40
防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の防衛産業の 競争力及び中小企業等参入促進施策に関する調査役務 防衛装備庁御中 成果報告書

防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

  • Upload
    others

  • View
    2

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の防衛産業の競争力及び中小企業等参入促進施策に関する調査役務

防衛装備庁御中

成果報告書

Page 2: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 1 -

目次1.本調査の目的及び調査内容

2.諸外国の政策調査2-1.大韓民国2-2.インド2-3.トルコ共和国2-4.イスラエル2-5.諸外国の政策調査結果

3.我が国の防衛産業の競争力を高めるための施策提案3-1.諸外国の政策の我が国への応用可能性の検討3-2.我が国の防衛産業の競争力を高めるための施策提案

4.施策立案へ向けたロードマップの提案4-1.施策14-2.施策24-3.施策3

2

3479

1214

171822

26273236

はじめに• 本報告書は貴庁内検討及び判断に係る参考資料として作成されたものです。内容の採否や使用方法については、貴庁自らの責任で

判断を行って頂きたく存じます。• 本報告書は2018年3月23日時点までの公開情報に基づき作成されました。

Page 3: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 2 -

1.本調査の目的及び調査内容

防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が国防衛上においても重要な要素であることから、その維持・強化を進める必要がある。ここで、防衛産業の基盤の維持・強化に当たっては、国際競争力維持の観点から我が国防衛産業の国際的な立ち位置を適切に把握することが重要であり、諸外国の防衛産業の基盤維持に係る調査・分析を行い、諸外国と我が国の防衛産業との比較等を行う必要がある。そこで我が国における防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた検討の資とするため、今般の調査では、我が国と同様に、比較的自国市場規模が小さい諸外国(韓国、インド、トルコ、イスラエル等)を対象に、諸外国政府において実施していた、又は実施している防衛産業政策を調査する。

下記の対象国に対し、下記の政策に関する調査を実施する。対象国大韓民国、インド、トルコ、イスラエル対象とする政策• 防衛産業組織の再編・統合の実績• 装備品の国産化政策• これまで防衛に携わってこなかった国内中小企業等の防衛産業参入施策• 防衛産業に携わる国内中小企業等の防衛以外の産業分野への進出の支援策• 重要な技術を有する企業の把握及びリスク管理手法

諸外国の政策調査

我が国の防衛産業の競争力を高めるための施策提案

施策立案へ向けたロードマップの提案

諸外国の政策の我が国への応用可能性を検討し、我が国の防衛産業の競争力を高めるための施策を提案する。また施策実現に向けた課題の整理も合わせて実施する。

施策実現に向けた課題の解決方針を検討し、施策立案へ向けたロードマップの提案を行う。

本調査の目的

本調査の調査内容

Page 4: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 3 -

2.諸外国の政策調査1.本調査の目的及び調査内容

2.諸外国の政策調査2-1.大韓民国2-2.インド2-3.トルコ共和国2-4.イスラエル2-5.諸外国の政策調査結果

3.我が国の防衛産業の競争力を高めるための施策提案3-1.諸外国の政策の我が国への応用可能性の検討3-2.我が国の防衛産業の競争力を高めるための施策提案

4.施策立案へ向けたロードマップの提案4-1.施策14-2.施策24-3.施策3

2

3479

1214

171822

26273236

Page 5: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 4 -

2-1.大韓民国主要企業

韓国における防衛産業は民間企業を中心に拡大してきている。以下3社が主要企業となっている。ハンファグループ(Hanwha Group)韓国航空宇宙産業(Korea Aerospace Industries、以下、「KAI」という)LIG Nex1

ハンファグループは、最近10年の間に、サムソン・テックウィン(現:ハンファ・テックウィン)、サムソン・タレス(現:ハンファ・タレス)、斗山DST(現:ハンファ・ディフェンス・システムズ)などの大手企業を買収し、韓国の防衛産業界において急成長している企業である。また、現在韓国の大手航空宇宙産業メーカーである韓国航空宇宙産業(以下、「KAI」という。)の株式を6%取得しており、将来の買収候補と言われている。

特徴

韓国の世界トップ100の最近5年の防衛産業規模(防衛分野の売り上げ、単位100万ドル)

出典:Defence News.comを参考にみずほ情報総研が作成(http://people.defensenews.com/top-100/)

防衛事業庁は2006年の設置後、輸出支援体制の確立に取組み、装備品輸出を増加させた。

輸出実績:2.5億ドル(2006年)⇒25億ドル以上(2016年)輸出先:47か国(2006年)⇒89か国(2016年)輸出企業:47社(2006年)⇒176社(2016年)

輸出実績

出典:「韓国防衛産業の現状と課題(一般財団法人キヤノングローバル戦略研究所 研究員 伊藤 弘太郎) 」http://www.cistec.or.jp/jaist/event/kenkyuutaikai/kenkyu24/002-02_ito.pdf

企業名 2016 2015 2014 2013 2012

ハンファグループ 4,214.97 2,374.74 1,545.00

KAI 1,818.69 1,678.86 1,160.00 1,364.20 1,039.50

LIG NEX1 1,618.10 1,528.67 1,330.10 1,087.40 856,89

出典: http://www.finomy.com/news/articleView.html?idxno=41272

Page 6: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 5 -

2-1.大韓民国

施策名 施策の概要 施策種類

防衛装備品の防衛産業指定制度

防衛装備品とその主な構成品を対象に、防衛装備品及び調達企業を指定して管理する制度である。この制度は、市場原理によって調達が困難な軍需物資の安定的な調達源の確保と、安定性が重要な軍需物資の厳格な品質保証の確保を目的として実施したものである。

装備品の国産化政策

防衛装備品の備蓄原材料運用制度

メーカーが装備品を生産するにあたり、装備品の構成品や原材料を確保するために必要とされる資金などを政府が支援したり、供給や価格が不安定な構成品や原材料を政府が確保した後、必要に応じメーカーに販売する制度である。メーカーが備蓄を行う場合は、メーカーの育成資金(原材料備蓄用)について協力金融機関から融資を実施し、融資の利息を政府が支払う。政府による備蓄の場合は、国防中期計画に含まれている防衛装備品の生産に必要な構成品及び原材料を備蓄し、必要に応じて政府からメーカーへ販売する。

装備品の国産化政策

汎用部品の国産化政策

量産段階にあり、かつ輸入されている装備品の構成品や部品のうち国産できる可能性があるものについて、政府がメーカーに開発承認をしてメーカー負担で開発推進し、開発成功時に随意契約を締結し、輸入価格と同等な調達価格となるよう保証することで、部品国産化を支援する。

装備品の国産化政策

ネットワーク隔離

国防部は、指定防衛企業に2017年までに一般のネットワークから防衛関連情報を隔離するよう要求した。

重要な技術を有する企業の把握及びリスク管理手法

防衛産業施策

出典:「2017年防衛産業支援制度(韓国防衛事業庁)」「防衛安全技術法(韓国の法令)」(https://elaw.klri.re.kr/kor_service/lawView.do?hseq=42867&lang=ENG)

Page 7: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 6 -

2-1.大韓民国防衛産業施策

施策名 施策の概要 施策種類

中小企業優先品目の指定制度

防衛事業庁で行う装備システムやコア技術の研究開発に携わることができる技術力を備えた中小企業等を育成するために、防衛事業庁長官が告示した品目については装備システムの研究開発主管企業として中小企業等を優先選定する制度である。研究開発段階から優秀な中小企業等に参加する機会を優先的に提供し、技術革新の促進と防衛装備品の構成品・部品に関する技術力向上を目指している。

中小企業等の参入施策

国防ベンチャー支援制度

防衛産業に適用可能な高度技術を有する中小企業やベンチャー企業を支援するため、2015年に開始された。 選定されたベンチャー企業は、韓国の国内ベンチャーセンターと連携する。 当該センターでは、マーケティング、技術に関するアドバイス等を提供することによって中小企業等を支援している。資金援助は開発費の最大75%で、2年間で3億ウォンが上限である。

中小企業等の参入施策

グローバル企業育成事業

防衛分野で成長潜在力が高い中小企業等を選定して、製品開発からマーケティングまでパッケージで対応し、グローバル市場での競争力を備えた中小企業等に育成するための事業である。

中小企業等の参入施策

コア部品の国産化支援事業

装備システムのコア部品の国産化を促進する事業である。国産化にあたり課題を選定した後、中小企業等を対象に、開発資金を支援する研究開発支援事業である。 中小企業等の参入施策

出典:「2017年防衛産業支援制度(韓国防衛事業庁)」

Page 8: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 7 -

2-2.インド主要企業

歴史的にインドの防衛部門は国有企業が担ってきた。世界の防衛産業TOP100に入る企業として、以下の企業が存在する。Hindustan Aeronautics 社Bharat Electronics 社

また、上記の企業に次いで、以下の企業が比較的規模の大きな企業である。Bharat Dynamics 社Ordnance Factories Board

特徴インドの防衛産業を牽引しているのは、政府系の組織である以下の3者である。

防衛研究開発機構(DRDO:Defence Research and Development Organization)⇒研究開発を担当国防公営事業(DPSUs:Defence Public Sector Undertakings)⇒生産を担当する営利企業⇒主要4社のうち3社がこのDPSUsの一員生産工場群である武器製造機構(OFB:Ordnance Factories Board)⇒兵器工廠⇒主要4社のうちの1社

出典:「インド型「軍産複合体」 軍産関係に影響を及ぼす要因」、インド国防生産局HP(http://ddpmod.gov.in/defence-public-sector-undertakings)

企業名 2016 2015 2014 2013 2012

Hindustan Aeronautics 2,518.60 2,410.97 2,480.40 2,459.00 2,619,80

Bharat Electronics 1,164.90 982.12 875.70 853.40 956,90

インドの世界トップ100の最近5年の防衛産業規模(防衛分野の売り上げ、単位100万ドル)

出典:Defence News.comを参考にみずほ情報総研が作成(http://people.defensenews.com/top-100/)

Page 9: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 8 -

施策名 施策の概要 施策種類

オフセット取引

装備品を海外から調達する際に、サプライヤーが調達額の最低30%をインド国内で使用しなければいけない、オフセット取引がインドでは行われている。インド国内で使用すべき30%分の金額の使用方法は、現地ベンダーからの部品の直接購入、合弁企業への出資、または研究開発投資のいずれかとなる。ただし30%分の使用をする代わりに、インド国内企業や、政府機関(OFBなど)に対する生産設備の設置か、先進技術の移転をすることで、オフセットをみなすことも許されている。

装備品の国産化政策

Make in India

防衛に限らず産業の国産化を推進するMake in Indiaプログラムの中に装備品に関しての言及がある。Make プログラムには Make-I (政府予算)および Make-II(民間予算) がある。

Make-I(政府予算)では、政府が現地開発を促進するために開発費の90%を負担。ベンダーがプロトタイプを開発しても2年以内に注文を受けない場合、残りの10%も政府が負担。Make-II(民間予算) では、プロトタイプ開発は企業の資金調達によるものだが、プロトタイプの開発が成功してから2年以内に入札がない場合、政府は正式に選ばれたベンダーの開発コストの100%を負担。

中小企業等に特化した政策のひとつとして、DPSUsやOFBに対し、短期・長期でのアウトソーシングやベンダー開発計画(輸入代替も含む)の開発を義務付けている。

装備品の国産化政策

中小企業等の参入施策

2-2.インド防衛産業施策

出典:https://www.gita.org.in/Attachments/Reports/Make-in-India-Defence-Manufacturing-in-India.pdfhttp://www.makeinindiadefence.com/Marching%20towards%20self%20reliant%20inner%20pages_4-7-17.pdfhttp://www.makeinindia.com/documents/10281/114126/Defence+Manufacturing+Sector+-+Achievement+Report.pdf

Page 10: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 9 -

2-3.トルコ共和国主要企業

トルコの防衛産業は政府系が多く、その中で世界の防衛産業TOP100に入る企業として、以下の企業が存在する。ASELSAN 社Turkish Aerospace Industries 社ROKETSAN 社

また、上記の企業に次いで、以下の企業が比較的規模の大きな企業である。ASPILSAN 社HAVELSAN 社

特徴1985年に防衛産業庁を設置し、技術力を育て装備品の国産化を推進してきた。近年防衛航空部門を中心に技術力をつけ、輸出実績を積み重ねてきている。2016年の防衛産業及び航空産業の売上は59億ドルに、また輸出は約17億ドルに達した。

防衛航空部門の輸出額 (百万$)

出典:防衛産業庁HP(http://www.ssm.gov.tr/)「The U.S. arms embargo of 1975--1978 and its effects on the development of the Turkish defense industry」

企業名 2016 2015 2014 2013 2012

Aselsan 1,195.28 1,025.98 1,109.00 1,001.40 862,37

Turkish Aerospace Industries 1,083.75 886.55 853.60 788.4 693,41

Roketsan 363.69 - - - -

トルコの世界トップ100の最近5年の防衛産業規模(防衛分野の売り上げ、単位100万ドル)

出展:Defence News.comを参考にみずほ情報総研が作成(http://people.defensenews.com/top-100/)

Page 11: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 10 -

施策名 施策の概要 施策種類国内で獲得した技術の二重使用(軍/民間)

沿岸監視レーダーシステムを民間システムと結合空港におけるレーダー開発において、民間ニーズも汲み取った開発を実施

中小企業等の防衛以外の分野への進出支援策

防衛産業エコシステムにおける既存、新規企業の奨励による競争力強化

投資会社に対する支援を実施企業訪問情報や防衛産業の業界内での活動のニュースなどを防衛産業関連企業間で共有するサブサプライヤーが、他のサブサプライヤーやプライムメーカー等との協業(研究開発等)を目的として、サブサプライヤーとクラスター(⇒サブサプライヤーの集合組織)が参加するイベントを開催国内企業が、オフセット取引の恩恵を受けられるように、産業化情報ワークショップを開催

中小企業等の参入施策資金調達マーケティングにおける、インセンティブを最大限に活用する方法を調査

防衛・安全保障分野における、資金調達のインセンティブは何かについて調査防衛・安全保障分野における、資金調達のインセンティブに関するガイドラインを発行

2-3.トルコ共和国防衛産業施策

出典:防衛産業庁 「戦略計画2017-2021 」

Page 12: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 11 -

施策名 施策の概要 施策種類

防衛産業参加オフセット

海外企業がトルコ軍へ装備品を販売する際に、トルコ企業の活用を行うことを義務づける制度で、オフセット割合は調達額の70%となっている。オフセット額の最低30%はサプライヤー又は中小企業が担うこととされており、またその半分にあたる最低15%を中小企業等が担うべき、とされている。

装備品の国産化政策

防衛産業研究者用研修プログラム(SAYP)

大学院生の論文を防衛産業の優先分野と一致するようなテーマとし、有望な研究者を防衛産業内で研修する。これによって若手研究者育成と、大学・防衛産業間の情報交換がよりシステマティックに進むことが期待されている。

装備品の国産化政策

重要な技術を有する企業の把握及びリスク管理手法

2-3.トルコ共和国防衛産業施策

出典:防衛産業庁 「産業参加/オフセットガイド」http://seattle.bciaerospace.com/images/2016/workshops/ssm-turkey.pdf防衛産業庁HP(http://www.ssm.gov.tr/WebSite/contentlist.aspx?PageID=86&LangID=1)

Page 13: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 12 -

2-4.イスラエル主要企業

イスラエルにおける防衛産業は政府系である企業を中心に拡大してきている。Elbit Systems社(民間)、IAI(Israel Aerospace Industries)(政府系)、Rafael(Rafael Advanced Defense Systems)(政府系)、IMI(Israel Military Industries、2016年より IMI systemsに変更)(政府系)が主要4社である。イスラエルにおける防衛産業は政府系である企業を中心に拡大してきている。以下4社が主要企業となっている。

Elbit Systems社(民間)IAI(Israel Aerospace Industries)(政府系)Rafael(Rafael Advanced Defense Systems)(政府系)IMI(Israel Military Industries、2016年より IMI systemsに変更)(政府系)

特に Elbit Systems 社はM&Aを繰り返し成長してきた企業である。今後5億~5億3000万ドルをかけて、イスラエルトップ4であり、世界トップ100に入る企業であるIMIを買収する予定である。

特徴

イスラエルの世界トップ100の最近5年の防衛産業規模(防衛分野の売り上げ、単位100万ドル)

上記主要企業以外の企業は、50~150人規模の中小企業等であり、大企業のサプライヤーとして活躍している。これら中小企業等はニッチな製品の開発を行っている企業が多い。また高いレベルの研究開発力に加え、社員のIDF(イスラエル国防軍)での経験を活用する能力も有している。

企業名 2016 2015 2014 2013 2012

Elbit Systems Ltd. 3,147.20 3,108.00 2,958.20 2,925.20 2,744.17

Israel Aerospace Industries 2,618.00 2,776.00 2,785.00 2,646.00 2,481.00

Rafael Advanced Defense Systems 2,354.56 2,016.17 1,965.40 2,115.00 1,781.49

Israel Military Industries 496.00 511.00 475.80 560.00 520.00

出展:Defence News.comを参考にみずほ情報総研が作成(http://people.defensenews.com/top-100/)

出典:Jewish Virtual Library(Project of Aice※)※アメリカ-イスラエル協力企業(http://www.jewishvirtuallibrary.org/israeli-defense-industry)

https://www.reuters.com/article/us-elbit-systems-imi-m-a/israels-elbit-to-buy-uzi-maker-imi-for-523-million-idUSKCN1GN0DK

出典:

Page 14: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 13 -

施策名 施策の概要 施策種類

MAHAT及びSIBATによる中小企業等振興

MAHAT(武器技術基盤開発局)とSIBATは、中小企業等振興策を行っており、防衛輸出の支援の他、国際マーケティングプログラムの支援、ビジネス情報の提供、世界各国のセキュリティ展示会の参加のための補助金支援等を行っている。例えば、各国の駐在員による情報収集・提供(国際マーケティング)、各国の展示会への参加支援、防衛ディクショナリー(※)への広告費の補助等を実施している。

中小企業等の防衛産業参入施策

中小企業等の防衛以外の分野への進出支援策

防衛ディクショナリーの発行

イスラエルの防衛輸出は、SIBATを通じて調整され、規制されている。 SIBATは、電子部品からミサイル艇や戦車に至るまで、IDF向けに開発されたすべての輸出向け防衛装備品に対してライセンスを発行する。毎年、SIBATは企業が提供する情報を元に、防衛ディクショナリーを発行している。本来の目的はライセンス管理であるが、同時に重要な企業、技術を把握することになる。

重要な技術を有する企業の把握及びリスク管理手法

2-4.イスラエル防衛産業施策

(※)SIBATでは、毎年IDF向けに開発されたすべての防衛輸出品に対してライセンスを発行しており、これらを取りまとめた「Defence Directry(防衛ディレクトリ)」を発行している。

出典:イスラエル国防省HP(http://www.mod.gov.il/Departments/Pages/Defense-exports.aspx)

Page 15: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 14 -

2-5.諸外国の政策調査結果

No. 調査対象政策 調査結果

1 防衛産業組織の再編・統合の実績積極的なM&Aの実施• ハンファグループにおける積極的なM&Aによる拡大(韓国)p.4• Elbit Systems 社における積極的なM&Aによる拡大(イスラエル)p.12

2 防衛装備品の国産化政策

先進技術の技術移転や生産基盤獲得を目指した制度• オフセット取引(インド、トルコ)p.8,11

自国内の研究開発力を維持・強化するための制度• 汎用部品の国産化開発制度(韓国)p.5• Make in India(インド)p.8• 防衛産業研究者用研修プログラム(SAYP)(トルコ)p.11

既存技術の維持・強化を目指した制度• 防衛装備品の防衛産業指定制度(韓国)p.5• 防衛装備品の備蓄原材料運用制度(韓国)p.5

諸外国の政策調査結果を整理統合した結果を以下に示す。

Page 16: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 15 -

No. 調査対象政策 調査結果

3これまで防衛に携わってこなかった国内中小企業等の防衛産業参入施策

政府からの投資による中小企業やベンチャーに対する支援• Make in India(インド)p.8• オフセット取引(インド、トルコ)p.8,11• 中小企業優先品目の指定制度(韓国)p.6• 国防ベンチャー支援制度(韓国)p.6• グローバル企業育成事業(韓国)p.6• コア部品の国産化支援事業(韓国)p.6

情報の非対称性の解消• 防衛産業エコシステムにおける既存、新規企業の奨励による競争力強化(トルコ)p.10

• 資金調達マーケティングにおける、インセンティブを最大限に活用する方法を調査(トルコ)p.10

ビジネス機会の提供• 防衛産業エコシステムにおける既存、新規企業の奨励による競争力強化(トルコ)p.10

• MAHAT及びSIBATによる中小企業等振興(イスラエル)p.13

2-5.諸外国の政策調査結果

Page 17: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 16 -

No. 調査対象政策 調査結果

4防衛産業に携わる国内中小企業等の防衛以外の産業分野への進出の支援施策

中小企業等が保有するデュアルユース技術利用具体策の模索• 国内で獲得した技術の二重使用(軍・民間)(トルコ)p.10• MAHAT及びSIBATによる中小企業等振興(イスラエル)p.13

情報の非対称性の解消• 防衛産業エコシステムにおける既存、新規企業の奨励による競争力強化(トルコ)p.10

• 資金調達マーケティングにおける、インセンティブを最大限に活用する方法を調査(トルコ)p.10

• MAHAT及びSIBATによる中小企業等振興(イスラエル)p.13

ビジネス機会の提供• MAHAT及びSIBATによる中小企業等振興(イスラエル)p.13

5 重要な技術を有する企業の把握及びリスク管理手法

研究開発段階における重要な技術の把握• 防衛産業研究者用研修プログラム(SAYP)(トルコ)p.11

情報やビジネス機会提供をインセンティブとした重要な技術を有する企業の把握• 防衛産業エコシステムにおける既存、新規企業の奨励による競争力強化(トルコ)p.10

• 防衛ディクショナリーの発行(イスラエル)p.13

サイバーセキュリティ強化による情報漏えいリスク管理• ネットワーク隔離(韓国)p.5

2-5.諸外国の政策調査結果

Page 18: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 17 -

3.我が国の防衛産業の競争力を高めるための施策提案1.本調査の目的及び調査内容

2.諸外国の政策調査2-1.大韓民国2-2.インド2-3.トルコ共和国2-4.イスラエル2-5.諸外国の政策調査結果

3.我が国の防衛産業の競争力を高めるための施策提案3-1.諸外国の政策の我が国への応用可能性の検討3-2.我が国の防衛産業の競争力を高めるための施策提案

4.施策立案へ向けたロードマップの提案4-1.施策14-2.施策24-3.施策3

2

3479

1214

171822

26273236

Page 19: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 18 -

3-1.諸外国の政策の我が国への応用可能性の検討

No. 調査対象政策 調査結果 我が国への

応用可能性 我が国への応用可能性のある政策

1防衛産業組織の再編・統合の実績

積極的なM&Aの実施

韓国やイスラエルにおける積極的なM&Aの実施は、新規技術や新事業の獲得、規模拡大による事業安定性の向上というメリットがあったものと考えられる。韓国やイスラエルの事例を踏まえ、我が国においてはプライムメーカーの再編・統合による技術の融合や規模のメリットの獲得という方向性が考えられる。

中小企業等経営安定化のための、防衛に限らない大企業への統合

プライムメーカーにおける再編・統合の場合、技術の融合というメリットを目指したものも可能だが、むしろ防需割合が高く経営が不安定になりやすい中小企業等の経営を安定させるための、防衛に限らない大企業への統合という可能性が考えられる。

諸外国の政策調査結果を受け、我が国への応用可能を検討し、我が国への応用可能性のある政策を以下に提案する。

Page 20: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 19 -

3-1.諸外国の政策の我が国への応用可能性の検討

No. 調査対象政策 調査結果 我が国への

応用可能性 我が国への応用可能性のある政策

2防衛装備品の国産化政策

先進技術の技術移転や生産基盤獲得を目指した制度

インドやトルコのオフセット取引を踏まえ、我が国において輸入が増加することによって相対的に自国防衛産業への調達が減少することによる、防衛産業基盤への影響を緩和するためにオフセット取引を導入する可能性が考えられる。

オフセット取引我が国が保有しない技術についてのライセンス生産や技術移転、あるいは装備品実運用データの提供等を条件にした装備品の海外調達

自国内の研究開発力を維持・強化するための制度

トルコの産学共同での研究者育成施策を踏まえ、我が国における研究開発力の維持・強化を狙った、防衛産業と大学共同での研究者育成施策が考えられる。

大学と装備品メーカーが協力した研究者の育成

安全保障技術研究推進制度を一歩進めて、防衛省が定めたテーマの研究に関わる大学院生に向けた研究費・給与を提供する、防衛省版の特別研究員制度を実施することが考えられる。(文科省では事例あり)

既存技術の維持・強化を目指した制度

韓国における、完全競争状態でない市場から安定的に部品調達を受けるための産業指定制度を踏まえ、我が国においても同様の企業を保護する施策の実施は重要と考えられる。

サプライチェーン上重要な中小企業等の保護

防需割合が高い中小企業等のうち、同様の製品を生産可能な企業が少ない企業を対象とした経営安定化のための補助金等による支援

Page 21: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 20 -

3-1.諸外国の政策の我が国への応用可能性の検討

No. 調査対象政策 調査結果 我が国への

応用可能性 我が国への応用可能性のある政策

3

これまで防衛に携わってこなかった国内中小企業等の防衛産業参入施策

政府からの投資による中小企業やベンチャーに対する支援

情報の非対称性の解消

ビジネス機会の提供

韓国における中小企業優先品目の指定制度を踏まえ、我が国においても重要な技術を有する中小企業等の調達を安定させることが重要と考えられる。

政府からの投資による中小企業やベンチャーに対する支援

中小企業等の基本的な課題と考えられる生産設備の遊休資産化や専門技能者の非稼働時の人件費等を補填し、売り上げの”波”を取り除く。

トルコやイスラエルにおける一連の情報共有施策(企業情報の防衛産業の業界内での共有等)を踏まえ、我が国においても有用な情報が共有されていないために、本来発揮されるべき中小企業等のポテンシャルが発揮されていない状態を解消することが重要と考えられる。

情報の非対称性の解消中小企業等へ情報提供を行う。中小企業等の情報を資金提供者(投資会社・商社等)や防衛産業関連企業へ提供する。

4

防衛産業に携わる国内中小企業等の防衛以外の産業分野への進出の支援施策

中小企業等が保有するデュアルユース技術利用具体策の模索

情報の非対称性の解消

ビジネス機会の提供

トルコやイスラエルのマッチングイベント開催や輸出支援施策は我が国においても有用な施策と考えられる。

ビジネス機会の提供マッチングイベントの開催、展示会出展支援、輸出支援を実施する。

トルコやイスラエルにおけるデュアルユース技術の活用推進施策は我が国においても中小企業等の遊休資産活用による経営安定化に資する重要な施策と考えられる。

中小企業等が保有するデュアルユース技術利用具体策の模索

中小企業等が保有する技術を応用することで民生品のコンポーネント等として販売する可能性を整理する。

Page 22: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 21 -

3-1.諸外国の政策の我が国への応用可能性の検討

No. 調査対象政策 調査結果 我が国への

応用可能性 我が国への応用可能性のある政策

5重要な技術を有する企業の把握及びリスク管理手法

研究開発段階における重要な技術の把握

トルコの産学共同での研究者育成施策を踏まえ、我が国において類似の制度を採用した場合、重要な技術を研究段階から把握することに資すると考えられる。

研究開発段階における重要な技術の把握防衛省が定めたテーマの研究に関わる大学院生に向けた研究費・給与を提供する、防衛省版の特別研究員制度を実施する。

情報やビジネス機会提供をインセンティブとした重要な技術を有する企業の把握

トルコやイスラエルにおける一連の情報共有施策やマッチングイベントや海外展開支援策を踏まえ、官が情報共有のハブ機能や、支援機能を持つようになると、自然と重要な技術やそれを有する企業を把握できるようになると考えられる。

情報やビジネス機会提供をインセンティブとした重要な技術を有する企業の把握

前述の「情報の非対称性の解消」、「ビジネス機会の提供」、「中小企業等が保有するデュアルユース技術利用具体策の模索」の実施

サイバーセキュリティ強化による情報漏えいリスク管理

韓国におけるネットワーク隔離施策を踏まえ、我が国においても防衛産業におけるサイバーセキュリティの適切な基準策定が重要と考えられる。

サイバーセキュリティ強化による情報漏えいリスク管理

防衛産業に関わる企業が実施すべきサイバーセキュリティ基準を策定することが考えられる。

Page 23: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 22 -

3-2.我が国の防衛産業の競争力を高めるための施策提案諸外国の政策の我が国への応用可能性の検討の結果を受け、我が国の防衛産業の競争力を高めるための施策を以下に提案する。

No. 提案する施策

1 中小企業等の現状把握、並びにコンサルティング制度及び補助金制度の導入

2 情報の非対称性の解消

3 中小企業等が保有するデュアルユース技術の展開

Page 24: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 23 -

3-2.我が国の防衛産業の競争力を高めるための施策提案本施策は、効果的な中小企業等支援施策を実現するため、中小企業等が抱える重要な経営課題を把握し、これを解決するための方策を整理し、さらに課題解決のための人的支援制度や補助金制度等を整備することで、中小企業等の撤退・廃業のリスク低減及び新規参入を狙うものである。施策実施効果として以下が考えられる。

中小企業等の経営における個別課題及び各社共通課題の把握中小企業等の経営状態改善による撤退・廃業リスクの低減新規中小企業等の参入中小企業等の各種手続きに要するコストの軽減

No. 提案する施策 施策概要

1中小企業等の現状把握、並びにコンサルティング制度及び補助金制度の導入

1. 中小企業等が抱える経営課題の把握2. 中小企業等が抱える経営課題の類型化・解決策の策定3. 中小企業等を専門としたコンサルティング制度の導入4. 補助金の導入5. 優遇税制の導入6. ベンチャー企業支援制度の導入

Page 25: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 24 -

3-2.我が国の防衛産業の競争力を高めるための施策提案本施策は、有用な情報が共有されていないために、本来発揮されるべき中小企業等のポテンシャルが発揮されていない状態を解消することを狙うものである。施策実施効果として以下が考えられる。

中小企業等が活用できる資源(情報・資金)の増加中小企業等の営業体力の軽減(※1)中小企業等の市場機会の拡大装備品サプライチェーンの最適化(※2)

No. 提案する施策 施策概要

2 情報の非対称性の解消

1. 中小企業等に対する情報提供2. 中小企業等への資金提供者(投資会社・商社等)に対する

情報提供3. 中小企業等の潜在顧客・協業者への情報提供

(※1)政府が中小企業等の技術や製品の強みに関する情報を発信することで、中小企業等はこれまで営業できなかった対象にも情報を届けることができる。その結果中小企業等では営業体力を新規に獲得したかのような効果を得ることができる。

(※2)プライムメーカー等がこれまで認識していなかった、または十分な情報を保有していなかった中小企業等の情報を取得することで、これまでより発注先や発注内容に関する選択肢が増え、サプライチェーンをより最適化することができる。

Page 26: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 25 -

3-2.我が国の防衛産業の競争力を高めるための施策提案本施策は、中小企業等が保有する防衛関連技術の民生転用、および防衛産業に活用されていない技術の防衛用途への転用により、防衛関連品および民生品双方を生産することによって、遊休資産の稼働率を向上させることで経営状態の改善を図り、中小企業等の撤退・廃業のリスク低減、およびこれまで防衛に携わってこなかった中小企業等の新規参入を狙うものである。施策実施効果として以下が考えられる。

中小企業等の遊休資産活用による、経営状態改善、専門技能の継承失敗リスクの低減中小企業等の売り上げ増加による経営体力の改善将来的な防衛装備品の創製

No. 提案する施策 施策概要

3 中小企業等が保有するデュアルユース技術の展開

1. 中小企業等が保有する防衛関連技術の民生転用可能性の調査

2. 民生品生産のための協業体制および民生品の販路の確立3. 防衛にも応用可能な中小企業等が保有する技術の調査

Page 27: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 26 -

4.施策立案へ向けたロードマップの提案1.本調査の目的及び調査内容

2.諸外国の政策調査2-1.大韓民国2-2.インド2-3.トルコ共和国2-4.イスラエル2-5.諸外国の政策調査結果

3.我が国の防衛産業の競争力を高めるための施策提案3-1.諸外国の政策の我が国への応用可能性の検討3-2.我が国の防衛産業の競争力を高めるための施策提案

4.施策立案へ向けたロードマップの提案4-1.施策14-2.施策24-3.施策3

2

3479

1214

171822

26273236

Page 28: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 27 -

4-1.施策1~課題と解決方針~

No. 提案する施策 実現に向けた課題 課題解決へ向けた実施事項

1中小企業等の現状把握、並びにコンサルティング制度及び補助金制度の導入

個社情報の把握中小企業、ベンチャー企業の経営課題の実態調査の実施

個社課題の類型化調査の実施

政府の協力範囲の設定

制度案に関する調査の実施

制度設計に関する委員会の開催

相談窓口の設置の制度設計

補助金や優遇制度の設計

ベンチャー企業支援制度の設計

提案施策の課題、及びその解決方針の案を以下に示す。

Page 29: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 28 -

4-1.施策1~ロードマップ案~

施策1.中小企業等の現状把握、並びにコンサルティング制度及び補助金制度の導入

制度案に関する調査の実施 制度運営の開始制度設計に関する

委員会の開催

1年目 2年目 3年目

個社情報の把握1-A 1-B 1-C

課題の解決方針について、施策立案へ向けたクリティカルパスの整理及び解決に要する時間の見積り結果を以下に示す。

Page 30: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 29 -

4-1.施策1~ロードマップ案詳細~ロードマップ上の各実施事項の、より詳細な実施項目の仮説を以下に示す。

No. 実施事項 詳細

1-A 個社情報の把握

防衛装備品生産に関わる中小企業等の経営課題の実態調査の実施

防衛産業に関わる中小企業等のリストアップ、及びリストアップされた企業に対し、経営上の課題に関する実態のヒアリング調査を実施する。• 自動車産業などに見られるように、プライムメーカーによるサプライチェーンマネジメントは近年重要

な課題となっている。防衛産業においては、中小企業等の課題把握はプライムメーカーだけでなく官にとっても重要である。そのため調査実施にあたっては、両者の協力体制を構築することが有用と考えられる。

ベンチャー企業を含めた防衛への新規参入企業の課題に関する実態調査の実施

防衛産業へ参入したベンチャー企業を文献調査およびヒアリング調査によってリストアップする。リストアップされた企業に対し、防衛産業へ参入した際の課題や、現在抱える経営課題に関する実態についてヒアリング調査を実施する。

個社課題の類型化調査の実施

以上の調査結果を整理し、防衛産業に関わる中小企業及びベンチャー企業が抱える経営課題を類型化する。

Page 31: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 30 -

4-1.施策1~ロードマップ案詳細~

No. 実施事項 詳細

1-B 制度案に関する調査の実施

個社課題の類型化調査の結果を受け、他省庁(経済産業省、中小企業庁等)が実施している補助金や優遇税制の防衛産業への適用可能性調査の実施

実施事項は以下2点• 他省庁が実施している補助金や優遇制度の調査• 防衛産業へ適用する場合の課題および解決策の洗い出し

個社課題の類型化調査、及び他省庁補助金等の適用可能性調査の結果を受け、以下の施策に関する複数の制度案の設計及び制度案ごとの法的課題点や費用の算定調査の実施

相談窓口の設置補助金や優遇制度ベンチャー企業支援制度

Page 32: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 31 -

4-1.施策1~ロードマップ案詳細~

No. 実施事項 詳細

1-C 制度設計に関する委員会の開催

前述の、制度案ごとの法的課題点や費用に関する調査結果を受け、望ましい制度案の設計について協議する委員会を開催する。

前述の調査と委員会の開催は併走することが想定される。

参加が必要と考えられる専門家の専門性

中小企業等の経営(例:中小企業診断士)防衛産業産業政策実際の事業者

必要と考えられる開催回数と議題

最低3回程度の開催が必要議題は大きく以下の3つ• 適切なコンサルティング制度・相談窓口制度• 適切な補助金・優遇税制制度• 適切なベンチャー企業支援制度

Page 33: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 32 -

4-2.施策2~課題と解決方針~

No. 提案する施策 実現に向けた課題 課題解決へ向けた実施事項

2 情報の非対称性の解消

情報の提供内容の設定

情報の提供方法・メディアの設定、発行チームの設置

情報の提供先の設定

事業者等へのヒアリングの実施

提供する情報の素案作成

提案施策の課題、及びその解決方針の案を以下に示す。

Page 34: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 33 -

4-2.施策2~ロードマップ案~

施策2.情報の非対称性の解消

1年目 2年目

事業者に対するヒアリングの実施

情報提供方法の素案作成

情報提供の開始

提供情報の作成

2-A

2-B解消すべき

情報の非対称性の整理

投資会社・商社等プライムメーカー等

中小企業事業者へヒアリング

課題の解決方針について、施策立案へ向けたクリティカルパスの整理及び解決に要する時間の見積り結果を以下に示す。

Page 35: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 34 -

4-2.施策2~ロードマップ案詳細~ロードマップ上の各実施事項の、より詳細な実施項目の仮説を以下に示す。

No. 実施事項 詳細

2-A 事業者等へのヒアリングの実施

解消すべき情報の非対称性の整理解消すべき情報の非対称性を整理する。現在存在する非対称性の仮説としては下記3点が考えられる。

1. 投資会社や商社等、中小企業等へ支援を行う企業が、防衛関連企業を認識していない。又は十分な情報を保有していない。

2. プライムメーカーやプライムメーカーの1次受けメーカー等が、発注が可能な中小企業等や新規参入を考える企業を認識していない。又は十分な情報を保有していない。

3. 中小企業等が、協業可能な中小企業等を認識していない。又は十分な情報を保有していない。また利用可能な制度や補助金等について認識していない。又は必要な手続きの実施等のノウハウを保有していない。

投資会社や商社等へ対するヒアリング事項防衛関連中小企業等の情報は有用か。どのような情報が必要か。

プライムメーカーやプライムメーカーの1次受けメーカーに対するヒアリング事項防衛関連中小企業等の情報は有用か。どのような情報が必要か。

中小企業等に対するヒアリング事項防衛関連中小企業等の情報は有用か。のような情報が必要か。防衛省が実施する支援制度や補助金、投資会社や商社の支援等に関する情報は有用か。どのような情報が必要か。

Page 36: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 35 -

4-2.施策2~ロードマップ案詳細~

No. 実施事項 詳細

2-B 提供する情報の素案作成

前段のヒアリング調査結果を受け、目的別に情報提供方法の素案を作成する。

例)防衛産業業界内での、高い技術を持つ中小企業等の紹介や、その技術情報の共有を目的とした場合、以下のような情報提供が考えられる。

情報の提供内容:高い技術を持つ中小企業等の、• 企業名• 防衛産業へ携わった経緯• 作成している装備品のコンポーネントや部品• 保有している技術の強み• 新規協業の可能性について経営者からのコメント情報の提供方法(メディア含む)• 月1回、1つのサプライチェーンに携わる10社を紹介• 雑誌媒体、またはID保有者のみが閲覧可能なウェブ媒体情報の提供先• プライムメーカー、プライムメーカーの1次受け等メディア発行者の作業内容• 高い技術を持ち、限定された情報提供先に対し情報提供が許容できる企業に対する、ヒア

リング必要となる費用• 毎月の取材に係る取材費(人件費・旅費等)• 発行のための費用(印刷・郵送)

Page 37: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 36 -

4-3.施策3~課題と解決方針~

No. 提案する施策 実現に向けた課題 課題解決へ向けた実施事項

3中小企業等が保有するデュアルユース技術の展開

防衛関連技術の民生転用のベストプラクティスの整理 民生転用事例の調査と事例集の作成

スピンオンが期待される技術や当該技術を保有する企業等の整理

我が国において研究や開発が盛んな新規技術の調査・整理

調査の結果得られた新規技術の防衛への活用可能性の検討

提案施策の課題、及びその解決方針の案を以下に示す。

Page 38: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 37 -

4-3.施策3~ロードマップ案~

施策3.中小企業が保有する技術のデュアルユース展開の推進

事例集の公開・配布

1年目 2年目

民生転用事例の調査と事例集の作成

民生転用事例の収集

民生転用事例の実態調査

民生転用事例の類型化

事例集の作成

3-A

課題の解決方針について、施策立案へ向けたクリティカルパスの整理及び解決に要する時間の見積り結果を以下に示す。

スピンオンが期待される技術や当該技術を保有する企業等の整理3-B

装備品への適用を前提とした新規技術および当該技術保有企業等の調査

新規技術の装備品への適用可能性調査

スピンオンが期待される技術の防衛産業内での

情報共有

Page 39: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 38 -

4-3.施策3~ロードマップ案詳細~ロードマップ上の各実施事項の、より詳細な実施項目の仮説を以下に示す。

No. 実施事項 詳細

3-A 民生転用事例の調査と事例集の作成

民生転用事例の収集文献調査を実施する。ヒアリング調査を実施する。

民生転用事例の実態調査事例収集の結果を受け、「民生転用の経緯、転用時の計画、転用によるメリット・デメリット等」について実際の事業者へヒアリングを行う。

事例の類型化ヒアリング結果を受け、民生転用の方法について類型化を行う。

事例を基にした民生転用方法のヒントの整理ヒアリング結果及び類型化結果を受け、今後同様に技術の民生転用を考える事業者が民生転用する際に参考となる情報を整理する。

事例集の作成以上の調査結果をとりまとめた事例集を作成する。

Page 40: 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた国内外の …...-2-1.本調査の目的及び調査内容 防衛装備品の研究開発、生産、維持整備等を支える我が国防衛生産・技術基盤の多くは、防衛産業に依存しており、当該防衛産業の基盤は、我が

- 39 -

4-3.施策3~ロードマップ案詳細~

No. 実施事項 詳細

3-Bスピンオンが期待される技術や当該技術を保有する企業等の整理

装備品への適用を前提とした新規技術および当該技術保有企業等の調査防衛装備品への適用を前提とした技術が整理されている中長期技術見積りや、安全保障技術研究推進制度にて募集している研究テーマ等を参考とし、民間で研究・開発が進められていることが想定される技術分野を整理する。整理結果を受け、各技術分野における我が国が保有する新規技術および当該技術の保有企業等を調査する。

新規技術の装備品への適用可能性調査広く我が国において研究・開発が進められている新規技術および当該技術保有企業等を調査・整理する。調査にあたっては、他省庁が実施している調査研究等を活用する。(例:経済産業省におけるグローバルニッチトップ企業調査や、文部科学省における研究助成金の採択状況など)調査結果を受け、各技術の防衛装備品への適用可能性を調査する。調査にあたっては、文献調査による適用可能性の俯瞰的な整理および、整理結果を受けた防衛装備品メーカー等専門家へのヒアリングを実施する。