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資源開発環境調査 セルビア・モンテネグロ Serbia and Montenegro

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資源開発環境調査

セルビア・モンテネグロ

Serbia and Montenegro

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目 次

第 1 部 資源開発環境調査

1. 一般事情 ································································1

2. 政治・経済概要 ··························································2

3. 鉱業概要 ································································4

4. 鉱業行政 ································································4

5. 鉱業関係機関 ····························································4

6. 投資環境 ································································5

7. 地質・鉱床概要 ··························································5

8. 鉱山概要 ································································7

9. 新規鉱山開発状況 ························································8

10. 探査状況 ·······························································9

11. 製錬所概要 ·····························································9

12. わが国のこれまでの鉱業関係プロジェクト実施状況 ························11

第 2 部 地質解析

1. 地質・地質構造 ·························································12

2. 鉱床 ···································································23

3. 鉱床胚胎有望地域 ·······················································66

資料(統計、法律、文献名、URL 等)·········································73

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- 1 - セルビアモンテネグロ

第 1 部 資源開発環境調査

1. 一般事情

1-1. 面積 10 万 2,173 ㎢

1-2. 人口 1,060 万人

1-3. 首都 権謀的憲章上首都の規定はないが議会・政府はベオグラード(116 万人)、

セルビア・モンテネグロ裁判所はボドゴリッツァ(20 万人)に設置さ

れると規定。

1-4. 公用語 セルビア語

1-5. 宗教 セルビア正教、イスラム教、カトリック

1-6. 地勢等 6~7 世紀 スラヴ人が定住。

14 世紀 ドゥーシャン王の中世セルビア王国絶頂期

1389 年 コソボの戦いでセルビアはオスマン・トルコ軍に敗退し、その後 500 年に渡り

トルコの支配を受ける。1978 年 セルビア、モンテネグロはベルリン条約により独立が承

認される。1914 年 オーストラリア皇太子暗殺事件をきっかけにオーストラリアはセルビ

アに宣戦布告した。1918 年 スロベニア、クロアチアとともに「セルビア人、クロアチア

人、スロベニア人王国」(ユーゴスラビアの前身)建国。1941 年 ナチス・ドイツによる

侵略。1944 年 ユーゴスラビア社会主義連邦人民共和国を建国。1992 年 セルビア、モン

テネグロから構成されるユーゴスラビア連邦共和国を樹立。1999 年 NATO による空爆を

受ける。2000 年ミロシェビッチ政権が崩壊した。2002 年 連邦再編のための合意が成立。

2003 年 セルビア・モンテネグロに国名を変更した。

出典:ARC レポート

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- 2 - セルビアモンテネグロ

2. 政治・経済概要

2-1. 政体 2 つの共和国から成る連合国家

2-2. 元首 スベトザル・マロビッチ大統領(2003 年 3 月就任、任期 4 年)

2-3. 議会 一院制

(定数 126 名:セルビア 91 名、モンテネグロ 35 名が選出される。)

連合国家議会の構成(☆印=与党)

セルビア選出 議席数

セルビア急進等 30

セルビア民主党(☆) 20

民主党 13

G17 プラス(☆) 12

セルビア復興運動・親セルビア(☆) 8

セルビア社会党 8

モンテネグロ選出 議席数

モンテネグロ社会民主党(☆)と

モンテネグロ社会民主主義者党の連合 19

モンテネグロ社会人民党、モンテネグロ人民党及

びセルビア人民党の場合 14

モンテネグロ自由同盟 2

注※ アルバニア系政党は憲法的憲章前文に対する反対を理由に連合国家議会に代表

を出さない旨を述べており、右議席はモンテネグロ自由同盟に付与された。

2-4. 政治概況

2000 年 9 月 ユーゴ大統領戦況を契機に、国民による政権に対する抗議行動が広まり、

ミロシェビッチ政権は崩壊、民主派のコシュトゥーニツァ氏が新大統領に就任した。

2001 年 6 月 国際社会からの強い要請に応じミロシェビッチ前大統領が旧ユーゴ国際

刑事裁判所へ引き渡された。

80 年代から緊張が続いていたコソボでは、98 年 2 月末以降銃撃戦が頻発。99 年 3 月に

は NATO の空爆が実施された。同年 6 月にユーゴは和平案を受け入れ、空爆は終了し、現

在、国連コソボ・ミッション(UNMIK)及び国際安全保障部(KFOR)が展開している。

モンテネグロでは 97 年にジュカノビッチ大統領が就任して以来、独立へ向けた動きが

活発化していたが、2002 年 3 月 EU の仲介により、現在の連邦を穏やかな連合国家に再

編することで関係当事者が合意した。右合意に基づき、2003 年 2 月に連合国家の憲法的

憲章が連邦議会手採択公布され「セルビア・モンテネグロ」に国名変更された(同年 3

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- 3 - セルビアモンテネグロ

月に大統領、閣僚評議会(注:内閣に相当)が議会により承認された)。

2003 年 3 月 ジンジッチ・セルビア共和っ子苦首相暗殺事件が発生。事件後、セルビア

共和国政府は非常事態宣言を発令し、首謀者等の逮捕など、国内組織犯罪の対策に乗り

出す。また、後継首相に指名されたジブコビッチ氏は陣実地政権の政策の継承と全閣僚

の留任を発表した。

2003 年 12 月 ジンジッチ・セルビア共和国議会繰上げ選挙が実施された。同選挙では、

極右のセルビア共進等が第一党となったものの、民主は諸政党が 6 割を得票。2004 年 3

月 コシュトゥーニツァ首相率いる少数与党連立内閣が成立した。

2-5. 主要産業 食品加工、金属、電気、化学、繊維、農業(小麦、とうもろこし、ジ

ャガイモ、ひまわり等)

2-6. GDP 108 億$ 一人当たり 1,100$(2001 年 推定)

2-7. 通貨 (セルビア)ノビ・ディナール

(モンテネグロ)公定通貨としてユーロを採用

2-8. 為替レート 1 米ドル=61.37 ノビ・ディナール(2005/02 現在)

2-9. 貿易 (2003 年)

輸 出 29 億 1,700 万ドル

輸 入 79 億 5,700 万ドル

2-10. 対日貿易(2004 年)

貿 易 貿易額

(¥) 品 目

日本の輸出 12.8 億円 機械、食料品

日本の輸入 2.2 億円 食材品、機械

2-11. 経済概況

ミロシェビッチ政権下のユーゴに対し、国際社会は一連の紛争の尾責任を「ミ」政権

にあるとして、経済制裁措置を課すとともに、国際機関へのアクセスも制限したため、

国内経済は疲弊し、また国際的にも孤立した。さらに 99 年の NATO 空爆は経済の悪化に

拍車をかけた。

政権交代後、国際社会は対ユーゴ制裁を解除。また、今後はユーゴの経済再建のため

の支援を行う方針。IMF、EBRD にも加盟(2000 年 12 月)。

2001 年 6 月に開催された支援国会合により、国際社会から今年度文として 12 億 8,000

万米$の復興支援が表明された。

国内では民営化や経済の構造調整に一定の成果が見られるものの、今後の経済の再建

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- 4 - セルビアモンテネグロ

には多大な努力を要するものと見られる。。

3. 鉱業概要

3-1. 鉱産品目別生産量(2003 年)

鉱 種 セルビア・モンテネグロ(A) 世 界(B) (A)/(B)(%) ランク

銅鉱石(千 t) 25.2 13,675.6 0.2 26

銅地金(千 t) 14.0 15,236.7 0.1 36

鉛鉱石(千 t) 0.4 2,850.5 0.0 35

鉛地金(千 t) 0.5 6,864.7 0.0 48

亜鉛鉱石(千 t) 5.4 9,167.6 0.1 33

亜鉛地金(千 t) 0.1 9,806.5 0.0 35

アルミニウム地金(千 t) 120.2 28,001.3 0.4 30

ボーキサイト(千 t) 540.1 147,819.2 0.4 17

金鉱石(t) 3.6 2,349.4 0.2 31

銀鉱石(t) 1.0 18,207.5 0.0 41

セレン地金(t) 30.0 2,264.5 1.3 15

マンガン鉱石(千 t) 10.0 24,345.4 0.0 16

出典:World Metal Statistics Yearbook 2004

3-2. 埋蔵量

鉱 種 セルビア・モンテネグロ(A) 世 界(B) (A)/(B)(%) ランク

セレン(t) 2,000 170,000 1.2 6

出典:Mineral Commodity Summaries 2004

3-3. 輸出量

日本のセルビア・モンテネグロからの主要非鉄金属輸入実績(2003 年)

輸入実績なし。

4. 鉱業行政

4-1. 法律

エネルギー、金属、非金属などすべての鉱物資源に関する法律である。この法律は 1995

年に公布されている。探査権は Prospecting Licence と Exploration Licence の2種類

がある。鉱業法も 1995 年に公布されている。鉱業法は鉱山開発プロセスの探査後の開発

及び鉱山の操業に関する法律である。鉱業権には Exploitation Licence と Mining

Operation Licence の2つがある。現行鉱業法の見直しが 2002 年に開始され、検討され

ている。

5. 鉱業関係機関

5-1. 政府機関

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- 5 - セルビアモンテネグロ

鉱山・エネルギー省(Ministry of Mining &Energy)

鉱業、エネルギー、国家エネルギーバランス、石油・天然ガスの生産を管轄している。

鉱業・地質部では、鉱業活動に関する地質調査と鉱業権の許可についての権限を有して

いる。また、科学・環境保全省にも地質調査を実施する部門が存在することから両者を

統合して地質調査所を設立することを検討している状況にある。

6. 投資環境

6-1. 治安

2005 年 3 月 8 日、セルビア・モンテネグロのコソボ暫定自治政府首相ハラディナイ氏

(旧コソボ解放軍地方司令官)が ICTY(旧ユーゴ国際刑事裁判所)においてコソボ紛争

時の戦争犯罪容疑で起訴され、首相職を辞任した。今後、ICTY におけるハラディナイ元

首相の起訴に対し、コソボ地方のアルバニア系住民による反発が高まり、コソボ全域で

2004 年 3 月 17 日に発生した騒擾事件と同様の騒擾が発生する可能性がある。コソボ地方

では、国連コソボ暫定統治機構(UNMIK)、コソボ国際安全保障部隊(KFOR)が不測の事

態に対して即応体制を敷いていますが、情勢は流動的な状態にあり、治安も不安定な状

況にある。

7. 地質・鉱床概要

セルビア・モンテネグロは、国土の東側をマグマ弧が横切り、テチス金属生成帯の鉱

床が胚胎するヨーロッパ諸国の中でも多くの鉱床が認められる国である。特に数多く確

認されている鉱床は以下のとおりである。

1) 高硫化系、浅熱水金鉱床

2) 斑岩、スカルン銅金鉱床

3) 鉱染、堆積層内硫化物金鉱床

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- 6 - セルビアモンテネグロ

第 7-1 表 セルビア・モンテネグロの地質鉱床概要図(JMEC 内部資料)

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- 7 - セルビアモンテネグロ

8. 鉱山概要

8-1.Cerevo 鉱山

会社名(権益比率): RTB Bor

生産量 (直近 5 ヵ年)

年 金属量

t Cu

1999 --

2000 5,000 e

2001 5,000 e

2002 5,000 e

2003 5,000 e

Raw Materials Data August 2004

備考:建設中

8-2.Veliki Krivelij 鉱山

会社名(権益比率): RTB Bor

鉱床 鉱種 :Cu

生産量 (直近 5 ヵ年)

年 粗鉱生産量

Mt

品位

%Cu

金属量

Cu t

1999 2.5 1.00 20,000 e

2000 2.5 e 1.00 15,000 e

2001 10,000 e

2002 10,000 e

2003 10,000 e

Raw Materials Data August 2004

8-3. Majdanpek 鉱山

緯度・経度:44.04.59N,22.05.38E

会社名(権益比率): RTB Bor

鉱床 鉱種 :Cu

生産量 (直近 5 ヵ年)

年 粗鉱生産量

Mt

品位

% Cu

金属量

Cu t

1999 20,000 e

2000 3.5 e 0.50 10,000 e

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- 8 - セルビアモンテネグロ

2001 10,000 e

2002 10,000 e

2003 10,000 e

採鉱法 :OP

副産物等 :Zn Pb

9. 新規鉱山開発状況

9-1. Belo Brdo 鉱山

会社名(権益比率):Trepca

鉱床 鉱種 : Pb Zn Ag

埋蔵鉱量 :資源量 2.0 百万 t 112g/tAg, 7.7%Zn, 8.2%Pb

開発計画 :2002 年現在

開発費 :US$4 百万

採鉱法 :UG 年間採掘量 0.18 百万 t

選鉱 :150t/d

9-2.Crnac 鉱山

会社名(権益比率):Trepca

鉱床 鉱種 : Pb Zn Ag

埋蔵鉱量 :資源量 1.4 百万 t 166g/tAg, 3.5%Zn, 11.7%Pb

開発計画 :2002 年現在

開発費 :US$5 百万

採鉱法 :UG 年間採掘量 0.14 百万 t

9-3. Novo Brdo 鉱山

会社名(権益比率):Trepca

鉱床 鉱種 :Pb, Zn, Ag

埋蔵鉱量 :資源量 2.3 百万 t 135g/tAg, 7.5%Zn, 4.9%Pb

開発計画 :2002 年現在。

開発費 :US$11 百万

採鉱法 :UG 年間採掘量 0.20 百万 t

選鉱 :400t/d

9-4. Ajvalija 鉱山

会社名(権益比率):Trepca

鉱床 鉱種 :Zn Pb

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- 9 - セルビアモンテネグロ

埋蔵鉱量 :資源量 1.2 百万 t 126g/tAg, 18.8%Zn, 9.6%Pb

開発計画 :2002 年現在。

開発費 :US$6 百万

採鉱法 :UG, 年間採掘量 0.07 百万 t

選鉱 :150t/d

10. 探査状況

10-1.Hereward Ventures 社(英)

・セルビア共和国東部における探鉱

鉱区面積は 72.75km2で、斑岩型の Bor 銅金鉱床を含む Timok 銅金ベルトに位置する。

Timok 銅金ベルトはセルビアの地質技師によりこれまでに集中的に調査されてきたもの

の、1990 年代以降は政治的混乱もあって最新技術による探鉱は行われていない。同社は

衛星画像解析と地表踏査による予備的な調査を既に実施済みであり、銅金鉱床有望地を 3

か所絞り込んでいる。

・Ivanhoe Mines(カナダ)は、Hereward Ventures(イギリス) と共同で南セルビアの

Lece Mining 地域の Ivan KUla 地区と Tulare 地区の探鉱実施に合意した(2005 年 2 月

Mining Journal)。

10-2. European Nickel 社(英)

2 つの地域の探鉱ライセンスを獲得した。一つはセルビアの南西で Mokra Gora 鉱床を

含む地域で、もう一つはセルビアの中央 Lipovac 地域である。Mokra Gora 鉱床は 1950

年代と1990年代にセルビア地質調査所によって探査されたニッケル・ラテライト鉱床で、

38 本のダイヤモンドボーリング等の結果から、埋蔵量をロシアの資源量分類で、B:30.2

百万トン、C1:64.4 百万トン、C2:150.0 百万トン、合計 244.6 百万トン、ニッケル平均

品位 0.7%と推定されている。Lipovac 鉱床は同様に 60 年代と 70 年代の探査により合計

18.2 百万トン、平均品位 0.85%と推定されている。同社では、バルカンのニッケル鉱床

を拡大取得するとの戦略でこれら鉱区を取得しており、Mokra Gora 鉱床では予備的な実

験室レベルの試験で、酸リーチング適用により、同社のトルコ Caldag ニッケルプロジェ

クトより早く溶解しニッケルが得られることがわかっており、リーチング・プロセスの

修正が可能であることがわかったとしている。

11. 製錬所概要

11-1. Bor Copper Smelter/Refinery

位置 :Bor, Serbia

会社名(権益比率):RTB Bor

主要生産金属 :Cu

生産量 (直近 5 ヵ年) 生産開始年

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- 10 - セルビアモンテネグロ

生産量 (金属量 千トン) 年

溶錬 精錬

1999 45.0 e 51.8

2000 34.0 e 46.0

2001 24.0 e 32.0

2002 30.0 e 35.0

2003 30.0 e 40.0 e

Raw Materials Data, August 2004, Raw Materials Group

製錬方法 :

溶錬 :反射炉

精錬 :ELR

鉱山製錬所位置図

Majdanpek・休廃止

Veliki Krivelij

Bor copper smelter/Refiner

Belo Brdo

Trepca

Novo Brdo

Cerevo

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- 11 - セルビアモンテネグロ

操業鉱山

Serbia Montenegro-Cu Cerevo

Serbia Montenegro-Cu Veliki Krivelij

Serbia Montenegro-CuZnPb Majdanpek

探鉱開発

Serbia Montenegro-PbZn Belo Brdo

Serbia Montenegro-PbZn Crnac

Serbia Montenegro-PbZn Novo Brdo

Kosovo Trepca Pb2111,Zn1494,Ag3671 Lat42.55N,Log20.54E

精錬所

Serbia Montenegro-Cu Bor Copper Smelter/Refinery

休廃止鉱山

Serbia Montenegro-Cu Majdanpek(RTB Bor:2001~)

12. わが国のこれまでの鉱業関係プロジェクト実施状況

実績無し

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- 12 - セルビアモンテネグロ

第 2 部 地質解析

セルビア・モンテネグロは、2003 年に旧ユーゴスラヴィア連邦共和国を破棄して形成

された連合国家である。ソビエト連邦、東欧圏全域における社会主義政権の崩壊および

民主化の影響で、1991 年に旧ユーゴスラヴィア社会主義連邦共和国が崩壊し、クロアチ

ア、スロヴェニア、セルビア、マケドニア、ボスニア、ヘルツェゴヴィナの5つの共和

国に分裂し独立した。しかし、分裂後も、民族戦争に宗教上の紛争が加わり、周辺諸国

や国際連合までをも巻き込んで、現在も熾烈な争いが繰り返されてきた。

このような歴史的背景と社会情勢のために、この国々(あるいは一連の国家群)の資

源の賦存状況および生産活動について、正確な情報を得ることはほとんど不可能である。

もともと、社会主義国では、自由主義経済社会では到底開発し得ないような低品位の資

源でも、自給自足体制を維持するために開発操業されることが少なくない。また、自由

主義社会に対してこの種の情報が流出するのを極度に制限していることもあって、その

規模などを直接間接に比較できる情報が極めて限られている。旧ユーゴスラヴィア社会

主義連邦共和国の地下資源に関する情報もその例外ではない。

国際鉱物資源開発協力協会(1996)の報告書「旧ユーゴスラヴィア連邦共和国」では、

100 を超える鉱床が一覧で紹介されている。セルビアやマケドニアの銅資源や、ボスニア

やクロアチアのボーキサイトなどは世界的水準にある資源といわれてきたが、その実態

がなお明らかでないのは上述のような理由によっている。

このように、ユーゴスラヴィアの鉱物資源についてまとまった文献は極めて少ない。

わずかに、Jankovic, S.(1977, 1982a, 1982b)による鉱物資源についての文献が知ら

れてきた。国際鉱物資源開発協力協会(1996)は、これらにもとづいて、平成6年度資

源開発協力基礎調査プロジェクト選定調査報告書「旧ユーゴスラヴィア連邦共和国」を

その後、平成9年度金属鉱業事業団資料情報センター報告書業務報告書「東欧諸国の地

質鉱床」が出版されている。この中からセルビア・モンテネグロの該当する箇所を今回

の地質解析の基礎資料として主に活用した。

1.地質・地質構造

東欧諸国(第 1-1 図)は、ヨーロッパ大構造区図(第 1-2 図)において原ヨーロッパ

(Eo-Europa)、古ヨーロッパ(Paleo-Europa)またはプロトヨーロッパ(Proto-Europa)、

中ヨーロッパ(Meso-Europa)、新ヨーロッパ(Neo-Europa)わたり、極めて複雑な地質

構造をなしている。セルビア・モンテネグロは、新ヨーロッパに属するアルプス造山帯

(カルパチア造山帯・バルカン造山帯・ディナール造山帯・ヘレナ造山帯の一部)に属

する(第 1-3 図)。さらに各造山帯は細分化される(第 1-4 図)。以下に各構造体毎に地

質・地質構造の特徴を述べる。

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- 13 - セルビアモンテネグロ

第 1-1 図 東欧地域地形略図(金属鉱業事業団(2000)に加筆)

セルビア・モンテネグロ

(旧ユーゴスラビア)

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- 14 - セルビアモンテネグロ

第 1-2 図. ヨーロッパ大構造図(OSICA, 1990)

造山帯: 1-アルプス、2-バリスカン、3-カレドニア、4-先カンブリア、

卓状地: 5-先カンブリア、 6-カレドニア、 7-バリスカン沈降地、

8-Intermontane(バリスカン)、9-Extramontane(アルプス)、10-

古生代卓状地境界線、11-アルプス衝上断層

先カンブリア卓状地:IE-東ヨーロッパ卓状地、IAF-アフリカ卓状地、

IAr-アラビア卓状地、

古生代卓状地:IIE-中央・西ヨーロッパ卓状地、IIE1-カレドニア帯、IE2-

バリスカン帯、IIS-Scythian 卓状地、IIT-Turanian 卓状地、IISb-

西シベリア卓状地、IIM-Moesian 卓状地

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- 15 - セルビアモンテネグロ

第 1-3 図 東ヨーロッパ地域大構造図

(金属鉱業事業団(2000)に加筆)

セルビア・モンテネグロ

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- 16 - セルビアモンテネグロ

第 1-4 図.南部東ヨーロッパ構造分帯図(金属鉱業事業団(2000)に加筆)

下線部がセルビア・モンテネグロに属する。

西カルパチア造山帯:A カルパチア前縁沈降帯, B 外帯, C Pienide クリッペ帯,

D 内帯,

東カルパチア造山帯:E 亜カルパチア前縁沈降帯, F 外カルパチア帯, G 内カルパチア

帯,

南カルパチア造山帯:E 亜カルパチア前縁沈降帯, H Getic ナッペ, I Danubian 同地性

帯, J Severin ナッペ,

バルカン造山帯:K バルカン前縁帯, L バルカン山地, M 中間山地,

ディナール造山帯:N Serbo-Macedonian 地塊, O Vardar 帯, P Golija 帯, Q Serbian

帯, R Bosnian 帯, S High Karst 帯, T Budva 帯, U Dalmatian 帯,

ヘレナ造山帯:N Serbo-Macedonian 地塊, O Vardar 帯, V Pelagonian(Korab)帯, W

Sub-pelagonian 帯, X Pindus(Krasta)帯, Y Gavrovo 帯, Z Ionian 帯,

パノニア堆積盆:a Apuseni 山地, b 中生代丘陵

セルビア・モンテネグロ

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- 17 - セルビアモンテネグロ

1-1. 南カルパチア造山帯(Southern Carpathians)

カルパチア造山帯の外縁は、ボヘミア地塊に地塊ウイーン盆地から始まり、チェコの

東部、ポーランドの南部を通って南下し、ウクライナの西端をかすめて、ルーマニアで

大きく西に屈曲しさらに南に曲がってドナウ川を横切りユーゴスラビアに入る。さらに

ブルルガリアに進みここでさらに東に曲がってバルカン造山帯となり、黒海に至るとい

う極めて屈曲に富んだ造山帯を形成している。本造山帯は、西カルパチア造山帯、東カ

ルパチア造山帯、南カルパチア造山帯に分けられるが、このうちセルビア・モンテネグ

ロには南カルパチア造山帯が分布する。

本帯はつぎの四つに区分される。(1)Danubian 同地性帯、(2)Getic ナッペ、(3)Severin

ナッペ、(4)前縁沈降帯。このうちセルビア・モンテネグロには、Danubian 同地性帯、

Severin ナッペ、前縁沈降帯の一部が分布するので、以下にその特徴を示す。

Danubian 同地性帯(Danubian Autochthon)

基盤は先カンブリア紀および前期古生代と考えられる緑色片岩相の変成岩類とこれを

貫く片麻状花崗岩類からなる。一部でこの基盤をデボン系が、多くの場合石炭系の岩石

が覆う。又一部でペルム系の碎屑岩および火山岩類が認められる。これらの後期古生界

は緩やかな褶曲を示しているが、バリスカン造山運動を受けたとは言えない。Danibian

同地性帯の中生代の被覆層は頁岩と砂岩からなり炭酸塩岩を欠く下記ジュラ系の堆積か

ら始まり、中部ジュラ系の頂部に至って塊状石灰岩が現れる。ジュラ系の一部には塩基

性火山岩を含む。白亜系は側方変化が著しく、頁岩、石灰岩および塩基性火山岩などか

らなる。

Severin ナッペ(Severin Nappe)

このナッペは後期ジュラ紀および前期白亜紀の頁岩およびチャートからなり塩基性火

山岩類と蛇紋岩を伴う。さらにこれを後期白亜紀のフリッシュ様堆積物が覆っている。

ナッペの主要移動期は最終白亜紀と考えられる。この変動期とほぼ同時に安山岩の激し

い活動が起こっている。

亜カルパチア前縁沈降帯(Sub-Carpathian Fore-deep)

この帯は、第三紀のモラッセ堆積物により特徴づけられている。北部で 2000m 南部で

10000m に達する礫岩を主とし、砂岩、石炭層及び蒸発岩を伴う厚い海成及び陸成の新生

界が堆積する。

1-2. バルカン造山帯(Balkanides)

バルカン造山帯は北のカルパチア造山帯から直接連続してブルガリアを西から東へ走

り黒海に達する。北側のモエシア卓状地と南側のロードープ地塊の間に挟まれて分布す

るバルカン造山帯はカルパチア造山帯と比較して単純な構造を示し、北から南へ次の三

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- 18 - セルビアモンテネグロ

つの構造単位からなるが、これらは共通の層序により考えることができる。(1)バルカン

前縁帯、(2)バルカン山地、(3)中間山地(Sredna Gora)。バルカン前縁帯は主褶曲帯と安

定した卓状地の間にあると言う点で Jura 帯に比すことができる。バルカン山地には衝上

断層、大規模な逆転褶曲あるいは小規模なナッペも認められ、広く分布する中生界の間

に時に古期岩石が露出する。中間山地は主として丘陵地帯を形成しているが第四紀堆積

物に覆われた平地も存在する。その地質構造は逆断層により断ち切られた特徴的な急傾

斜の褶曲を示す。

先カンブリア系および古生界

先カンブリア紀の岩石は主として中間山地に分布し、花崗岩類、片痲岩、ミグマタイ

トなどの複合岩体からなる。先カンブリア紀からカンブリア紀にわたる岩石からなる'結

晶質岩系'は変成度の高い下部と低い上部とに分けれらるが、下部は始生界と推定される。

閃緑岩、斑糲岩、花崗閃緑岩からなる複合岩体がこの系の最上部に認められる。先オル

ドビス紀生成(カンブリア紀?)と考えられるオフィオライトの断片がこの系に含まれ

ている。

恐らくデボン系と思われる火山岩類が西バルカン山地に広く分布する。またバルカン

深部断層に支配されカレドニア期の花崗岩類が貫入している。引き続く後期石炭紀には

石炭層を含む陸成層が堆積し、二畳系も同様に石炭層、礫岩、角礫岩からなる陸送を呈

する。二畳系にはまた凝灰岩および溶岩を含む。

中生界

中生代の堆積物はバルカン山地を広く覆っている。三畳系は西バルカン山地および東

バルカン山地に分布する。前者では三畳系は、ドイツと同様にオルドビス紀珪岩起源の

巨礫を含む基底礫岩で始まり、Bund 砂岩が重なるが、後者では異なった岩層で始まる。

しかし三畳系上部は両地域で Alpine-type の白色石灰岩を広く産する。三畳紀末には海

は東方に退き西バルカン山地では陸成層が発達するが東バルカン山地では引き続き石灰

岩を堆積する。

ジュラ紀上部には三畳紀末と同様に西部バルカン山地には一部に石炭を含む陸成層を

生成した。だいぶ分のジュラ系は圧縮された層厚を示すがすべての時階を認めることが

できる。ジュラ紀最上部(Thutonian)は例外的に厚い地層が発達し、北部では白色石灰岩

が堆積するが南部または西南部にゆくに従いフリッシュ相に漸移し最大厚さ 2000mに達

する。これら二つの岩相は白亜系下部に連続しブルガリアの大部分は白亜紀の岩石に覆

われることになる。

ウルゴニア相の塊状白色石灰岩は Barremian から下部 Aptian まで出現し、巨大なレン

ズ状をなして産する。この石灰岩は後期 Aptian の砂岩または泥灰岩に覆われる。東バル

カン山地から黒海沿岸にかけて、最大一つの丘の大きさを有する外来塊を含み頁岩質の

マトリックスからなる中部白亜紀(AlbianからTuronian)生成のオリストストロームが分

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- 19 - セルビアモンテネグロ

布する。外来塊の多くは三畳紀ないしジュラ紀の岩石で古生代の花崗岩も含まれる。オ

リストストローム中の石灰岩はバルカン山地で見られない物で恐らく遥か南方から運ば

れたと考えられる。このオリストストロームの定置は早期白亜紀晩期の運動の一部と考

えられ、これが収まった後、Cenomanian に東方から海進が起こった。これ以後白亜紀末

に至るまで石灰質岩の堆積がバルカン地域で優勢となる。

後期白亜紀に始まった火山活動は白亜紀末まで続いた。この火山活動は安山岩質凝灰

岩および安山岩溶岩で特徴付けられ、バルカン造山帯中間山地からボスポラスへ延び、

さらに東方へ延長している。また白亜紀末には中間山地において一連の酸性貫入岩類が

形成され、‘南ブルガリア花崗岩類’と呼ばれている。中間山地とロードープ地塊の間

の Maritza 構造線は白亜紀末に形成された。

新生界

第三紀地殻変動は中生代末に始まる。これにより中間山地は陸化し、中間山地の北側

に形成された東西方向のトラフには始新世の石灰岩と砂が堆積した。主要なアルプス褶

曲は、Lutetian 後に起こったと思われ、このとき北方への衝上運動によりバルカン山地

が形成され、花崗岩類と閃長岩類が貫入した。漸新世の海成堆積物は東バルカン山地に

限られ、この時期にも褶曲運動が続いた。他の地域では褐炭を含む陸成堆積物が形成さ

れた。中新世には東方と北西方から海進が進み海成層が堆積した。

1-3. ディナール造山帯(Dinarides)

ディナール造山地は、北は北イタリヤの南部アルプスに連結し、南はアルバニア、マ

ケドニアおよびギリシャのヘレナ造山帯につながるアドリア海東岸に沿って延びるアル

プス・システムの一部である。本造山帯は内側(北東側)から外側(南西側)に向かっ

て次のように八つの構造帯に分けることができる。(1)Serbo-Macedonian 地塊、(2)Vardar

帯、(3)Golia 帯、(4)Serbian 帯、(5)Bosnian 帯、(6)高カルスト帯、(7)Budva 帯、

(8)Dalmatian 帯。セルビア・モンテネグロには、(1)~(4)、(6)~(7)が分布する。

Serbo-Macedonian 地塊

ディナール造山帯に関する限り本地塊は、ベオグラード付近でドナウ川に流入する

Morava 川西岸の変成岩からなる小地域を占めるに過ぎないが、南側ではヘレナ造山帯の

大規模な Serbo-Macedonian 地塊に連続する。Serbo-Macedonian 地塊の変成岩は、現在で

こそ小規模な前地に過ぎないが、中生代の大部分、また古生代においては陸地として大

きく突出しており、南西のディナール造山帯および東方の南部カルパチア造山帯のトラ

フに砕屑性堆積物を供給していた(ディナール造山帯の大部分の堆積物はフリッシュで

はなく炭酸カルシュウムではあるが)。地塊南部では新第三紀カルク-アルカリ岩系中・

酸性火山岩-貫入岩複合岩体が形成された。また、北のパノニア堆積盆から Morava 川に

沿ってし新第三紀の後造山堆積物が広く分布し地塊の古い岩石を被覆している。本地塊

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- 20 - セルビアモンテネグロ

は単純な圧縮性ホルストである。その南西側境界は高角の逆断層を介して Varder 帯の火

山岩類の上に衝上し、北東側では同様な関係で南カルパチア造山帯と接している。

Vardar 帯

本帯は恐らくディナール造山帯中もっとも複雑な部分であろう。この帯の大部分は中

生代火山岩類に覆われているが、北西部の Valjevo 付近では変成した古生代の粘土質堆

積物が分布する。これはアルプス変動の始まる前に変成した先バリスカンのディナー

ル・トラフを代表するものと考えられる。実際、Vardar 帯は顕生代の大部分の間トラフ

であったと思われる。南西部の古生界に不整合に乗って早期および中期三畳紀の遠洋成

石灰岩と火山岩類が堆積している。しかし一般には中生界の層序はジュラ紀のいわゆる

‘輝緑岩-放散虫チャート’層から始まる。この層中には大規模なオフィオライト岩塊

を特に西部で産する。これらの岩石は非常に複雑なテクトニクスを示し基盤の三畳系お

よび古生界との関係は今なを議論の対象となっている。‘輝緑岩-放散虫岩’層は南西

部で白色の Thitonian 炭酸塩岩に覆われている。これらの現象は、ディナール造山帯中

に早期(多分中期ないし後期三畳紀と早期白亜紀)アルプス変動があったことを示して

いる。Vardar 帯はその南西側境界で、構造帯を介して Golija 帯の上に乗っている。さら

に新第三紀には Serbo-Macedonian 地塊と同様にカルク-アルカリ岩系中・酸性火山岩-

貫入岩複合岩体の活動が広く認められる。

Golija 帯

本帯は比較的小さく南は Poe の東から北は Zvronic 地域までで、ここでは Golija 帯は

Tuzla 堆積盆とパノニア堆積盆のモラッセの下に消滅している。南では Albania の東の結

晶質岩地塊にアバットしている。基本的に、Golija 帯は軸部の古生代堆積物と翼部の中

生代堆積物からなる背斜構造を示し、ディナール造山帯において引き続き高所をなして

いた。三畳紀は赤色層で始まり、後期三畳紀および早期ジュラ紀の厚い浅海性炭酸塩岩

に移化する。これらの岩石に通常の Toarcian 含アンモナイト赤色石灰岩が重なり、さら

に放散虫岩、角礫岩、塩基性岩が堆積している。その後本帯はやや上昇に移り白亜紀に

は島弧を形成したと考えられる。Golija 帯の背斜構造は後期白亜紀に形成された。この

とき陸化侵食を伴ったが、やがて浅海にひたされ、その後 Maastrchitian から第三紀初

期にかけて再び沈降に移りトラフにフリッシュが堆積した。Golija 帯は南西側で次の

Serbian 帯の上に乗っている。

Serbian 帯

この帯の大部分はオフィオライトからなり Serbian オフィオライト帯とも呼ばれる。

モンテネグロからセルビアにわたって延びるこのオフィオライトは、ジュラ紀末期から

白亜紀初頭にかけて形成されたもので、火山岩類と超塩基性岩からなり、放散虫岩、頁

岩、砂岩および礫岩を伴う。この帯には先オフィオライトの大陸地核を産する。南部ボ

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- 21 - セルビアモンテネグロ

スニア、セルビア、モンテネグロおよび南西マケドニアには多くの場所に古生代の基盤

岩が認められ、これは早期三畳紀の赤色砂岩に覆われる。赤色砂岩は上に向かって酸性

火山岩類を伴う含アンモナイト赤色石灰岩に移化する。中生代の堆積岩相は、三畳紀と

ジュラ紀の礁成石灰岩とボーキサイトにより南西に海嶺が存在し、深海成の堆積物によ

り北東にトラフがあったことを示している。中期ジュラ紀末までにこれらの岩相は全体

として均質になり、放散虫岩が広く堆積する。

ボスニアにおいてオフィオライトは、ジュラ紀-白亜紀境界をなし、南西側の Bosnian

帯フリッシュに対比されるフリッシュに整合に覆われる。しかしさらに南東方では、オ

フィオライトは後期白亜紀の堆積物に不整合に覆われている。従って、ディナール造山

帯の内側三帯には白亜紀初頭に造山運動が起こりこれにより古ディナール造山帯が形成

されたと見ることができる。また、白亜紀末にも構造運動が起こったことが古第三紀の

厚いモラッセの堆積から知ることができる。

Serbian 帯における最も重要な現象は、その構成物の大部分が異地性であることである。

Banja Luka からボスニア国境まで大規模な衝上断層がこれら岩石を次の Bosnian 帯のフ

リッシュの上まで運んでいる。特にオフィオライトは完全に異地性である。南部では三

畳紀の岩石の顕著な Pester ナッペが認められる。これは恐らく後期白亜紀以前に形成さ

れたと考えられ、一群のクリッペを残している。

High Karst 帯

本体の大部分は白色の中期三畳紀から後期白亜紀にわたる石灰岩からなり特徴的なカ

ルスト地形をなすすべて浅海成のもので、しばしば化石を多く含み、特に礁を形成し場

所によりボーキサイトを挟む。このボーキサイトは特に上部ジュラ系および上部白亜系

に多く見られる。この地域の基盤は古生界でサラエボの西に大きな地塊として露出する。

古生界の上には三畳系下底の赤色層が乗りその上に石灰岩層が堆積する。本帯の一部に

は中期三畳紀、特に Ladinian に形成された火山岩-堆積岩複合体が分布しこれに種々の

貫入岩体を伴う。火山岩はスピライトとケラトフアイアーからなり、貫入岩として、ひ

ん岩、花崗岩、花崗閃緑岩、石英閃緑岩、斑糲岩が認められる。

構造的には High Karst 帯は最南部で Budva 帯の上に衝上し、Budva 帯はさらに

Dalmatian 帯石灰岩の上に衝上しているのが認められる。しかし北部では、High Karst

帯石灰岩は直接 Dalmatian 帯石灰岩の上に衝上しており、境界付近には何枚もの衝上断

層が認められ両者の区別は困難である。

Budva 帯

この帯はディナール造山帯南部において、High Karst 帯と同様にカルスト地形を示す。

アドリア海に沿って長く延びる。最下位の中部ないし上部三畳紀から中部始新世までほ

ぼ浅海成の石灰岩が続き、唯一の異なった岩相は石灰質頁岩である。層序の上で重要な

不連続は白亜紀-第三紀の境界にある。石灰岩の上には中期および後期始新世の厚いフ

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- 22 - セルビアモンテネグロ

リッシュ層が重なる。同地性岩体である。

1-4. へレナ造山帯(Hellenides)

ヘレナ造山帯はアルバニア、マケドニアおよびギリシャにまたがって分布するアルプ

ス造山帯として定義される。ヘレナ造山帯は直接ディナール造山帯に連続するが、これ

らを明瞭に分けるScutari-Pec構造線がほぼアルバニアの北部国境線に沿って存在する。

この構造線は重要であるが、完全な不連続を意味せず、いくつかの構造帯はディナール

造山帯からヘレナ造山帯に、水平方向にずれながらも連続している。本造山帯はディナ

ール造山帯と同様に内側(北東側)から外側(南西側)に向かって次のように 10 の構造

帯に分けることができる。(1)Serbo-Macedonian 地塊、(2)Vardar 帯、(3)Pelagonian 帯、

(4)Sub-pelagonian 帯、(5)Beotian 帯、(6)Parnassus 帯、(7)Pindus 帯、(8)Gavrovo 帯、

(9)Ionian 帯、(10)Pre-Apulian 帯。このうち、セルビア・モンテネグロには、(1)と(2)

が分布する。

Serbo-Macedonian 地塊

Serbo-Macedonian 地塊はディナール造山帯の同名の帯から直接連続している。本地塊

は変成岩類からなりバリスカンまたはそれより早い造山運動の影響を受けていると推定

されるが、もちろんアルプス造山運動を含むそれ以後の造山運動の影響も受けている。

そのもっとも内側の変成岩類は主として先カンブリア時代のものと考えられるが、

Longos 地域のものは古生代生成である。新第三紀にはカルク-アルカリ岩系中・酸性火

山岩-貫入岩複合岩体が形成された。Vardar 帯との関係はディナール造山帯の場合と同

じである。

Vardar 帯

本帯はさらに三つの亜帯に分けられる。もっとも東側の Peonia 亜帯は、ディナール造

山帯と同様、基本的には早期ジュラ紀に明瞭になった内側トラフであり、オフィオライ

ト複合体が発達している。その後いったん陸化してからジュラ紀最末期の海進が起こり、

フリッシュ層を堆積するトレンチとなった。さらに後期始新世まで陸化とトラフ形成を

繰り返し、プレートの収斂境界であったことを示している。この亜帯の西には、長い間

海嶺であった Veles Axis 亜帯がある。ここでは三畳紀およびジュラ紀の火山岩(流紋岩、

スピライト-ケラトファイアー)を伴う炭酸塩岩の堆積で始まり、中生代末期の海進の

後漸新世に隆起した。さらに西の Almopias 亜帯は、後期ジュラ紀に確立された今ひとつ

の海溝でありこれも陸化とトラフ形成を繰り返しいる。Vardar 帯はいくつかのスライス

に分かれて、西方に衝上しており、もっとも西のナッペは Pelagonian 帯の上に押し上げ

られている。

枕状溶岩、放散虫岩、蛇紋岩、橄欖岩などからなるオフィオライト複合岩体以外に、

Vardar 帯には種々の火成活動が認められる。さらに白亜紀末から早期始新世の主要な構

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- 23 - セルビアモンテネグロ

造運動後の中新世に中-酸性火山岩および凝灰岩の噴出が起こりこれに貫入岩の活動を

伴っている。ディナール造山帯と同様に、ヘレナ造山帯の Vardar 帯も大部分中生代と新

生代の岩石により占められているが、その南東端には古生代の変成岩が露出している。

2. 鉱床

2-1. 鉱床生成区

旧ユーゴ諸国は、ヨーロッパの国の中でも最も金属資源のポテンシャルの高い国の一

つであり、様々な時代に色々なタイプの鉱床が生成した。複雑な地質構造区から成り、

例えば、Alpine 構造区、Pannonian、Moesian プラットホーム、Vardar ゾーン、

Serbo-Macedonian マ ッ シ ー フ 、 Rhodopian マ ッ シ ー フ 、 Dinarides 構 造 区 、

Carpatho-Balkanides 構造区から構成されている。従って、多くの鉱床生成期と鉱床区か

ら成っている。この旧ユーゴ諸国の鉱床生成期を2-1表と第 2-1図にまとめた(Jankovic,

1982)。

鉱床は、1.デボン紀以前(鉄、マンガン)、2.石灰紀、二畳紀-石灰紀(タング

ステン、金、ウラン、鉄、アンチモン、モリブデン)、3.三畳紀中期(黄鉄鉱、亜鉛、

銅、亜鉛、水銀、鉄、マンガン、(シリカ)、鉛、鉛-亜鉛、銅)、4.ジュラ紀(FeS2、

銅、クロム、鉄、チタン)、5.白亜紀後期-古第三紀(銅、モリブデン、鉛-亜鉛、

鉄)、6.漸新世以降(鉛-亜鉛、アンチモン、鉄、銅、モリブデン、金、ビスマス)

に生成された。

旧ユーゴの鉱床区は大きく以下のように分けられる(Jankovic,1982)。

(a)Alpine 鉱床区、(b)Dinaric 鉱床区、(c)Serbo-Macedonian 鉱床区、(d)Carpatho-Balkan

鉱床区(東セルビア)。地質構造区からいうと、北部に Pannonian ベイズン、東部に Moesian

プレートがあるが、これらには鉱床は分布していない。

さらに各鉱床区は以下のとおり細分される。

1.アルプス鉱床区

2.ディナール鉱床区

1)西部マケドニア地域

2)狭義のディナール帯

3.セルボマケドニア鉱床区

1)先デヴォン紀鉱床生成期

2)ヘルシニアン鉱床生成期

3)早期アルパイン鉱床生成期

4)アルパイン鉱床生成期

4.カルパチア・バルカン鉱床区

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- 24 - セルビアモンテネグロ

第 2-1 図 旧ユーゴスラビア諸国の重要な鉱床生成区(Jankovic,1982)

スロベニア地区(①Skofija Loka、②Sava 褶曲、③Idrija)、④

Banja-Krajina 地区、⑤ボスニア中部 Schist 山脈、⑥Vares 地区、

⑦Montenegro 東北地区、⑧Drina 地区、⑨Sumadija 地区、⑩中央

Serbian magnesite 地区、⑪Kopaonik 地区、⑫Lece 地区、⑬

Blagodat-Osogovo 地区、⑭Zletovo 地区、⑮マセドニア西部地区、

⑯ボーキサイト帯.

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- 25 - セルビアモンテネグロ

Srebrenica,

Veliki Maidan, Rudnik,

Kopaonik, Trepca, Lace

Lojane

Alsar

Mackatica, Suva ruda

Bucim

Zletovska Reka

Tser-Bukuljaゾ

ーン

Shuplja Stena

Bor, Gorija Lipa

Gornaja Lipa

Majdanpek,

Veliki Krivel他

Valja Saka

メタ

ロジ

ェニ

鉛、

亜鉛

、銀

鉛、

亜鉛

、銀

、金

アン

チモ

ン、

タリ

ウム

モリ

ブデ

ン、

鉄、

タン

グス

テン

モリ

ブデ

ン、

銅、

銅、

ウラ

ン、

錫、

タン

グス

テン

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ブ、

タン

タル

ウラ

ン、

水銀

銅、

モリ

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亜鉛

稀に

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主な

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ト、

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活動

で始

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ーズ

Ⅰ:

安山

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類。

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ーズ

Ⅲ:

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ト、

粗面

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又は

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ナイ

ト、

カブ

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閃緑

他。

起源

、特

徴、

マグ

マ固

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リン

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ニッ

ク、大

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融解

分化

した

噴出

岩、

半深

成岩

、鉛

が濃

混成

作用

;沈

み込

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第2-1表

ユー

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ア諸

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主な

外成

鉱床

の生

成時

期(

Jankovic,

1982)

時代

始新

世後

第四

白亜

紀後

古第

三紀

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- 26 - セルビアモンテネグロ

1)先デヴォン紀鉱化期

2)ヘルシニアン鉱化期

3)早期アルバイン鉱化期

4)アルパイン鉱化期

上記の鉱床区のうちで、セルビア・モンテネグロに属する鉱床区は以下の通りである。

1.ディナール鉱床区

1)狭義のディナール帯

2.セルボマケドニア鉱床区

1)先デヴォン紀鉱床生成期

2)ヘルシニアン鉱床生成期

3)早期アルパイン鉱床生成期

4)アルパイン鉱床生成期

3.カルパチア・バルカン鉱床区

1)先デヴォン紀鉱化期

2)ヘルシニアン鉱化期

3)早期アルバイン鉱化期

4)アルパイン鉱化期

次に各鉱床区の概略について述べる。

2-1-1. Dinaric 鉱床区

この鉱床区は、かなり広い面積を占める。地質構造上 Dinarides から成り、一部はギ

リシャの Hellenides まで延びている。ヘルシニアンとアルプス前期という二つの鉱床生

成期に鉱床が生成した。

ヘルシニアン鉱床期に生成した鉱床は、脈状、レンズ上を呈する熱水性鉱床(鉄炭酸

塩、重晶石、鉛-亜鉛硫化物)、堆積性層状・レンズ状鉱床(ウラン、鉛、鉄炭酸塩)

である。

アルプス早期(三畳紀、ジュラ紀)には多くの鉱床が生成した。Anisian-Ladinian に

厚い火山性-堆積性コンプレックスが堆積した。玄武岩質溶岩、貫入岩、岩脈から成る。

主として玄武岩であるが、この他にアルバイト質花崗岩、花崗閃緑岩、石英閃緑岩、ガ

ブロもみられる。これらには堆積性鉄-マンガン鉱床が伴われる。

三畳紀中期の鉱床として、以下の3タイプがある。

・火山性・堆積性鉱床:(a)チャートに伴う鉄-マンガン鉱床、(b)塊状硫化物鉱床(鉛・

亜鉛、黄鉄鉱)、(c)アンチモン鉱床、

・三畳紀中期の炭酸塩岩に伴う層状鉛・亜鉛鉱床、

・スカルン鉄鉱床。

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- 27 - セルビアモンテネグロ

これらの鉱床は、1,000km の距離にわたって存在し、その特徴はほとんど変わらない。

三畳紀中期に生成した水銀鉱床は、長距離にわたって狭いベルトに存在する。おそら

く深部までフラクチャーが存在し、上部マントルから水銀がこのフラクチャーに沿って

上昇したのであろう。

三畳紀中期以降は、ジュラ紀中期まで火成活動はみられず、浅海性の堆積物が堆積し

た。ジュラ紀中期・後期には輝緑岩-チャート相が広くこの地域にたまった。これらは、

巨大なペリドタイト-ガブロコンプレックスに沿ってみられている。これには、ポディ

フォーム型クロマイト鉱床、チタン磁鉄鉱鉱床(Tara 地域)が伴われている。

この他に、輝緑岩に伴う熱水性銅鉱床(西セルビアの Lajkovaca)、塊状硫化物黄鉄鉱・

黄銅鉱鉱床がある。

2-1-2. 狭義の Dinarides 地域;

(1)ヘルシニアンの鉱床

この地域にはヘルシニアンに生成された多くの鉱床が存在する。主な鉱床は、鉛、亜

鉛、銅、鉄、砒素、アンチモン、水銀硫化物鉱床、菱鉄鉱鉱床、シャモサイト鉱床、ウ

ラン鉱床である。

Dinarides と Alps の交差地域には多くの鉱床が存在する。それらは、二畳紀の砂岩中

の 層 状 の ウ ラ ン 鉱 床 、 銅 鉱 床 、 石 灰 紀 の 片 岩 、 砂 岩 中 の 鉛 - 亜 鉛 鉱 床 、

Faseniee-Vitanjskips ゾーンの鉄鉱床、Banja 地域の石灰紀の堆積物、石灰岩中の鉛-

亜鉛鉱床、亜鉛、鉛、アンチモン鉱床、鉄鉱床(Ljubija)、Petrova Gora(Croatia)

の重晶石鉱脈鉱床、ボスニアの重晶石鉱床である。

(2)三畳紀中期の鉱床:

三畳紀中期(Ladinian)には、多くの種類の金属鉱床が生成された。主なものは、鉄

鉱床、鉛-亜鉛-重晶石鉱床(火山・堆積性鉱床)、塊状黄鉄鉱多金属鉱床、古生代片

岩中の塊状硫化物(鉄、銅、亜鉛)鉱床、石灰岩中の細脈タイプの鉱床(鉛・亜鉛炭酸

塩鉱物)、水銀鉱床、マンガン鉱床である。

(3)ジュラ紀-白亜紀前期の輝緑岩-チャートに関連した鉱床:

Inner Dinarides Hellenides だけでなく、Serbo-Macedonian 鉱床区にもこの種の鉱床

がある。これらの鉱床として銅鉱床、銅-ニッケル鉱床がある。

(4)Didnaric、Serbo-Macedonian 鉱床区のペリドタイト-ガブロコンプレックスに伴う鉱

床:

ユーゴスラビア(特に Inner Dinarides)には、アルバニア、ギリシャまで延びたペリ

ドタイト-ガブロコンプレックスがある。これに伴われる鉱床として以下があげられる。

1.内成、または一次鉱床(クロム、チタン、鉄-チタン、銅-ニッケル-コバルト、

鉄)、

2.外成、または二次鉱床(ライライト、漂砂(白金、クロム、チタン、鉄)鉱床)、

3.アスベスト、タルク変成鉱床。

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- 28 - セルビアモンテネグロ

2-1-3. Serbo-Macedonian 鉱床区

この鉱床区は、多くの地質構造区(Vardar ゾーン、Serbo-Macedonian マッシーフ、

Rhodope マッシーフ)から成る。

この鉱床区の鉱床は、(a)デボン紀以前(カレドニアン)期、(b)ヘルシニアン期、(c)

アルプス早期、(d)アルプス期、に生成した。

(1)デポン紀以前の鉱床生成期

この時代には、Rhodope マッシーフ、Serbo-Macedonian マッシーフ、Pannonian マッシ

ーフ、Moesian プラットフォームが一つの大陸を形づくっていたと思われている。最も古

い時代の鉱床は、Serbo-Macedonian マッシーフの結晶質片岩に伴われるアパタイト、磁

鉄鉱鉱床である。

(2)ヘルシニアン鉱床生成期

Serbo-Macedonian 鉱床区には、この生成期の鉱床は少ない。主な鉱床は、花崗岩類に

関連したペグマタイト鉱床(ウラン、長石、石墨)である。

(3)アルプス早期鉱床生成期

この鉱床生成期のほとんどの鉱床は、Dinarides に存在している。

これらの鉱床は、三畳紀のスピライト-ケライトファイア-玢岩類-火成岩コンプレ

ックスとジュラ紀-白亜紀前期のオフィオライトコンプレックスに伴われる。

Serbo-Macedonian のアルプス鉱床生成期は、旧ユーゴスラビア諸国の重要な鉛-亜鉛、

アンチモン、ビスマス、モリブデン鉱床、小規模な銅、鉄、錫、金、タングステン、水

銀、砒素鉱床が生成した。これらの鉱床は、白亜紀後期の花崗岩類に伴われ広く分布し

ている。この他の第三紀の花崗閃緑岩に関連した鉱床(アンチモン、鉛、亜鉛)がある。

これらの鉱床は、Drina 地区(第三紀の鉱床)(第 2-2 図)、Šumadija 地区(スカル

ン鉛・亜鉛鉱床;第三紀の水銀、アンチモン鉱床)(第 2-3 図)、Kopaonik 地区(スカ

ルン鉛・亜鉛・鉄、ポーフィリーカッパー、アンチモン鉱床)(第 2-4 図)、Lece 地区

(金を伴う鉛-亜鉛鉱床)、Zletovo 地区(第三紀鉛・亜鉛・銅鉱床、ポーフィリーカッ

パー鉱床)(第 2-5 図)、Blagodat-Ósogova 地区(鉛・亜鉛・モリブデン)(第 2-5 図)

がある。

2-1-4.Carpatho-Balkan 鉱床区(東セルビア)

東セルビアの大部分を占める。北の南西へはルーマニアとブルガリアに続く(第 2-6

図)。この鉱床区をさらにいくつかの鉱床区に分けることが出来る(第 2-7 図)。

鉱床は、デボン紀以前の鉱床生成期とヘルシニアン鉱床生成期に生成された。

デボン紀以前の鉱床生成期は、カレドニアン鉱床生成期に相当し、鉱床は、Beljanical

山脈、Kučaj 山脈に存在する。これらの鉱床として、下部(オルドビス紀、シルル紀以前)

の火山性・堆積性鉄鉱床、上部(オルドビス紀後期)の堆積性菱鉄鉱、シャモサイト鉱

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- 29 - セルビアモンテネグロ

第 2-2 図 Drina 地区の鉱床の分布(Jankovic, 1967a)

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- 30 - セルビアモンテネグロ

第 2-3 図 Sumadija 地区の鉱床地域と鉱床(Jankovic, 1967a)

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- 31 - セルビアモンテネグロ

第 2-4 図 Kopaonik 中央地域の鉱床(Jankovic, 1967a)

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- 32 - セルビアモンテネグロ

第 2-5 図 Zletovo と Blagodat-Osogovo 地区の主な鉱床(Jankovic, 1967a)

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- 33 - セルビアモンテネグロ

第 2-6 図 Carpatho-Balkanides:主な鉱床生成区

出典:国際鉱物資源開発協力協会(1996)

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- 34 - セルビアモンテネグロ

第 2-7 図 東セルビアの構造帯と鉱床図

出典:国際鉱物資源開発協力協会(1996)

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- 35 - セルビアモンテネグロ

床がある。

(1)ヘルシニアン鉱床生成期

この鉱床紀には様々な鉱床が生成したが、特に硫化物に富む鉱床が多い。東セルビア

鉱床区があり、ここには結晶質片岩が多く、この中の大理石、石灰岩が鉱床の母岩とし

て重要である。

ヘルシニアン鉱床生成期には、火成活動が盛んであった。輝緑岩が狭い地域に分布し

ている。これに伴われ、マンガン鉱床がある。花崗岩類は、東セルビアの広い範囲に分

布し、多くの小規模な鉱床が伴われる。

この鉱床期の鉱床には、スカルン鉱床(磁鉄鉱)、長石鉱脈鉱床、金-石英鉱脈鉱床、

タングステン鉱床、重晶石、螢石を伴う船・亜鉛鉱脈鉱床、ガブロ中のビスマス鉱物、

黄銅鉱、菱鉄鉱レンズがある。

(2)アルプス前期鉱床生成期

この鉱床期の重要な鉱床は、(a)堆積性鉱床、(b)マグマ活動に関連した鉱床である。

堆積性鉱床は、三畳紀上部から Callovian に至る時代に生成した鉄鉱床である。マグ

マ活動に関連した鉱床は、ジュラ紀上部/白亜紀前期のガブローペリドタイトコンプレ

ックスに伴うクロマイト鉱床である。

(3)アルプス鉱床生成期

この時代に生成した鉱床は、Ridanj-Krepoljin ゾーンと、Bor ゾーンという二つの大

きな構造帯に分布している。

a)Ridanj-Krepoljin ゾーン

このゾーンの幅は狭く(10~15km 以内)深部まで続く断層帯と中新世-漸新世のデイ

サイト-安山岩活動で特徴づけられる。

このゾーンには、スカルン磁鉄鉱鉱床、スカルン鉛・亜鉛鉱床、鉛・亜鉛・銀・(金)

熱水性交代鉱床、二畳紀の赤色砂岩中の銅鉱床がある。

b)Bor マグマコンプレックス

Albian から白亜紀上部火山岩、堆積岩より成るトラフと関係した鉱床がある。火山岩

の 90%は、火山性砕屑物より成る二つの火成活動期に噴出した。それらは、(a)前期の普

通輝石-角閃石安山岩、(b)安山岩-玄武岩アソシエイション(部分的にデイサイト、粗

面安山岩)である。

初生マグマは、上部マントルの玄武岩の 87Sr/86Sr より大きく、マントル起源のマグマ

への古い地殻岩石の混入を示している。ほとんどの貫入岩の時代は Laramide である。

この Bor マグマコンプレックスに伴われる鉱床として以下がある。

1-古生代後期の熱による沈み込み、2-三畳紀前期の熱ドーム、3-三畳紀中期の熱

による沈み込み、4-古生代後期の花崗岩類、5-三畳紀前期のハイブリッド火成活動、

6-三畳紀中期の火成活動(主にラディニアン);a-玄武岩類、b-ハイブリッド玄武岩

類、c-分化したハイブリッド玄武岩類.

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- 36 - セルビアモンテネグロ

第 2-8 図 Bor マグマコンプレックス中の鉱床分布

出典:国際鉱物資源開発協力協会(1996)

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- 37 - セルビアモンテネグロ

(a)ポーフィリーカッパー・モリブデン鉱床、(b)塊状硫化物交代性銅鉱床、(c)鉱脈型銅・

金鉱床、(d)少量のスカルン、熱水性鉛・亜鉛鉱床、(e)塊状黄鉄鉱鉱床。第 2-8 図にこ

れらの鉱床の分布を示した。

2-2. 火成活動、プレートテクトクニスと鉱床作用

Karamata(1977)により、ユーゴスラビアの鉱化作用と火成活動、及びプレートテクト

ニクスとの関係がまとめられているので、以下に紹介する。

古生代末に、大陸地殻が発達していたバルカン半島の西側に二つのプレートが存在し

ていた。一つは、現在の Dinarides(Dinaride マイクロプレート)の基底部で、もう一

つは、Serbo-Macednian マッシーフを含むカルパチアン-バルカナイドの基底部(東マイ

クロプレート)である(第 2-9 図)。

石炭紀に東マイクロプレートの基底に“熱キューポラ”が形成し、再生(パリンジェ

ニック)花崗岩マグマが発生した。これらのマグマが石炭紀-二畳紀に上昇し、東セル

ビア、Serbo-Macedonian マッシーフの花崗岩類を形成した。この花崗岩類に接触交代磁

鉄鉱鉱床、灰重石-金鉱脈鉱床、銅-ビスマス-ウラン鉱脈鉱床、鉛-亜鉛鉱脈鉱床が

伴われる。

第 2-9 図 古生代後期、三畳紀前期・中期の主な地質単位

出典:国際鉱物資源開発協力協会(1996)

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- 38 - セルビアモンテネグロ

白亜紀にこれらのマイクロプレートの上に浅海性の炭酸塩が堆積した。白亜紀前期に

マイクロプレートの西部が隆起し、白亜紀後期は変形を受けた隆起域で断層が生じた。

Dinaride プレートの進化は、東マイクロプレートとは異なっていた。三畳紀前期に上

部マントルの温度が上昇し、Crna Gora で断層が生じ、地殻深部でマグマが発生した。こ

のマグマから石英班岩、岩類、ケラトファイアー、石英ケラトファイアー、輝緑岩、ス

ピライト、アルバイト質花崗岩、石英閃緑岩、花崗閃緑岩が出来た。この地域のマグマ

活動は、三畳紀初期まで続いた。このマグマ活動に伴われ、Brskovo、Shuplya、Stena

といった熱水性鉛-亜鉛-銅-銀鉱床が生じた。

“熱キューポラ”が北西、南東へ移動し、三畳紀中期の岩石岩中に断層が生じた。こ

の断層に沿って、玄武岩質マグマ活動が起こった。Ladinian にこのマグマから珪長質ポ

ーフィリーが生じた。これらのマグマに伴われ大量の鉄、マンガン銅、亜鉛、バリウム、

少量の鉛鉱床が出来た。この例として、Vareš 鉱床、Čevljanović(マンガン)、Borovića

(銅、亜鉛、鉛、バリウム)があげられる。

その後、マグマの同化作用が進み、玢岩類が生成した。場所によっては、マグマは地

表まで達せず、貫入閃緑岩体(ガブローノライトまたは石英閃緑岩)となった。これら

の岩体と炭酸塩岩の接触部に磁鉄鉱鉱床(Mt.Radovdn)が生成した。

主なマグマとメタロジェニーの特徴が第 2-2 表にまとめてある。

三畳紀のマグマ活動により、水銀が地殻の上部へ濃集した。その後のマグマ(熱)の

影響で断層が開いたり、閉じたりした。例えば、Budva-Tsukali 地域のフィッシャー、

Bosnian Zrinska Gora の南東の断層、Palagonian ブロックとの西境界の断層が開いた。

Zvornik、Fruška、Šumadia の断層が南部の Vardar ゾーンまで延びた。

ジュラ紀前期、中期にこれらのリフト帯に典型的な海洋地殻が形成された。玄武岩に

伴われた銅鉱床(Povien、Varine)が生成した。超塩基性岩はクロム鉱床を伴う(Raduša、

Orašje、Brezovića)。ジュラ紀の終わりに、海洋地殻のサイズが小さくなった。これは、

北東マイクロプレートへ海洋地殻が沈み込むことで起こった。この後、Carpathan-Balkan

マイクロプレートの隆起が東へ移動した。白亜紀後期には、トラフ(海溝)がプレート

の隆起により生じた。この海溝は、現在のドヌーブ川の北部から東セルビアを通り、ブ

ルガリアの Sredna Gora まで続いている。その後、シリカとカリウムに富んだマグマ活

動が起こった。

東セレビアのマグマ活動(Timoćka コンプレックス)は、沈み込む海洋プレートの融解

で起こり、その後、大陸地殻を同化したマグマが生じた。初期のマグマ活動には、銅鉱

床(Bor、Gonaja Lina)が伴われている。その後の活動では、銅以外にモリブデン、稀

には亜鉛、鉛が伴われている。この例として、Majdanpek、Veliki Krioel のポーフィリ

ーカッパー鉱床があげられる。石灰岩との接触部では、亜鉛・鉛(銅)鉱床が生成した。

ジュラ紀の Dinarides に存在した海洋地殻は、ジュラ紀の終わりと白亜紀の始めに、

周りのユーゴスラビアの大陸ブロックに一部衝上断層によってのり上げた。これによっ

て、輝緑岩、スピライト中の銅鉱床、超塩基性岩のクロマイト鉱床が地表へもたらされ

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- 39 - セルビアモンテネグロ

テク

トニ

ック

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広域

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ソー

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鉱石

鉱物

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トル

と大

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境界

大陸

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上部

マン

トル

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立地

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境界

大陸

地殻

上部

マン

トル

と大

陸地

殻の

境界

マグ

マコ

ンプ

レッ

クス

花崗

閃緑

マグ

マの

火山

性-

貫入

コン

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ック

火山

性-

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崗閃

緑岩

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緑岩

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ライ

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ケラ

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アー

アソ

シエ

イシ

ョン

鉱床

タイ

熱水

性鉱

脈、

交代

性、

鉱染

ポー

フィ

リー

塊状

硫化

物、

ポー

フィ

リー

鉱脈

、ス

カル

塊状

硫化

マグ

マ性

塊状

硫化

鉱染

層状

鉱脈

、熱

スカ

ルン

熱水

性(

鉱脈

、層

状)

火山

性-

堆積

主な

金属

鉛-

亜鉛

、ス

カル

アン

チモ

ン、

鉄、

銅、

モリ

ブデ

ン、

金、

ビス

マス

銅、

モリ

ブデ

ン、

鉛-

亜鉛

、鉄

黄鉄

鉱-

クロ

ム、鉄

、チ

タン

黄鉄

鉱、

亜鉛

、銅

鉛、

水銀

、鉄

マン

ガン(

シリ

カ)、

鉛、

亜鉛

、銅

タン

グス

テン

、金

ウラ

ン、

鉄、

アン

チモ

ン、

モリ

ブデ

鉄、

マン

ガン

100万

30~

100~

50

170~

150

220~

200

350~

250

400

第2-2表

成岩

の岩

石学

、及

びメ

タロ

ジェ

ニー

の特

鉱床

生成

時期

後-

漸新

白亜

紀後

古第

三紀

ジュ

ラ紀

ジュ

ラ紀

中期

石炭

紀、

二畳

~石

炭紀

デボ

ン紀

以前

Page 42: 資源開発環境調査 セルビア・モンテネグロ Serbia …mric.jogmec.go.jp/public/report/2005-10/yugoslavia_05.pdf- 1 - セルビアモンテネグロ 第1部 資源開発環境調査

- 40 - セルビアモンテネグロ

た。海洋地殻地域が閉じることによって、Dinaride マイクロコンチネントがさらに隆起

し、それと同時に北東端が海洋性プレートと共に一部沈み込んだ。大陸ブロックの圧縮

により、温度が上昇し、パリジェニックマグマが発生、上昇した。そして、始新世後期、

中新世に安山岩-デイサイト、石英閃緑岩、ガブロ、中新世後期、第四期に、花崗閃緑

岩、石英モンゾナイトの活動が生じた。これらのマグマは、炭酸塩岩を混入し、アルカ

リ玄武岩が発生した。パリンジェニックマグマは、大陸地核上部に貫入した。この活動

は、Dinarides の北東、Serbian-Macedonia マッシーフの近くで起こった。

沈み込む花崗岩の融解により生じた花崗閃緑岩質マグマは、鉛、亜鉛、砒素、タング

ステン、ウラン、錫、銅、モリブデン鉱床をもたらした。これらの金属元素は、これら

の地域のヘルシニアン花崗岩類に特に濃集している。

第三紀のこの地域の貫入岩、噴出岩に伴われて鉛が濃集している。鉛-亜鉛-アンチ

モン鉱床生成区(Dinarides、Serbian-Macedonian マッシーフ)は、第三紀の花崗岩活動

に伴われ生成した。この例として、Srebenica、Veliki Majdan、Abala、Rudnik、Kopaonik、

Trepca、Ajbalia、Novo Brdo、Lece、Blagodat、Zletovo 鉱床及び Zajaca、Lisa、Bujanovac、

Alsar 地域のアンチモン鉱床をあげることが出来る。この鉱床生成区には、Mackatica の

モリブデン鉱化作用、Zletovo のウラン、Alsar のタリウム、Lojane、Bucim(マルセド

ニア)の銅、Tser-Bukulja ゾーンのウラン・ネオジム・タンタリウム鉱床があげられる。

ただし、この地域では、鉛-亜鉛-アンチモン鉱化作用が最も特徴的である。

次に、Jankovic(1997)により、Carpatho-Balkanides 鉱床区、その隣接鉱床区とチチス

ーユーラシア鉱床ベルトとの関係とプレートテクトニクスに基づく鉱床期と発達史が総

括されているので、以下で紹介する。

チチス-ユーラシア鉱床ベルト(TEMB)は、ユーラシアの南端、南にはアフリカアラ

ブプレート、インドプレートのある所で、中生代、及びそれ以降にチチス海で形成され

た。この TEMB は 10,000km の長さを持ち、これは、環太平洋ベルトの長さに匹敵する。

Carpatho-Balcanides は、アルプス期にチチス-パラチチス海の拡大と縮小に関係してで

きた。第 2-10 図には、地中海北東部の主なアルプス鉱床区とテクトニックセッティング

を示す。これらの地域の鉱床が以下のように分類された。

(a)大陸内のリフティングに関連した鉱床作用、

(b)海底拡大に関連した鉱床作用、

(c)沈み込みに関連した鉱床作用、

(d)衝突後の火成活動に関連した鉱床作用、

(1)大陸内のリフティングに関連した鉱床

二畳紀後期-三畳紀中期に、ゴンドワナ大陸の北端などに沿った大陸内のリフティング

に関連して鉱床が生成した。この鉱床タイプとして以下がある。

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- 41 - セルビアモンテネグロ

第2-10図 地中海北東部の主なアルプス鉱床区とテクトニックセッティング

(Jankovic,1997)

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- 42 - セルビアモンテネグロ

a.スカルン鉱床;鉄酸化物鉱床、

b.火山性・熱水性鉱床、火山性堆積性鉱床;重晶石-卑金属鉱床、鉛-亜鉛鉱脈、スト

ックワーク鉱、マンガン鉱床、

c.炭酸塩岩を母岩とする低温性の鉛-亜鉛鉱床、水銀鉱床、

(2)海底拡大に関連した鉱床

Dinarides のオフィオライトに関連した鉱床として以下がある。

a.クロマイト鉱床、b.Ni-Cu-Co 鉱床、c.チタン磁鉄鉱鉱床、d.火山性-堆積性鉱床(キ

プロス型黄鉄鉱・銅鉱床、層状鉄・マンガン鉱床)。

(3)プレートの沈み込みに関連した鉱床

ジュラ紀後期-白亜紀前期にチチス海が閉じてヨーロッパプラットフォームの下へ海

洋底が沈み込み、カルクアルカリ岩系及び局部的にアルカリ岩系の火成作用が生じた。

特に、Carpatho-Balkanides の西の島弧に沿って起こった。Laramian 火成岩類として、

Senonian 火山岩類と Campanian-暁新世深成岩、深成岩類がある。

北部の Pannonian マイクロプレートが、ヨーロッパ大陸プレートへ始新世後期-中新

世前期に衝突し、中新世中期(Badenian)に海洋地殻の沈み込みが始まった。

中新世後期-鮮新世前期に Carpathian の東部、西部でカルクアルカリ岩系の火成活動

が起こった。

プレートの沈み込みに関連した重要な鉱床として、以下がある。

a.スカルン鉱床;鉄、卑金属が主で、局部的にモリブデン、硼素を伴う。ルーマニアの

Banat が代表例である。

b.ポーフィリーカッパー鉱床;1950 年以降、いくつか発見された。例として、Majdanpek

(ユーゴスラビア)、Medet(ブルガリア)、Moldova(ルーマニア)、Recsk(ハンガリ

ー)があげられる。

c.火山性熱水性鉱床;カルクアルカリ岩系火成活動に完絵連した交代性鉱床である。

(4)衝突後の大陸-大陸セッティングの火成活動に関連した鉱床

Serbo-Macedonian-Central Anapolian 地域の鉱床生成区は、漸新世-中新世/鮮新世

のカルクアルカリコンプレックスの活動と関連している。Vardar-Izmir-Anlcara 海の閉

じた後の縫合帯に鉱床区が生成した。

海底からの塩水によって出来た鉱床(硼素鉱物、金-銀-鉛-亜鉛±アンチモン-砒

素-タリウムの熱水性-堆積性鉱床)。

オフィオライト上部で出来た鉱床(白金、金、銅)もある。

主な鉱床は、鉛-亜鉛、ウンチモンの鉱床である。Vardar ゾーンと Serbo-Macedonian

マッシーフという二つの異なるテクトニックブロックの境界部にポーフィリーカッパー

鉱床がある。

2-3. 代表的鉱床

以上、鉱床生成区と鉱床生成期の概略について述べたが、以下では各鉱生成区の個々

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- 43 - セルビアモンテネグロ

の代表的な金属鉱床について述べる。

2-3-1. 鉛・亜鉛鉱床

(1)Dinaric 鉱床区

この鉱床区の鉱床には、

1.火山性・堆積性塊状鉱床、

2.鉱脈鉱床、

3.層状鉱床、

がある。これらの鉱床は、主に中期三畳紀に生成した。その他にヘルシニアンの鉱床も

ある。

ヘルシニアンの鉱床の例として、中部スロバニアの Sava Folds の石炭紀の片岩、砂岩

中の小規模な鉱脈、レンズ状鉱床があげられる。例えば、Litija 鉱床(Plese;鉛、亜鉛、

バリウム、Knope;鉛、亜鉛、Knapovze;鉛、亜鉛、水銀)があるが、これは大変小規模

な鉱床である。

Mid-Bonian Schist 山脈に Lemernica(鉛、亜鉛、アンチモン、水銀)鉱床がある。こ

れは鉱脈鉱床で、鉱脈の幅は 0.3~3.0m である。鉱石は、1~6%亜鉛、0.5~15.0%ア

ンチモン、500g/トン銀、1%水銀を含む。

中期三畳紀には、

1.火山性・堆積性鉱床、

2.鉱脈鉱床、

3.石灰岩中の低温性鉱床、

4.炭酸塩岩中の鉱染状鉱床、

が生成した。

1の火山性・堆積性鉱床には、

(a)鉄炭酸塩鉱物を伴う鉛・亜鉛硫化物鉱床(Vareś 鉱床)、

(b)重晶石鉱床(例、Borovica、Veovaća)、

がある。

2は、ケラトファイア、斑岩類に伴われた破砕帯にみられる鉱床で、銅を伴う(例、

Šuplja Stijene、Konjuhe)。

3は、古生代の片岩中の塊状鉱床である。亜鉛、銅を伴うが、鉛は少ない。例として、

Montenegra(Murino-Visitor 山脈;Sestarevac)があげられる。

4は石灰岩中の細脈状の鉱床である。鉛、亜鉛の量は少ない。例として、西ボスニア

の Postenje、Tisovik、Zavlaka があげられる。ボスニアのこれらの鉱床は、Vares 地区と

Borovia 地区に存在する。

5の鉱床は、Vares 地区のドロマイト、石灰岩中にみられる層状、角レキ状、フィッシ

ャー状鉱床である。鉱石は、黄鉄鉱、方鉛鉱、少量の閃亜鉛鉱、ブーランジェ鉱、輝安

鉱、黄銅鉱、鶏冠石、辰砂(Veovaca)、重晶石、菱マンガン鉱、螢石、有機物より成る。

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- 44 - セルビアモンテネグロ

鉱石は、最大4%鉛品位、最大3%亜鉛品位である。この鉱床の例として、Maine があげ

られる。

Montenegro の北東部に重要な鉛・亜鉛鉱床がある。例として、Suplja、Stijena、Brskova

があげられる。Šuplja、Stijena 鉱床地域は、Ljubšnja 山脈の北麓部に位置する。1953

年に開山し、20 年間に 200 トンの鉱石が稼行された。鉱床は、鉱脈、ストックワークタ

イプで、北東-南西の走向を持ち、100~200m の幅にわたって1km 続く。鉱脈の幅は 0.3

~10m である。ケラトファイアーが母岩である。鉱脈の近くの母岩は、著しいカリ変質作

用を受けている。重要な鉱石鉱物は、黄鉄鉱、閃亜鉛鉱、方鉛鉱、少量の黄銅鉱、ヴァ

レリー鉱、黄錫鉱、白鉄鉱、四面銅鉱、黄鉄鉱、硫砒鉄鉱、磁硫鉄鉱、磁鉄鉱、赤鉄鉱

である。鉱石は、6~8%亜鉛、2~4%鉛、30%黄鉄鉱を含有する。

(2)Serbo-Macedonian 鉱床生成区

この鉱床生成区には、多くの鉛-亜鉛鉱床が存在している(第 2-11 図)。これらの多

くは、第三紀の花崗閃緑岩質の火山の火山性貫入岩体に伴われるスカルン、メソサーマ

ル、エピサーマル鉱床である。多くは、地表から 500m~1,500m の深度で開発されている

が、中には 1,500m より深いところで開発されているものもある。これらの鉱床中の鉱石

量は、多く、400 万トン以上の鉛・亜鉛を含んでいる。以下にこの鉱床区の重要な鉱床に

ついて記述する。

Srevnica

この鉱床は、Ljubovija の近くの東ギスニアの Drina 地域にある。年間の生産高は、

300,000 トンである。この地域は、主に古生代の岩石(千枚岩、粘板岩)より成り、これ

は、第三紀の安山岩、デイサイト、デイサイト質凝灰岩、古生代の片岩中の破砕帯中の

鉱脈鉱床である。鉱床ゾーンは数 km にわたっている。鉱脈は 30 以上ある。鉱脈と鉱化

帯の幅は、数 cm から 20~25m と変化する。

閃亜鉛鉱、方鉛鉱(4,000g/トンの銀を含む)、黄鉄鉱が重要な鉱石鉱物で、少量の

磁硫鉄鉱、硫砒鉄鉱、白鉄鉱、サフロ鉱(Safflorite)、ブーランジェ鉱、輝安鉱、濃

紅銀鉱、硫砒銅鉱、黄銅鉱を伴う。石英、菱鉄鉱、方解石が脈石鉱物である。鉱床の外

帯に輝安鉱、少量のベルチェ鉱、砒鉄鉱(lollingite)、白鉄鉱、黄銅鉱、しばしばマ

ンガン鉱(hubnerite)を含む石英脈がある。鉱石は平均鉛6%、亜鉛8%を含む。

Veliki Majdan

これは、Srebrnica 近くの小規模な鉛-亜鉛鉱床である。古生代石灰岩中または安山岩

-デイサイトと石灰岩、古生代片岩の境界部にみられる。鉱床は、交代鉱床で、パイプ

状、不規則な形態を呈する塊状鉱床である。鉱体の断面積は、20~2,000 ㎡である。主な

構成鉱物は、スカルン鉱物、磁鉄鉱、閃亜鉛鉱、ヴァレリー鉱、磁硫鉄鉱、黄銅鉱、方

鉛鉱、硫砒鉄鉱、四面銅鉱、毛鉱、ブーランジェ鉱、輝安銀鉱(miargyrite)、濃紅銀

鉱、plumosite、輝安鉱、辰砂、サフロ鉱である。脈石鉱物として、石英、方解石、重晶

石、菱鉄鉱である。鉱石は8%の亜鉛、4%の鉛を含む。

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- 45 - セルビアモンテネグロ

第 2-11 図 Serbo-Macedonian 鉱床生成区の主な鉱床ゾーン

(Janković,1990)

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- 46 - セルビアモンテネグロ

Rudnik

Rudnik 鉱床は、G.Milanovac の北東部の Sumadija 地域に位置している。鉱床は、白亜

紀下部の堆積物(石灰岩、頁岩、砂岩、礫岩)から成る Rudnik の白亜紀のベイズン中に

ある。鉱床から 300 万トンの鉱石が採掘されている。年間の採掘量は、160,000 トンであ

る。鉱石は3%の鉛、2.5%の亜鉛を含む。方鉛鉱精鉱は、0.33%銀、0.7%ビスマスを

含む。

スカルン鉱物として、アンドラダイト質ガーネット、ヘデンベルグ鉱、ディオプサイ

ド、scapolite、エピドート、アクチノライト、axinite、錫石、灰重石、磁鉄鉱、赤鉄

鉱、磁硫鉄鉱、硫砒鉄鉱、石英が主なものである。主な鉱石、鉱脈鉱物は、磁硫鉄鉱、

黄銅鉱、キューバ鉱、ヴァレリー鉱、閃亜鉛鉱、黄鉄鉱、breithanptite、maucherite、

linneite、millerite、クレンネル鉱、calaverite、ペッツ鉱、自然蒼鉛、車骨鉱、方鉛

鉱、白鉛鉱、重晶石、石英、方解石である。

Lece;700km2 の範囲に分布する大きな安山岩-デイサイト火山岩コンプレックス中にい

くつかの鉱床がみられる。その中で最も大きいのが、Lece 鉛-亜鉛-金鉱床である。鉱

床は鉱脈で、走向延長は2km である(第 2-12 図)。母岩中の鉱染状鉱床もある。

主な鉱石鉱物は、黄鉄鉱、閃亜鉛鉱、黄銅鉱、硫砒銅鉱、四面銅鉱、赤鉄鉱である。

石英、方解石、菱鉄鉱、アメシストが主な脈石鉱物である。鉱脈の鉱石は、2%鉛、4%

亜鉛を含有する。鉱染状鉱床は、鉛 1.2%、亜鉛3%を含む。

The Blagodat-Osogovo 地域

Blagodat-Osogovo 地域の 10~15km の長さの範囲に重要な鉛・亜鉛鉱床が分布している。

Blagodat 鉱山は、1975 年に開山し、年間 350,000 トンの鉱石を生産する。鉱床は、デ

イサイト-安山岩、花崗閃緑岩に貫入された結晶質片岩中に胚胎されている。鉱床は、

塊状鉱のレンズと鉱染状鉱より成る。

構成鉱物は、スカルン鉱物(ディオプサイド、ヘデンベルグ鉱、磁鉄鉱)と、熱水性

鉱物(閃亜鉛鉱、方鉛鉱、黄鉄鉱、少量の磁硫鉄鉱、キューバ鉱、黄銅鉱、tetrahedrite、

硫砒鉄鉱、自然金、lollingite、ブーランジェ鉱(jamesonite))より成る。塊状鉱は、

鉛3~7%、亜鉛6~13%を含む。

Sase-Tora ゾーン

Blagdat 鉱床ゾーンは、南東の Osogovo 山脈まで続いている。この山脈中に Sase 鉱床

がある。この鉱床は、1966 年に開山した。今までに 250 万トンの鉱石が採掘された。こ

の地域の地質は、Blagodat 地域に類似しており、デイサイト-安山岩に貫入された古生

代の片岩(大理石を含む)より成る。層状の鉱床レンズ、プレートがこの結晶片岩中に

ある。鉱体の厚さは、0.2~数 m である。スカルン鉱物は、アンドラダイト資ガーネット、

バスタム石、ヨハンゼナイト-ディオプサイト、珪灰鉄鉱、アクチノ閃石、磁鉄鉱、赤

鉄鉱である。鉱石鉱物、脈石鉱物は、黄鉄鉱、閃亜鉛鉱、方鉛鉱、少量の磁硫鉄鉱、黄

銅鉱、鉄-マンガン炭酸塩鉱物、白鉄鉱より成る。鉱石は、6%の鉛、4%の亜鉛を含

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第 2-12 図 Lece 鉛-亜鉛-金鉱床の鉱体(Pesut,1957)

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- 48 - セルビアモンテネグロ

む。

Zletovo

Zletovo は、最も重要な鉛・亜鉛鉱脈鉱床である。この鉱床は、Stip の 30km 北、Skoplje

から 60km 北に存在する。鉱床は、Rhodope シールドの外側に位置している。

Kratovo-Zletovo デイサイトストックに関係して生成した。

1929 年に開山し、約 700 万トンの鉱石が採掘された。年間鉱石採掘量は、300,000 ト

ンである。デイサイト-イグニンブライトと石英斑岩中の破砕帯に鉱床がみられる。14

の鉱脈が見つかっている。個々の鉱脈の走向延長は2~3km で、1~2m の幅(最大 5

~6m)である。方鉛鉱が最も多い鉱石鉱物である。この他に閃亜鉛鉱、黄鉄鉱、少量の

菱鉄鉱、四面銅鉱、黄銅鉱、磁硫鉄鉱、白鉄鉱、磁鉄鉱、franklinite、ヤコブ鉱、アラ

バンダイト、ヴァレリー鉱、赤鉄鉱、硫砒鉄鉱、斑銅鉱、硫砒銅鉱、ルソン銅鉱、輝銅

鉱、コベリン、淡紅銀鉱、車骨鉱、重晶石、石英、菱鉄鉱(マンガンを 17%含む)、鉱

石は、7.5%の鉛、2.5%の亜鉛を含有する。

Kopaonik 地域;

旧ユーゴスラビア諸国の鉛-亜鉛鉱床で最大の Trepca 鉱床がある。これは、セルビア

南部、Kosovska Mitrovica の近くの Kopaonik 山脈の南延長部に位置している。母岩は古

生代早期の Stari Trg シリーズで、千枚岩、珪岩、再結晶した石灰岩である。第三紀に

強い構造運動を受け、褶曲している。第三紀の火山岩は、粗面安山岩溶岩、凝灰岩であ

る。

年間の採掘鉱石量は、約 600,000 トンである。この鉱床は、古生代千枚岩/石灰岩と

石灰岩/火山性角礫パイプの境界に沿った石灰岩中に存在している。鉱床の上盤のフィ

ライト中に鉱脈もみられる。鉱体は、パイプ状で最も大きな鉱床が角礫パイプ中にある。

この角レキは、基盤岩と火山岩より成る。深部に行くと、小さなサイズのいくつかの鉢

体に分かれる。個々の鉱体の断面積は大きいもので 500~7,000 ㎡、小さなもので、50~

500 ㎡である。

鉱床はスカルンタイプである。スカルン期に生成した鉱物は、珪灰鉄鉱、ガーネット、

ヘデンベルグ輝石、アクチノ閃石、エピドート、磁鉄鉱、磁硫鉄鉱、黄鉄鉱で、しばし

ばブレッチャーパイプ中に黄銅鉱、硫砒銅鉱、硫砒鉄鉱がみられる。鉱石は塊状で、銀

を含む方鉛鉱、鉄を多く含む閃亜鉛鉱(12%以上の鉄を含む)、磁硫鉄鉱、黄鉄鉱、少

量の黄銅鉱、硫砒鉄鉱、輝安鉱、毛鉱、車骨鉱、plumosite から成る。脈石鉱物には石英、

炭酸塩鉱物(方解石、菱マンガン鉱、ドロマイト、菱鉄鉱、アラレ石、アンケライト)、

重晶石がある。石膏と少量の藍銀鉱が毛鉱と共に晶洞中にみられる。鉱石は、5~7%

の鉛、4%の亜鉛を含む。黄鉄鉱と磁硫鉄鉱が最も多く、鉱石の 50%以上含まれる。閃

亜鉛鉱は、1~2%のカドミウムを含む。同じ鉱床地域に経済的に重要な Mezica、

Meljenica、Zijaca 鉱床が存在する。

Belo Brdo(Kopaorik)

この鉱床は、Kopaonik 山脈の中央部 30km 北に位置している。第二次大戦前より採掘が

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- 49 - セルビアモンテネグロ

始まり、12%の鉛、亜鉛を含む 220 万トンの鉱石が生産された。鉱床の垂直的広がりは

500m を超える。鉱床は、白亜紀の石灰岩中のスカルン交代鉱床である。鉱床は不規則な

パイプ状を呈する。Trepea 鉱床と似ているが、角レキ部はない。スカルン期と熱水期に

鉱物が生成した。スカルン期には、ガーネット、珪灰鉄鉱、エピソード、アクチノ閃石、

珪灰石、ヘデンベルグ輝石、石英が生成した。熱水期には、閃亜鉛鉱(12%~14%FeS)、

方鉛鉱、磁硫鉄鉱、黄鉄鉱、黄銅鉱、自然蒼鉛、蒼鉛鉱、ガレノビスマタイト、テルル

蒼鉛鉱、自然金、キューバ鉱、赤鉄鉱、四面銅鉱、毛鉱、ブーランジェ鉱、少量の輝安

鉱から成る。鉱石は 8%鉛と亜鉛を含む。

Zuta Prlina

1971 年操業が始まり、年間約 100,000 トンの鉱石を生産している。

鉱体は、蛇紋岩中の破砕帯、蛇紋岩/デイサイト-安山岩沿い、または、デイサイト

-安山岩中にある。鉱脈状または不規則状を呈する。上部ではフィッシャー、鉱染状鉱

床へと移化する(第 2-13 図)。鉱体の厚さは、0.5~10m である。構成鉱物は、閃亜鉛鉱、

方鉛鉱、黄銅鉱、磁鉄鉱、黄鉄鉱、硫砒鉄鉱、四面銅鉱、輝銀鉱、車骨鉱から成る。少

量の自然金、リカルド鉱、falkmanite、淡紅銀鉱、脈石鉱物は、石灰と方解石である。

平均の2%の鉛、5%の亜鉛を含有する鉱石を産する。

Koporić

鉱床は、下盤の蛇紋岩と上盤の白亜紀上部のフリッシュ相の境界部の石英-炭酸塩岩

層中にみられる。鉱床は、最大 1.0m の厚さのレンズ、フィッシャー、不規則な層(厚さ

1.0~35.0m)である。ストックワーク-鉱染状タイプが最も多い。鉱石は、平均亜鉛1%、

鉛2%と低品位である。

Crnac

1966 年から操業し、年間の鉱石生産量は 100,000 トンである。

角閃岩中の鉱脈鉱床である(第 2-14 図)。脈幅は5m、垂直延長は 500m 以上である。

主な鉱石鉱物は、方鉛鉱、閃亜鉛鉱、黄鉄鉱、硫砒鉄鉱で、少量の黄銅鉱、四面銅鉱

を伴う。鉱石品位は、鉛7%、亜鉛2%である。

Ajvalija-Badovac-Kisnica 鉱床地域

この地域に Ajvalija-Badovac-Kisnica 鉱床がある。年間 600,000 トンの鉱石が採掘さ

れているが、品位は低い。1952 年以来、約 650 万トンの鉱石がこの地域から採掘された。

Ajvalija 鉱床は、石英-雲母片岩中の交代鉱床で、一部ストックワーク-鉱染タイプ

である。レンズ状鉱体は、数 m の厚さで、垂直延長 50~200m である(第 2-15 図)。鉱

石品位は、亜鉛6~7%、鉛4~5%、銀 70~100g/トンである。

Badovac 鉱床は、鉱脈状、レンズ状であり、蛇紋岩中、蛇紋岩/片岩の境界部沿い、ま

たは、蛇紋岩/デイサイト-安山岩境界に賦存している。

Kisnica 鉱床は、フラクチャーや蛇紋岩中の熱水変質帯、または蛇紋岩/白亜紀フリッ

シュ境界沿いに主にみられるが、一部はストックワークタイプとして、フリッシュ層中

にみられる。

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- 50 - セルビアモンテネグロ

鉱床地域は、250m の幅で、1.3km の長さに渡っている。個々の魂状レンズは、最長 100m、

最大 20km の幅を持つ。ストックワークタイプの鉱床は 3,000 ㎡の範囲で稼業された。レ

ンズ状鉱体は平均 5%の鉛、1.5%の亜鉛、ストックワークタイプは 2.4%の鉛、1.2%の

亜鉛を含有する。

第 2-13 図 Zuta Prlina 鉛-亜鉛鉱床の断面図

出典:国際鉱物資源開発協力協会(1996)

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- 51 - セルビアモンテネグロ

第 2-14 図 Crnac 鉛-亜鉛鉱床の断面図

出典:国際鉱物資源開発協力協会(1996)

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- 52 - セルビアモンテネグロ

第 2-15 図 Ajvalija 鉱床の鉛-亜鉛鉱体の分布

出典:国際鉱物資源開発協力協会(1996)

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- 53 - セルビアモンテネグロ

構成鉱石鉱物は、方鉛鉱、閃亜鉛鉱、黄銅鉱、少量の磁硫鉄鉱、磁鉄鉱、黄銅鉱、

chalcopyrrhotite、キューバ鉱、ヴァレリー鉱、黄錫鉱、硫砒鉄鉱、四面銅鉱、カラベ

ラス鉱、クレンネル鉱、自然金、車骨鉱、砒鉄鉱、輝安鉱、franklinite、コベリン、白

鉄鉱、である。脈石鉱物は、菱鉄鉱、石英、マンガン菱鉄鉱、菱マンガン鉱、マンガン

方解石、重晶石、カルセドニーである。

この鉱床の閃亜鉛鉱、方鉛鉱中にあるカドミウムとマンガン含量が Dangic(1985)に

より測られ、これらの分配から 438℃~486℃という生成温度が推定されている。この推

定温度は、流体包有物の充填温度とほぼ一致している。

Novo Brdo;

この地域は南部セルビアにあり、Kosovo Polje と Morava River Valley の間の Priština

の南東部に位置する。Trepća からは 60km 離れている。

この地域の地質は比較的単純で、大きな石灰岩体が千枚岩と石英-絹雲母片岩に覆わ

れている。これらは古生代の岩石で、これが第三紀の安山岩に貫入され、この時に鉱床

が生成した。そして石灰岩と片岩が褶曲し、背斜、向斜構造をつくった。この軸部の走

向は北西-南東で、これは Dinaric の方向である。

Novo Brdo 鉱床地域には多くの鉱床があるが、稼行中の鉱床は Novo Brdo と Farbani

Potok である。今までに、これらの鉱山から平均品位 9.5~13.3%(鉛+亜鉛)100 万ト

ンの鉱石が採掘された。

両鉱床とも石灰岩中の交代性鉱床である。

Farbani Potok では、鉱床を胚胎する石灰岩はフィライトと互層する。レンズ状鉱体は

走向延長 300~400m である。

主なスカルン鉱物はガーネットである。主な鉱石鉱物は、閃亜鉛鉱、方鉛鉱、磁硫鉄

鉱、黄銅鉱、少量の硫砒鉄鉱、plunosite、黄銅鉱、白鉄鉱である。脈石鉱物は菱鉄鉱、

ハロイサイトである。

Novo Brdo は、片岩/石灰岩、デイサイト/石灰岩境界部沿いの石灰岩中見られる。鉱

石は1~5%の鉛、1~8%の亜鉛、100g/トンの銀を含有する。

マンガン-鉄炭酸塩の大きな鉱体があり、これが二次富化作用を受け、マンガン鉱が

濃集している。主なマンガン鉱石鉱物は、軟マンガン鉱、chalcophanite、polianite、

coronadite、鉛-亜鉛炭酸塩である。鉱石は 20.2%のマンガン、13%の鉄、1.1%の鉛、

3.07%の亜鉛、4g/トンの銀、19%のシリカを含有する。

(3)Carpatho-Balkan 鉱床生成区(東セルビア)

東セルビアには、非常に多くの小さな鉛・亜鉛鉱床がある。これらは、ヘルシニアン

花崗岩に関連した鉱脈、レンズ状鉱床で、花崗岩体の外側の古生代の片岩中に存在する。

主な鉱石鉱物は、方鉛鉱、閃亜鉛鉱、黄鉄鉱で、しばしば硫砒鉄鉱、硫塩鉱物を随伴す

る。脈石鉱物は石英で、少量の重晶石、螢石を伴う。

アルプス鉱床生成期には、スカルン鉱床、石灰岩の交代鉱床が生成した。

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- 54 - セルビアモンテネグロ

Rescovica 鉱床では、スカルン鉱物以外に閃亜鉛鉱、少量の方鉛鉱、黄銅鉱、磁鉄鉱、

部分的にビスマス鉱物(コサライト他)、輝蒼鉛鉱、灰重石が見られる。

デイサイト-安山岩境界部の Tithonian-Valanginian 石灰岩中に小さなレンズ状、塊

状鉱床(Kucajna)がある。構成鉱物は、方鉛鉱、閃亜鉛鉱、黄鉄鉱、少量の四面銅鉱、黄

銅鉱、硫砒鉄鉱、自然銀、輝銀鉱、dyscrasite、濃紅銀鉱、ポリバス鉱、車骨鉱、ブー

ランジェ鉱、毛鉱、ベルチェ鉱、chalcostibite、自然金である。塊状鉱は、最大 15%の

鉛、20%の亜鉛、400~600g/トンの銀、100g/の金を含む。

2-3-2.銅

銅の産出は、鉛、亜鉛に比べて多くはない。鉛・亜鉛鉱床(スカルン、鉱脈鉱床)に

伴われた銅があるが、この量は少ない。ポーフィリーカッパー鉱床、砂岩型層状鉱床が

いくつかあるので、これらについて以下で紹介する。銅鉱床として、この他にマグマ性

銅-ニッケル鉱床がある。

ここでも Jankovic(1982)にならって、各鉱床生成区における銅鉱床について述べる。

(1)Dinaric 鉱床生成区

Dinarides 地域に、二畳紀の砂岩中の層状銅鉱床がある。しかし量的には少ない。Skofj

鉱床は、上部二畳紀の石灰岩とドロマイトに覆われた二畳紀の Grodene 砂岩中に存在す

る。個々のレンズ状鋼体は数 100m の長さ、0.4~4m の厚さを持つ。構成鉱物は斑銅鉱、

黄銅鉱、輝銅鉱、少量の菱鉄鉱である。

Inner Dinaridesと Hellenidesにジュラ紀の輝緑岩-チャート相が多く広がっている。

ここに、多くの小さな銅鉱床(Lajkovaca、Zlatar、Cavka、Varine、Taorska Recca)が

ある。これらは火山性鉱床で、塩基性火山活動と関連している。構成鉱物は単純で、黄

銅鉱と黄鉄鉱が主な鉱物である。磁鉄鉱、磁硫鉄鉱、閃亜鉛鉱、ペントランド鉱が随伴

鉱物である。

鉱石は鉱染鉱と塊状鉱に分けることが出来る。2~3km の長さ、10~100m の幅に渡っ

た角礫ゾーンに鉱染鉱がある。鉱石鉱物は主として黄銅鉱である。低品位鉱で、0.02~

0.5%の銅を含む。ただし、部分的には1~15%の銅品位となる。塊状鉱は高品位で、平

均品位2~4%、部分的に8~10%銅品位である。これはレンズ状、不規則状の小さな

鉱体である。

Lajkovača 鉱床

この鉱床地域は西セルビアに属する。熱水変質作用を受けた輝緑岩中の鉱染状銅鉱床

で、1,200m の長さ、20~150m の幅を持つ。

鉱染状鉱の品位は最大 0.5%と低い。レンズ状、鉱脈部の品位は6~8%と高い所もあ

り、平均品位は1~2%である。黄鉄鉱の品位は高い。金の品位は普通1g/トン以下で

ある。

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- 55 - セルビアモンテネグロ

(2)Serbo-Macedonian 鉱床生成区

ヘルシニアン鉱床生成期には銅の鉱化作用は認められない。アルプス早期鉱床生成期

に銅鉱床が生成している。

この生成区に Bucim、Borova Glava から、ギリシャの Vathi、Pontokerasina、Scouries、

Chalkidiki までの 250km に渡って、ポーフィリーカッパー鉱床が分布している。これは、

第三紀の流紋岩-安山岩-デイサイト火山活動、または花崗閃緑岩の貫入に関係して生

成した。

(3)Carpatho-Balkan 鉱床区(東セルビア)

この鉱床区は、ブルガリア、ルーマニアの国境近くの東セルビアにある(第 2-16 図)。

早期アルパイン鉱床生成期(Albian-白亜紀後期)に生成したポーフィリーカッパー鉱

床がある。これは、Bor マグマコンプレックスに伴われる。このマグマコンプレックスの

90%は、火山性砕屑物である。二つの重要な火山活動がある。すなわち、(a)前期活動、

これは、普通輝石-ホルンブレンド安山岩質砕屑物(角礫岩、凝灰岩)、(b)安山岩-玄

武岩アソシエイション(ホルンブレンド安山岩、局部的にデイサイト、粗面安山岩)貫

入岩体は、閃緑岩、ガブロ、花崗閃緑岩、石英モンゾナイト、石英閃緑岩である。岩脈

は、ほとんど石英閃緑斑岩である。これらの 87Sr/86Sr は、モンゾナイト:0.710、閃緑

岩 0.714、石英閃緑岩:0.712 である。このことは、上部マントル物質と古い大陸地殻の

同化を意味している。

K-Ar 年代は、100m.y.~60m.y.である。この Bor マグマコンプレックスには、ポーフィ

リーカッパー鉱床、塊状交代性銅鉱床、銅鉱脈鉱床が伴われる。第 2-17 図にこれらの鉱

床の分布を示した。

ポーフィリーカッパー鉱床

ポーフィリーカッパー鉱床は、安山岩質東セルビアバソリスにある。硫化物の硫黄同

位体組成(δ34S)は0%。に近く、このことは、銅が上部マントルからきたことを意味

しているのだろう。

Majdanpelc 鉱床

この鉱床地域は、Algonkian 変成岩(雲母片岩、フィライト、片麻岩、大理石)、中生

代礫岩、砂岩、石灰岩、フリッシュ(これらは火成岩コンプレックスに貫入されている)

から構成されている。Senonian 火成岩は、安山岩、凝灰岩、デイサイトで、深成岩貫入

岩体は、閃緑岩、石英閃緑斑岩である。

ポーフィリーカッパー鉱床は、安山岩、閃緑岩、片麻岩中の狭い幅(0.3~0.6km)の

フラクチャーゾーン中にある。黄銅鉱が主な鉱石鉱物で、斑銅鉱、tetrahedrite が伴わ

れる。輝蒼鉛鉱も多い。熱水変質はカリ変質で特徴づけられる。珪化、黒雲母化、セリ

サイト化変質作用が見られる。鉱化作用は 1,000m の深さに渡って見られる。一年の生産

鉱石量は 36,000 トンである。

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- 56 - セルビアモンテネグロ

Veliki Krivelj 鉱床

この鉱床は、Bor から7km 離れた所に位置している。熱水変質は、中心から外側に向

かって黒雲母帯、セリサイト帯、粘土化帯、珪化帯となっている。

黒雲母帯で銅品位、モリブデン品位、共に高い。石膏と硬石膏が広い範囲に見られる。

主な鉱石鉱物は黄銅鉱、輝蒼鉛鉱、黄鉄鉱で、部分的に磁鉄鉱、赤鉄鉱、灰重石、螢石

が見られる。垂直延長は、1,000m 以上である。平均銅品位は 0.4%である。

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- 57 - セルビアモンテネグロ

第 2-16 図 白亜紀後期-古第三紀の火成岩、鉱床と Carpathians

出典:国際鉱物資源開発協力協会(1996)

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- 58 - セルビアモンテネグロ

Valja strž-Dumitru Potok 鉱床

Valja Strz モンゾナイトコンプレックスの近くに、大変大きいが低品位のポーフィリ

ーカッパー鉱床がある。鉱床は、熱水変質を受けた安山岩とモンゾナイトに伴われる。

中心から外側にかけて、黒雲母帯、粘土化帯、緑泥石帯、黄鉄鉱帯となっている。珪化

作用は広い範囲に渡って見られる。黄銅鉱、黄鉄鉱、輝蒼鉛鉱が主な鉱石鉱物で、少量

の方鉛鉱、閃亜鉛鉱が見られる。磁鉄鉱の量は多い(2~3%)。銅の品位は 0.2~0.3%

である。

交代性塊状銅鉱床

Bor マグマコンプレックスにこの種の鉱床(Bor 鉱床と Lipa 鉱床)が見られる。

Bor 鉱床

Bor 鉱山は 1903 年に操業が始まり、200 万トンの銅が生産された。年間の鉱石採掘量

は 200 万トンである。年間黄鉄鉱の採掘量は 400,000~500,000 トンである。

いくつかの大きな鉱体が熱水変質を受けた安山岩中に胚胎されている。強粘土化変質

が、主な熱水変質である。鉱石は部分的に塊状だが、一部は鉱染状-ストックワークで

ある。鉱石は1~2%銅、最大4g 金/トン、最大 10g 銀/トンを含有する。この他にゲ

ルマニウム、セレン、ニッケル、白金が含まれる。鉱石鉱物は、黄鉄鉱(鉱石中の 50%

以上)、斑銅鉱、硫砒銅鉱、黄銅鉱、輝銅鉱、コベリン、ルソン銅鉱、少量の閃亜鉛鉱、

方鉛鉱、四面銅鉱である。鉱床は交代タイプである。この下部にポーフィリーカッパー

鉱床が存在している。(第 2-17 図)

この Bor 地域の銅鉱床については Jankovic(1990)による詳しい報告があるので以下

で、紹介する。

-----------------------------------------------------------

(Bor 地域の銅鉱床について)

ここは、チチス・ヨーロッパ鉱床生成区の一部である(第 8-20 図)。ここでは、80km

の長さ、20km の幅に渡って多くの銅鉱床が存在している。ここの地域の銅埋蔵量は、

15,000 万トンと多大である。

これらの鉱床は、カルクアルカリ岩系火成活動と関連し生成した。火成活動は、

Turomian に始まり、第三紀まで(90~60m.y.)続いた。火山岩類は、主に安山岩とその

火砕岩である。少量のデイサイトを伴う。これらの火山岩類は、頁岩、凝灰岩に貫入し

ている。一部浅性堆積層も認められる。

Hypabyssal 岩類は、サイエナイト、モンゾナイト、花崗閃緑岩、石英閃緑岩、閃緑岩、

ガブロから成る。モンゾナイトが最も多い。

この地域の重要な銅鉱床は、以下のタイプである。

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- 59 - セルビアモンテネグロ

第 2-17 図 Bor 地域の主な銅鉱床とタイプ

出典:国際鉱物資源開発協力協会(1996)

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- 60 - セルビアモンテネグロ

第2-18図

チス

-ユ

ーラ

シア

鉱床

ベル

ト:

中央

部と

東部

セグ

メン

ト.

中央

部と

西部

セグ

メン

(Jankovic and Petraschenk, 1987)

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- 61 - セルビアモンテネグロ

1.火山性塊状鉱床、

2.ポーフィリーカッパー鉱床、

3.礫岩型鉱床

火山性塊状鉱床

これは、火山性銅硫化(黄鉄鉱)鉱床と火山性塊状多金属鉱床に分けられる。

火山性銅硫化鉱床

この種の鉱床の母岩は安山岩である。この鉱床(Bor 鉱床)は、5km の長さ、1km の

幅に見られる。地表から800mの深部まで存在し、ポーフィリーカッパー鉱床へ移化する。

鉱床は、地域的に北西部(Brezanik)、中央部(Tilva Ros-Rosh、Tilva Mika、Cka/Choka

Dulkan a.a.)に分けられる。最も重要なのは中央部の鉱体である。鉱体は主としてパイ

プで、鉱化は破砕帯と火山角礫岩に見られる。この鉱化作用は、火山の中心で起こった

のであろう。すなわち、Tilva rosh の周りを放射状に囲んでいる。主な変質は、珪化と

強粘土化変質であり、中央部鉱床の上部に見られる。カオリン化もしばしば見られる。

鉱化作用は、塊状、ストックワーク上、鉱染状、鉱脈状として見られる。

塊状鉱は高品位で、黄鉄鉱(60~70%)と銅鉱物(輝銅鉱、コベリン、硫砒銅鉱)よ

りなり、銅含有量は3~6%である。この塊状鉱は、深部及び周縁部でストックワーク

タイプへ移化する。中央下部では、鉱染状タイプが最も普遍的である。Novo Brdo、Leze

鉛・亜鉛鉱床中に金が多く含まれている。銀は鉛・亜鉛鉱床中に含まれていることがあ

る。Trepea の鉱石からは、1930~1950 年代に 100 万トン以上の銀が生産された。

Dinarides 地域の Montenagro 北東部の Brskovo 鉱床(鉛・亜鉛鉱脈)には、多くの銀

が含まれている。

鉱石鉱物として黄鉄鉱が最も多く、この他に白鉄鉱、コベリン、硫砒銅鉱、輝銅鉱、

斑銅鉱、黄銅鉱、四面銅鉱、sulvanite、ゲルマニウム-sulvanite、タングステン-ゲ

ルマニウム-sulvanite、砒素-sulvanite、タングステン-germanite、自然金がある。

方鉛鉱と閃亜鉛鉱は少量で局部的に産する。赤鉄鉱が上部で見られる。主な脈石鉱物は

石英で、重晶石が少量ある。硬石膏、自然硫黄は広い範囲で分布する。

火山性塊状多金属鉱床

この種の鉱床は、白亜紀上部の安山岩-デイサイト中に見られる。このタイプの例と

して、Cka/Choka Marin 鉱床があげられる。鉱床の上盤は、赤鉄鉱の鉱染の見られる火山

岩、堆積岩類で、下盤は、変質を受けた安山岩である。黄鉄鉱化、粘土化、緑泥石化、

珪化作用が見られる。強粘土化変質(明盤石、ダイヤスポア、セリサイト)が、鉱床作

用に関係していると考えられている。

鉱石鉱物は、黄鉄鉱、少量の磁硫鉄鉱、白鉄鉱、硫砒銅鉱、ルソン銅鉱、黄銅鉱、斑

銅鉱、閃亜鉛鉱、方鉛鉱、銅-アンチモン硫酸塩である。自然金も多い。黄錫鉱、錫石、

brovoite も少量認められる。主な脈石鉱物は石灰で、少量の重晶石、硬石膏、菱鉄鉱、

カルサイト、稀に螢石を伴う。黄鉄鉱-銅鉱物、黄鉄鉱-閃亜鉛鉱±方鉛鉱±黄銅鉱-

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- 62 - セルビアモンテネグロ

重晶石の組み合わせがゾーニングをつくっている。

鉱石は、塊状鉱、ストックワーク鉱、鉱染状鉱に分けられる。塊状鉱の品位は、1~

3%銅、5~8%亜鉛、1%鉛である。金の品位は5~10g/トンで、20g/トンを超え

ることもある。

ポーフィリーカッパー鉱床

Bor 地区では二つの鉱床が稼業されており(Majdanpek、Veliki Krivelj)、六つの鉱

床が探鉱中である(Borska Reka、Borski Potek、Cerva、Mali Krivelj、Valja Strz/Strzh、

Dumutru Potek)。

この地域の鉱床の特徴は、以下のようにまとめることが出来る。

1)マグマの貫入の深さと初生マグマ

カルクアルカリマグマのキューポラゾーンの上の火山底性貫入岩体に鉱化が見られる。

銅量は数 100 万トンと多量なので、深部のマグマ貫入岩体から銅が供給されたのであろ

う。

2)形とサイズ

色々な形とサイズを持つ。例えば、Majdanpek では、断層帯に沿って分布している。

Veliki krivelj、Cerova の水平断面は卵形である垂直的には数 100m から 1,500m の距離

に渡って鉱化が認められる。

3)変質-鉱化作用

カリ変質が全ての鉱床で見られる。これをセリサイト変質が取り囲み(Veliki Krivelj)、

その外側をプロピライト変質が取り囲む。局部的にスカルンが見られる。珪化作用もよ

く見られる。鉱床(Borska Reka)の上部で、強粘土化と珪化変質が発達している。

4)塊状鉱床との関係

塊状鉱床の下部にポーフィリーカッパー鉱床が存在している。例えば、Borska Reka

下部では、ポーフィリーカッパー鉱床が安山岩中にあり、石英閃緑斑岩により切られて

いる。このポーフィリーカッパー鉱床は、Tiloa Rosh 鉱体の 350~400m 下部に存在して

いる。

Borska Reka 鉱床、Borski Potok 鉱床の最上部に小さなパッチ状の塊状硫化物鉱体が

ある。Majdanpek ポーフィリーカッパー鉱床の最上部に、低品位の銅を含む小さな塊状の

黄鉄鉱鉱体がある。

5)鉱物組み合わせ

黄鉄鉱と黄銅鉱が最も多い。黄鉄鉱が中心に多く、外側に黄銅鉱が多い。輝蒼鉛鉱は

少量である。レニウムを多く含む(Majdanpek で最大 3,000ppm)ことがある。斑銅鉱、

硫砒銅鉱、磁硫鉄鉱がしばしば見られる。磁鉄鉱の含有量は1~3%である。

世界の他のポーフィリーカッパー鉱床に比べると、比較的低品位(0.4%以下銅)であ

る。金品位は低い。鉱石中のモリブデン含量は、150ppm 以下である。少量のカルサイト、

重晶石が伴われる。

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- 63 - セルビアモンテネグロ

>>Cementacija<<鉱床を除いて、二次富化帯は薄い(Majdanpek で 20~30m)。

礫石タイプ銅鉱床

Novo Okno 鉱床は、1978 年に発見され、1983 年に操業が開始された。これは、小さな

堆積盆に集積した鉱石のフラグメントから成る鉱床である。

鉱石は、火山爆発によりNovo Okno近くにたまって出来たと考えられている。長さ300m、

幅 200m の低地部にたまった。鉱体は、鉱石のフラグメント、クラスト、黄鉄鉱と黄銅鉱

の鉱染を受けた安山岩のフラグメントから成り、ぺライトと安山岩に覆われている。

二つの鉱石タイプが認められる。これらは、

(1)黄鉄鉱-硫砒銅鉱-コベリン-輝銅鉱から成る鉱石クラスト、及び、

(2)斑銅鉱-黄銅鉱±黄鉄鉱を含む鉱石クラスト、

(1)の鉱石帯が(2)の鉱石帯の下部にある。

この鉱床は、セノニアン前期の火山性塊状鉱床である。

-----------------------------------------------------------------

2-3-3.金・銀鉱床

ユーゴスラビアには大きな金鉱床はないが、鉱脈鉱床、スカルン鉱床、ポーフィリー

カッパー鉱床に金が伴われることがある。

金を伴う鉱床の例として、Serbo-Macedonian 鉱床区の Lece 鉛・亜鉛鉱床(鉱脈、鉱染

タイプ)、Novo Brdo(石灰岩中の交代鉱床で鉛・亜鉛を主に産す)、Carpatho-Balkan

鉱床区の Alpine 鉱床生成期の石英・金鉱床があげられる。Carpatho-Balkan 鉱床区の鉱

床の例として、Nereshica 鉱床があげられる。Nereshica 花崗岩の端に多くの石英-金鉱

脈鉱床と漂砂鉱床がある。鉱脈鉱床は緑泥石片岩中にあり、0.2~5.0m の幅を持つ。構成

鉱物は、自然金、黄鉄鉱、灰重石、閃亜鉛鉱、方鉛鉱、pyrargyrite である。金品位は、

3~40g/トンである。この他に Kucajno 塊状鉛・亜鉛鉱床は、100g/トンの金を含むこ

とがある。

NovoBrde、Leze 鉛・亜鉛鉱床中に金が多く含まれている。銀は、鉛・亜鉛鉱床中に含

まれることがある。Trepea の鉱石からは、1930~1950 年間に 100 万トン以上の銀が生産

された。Dinarides 地域の Montenegro 北東部の Brskovo 鉱床(鉛・亜鉛鉱脈)には多く

の銀が含まれている。

2-3-4.水銀

ユーゴスラビアは、多くの水銀を産する。しかし、一般的には経済的価値はない。

辰砂が主な鉱石鉱物で、アンチモンと砒素の鉱石を伴う。

Serbo-Macedonian 鉱床生成区の Sumadija 地区にいくつかの水銀鉱床がある。その例

として、Suplja Stena 鉱床があげられる。この小さな鉱床は、ベオグラードの 15km 南に

ある。熱水変質を受けた蛇紋岩中に鉱染状、ストックワークとして見られる。各々の鉱

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- 64 - セルビアモンテネグロ

体、レンズ、脈の幅は 1.0m 未満で、10~20m の長さである。鉱石鉱物は辰砂で、この他

に黄鉄鉱、白鉄鉱、閃亜鉛鉱、黄銅鉱が伴われる。石英が主な脈石鉱物である。鉱石は

0.2~1.0%の水銀を含む。この鉱床は、アルパインタイプの鉛・亜鉛鉱床である。

ベオグラード近くの Avala 山の辰砂鉱床は、第三紀の火成活動に伴われる。

Sümamdija 地域

Serbo-Macedonian 鉱床生成区の Sümamdija 地域に水銀鉱床がある。これは、アルパイ

ン鉱床生成期に出来たものである。これらの鉱床の形成は蛇紋岩と関連している。

Šuplja Stena 鉱床

この小さな鉱床は、ベオグラードの 15km 南に位置する。熱水変質を受けた破砕帯中に

鉱染、ストックワークとして見られる。個々のレンズ状鉱体や鉱脈は、1.0m の幅、10~

20m の長さを持ち、鉱床帯に不規則に分布している。

辰砂が主な鉱石鉱物で、これに黄鉄鉱、白鉄鉱、閃亜鉛鉱、黄銅鉱が随伴する。石英

が主な脈石鉱物である。鉱石の品位は、水銀 0.2~1.0%である。

2-3-5.アンチモン

旧ユーゴスラビアには多くのアンチモン鉱床があり、埋蔵量も多い(第 2-3 表)。鉱

床は、ギスニア、セルビア、マケドニアに分布し、ギリシャの国境まで分布している。

ボスニアの鉱床は、Sarajevo の西に位置する。この中で最も大きいのが、Fojnica 近く

の Cemernica 鉱脈鉱床である。最も重要な鉱床は、西サラエボの Drina 地区の鉱床であ

る。これらの鉱床は、ギリシャ国境近くまで分布している。

アンチモン鉱床は、鉱物組み合わせにより以下のように分類される。

(a)主に輝安鉱だけからなる鉱床

例として、Lisa、Takovo、Bujanobac、Zajaca 鉱床の一部、Crni Vrh があげられる。

(b)輝安鉱が主だが、複雑な鉱物組み合わせを持つ鉱床

砒素、少量の水銀、稀にタングステン鉱物を持つ鉱床である。例として、Lojane、Alsar、

Osanica があげられる。

(c)アンチモン以外の金属元素を伴う多金属鉱床

特に鉛、亜鉛、銅、鉄、砒素を伴う。アンチモン鉱物は、輝安鉱及び硫塩鉱物として

産する。Kopaonic の Rajiceva Gora、Rujevac、Alsar、Lojane がこの種の鉱床である。

Rajiceva Gora、Rujevac、Alsar、Lojane 鉱床の埋蔵鉱量は多大で、現在探鉱中、開発中

である。以下に代表的な鉱床をあげる。

(1)Zajača 地域の鉱床

ここの鉱床が旧ユーゴスラビアで最も多くのアンチモンを産している。1890 年以来、

70,000 トンのアンチモンを産した。

鉱化作用は主として、古生代片岩との境界部に沿った石炭紀の石炭岩中に見られる。

レンズ、不規則状鉱床が強い珪化を受けた石灰岩中に見られる。厚さは3~12m である。

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- 65 - セルビアモンテネグロ

Zajace

Bujanovac

Golija

Krstov Do

Lojane

Alsar

Kovac

Hrmza

Cemernica

Rujevac

(Zajaca)

Rajiceva

Tanda

Osanica

時代

第三

第三

第三

三畳

二畳

三畳

(?)

第三

第三

Gora

ルシ

ルシ

変質

Sil

Arg

Sil

Arg

Sil

Sil

Sil

Sil

Sil

Sil

Sil

母岩

Lim

Lim, Gr

sns

Amph

Serp

安山

ロマ

イト

Lim

sch

sch

Lim

sch

Serp

Gr

sch

タイ

R

鉱脈

Imr

鉱脈

鉱脈

R

R

鉱脈

鉱脈

Impr

鉱脈

Impr

鉱脈

鉱脈

脈石

鉱物

石英

カル

サイ

重晶

石英

ドロ

マイ

石英

ドロ

マイ

石英

重晶

石英

重晶

カル

セド

石英

石英

石英

石英

鉱物

組合

輝安

鉱、

黄鉄

鉱、

硫砒

鉄鉱

、閃

亜鉛

鉱、

白鉄

鉱、

方鉛

輝安

鉱、

ベル

チェ

鉱、

黄鉄

輝安

鉱、

鶏冠

石、

雄黄

、白

鉄鉱

ブラ

ボア

イト

、ヴ

ェー

サイ

ト、ピ

ッチ

ブレ

ンド

輝安

鉱、

鶏冠

石、

雄黄

、黄

鉄鉱

、白

鉄鉱

硫黄

、lorandite、

vrbate、

硫砒

鉄鉱

輝安

鉱、

黄鉄

鉱、

辰砂

、白

鉄鉱

輝安

鉱、

閃亜

鉛鉱

、黄

鉄鉱

鉛-

アン

チモ

ン硫

塩、

辰砂

、硫

砒鉄

鉱、

白金

鉱、

鉄重

石、

四面

銅鉱

、菱

鉄鉱

鶏冠

石、

黄銅

鉱、

金、

輝安

鉱、

閃亜

鉛鉱

、方

鉛鉱

、鶏

冠石

硫砒

鉄鉱

、鉛

-亜

鉛硫

閃亜

鉛鉱

、方

鉛鉱

輝安

鉱、

鉛-

アン

チモ

ン硫

輝安

鉱、

紀銅

鉱、

輝蒼

鉛鉱

、黄

鉄鉱

灰重

輝安

鉱、

鉄重

石、

黄鉄

鉱、

灰重

石、

白鉄

第2-4表

ユー

ゴス

ラビ

ア諸

国の

アン

チモ

ン鉱

床で

の鉱

物組

合せ

金属

元素

アン

チモ

アン

チモ

ン-

砒素

-ニ

ッケ

ル-

ウラ

アン

チモ

ン-

砒素

-タ

リウ

アン

チモ

ン-

水銀

アン

チモ

ン-

亜鉛

銅-

タン

グス

テン

金-

水銀

-砒

アン

チモ

ン-

亜鉛

-鉛

-砒

アン

チモ

ン-

亜鉛

-鉛

アン

チモ

ン-

-モ

リブ

デン

アン

チモ

ン-

タン

グス

テン

-砒

R:

交代

性;

Lim:

石灰

石;

Sch:

片岩

Gr:

花崗

岩;

Shs:

砂岩

Sil:

珪化

Impr:

鉱染

、Amph:

角閃

岩、

Arg:

粘土

化、

Serp:

蛇紋

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- 66 - セルビアモンテネグロ

床の下盤は片岩で、上盤は石灰岩である。鉱石は、2~3%アンチモンを含有する。ア

ンチモン酸化鉱物(cervantite、senarmontite、valentinite)が普遍的に産する。Rujevac

鉱床の多金属鉱石は、アンチモン1~7%、砒素 0.5~2.2%、鉛 0.2~0.8%、亜鉛 0.5

~6%を含む。

Lojane 鉱床

この鉱床は、Kumanova の近くに位置している。レンズ状、脈状鉱体が熱水変質を受け

た安山岩と接触した蛇紋岩中に存在している。鉱床帯は1~2m の幅で、400m 続く。鉱石

はアンチモン3~5%、砒素4~6%を含む。この他にニッケル 0.2~0.4%、少量のウ

ランを含む。

Rujevac 鉱床(Jankovic ほか、1977)

この鉱床は、西セルビア地方の鉛-亜鉛鉱床地域の外側に位置する。Rujevac 鉱床は、

Podrinje 鉛・亜鉛・アンチモン鉱床区に属している(第 2-19 図)。第三紀中新世の貫入

岩体(花崗閃緑岩、デイサイト、安山岩)と関連している。この地域では、累帯配列が

見られる。鉱床は、以下の特徴を持つ。

1.強珪化作用を受けている。特に下盤の片岩との接触部の珪化が強い。この珪化帯中

に鉱石レンズ、ポケットがある。

2.鉱脈が、石灰岩、片岩、デイサイト中のフラクチャーに伴われている。脈幅は 0.8

~1.0m である。鉱石品位は非常に高い(11~25%アンチモン、14~20%鉛、3~12%亜

鉛、1~2%砒素)。

3.鉱床を胚胎する石灰岩の上の砂岩-片岩中に鉱染状、ストックワークタイプの鉱床

がある。この鉱床は、角礫部に見られる。低品位である。

鉱物組み合わせより鉱石をいくつかのタイプに分けることが出来る。

1.アンチモン鉱。これは 0.15%以下の鉛、0.2%以下の砒素を含む。

2.亜鉛-アンチモン-砒素-鉛複雑鉱。平均品位は、6.5%亜鉛、1.9%アンチモン、

0.8%鉛、2.1%砒素である。

鉱石の鉱物学的特徴は、以下の通りである。主な構成鉱物は、輝安鉱、鉛・アンチモ

ン硫酸塩、閃亜鉛鉱、黄鉄鉱、硫砒鉄鉱、鶏冠石である。この他に方鉛鉱、自然砒素、

硫黄が伴われる。石英とカルサイトが主な脈石鉱物である。アンチモン酸化物

(Valentinite)が普遍的に見られる。石英は 235~250℃(流体包有物の充填温度)に生

成した。いくつかの鉛・アンチモン・硫黄鉱物が同定されている(plagionite、zinkenite、

boulangenite、robinsonite)。

3. 鉱床胚胎有望地域

セルビア・モンテネグロにおける重要な鉱床としては以下の4つをあげることができる

が、詳細な地質鉱床の分布状況及びその成因が不明であるため、有望地域の抽出は困難

である。

(1) 大陸内のリフティングに関連する鉱床

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- 67 - セルビアモンテネグロ

第 2-19 図 Podrinje 鉱床生成区と Rujevac 鉱床の位置

出典:国際鉱物資源開発協力協会(1996)

1.第三紀堆積岩、2.白亜紀堆積岩、3.三畳紀、ジュラ紀堆積

岩、4.古生代片岩類、5.第三期デイサイト、6.第三紀花崗閃

緑岩、7.三畳紀ケラトファイアー、玢岩、8.ジュラ紀輝緑岩.

Ⅰ.鉄スカルン鉱床(磁鉄鉱)、Ⅱ.鉛-亜鉛スカルン鉱床、Ⅲ.

鉛-亜鉛熱水性鉱床(交代制、鉱脈鉱床)、Ⅳ.銅スカルン鉱床、

Ⅴ.熱水性アンチモン鉱床、Ⅵ.鉱染状、鉱脈モリブデン鉱床、Ⅶ.

熱水性黄鉄鉱鉱床、Ⅷ.火山性-堆積性黄鉄鉱鉱床、Ⅸ.熱水性螢

石鉱床(交代制、鉱脈タイプ).

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- 68 - セルビアモンテネグロ

二畳紀後期-三畳紀中期にゴンドワナ大陸の北端などに沿った大陸内のリフティングに

関連して鉱床が生成した。

a.スカルン鉱床;鉄酸化物鉱床、

b.火山性・熱水性鉱床、火山性堆積性鉱床;重晶石-卑金属鉱床、鉛-亜鉛鉱脈、スト

ックワーク鉱、マンガン鉱床

c.炭酸塩岩を母岩とする低温性の鉛-亜鉛鉱床、水銀鉱床、

(2)海底拡大に関連した鉱床

Dinarides のオフィオライトに関連した鉱床として以下がある。

a.クロマイト鉱床、b.Ni-Cu-Co 鉱床、c.チタン磁鉄鉱鉱床、d.火山性-堆積性鉱床(キ

プロス型黄鉄鉱・銅鉱床、層状鉄・マンガン鉱床)。

(3)プレートの沈み込みに関連した鉱床

ジュラ紀後期-白亜紀前期にチチス海が閉じてヨーロッパプラットフォームの下へ海

洋底が沈み込み、カルクアルカリ岩系及び局部的にアルカリ岩系の火成作用が生じた。

特に、Carpatho-Balkanides の西の島弧に沿って起こった。Laramian 火成岩類として、

Senonian 火山岩類と Campanian-暁新世深成岩、深成岩類がある。

北部の Pannonian マイクロプレートが、ヨーロッパ大陸プレートへ始新世後期-中新

世前期に衝突し、中新世中期(Badenian)に海洋地殻の沈み込みが始まった。

中新世後期-鮮新世前期に Carpathian の東部、西部でカルクアルカリ岩系の火成活動

が起こった。

プレートの沈み込みに関連した重要な鉱床として、以下がある。

a.スカルン鉱床;鉄、卑金属が主で、局部的にモリブデン、硼素を伴う。ルーマニアの

Banat が代表例である。

b.ポーフィリーカッパー鉱床;1950 年以降、いくつか発見されている。

c.火山性熱水性鉱床;カルクアルカリ岩系火成活動に完絵連した交代性鉱床である。

(4)衝突後の大陸-大陸セッティングの火成活動に関連した鉱床

Serbo-Macedonian-Central Anapolian 地域の鉱床生成区は、漸新世-中新世/鮮新世

のカルクアルカリコンプレックスの活動と関連している。Vardar-Izmir-Anlcara 海の閉

じた後の縫合帯に鉱床区が生成した。

海底からの塩水によって出来た鉱床(硼素鉱物、金-銀-鉛-亜鉛±アンチモン-砒

素-タリウムの熱水性-堆積性鉱床)やオフィオライト上部で出来た鉱床(白金、金、

銅)もある。

主な鉱床は、鉛-亜鉛、ウンチモンの鉱床である。Vardar ゾーンと Serbo-Macedonian

マッシーフという二つの異なるテクトニックブロックの境界部にポーフィリーカッパー

鉱床がある。

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- 69 - セルビアモンテネグロ

別添

旧ユーゴスラヴィアの鉱山分布

(国際鉱物資源開発協力協会、1996)

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- 70 - セルビアモンテネグロ

セルビア・モンテネグロの鉱物資源(国際鉱物資源開発協力協会、1996)

鉱床名 所在国、

鉱種 地質時代 鉱 化 時

鉱床型 鉱量 品位 操業開

始年

備考

Lisina Serbia apati

te

pre-Devo

n

pre-Dev

on

stratab

ound

40Mt 10% P205

Grabova

Reka

Serbia Au 15kt 23g/t Au未 開

発?

Neresnica Serbia Au Paleoz/T

rias

vein smal

l

3-12g/t

Au

1945 閉山

Kladusa Bosnia BaS04 Paleoz/T

rias

vein 92% SrS04 含有

Deva Kosovo Cr Jurassic Alpine podifor

m

0.3M

t

44% in Kosovo

Nada Kosovo Cr Jurassic Alpine podifor

m

1.2M 30% in Kosovo, Macedonia

Bor-1 Serbia Cu Mesoz/Te

rt

Alpine skarn 1-2% Cu 1903produced +2Mt Cu ; closed end

1992

Bor-2 Serbia Cu Mesoz/Te

rt

Alpine porphyr

y

600M

t

0.6% Cu beneath Bor Skarn one

deposit

Cerovo Serbia Cu Alpine porphyr

y

larg

e

start prod. ’93.6 at 2Mt/y

ore

Lajkovaca Serbia Cu Jurassic Alpine dissem smal

l

0.01-0.5%

Cu

in diabase; 局所的に高品位

鉱あり

Majdanpek Serbia Cu pre-C/Me

soz

Alpine porphyr

y

13.6Mt/y(’91); will

increase to 16Mt/y

Novi

Krivelj

Serbia Cu Alpine porphyr

y

larg

e

9Mt/y now, will increase to

13Mt/y ore

Rebelj Serbia Cu Jurassic Volc-Mass-S

ulf

Veliki

Kriveli

Serbia Cu Mesoz/Te

rt

Alpine porphyr

y

huge 0.4% Cu 8Mt/y(’91); will increace

to 12Mt/y ore

Skofje Sloveni

a

Cu Permian Hercyni

an

Sedimen

tary

smal

l

1870in upper Permian grey

sandstone

Suva Ruda Kosovo Fe Paleoz/T

ert

Alpine skarn smal

l

Suvo

Rudiste

Kosovo Fe Paleoz/T

ert

Alpine skarn smal

l

300kt/Y ore, Mt, Cp, Sph

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- 71 - セルビアモンテネグロ

Bjelasica Montene

gro

Fe mid-Tria

s

stratab

ound

similar to Fe ore in Vares,

Bosnia

Bukva Montene

gro

Fe mid-Tria

s

stratab

ound

similar to Fe ore in Vares,

Bosnia

Konjic Montene

gro

Fe mid-Tria

s

stratab

ound

similar to Fe ore in Vares,

Bosnia

Boranja Sebria Fe Paleoz/T

ert

Tert skarn smal

l

skarn around Boranja

granodiorite

Lipnica Serbia gyps Triassic ear-Alp

ine

stratab

ound

n.Mt 33 CaO, 42

SO3

操業中永年露天掘り操業

Suplja

Stena

Serbia Hg vein 0.2-1% Hg ローマ時代より操業

Gores Kosovo Mg Jurasic veins 44-49%

MgO

操業中in serpentinite

Bela Stena Serbia Mg Miocene Sedimen

tary

44% MgO 操業中S of Kraljevo:露天掘り

Beli Kamen Serbia? Mg Miocene Sedimen

tary

45% MgO 操業中耐火材原料

Novo Brdo-2 Kosovo Mn,

Fe

Paleoz/T

ert

Alpine skarn 20% Mn,

13% Fe

1% Pb, 3% Zn : carbonate ore

Mackatica Serbia Mo Paleoz/T

ert

Alpine porphyr

y

5-10

Mt

0.1% Mo stockwork-dissem pipe

shaped ore

Cikatovo Kosovo Ni Jurassic karstic

lat.

in Goles; OR with Glavica :

26Mt, 2.3%Ni

Glavica Kosovo Ni Jurassic karstic

lat.

in Goles; OR with

Cikatovo:26Mt, 2.3%Ni

Trstenik Kosovo Ni Paleoz/C

ret

lat, Ni similar to Rzanovo

Vrnjacka

Banja

Serbia Ni Jurassic karstic

lat.

fossil lateritic Ni

deposits; in Goc Mtns.

Ajvalija Kosovo Pb,

Zn

Paleoz/T

ert

Alpine skarn 4% Pb, 6%

Zn

19525km S of Pristina, in

Kopaonik District

Belo Brdo Kosovo Pb,

Zn

Cret/Ter

t

Alpine skarn 2.5M

t

8%(Pb+Zn) 1940?別名 Kopaonik

Crnac Kosovo Pb,

Zn

Paleoz Alpine vein 3%

(Pb+Zn)

1966100kt/Y ore

Farbani Kosovo Pb, Paleoz/T Alpine skarn 12%(Pb+Zn 1963in operation since mediaeval

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- 72 - セルビアモンテネグロ

Potok Zn ert ) time

Kiznica Kosovo Pb,

Zn

Paleoz/T

ert

Alpine vein 5% Pb,

1.5% Zn

19529km S of Pristina, in

Kopaonik District

Koporic Kosovo Pb,

Zn

Mesozoic Alpine vein 2% Pb, 1%

Zn

1972in operation since mediaeval

time

Novo Brdo Kosovo Pb,

Zn

Paleoz/T

ert

Alpine skarn 1% Pb, 3%

Zn

1945in Kopaonik Dist., op. :

since mediaeval

Trepca(Star

i Trg)

Kosovo Pb,

Zn

Paleoz/T

ert

Alpine skarn 50Mt 6% Pb, 4%

Zn

1925600kt/Y ore, ユーゴ最大の

Pb, Zn mine

Zuta Prlina Kosovo Pb,

Zn

Mesoz/Te

rt

Alpine vein 2% Pb, 5%

Zn

1971in; serp. /andesite

Suplja

Stijena

Montene

gro

Pb,

Zn

mid-Tria

s

vein 7% Zn, 3%

Pb

1953

Blagodat Serbia Pb,

Zn

Paleoz/T

ert

Alpine skarn larg

e

5% Pb, 9%

Zn

1975planned op. in 1975:350kt/Y

Rudnik Serbia Pb,

Zn

Paleoz/T

ert

Alpine Skarn +3Mt 3% Pb,

2.5% Zn

操業中160ky/Y

Veliki

Majdah

Serbia Pb,

Zn

Paleoz/T

ert

Tert skarn smal

l

4% Pb, 8%

Zn

操業中 irreg, massive ore

Lece Serbia Pb,Zn

,Au

Tertiary Alpine Vein/di

ssem

6% Pb+Zn, 5g/t

Au

2km long fracture(Qz v) in

and. /dac.

Rajiceva

Gora

Kosovo? Sb,Zn

,Pb

Mesozoic Tert vein recently found in Kopaonik

district

Rujevac Serbia Sb,Zn

,Pb

Paleozoi

c

Tert vein 1-7% Sb,

0.5-6% Zn

操業中in Zajaca, largest Sb

producing area in Yugo

Crni Kamen Macedon

ia

U Pre-Devo

nian

Hercyni

an

vein smal

l

Konjarnik Macedon

ia

U Pre-Devo

nian

Hercyni

an

vein smal

l

Stra

Planina

Serbia U Paleozoi

c

Hercyni

an

vein smal

l

first U mine in

Yugo:closed ’61

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- 73 - セルビアモンテネグロ

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