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農村交通を考える 誌名 誌名 農村計画学会誌 = Journal of Rural Planning Association ISSN ISSN 09129731 巻/号 巻/号 373 掲載ページ 掲載ページ p. 284-287 発行年月 発行年月 2018年12月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

農村交通を考える農村交通を考える 誌名 農村計画学会誌 = Journal of Rural Planning Association ISSN 09129731 巻/号 373 掲載ページ p. 284-287 発行年月

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Page 1: 農村交通を考える農村交通を考える 誌名 農村計画学会誌 = Journal of Rural Planning Association ISSN 09129731 巻/号 373 掲載ページ p. 284-287 発行年月

農村交通を考える

誌名誌名 農村計画学会誌 = Journal of Rural Planning Association

ISSNISSN 09129731

巻/号巻/号 373

掲載ページ掲載ページ p. 284-287

発行年月発行年月 2018年12月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

Page 2: 農村交通を考える農村交通を考える 誌名 農村計画学会誌 = Journal of Rural Planning Association ISSN 09129731 巻/号 373 掲載ページ p. 284-287 発行年月

□特集論考口

農村交通を考える

A Sutdy of Rural Tranportation

若菜千穂*

Chiho WAKANA

1 はじめに

研究領域において「都市交通」という領域はあるが,「農

村交通」はない。まだ,ないようである。それは,交通

計画や交通工学が,高度経済成長期を背景に都市に集中

する人と物の流動を如何に効率よく円滑に流動させるか

を最大の目的として発展してきたためである。一方,農

村においては,マイカーの普及により交通問題は「移動

や流動」というソフト的なアプローチより,道路問題と

してとらえるほうが現実的であった。しかし,マイカー

に依存したことの当然の帰着であるが,高度経済成長を

支えた団塊の世代が75歳以上となるいわゆる 2025年問

題を前に,高齢者の自動車事故問題に続く免許返納後の

移動の問題が一気に表出し,農村における移動や交通の

あり方への関心高まっている。

筆者が農山村の公共交通を研究テーマに選んだのは平

成 13年頃であるが,当時は「過疎バス」という言葉で

農村の交通問題は表現されることが多かった。過疎地を

走るバスは誰も乗っていない,空のバスは無駄であり,

もっと効率的に運行するべきではないかという問題意識

であった。あれから 20年近く経ち,過疎地にはもはや

過疎バスさえ走っていない時代になった。今は「買い物

難民」や「自動車運転免許返納問題」という言葉のよう

に住民に焦点を当てた問題の取り上げ方がされるように

なった。人々の移動を「交通」に押し込めて捉える時代

から,「そこでの暮らし」そのものの議論まで広げて捉

えるべきという時代になった。今こそまさに,農村計画

を基礎として農村交通を標榜すべき時ではないか。

本稿では,筆者が関わった東北地方の交通や外出支援

の実例をもとに,農村に特徴的に表れる交通・移動形態

(モビリティ)とはどのようなものか,またどのような

課題が発生し,それに対する解決方策の方向性を整理す

る。これにより,農村交通という研究・計画領域の可能

性を探る一助としたい。

2 「公共交通」の変化

これからの農村における交通・移動形態を標榜する前

に,その前提として公共交通の種類や運行要件を整理す

る。路線バスやタクシーなどの公共交通は道路運送法(昭

和 26年法律第 183号)に規定されるが,平成 18年に同

法律が改正されたことを受けて,公共交通の種類や運行

要件も大きく変化しているためである。

道路運送法改正のポイントは 2点である。 1点目は乗

合旅客の運送に係る規制の適正化, 2点目は自家用自動

車による有償旅客運送制度の創設である。実はこれらの

改正は,主に農村のような人口が疎に分布する地域の実

態に合わせた法改正である。

それまで,乗合交通(一般乗合旅客自動車運送事業)

とは,認可を受けた民間交通事業者が「路線を定めて定

期に運行する自動車による乗合旅客の運送」,いわゆる

路線バスと定められていたが,人口減少と高齢化によっ

て,「バス停まで歩いて行けない」という人が増え,バ

スは利用されなくなり,バスは減便や短縮が行われ,ま

すます不便になり,やがて路線自体が廃止になるという

悪循環が日本各地で起こった。廃止後は,市町村が運営

や運行に関与するコミュニティバスや,バスほどの大き

な車両も必要ないということからタクシーが乗合運行を

行う乗合タクシーが,道路運送法の特例条項を適用する

形で運行されるようになった。さらに,タクシー営業さ

え成り立たない地域では,一般住民がマイカーを使って

有償で送迎を行うことができる制度もこの時に誕生した。

その結果現在は,タクシーやマイカーも交通資源と

して活用でき,運行方法も定時定路線運行だけでなく,

予約に応じて運行経路を変えることができるなど,地域

の実態に合った多様な運営と運行方法の組み合わせが選

択できるようになった(表 1)。

本稿では,農村地域における創意工夫の農村交通事例

をバス型,タクシー型,自家用有償型の 3類型に整理し,

農村に特徴的に表れる交通・移動形態(モビリティ)と,

*特定非営利活動法人いわて地域づくり支援センター Iwate Community Support Center

キーワード: 1)農村交通 2)モビリティ. 3) 自家用有償運送, 4)小さな拠点

284 農村計画学会誌 Vol.37, No. 3, 2018年12月

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表 l 公共交通の種類

区分 呼び名 運営 運行 主な車両

路線バスパス パス

大型パスパス 事業者 事業者

(乗合) コミュニティ行政

I~ ス中型パス

パス 事業者

乗合 行政 ・ タクシー セダン

タクシー タクシー* 自治組織 事業者 ジャンボ

(乗用)タクシー

タクシー タクシー ,, 事業者 事業者

自家用市町村有償 市町村 多様 多様

有償*空白地有償 NPO等 NPO等

多様福祉有償 住民 住民

注 :「*」 は,平成 18年の道路運送法改正によって制度化された運行

それを踏まえた農村交通のあり方を明らかにする。

実際には公共交通だけで農村に住む人々の移動が満た

されているわけではない。近隣に住む息子や娘が月 1回

病院に連れて行ってくれたり近所の人が買い物に行く

ついでに乗せてくれたり 週2回程度来る移動販売を利

用したり,様々な機会や支え合いを駆使して暮らしてい

る。正に晨村ら しい要素であり,これらが垣間見える無

償型の移動の事例も 4類型目として取り上げる。

3 バス型農村交通の事例~岩手県岩手町~

(1)地域の概要と外出実態

岩手町は県都盛岡市の北部に隣接する町で.人口

13,525人,町面積 360km2の内農地が 14%.76%が山林・

原野で占められ,キャベツとプルーベリーを町の特産品

とする農村である。

町内には東北新幹線と私鉄が近隣市町村と町中心部を

結んで運行しているほか,町内を路線バスが放射状に走

っている。しかし,路線バスが利用できる地域は一部に

限られており,公共交通ネットワークが見直される平成

29年 10月までは,多くの集落では週 1回町が運行する無

料の患者送迎バスが唯一の公共的な移動手段であった。

平成 28年に行われた路線バスの利用実態調査結果を

見ると.バスの利用者は 60代以上の高齢者による通院

と買い物が半数を占める(図 1)。「その他」 13%は,町

民が良く利用する温泉目的が含まれる。

(2)患者輸送バス

岩手町の移動の最も特徴的なのは.町が走らせる患者

輸送バスである。路線バスが運行していない地域を 1台

の町所有の車両が週 1回, 1日1往復運行していた。利

用者はどのコースも多<.20人を超える日も少なくな

い。実際に乗車して様子を見てみると.一人のドライバ

ーが長年運行している ことか ら利用者一人一人の通院状

況を把握しており,降車の際には一人一人に帰りの利用

の確認も行うなど,乗り遅れ等に対する利用者の不安を

払しよくしていることが大きいと感じた。

80代 20代

20%

図 l 路線パス利用者の年齢と外出目的

資料 :岩手町汽科

注 :平日 2日,休日 2日の乗降調査結果(平成 28年)より

写真 豊岡自治会が運行した買い物パス車内の様子

乗降口に近い利用者が集金係を務める。

(3) 自治会に よる買い物バスの運行

患者輸送バスしか運行していない集落の中でも,特に

利用が多いコースは座席が満席に近くなるため,通院の

ついでに買い物を行うことが難しい状況であった。その

ため,特に困っていた豊岡自治会では, 自治会長が先立

ち,社会福祉協議会を通じて福祉団体の補助を受けて,

月2回の買い物バスの運行を平成 21年から始めた。利

用者からは 1往復500円を利用者の中から集金係とし

て協力してくれる人が集め,運行は民間の貸切バス事業

者に委託をして運行した。豊岡自治会はわずか 38世帯

の集落であるが,毎便 20人を超える利用者がいた。し

かし,福祉団体の補助は 3~5年間に限定されるため,

その継続が課題となっていた。

(4)新 しい交通ネ ットワークの構築と効果

この状況を踏まえ,平成29年 10月から岩手町は地域

の公共交通体系を見直す中で,町民の移動の足として定

着していた患者輸送バスを誰でも 1回100円で乗れるコ

ミュニティバスにした。愛称も「あいあいバス」とし,

明るい桃色をイメージカラーとした。

運行は,利用者の安心感を守るため, これまで患者輸

送バスを運転してきた運転手に引き続き運行してもらう

こととし,増便分のみ民間のバス事業者に委託する こと

にした。買い物にも対応するため,まちなかの乗降場所

にスーパーや駅も加えた。目立つように織をバス停に見

農村交通を考える 285

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写真 あいあいパス

立てて路線沿線に設置し,分かりやすい路線図と時刻表

を全戸配布した。

その結果利用者数はおよそ 1.5倍に増えた。さらに,

免許を持っている 60代が「使えるようであれば免許を

返納したい」と乗車したり農業実習生として来日して

いる外国人の利用も見られるようになった。

バスのサービス水準としては,週 1日が2日になった

とはいえ, 1日1往復と最低限のサービス水準であるこ

とから,利用が伸びた理由はむしろ分かりやすく広報し

たことが影響している。新たに利用した 80代の男性は,

息子が作ってくれたというお手製の時刻表を携帯して乗

車していた。高齢者の家族に対する PRや理解を得るこ

とも非常に重要であり,効果がある。

また,無料を 100円にすることの抵抗感はほとんどな

く,むしろ有料にすることで「だれでも乗れる公共交通」

という認識につながった。

4 タクシー型農村交通の事例~岩手県田野畑村~

田野畑村は,岩手県の沿岸北部に位置する村で,人口

3,432人,村面積 156k面の内, 84%が山林・原野で占

められた漁業と酪農のまちである。

平成 22年に村内の小学校 6校が統合して 1校になる

のに合わせて,村内をくまなく運行していた村営バスを

スクールバスに無料で混乗できるバスに切り替え,同時

に電話予約を受けてドア・ツー・ドア運行を行う乗合タ

クシーの運行を開始した。乗合タクシーは週 3日, 1日

4往復 1回300円で利用できる。

利用者のほとんどは 70歳以上の高齢者で,村内の診

療所に行く利用が多いが,そのほか鉄道駅や金融機関,

村内のスーパーに行く際に利用されている。平成 21年

10月に運行を開始してから,平成 27年まで年々利用者

は増えつづけている (図2)。

予約が必要な乗合タクシーは,導入当初はどの地域で

も必ず「予約が面倒」と否定的に受け止められる。しか

し,運行をしていくうちにドア・ツー・ドアの利便性が

理解され,利用が定着してくる。特に,田野畑村の乗合

タクシーは地元のタクシー事業者 2社がエリアを分担し

5000

0

0

0

0

0

0

0

0

0

40302010

利用者数(人

H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29

西

••

固2 乗合タクシーの利用者数の推移

汽料 :田野畑村査科

て運行している。人口が少ないこともあり,オペレータ

ーと利用者は顔が見える関係となっており,声を聴いた

だけでどのおばあちゃんか分かるようになり,毎週利用

していた人が利用しなくなった時にはオペレーターが電

話をして様子を気遣うなど見守りや外出をコーデイネー

トする役割も果たしている。農村の高齢者のニーズの把

握は「走ってもらうだけありがたい」という我慢強さや

諦めなどが入り混じり,非常に難しいが,公共交通を必

要とする人の暮らしを含めた外出環境を把握しているオ

ペレーターの存在は,運行の適正や改善点などの把握に

非常に役に立つ存在となっている。

5 自家用有償型農村交通の事例~山形県小国町他~

山形県小国町は日本有数の豪雪地帯であり,人口

7,868人,町面積 738k面の内 95%が山林で占められる

農山村である。昭和 40年代から積雪量や町中心部まで

の距離人口減少率等に基づいた「生活圏構想」を打ち

出し,集落移転等を進めてきた。いわゆる小さな拠点の

先駆けともいえ,平成 25~ 26年の国土交通省の小さな

拠点のモデル地域としても 2地区が選定されている。

モデル地区のひとつである北部地区で,平成 29年 11

月から空白地有償運送の実証運行が始まった。北部地区

には町営バスが 1日4往復運行しているが,末端の集落

には週に 1日のみの運行で,利用者も少ない状況であっ

た。そこで町は地区限定の空白地有償運送を地域に持ち

掛けた。地域の実情としても,公民館では週に 3日程度

輪投げを楽しむ会などが開催されていたが,特に冬には

公民館まで行けない人も多く,そのような人は協力隊な

どが個人的に送迎をしている状況であった。

小さな拠点のモデル事業の一環で,地域には北部地区

振興協議会が立ち上がっていたことから,町は振興協議

会を協議の相手として協議を始めた。空白地有償運送の

事例の紹介から,具体的な事業案の提示など協議を重

ねた。話し合う中で, 「必要とされていることは分かる

が,ドライバーがいない。60~75歳は農業など忙しい。」

286 農村計画学会誌 Vol.37, No. 3, 2018年12月

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という意見や,「事故の時,責任は誰になるのか。ます

ます協議会役員の成り手がいなくなる。」という意見が

出されたが,最終的に振興協議会の会長が「小さな拠点

や振興協議会と言われていたけど,何をやっていいか分

からなかった。これだと思う。取り組んでいきたい。」

と発言され,地域として前向きに取り組むことに決まっ

た。問題となった事故対策として,使用する車両は町が

リース車を用意すること,予約の受付は振興協議会事務

局としてこれまでも住民の送迎を行ってきた緑の協力体

職員を任命することとし,彼が行うことで問題がクリア

された。ドライバーは話し合いに参加していた自治会の

代表らを中心にドライバーとなった。実証運行は平成

28年11月の 1か月の間行い,延べ63人の利用があった。

継続意向も強く,平成 29年7月から再び第 2回実証運

行として運行が再開された。運行の再開に当たっては,

リース車両ではなく, ドライバーの自家用車でよいとい

う意見が出され,自家用車を用いての運行となり,運行

にかかる費用は大幅に削減されることとなった。町は,

北部地区の成果を踏まえ,他地区にも空白地有償運送を

広めていく方針である。

筆者は,岩手県内でもいくつかの地区において空白地

有償運送の導入検討を地域と取り組んだ経験があるが,

残念ながら北上市口内地区以外では実現していない。そ

の理由はいくつかあるが,既存のバスやタクシー事業と

のすみわけがうまくいかず,事業者からの合意が得られ

ないという理由以外にもう一つの大きな理由がある。そ

れは「息子や嫁が一緒に住んでいるのに」「空白地有償

運送を頼んでまでどこに行くのか」という声なき声であ

る。顔が見える濃密なコミュニティがある農村らしい事

情が最初は障害となりやすい。口内地区や他事例を見れ

ば,時間とともに薄らぎ,いずれは交通手段の一つとし

て認知されるようになるが,最初は通院や必要最低限の

買い物目的の外出に限定されがちとなる。北部地区はこ

の点については,運行開始前から協力隊が送迎していた

事実があり,彼自身が受付オペレーターを担ったこと,

振興協議会が事業主体となり,積極的に使い方の提案を

行ったことが多くの利用に結び付いた。

6 無償型農村交通の事例~岩手県奥州市~

買い物をしたついでに,みんなでお昼ご飯を食べて帰

ってくるような買い物ツアーバスは,社会福祉系の団体

で行われているが,意外と利用者も多く好評である。利

用している人に聞くと,買い物だけでなく,車内でのお

しゃべりの楽しさや買い物介助,歩くのが遅くても置い

ていかれない安心さが良いという意見が聞かれる。

奥州市内では.デイサービス事業を行う社会福祉法人

が地域貢献活動として, 20年以上前から月 1回無料で

買い物ツアーを行っている。利用者は自分の傷害保険

を1回あたり 20円程度支払うだけで利用できる。この

法人が20年以上この活動を継続できているのは地域

側に利用者を取りまとめる人がいるからである。 7人乗

りの車両にちょうど良くなるような住民への声掛けや.

行き先の選定などのコーデイネートは意外と手間がかか

る。同様に買い物ツアーを行っている他の法人ではコー

デイネートのために職員 2名を配置しており,車両 1台.

月1回実施するので精いっぱいということであったが,

もし地域側にコーデイネートをしてもらえたら.車両3

台出すこともできると言っていた。

平成 28年に社会福祉法が改正され.社会福祉法人は

地域社会貢献の責務を負うことが明文化された。また,

平成 27年に介護保険制度が改正され,住民による移動

支援が介護予防事業の対象となった。今後一層,地域住

民による主体的.組織的な移動支援が促進され.農村交

通の一翼を担うことが予想される。

7 おわりに~農村交通の特性と方向性~

農村に特徴的に表れるモビリティの特性を都市交通と

比較すると.都市交通は巨大な旅客量と都心への一極集

中が一定の時間に集中して起こるのに対して.農村交通

は高齢者中心の少ない旅客量が広いエリアに分散してい

る上に,市街地機能の集積も弱いため行き先も分散する

という移動特性を持つ。また,高齢者のモビリティはド

ライバーやオペレーターとの関係性が安心という利便性

につながるという性質を持つ。

そのため.農村交通のあり方としては.ひとつの交通

モードではなく.複数の多様な交通資源を組み合わせて

効率性と利便性を追求する必要があるが.交通事業だけ

で完結するのではなく.地域住民の主体性や組織性の強

化と連携福祉領域との補完関係の構築も非常に有効で

あり,農村計画的なアプローチが改めて求められる。

表2 都市と農村の交通の特性

項目 都市交通 農村交通

・旅客量が巨大・旅客量が少ない

移動の ・旅客の発生時間も行き先も

状況・一極集中

分散的• 朝と夕に交通渋滞が発生

•利用者の多くが高齢者

課題・混雑の緩和 ・運行の効率性に限界

・排気ガス等による環境配慮 ・少量輸送への対応

交通 ・多量輸送を可能にする鉄道 ・ドア・ツー・ドア性の向上

対策 ・網目状のバスネットワーク ・多様な交通の組み合わせ

方向性 大量輸送+分散 少量輸送+集約

Keywords: 1) Rural Tranportation, 2) mobility, 3) Paid transportation by private car, 4) Small base

農村交通を考える 287