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高齢腹膜透析患者の在宅療養支援の実際 1) (医)三育会 新宿ヒロクリニック 2) 本郷ヒロクリニック 3) 麻布ヒロクリニック 平林あゆみ 1) 英裕雄 2) 井戸田舞 3) 荒井久美子 1) 清水悠紀 1) 奥田純 1) 安達奈都 1)

高齢腹膜透析患者の在宅療養支援の実際高齢腎不全患者に対する腹膜透析治療は、 QOLを高めるなどの理由で有用なことは以 前より指摘されている。病院と在宅医療の

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Page 1: 高齢腹膜透析患者の在宅療養支援の実際高齢腎不全患者に対する腹膜透析治療は、 QOLを高めるなどの理由で有用なことは以 前より指摘されている。病院と在宅医療の

高齢腹膜透析患者の在宅療養支援の実際 1)(医)三育会 新宿ヒロクリニック 2)本郷ヒロクリニック 3)麻布ヒロクリニック 平林あゆみ1) 英裕雄2) 井戸田舞3) 荒井久美子1) 清水悠紀1) 奥田純1) 安達奈都1)

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訪問エリア:東京都内12区 在宅患者数;約400名(癌疾患 42.3% 非癌疾患53.1% 神経難病4.6%) 月間訪問件数;約1100件 月間時間外訪問数;約60件 紹介元機関;医療機関47.8% ケアマネージャー28.8% 患者・家族15.7% 訪問看護ステーション5.5% その他1.8%

スタッフ;医師 常勤6名 非常勤16名 看護師 常勤3名 非常勤5名

理学療法士6名 医療ソーシャルワーカー1名 診療アシスタント11名 事務員8名

三育会 ヒロクリニックについて

理念;誰もが安心して過ごせる在宅医療の提供

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高齢腎不全患者に対する腹膜透析治療は、QOLを高めるなどの理由で有用なことは以前より指摘されている。病院と在宅医療の連携により、腹膜透析を導入し、在宅療養支援を行った5例について報告する。

はじめに

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
高齢末期腎不全患者が増加する中、QOLの向上が望まれる。在宅治療であるPDは利点が多いが、導入や療養支援において特徴が見られます。 透析治療のアクセスの一つとしてのPD, 病院から在宅へのアクセスとしての連携に関連するお話をさせて頂きたいと思います。 病院で勤務される方たちが多い研究会とお聞きしておりますが、日頃支援されている、患者さん達の生活に視線を向けてお聞き頂ければと思います。 在宅医として療養を支援した症例を紹介し、高齢者PDにおける問題点や在宅療養支援診療所の役割について考察します。
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•高齢腎不全患者のQOLの維持・改善、 QOD(Quality of Death)の改善、医療費の効率的利用に有効である。 •治療に伴う侵襲や循環動態の変動による影響が少なく、血液透析に比べ残腎機能の保持や通院回数の優位性がある。 •加齢、認知症など多くの合併症により、自立度が低下していくため、様々な支援が必要となる。チーム医療・介護連携が必要となる。 •介護を要する透析患者が急増しており、老々介護など介護力不足の問題が見られる。交換手技の習得などに時間を要する。

高齢者PDの特徴

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
ここから本題
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患者・家族

訪問看護

地域医療機関 (在宅療養支援診療所含む)

基幹病院

メーカー 配送/患者サポート

配送指示

在宅支援

指示・報告

報告

入院時共同診療

透析指示・検査

日常診療・検査

医療面の高齢者PD支援体制

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
図のように、基幹病院、地域医療機関、訪問看護、介護保険サービスがそれぞれの役割を持ちながら連携している。 基幹病院については、高齢腎不全患者の療法選択、入院でのPD導入・指導・在宅療養継続のための準備、外来維持透析における管理と合併症による状態変化時の入院治療などを行う。特に、生活にあった処方や治療方法の工夫が必要とされる。 地域医療機関は在宅療養維持のための緊急時対応を含めた医療・生活支援を行い、訪問看護指示や介護保険サービス利用がスムーズに行われるような相談や指導も行う。 訪問看護・訪問介護で安全かつ介護負担を軽減して、継続的な治療・療養が行える環境を作っている。 多職種が関わるため連携が重要で、様々なデバイスを用いた連携を行っている。特に入院時に行われるカンファレンスや在宅で開催されるサービス担当者会議は、担当者間で統一した療養方針が確認できるため、有用である。
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症 例

①PD 導入期(PD歴;4か月) ②HD⇒PD変更 維持期(1年6カ月) ③PD⇒PD+HD併用 維持期(2年10カ月) ④PD在宅管理 維持期 (6年;うち、1年4カ月在宅管理) ⑤PD 導入・ターミナル期

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【症例①】76歳男性 COPD 高血圧 原疾患:腎硬化症疑い 家族背景:70歳代妻と同居、要介護2 腹膜透析を選択した理由: HOTを継続しながら在宅療養を行いたい。通院HDは拒否。 現病歴:COPD、高血圧のためT病院に通院し、HOT継続中の平成25年7月、尿毒症症状が出現。T病院からN病院へ転院となり、腹膜透析導入。腸間膜嵌頓、腹膜炎を合併し、透析カテーテルの再挿入、再導入を経て、9月に退院。 退院後の在宅療養支援目的で、訪問診療・訪問看護を導入。

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退院前カンファレンスに出席: 退院後の治療状況、本人・家族の生活スタイルの確認。

在宅療養に関する介護保険サービス、訪問看護の調整。

外来診療と在宅診療の担当領域と連携方法の確認。

問題点を抽出し確認: 二人暮らしの高齢夫妻であり、透析手技や出口部ケアの不安あり ⇒指導内容の統一、見守り方法の確認 呼吸器感染症再燃の危険性あり ⇒呼吸器症状の有無・対応、HOT使用状況を確認

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在宅療養の実際 透析条件:1回 2000 ml 3時間貯留(10:00-13:00) 毎日、接続器使用

退院時の状況:本人は、ノート管理と透析手技の流れのみ理解。一連の透析手技は妻が施行可。

退院後早期の生活目標:夫妻のみで安全に透析が行える。呼吸器感染など身体症状なく安心して生活できる。

月 日 火 水 木 金 土

10:00貯留

13:00排液

排液・出口部ケア 訪問看護

病院受診/訪問診療

排液・シャワー介助 訪問看護

退院後経過:退院後2週間の平日、1回/日訪問看護が訪問し、透析手技の見守り、確認や出口部ケアを行い、問題なく透析を行えるようになった。夫婦でマニュアルを毎回確認しながら透析をすることで、安全に継続。 退院後2カ月で一時的高血圧、嘔気を認め、降圧剤の調整を訪問診療で行った。

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【症例②】74歳男性 出血傾向 アクセストラブル 早期胃癌 足壊疽 原疾患:腎後性腎不全+腎硬化症疑い 家族背景:70歳代妻【主介護者)、30歳代長女と同居 腹膜透析を選択した理由:血液透析を3年間継続したが、感染症、アクセストラブルを繰り返し、出血傾向も出現。血液透析の継続が困難となり、腹膜透析に変更。 現病歴:平成24年8月腹膜透析導入目的でN病院に転院。 入院中、早期胃癌と診断されたが、出血傾向のため観血的治療は行わず、緩和治療のみ行うこととして退院となった。退院後の在宅療養支援目的で、当院訪問診療・訪問看護を導入。

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在宅療養導入期の実際 透析条件:APD+1回 2500 ml 8時間貯留 毎日、接続器使用

透析導入早期の状況:本人は退院時に接続器の使用は可能であったが、透析操作はすべて妻が行う状態 妻は、マニュアル通りの操作を一通りすることは可能だが、不安あり。 手順が異なることもあり。 週3回訪問看護(透析手技の確認、足壊疽の処置)、週1回訪問診療

退院後早期の生活目標:透析を安全に継続する。 起立性低血圧、両趾壊疽のため歩行困難感あり →外出出来る様にする。 退院後の3ヶ月の間に、閉塞アラーム頻回、早朝に強制終了してしまった、APD中の便意に対してハサミでカテーテルを切ってしまった、最終排液時にバッグが破損していた。などのトラブル対応を行った。

透析導入3カ月後の状況:本人によるノート記載、接続器による切り離し、接続を妻の見守りで行う。その他の透析準備、透析操作はすべて妻が行う。 DWを上げることで、血圧低下がみられなくなり、歩行困難感が軽減し、外出が可能になる。栄養指導を受けることで、HD食からPD食への変更が可能となり、足壊疽も急速に改善。

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②腹膜炎, HD

2012/9月 2013/10月 2014/ 2月

1回/週

3回/週

1回/週

1回/2週

訪問看護

訪問診療

PD透析量

入院

12250ml

①意識消失発作

10月 4月

③意識消失発作

9600ml 11600ml 2013/2月

1回/週

1回/2週 1回/2週

1回/週

維 持 期 療 養 経 過

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【症例③】76歳男性 重度視力障害(光覚弁) 原疾患:糖尿病性腎症 要介護2(白杖を使用して、一人で外出可能) 家族背景:妻(鍼灸師)と同居 腹膜透析を選択した理由:時間の有効利用が出来る、穿刺の苦痛が無い、自宅で出来る、自分で出来る 現病歴:平成23年4月腹膜透析導入目的で基幹病院入院。 退院後の在宅療養支援目的で、当院訪問診療・ 訪問看護を導入。

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①排液不良 ②尿毒症 ,HD併用

2011/4 2012/4 2014/ 2

5回/週 4回/週 2回/週 1回/週

1回/週 1回/2週 1回/2週

訪問看護

訪問診療

入院

療 養 経 過

APD7500 ml CAPD 2000ml x2/日

CAPD 2000ml x3/日 6日間+HD1日

1回/週 訪問リハビリ

1回/2週

2013/4

通院介助ヘルパー

1回/週

1回/週

PD透析量

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退院後の在宅療養支援

退院後早期;透析手技・出口部ケアの見守り、指導のために週2回の訪問看護による支援

本人による一連のPD操作が可能になり、趣味の活動も徐々に再開

2か月目:出口部感染 抗生剤内服と外用処置で完治

4か月以降の安定期; 左手首関節炎、下痢、血糖変動、高血圧、透析食の食事指導などを訪問診療で対応

1年2か月目; 排液不良で入院(2か月間)

入院中に筋力低下、視力低下が進行し、独歩での外出が困難になる。

1年5か月目; 訪問リハビリ開始

判断力低下、透析手技も徐々に困難になる。

2年8か月目;尿毒症のため入院。シャント造設し、週1回HD+週6日PD併用に変更

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【症例④】74歳女性 脳梗塞後遺症左片麻痺 CAPD腹膜炎 心不全 嚥下障害(経鼻胃管) 症候性てんかん 高次機能障害 原疾患:慢性糸球体腎炎疑い 家族背景:夫(主介護者)、長男と同居 要介護5 腹膜透析を選択した理由:左片麻痺のため通院困難、血管不良 現病歴:平成20年1月、腹膜透析導入。APD施行。 平成24年10月、繰り返すCAPD腹膜炎、症候性てんかん、嚥下障害のため入院。抗生剤、抗てんかん薬治療の上、経鼻胃管管理となった。退院後の在宅療養支援目的で、当院訪問診療・ 訪問看護を導入。

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在宅療養の実際

透析条件:APD+2000ml 1回貯留 毎日

退院早期の状況:3回/日 経鼻経管栄養、APD操作、ノート記載などを主介護者の夫が行う。 下痢が頻回で、陰部にびらんが見られ、頻回の清拭や陰部洗浄が必要 チェーンストークス様呼吸、胸部不快感の訴えあり 胃管による違和感のため自己抜去を繰り返す。 退院後早期の生活目標:腹膜炎を起こさず、呼吸苦や下痢がなく生活する。経口摂取の再開

月 日 火 水 木 金 土 9:00

11:00

22:00

訪問診療/週

APD終了

病院受診/月

APD開始

訪問入浴/週 訪問看護/週

訪問リハビリ/週

2000ml排液 訪問介護 訪問介護 訪問介護

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退院後の在宅療養支援

退院後1か月;

下痢の持続、肛門周囲のびらん⇒半固形化栄養剤への変更、止寫剤や外用薬の調整

★誤嚥性肺炎、心不全による呼吸苦、発熱、低酸素

⇒HOT導入、抗生剤連日投与、APD条件変更し除水

2か月:高Na血症⇒透析条件の変更と水分投与調整

3か月:胃管の違和感の訴えが強く、自己抜去を繰り返す⇒PTEGや胃瘻造設は家族が拒否し、家族による胃管挿入の指導を開始

経口摂取の希望あり、嚥下リハビリ、口腔ケアの指導を再開

PDチューブ交換施行

10か月:通院の負担から外来受診は中止

11か月:家族レスパイト目的で紹介元の病院に1週間入院。レントゲン、超音波、脳波検査などを施行。

14か月:発語低下、経口摂取量減少に対して、訪問歯科診療導入

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
・往診   合計 22回(平成24年11月ー平成25年2月)      胃管自己抜去  19回      発熱、呼吸苦  1回      肺炎による抗生剤投与 1回      腹痛 1回
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★肺炎・心不全時経過

2012/10/29 2013/1/29 ★ 2012/11/27

IVC (mm) 15 20 16 NTproBNP 54800 150000 39000 Na(mEq/l) 138 146 (12/15 160) 151 CRP 1.12 (11/16 14.67) 1.48 0.65

10/30 11/18 12/15 11/27 入 院 中

APD条件 透析量 8000ml 135 2P+250 2P 3P+1P 2P+2P 2P+2P 0P+4P

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
★ 胸部レントゲン上は心不全をきたしており、入院適応あり。 入院か?在宅継続か? 外来主治医より電話連絡あり、相談。 本人は苦悶様症状なし、家族も在宅療養の継続を希望したため、在宅で肺炎・心不全の治療を継続
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【症例⑤】90歳男性 発作性心房細動 洞不全症候群 パーキンソン病 誤嚥性肺炎 認知症 尿路感染症 廃用症候群 心不全 原疾患:腎硬化症疑い 家族背景:妻と同居 要介護5 腹膜透析を選択した理由:在宅療養を希望 現病歴:パーキンソン病、慢性腎臓病のため長年通院。平成25年4月、尿毒症症状が出現し、K病院でPD導入。入院中に尿路感染症、誤嚥性肺炎、SSSを併発し、IVH管理となった。経口摂取は改善しない状態が続き、本人家族とも在宅療養を希望したため、PD・IVH管理のまま退院。 自宅看取りも見据えて訪問診療・看護が導入となった。

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在宅療養の実際 透析条件:1500 ml 2時間貯留x2 回 毎日 接続器使用

退院時の状況:IVHルートのみヘパロックで留置。尿カテーテル留置し100ー200ml/日程度の排尿あり。少量の経口摂取が可能。意思疎通は良好。全介助。 透析交換は近くに住む長女がすべて施行。 訪問看護 週6日1回(注液、膀胱洗浄など)、訪問介護 毎日2回 訪問診療 隔日→毎日

退院時の目標:尿路感染症や誤嚥に留意しつつ、安心安全に療養を継続する。

退院後経過:退院3日目より微熱、尿混濁による尿カテ閉塞を繰り返し、膀胱洗浄や尿カテ交換を連日で施行。6日目に痰がらみが出現し吸引器導入。炎症反応の上昇に対して、抗生剤、点滴500ml投与を開始し1週間継続。低下する経口摂取量に合わせて透析を週3日に減量。 退院17日目まで、本人の好む物のみ少量づつ摂取していたが、18日目、痰がらみが強くなり吸引などの対応を行ったが、家族の見守る中安らかに永眠。

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
実際の透析の様子;ビデオ参照
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5例を通して

PD導入期には、訪問看護により、時間をかけて1対1対

応ができ、自宅のスタイルにあわせた指導が行える。

本人、妻の生活スタイル・希望にそった支援を、共に考えて行うことができる。

外来受診や入院時に連携を密に取り合い、退院前に在宅スタッフが介入することで、ADL低下や透析条件変更に伴う介護負担軽減のためのサービス変更などがスムースに行える。

・PD治療を最期まで継続しながら、在宅療養を継続すること

が可能で、終末期には緩和治療やケアを併用していくことができる。

良かった点:

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•加齢、認知症などの合併症により、自立度が低下していく。 •介護を要する透析患者が急増しており、老々介護など介護力不足の問題が見られる。

・ 本人や家族による透析手技が困難な場合、介護や看護による支

援が必要であり、介護保険や医療保険による介入が不可欠。

・ 訪問看護は、介護保険を利用する高齢者では、訪問回数が多く

なると自己負担が大きくなる。

・家族の介護負担軽減のために、ショートステイ、デイサービスなど

の利用が期待されるが、受け入れ施設が少ない。

高齢者PD支援の問題点

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
介護を要する透析患者が急増しており、老々介護など介護力不足の問題が見られる。 加齢、認知症などの合併症により、自立度が低下していく。 ・ 本人や家族による透析手技が困難な場合、介護や看護による支援が必要であり、介護保険や医療保険による介入が不可欠。 ・ 訪問看護は、介護保険を利用する高齢者では、訪問回数が多くなると自己負担が大きくなる。医療保険での訪問看護適応疾患の拡大が必要。 ・家族の介護負担軽減のために、ショートステイ、デイサービスなどの利用が期待されるが、受け入れ施設が少ない。
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高齢者PDにおける在宅療養支援診療所の役割の試案

*合併症の予防・支援 *ADLや介護度の変化に応じた治療・療養選択の支援 *在宅療養支援のまとめ役(退院前の療養環境整備へのアドバイスをする、訪問看護への指示と緊急対応など) *訪問看護ステーションや福祉施設への働きかけ、研修などを行う。 *QOLとともにQODを高める。 PDを継続し、緩和治療も併用することで、住み慣れた自宅での看取りまでを支援。 *HDから移行する、PDラストのための療養支援。

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日本在宅医学会 COI開示

筆頭発表者名:平林あゆみ

演題発表に関連し、開示すべきCOI関係にある企業などはありません。