのグローバルブルー社は、株式会社 NTT データとの提携により、小売店が行う免税手続きの業務効率化を支援する

「Tax Freeサービス」を提供しています。また、韓国のグローバル・タックスフリーは、ショッピングモール等を対象に免税手続代行サービスにより、店舗運営の効率化を実現しています。これらは店舗で読み取った利用者のデータを、小売店の POS データ等と連動させることにより、利用者の属性や購入商品、価格等をデータベース化することで、小売店の営業効率化のための在庫管理や売上分析などへのデータ活用を行っています。

このように、付加価値を提供することで、外国企業は日本市場において多くのビジネス参入の余地が見込まれています。

(※10)詳細は 2. を参照。

出所︓観光庁「消費税免税店(輸出物品販売場)の都道府県別分布」

消費税免税店数の推移 (2017年 10月現在 )

外資系企業による金融サービス例  消費税免税店と金融サービス訪日外国人の日本滞在中における活動として、ショッピングは

大きな目的のひとつとなっており(※9)、こうした旅行者の利便性に対応するべく、国内の消費税免税店数も年々増加しています。

(※9)訪日外国人消費動向調査による。

6

4,173 4,6225,777

18,779

35,20238,653

40,53242,791

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

45,000(店舗)

2012.4 2013.4 2014.4 2015.4 2016.4 2016.10 2017.4 2017.10

4

中国銀聯(中国)

企業名 業態 業務内容