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資源開発環境調査 エクアドル共和国 Republic of Ecuador

資源開発環境調査 エクアドル共和国 Republic of Ecuadormric.jogmec.go.jp/public/report/2005-10/ecuador_05.pdf首都キトー(標高2,850m)付近を赤道が通り、赤道を意味するスペイン語「el

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資源開発環境調査

エクアドル共和国

Republic of Ecuador

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目 次

第 1 部 資源開発環境調査

1. 一般事情······························································· 1

2. 政治・経済概要 ························································· 3

3. 鉱業概要······························································ 12

4. 鉱業行政······························································ 13

5. 鉱業関係機関 ·························································· 15

6. 投資環境······························································ 17

7. 地質・鉱床概要 ························································ 18

8. 鉱山概要······························································ 18

9. 新規鉱山開発状況 ······················································ 18

10. 探査状況····························································· 19

11. 製錬所概要 ··························································· 20

12. わが国のこれまでの鉱業関係プロジェクト実施状況 ······················· 21

第 2 部 地質解析

1. 地質・地質構造·························································· 23

2. 鉱床·································································· 27

2-1. 鉱床生成区 ·························································· 27

2-2. タイプ別・時代別分布の特徴 ·········································· 30

3. 鉱床胚胎有望地域 ······················································ 30

資料(統計、法律、文献名、URLなど) ··································· 33

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- 1 - エクアドル

第 1 部 資源開発環境調査

1. 一般事情

1-1. 面積 256,370 ㎢

1-2. 人口 1288 万人

1-3. 首都 キト

1-4. 人種 白人・先住民混血(メスチソ)77%、白人 10%、先住民 7%、

黒人・先住民混血(ムラート)3%、黒人 2%

1-5. 公用語 スペイン語

1-6. 宗教 カトリック

1-7. 地勢等

エクアドル共和国は、南米大陸西岸の赤道直下、北緯 1度 38分~南緯 4度 50 分に位置し、北は

コロンビア共和国、東・南はペルー共和国に隣接している。 西側は太平洋に面し、洋上 1、552km に、

同国の領土、コロン群島(通称ガラパゴス諸島)が存在している。

首都キトー(標高 2,850m)付近を赤道が通り、赤道を意味するスペイン語「el ecuador」が国名の

由来となっている。 国土の面積は 256,370km2、わが国の本州と九州を併せた面積にほぼ等

しく、人口は 1288 万人(2001 年)、南米大陸の国の中では、ウルグアイ共和国に次ぐ小国である。国

土の中央部をアンデス山系が南北に縦走し、西から、海岸地方の平地(ラ・コスタ)、アンデス山系の高地

(ラ・シエラ)、アマゾンの熱帯雨林(エル・オリエンテ)に区分されている。

アンデス山系には、 高峰のチンボラソ山(Chimborazo、6,267m)を始め、万年雪を頂く 4,000m 以上

の峻峰が聳えている。 数多くの大規模河川が存在し、アマゾン山系を分水嶺とし、東側アマゾン河

に流下する河川と、西側太平洋に注ぐ河川に分けられる。

本土の西方、太平洋上に存在する、コロン群島(Archipielago de Colon、通称ガラパゴス諸島)は、

大小 17の島々からなり、総面積は 7,845km2(ほぼ四国の 2/3)、無数の陸生象亀がこれら島々

に生息しいたため、象亀の島(Galapagos 島)と呼ばれている。 ガラパゴス諸島は、第三紀中新

世の玄武岩、熔岩、凝灰岩と、これらと互層する石灰岩、石灰質砂岩で構成され、群島を取り巻

く海流、気象が変化に富んでいるため、特異な生物に富んでいる。

気候は熱帯性気候に伴う酷暑、多雨が特徴であり、アンデス山系、フンボルト寒流、中米暖流などの

影響を受け、変化に富んでいる。 南北に走るアンデス山系を境に、海岸地域、アンデス山系、アマゾ

ン地域の 3つの気候区に分けられる。

太平洋に面した海岸地域は、赤道直下の熱帯の低地であるが、冷たいフンボルト海流とパナマ海

流の影響で、比較的穏やかな気候と降雨に恵まれている。雨季と乾季があり、乾季(5~11

月)の日中平均気温は 25度前後、雨季(12~4月)は蒸し暑く平均気温は 31度になる。

北上するフンボルト寒流と、パナマから南下するエル・ニーニョ暖流が合流し、同国の海岸地方やアンデス

山系には、豊富な降雨量が認められている。(エル・ニーニョ暖流は、5~6年の周期で強くなり、気象

的、生物学的変異(エル・ニーニョ現象)を起こさせる)

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- 2 - エクアドル

アンデス山系では、盆地は亜熱帯性気候、高原地域は温暖、高山地域は寒冷である。

首都のキトーは、赤道直下にありながら、標高が高い(2,850m)ため、年間の平均気温は 14~

19 度、常春の街といわれる快適な気候の都市である。

アマゾン地域(オリエンテ)は、アンデス山系の東側に広がる、湿潤・酷暑の熱帯雨林地域で、年間を通

して降雨量の多い地域である。 手つかずの自然が多く残された地域で、めずらしい動植物

や昆虫などの他、外界と接触を持たない原住民も生活している。

同国の複雑な地勢、気候の変化は、生物界や植生にも、大きな影響を与えており、太平洋に

浮ぶガラパゴス群島は、特異な生物、魚族の豊富なことで世界的に著名である。

公用語はスペイン語であるが、先住民族のほとんどはケチュア語を話し、アマゾン地方では様々な言

語が使われている。宗教は大部分がカトリック教徒(95%)であるなかに、いまだに土着信仰(土信

仰、雪信仰、太陽信仰など)を守りながら生活している人たちもいる。

出典: MAPQUEST.COM

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- 3 - エクアドル

2. 政治・経済概要

2-1. 政体 共和制

2-2. 元首 ルシオ・エドィン・グティエレス・ボルブア大統領

(~2007 年 1 月まで 再選不可)

2-3. 議会 一院制(任期 4 年:計 100 議席)

2-4. 政治概況

政治体制は共和制で、1998 年に就任したマワ大統領は、経済政策として各種補助金の廃止、

税制改革、国内燃料値上げなど、財政赤字対策、為替、物価安定化政策の実施に努めたが中

途半端に終わり、逆に社会不安と反政府機運をもたらすことになった。同大統領は、経済の

ドル化を実施(2000 年)したが、各種社会団体による反政府抗議運動は衰えることなく、先住

民と一部軍将校が国会を占領し、副大統領が大統領職を継承してノボア現政権が誕生した。

2000 年に就任したノボア大統領は、基本的に前政権の経済政策を受け継ぎ、経済変革基本法を

成立させた。

その他、IMF との合意を達成し、国内燃料価格の凍結解除、公共料金の補助金削滅、公務

員の給与値上げなどを内容とした経済・社会プログラムを推進し、投資促進・市民参加法も成立

させている。公共料金の値上げなど含む経済政策に対し、先住民、各種社会団体による慢性

的なストライキが繰り広げられていたが、政府と先住民団体による交渉もあり、抗議活動は収束

している。2001 年には IMF の提示したマクロ経済指標を概ね達成し、国際的な信用を回復し

た。

2003 年に就任したグティエレス大統領は、汚職撲滅、貧困撲滅、治安改善、生産性と競争

力の強化、民族的多様性を反映した外交の推進という五つの課題を掲げている。しかし八月

には、先住民組織が連立政権を離脱し、苦しい政権運営に直面している。

他方、内政不干渉、民族自決、国家間の平等、軍縮支持などを外交の基本方針とし、米国、

欧州、環太平洋諸国との関係強化にも力を注いでいる。アンデス共同体の加盟国として、アンデス・

グループの政治的結束への努力も行っており、特にコロンビア、ヴェネズエラとは密接な関係を有して

いる。

前世紀からの 大の外交懸案であったペルーとの国境問題は、リオ議定書保証国(米、伯、チリ、

アルゼンチン)の仲介もあり、四保証国大統領の提案に基づき、1998 年に 終合意に至り、1999

年には国境の 終確定を終えた。(現在は国境地域の開発等が課題となっている)

米国との関係では、1999 年よりマンタ空軍基地内に麻薬監視所が設置され、米軍人が常駐し

て、麻薬栽培、取引の監視を行っている他、コロンビア人の流入に対処するため、米政府は各種

支援を約束している。

APEC への参加を正式に申請(1996 年 9月)した他、太平洋経済委員会(PBEC)に参加(1997

年 5月)し、太平洋経済協力会議(PECC)にも加盟(1999 年 10 月)している。

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日本とは、1918 年に外交を開始し、その後一時国交断絶があったが、1954 年に外交関係

が再開された。エクアドル共和国は、伝統的に日本と友好関係にあり、南米諸国でも開発の遅れ

た国であるため、無償資金協力、技術協力などの援助を実施している。

日本はペルー・エクアドル国境紛争の和平が達成されたため、両国国境地域開発に関するプロジェク

ト形成調査団を派遣(1999 年)し、同地域の開発支援を目的とした、資金協力、人的交流など

を行っている。また、有償資金協力では、エネルギー分野のほか、電気・通信分野、農業分野に

対する協力、債務繰延べを行い、無償資金協力では、水産分野のほか、文化無償、医療・保

健、飲料水供給、運輸分野、災害緊急援助などを行っている。技術協力では、保健・医療、

運輸・交通、エネルギー、通信・放送、水産分野に、各種形態の協力を行っているほか、海洋研究

センターへのプロジェクト方式技術協力、青年海外協力隊の派遣なども実施している。

2003 年度までの日本の援助実績(単位億円)

有償資金協力 813.12

無償資金協力 206.40(1991 年度より一般無償適格国)

技術協力実績 149.39(2002 年度まで JICA ベース)

2-5. 主要産業 農業(バナナ、コーヒー、ココア)、石油、水産業(エビ)

2-6. GDP 268.44 億ドル(03 年エクアドル中銀)

2,139 億ドル(03 年エクアドル大統領府)

2-7. 通貨 US ドル(USD)、エクアドル・スクレ(ECS)

2-8. 為替レート 1US$=25,250ECS(2005/02 現在)

年末 1999 年 2000 年 2001 年 2002 年 2003 年

1US$= 20,243.0 25,000.0 25,000.0 25,000.0 25,000.0

(International Financial Statistics 2004)

2-9. 貿易(2003 年エクアドル中銀)

輸出 60 億ドル:石油、バナナ、エビ、コーヒー

輸入 61 億ドル:車両部品、フィルム等

対日貿易(2003 年)

輸出 201 億円:輸送機器、一般機械、電気機器

輸出 297 億円:バナナ、石油、エビ、コーヒー、カカオ

2-10. 経済概況

エクアドル共和国は、南米諸国のなかで、国土も人口も少ない国であるが、農業、森林伐材、沿岸

漁業の開発に適した自然好条件を具備し、石油などの地下資源も豊富で、国内の随所で水力

電源開発が可能である。

マワ前政権(1998 年~2000 年)は、財政赤字の解消を目指したが、経済政策に対する国民の

不満は大きかった。 ブラジル通貨切り下げの影響(1999 年 1月)を受け、変動相場制に移行し

たが、通貨(スクレ)の下落が続き、経済危機打開策として、為替制度のドル化が行われた。

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ノボア政権は、基本的にマワ前政権の経済政策を継承し、ドル化を含む経済変革基本法を制定

し、IMF との合意により、IMF、世銀、IDB、CAF よりの新規融資の道が開かれた。

この他、年金・公務員給与の値上げ、燃料価格の引き上げなどを内容とした経済・社会政策

が発表された。

グティエレス政権はIMFとの合意(2003年2月)をベースに徹底した緊縮政策を実施に移し

た。その結果 2003 年については GDP3.0%増、インフレ率 6.1%、財政黒字 GDP 比 1.9%といず

れも目標を達成した。しかしながら、依然石油輸出と移民送金に依存する体質からは脱却出

来ておらず、輸出競争力の強化、及び 2005 年 7月までの終了を目指す米との FTA 交渉など

が主要な課題となっている。

エクアドル共和国は石油の輸出国(1992 年 OPEC より脱退)で、経済は石油部門に大きく依存し、

他にバナナ、コーヒー、カカオ、養殖海老を中心とする、農業・水産業が主要な産業である。

石油の輸出(1972 年)が始まると、石油輸出額が急増し高い経済成長を遂げたが、1986 年

以降、石油・コーヒーの国際価格の低落、エル・ニーニョ現象に起因する集中豪雨(1997~1998 年)による

海岸部を中心とした洪水被害など、極めて重大な経済的痛手を被っている。

同国は政治的、経済的に落ち着きを回復しつつあり、非鉄資源開発を推進し、原油など伝

統的輸出産品への過剰依存からの脱却が、現政権の重要課題となっている。

農業、林業、漁業

国土の約 1/3 が耕作地として利用され、就業人口の約 45%が、農業に従事している。

当国の地勢、気候の関係上、耕地は海岸地帯と中央高原地帯とに集中している。

海岸地帯は地味が肥沃で、気候の変化により、多種多様の熱帯性~温帯性の農産物の栽培

に適し、バナナ、コーヒー、ココア、米、果物など輸出用の農作物が栽培されている。

中央高原地帯では、国内消費用の穀類、野菜類、大部分の酪農製品などが栽培されている

が、旧式な零細農業が多く、海岸地帯に比較して近代化が立遅れている。

エクアドルは、バナナ主要な生産国であるが、 近では切り花、特にバラが、中央~北部高原地域で

栽培され、より付加価値の高い、輸出商品となりつつある。

ココアやコーヒーは、エル・ニーニョ現象(1998 年)による洪水などの影響で、生産量が落ち込んで収益が

急激に減少したが、新たな農園作りが始まり、徐々に復興しつつある。

内陸の河川、湖、近海は、多種の魚類や海産物が豊富で、近年は、グワヤキル湾、エスメラルダ州、マナビ

州などで、輸出用の海老養殖が急激に増加している。

近年、エクアドルは、タイ、米国、インドに次ぐ、世界第 4位の養殖海老生産国となり、養殖海老は、石

油、バナナに次ぐ、第 3位の同国ル輸出商品となっている。

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- 6 - エクアドル

参考までに近年の経済指標を示す。

国内総生産(GDP)

1999 年 2000 年 2001 年 2002 年 2003 年

GDP 総額(億ドル) 166.7 157.3 210.2 243.1 268.4

GDP/人(ドル) 1,328 1,338 1,729 1,959 2,120

GDP 成長率(実質) -6.3 2.8 5.1 3.4 3.0

出所:中央銀行

産業別(GDP 構成比・成長率)

2001 年 2002 年 2003 年

産業別 構成比

(%)

成長率

(%)

構成比 成長率 構成比 成長率

農畜業 8.8 0.4 9.1 7.5 9.0 1.8

水産業 1.4 -1.2 1.4 3.3 1.4 1.9

石油 20.4 1.7 19.0 -3.7 19.6 6.2

鉱業 0.4 3.3 0.4 6.3 0.4 2.2

製造業 13.3 2.9 13.0 0.7 17.8 3.0

建設業 7.0 4.0 7.8 14.7 7.8 1.2

サービス業他 48.7 4.7 49.3 4.0 49.0 1.0

出所:中央銀行

物価

消費者物価上昇率

1999 年(%) 2000 年 2001 年 2002 年 2003 年

60.7 91.0 22.4 9.4 5.1

出所:中央銀行

国家財政

歳入

単位:百万米ドル

2002 年 2003 年

1.石油 1,324.0 1,555.5

2.関税 421.7 382.8

3.所得税 435.2 516.2

4.付加価値税 1,497.0 1,579.6

5.特別消費税 151.3 148.3

6.その他 605.4 527.2

計 4,434.6 4,709.6

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- 7 - エクアドル

歳出

単位:百万米ドル

2002 年 2003 年

1.給与 1,599.8 1,870.8

2.資材・サービス 303.8 336.3

3.利払い 996.7 864.1

4.資本支出 532.1 764.5

5.内外債務返済 1,086.1 1,480.7

6.その他支出 1,328.5 1,384.9

計 5,847.0 6,701.3

出所:経済・財務省

外貨準備高・対外債務残高

単位:億ドル

1999 年 2000 年 2001 年 2002 年 2003 年

外貨準備高 16.4 9.4 8.2 6.9 7.9

対外債務残高 134 110 112 133 115

出所:中央銀行

国際収支

単位:百万ドル

2000 年 2001 年 2002 年 2003 年

経常収支 1,004 -509 -1,129 -747

貿易収支 1,458 -303 -977 -421

輸出(FOB) 4,927 4,678 5,030 5,713

輸入(CIF) 3,469 4,981 6,007 6,134

貿易外収支 -454 -206 -152 -326

資本収支 -697 404 1,091 805

総合収支 307 -105 -38 58

出所:中央銀行

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輸出入

輸出(FOB)

単位:百万ドル

2001 年 2002 年 2003 年

商品 金額 金額 金額 構成比(%) 伸び率(%)

石油 1,900.0 2,055.0 2,606.4 43.2 26.8

バナナ 864.5 969.3 1,099.3 18.2 13.4

生花 238.0 290.3 295.2 4.9 1.7

海老 281.3 252.7 275.7 4.6 9.1

カカオ類 86.6 129.1 158.7 2.6 22.9

コーヒー類 44.0 41.7 63.0 1.0 51.1

マグロ 65.2 59.9 56.6 0.9 -5.5

その他 1,198.8 1,238.1 1,483.6 24.6 19.8

合 計 4,678.4 5,036.1 6,038.5 100.0 19.9

出所:中央銀行

輸入(CIF)

単位:百万ドル

2001 年 2002 年 2003 年

商品 金額 金額 金額 構成比(%) 伸び率(%)

消費財 1,419.0 1,802.1 1,868.4 28.6 3.7

非耐久消費材 765.1 970.0 1,068.0 16.3 10.1

耐久消費材 653.9 832.1 800.4 12.2 -3.8

燃料 296.6 284.4 664.1 10.2 133.5

原材料 1,983.2 2,320.2 2,212.4 33.9 -4.6

工業用 1,548.7 1,701.7 1,738.3 26.6 2.2

建設用 179.6 352.1 186.1 2.8 -47.1

農業用 254.9 266.4 288.0 4.4 8.1

資本財 1,661.0 2,022.2 1,788.6 27.4 -11.6

工業用 940.0 1,221.4 1,176.9 18.0 -3.6

輸送機器 678.9 768.9 574.9 8.8 -25.2

農業用 42.1 31.9 36.8 0.6 15.4

その他 2.9 2.1 0.8 0.0 -61.9

合 計 5,362.8 6,431.1 6,534.4 100.0 1.6

出所:中央銀行

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- 9 - エクアドル

地域・主要国別輸出(FOB)

単位:百万ドル

2001 年 2002 年 2003 年

地域・国名 金額 金額 金額 構成比(%) 伸び率(%)

米国 1,789.7 2,086.8 2,451.6 40.6 17.5

アンデス共同体 837.1 816.6 1,055.0 17.5 29.2

ペルー 341.6 384.5 632.9 10.5 64.6

コロンビア 324.3 362.5 362.2 6.0 -0.1

ベネズエラ 165.7 64.7 54.6 0.9 -15.6

ボリビア 5.5 4.9 5.3 0.1 8.2

EU 666.3 794.5 1,037.1 17.2 30.5

イタリア 203.3 289.6 377.4 6.2 30.3

ドイツ 153.0 172.2 206.9 3.4 20.2

スペイン 70.9 65.8 145.8 2.4 121.6

オランダ 77.2 86.9 113.1 1.9 30.1

アジア 445.8 453.5 384.0 6.4 -15.3

韓国 238.2 296.1 241.9 4.0 -18.3

日本 122.8 97.9 86.1 1.4 -12.1

その他 939.5 884.7 1,110.8 18.417 25.6

合 計 4,678.4 5,036.1 6,038.5 100.0 19.1

出所:中央銀行

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- 10 - エクアドル

地域・主要国別輸入(CIF)

単位:百万ドル

2001 年 2002 年 2003 年

地域・国名 金額 金額 金額 構成比(%) 伸び率(%)

米国 1,326.4 1,480.9 1,401.1 21.4 -5.4

アンデス共同体 1,173.0 1,416.4 1,489.8 22.8 5.2

コロンビア 770.4 902.3 925.8 14.2 2.6

ベネズエラ 293.6 353.2 377.1 5.8 6.8

ペルー 101.7 154.8 177.0 2.7 14.3

ボリビア 7.3 6.0 9.9 0.2 65.0

ブラジル 194.6 405.9 366.4 5.6 -9.7

チリ 265.9 300.9 355.1 5.4 18.0

メキシコ 165.5 191.0 182.9 2.8 -4.2

アルゼンチン 94.6 169.1 174.6 2.7 3.3

EU 665.0 889.5 812.3 12.4 -8.7

ドイツ 178.2 181.5 177.0 2.7 -2.5

スペイン 101.2 137.7 138.9 2.1 0.9

イタリア 109.8 142.5 111.4 1.7 -21.8

オランダ 43.4 51.4 73.1 1.1 42.2

アジア 834.7 966.7 985.4 15.1 1.9

日本 351.3 391.6 273.5 4.2 -30.2

韓国 123.7 136.0 187.6 2.9 37.9

その他 643.2 610.7 766.8 11.7 25.6

合 計 5,362.9 6,431.1 6,534.4 100.0 1.6

出所:中央銀行

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- 11 - エクアドル

日本の対エクアドル主要商品別輸出

単位:十万ドル

2001 年 2002 年 2003 年

商品 金額 金額 金額 構成比(%) 伸び率(%)

機械機器 3,770.9 3,111.9 2,286.0 88.8 -26.5

輸送機械 3,250.7 2,644.7 1,960.8 76.2 -25.9

乗用自動車 1,630.1 1,159.0 829.7 32.2 -28.4

トラック 1,272.7 1,148.9 675.5 26.2 -41.2

一般機械 392.6 367.1 231.6 9.0 -36.9

電気機械 121.6 92.4 86.5 3.4 -6.4

精密機械 5.9 7.8 7.1 0.3 -7.9

金属品 142.2 106.1 77.8 3.0 -26.7

化学品 55.1 38.2 39.0 1.5 2.1

その他(タイヤ等) 145.9 140.8 171.7 6.7 21.9

合 計 4,114.1 3,397.0 2,574.5 100.0 -24.2

出所:日本通関統計

日本の対エクアドル主要商品別輸入

単位:十万ドル

2001 年 2002 年 2003 年

商品 金額 金額 金額 構成比(%) 伸び率(%)

食料品 1,516.4 1,335.9 1,335.0 77.4 -0.1

バナナ 877.5 790.3 716.7 41.6 -9.3

コーヒー・ココア

112.2 134.9 178.0 10.4 33.5

飼料 100.3 85.2 177.0 10.2 107.5

魚介類 343.4 240.3 152.5 8.8 -36.5

原油 480.5 283.0 201.2 11.7 -28.9

その他(木製品等) 271.4 202.0 188.3 10.9 -6.8

合 計 2,268.3 1,820.9 1,724.5 100.0 -5.3

出所:日本通関統計

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- 12 - エクアドル

3. 鉱業概要

エクアドル共和国の経済は、石油部門への依存度が高く、原油生産量の低下により、同部門の

GDP占有率は12%(1990年代初期)から、10%(1996-1999年)に減少しているが、単品では依然と

して、同国経済の重要な担い手である。

石油生産は、1970 年代に大規模化し、1972 年に Petroecuador が設立され、国営企業が原油

生産を支配していたが、1990 年より民間企業による生産が開始された。石油やガス資源の大部

分は、東部アマゾン盆地の熱帯雨林地域に賦存しているが、グワヤキル湾にもガス田の存在が知られ

ている。 生産や探鉱活動は、オリエンテ地域で行われているが、主な製油施設は、北部海岸地域

のエスメラルダや、南部のリベルタに存在している。

エクアドル共和国は、経済活動に鉱業生産が重要な役割を果して来なかった、唯一のアンデス国

家で、鉱業部門の GDP 貢献度は 1%以下である。インカ帝国時代に金、銀、銅を産出した記録が

残され、スペイン植民時代にも小規模ながらこれらの採掘が行われていたが、中・南米で唯一、

国家の経済活動に、鉱業生産が重要な役割を果して来なかった国である。

同国経済事情の章で述べたごとく、石油などエネルギー資源は、同国経済の重要な担い手とな

っているが、鉱業部門の GDP 貢献度は 1%以下と極めて低く、同国の鉱物資源埋蔵量や主要非

鉄金属の生産量に関する統計資料も少ない。

同国には、地質的に、各種の有用鉱物資源(金、銀、銅、鉛、亜鉛、鉄、マンガン、硫黄、カオ

リン、珪石、石灰岩、大理石、石油)が、豊富に賦存していると示唆されている。

しかしながら、大部分の鉱業活動は、非金属、建設資材(大理石、砂、粘土)の生産に集中い

る。但し、同国南部のポンセ・エンリケス(Ponce Enríquez)地域、サンタ・ロサ(Santa Rosa)

地域、サルマ-ポルト・ベロー(Zaruma-Portvelo)地域、ナムビハ(Nambija)地域などでは金

の採掘が行われおり、1990 年代は年間 13t の金を産出したが、2004 年では 4.8t の生産量と

なっている。

大規模な国営鉱山企業が存在しなかったため、チリやペルーなどのような、国家による民間企

業への干渉(妨害)はなかったが、頻繁な政権交代や法律改正、鉱業権や探鉱権の許・認可に関

する不確実性などのため、鉱業分野の発展は遅れていた。

国内・国外鉱山会社の保護のため、鉱業法が 1991 年に制定されたが、投資環境が悪く、インフラ

の整備が不十分で、大部分の鉱床が小規模なため、大規模な鉱山会社は存在していない。

同国のアンデス山系は、南米大陸チリー~北米のカナダに至る斑岩型銅(ポーフイリーカッパー)鉱床帯に位

置しているが、地形、交通その他の事情から、調査・開発は遅れていた。

近では、同国の銅資源賦存の可能性に対する関心が高まり、外国企業による積極的な探

鉱活動が行われ、同国南東部などで、有望な斑岩型銅鉱徴地が数多く発見されている。

金の生産

年 2001 2002 2003 2004

金の生産 t 3.0 2.8 3.0 3.0

出典:World Metal Statistics

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- 13 - エクアドル

4. 鉱業行政

エクアドル共和国の鉱業法は、1991 年 5月に公布され、鉱石の自由な販売の保証、内外投資家

の平等な扱い、自由な調査活動の保証、探鉱開発権と土地所有権の分離、探鉱権の採掘権へ

の変更の自由、利益・配当の本国送金の自由、鉱業活動への課税・分担金の明確化などが、基

本的な特徴である。

鉱業振興の実施機関は、エネルギー鉱山省の外局に組織されている CODIGEM で、鉱業権を民間

に付与する権限は、この CODIGEM が所有している。

鉱業開発においては、内・外資本の差別がなく、今後の鉱業施策の中心は、同国での鉱業

活動に対する民間投資の促進である。

同国の鉱業政策の基本は、投資、税、環境に係る法律の明瞭化、環境保護と調和的な鉱業

活動の保証、中小鉱業の支援、地質情報の収集、生産量の拡大と鉱種の多様化、内・外民間

投資活動に対する支援などである。

4-1. 鉱業法

エクアドル共和国の憲法では、地下資源、鉱物などの再生不能な資源は、国家の財産であると

規定しているが、鉱業活動は、公共の利益、国家の利益にかなう、国家の発展のための基本

的な活動であるとして、国外・国内、公共・私的を問わず、個人、法人による採掘が可能であ

る。

同国の鉱業法は 1991 年に公布され、その後、数回の改訂を経てきたが、2000 年の鉱業法

改訂により、同国の鉱業の強化と発展を促すために必要な、国内・外国の投資に適切、かつ

透明で魅力的な法体系が樹立された。

鉱業法の改定と共に、一般施行細則も改正され、これには、同国で鉱業活動を行うに遵守

すべき事項が定められており、鉱業権付与、生産、環境保護などに関する概要を以下に記載

する。

4-2. 鉱業権の付与

鉱業権は、全ての鉱物を探査、探鉱、採掘、選鉱、溶錬、精錬し販売する独占的な権利で、

鉱業法、一般施行細則の規定に従い、個人、法人、自国民、外国人を問わず付与される権利

である。

鉱区は、隣接して 5000 ヘクタールを越えてはならず、有効期限は 30年以内であるが、その期

限到来前に鉱業権者が書面で延長を要請すれば、さらに 30年までを限度として延長が認め

られる。

鉱業権を取得する場合は、国家鉱業局が定める書式に従った願書を、国内・外の個人・法人

の申請者が、所轄の地方鉱業局に提出する必要があり、申請時に、手続き料 100 米国ドルを

支払う義務がある。(申請手続き料は返還されない)

鉱業権取得の願書には、鉱業法改定一般施行細則に定められた必要事項の他、環境調査報

告書を提出し、同国での鉱業活動にかかわる、環境施行細則の規定に従う旨を明記しなけれ

ばならない。

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- 14 - エクアドル

願書が全ての要件を満たし、必要な諸手続終了後、出願者は、出願書提出日から年末(12

月 31 日)までの鉱区維持費を支払い、所轄の地方鉱業局長より鉱業権権利書を付与される。

鉱業権者は、各鉱区について、法の定める毎暦年ごとの鉱区維持費(年額、米ドル)を、3

月 31日までに前金で支払わなければならない。(いかなる事情においても、鉱区維持費支払

い期限は延長されない)

鉱業権者は暦年ごとに、鉱区 1 ヘクタールあたり下記の金額(米国ドル)を、毎年 3月に前金で、

鉱区維持料として支払う。

鉱業権の有効期限 鉱区 1 ヘクタールあたりの年額

0年~3年 1.0 米国ドル

4 年~6年 2.0 米国ドル

7 年~9年 4.0 米国ドル

1O 年~12年 8.0 米国ドル

13 年それ以降 16.0 米国ドル

鉱業権は、期限満了、削減・放棄、鉱区維持料・生産認可料の支払い不履行により消滅する。

4-3. 生 産

商業生産の開始にあたって、鉱業権所有者は、鉱業法に則った生産開始宣言書を、地方鉱

業局に提出せねばならない。

この声明には、環境影響評価調査書の認可、鉱区維持料完済の証明、所轄の郡鉱業会議所

に加盟し、会議所会費完済の証明などが盛り込まれる。

生産を開始した後は、生産許可料 16米国ドル/鉱区ヘクタール(年額)を支払う必要がある。(初

年度は生産開始日からその年の 12月 31 日までの比例分)

商業生産の実施期間中は、国家鉱業局が作成する技術指導書に従って、所轄の地方鉱業局

に生産報告を提出(毎年 3月 31 日まで)しなければならない。

鉱業権者でない個人・法人でも、金属・非金属鉱物の販売・輸出は可能であるが、地方鉱山

局に対する鉱物販売許可の申請が必要である。 必要な要件が満たされれば、地方鉱山局長

より販売許可を付与されるが、許可期限は 3年(3年の延長可能)で、鉱山省の定める年間許

可料が課される。

4-4. 環境保護

鉱業権者、選鉱、精錬、精製工場の許可所有者は、環境に関する報告書、管理計画を、国

家鉱業局の環境部に提出し、エネルギー鉱山省環境保護次官室により認可される必要がある。(森

林、防災林・植生地域の場合、報告書の評価と認可は環境省と協議して行われる)

4-5. 鉱業権・鉱区設定状況

大部分の有望鉱徴地域には鉱業権が設定されている。

同国での探鉱活動は、大半が金とベースメタルの探査に重点が置かれており、いくつかの企業

は、より詳細な探鉱調査、プレ F/S 調査に進むに十分な結果を得ていると言われている。

4-6. 環境政策

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- 15 - エクアドル

環境保全についての高まりは他国と同様で、国会開発審議会(CONADE)などが、環境対策へ

関心を持ち、環境保護と調和的な鉱業活動の実施が、鉱業法でも義務づけられている。

同国で も深刻な、鉱業活動における環境問題は、南部のポルトベロ(PORTOVEL0)地域、ナンビ

ハ地域などの、中小金採掘業者による水銀汚染である。 すでに河川下流域の一部に、水銀

汚染の影響が出ており、何らかの対策が至急求められている。

鉱業法による鉱業関係環境法規は、1997 年に改訂され、DNPAMEM(Direccion Nacional de

Proteccion Ambiental of the Ministerio de Energia y Minas)により管理・監督されてい

る。

4-7. 地域住民との関係

エクアドル共和国では、過去に政府間の協定に基づく資源開発協力調査が行われたが、環境保

護団体の同調を得た地域住民の反対により、調査が中止されている。

同国では、石油の探鉱においても、地域住民、世界的な環境保護団体などの反対や紛争が

知られており、調査の実施にあっては、鉱業活動のおよぼす社会的、環境的影響に関する、

地域住民との十分な話し合いや協議が必要である。

フニン地域銅資源調査に対する地域住民・環境保護団体の反対

エクアドル共和国北西部、インバブラ(Imbabura)州に位置する、フニン(Junin)地域での銅探鉱調

査(資源開発協力調査)実施の協定が、日本政府とエクアドル政府の間で 1991 年に締結され

た。

この協定により、鉱山エネルギー省の CODIGEM(Corporacion de Investigacion Geologica

Minera)がカウンターパートとなり、日本側の JICA、実質的にはビシメタル(Bishimetals)社(三菱)

が調査を開始した。

調査が実施された地域は、世界的にはチョコ(Choco)地域として知られている、コタカチ-カ

ヤパス(Cotocachi-Cayapa)生態系保護区の近くに位置していたが、調査に対する反対運

動は、 初から計画されたものではなかった。

調査に当たって、地域住民との協議、会話が不十分であったため、地域共同体の生

計、森林、河川などへの鉱業活動の脅威から、地元の環境組織、DECOIN(Defensa y

Conservacion Ecologica de Intag)が 1995 年に設立された。

地元民の反対運動は、環境保護団体などの同調を得て、急速に強力化して広がり、

インターネット、TV などのマスコミを巧みに使った広報活動と情報拡散により、地域的な運動が、

国民的になり、世界中(米国、ドイツ)に広まった。

終的には、平和的ではあったが、地域住民により探鉱キャンプが占拠され、調査基地

のキャンプ焼き討ち(事前に立ち退きを支持して人的、物的被害はなかった)の強硬手段に

訴えて、全ての調査活動が停止された。

5. 鉱業関係機関

5-1. エネルギー鉱山省(MEM:Ministerio de Energia y Minas)

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- 16 - エクアドル

エネルギー資源、鉱業に関する政策全般を担当する国の 高機関で、本省の下に、5 人

の次官を置き、各次官は、炭化水素、鉱山、環境保護、電力、企画管理の各分野を担当し

ている。従って、広く鉱業に係る事項は、鉱山次官(Subsecretaria de Minas)が管轄して

いる。

鉱山次官の下には、国家鉱業局(Direccion National de Mineria)、国家地質局(Direccion

National de Geologia)の他、地質鉱業資料室、情報システム室が置かれている。

5-1-1. 国家鉱業局(DINAMI)

本局の下に、7 地方支局、3 独立部門(鉱区台帳、鉱業環境、技術)を置いている。

役割

・ 鉱業権の付与、失効など、鉱業権に係る管理業務

・ 鉱業関連情報の統一システムの開発・維持

・ 鉱業セクターの生産・投資等の統計管理

・ 鉱業権者の活動監視

・ 鉱業政策の実施状況の追跡・評価

・ 鉱区台帳の管理及び関連の情報提供

・ 環境管理計画の策定・実施

・ 環境調査報告書の受理・評価

・ その他、鉱業法規に則した鉱業活動が行われる様、監督

5-1-2. 国家地質局(DINAGE)

本局の下に、応用地質部と地図作成・鉱物資源部を置いている。

役割

・ 全国地質図の作成・公刊

・ 各種テーマ図の作成

・ 地方レベルでの地質調査の実施

・ 環境ベースライン調査支援のための、環境地質情報の収集・解析・分類

・ 地質学上の危険に関連した調査の実施

・ 国土利用計画のための地質情報の提供

5-2. 鉱業協会(CME:Camara de Mineria del Ecuador)

鉱業活動の発展をサポートする民間の機関として、1979 年に設立された。探査、開発、

採掘等、鉱業活動に係る全分野の民間の活動を業務対象としている。

現在、探査、採掘、鉱石処理、製錬、販売等の鉱業活動を行っている、法人と個人を合

わせ、約 300 のメンバー会員がいる。ペルー国内で活動中の、主たる外資系企業、地元企

業は本協会の会員となっている。

本協会の重要な使命の一つは、メンバー会員の既得権の保護である。

5-3. 活動内容

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・ 鉱業情報(技術、法制)提供

・ 国内外での鉱業イベントへの参加

・ 定期刊行物等の発行(Mineria(四半期毎)等)

・ 多様な鉱業関連事項についてのアドバイス提供

・ 関連書物による図書館サービスの提供

・ 会議場利用サービスの提供

6. 投資環境

鉱業部門への海外からの投資は、1980 年代に解放された。

2000 年の鉱業法改訂や、非鉄金属資源開発を促進する政策により、国内企業、外国企業に

よる探鉱投資が活発になり、今後の同国経済に占める鉱業分野の役割は拡大すると思われ

る。

6-1. 外国投資促進法

外資導入の促進を目的に、1997 年 12 月に制定。外国からの投資に対し、法的保護を与

えるため、これをサポートする法制度。

特徴

・ 国家の戦略分野(石油、電力、通信等)を除き、あらゆる経済分野において外国からの直

接投資が可能

・ 収益の自由な海外送金

・ 50 万ドル以上の投資案件に対しては、投資実行時点での所得税率を長期間保証(案件の

性格により、10 年 or 20 年)

・ 二重課税の回避等、投資促進・保護に係る関連の国際条約、国際合意を遵守

労働事情

2001 年の全国の労働人口は約 380 万人で、この内 7 割近くが首都キトを含む都市圏に集

中している。業種別では、一次産業から二次・三次産業へのシフトが進行し、現在では三

次産業就業者が も多い。

1999 年の金融危機以降、失業者が急増し、失業率は、現在も 10%前後の高い水準で推移

しており、この影響で、2003 年末までに約 30 万人以上の労働者が、スペイン、イタリア、

米国等に出稼ぎ移住している。また、経済活動人口が全人口の 1/3 程度と低いことを特徴

としている。

賃金は概して低く、一般公務員で月額 200 ドル程度と推定され、賃上げ要求のストも頻

発している。

エクアドル 大の労働組合として、エクアドル自由労働組合総同盟(CEOSL)がある。構成

分野は、公共部門、民間部門、インフォーマルセクター、農業従事者、更には先住民も含

まれるが、組合員数は 13 万人と少ない。全体の労働組合組織率も、2%程度に過ぎない。

治安・安全状況

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- 18 - エクアドル

同国の治安は比較的良好であるが、多くの問題を抱え、経済状況の悪化に伴い、社会混乱

が発生し、都市部では殺人・強盗・誘拐などの事件が多発している。

大部分は非政治的な犯罪で、麻薬取引、身代金要求の誘拐、路上犯罪であり、キトー市の治安も

悪化(旧市街地など)し、グワヤキル市では、1999 年 3月以来非常事態宣言が続けら、夜間の外出

が禁止されている。

同国への出入国、国内移動には、治安や交通安全の面から空路を利用し、夜間・早朝の外出、

単独行動はできる限り控えることが望まれる。

7. 地質鉱床概要

エクアドルの地質は、北北東-南南西方向にほぼ並行する 6帯に区分される。この 6 帯は、

西から順に、海岸地帯、西部山岳地帯(Western Cordillera)、アンデス内部低地帯、東部

山岳地帯(Cordillera Real)、サブアンデス地帯、東部地帯である。

この内、金属鉱物資源の胚胎場として重要なのは、西部山岳地帯及び東部山岳地帯から

サブアンデス地帯にかけてである。

西部山岳地帯は、主として白亜紀の火山岩類、海成堆積岩より成り、これに白亜紀から

第三紀にかけての貫入岩類が所々に見られる。鉱床タイプとしては、第三紀のカルクアル

カリ系貫入岩に伴うポーフィリー型銅・モリブデン鉱床(Junin 等)、第三紀の火山活動に

伴う鉱脈型金・多金属鉱床、黒鉱型の塊状硫化物鉱床(La Plata 等)、等が存在する。

一方、東部山岳地帯からサブアンデス地帯では、主として古生代から白亜紀にかけての

変成岩類、ジュラ紀から白亜紀にかけての火山岩類からなる。また、両地帯の境界付近で、

ジュラ紀のバソリスが三ヶ所で大規模に発達している。鉱床タイプとしては、東部山岳地

帯の中・北部では、バソリスに伴う金鉱床(La Bonita 等)、サブアンデス地帯の南部では、

スカルン型の金鉱床(Nambija)等が存在するが、 近、 も注目を集めているのは、バソリ

ス中の後期ジュラ紀に貫入した斑岩に伴うポーフィリー型銅・金鉱床である。とくに南部

の Zamora バソリス中には多数の同タイプの鉱床が把握されている。この中でも、Corriente

Copper ベルトと呼ばれている地区では、活発な探鉱・開発が行われており、近い将来、当

国初の本格的な銅山の開山も期待されている。

8. 鉱山概要

現在の同国の鉱産物生産に特筆するものはなく、非合法採掘を主体に、同国南部の

Zaruma-Portovelo、Ponce Enriquez の両地区等で金の産出(2003 年度 推定 5トン)が報告さ

れている程度である。

9. 新規鉱山開発状況

9-1. Mirador

本鉱床は、エクアドル南東部の Zamora-chinchipe 地域内の Corriente カッパーベルトと

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- 19 - エクアドル

呼ばれる地帯(東西約 20Km×南北約 60Km)に位置する、ポーフィリー型の銅・金鉱床である。

現在、Corriente Resources 社が権益を保有しているが、2004 年 8 月に F/S を終了し、そ

の後、開発資金の調達が順調に進めば、2005 年 1 月に鉱山工事に着手し、2007 年 1 月の操

業開始を計画している。

操業規模は、露天掘により、当初 2 万トン/日の粗鉱量(推定産銅量約 6 万トン/年)で、

その後、5〜6 万トン/日まで拡張を予定している。プレ F/S 調査によると、鉱量は 160 百

万トン(銅 0.81%、金 0.22g/t)、初期開発投資額は 190〜200 百万ドル程度と見積もられて

いる。

本案件には、既に、メジャー企業を含む数社が、鉱石買鉱、資本参入等に関心を示し、

交渉を開始している。

なお、Corriente カッパーベルト内では、本鉱床以外に、有望な鉱床・鉱徴地が多数(San

Carlos、Panantza 鉱床等)確認されており、この内の一つ、Warintza 地区では、 近、米

国の著名な探査技術者である David Lowell が自ら権益を取得したことが報じられておれ、

本地帯はさらに注目を集めそうである。

9-2. Rio Blanco

本鉱床は、エクアドル中南部の Cuenca 市の西方約 40Km に位置する、低硫化型の浅熱水

性鉱脈型金・銀鉱床で、比較的金品位が高い鉱床である。現在、International Minerals

社が権益を保有し、これまでの調査により、当地区内で推定鉱量 5.5 百万トン(金 5.5g/t、

銀 42g/t)を得ている。この内、現在は、Alejandro Norte と呼ばれる高品位鉱床(推定鉱量

1.5 百万トン:金 11.2g/t、銀 99g/t)を対象に F/S 調査(2003 年 11 月開始)を実施中で、2005

年 3 月に終了し、2006 年末の操業開始を目標としている。これまでの調査により、操業規

模は、年産金量 7〜8 万オンス、産銀量 40 万オンス程度を想定している。

なお、同社は、2003 年 12 月、南部の Machala 市の北方約 50km に位置する Gaby 金鉱床

の F/S 調査開始のため、資金調達中と伝えられた。本鉱床は、ポーフィリー型の大規模低

品位金鉱床(鉱量 2 億トン規模、金品位 0.8g/t)であるが、今後の具体的な計画は不明であ

る。

10. 探査状況

10-1. Junin

本鉱床は、首都キトの北方約 50km に位置する、斑岩型の銅・モリブデン鉱床で、資源

開発協力基礎調査により発見された。平成 9 年度に終了した同調査では、予想鉱量 318

百万トン(銅 0.71%、モリブデン 0.026%)を得ている。本鉱床の探査は、環境問題を懸念する

地元の反対もあり、その後、大きな進展は見られなかったが、現在、権益を有する

Ascendant Exploration 社(加)は、 近、探鉱再開について地元と合意に達し、近く(2004

年 9 月)探鉱を開始する。同社は、独自の鉱量評価により、10 億トン以上の鉱量を期待し

ている。

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- 20 - エクアドル

10-2. Aurelian Resources 社

同社は、エクアドル南東部の Zamora-chinchipe 地域内のペルーとの国境に近い Condor

地区で、高品位な鉱脈型金鉱床を対象に探鉱を行っている。本格的な探査を開始したのは

2003 年の半ば以降であり、初期的な探査段階にあるが、2003 年 10 月にスタートしたボー

リング調査では高品位な金の鉱徴(8m 間、72g/t 等)を把握し、探鉱を拡大している。

10-3. IAMGOLD 社(加)

同社は、エクアドル中南部の Cuenca 市周辺の Quimsacocha 地区, El Mozo 地区、同国南

東部のCanicapa地区等で金鉱床を対象に探査を実施中である。この内、とくにQuimsacocha

地区では、高品位の鉱脈型金・銀鉱床を把握し、探鉱を拡大している。

地元業界紙等によると(2004 年 11 月)、IAMGOLD 社(加)は、エクアドル中南部に位置する

Quimsacocha 金鉱床(浅熱水性:銅、銀随伴)の探鉱状況について発表し、本プロジェク

トは同社にとって、Sadiola 金鉱床(マリ)発見以来の最もエキサイティングな探鉱プロ

ジェクトの一つであるとした。

これによると、これまでの 63 本のボーリング(総計約 2 万m)による最大着鉱幅は 101

m(Au 9.5g/t)で最近実施した 12 本のボーリングでも、着鉱幅 15.9m(Au 31.1g/t、

Ag 130g/t、Cu 2.4%)等の高品位部を把握した。変質帯の規模が大きく(4,000ha)、

既に把握している高品位な金鉱化帯(100ha)が更に周辺に広がる様相を示している。年

内に更に約 8 千mのボーリングを行う予定で、2005 年には、地表ボーリングに加えて、坑

内ボーリングの実施も検討している。

10-4. Dynasty 社(加)

同社は、南部のペルーとの国境に近い Loja 地域で、斑岩型の銅・金鉱床を対象に広域

的な探査(Dynasty プロジェクトと呼称)を実施中で、既に数カ所の有望地区を抽出してい

る。

10-5. Cumbaratza 社

地元の Cumbaratza 社は、係争中であった鉱業権問題が解決したことから、

Zamora-chinchipe 地域内の Nambija 地区で、近く金鉱床の探鉱・開発を開始する(投資総

額 40 百万ドル)と、2003 年末に発表した。同社は、過去の調査により、金量 2 百万オンス

が期待できるとしている。

11. 製錬所概要

該当なし。

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- 21 - エクアドル

鉱山製錬所位置図

操業鉱山

Portovelo-Zaruma,

Ponce Enríquez(=Gaby-Papa Grande )

探鉱開発

Mirador エクアドル南東部の Zamora-chinchipe 地域内の Corriente カッパーベルト

located 35 Km NW from Pangui, Zamora-Chinchipe Province.

Panantza about five kilometres northwest of the San Carlos property

San Carlos http://www.corriente.com/Map_Concession.htm

精錬所無し

Rio Blanco

Ponce Enriquez ・

(=Gaby-Papa Grande)

Panantza San Carlos

Mirador Portovelo-Zaruma

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- 22 - エクアドル

12. 我が国のこれまでの鉱業関係プロジェクト実施状況

金属鉱業事業団(現 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)の実績

海外地質構造調査

・1970-71 年度:チャウチャ地域

資源開発協力基礎調査

・1988-1990 年度:ボリバール地域(資源開発調査)

・1991-1993 年度:フニン地域(資源開発調査)

・1994-1995 年度:フニン・コジャッヘ地域(地域開発計画調査)

・1996-1997 年度:インバオエステ地域(地域開発計画調査)

資源開発協力基礎調査の実施件数は、他の南米主要国に比較すると少ないが、特筆され

る調査成果を収めている。具体的には、フニン地域(平成 3 年〜5 年度)で把握した有望地

区を対象に、地域開発計画調査としてフニン・コジャッヘ地域(平成 6 年〜7 年度)を、さ

らに有望地区を絞り込んだ形でインバオエステ地域(平成 8 年〜9 年度)を実施した結果、

インバブラ州の西部で大規模なポーフィリーカッパー型の銅・モリブデン鉱床を把握した。

最終的な調査結果による鉱量は、鉱床規模が大きいことから予想鉱量の範疇であるが、鉱

量 318 百万トン(平均銅品位 0.71%、モリブデン 0.026%)を得ている。本鉱床は、更なる調

査により、将来的な開発が期待されるものであったが、環境保護区に隣接する等、環境上

の問題もあり、日本側の協力調査は終了した。

その後、エクアドル政府は、民間に鉱業権を与え開発を目指してきたが、最近まで、鉱

山開発に伴う河川汚染、環境保護区への影響を懸念する地元との対立もあり、調査は進展

しなかった。しかし、2004 年に入り、現鉱業権者と地元との間に合意が成立し、年内に探

鉱活動が再開される見通しである。

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第 2 部 地質解析

1. 地質・地質構造

エクアドル共和国は、安定地塊(ギアナ盾状地、ブラジル盾状地)の西縁に形成された、狭長な地向

斜帯(アンデス変動帯)に属し、断層・褶曲運動、激しい火成活動などの影響により、かなり複雑

な地質構造をなしている。

地向斜帯全域にわたる地殻変動により、海岸線近くにアンデス山系が隆起し、山系西側は狭

い海岸地帯となり、山系東部には、広大なアマゾン大平原が形成されている。

このため、当国の地質・構造は、海岸地帯、山岳(アンデス)地帯、東都地帯に大別される(図

1-1、図 1-2)。

海岸地帯(Costa)は、アンデス山系の西麓から太平洋岸に到る地域で、標高 300m 以下の平地

を形成し、海岸段丘などが発達している。 この地域には、主に第三系、第四系が分布して

いるが、一部に、基盤をなす古生界、白亜紀の変質火山砕屑岩類、白亜紀~第三紀初期に貫

入した酸性貫入岩類も露出している。

古生界は片麻岩~変成度の低い準片岩からなり、グワヤキル東南方の第四紀層中に、地窓状に

露出している他、マチャラ(Machala)東方に、北東-南西の方向性を有して存在している。

白亜系は、グワヤキル西方に分布し、下部の海底火山活動による火山岩、火山砕屑物と、上部

の通常堆積物に区分される。

第三系は、北部ではアンデス山系西部山脈に接し、南部ではチョンゴン(Chongon)、コロンチェ

(Colonche)山脈の南方の白亜紀に接して、この中間ではダウレ(Daule)河流域に累積している。

第四紀層は、広大な海成段丘、洪積扇状地、グワヤス(Guayas)河沿いに発達する沖積平原、

北部エスメラルダ(Esmeralda)付近に存在する現世火山溶岩などからなる。

貫入岩類の分布は極めて少なく、第三紀中に数ケ所、細粒花花崗閃緑岩の貫入が知られて

おり、白亜紀末と第三紀中期の貫入と推定されているが、詳細は不明である。

山岳地帯(Sierra)は、標高 3,000m 以上のアンデス山系で、西部山系(Cordiners Occidental)

とレアル山系(Cordillers Real)が、30~40km の間隔で南北に平行に走り、これら両山系の間に、

中問盆地(Intrcordilleran Depression)が形成されている。

西部山系には、変質火山砕屑岩類、堆積岩類からなるジュラ系~白亜紀層が広範に発達し、

その東側には、石灰岩の薄層を挾在する、安山岩、凝灰岩、珪質頁岩からなる上部白亜系が

分布している。

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図 1-1 エクアドルの地質(Assessment of Ore Districts from Ecuador 2000)

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図 1-2 エクアドルの構造 (after Litherland and Zamora,1991)

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西部山系の西麓には、白亜紀の堆積物が広範囲に存在している。 北部は、輝緑岩、同質

集塊岩、同質凝灰岩、扮岩などの塩基性火山噴出物層からなり、部分的に石英斑岩、石英モン

ゾニ斑岩などの他、酸性半深成岩も見られるが、南部では、流紋岩、石英安山岩、同質集塊

岩、同質凝灰岩などが卓越している。 これらは、いずれも広域的な緑泥石化、緑簾石化な

どの変質作用を受け、緑色~淡緑色を呈している。

これらの地層に、白亜紀末~第三紀初期と推定される、酸性~中性の火成岩類(花崗岩、

花崗閃緑岩、石英閃緑岩、閃緑岩、石英斑岩)が貫入している。

これらの貫入岩類は、底盤状、岩脈状をなし、金属鉱床の形成、特に斑岩型銅鉱床の形成

に深い関係を有している。

中間盆地は、局部的に湖沼堆積物からなる第三系も存在しているが、大部分は第四系によ

って占められている。 第四紀には、大規模な造陸運動があり、これに伴って火山活動が活

発になり、多くの火山噴出物が形成されている。(火山群の標高は平均 4,000m、 高峰はチン

ボラソ山 6,267m である)

レアル山系には、北北東-南南西方向を有す、古生代変成岩類(結晶片岩、片麻岩、再生花崗岩)

が分布し、東部地帯(アンデス山系の東側)に存在する古生界とは、断層で接している。

東部地帯(Oriente)は、オリエンテと呼ばれる、山岳地帯の東斜面を構成する準アンデス山地(標高

500~1,000m)から、アマゾン平原に向って緩傾斜する地域である。

本地域は、海岸地帯と同じく、第三系、第四系が広範に発達するが、西側には変成岩類と

断層で境する古生界が分布し、一部にジュラ~白亜紀の地層も存在している。

この地帯は、熱帯の密林に覆われて交通が不便なため、調査が遅れていたが、油田調査や

砂金採集などが行なわれると共に、地質状況も次第に明らかにされてきている。

エクアドル共和国は、先述したごとく、西から東へ、コスタ(海岸部)、シエラ(山岳部)、オリエンテ(平原

部)に区分され、東部のオリエンテは、アンデス山系とギアナ盾状地の間に存在する、サブ・アンデス帯やアマ

ゾン盆地の上部帯(前地堆積盆地)の一部をなしている。

サブ・アンデス帯は、北方向性を有す中生代初期の海溝帯で、ジュラ紀初期に、この海溝盆地が、

海成の石灰岩・砂岩・頁岩(サンチアゴ累層)、硬石膏薄層を伴う赤色の砂岩・頁岩、苦灰岩、石膏

(チャピサ層)で埋められ、その後、玄武質~安山質火山岩類、火山砕屑岩類(ミサワリ層)で覆われ

ている。

エクアドルのレアル山系~コロンビアのオリエンタル山系の東側には、ジュラ紀中~後期の大規模底盤(クチーヤ

(Cuchilla)、アビタグワ(Abitagua)、ザモラ(Zamora))や、火山岩類(ミサワリ火山岩累層を含む)が存

在し、これらは、大陸縁に形成されたカルク-アルカリ火山・深成岩弧の残骸と考えられている(底盤

をなす深成岩類は、1.9 億年~1.5 億年の年代を示す)。

ジュラ紀の底盤類、火山-堆積岩類の侵食平原上に、白亜紀初期の珪岩(ホリン累層)が分布し、

その上位に、白亜紀後期海成の泥岩、石灰岩(ナポ累層)が堆積している。

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白亜紀末期~第三紀初期に、北部アンデス沿いに生じた衝突で、サブ・アンデス帯の逆転構造(衝

上断層帯)が形成され、前面のクツク山系やコンドール山系などの隆起部は、このような東向きの圧

縮場で形成された。

2. 鉱床

海岸地帯、東部地帯は、石油、天然ガス資源が豊富で、山岳地帯は、南米大陸の斑岩型銅

鉱化帯に位置し、古くから多数の鉱徴地の存在が知られている(図 2-1)。

斑岩銅鉱床の他、クロム鉱床(Saloya,El Toro,Peltetec,Tampanchi)、黒鉱鉱床(Macuchi,La

Plata,Guarumales,Mina de Pilas)、オフィオライト・タイプ(La

Victoria,Saraguro,Cera,Yangana Condorazo)、角礫タイプ(Ponce Enríquez,

Portovelo,Angas)、スカルン鉱床(Selva Alegre,Los Linderos,Zapotillo,Laguar,Cerro

Pelado,LosIngleses,Río Quishpe,Colimbo,Atillo,Cerro Minas, Río Inga, Urcucocha,

Augusta,Chinapintza,Pangui-Biche,Nambija,Campanilla,Guaysimi)などがある。

このうちで金を産出する鉱山としては、Nambija、Portovelo、Ponce Enríquez、Chinapintza、

Guaysimi、Campanilla などである。

2-1. 鉱床生成区

現在、エクアドル国内において重要なものは、金鉱山である。

主要な金鉱山としては、Nambija、Portovelo、Ponce Enríquez、Chinapintza、Guaysimi、

Campanilla などがある。1990 年には 13t の金の生産があり、このうち Nambija で 5t、

Zaruma-Portovelo で 3t、 Ponce Enríquez で 2t などである。Nambija 鉱山は、これまで

に 62.2t の金を生産しており、Zaruma-Portovelo 鉱山は 1905 年に操業され、鉱量 6Mt、

Au25g/t と見積もられており、鉱脈の幅は 0.77~2.14m である。Chinapintza は平均品位

Au50g/t である。

2-1-1. 斑岩型銅鉱床

南米大陸の西岸には、南のチリーから北米まで、数多くの大規模な斑岩型銅鉱床が存在して

いるが、その形成時代は大部分が第三紀であるが、エクアドル南東部の Corriente Copper

Belt 地域の斑岩銅鉱床は、鉱化時代がジュラ紀(1.54 億年~1.57 億年)と考えられ、北部ペルー

の同様な鉱床より鉱化の時代が古い。鉱床としては、San Carlos、Panantza、Warintza、Mirador

などがある。なお、より西岸には第三紀の斑岩銅鉱床も分布しており、Junin(6Ma)、

Chaucha(10Ma)、Gaby(19Ma)などがある。

以下に規模等を示す(図 2-2)。

Name Location Grade Age

Chaucha S2-56-00 W79-25-00 55Mt,Cu0.57%,Mo0.03%,Au0.05g/t 10Ma

Gaby S3-03-00 W79-41-00 165Mt,Au0.73g/t 19Ma

Junin 982Mt,Cu0.89%,Mo0.04%,Au0.01g/t 6Ma

Mirador 310Mt,Cu0.65%,Au0.2g/t

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San Carlos 230Mt,Cu0.85% 154~157±5Ma

Panantza 148Mt,Cu0.82%,Au0.1g/t

Warintza 50Mt,Cu equivalent 1%

図 2-1 エクアドルの金属鉱床(Assessment of Ore Districts from Ecuador 2000)

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図 2-2 エクアドルの斑岩銅鉱床(modified from Sillitoe,Prodeminca,2000)

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2-2. タイプ別・時代別分布の特徴

2-2-1. 金属鉱床の分類

エクアドルの金属鉱床としては、以下の表のものが知らており、鉱床タイプ・構造区・

生成時代を示した。

(エクアドル エネルギー鉱山省 ホームページ )

3. 鉱床胚胎有望地域

現在エクアドルでは、金山のみであるが、探鉱プロジェクトで記載したように、金探鉱

と Porphyry Copper 鉱床探査を中心に推移している。

今後はより Porphyry Copper 鉱床探査が重要になると推察される。

鉱山概要で述べたように、エクアドルの Porphyry Copper 鉱床は、Cordillera Occidental

Name Type Zone AgeSaloya Cr,PGM Cordillera Occidental CretaceousEl Toro Suroccidente CretaceousPeltetec Cordillera Real Jura-CretaTampanchi CretaceousMacuchi VMS Cordillera Occidental Paleocene-La Plata EoceneGuarumales Cordillera Real JurassicMina de PilasLa Victoria Ophiolite Cordillera Occidental EoceneSaraguro Cordillera Real TriassicCeraYanganaCondorazoJunin Porphry copper Cordillera Occidental TertiaryChauchaMirador Cordillera Real JurassicPonce Enriquez Breccia Cordillera Occidental OligocenePortoveloAngas PlioceneSelva Alegre Skarn Cordillera Occidental TertiaryLos Linderos Suroccidente TertiaryZapotilloLaguarCerro PeladoLos InglesesRio Quishpe Cordillera Real TertiaryColimboAtilloCerro MinasRio Inga JurassicUrcucochaAugusta Suroriente JurassicNambijaCampanillaGuaysimiChinapintza TertiaryPangui-Biche

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や Cordillera Real に分布しており、前者は第三紀で、後者はジュラ紀のものである。

Cordillera Occidental では、中央部に Porphyry Copper 鉱床が密集しているため、興味

がもたれる地域である(Telimbela から Chaucha・Gaby にかけて)。

Cordillera Real では、エクアドル南東でのみ探鉱活動が盛んである。Cuchila(La

Bonita)Batholith、Abitagua Batholith などが北部から中部に分布しているため、これら

の地区も有望であろう(図 3-1,2)。

図 3-1 I-type 貫入岩の分布(Corriente Resources Inc.HP)

なお、次頁には Porphyry Copper 鉱床も含めて浅熱水性金鉱床、中熱水性金鉱床や多金

属鉱床、スカルン鉱床及び黒鉱型鉱床の胚胎の可能性のある地域を示した(図 3-2)。

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図 3-2 金属鉱床ポテンシャル(Assessment of Ore Districts from Ecuador 2000)

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資料

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・エクアドル共和国の鉱業法制(改定) 2002 年 3 月 金属鉱業事業団資源情報センター

・エクアドル共和国の資源開発環境 1994 年 7 月 金属鉱業事業団資源情報センター

・エクアドル共和国チャウチャ地域海外地質構造調査報告書(1970 年度、1971 年度)、金属鉱業事業

・エクアドル共和国の環境関連法規(金属鉱業事業団、2002)

・エクアドル共和国の資源開発環境(石油天然ガス・金属鉱物資源機構、2004)

・エクアドル共和国概況(在エクアドル日本国大使館、2004)

・エクアドル共和国概況(国際協力機構、2004)

・エクアドルの労働事情(国際労働財団、2003)

・国際協力機構年報 2003 年

・エクアドル中央銀行 統計月報 2004 年 3 月

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・エクアドル エネルギー鉱山省 ホームページ mineriaecuador.com

・エクアドル鉱業協会 ホームページ

・Info Mine ホームページ infomine.com

・USGS ホームページ minerals.usgs.gov

・Corriente Resources Inc. ホームページ corriente.com