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東京都 廃プラスチック処理状況に関する調査業務委託 輸入規制の動向 2019/9/17

輸入規制の動向...(出典)Global Trade Atlas, China Customs(HSコード3915) 7 (2)台湾:輸入基準を厳格化 • 2018年10月から廃プラ輸入を制限し、一定の品質基準を満たす廃プラについては許可を得た地元企業のみが輸入

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東京都 廃プラスチック処理状況に関する調査業務委託

輸入規制の動向

2019/9/17

Page 2: 輸入規制の動向...(出典)Global Trade Atlas, China Customs(HSコード3915) 7 (2)台湾:輸入基準を厳格化 • 2018年10月から廃プラ輸入を制限し、一定の品質基準を満たす廃プラについては許可を得た地元企業のみが輸入

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日本からの廃プラ輸出先上位の国・地域

• 日本からの廃プラ輸出先上位国を整理すると、2017年までは圧倒的に中国・香港が多かったものの、2018年からは台湾や韓国の他、マレーシア、ベトナム、タイといった東南アジア各国に分散している。

注)2019年は1月~6月までの合計(出典)財務省貿易統計(HSコード 3915)

注)2019年1月~6月までの合計

日本からの廃プラスチック輸出量の推移(千トン)

2019年上半期の輸出先上位

上半期

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日本国内の資源卸売業からの廃プラ輸出先

(出典)経済産業省「平成30年度地球温暖化・資源循環対策等に資する調査委託費(諸外国における資源循環政策動向調査等及び我が国における静脈材料の仕様表記システム実用化検討調査)報告書」

• 日本国内の資源卸売業へのアンケートで資源の輸出先の上位3か国を確認したところ、廃プラは、中国を中心とした東アジア、アセアン諸国、インドに輸出されている。

• 第1位の回答には中国が最も多く、韓国、タイ、マレーシア、台湾も一部にみられた。第2位、第3位には台湾、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、インドが挙げられている。

1位 2位 3位

中国(10 件)韓国(4件)タイ(3件)マレーシア(3件)台湾(2件)

台湾(2件)マレーシア(2件)ベトナム(1件)中国(1件)タイ、マレーシア(1件)タイ(1件)インドネシア (1件)インド(1件)

タイ(2件)台湾(1件)マレーシア(1件)インドネシア (1件)

• 経済産業省では、資源卸売業の事業活動に、中国における固体廃棄物輸入規制がどのような影響を及ぼしているかを把握するためアンケート調査を実施(調査実施期間:2019 年1月10日~1月25日)

• 廃プラスチック、廃ペットボトルについては、「空瓶・空缶等空容器卸売業、その他の再生資源卸売業」に該当し、売上高1億円以上の企業を対象。東京商工リサーチのデータベースから抽出した128社に調査票を郵送

日本からの廃プラ輸出先上位(国内資源卸売業へのアンケート)

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主な日本からの廃プラ輸出先国・地域の規制内容の一覧

• 中国(香港含む)、台湾、韓国、マレーシア、ベトナム、タイ、インドネシアの輸入規制の内容は表のとおり。

• 2017年末に中国が輸入規制を導入して以降、他の国々も規制を検討・導入。2018年にはタイとベトナム、次いでマレーシアが新たな輸入制限措置を導入し、2019年に入ってからはインドネシアも輸入基準の強化方針を発表。

国・地域 内容

(1) 中国• 2017年12月末には生活由来の廃プラスチックなどの輸入禁止• 2018年12月末から工業系廃プラスチックも輸入禁止

(2) 台湾• 2018年10月から質の悪い廃プラスチックの輸入を制限• 背景には、中国大陸の輸入制限に伴い、資源ごみの輸入量が増加したことがある

(3) 韓国• 輸入禁止措置の導入が検討されたことはない。当面はリサイクル業界との協議を通じ、国内で加工されたリサイクル品の使用を奨励(韓国政府環境部)

(4) マレーシア• 廃プラを輸入する企業・工場に発行したすべての輸入許可証(AP)を2018年7月から3カ月停止• 2018年10月に許可基準を厳格化した上でAP発行を再開したが、2019年前半までに一時的に禁輸状態も発生

(5) ベトナム• 2018年に廃プラを含む輸入廃棄物の検査管理を強化し、一時は輸入禁止に等しい状態に• 2019年に入ってからもさらに輸入許可基準を厳格化

(6) タイ

• 2018年6月に電子廃棄物や廃プラスチックの輸入制限を強化。違法輸入業者の取締強化とともに、新規輸入許可手続きを停止。2018年7月にはバンコクなど一部の港で廃プラ積載コンテナを荷揚げ禁止。

• 2018年10月には2021年までに全面輸入禁止の方針を発表

(7) インドネシア

• 従来から輸入制限品目に指定(担当省庁から輸入許可を得る必要)だったが、2018年に輸入制限・禁止を検討• 2019年6月にはジョコ大統領がプラスチック廃棄物の輸入禁止を厳格運用する意向を表明• 2019年7月には税関検査・罰則規定の強化方針を発表

(出典)環境省 プラスチック資源循環戦略小委員会資料、JETROレポート(2019/1/10、2019/6/18)、各紙報道などより作成

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(1)中国:廃棄物輸入規制の計画発表

(出展)経済産業省 第5回循環経済ビジョン研究会資料 より作成

• 2017年7月27日に中国政府国務院が発表した「海外ごみの輸入禁止と固形廃棄物輸入管理制度改革の実施計画」では、年次目標が掲げられており、2020年までに国内資源循環の促進に向けた産業構造の見直し(違法な輸入事業者の営業停止など含む)や失業者の保障措置など含めた政策実施を目指すとしている。

• 習近平主席による指導が強調されており、従来の政策とは異なる強力な政府指導の下、各種政策が実施されていくものとみられる。2017年7月には海外ごみの輸入禁止についてWTOに事前通告していた。

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(1)中国:輸入禁止リストの拡大

(出展)経済産業省 第5回循環経済ビジョン研究会資料より作成(参考)Jetro(2019)中国における外国ごみの輸入禁止と固形廃棄物輸入管理制度改革に関するレポート

• 2017~2018年に「輸入廃棄物管理リスト」改定が行われ、2019年末までに輸入禁止品目は段階的に増加。

• 2017年12月末には生活由来の廃プラスチックなどの輸入が禁止されたほか、2018年12月末から工業系廃プラスチックの輸入も禁止。

輸入ごみ管理リストの概要

適用開始時期 主な輸入禁止品目

2017年12月末~

*2017年8月発表

家庭系廃プラスチック8品目、未選別古紙1品目、繊維系廃棄物11品目、バナジウムスラグ4品目の計4種類24品目

*2017年12月から港湾での検査も厳格化

2018年12月末~

*2017年8月発表

スラグ、ドロス、工業系廃プラスチック、自動車スクラップ、第7類のスクラップ(非鉄金属を含有している廃設備等(廃モーター・廃電線・廃ケーブルなど含む))等を含む計16品目

2019年12月末~

*2017年8月発表

木質ペレット、コルク屑、ステンレススクラップ、その他金属スクラップ(タングステン、モリブデン、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タングステン)等を含む計16品目

(注)中国の商標の類別において、第7類は非鉄金属を含有している廃設備等(主に主に廃モーター・廃電線・ケーブル等含む)を示す。日本におけるいわゆる雑品スクラップ(有害物を含む使用済電気電子機器がその他の金属スクラップと混合されたもの)がこれと一致する場合もある。

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(1)中国:輸入規制発効後の効果

中国の廃プラスチック輸入量

(出展)経済産業省 第5回循環経済ビジョン研究会資料、JETROレポート(2019/1/10)、各紙報道より作成

• 2017年12月以降、中国の廃プラスチック輸入量は激減しており、輸入規制の実効性が伺える。

• 2018年は工場系廃プラスチック(工場で発生するロスなどの未使用廃プラ)については猶予期間とみられていたが、輸入ライセンスの発行が極端に少なく、輸入禁止に近い状態であった。

(出典)Global Trade Atlas, China Customs(HSコード 3915)

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(2)台湾:輸入基準を厳格化

• 2018年10月から廃プラ輸入を制限し、一定の品質基準を満たす廃プラについては許可を得た地元企業のみが輸入可能とした。

時期 出来事、規制・制限内容

2018年1月~中国で受け入れられていた廃プラが台湾に流れ、廃プラ輸入量が急激かつ大幅に増加。当局がこれを問題視

2018年8月行政院環保署が法令改正 *1

廃棄物輸入の取り締まりを強化し、廃プラや古紙輸入について一部の材質に制限する方針を通知

2018年10月

行政院環保署が「産業用資材のための事業廃棄物」を改正公布 *2

規制の厳格化を決定し、廃プラ輸入を制限*許可を得た地元企業のみが輸入可能、単一素材あるいは単一形態の廃プラに限定。他の物質を混合したものの輸入は許可されない。違反した場合は1000万台湾ドル(約3500万円)の罰金

*1 行政院環境保護署新聞(2018年8月13日付)*2 行政院環境保護署新聞(2018年10月1日付)今回の改正により、法令名を「産業用資材のための事業廃棄物の種類」(属産業用料需求之事業廃棄物種類)から「産業用資材のための事業廃棄物」(属産業用料需求之事業廃棄物)に変更

(出典)JETROレポート(2019/6/5) 、環境省(2019)平成30年度プラスチックくず等の輸入規制に関する調査検討業務報告書より作成

台湾の廃プラ輸入量(国別)

日本とEUからの輸入量が多く、2018年7月には日本からの輸入が激減した一方でEUからの輸入が増加

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(3)韓国:輸入規制なし

• プラスチックくず等の輸入禁止措置を導入することは検討されたことはない。(韓国政府環境部)

• 国内で加工されたリサイクル品の使用を奨励する方針とのこと。

韓国政府環境部の見解

(出典)各紙報道、環境省(2019)平成30年度プラスチックくず等の輸入規制に関する調査検討業務報告書より作成

韓国の廃プラ輸入量(国別)

日本からの輸入が最も多く2~3千トンあり、2017年12月まで上昇傾向

(出典)中央日報(2018/4/4)記事

• 背景には韓国国内のリサイクル産業によるプラスチックくず需要がある。政府は輸入規制の導入より、リサイクル産業により加工されたリサイクル品の海外を含めた利用促進を優先していると考えられる。

• 現段階では輸入禁止措置を導入は検討されていない• 当面は資源・リサイクル業界との協議を通じ、国内で加工されたリサイクル品の使用を奨励

• 同時にリサイクル品の海外販路開拓に向けた海外市場開拓タスクフォースを設置、検討を開始

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(4)マレーシア:輸入基準を厳格化、一時は実質的な輸入禁止も

• マレーシア国内では廃プラ処理工場における深刻な環境汚染について懸念が高まっている。2018年に全輸入許可書(AP)が停止され、基準も強化。AP再発行まで一時的には実質的な禁輸状態もあった。

時期 出来事、規制・制限内容

2018年7月頃~

マレーシア政府が、違法工場の摘発・閉鎖に乗り出した。*国民からの違法工場に関する情報提供を求め、違法工場が立地する州政府と連携するなどして、全違法工場の閉鎖を目指す

2018年7月

発行済みの全輸入許可書(AP)を3カ月間停止。新たな認可基準を設けた上で2018年10月から再申請を受け付けると発表*2018年7月時点では114の企業および工場がAP(有効期限1年)を保有*新認可基準では、従来の申請書類提出に加え、保管場所の収容能力の証明、当局監督下での建屋内清掃の実施、リサイクル処理後の廃プラ販売先リスト、輸入廃プラ1トン当たり15リンギの税金の納付などの条件を追加

AP停止以降、港湾には輸入通関ができない廃プラスチックが滞留*2019年2月末時点で、クラン西港には100個超、ペナン港には120個の廃プラスチックのコンテナが滞留(現地報道)*税関は通関業者に対し、廃プラを高分子材料(ポリマー)や樹脂材料(レジン)などの一般プラと偽って輸入通関を行った場合は、直ちにライセンスを取り消すと警告

2018年10月

26日から新基準によるAPの再申請開始*19社が申請し、2019年4月時点で承認された企業はなかった(実質的な禁輸)と見られている。当局はAPの承認が1件も下りていないことに対し、「申請があった19社が、認可基準を満たしているか監査を行う必要がある」と回答(Jetro調査)*2019年6月には、62社がAPの発行を受けたとのこと(現地報道)

*マレーシア国内には274の廃プラスチック処理工場があり、うち109が環境規制に則らず違法に操業している工場だという。違法工場の約6割があると言われるセランゴール州で水質汚染が深刻との報道がAP停止措置の背景との情報もある(Jetro, 現地報道)

(出典)JETROレポート(2019/5/20、2019/6/18)、 JETROビジネス短信(2018/8/1, 2019/10/15)環境省(2019)平成30年度プラスチックくず等の輸入規制に関する調査検討業務報告書、The Star online (2019/6/8)記事より作成

輸入量は増加し、2018年1月時点で月10万トン弱まで上昇。輸入元はEUが増加(報道等から、多くは英国からと想定される)

マレーシアの廃プラ輸入量(国別)

(トン)

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(5)ベトナム:輸入基準を厳格化し、一時は輸入禁止に等しい状態に

• 2018年には一時は港での受入を制限し、不法輸入を防ぐために税関検査を強化。さらに、輸入許可基準が厳格化されたことで通関手続きが滞って輸入禁止に近い状態だった。2019年に入って更に輸入基準を厳格化。

時期 出来事、規制・制限内容

2018年4月

2018年1~3月の税関検査で品質基準を満たさない、もしくは輸入ライセンスのない業者による輸入例が多数報告された

2018年6月

ホーチミン市のカットライ港とヒェップフック港の2港で、港湾管理会社が廃プラの受け入れを一時制限(10月末まで)

2018年7月

ベトナム全土で、廃プラを含む輸入廃棄物の税関検査を強化*一定要件を満たさない廃棄物の輸入・通過は禁止。要件を満たす廃棄物は、一定の確認および検査を伴う通関手続きを実施

2018年10月末

天然資源環境省(MONRE)輸入許可品質基準を厳格化*基準を満たせば輸入可能だが、検査を担当する地方の天然資源環境局(DONRE)に新基準に沿った検査をする機能がなく、基準を満たしても通関できない状態(輸入禁止に等しい状態)が継続

2019年3月

*MONREが新たな通達を出し、検査主体をDONREから民間の認定機関へと変更し、通関できない状態は解消

2019年5月

廃プラを含む廃棄物の輸入者を「輸入廃棄物を使用する製造施設を有する組織または個人」に限定するなど、さらに基準を厳格化

(出典)JETROベトナム貿易管理制度ページ、 JETROレポート(2019/6/18)、環境省(2019)平成30年度プラスチックくず等の輸入規制に関する調査検討業務報告書、各紙報道より作成

ベトナムの廃プラ輸入量(国別)

注)ベトナム政府は輸入量を未公表のため世界各国のベトナム向け輸出を基に集計

*輸入許可ライセンスが発行された事業者は全体で200社、うちプラスチック関係は28社。ライセンス保有企業が少ないため貸し借りが横行しているが、偽ライセンスを使用した企業が摘発されるなど、規制が厳格化しているとのこと。申請基準も厳格化しており、また許可ライセンス発行にかかる時間も長くなっているとの情報もある。

2017年1月~2018年9月の間では2017年11月が量的に最も多く、約15トンを輸入。その後、2018年7月には1万トン、以降の輸入量はほぼゼロ

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(6)タイ:一時は輸入禁止措置を実施、2021年には全面輸入禁止

• 2018年夏に廃プラの輸入を一時禁止し、その後2021年までに段階的に輸入を禁止する方針を発表。国内で回収された廃プラの利用を優先する方針

時期 出来事、規制・制限内容

2018年5月末

中国へ輸入できなくなったE-wasteをタイへ密輸し不適正処理していたチャチューンサオ県の華人系リサイクル工場が、周辺住民からの苦情を受けて摘発*タイ国内で輸入廃棄物が注目された発端

工業省工場局(DIW)はリサイクル認可工場への全数査察、税関と協力してコンテナの開披検査を実施。多数の不適正処理、密輸が発覚

2018年7月

廃プラとE-wasteの一時禁輸を実施*国内の港で廃プラやE-wasteなどを積載したコンテナの荷揚げ禁止(通達ベース)*廃プラの輸入ライセンス発給を一時停止(Jetro調査)

2018年8月

今後の対策の方向性を承認(スラッサク天然資源環境大臣を委員長とする関連省庁の委員会で協議)• E-wasteの全面禁輸(半年以内に商務省・工業省の省令施行)• 廃プラは2016年までの輸入許可実績に応じて輸入枠を設定し2年以内に全面禁輸

• 鉄くずやアルミくずなどの再生資源の輸入における異物混入率の設定、などが主な内容

2018年10月

• 2021年までに全面禁輸の方針を発表*当局は直近に発行された輸入ライセンスが失効するタイミングなどを念頭に、制度導入に2年程度かかるとの認識を示した

(出典)JETROレポート(2019/6/18)、環境省(2019)平成30年度プラスチックくず等の輸入規制に関する調査検討業務報告書、国際環境経済研究所レポート(2018/10/10)、各紙報道より作成

タイの廃プラ輸入量(国別)

中国の輸入禁止措置導入後、タイへの廃プラ輸入量は増加し、2018年3月には月7万トン弱と前年同月と比べて5倍強の伸び。国別には日本、アメリカからの輸入が多い

• タイではリサイクル目的の廃プラスチックの輸入は、工業省工場局(DIW)に輸入許可を申請する必要がある• 急増する廃プラ輸入では、許可を得てない密輸やE-wasteを廃プラとして輸入したり、逆に廃プラをE-wasteとして輸入する不適正輸入が横行

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(7)インドネシア:輸入禁止を厳格運用する方針

• 2018年にかけて輸入規制・禁止が検討され、2019年6月に大統領がプラスチック廃棄物の輸入禁止を厳格運用する意向を表明。輸入されてきた違法廃棄物の輸出国への返送のほか、税関検査や罰則規定の強化を実施。

時期 出来事、規制・制限内容

2019年6月ジョコ大統領、プラスチック廃棄物の輸入禁止を厳格運用する意向を表明。環境・林業相に輸入規制のための省令策定を指示

2019年7月

インドネシア政府、豪州からの廃棄物合計210トンを送り返すと発表*スラバヤ市の港で発見されたコンテナ8個には、本来古紙のみの輸入を許可しているところ、有害化学物質、使用済のペットボトル、おむつ、電子廃棄物等が混入*2019年7月までにインドネシア政府は既にフランス等の先進各国にも廃棄物49tを返送。同様にマレーシアも既に450tを、フィリピンはコンテナ69個分を返送。返送先には日本も含まれる。

税関検査の強化とともに罰則規定の強化方針を発表

• インドネシアでは、2008年と2009年に制定した法規制に基づき、プラスチック廃棄物の輸入禁止がすでに法制化されている

• 廃棄物の定義が曖昧なため、法の抜け道を付いた輸入や違法輸入を含め、依然として大量の廃プラが輸入されている(貿易統計上は2018年に283,000トンの廃プラを輸入)

インドネシアへの廃プラ輸入量(国別)

(出典)Global Trade Atlas(HSコード:3915)

タイ、マレーシア、ベトナムと比較すると少ないが、2018年7月の中国の輸入規制開始を受けて月別の輸入量は増加。中でも、アメリカ、ドイツからの輸入量が増えている。

注)環境省委託業務での現地調査で商業省や工業省担当者に確認したが、貿易統計上、マーシャル諸島が多い理由は確認できなかったとのこと(環境省委託調査)

(出典)各紙報道、環境省(2019)平成30年度プラスチックくず等の輸入規制に関する調査検討業務報告書より作成

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(8)アジアのその他の地域:ラオス・インドでは輸入規制を検討もしくは導入決定

(出典)環境省 プラスチック資源循環戦略小委員会資料、JETROレポート(2019/1/10、2019/6/18)、Jetro各国の貿易管理制度、インド政府官報(2019/3/6)、フィリピン現地報道などより作成

国 内容

ラオス輸入禁止・規制を検討中

*天然資源環境省と商工省の間でプラスチックのリサイクル処理工場の新規建設許可の停止と、廃プラ材の輸入停止が議題に挙がっているとのこと。「登録されている68社のプラスチックリサイクル処理企業の存続が危うくなるため、輸入停止は時間をかけて協議する」と回答(2018年9月、Jetro問合せ)

フィリピン

貿易管理品目で一部禁止、2019年8月から一時輸入禁止

輸入制限品目に指定され、担当省庁からの輸入許可が必要*以前から廃プラを貿易管理品目に指定しているが、2019年1月に固形廃棄物輸入禁止法案が議会に提出された。ただし、法案化されるめどは立っていない(2019年6月、Jetro調査)*2019年5月にはドゥテルテ大統領が廃棄物の輸入を3ヶ月禁止するよう税関に求め、担当省の調整の上、8月に発効した(2019年8月、現地報道)

カンボジア貿易管理品目で一部制限

輸入禁止品目に指定(従来から輸入禁止)

インド2019年8月31日から全面輸入禁止

*従来、廃プラを輸入制限品目(担当省庁から輸入許可を得る必要)としていたが、2019年3月に有害廃棄物の管理と越境移動に関する法律を改正

スリランカ

貿易管理品目で一部禁止バングラデシュ

パキスタン

• 中国の廃棄物輸入禁止令を受けていち早く輸入を規制したベトナム、マレーシア、タイ、インドネシアの他にもラオスやインドでは輸入規制・禁止が検討され、インドでは2019年8月31日から全面輸入禁止となった。フィリピンでも2019年8月に輸入禁止となったとの報道がなされた。