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議麟縫懸難難i 3.核融合炉の複合工学 (東京大学工学部) (1986年10月18日受理) First WaH and Blanket Technologies Haruki Madarame (Received October18,1986) Abstract First wall a皿αblanket technologies are discussed and re -eviewed.First wa,ll and blanket are major components of a their ow皿important functions.The aim of their desig皿is to f perform the re(luireα functions unαer constr&ints from oth req皿ires皿ot only developme皿ts i皿various engineering fields knowledge.Further efforts are needed before we get我viable blanket for fusio皿power reactors. まえがき 核融合炉工学は核融合炉を実現するための工学で,従来の学問体系に照らしてみると広範囲の分野が関係 している。問題解決のためには各分野で努力が払われる必要があるのは勿論であるが,核融合炉工学として の新しい体系化も望まれる。第一壁を例にとると,その課題解決には,プラズマー壁相互作用,材料,構造, 熱など幅広い分野での努力が必要である。また,諸要求のバランスをとって設計上の判断を下していく様, 第一壁工学が1っの学問分野として成熟していることが望まれる。表3・1に機器に着目して新しい分類を 試みた例と従来の工学分野の関係を示す? 本解説は上記のような視点に立って複合工学としての第一壁工学,ブランケット工学を説明することを目 標としている。しかしながらこれらの体系化はまだ確立したものではなく,何を重要とみるかは研究者ごと に差がある。さらに一連の本講座で既に十分な記述のあったものについては,頁数の都合で省かぎるをえな かった。主として私の力不足故,かならずしもバランスのとれた解説とはならなかった点,最初におわび申 し上げる。 Deραπ窺e魏oブ1〉秘cleαγEη8∫πεeγZηg,Fαc%1勿oブEηg劾eeT珈g,Uηあeγs∫勿o〆Toゐ“ 389

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議麟縫懸難難i

3.核融合炉の複合工学

  班  目  春  樹

   (東京大学工学部)

 (1986年10月18日受理)

First WaH and Blanket Technologies

Haruki Madarame

(Received October18,1986)

Abstract

   First wall a皿αblanket technologies are discussed and recent studies on them are

-eviewed.First wa,ll and blanket are major components of a fusion reactor,which have

their ow皿important functions.The aim of their desig皿is to find out the sohtions which

perform the re(luireα functions unαer constr&ints from other component design. This

req皿ires皿ot only developme皿ts i皿various engineering fields but also the i皿tegration of

knowledge.Further efforts are needed before we get我viable design of first wall and

blanket for fusio皿power reactors.

まえがき

 核融合炉工学は核融合炉を実現するための工学で,従来の学問体系に照らしてみると広範囲の分野が関係

している。問題解決のためには各分野で努力が払われる必要があるのは勿論であるが,核融合炉工学として

の新しい体系化も望まれる。第一壁を例にとると,その課題解決には,プラズマー壁相互作用,材料,構造,

熱など幅広い分野での努力が必要である。また,諸要求のバランスをとって設計上の判断を下していく様,

第一壁工学が1っの学問分野として成熟していることが望まれる。表3・1に機器に着目して新しい分類を

試みた例と従来の工学分野の関係を示す?

 本解説は上記のような視点に立って複合工学としての第一壁工学,ブランケット工学を説明することを目

標としている。しかしながらこれらの体系化はまだ確立したものではなく,何を重要とみるかは研究者ごと

に差がある。さらに一連の本講座で既に十分な記述のあったものについては,頁数の都合で省かぎるをえな

かった。主として私の力不足故,かならずしもバランスのとれた解説とはならなかった点,最初におわび申

し上げる。

Deραπ窺e魏oブ1〉秘cleαγEη8∫πεeγZηg,Fαc%1勿oブEηg劾eeT珈g,Uηあeγs∫勿o〆Toゐ“o,To1吻0113.

389

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核融合研究 第56巻第6号  1986年12月

表3・1 核融合炉工学の分類

新分類

(1)炉心工学

(2)第一壁工学

(3)ブランケット工学

(4)トリチウム工学

(5)遮蔽工学

(6)真空工学

(7)超電導磁石工学

(8)システム工学

(9)安全性

従来の分類

。プラズマ制御

・電気工学

・プラズマ壁相互作用

・材料工学

・構造工学

・熱工学

・トリチウム増殖,分離,回収

・中性子工学

・真空工学

・超電導材料

・低温工学

     ・システム工学

     ・安全性

1. 第一壁工学

1-1 第一壁とは

 磁場閉込め核融合炉は図1に示すように四重の容器

となってし、るの.、番醐壱こは磁場の壁があるが,電 一   磁場の壁                                  エネルギー・粒子                                    収受壁磁波や中性子,荷電交換で生じる中性粒子は自由に通                                    真空壁り抜ける。2番目がプラズマから逸出してくる粒子や      ノ/’轍、\                           ノ     、      ブランケット                           ’炉心   、      ・遮蔽放射のエネルギーを受けとめる壁である・核融合反応      1 プラズマ1                           、       ’                           ¥       ノで生じるエネルギーのうち中性子によって運ばれるも       \  ノ                            、r鴫一’の以外はこの壁で吸収される。粒子の持つエネルギー

は大部分がリミターやダイバータ板へ運ばれるが,放

射のエネルギーはプラズマ全体を囲う第一壁に入射す       図3。1壁の四重構造

る。3番目は真空境界を形作る壁セ,全く独立な場合

もあるが一般には2番目の壁がその一部を形成する。1番外側には真空境界を突抜ける中性子を閉込める厚

い壁一ブランケット・遮蔽が配置される。慣性核融合炉の場合は1番内側の磁場の壁が燃料ペレットのプ

ッシャーを押す慣性力に置換わる。その他の壁は磁場閉込め炉と大きな差はない。

 第一壁とは一般にこの2番目の壁のうちリミターやダイバータ板を除くもの,すなわちプラズマを広く囲っている壁

のことを指す。しかしプラズマから逸出してくる粒子やエネルギーに直接さらされる一番内側の物質の壁という意味

からは,リミターやダィパータ板も第一壁の一部と考えるべきで,ここではそれらに関する解説も若干含める。

390

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講座 核融合炉の複合工学 班 目

1-2 第一壁への要求

 第一壁はプラズマに直接対向しており,図3・2

のように厳しい熱負荷・粒子負荷を受ける。こ

の環境下でプラズマに悪影響を与えることなく

構造健全性を維持し,プラズマと周囲の構造物

の接点となることが,第一壁に要求される機能

である。高熱負荷を受けることから,耐熱応力・

熱衝撃特性に優れていなければならない。固体

壁に粒子が入射すると,スパッタリングなどのプ

ラズマー壁相互作用(PWI)を生じる。これは

第1にプラズマ中に不純物が放出される現象と

して問題であり,第2に第一壁が損耗するので

構造健全性を保つ上で問題である。中性子の大

部分は第一壁をただ通過していくが,照射量が

多いためスウェリングその他の照射損傷を引起

こする照射損傷は特に実用炉級の核融合炉で重

要になる。

 第一壁の構造健全性が維持されるためには副

次的な負荷として,冷却材の圧力や,変動磁場

で生じる渦電流の効果による電磁力にも耐えね

ばならない。自重も何等かの方法で支持されね

ばならないのは当然である。表3・2に示した『

これらの負荷条件3)に加えて、第一壁は表3・

3のようないろいろな制約条件の下に置かれる。

例えばプラズマ電流の立上げを阻害しないよう,

トロイダル方向の1ターン抵抗は十分高くなけ

ればならない。中性子吸収の大きい物質をたく

さん用いて,ブランケットのトリチウム増殖に

悪影響を与えてはならない。第一壁材は冷却材

その他の接する材料との両立性も要求される。

貴重な燃料であるトリチウムを吸着することは

好ましくなく,冷却材への透過も場合によって

通常負荷

 { 熱負荷 粒子負荷

中性子

放射エネルギー⇒中性粒子

第一壁

一荷電粒子⇒

構造健全性

 熱応力・熱衝撃

 PWl 照射損傷

  電磁力その他

デγリ1一一

  図3・2 第一壁の受ける負荷と構造健全性

391

表3・2 第一壁の受ける負荷

熱負荷定常負荷/課羅束NBI突抜けディスラプション

粒子負荷 中性粒子荷電粒子*1

機械的負  荷 冷却材内圧ブランケット内圧*2

電磁力ディスラプションプラズマ立上げ時

自 1重

地震荷重

*1リミター,ダイバータ板

*2ブランケットー体型

表3・3 第一壁設計への制約条件の例

プラズマ純度   一  高Z材汚染

プラズマ運転制御 →  渦電流

ブランケット   →  増殖率への影響

燃料系     →  トリチウム吸着・透過

真空系     →  脱ガス率

分解修理     →  放射化

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核融合研究 第56巻第6号  1986年12月

は阻止しなければならない。このように第一壁は核融合炉の構造物とプラズマとの接点に位置し,両者から

の厳しい要求を受ける。以下では特に重要な事項だけを取上げて簡単に解説する。

・1-3  粒子負荷とスパッタリング

 ヘリウム灰の排気とともにプラズマ炉

                     炉心プラズマ           炉心プラズマ心から拡散で流出する高温荷電粒子の処  一一一一一一一一   一一一一一一自一                              磁力線理のため,図3・3に示すリミターやダ

イバータが用いられる。リミター板は直              第一壁

接プラズマスクレイプオフ層に接するた                      1

め,高温荷電粒子入射による損耗プスパ                     ポンプリミター          磁気ダイバータ

ッタリングが激しい。スクレイプオフ層

                       図3・3 リミターとダイバータのイオンや中性粒子温度は実験や解析で

見積る努力が払われているが,INTOR

では低温として数10酬,中温で数1006V,高温で数10006Vとしている。最も可能性の高い中温のとき,

損耗は最も厳しい。ダイバータの場合は遠隔放射冷却によリダイバータ板へ入射する粒子温度を下げられる

ので,スパッタリングに関してはずっと有利である。ダィバータ室へ導かれたプラズマはそこの中性粒子

と荷電交換反応等を行う。その過程は複雑であるが,低温高密度プラズマがダイバータ板前面に形成されれ

ば板は損耗から保護されることになる。第一壁の場合入射粒子は荷電交換で生じた中性粒子であり,粒子負

荷に関してはリミターやダイバータ板よりずっと軽い。しかしより長寿命を期待されること,プラズマヘの

不純物の混入という点では影響が大きいことから,決して無視できない。

 固体表面があるしきい値以上のエネルギーを     1                      10                                    ノ                         ーD+    Fシ1!鞠持った粒子で照射されると固体原子のはじき出                                  ノ  ノ                         ー一He+     /ノ!                                 ノ  ノしが起きる。これを物理スパッタリングと呼び,  言100                         一一Self・ion   /ノ                                ノ   ノ                               !/ノ〃(くミ\c                     ぺ                     ゆ                          霧愈入射粒子1個当たりの放出原子数をスパッタリ   ∈                     8                     ε10曽1ング収率という。スパッタリング収率は壁材料,  辮                     警                     3犠入射粒子の種類とそのエネルギー・入射角など   A  -2                      10                     コの関数となり,実験値・理論式等が整備されて   蟻                     お                      ノいるの。図3・4にその一例を示すめ。第一壁   長10“                             Fe  W

ではD,T,Heといった軽い粒子によるスパッ                          Be C   Fe  W                       鵜4                      10                         ロ      ま                           ヨタリングが特に重要である。同時にスパッタリ     10  10  10  10  10  10                              イオン温度(eV)ングで不純物としてたたき出された粒子の再入

                         図3・4 スパッタリング収率計算値躯を考える場合,自己スパッタリングも無視で

きない。

磁力線

第一壁

1

392

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講 座 核融合炉の複合工学 班 目

 スパッタリングによる壁材のはじき出しと同時に,その堆積がどこかで生じるはずである。実効的損耗量

は両者の差できまるので堆積挙動も重要であるが,これについては研究が進んでいない。他に合金系などで

は選択的にある元素がはじき出され,その欠乏層が表面付近に生じることによる問題がある。黒鉛などでは

化学反応を伴うスパッタリングを生じる。すなわち入射した水素が反応してメタンが生成し出ていくことに

より,600℃付近で損耗が激しくなる。第一壁の粒子負荷による損耗の問題は今のところプラズマの挙動に

関連した未知の点が多いが,材料側の課題も残されているのが現状である臥6)。

1-4 ディスラプション7)~9)

 放電中のプラズマが突然不安定になり,急速に消滅する現象がプラズマディスラプションである。ここで

はメジャーディスラプションと呼ばれる放電停止に至る最悪のものを考える。トカマクでは少なくとも次期

装置まではディスラプションは避けられないものとされ,これが第一壁の設計を非常に難しくしている。通

常運転時の熱負荷による熱応力・熱衝撃の問題はディスラプションヘの対応が可能ならそれでほぽ包絡され

る。

 ディスラプション時に第一壁が受ける負荷を図3・57)に示すが,主として熱負荷と電磁力であり,特に

熱負荷の影響が大きい。最終的にはほとんど全てのプラズマエネルギーがリミター等を含む第一壁に放出さ

れるが,負荷の厳しさは放出先の空間分布と放出エネルギーの時間変化に影響される。空間的には狭いとこ

ろに集中するほど,また時間的には短時間に放出されるほど負荷として厳しくなる。非常に高い熱負荷を受

ける壁の挙動を模式的に図3・6に示す。入熱量が熱伝導で固体内を拡散していく量をはるかに上回るため,

まず溶融,そして蒸発を生じる。このモデルではディスラプション継続時間中の熱負荷を一定と仮定してい

プラズマ・エネルギー

電磁エネルギー

STEP

① P」^SMA

熱エネルギー ③

渦 電 流

熱 負 荷

外部磁場

電 磁 力

材料挙動 構造強度  構造強度

動的安定性   動的安定性

非弾性挙動   破壊力学

破壊力学

x、R冷丁巳丁55

Pb5m3㎞5

1

r「》丁55   蟹

4x嚇→ ドMolt

し8yo T〉Y55

4X暫一司ドー

}“ T》丁55

    lT糀課F倉叢

臨1……I

    t旨O  Fo踏F翼十Fi

tm>t> Fo

t>tm Fo

t>t溜 Fo-Fd(t)

溶融

蒸発

図3・5 ディスラプション時の負荷

整耀卸⑧ 閲一・

図3・6 ディスラプション時の第一壁の溶融・蒸発モデル

393

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核融合研究 第56巻第6号  1986年12月

るが,継続時間をパラメータにとり,壁材は316

SSとしたときの蒸発厚さ,溶融層厚さを図3・7

に示す。蒸発量はそのまま壁の損耗につながるの

に対し,溶融層はそれがその場で再凝固するので

あれば再び構造健全性に寄与できる可能性はある。

しかしながら電磁力その他の作用下で溶融層が安

定でいられるか,凝固時にクラックを生じないか

等,間題は数多くある。さらに溶融にまでは至ら

なかった部分についても,急激な温度変化のため

塑性変形を生じている。次期装置などではディス

ラプショ≧を生じても第一壁は繰返し使用できね

ばならないが,第一壁がどこまでディスラプショ

ンに耐えられるのかがディスラプションの壁への

負荷条件とともに大きな課題になっている。他に

ディスラプション時には電磁力も大きな問題では

あるが,適切な設計である程度避けられること・

構造工学の解説でも触れられていることから,こ

こでは省略する。

1-5 熱負荷限界

 核融合反応で生じるエネルギーのうち中性子で

運ばれるもの以外ほ,ナミター/ダイバータ板を

含む第一壁今入射し風くる。実用炉級になるとリ

ミター等への熱舗曝中を避けるため・放射に

よって第一壁べの入熱を増すことが考えられてい

るめ.したが逸論粒子の大きな熱負荷を受け

るリミター轡、づ」タ板と同様・第一壁の熱負

荷も高い。勿論これは炉を大きくし出力密度を下

げれば低下できるが,それでは経済的に核融合炉

は成立しない乏ぎれている。第一壁の熱負荷限界

は図3・8に示ずように,壁の熱応力と冷却材の

除熱能力で決まる。壷の一方が加熱され他方が冷

却されて小るとき』そこに生じる熱応力は線膨張

_300ε

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0   200  400  600  800  1000  1200 1400  1600

   E旺RGYDENSlTYIJ/cm21

   (a)溶融層厚さ

 20ε

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乙二“⇒匡9う

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   ENεRGY D印SITYIJlcm21

   (b)蒸発厚さ

図3・7 ディスラプション時の蒸発・溶融

10

熱負荷限界

1,0

除熱限界

co.9

~の

ピ詫の F乙

¢oし鴇男

養轟iii

iii

」」 ・

熱応力限界

内外温度差

熱伝導率

材料強度

図3冨8

 ガス冷却一境膜温度差

水冷却一限界熱流束

液体金属冷却

 L流速制限一MHD圧損

熱負荷限界「

394

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講,座 核融合炉の複合工学 班 目

係数とヤング率に比例し熱伝導率に反比例する。この熱応力に対し許容応力が高い材料ほど好ましく,オー

ステナイト鋼よりはフェライト鋼が,さらにはバナジウム合金などの高融点金属が好ましい10〉。銅やアルミ

合金もこの点では非常に優れているが,特にアルミは低融点のため使用温度が抑えられるという間題がある。

 除熱限界は冷却材によって大きく異なる。ガスは熱伝達率が低く,冷却面温度が冷却材温度よりかなり高

くなる。このため1MW/m2の除熱も困難である。水冷却は限界熱流東を超えると突然冷却不良になるもの

の,その限界も数MW/m2と高くその範囲内では熱伝達率は非常に高い。液体金属冷却は強磁場下では乱流

が抑制されるほか,MHD効果による大きな圧力損失の問題があるので不利である。しかしMHD圧損の低

減に成功した場合,冷却材がトリチウム増殖材を兼ねられるという大きな利点があって魅力的である。現段

階ではMHD効果について不明な点が多く11’12),今後の大きな研究課題とされている。

 第一壁構造材と冷却材は両立性の点から独立には選べない。また構造材選択においては材料開発に要する

時間や投資も考慮せぎるをえない。実用炉ではフェライト鋼ξ水ないしHeガス,バナジウム合金と液体リチ

ウムの組合せが有望とされている1鳴

 中性子による照射損傷は第一壁工学の大きな研究課題の1つであるが,これは既に核融合炉構造材の解説

の中で詳細に述べられているのでここでは省略する。

1-6  トカマク炉の第一壁設計例

 、第一壁の構造は図3・9のように分類できる3も 一体型は

ブランケット容器壁を兼ねている。単純構成となるが・ト

リチウム増殖領域に接すること,ブランケット内圧を保持

する必要があることから,負荷は若干重い。第一壁はプラ

ズマと相互作用するため,スパッタリングによる減肉を無     溝なし 溝付き  低z材 4、スノマッタ

視しては設計できない。壁厚は運転開始時と終了時セこの                 リング材

                            図3・♀.トカマク炉第一壁構造の分類減肉分だけ変化する。ところで普通の形状では熱応力は壁

厚に比例する。減肉後は問題ないが,減肉前は熱応力のた                         ブランケット容器壁め損傷してしまう・そこで減肉分は熱応力‘こ寄与しないよ 心∠ 冷却材流路

う溝を堀ることが行われる。プラズマ側にアーマ材を張付        応、

                                 \、け,減肉はそこに負わせることもある。この場合,プラズ

マ不純物制御の観点からアーマ材は低Z材が望まれるが・

減肉量の観点からはむしろ中Z材が有望である。アーマ材

の採用は利点も多いが,どのようにして接合するかという

技術的課題はなお未解決である。

 分離型溝付き第一壁(アーマ材無し)の概念図を図3・

10に示す3老この例では冷却流路は矩形断面であるが,冷

第一壁構造

一体型第一壁 分離型第一壁

構造材単独 アーマ材付き

トリチウム

増殖領域

冷却材流路

図3・10

園「「

プラズマ

エロージョン層

支持部材

第一壁構造例

  (分離型・構造材単独・溝付き)

・395

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核融合研究 第56巻第6号  1986年12月

却材内圧による応力に対しては円管の方が強い。製作性からも円管を並べる構成には魅力があるが,減肉対

策を考えると構造は複雑とならざるをえない。

 表3・4は第←壁の置かれる環魔条件を示しているの。実験炉の第一壁設計の困難さと実用炉のそれとでは若

干の差がある。実験炉では運転モードがパルス的となるので負荷変動が大きい。構造材は繰返し荷重を受け

ると疲労破壊するが,実験炉ではこの疲労で第一壁の寿命が決まるといってよい。一方,実用炉ではタービ

ン発電機側としても断続運転モードは好ましくなく,第一壁の寿命からは定常運転モードでなければ炉とし

て成立しないというのが定説である。定常運転では負荷変動は起動停止時だけとなるので,疲労はあまり問

題とならない。そのかわり経済的に魅力あるものとするため負荷の絶対値が増え,定常応力が大きくなる。

ディスラプションは実用炉では起きてはならないものと位置づけるなら,実験炉の第一壁の最大の困難が取

除かれる。実験炉の第一壁熱負荷は小さいようであるが,その分ダイバータ板の負荷が厳しくなっている。

実用炉において両者の比を同じにしたまま負荷の総量を増やしたのではダイバータ板は設計不能である。第

一壁の負担を増やさぎるをえない。なお,実用炉の第一壁負荷は表の値の数倍にしなければ経済的に魅力あ

るものにはならないという説も出てきている。この場合第一壁自身の設計に革新的アィデアを必要とすると

同時に,ディスラプション防止,スパッタリングの軽減などプラズマ側への要求も大きくなる。

1-7 慣性核融合炉の第一壁

 第一壁研究の中心はトカマクを始めとする磁場閉込め炉用のものであるが,慣性核融合炉の第一壁もその

実現可能性に係わる重要課題である。慣性核融合炉では図3・1の1番内側の磁場の壁がないため,第一壁

の粒子負荷,熱負荷を制御することは難しい。炉容器を大きくし負荷を分散させることが唯一効果的な方法

表3・4 トカマク炉第一壁の環境条件

実験炉*1 実用炉*2

平均中性子壁負荷(MW/m2) 0.88~1。5 3~4積分壁負荷  (MW・yr/m2) O,3~6 15~20熱負荷            *3表面熱流束 (MW/m2)

O.1~O.2 O。8~曜.O

核発熱密度 (MW/m3) 10~15 35~40粒子負荷

中性粒子  (n/m2・sec) 3~15×1020 ?

中性粒子エネルギー(eV) ~200 ?

運転モード

燃焼時問  (sec) 100~2000 連  続

サイクル数 (回) ~250 一ディスラプション

熱エネルギー(M」/m2) 1,3~1。7 2~4消減時間  (msec) 15~50 50~100回 数   (回) ~1000 一

*1FER,INTORなど*2STARFIRE,SPTR-Pなど           2*3ダイバータ板では実験炉で~2MW/m

396

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講 座 核融合炉の複合工学 班 目

となる。負荷がパルス的にかかることも設計を難しくする。しかしながら慣性核融合炉では炉容器内の真空

度は104~10-3Torrで十分なため,液体第一壁という概念が成立しうる。例えば図3・11のように液体リチ

ウムの流れが炉容器を形成していても,その温度があまり高くなければ蒸気圧が所要の真空度を損なうこと

・はない13).

 液体第一壁はそれ自身の損傷の問題は考えなくてよいことなど利点は多いが,炉容器中央でのペレットの

核融合反応による小爆発のエネルギーを受けてどう

振舞うかなど未知の点も多い。現在はいかにして液          LITHIUM

                             lNLET体流で炉容器内面を覆うかというアィデァが提出さ    RεACTORVESSEL                              塩夢・L・.詠れたところで,その実現可能性などは今後の課題で

ある。なお慣性核融合炉の第一壁を固体壷で構成し

ようとする設計もあり・厳しい負荷からいかに保護

するかその方法もいくつか提案されている14)。

1-8 、第一壁の設計手順

 トカマク炉の第一壁の熱構造設計手順を図3・12

に示す3)。第一壁の設計は核融合炉全体の設計と切

離して考えられるものではないが,これは主要パラ

メータとして全機器特性のバランスをとってまず設

定される。最も重要なパラメータは中性子壁負荷で

ある。これから第一壁の核発熱率は材料を決めれば

求まる。表面熱負荷はリミター/ダイバータとの配

分になる。本来はリミター/ダイバータを設計すれ

POROUS METALBLANKET

 I

l’Li

LASεRlNJECTIONPORT

      \  轟ミ‘:’       \

   5m  」_」_L_一_』   ㌔”, LITHIUM

         OUTLET図3・11 液体第一壁

    (レーザー核融合炉SENRl一皿の例)

中性子壁負荷ブランケット設計 運転条件異常負荷条件

表面熱負荷核発熱率

第一壁形状一体型分離型

肉  厚  減耗しろ  細部構造  構造解析  寿命評価

一次応力二次応力 疲労クリープ照射損傷

構造材単独溝の有無アーマ材採用

図3・12 卜力マク炉第一壁の熱構造設計手順

397

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核融合研究 第56巻第6号  1986年12月

ばプラズマの振舞いから配分割合が決まるものであるが,未知の点が多いので割合を仮定しているのが現状

である。この際リミター/ダイバータの負荷がその設計を不可能とするものであってはならない。第一壁の

構造,冷却方式は熱構造解析を繰返して決めていく。実用炉になると熱負荷が高く,プラズマ側と冷却材に

接する面とに大きな温度勾配が現れる。その厚さが薄すぎると冷却材の内圧のような機械的荷重に耐えられ

ず,また厚すぎると熱応力が過大となる。設計可能な幅は広くない。スパッタリングやディスラプションに

よる蒸発を考慮して,予め損耗層を付加しておく必要もある。損耗層の厚さは,粒子負荷の大きさ,ディス

ラプション荷重の大きさ等プラズマ設計と密接な連絡のもとな定めねばならない。詳細設計を終えた後,予

想される様々な荷重を考慮して寿命評価を行う。減肉による機械的応力の増加,照射によるスエリング,疲

労等を考慮して,所要の寿命を有しているかを解析するが,その結果次第では設計をやり直すことになる。

なお,他の機器に大きな悪影響を与えない配慮は常に必要である。

1-9 第一壁工学の課題

 第一壁に係わる開発課題を表ぎ・5に示す1’11≧        表3・5 第一壁の研究開発課題

プラズマの振舞いは第一壁の設計条件に強く影響

し,しかも現段階では最も不確定要素が大きいと

いう意味で,最重要課題であるが,表は炉工学の

立場からまとめられている。

 第一壁は機械的負荷による応力に比べ熱応力が

大きいという特徴を持つ。このような構造物の健

全性を保証する設計基準の必肇性は,構造工学の

解説の中でも取上げられている。製造法が確立し

ていなければ第一壁を製作できないのは勿論であ

るが,長寿命は期待できないことから保守・交換

技術の確立も非常に大切である。これはメンテナ

ンス工学の解説の主題で南る・』その他・表中の項

目はこれまで多少は触れてきたものばかりであり,

詳しい解議はここでは省略する。・第一壁工学の課

題は今後研究開発の進展とともに変わっていくも

のである。核融合炉工学の難しい課題のかなりの

部分がこの第一壁工学にある。その解決には既存の工学専門分野ごとにバラバラに取組むだけでなく・総合

的視野からの取組みが必要であ属。さらには工学だけでなくプラズマの振舞いまで立入って第一壁を考える

姿勢も必要となろう。

プラズマ関連テーマスクレープオフ層の物理ディスラプションの負荷条件

中性子照射損傷 物性変化・材料挙動

構 第強度パラメータの変化変形・破損

、出鳩 } ディスラプション 溶融・蒸発

壁 による損傷 溶融層の安定性

材 熱応力・熱衝撃の 電磁力評価1

関 寿 プラズマー壁相互 物理スパッタリ、ングと再付着

ム作用 化学ズパッタリング

連ロP アーキングによる損傷

評ブリス1タリング

テ価

強度の予測 構造設計基準亀裂保有材の寿命評価

1 疲労強度

アーマ材・コーティング 接合法の開発マ 溶着部の機械特性

プラズマー第一壁燃料ダイナミックス

冷却材関連テーマ 水冷却特性

ガス冷却特性

液体金属冷却特性

製造保守関連テーマ 製造技術

欠陥検出・補修技術遠隔操作

データベースの整備

398

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講座 核融合炉の複合工学 班 目

2. ブランケット工学

2-1 ブランケットとは

 核融合炉ブランケットの機能は基本的には,①核融合反応で発生する中性子を利用したトリチウムの生産と

回収,②中性子により運ばれてきたエネルギーの熱エネルギーへの変換と取出し,の2つである。トリチウ

ムはD-丁核融合炉の燃料である。これを生産しないものを非増殖ブランケットと呼ぶこともあるが,ここ

では上記2つの役割を果たすものについて考える。

2-2  トリチウムの生産

 天然に存在しないトリチウムを生産するには,核融合反応で発生する中性子を利用するか,別に核分裂炉

などを用いるのかのいずれかとなる。コスト的に後者は引き合わないので,実用炉では前者を採用すること

になる。1回のD-丁反応で1個のトリチウムが消費される。、すなわち

   lD+IT→IHe+ln+17・6M翻      ・     (1)

したがって原理的にはD』丁反応の数だけのトリチウムが生産されれば十分である。しかしトリチウ為は半

減期12年の放射性核種で,保存中も一定割合で失われる。炉心プラズマと排ガス系,燃料注入系を循環す

る際のロスやブランケットからの回収効率を考えると,反応で消費される以上のトリチウムが生産されなけ

ればならない。

 (1)式は革回のD-丁反応あたり1個の中     3                     10性子lnが発生することを示している。こ

の中性子から次の反応を利用してトリチウ

ムが生産できる。

lLi+ln-IHe+IT+4・8M副(ゑ)

 lLi十ln→IHe十IT十ln-2・47MeV

               (3)

図3・13両反応の反応断面積を示す。(3)式

の反応は中性子エネルギーが高くなければ

生じないが,これは中性子の数を減らさな

いでトリチウムを生産できる点で好ましい。

しかし減速してしまった中性子は(2)式の

        6         Li(n,α)  2 10

  1宕10鰹

国100騎榎隠10-1

               7               Li(n,n’,α) 10『2

 10層3

   ~O隔2 100 102 104 106 ~08        中性子エネルギー(eV)

      図3・13 トリチウム生成反応断面積

反応しか起こせない。この場合中性子1個を消費し七トリチウムが1個生産される。中性子は必ずしもリチ

ウムと反応せず,他の原子に吸収されたり系外へ漏れたりする。プラズマから入扇してくる14M6Vの中性

子1個あたり生産されるトリチウムの数をトリチウム増殖率と呼ぶが,これを大きくするのは易しいことで

はない。

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核融合研究 第56巻第6号  1986年12月

 トリチウム増殖率を上げる手段の1っにILiの濃縮がある。天然リチウムの92・5%を占める三Liは図3・

13からもわかるように中性子のエネルギーが非常に高くなければトリチウムを生産できない。減速した中

性子は(2)式の反応でトリチウムを生産するか他原子に吸収されるかであるが,l Liの割合を増せば後者の

割合が減り,増殖率は若干上がる。

 もう1つの方法は中性子増倍材の採用である。ベリリウムは次の反応で中性子を増倍する。

    lBe+ln→21He+2加+94k認          . (4)

鉛にも同様の増倍作用がある。これら中性子増倍材をブランケットに置くことにより,増殖率は向上する。

(4)式の反応も中性子のエネルギーが2。7M6V以上でないと起きないことや断面積があまり大きくないこと

から,増倍材を用いても増殖率には上限がある。しかし(3)式の反応と増倍作用をうまく組合せることにより,

1.6程度まで高められる可能性が示されている15)。

2-3  トリチウムの回収

 ブランケットで生産されたトリチウムは,できるだけ速やかに回収することが望ましい。回収して炉心へ

注入するまでの時間が長いと,その間にβ崩壊で失われる分が増えるなどのため,より高いトリチウム増殖

率が要求されることになる。核融合炉を運転しつつトリチウム回収ができることが必要とされている。増殖

材が液体の場合,増殖材自身を循環させてブランケット外に取出し,そこでトリチウムを抽出するのが普通

である。固体増殖材はそれ自身を運転中に連続的に取出すのは困難なので,増殖材間にパージガスを流しそ

れでトリチウムを回収する。回収性能を上げるため増殖材を多孔質にしてパージガスとの接触面積を大きく

するとともに,温度をある程度高くして増殖体中のトリチウムが拡散で出ていきやすくするなどの工夫が必

要である。

 増殖材からのトリチウムの回収の具体的方法については,トリチウム工学,燃料サイクルの解説で扱われ

ているので,それを参照されたい。

2-4 熱エネルギーへの変換と取出し

 D-丁反応により生成する核融合エネルギーは4:1の比率で中性子とα粒子に分配される。中性子の持

っ運動エネルギーを熱エネルギーに変え,利用可能な形にするのが,ブランケットのもう1つの大きな役割

である。ところで,(2)式の反応は発熱反応である。 構造材原子が中性子を吸収する反応も一般に発熱反応

で,(3〉式のような吸熱反応もあるものの,全体としてブランケットから取出しうるエネルギーは中性子によ

り運び込まれたエネルギーを上回る。その比をブランケットのエネルギー増倍率といい,1。2~1。3程度で

ある。これは大きいほどよいが,そうするためにトリチウム増殖率が犠牲になってはならない。

 発生した熱エネルギーを取出さないとブランケットの温度が限りなく上昇してしまう。熱エネルギーの取

出しは,エネルギープラントとしての製品を扱っているという意味で大切なだけでなく,安全上も重要であ

る。ところで核発熱は化学反応による発熱と異なり,反応温度の上限が事実上ない。どういう温度で熱を取

400

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解 説 核融合炉の複合工学 班 目

出すかは他の制約がなければ自由に選びうる。熱エネルギーは高温で取出されたものほど質が高い。熱エネ

ルギーを力学的エネルギーに変換する効率は高温であるほど1に近づく。核融合炉は発電に利用することが

考えられているが,この場合熱エネルギーの取出し温度は,現在の軽水炉と同じ約300℃が1つの目標とな

る。

 ブランケットの温度をある範囲に保っには,冷却面と冷却材の温度差と増殖材,構造材内部の温度差をい

ずれも小さくする必要がある。前者のためには冷却材の選定のほか流路形状,流速等をいかにするかが大切

である。後者は熱伝導率の低いセラミックスで特に問題となるが,これは冷却面と最む遠いところとの距離

の二乗に比例するので,冷却流路の配置を適切にとることが重要である。増殖材や構造材の許容温度は必要

とされる冷却材出口温度に比べそう高くないので,熱設計には工夫がいる。ブランケット内の発熱率がプラ

ズマ側で高く外側は指数関数的に低くなっていることも問題を複雑にしている。

2-5 ブランケットの構成要素

 ブランケットに最低必要な材料は,トリチウムを生産する増殖材,熱の輸送媒体である冷却材,そして構

造材である。トリチウム増殖率を大きくするため,増殖材に組合わせて中性子増倍材が用いられることもあ

る。また増殖材が液体の場合にはそれが冷却材を兼ねる場合もある。

 トリチウム増殖材の候補や要求される性能についてはトリチウム工学・燃料サイクルの解説の中にまとめ

られている。ここでは重複を避けて,その他の材料についてだけ述べる。

2-5-1 冷却材

 単位流量あたり取出しうる熱量に対し冷却材循環動力は小さいほどよいが,この点では水が最も優れ,

Heガスがこれに次ぐ。熱伝達率は高いほどよいが,この点でも水は優れている。熱流東が高いと沸騰を生

じるが,沸騰熱伝達率は非常に高く冷却面温度はそう高くならない。熱流束が過度に高いとバーンアウトとい

う冷却不良現象を生じるが,これに関する知見も軽水炉開発の際集積され適切な設計で避けることができる。

Heガスの熱伝達率は水よりずっと低く,このためHeガス温度より冷却面温度がかなり高くなるのはやむを

えない。

 液体金属の循環動力は,強磁場下ではMHD効果による圧力損失が支配する。熱伝達率も磁場の影響で乱

れが抑制されると低下する。冷却材として用いられる液体金属はトリチウム増殖材も兼ねているので,大部

分の熱は液体金属自身の内部で発生する。しかし構造材も発熱すること,第一壁の冷却にも通常ブランケッ

ト冷却材が使われることから,冷却性能が低いことは好ましくない。冷却材の速度をある程度確保するとと

もに,冷却流路径も小さくすることが冷却性能向上につながるが,MHD圧力損失の過大を招く心配がある。

強磁場下での液体金属の冷却材としての特性は,MHD効果の悪影響を避ける設計の良否にかかっている。

MHD効果については2-7節で別途述べる。

 冷却材の選定では冷却特性とともに,核特性特に増殖率に与える影響,化学反応性,増殖材・構造材との

両立性が問題になる。水は中性子を吸収し増殖率を下げること,トリチウムが混入した場合分離困難なこと,

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核融合研究 第56巻第6号  1986年12月

金属リチウムやLi20と化学反応を起こすことなどの短所がある。Heガスは冷却特性はよくないものの・こ

れらの点での問題は少ない。

 冷却材として有望なものは,水,Heガス,液体リチウム,Li Pb,硝酸塩1Q)とされている。硝酸塩NaNO3

-KNO3は太陽熱プラントで実績のある冷却材で,水素原子を含まないためトリチウムが混入しても分離は

容易である。水に近い冷却性能を有し,融点も200℃程度,腐食性も600℃近くまでそう高くないなどの利

点があるが磁場下での分解,電解腐食など間題点もある。

2-5-2  構造材

 ブランケットがその機能を果すためには,構造健全性が確保されていなければならないのはいうまでもな

い。構造材の置かれる環境は核的には第一壁とほぽ同様であり,熱的にはやや楽である。冷却材との両立性

とともに増殖材との両立性も有しなければならない。一般には第一壁と同種の材料が用いられる。

2-5-3  中性子増倍材

 金属ベリリウムとBeO,鉛が候補に上げられる。このうち鉛は融点が327℃で,使用温度では液体のた

め扱いにくい。金属ベリリウムは融点が1280℃,熱伝導率はアルミより少し劣る程度でかなり高い。中性

子増倍反応でヘリウムを生成するのでスウェリングが大きい問題である。BeOの熱伝導率はセラミックス

としては高い。空孔率をある程度以上にすればスウェリングの問題は軽減できる。しかし酸素原子が含まれ

ているので,中性子の増倍性能は金属ベリリウムよりずっと落ちる。なおベリリウムは希少資源である。こ

れを増倍材として多量に燃焼させてしまう設計はコスト的にあまり好ましくない。

2-6  ブランケットの設計上の制約条件

 ブランケットに核融合炉の1コンポーネントであり,他のコンポーネントと独立に考えることはできない。

特に第一壁とは構造上r体となる可能性が大きく,切離して議論はでき.ない。また,、プラズマ加熱系や排気

系などのポートが用意されねばならないが,これと.ブランケヅトの場所的取り合いは実際の設計ではかなり

面倒である。ブランケットのトリチウム増殖性能が非常によければ・設置しやすい場所だけにブランケット

を置けばよいが,実際にはプラズマをなるべく多くブランケットで囲む必要性がある。

 ブランケットの外側には遮蔽体が置かれ,その両者がさらに外側に置かれるマグネットを照射損傷から守

る。プラズマが同じとして,ブランケットと遮蔽体が厚いとその分だけ核融合炉の建設費は高くなる。さら

にマグネットも径が大きいものを用いる必要がある。核融合発電プラント全建設費の1/3が炉内構造物と

マグネットであり,その46%がブランケット及び遮蔽体,29%がマグネットと試算されているので4),こ

の影響は大きい。超電導マグネットの発生磁界の強さには限界があって,径が大きくなると中心磁界は弱く

なる。その4乗に核融合出力密度は比例するので,ブランケット,遮蔽体の厚さはプラズマの設計にも影響

を与え,経済性への影響はさらに大きい。したがって薄いほどよいが,トリチウム増殖率や遮蔽性能を満足

するだけの厚さは必要で,普通50cm程度に設計される。

 磁場閉込め核融合炉ではブランケットは渦電流の発生に留意して設計されなければならない。定常運転さ

402

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講座 核融合炉の複合工学 班 目

れる炉であっても,起動・停止時などには磁界が変化するので,ブランケット内の導電体には渦電流が流れ,

磁界との相互作用で電磁力が作用する。ブランケットはある程度複雑な構造とならぎるをえないので,渦電

流の経路をきちんと把握するには計算機コードを用いることになる5

 ブランケットは構造材の照射損傷のため,その寿命はプラント全体の寿命より短い。固体増殖材ブランケ

ットでは増殖材の燃焼が進むとその交換が必要で,これも寿命に影響する。ブランケットは交換可能なよう

に設計しておかねばならない。交換が必要なコンポーネントは他にもリミターないしダィバータ,プラズマ

加熱系などがあるが,ブランケットが最大のものとなる。放射化のため交換は遠隔操作で行わねばならず,

建設時の作業より難しい。ロボットを含む遠隔操作技術は急速な進展をとげているものの,決して万能では

ない。ブランケットの設計時に,交換への配慮をできるだけ払うことで遠隔操作機器への負担を軽くできる。

それでも遠隔操作機器への要求はかなりのものとなろう。

2-7 ブランケット内の液体金属の流れ

 液体金属MHD流れは液体金属冷却ブランケットに固有の問題であるが,その成否にかかわる問題なので

簡単に解説する。流体の運動にはいろいろな力が作用するが,液体金属MHD流れでは慣性力,粘性力,電

磁力が大きい。慣性力の粘性力に対する比を表わすのがレイノルズ数Re,電磁力の慣性力に対する比を表

わすのがインタラクションパラメータN,電磁力の粘性力’に対する比を代表するのがハルトマン数幽であ

る。ブランケット条件下ではNもHaも非常に大きくなる。1’1すなわち電磁力が支配的になるが,壁面近傍な

いし自由勇断流層のように流速勾配が大きいところでは慣性力,粘性力も重要な役割を果たす。

 電磁力は電流密度と磁場の強さに比例する。磁場を横切って,導電流体が流れると起電力が発生するが,

それだけでは電流は流れない。電流が流れるためには回路が構成されていること,すなわち流体中を起電力

の方向に流れた電流が戻ってくる経路のあることが必要である。絶縁壁でできた流路内を流れる導電性流体

内の起電力が一様であるなら,電位差は生じても電流は流れない。しかし壁近傍には粘性のためほとんど静

止している起電力の弱い流体層がある。ここが戻りの経路となるπ砂,絶縁壁流路内を流れる導電性流体に

もMHD抵抗が作用する。ブランケットの場合,流体と壁の両立性の問題から絶縁壁を用いることは難しく,

導電性の壁が戻りの経路を提供するので・一巡回路の揖抗はずっと減る・壁が厚いほど流体中の電流密度は

増加し,MHD抵抗も増加する。

電磁力が支配的な流れでは・電齢布塀常唖要である・流れ方向醜起電力1ま発生しないが磁場強

さの変化,壁肉厚の変化などで流路断商内の電気回路特性が流れ方向に変化すると,流れ方向に電位差を生

じその方向にも電流が流μるるこの電琉ほ流れを壁から引離したり押付けたりする。ブランケット内の流路

は,分岐部,折れ曲り部,流路急振大部,磁場勾配部等々,複雑である。ての中で流速分布がどうなり,圧

力損失がどれほどとなるかを知る技術はまだ確立されていない。

 ブランケット内の流れは電気回路特性が変われば異なったものとなる。ところで流路を構成している壁の

外側は必ずしも絶縁されていない。壁が流路を仕切っていて,両側に流体が流れる構成もよく採用される。

’403

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核融合研究 第56巻第6号  1986年12月

この場合電気回路は1つの流路だけで考えることができないのは当然である。絶縁されてない限り電流は壁

を横切って隣の流路にも流れ込んでいく。したがって両流路の流れは互いに影響を与え合う。たとえ壁が絶

縁されていたとしても,流体内を通る回路はつながっている。ブランケット全体の回路特性を考慮しづっ流

れの分布,圧力損失を知るには,しかるべき計算機コードなどが開発されることが不可欠であろう。

 MHD圧力損失を軽減するには,まず起電力が小さくなるよう流路を磁力線になるべく平行にすることが

大切である。しかしプラズマ側へ向う部分,遠ぎかる部分ではどうしても磁力線を横切る。次に大切なのは,

電気回路の抵抗を上げ起電力があっても電流を流れにくくすることである。電流の戻りの経路を提供する壁

の抵抗を上げるよう,壁厚を薄くすることなどが有効である。同時に流路と流路を横切る電流経路も減らさ

ねばならない。液体金属ブランケットの設計は難しいが,うまい設計を行えば圧力損失をかなり小さくする

ことも可能である。

2-8 ブランケットの設計例

 ブランケットの形状は冷却材が何であるかに大きく左右される。増殖材を兼ねて金属リチウムを用いるな

ら,基本的にはあと構造材があればいいだけなので構成は単純である。図3・14の例では,熱負荷の高い第

一壁は磁場とほぼ平行なある程度の速度の流れで冷却し,その他の部分は低速にすることによってMHD圧

力損失を抑えようとしている10)。これでも第一壁流路出入口の圧力損失は非常に大きく,電気絶縁材を用い

てさらに圧力損失を軽減するなどの検討が今後必要である11)。

 Heガス冷却形はガスの熱容量が小さいので流路面積を大きくとらぎるをえないこと, またガスが中性子

に対し透明なのでトリチウム生産に悪影響を与えず流路面積を大きくできることから,被覆材等に包まれた

増殖材の外面を冷却することになる。図3・15は増殖材がLiρの例である10)。

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図3・14液体金属ブランケットの例(【」冷却)

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解説 核融合炉の複合工学 班 目

         S’『RONG BACK END PしATE

   lNSULATED DIVIDER PLATE

STRONG BACK BEAM PしATE

COOLANTlNLET-OUTしE↑トルヘパ ド しロ

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FLOW DIST只旧UTOR

 図3・15

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Heガス冷却ブランケットリ例

1。5

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  01・5 〆12     TUBE

  φ15 .COOLANT ↑UBE.THERMAL (PCA)  RESISTANCE

  SECTION A

図3・16 水冷却ブランケットの例

 水冷却ブランケットでは冷却配管を増殖材中にひきまわす構造となる。図3・16にこの例を示す16)。小球

状の増殖材が冷却管のまわりに充填される。Heガス冷却の場合もトリチウムの回収は冷却材とは別の系統を

設けて行うことが多いが,水冷却のものでは回収用パージガス系統を独立に設けることは必然となる。

 以上取上げた設計例はいずれもトカマク炉用のブランケットであるが,ほかにも増殖材や冷却材,構成の

異なるものが数多く提案されている。トカマク以外の炉型ではブランケットも違ったものとなる。磁気閉込

め炉でも,第一壁の表面熱流束が低くてすむミラー炉やトロイダル磁場が比較的低い逆転磁場ピンチ炉では,

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核融合研究 第56巻第6’号  1986年12月

その特色を生かした設計が発表されている1軌17)。慣性核融合炉のブランケットは,空間的制約が小さく磁

場の影響もないことから,構造はかなり違ってくる。しかしブランケットの果たすべき機能は同じであるこ

とから,構成要素には変わりがない。‘

2-9・ ブランケットの設計手順

 トカマク炉用水冷却型ブランケットの核熱構造設計手順を図3・17に示す3)。ブランケットと他のコンポ

ーネントとの調和は,ブランケット厚さなど主要パラメータを決める段階で行われる。特に強く関係する第

一壁とは並行して設計をっめていく必要がある。材料選定とそれに続く大体の断面形状決定で方向を決め,

その後板厚や冷却管配置の最適化によ,り目標とする性能が得られるよう調整する。この手順はガス冷却型や

液体金属冷却型ブランケットでも同じで南る。

渦電流電磁解析

     ブランケット              冷却管配列ピッチトリチウム                         構造解析   評価     断面形状         Li20温度調節増 殖 率

        ノ1づガス圧シエル効果 核計算  パージガス圧増殖材選定        モジュール数                 熱負荷増倍材選定       ブランケット幅冷却材選定              材料     核発熱率 P  電磁力

構造材選定  第一壁設計    P  厚さ     増殖率

              位置

   図3・17 ブランケットの核熱構造設計手順(水冷却ブラ.ンケットの場合)

2-1・ブランケツ厚勃躍ブランケットに係わる醗課題厳3』6に示す勾・・).麹はブランケッ,トの機能から,トリチウム増殖

特性関連テーマ・冷却特性関連デ.‘マ・構造健全性闘連テーマがあり・さらに安全性・製作性に関連したテ

ーマも重要である。構璋鯉全性や製作性関連のテーマは第一壁に係わる課題と重複するところが多いので,

表では省略している。

 ブランケットについては10数年にわたっていろいろな構成のものが提案されてきた。現在比較的有望と

みられているのが図3・14~16に示したものであるが,いずれも問題点をかかえている。増殖率を確保し,

しかもパワープラントとして魅力あるような出力密度のものを設計しようとすると,設計上許される選択の閣

幅は広くない。しかも増殖材,構造材,冷却材等の挙動には未知の点が多く,今後の研究結果次第ではいく

つかの型式は実現不能となる恐れもある。これが現在型式を1つに絞れない理由である切。

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講 座 核融合炉の複合工学 班 目

 ブランケット研究開発課題は,固体増殖材

を用いる型式と液体金属冷却型とで大きく違

ってくる。前者では固体増殖材内のトリチウ

ム挙動や熱伝導が重要で,特に照射下での研

究が必要である。後者は強磁場下での液体金

属の流動が最大の課題である。当面この2つ

の型に分けて研究開発を進め,評価を加えて

いって次第に型式を絞るという開発シナリオ

が考えられている11’12)。また現在既に提案

されている型式にこだわらず,より魅力的な

設計概念を目指そうという努力も払われてい

る。この場合,ブランケット設計を炉心プラ

ズマ設計の下位に位置付けるのではなく,対

等に考え,ブランケットが魅力あるものとな

るには炉心プラズマはどのようなものが好ま

しいかという観点からの評価もされるべきで

あろう。

表3・6 ブランケットの研究開発課題

D-丁燃料の自己充足性達成可能増殖率必要増殖率

固体増殖材トリチウム抽出使用温度上下限値中性子照射の影響放出トリチウム形態製造技術・リサイクル技術水との化学反応性被覆材との機械的相互作用

液体増殖材 トリチウム抽出リチウム火災

増倍材関連テーマ 中性子照射の影響照射ベリリウムのリサイクル

水冷却 工ロージョン冷却管の振動

ガス冷却 ガス冷却特性

液体金属冷却 MHD圧力損失MHD効果による偏流リチウム腐食

被覆材の影響 ギヤツプコンダクタンス

核特性 核発熱率分布

トリチウム挙動 冷却材中への透過

安全性関連テーマ トリチウム漏洩評価冷却材漏洩事故評価放射化物挙動評価

新設計 簡易構造ブランケット

総合機能特性

*構造材関連テーマなど第一壁と共通の課題については表3・5参照

参 考 文 献

1)住田健二,石野 栞ほか:核融合炉研究開発の評価研究会報告書,文部省科学研究費補助金エネルギー特別研究

  (核融合)報告書,1986。

  宮原 昭=核融合装置におけるプラズマ・壁相互作用,日本原子力学会誌,27巻3号,1985.

  秋山 守ほか:核融合炉設計工学資料集,核融合炉設計技術研究専門委員会中間報告書,日本原子力学会,1985.

  C.C.Baker c孟α」。:STARFIRE-Commercial Tokamak FusiQn Power Plant Study,ANL/FPP80-1,1980.

  諸住正太郎ほか:傾斜ポテンシャル場における材料の挙動研究会報告書,文部省科学研究費補助金エネルギー特別

  研究(核融合)報告書,1984.

6)諸住正太郎ほか:傾斜ポテンシャル場における材料の挙動研究会報告書(II),文部省科学研究費補助金エネルギー

  特別研究(核融合)報告書,1985.

7)秋山 守ほか;核融合炉ブランケット第一壁の設計条件に関する討論会,文部省科学研究費補助金エネルギー特別

  研究(核融合)報告書,1984.

8)秋山 守ほか:核融合炉ブランケット第一壁の非定常問題の評価研究会,文部省科学研究費補助金エネルギー特別

  研究(核融合)報告書,1985.

9)秋山 守,宮原 昭ほか:プラズマディスラプション時の第一壁の健全性評価研究会,文部省科学研究費補助金エ

  ネルギー特別研究(核融合)報告書,1985.

10) D.L。Smithε置α」.:Blanket Comparison and Selection Study・Final Report,ANL/FPP-83-1,1983.

11)M.A.Abdou e孟α」.:FINESSE,A Studyof the lssues,Experiments andFacilities for Fusion Nuclear Technology

  Research&Development,PPG-821,UCLA・ENG-84・30,1984.

2)

3)

4)

5)

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12)

13)

14)

15)

16)

17)

M. A. Abdou et al. : FlNESSE Phase I Report, Technical Issues and Requirements of Experiments and

Facilities for Fusion Nuclear Technology, PPG-909, UCLA-ENG-85-39, 1985.

Special Issue on Nuclear Fusion Research and Development Activities in Japan, J. Fusion Energy 3, 1983.

M. J. Monsler, et al. : An Overview of Inertial Fusion Reactor Design, Nuclear Technology/Fusion 1, 19.

K. Maki : Increase of Tritium Breeding Ratio by Blankets Having Front Breeder Zone in Fusion Reactors,

Fusion Technology 8, 1985, p. 2655.

T. Tone : Design Study of Power Reactor Blanket Concepts, IAEA Technical Committee Meeting and Workshop

on Fusion Reactor Design and Technology, Yalta, USRR, 1986.

R. Krakowski, et al. : Compact Reversed-Field Pinch Reactors, LA-9389-MS, 1986.

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