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平成 26 年度卒業論文 きょうだい間の教育格差 所属ゼミ 村澤ゼミ 学籍番号 1100402064 名 中井恭 大阪府立大学経済学部

きょうだい間の教育格差 - FC2 · 本稿では、平沢(2011)とじ ssm2005のデータを用いるが、以下の3点が異 なる 分析手法は順序プロビットモデルを用いる

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平成 26 年度卒業論文

きょうだい間の教育格差

所属ゼミ 村澤ゼミ

学籍番号 1100402064

氏 名 中井恭

大阪府立大学経済学部

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要約

本稿では、「 2005 年社会階層と社会移動全国調査( Social Stratification and

Social Mobility、 以下 SSM)」の個票データを利用して、きょうだい間の教育

水準の差の有無を検証する。諸外国の先行研究では第一子の教育水準が高いと

の結果が多いが、日本では高学歴化が進んだ時期には、むしろ末子の教育水準

が高いとの結果もある。男女・コーホート別に最終学歴の順序プロビットモデ

ルを推定した結果、きょうだい数が多いほど学歴が低いほか、1956~ 70 年生ま

れの男女は第一子の学歴が高く、 1941~ 55 年生まれの女性と 1956~ 70 年生ま

れの男性では末子の学歴が高いことが分かった。前者については先行研究と整

合的であり、後者については、日本では高学歴化が進んだ時期には末子の学歴

の方が高いという先行研究に整合的である。

注:なお、本稿では「兄弟姉妹」を「きょうだい」と表記する。男性のみの場

合「兄弟」、女性のみの場合「姉妹」、男女の場合「兄妹」、「姉弟」などを用い

るが、本稿では男女の区別なく分析するためである。「きょうだい」には障害児

の兄弟姉妹という意味があるが、本稿ではこの意味で用いない。

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目次

第1章 はじめに ................................ .................................................... 1

第2章 先行研究 ................................ .................................................... 2

第3章 データ ................................ ....................................................... 3

1 社会階層と社会移動全国調査 ................................ ............................ 3

2 きょうだいに関するデータ ................................ ............................... 4

3 主たる説明変数の作成 ................................ ..................................... 5

4 その他の説明変数 ................................................................ ............ 7

5 被説明変数 ................................ ................................................... 10

第 4 章 分析手法 ................................ .................................................. 11

第 5 章 分析結果 ................................ .................................................. 12

第6章 おわりに ................................ .................................................. 17

謝辞 ................................ ................................................................ ..... 18

参考文献 ................................ ................................ .............................. 19

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第1章 はじめに

本稿では、「 2005 年社会階層と社会移動全国調査( Social Stratification and

Social Mobility、以下 SSM)」の個票データを利用して、きょうだい間の教育

水準の差の有無を検証する。諸外国の先行研究では第一子の教育水準が高いと

の結果が多いが、日本では高学歴化が進んだ時期には、むしろ末子の教育水準

が高いとの結果もある。男女・コーホート別に最終学歴の順序プロビットモデ

ルを推定した結果、きょうだい数が多いほど学歴が低いほか、1956~ 70 年生ま

れの男女は第一子の学歴が高く、 1941~ 55 年生まれの女性と 1956~ 70 年生ま

れの男性では末子の学歴が高いことが分かった。前者については先行研究と整

合的であり、後者については、日本では高学歴化が進んだ時期には末子の学歴

の方が高いという先行研究に整合的である。

本稿の構成は以下の通りである。まず第 2 章で先行研究を紹介する。次に第

3 章で使用するデータと作成したダミー変数について、第 4 章で順序プロビッ

トについて説明する。そして第 5 章で分析結果を示し、最後に第 6 章で今後

の課題を提示する。

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第2章 先行研究

de Haan(2010)は、1957 年、1964 年、1975 年、1992 年、2004 年に Wisconsin

high school を卒業した男女 17,113 人のデータを用いて、被説明変数を子ども

の教育年数、説明変数を子どもの数、父 (母 )親の教育年数、出生順位ダミーと

して、OLS と操作変数法で分析を行った。その結果、子どもの数は負の効果を、

父 (母 )の教育年数は正の効果を、出生順位ダミーは出生順位が遅ければ遅いほ

ど負の効果を示した。

平沢 (2011)は、調査対象者本人が無作為抽出されている本人データと、同じ

親のもとで育ったきょうだいの教育達成を直接比較できるきょうだいデータを

用いて、本人の教育年数を分析している。その結果、 3 つのことがわかった。

1 きょうだい数が教育達成にもたらす負の効果は男女ともいずれのコーホー

トでも確認された。

2 出生順位が教育達成にもたらす効果については、高齢コーホート( 1926~

40 年)と中年後期コーホート (1941~ 55 年 )では出生順位の遅いきょうだいの学

歴が高く、中年前期コーホート( 1956~ 70 年)と若年コーホート (1971~ 80)で

は早い方が高かった。

3 出生順位の効果が正から負へと変化したのは 1955 年生まれ頃を境に起きた

と考えられる。

本稿では、平沢 (2011)と同じ SSM2005 のデータを用いるが、以下の 3 点が異

なる

分析手法は順序プロビットモデルを用いる

説明変数に母親最終学歴を加えた。

説明変数は順序変数のためダミー変数を作成し分析を行う。

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第3章 データ

1 社会階層と社会移動全国調査

本稿で使用する「社会階層と社会移動全国調査 (SSM)」は,日本で最も伝統の

ある大規模な社会調査の一つで, 1955 年の第 1 回調査(日本社会学会による)

以来 10 年ごとに実施されている。

2005 年の第 6 回調査の調査対象は、 2005 年 9 月 30 日現在満 20 歳~ 69 歳の

男女である。調査方法は調査員による面接調査と留置調査の 2 種類である。計

画サンプル数は 14,140 で、有効抽出票数は 13,031、有効票数は 5,742(回収率

44.1%)である。

本稿では、本人の最終学歴やきょうだい数を含む面接調査の結果のみを使用

し、「無回答」などのいわゆる欠損値を抜いた。標本の大きさは 3,691 となる。

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2 きょうだいに関するデータ

本稿で使用するデータのきょうだい数の分布は下記の表 1、 2 である。

表 1 きょうだい数の度数分布

表 2 きょうだい数の相対度数分布 (%)

表から日本の少子化の影響が読み取れる。

最も割合が多かったのは 1935~ 40 年生まれでは 5 人きょうだい、 1941~ 55 年

生まれでは 3 人きょうだい、1956~ 70 年生まれでは 2 人きょうだい、1971~ 85

年生まれでは 2 人きょうだいである。

きょうだい数 1935~40年生 1941~55年生 1956~70年生 1971~85年生1 9 46 70 562 23 247 549 4203 40 393 362 3284 63 296 71 41

5 87 173 27 10

6 62 99 16 37 44 48 78 24 30 1

9 10 13

10 8 9

11 2 1

12 3

合計 375 1355 1103 858

きょうだい数 1935~40年生 1941~55年生 1956~70年生 1971~85年生

1 2.4 3.4 6.3 6.5

2 6.1 18.2 49.8 49.0

3 10.7 29.0 32.8 38.2

4 16.8 21.8 6.4 4.8

5 23.2 12.8 2.4 1.2

6 16.5 7.3 1.5 0.3

7 11.7 3.5 0.6

8 6.4 2.2 0.1

9 2.7 1.0

10 2.1 0.7

11 0.5 0.1

12 0.8

合計 100.0 100.0 100.0 100.0

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3 主たる説明変数の作成

SSM05 には、兄の人数、姉の人数、弟の人数、妹の人数の情報が含まれる。こ

こから本稿で注目する説明変数を次のように作成する。

① 一人っ子ダミー

兄の人数+姉の人数+弟の人数+妹の人数= 0 で定義した。

② 第一子ダミー

兄の人数+姉の人数= 0 から一人っ子を引くことで定義した。

③ 末子ダミー

弟の人数+妹の人数= 0 から一人っ子を引くことで定義した。

④ 男きょうだい数

兄と弟の合計数。本人は含まれない。兄の数+弟の数で定義した。

⑤ 女きょうだい数

姉と妹の合計数。本人は含まれない。姉の数+妹の数で定義した。

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出生順位のダミー変数の分布が下記の表 3、 4 である。

表 3 出生順位ダミー変数の度数分布(男女)

表 4 出生順位ダミー変数の相対度数分布 (男女 )(%)

表 3、 4 からも少子化の影響が読み取れる。

1935 年~ 1955 年までは第一子よりその他の割合が高かったが、それ以降は第

一子の割合が高くなっている。また、末子の割合も 1956 年から高くなっている。

男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性一人っ子 5 4 20 26 36 34 27 29

第一子 58 43 189 224 204 227 148 208末子 35 25 154 213 209 209 127 186

その他 101 104 256 273 81 103 65 68合計 199 176 619 736 530 573 367 491

1935~40年生 1941~55年生 1956~70年生 1971~85年生

男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性一人っ子 2.5 2.3 3.2 3.5 6.8 5.9 7.4 5.9

第一子 29.2 24.4 30.5 30.4 38.5 39.6 40.3 42.4末子 17.6 14.2 24.9 28.9 39.4 36.5 34.6 37.9

その他 50.8 59.1 41.4 37.1 15.3 18.0 17.7 13.9合計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0

1935~40年生 1941~55年生 1956~70年生 1971~85年生

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4 その他の説明変数

先行研究にならい、「 15 歳暮らし向き」「父親最終学歴」「 15 歳時の父親の仕

事」を加える。さらに本稿では「母親最終学歴」の説明変数も追加する。

① 15 歳暮らし向き:中学 3 年生の時の暮らし向きが普通の暮らし向きと比べ

て豊かか貧しいかを答えた。

(1)豊か (2)やや豊か (3)ふつう (4)やや貧しい (5)貧しい

表 5 15 歳暮らし向きの度数分布

15 歳暮らし向きではどの年代も「ふつう」と答えた人が多く見られた。

②父 (母 )親最終学歴:父親が最後に行った学校。中退も卒業とみなし、旧制

学校も含まれている。

(1)旧制尋常学校 (2)旧制高等小学校 (3)旧制中学校、高等女学校 (4)実業学校 (5)

師範学校 (6)旧制高校、専門学校、高等師範学校 (7)旧制大学 (8)新制中学校 (9)

新制高校 (10)新制短大、高専 (11)新制大学 (12)新制大学院 (13)その他

男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性豊か 5 19 22 45 21 48 30 45やや豊か 17 26 62 89 74 64 56 86ふつう 100 100 322 439 335 389 245 340やや貧しい 42 22 150 104 82 56 29 18貧しい 35 9 63 59 18 16 7 2合計 199 176 619 736 530 573 367 491

1935~40年生 1941~55年生 1956~70年生 1971~85年生

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表 6 父親、母親最終学歴の度数分布(本人が男性)

表 7 父親、母親最終学歴の度数分布(本人が女性)

旧制高等小学校のみどの年代の男女の父親母親にも見られた。

父親 母親 父親 母親 父親 母親 父親 母親旧制尋常小学校 111 114 283 273 76 61旧制高等小学校 44 45 146 148 55 40 1 1旧制中学校 20 32 83 147 53 56 3 2実業学校 5 1 22 7 9 3師範学校 3 3 18 9 1旧制高校 9 3 30 15 11 11 1旧制大学 7 28 15新制中学校 3 9 109 134 66 45新制高校 4 8 143 193 185 237新制短大、高専 1 4 13 7 38新制大学 1 2 1 52 17 97 40新制大学院 2 1 5その他 1 1 2 4合計 199 199 619 619 530 530 367 367

1935~40年生 1941~55年生 1956~70年生 1971~85年生

注:「旧制中学校・高等女学校」を「旧制中学校」、「旧制高校・専門学校・高等師範学校」を「旧制高校」と記入している。

父親 母親 父親 母親 父親 母親 父親 母親旧制尋常小学校 86 102 307 301 65 46旧制高等小学校 35 31 179 174 51 38 2 1旧制中学校 20 33 110 188 54 82実業学校 7 3 19 10 8 3師範学校 8 2 15 14 3 5旧制高校 9 4 45 19 19 6旧制大学 9 40 17 1新制中学校 1 8 10 120 156 92 81新制高校 6 14 169 200 263 308新制短大、高専 1 7 22 15 60新制大学 1 6 2 57 12 112 31新制大学院 2 4その他 1 1 3 1 3 2 10合計 176 176 736 736 573 573 491 491

1935~40年生 1941~55年生 1956~70年生 1971~85年生

注:「旧制中学校・高等女学校」を「旧制中学校」、「旧制高校・専門学校・高等師範学校」を「旧制高校」と記入している。

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③ 15 歳時の父親の仕事:15 歳時の父親の仕事を答えた。雇用形態を問うたも

の。

(1)経営者 (2)常時雇用されている一般従業者 (3)臨時雇用・パートアルバイト

(4)派遣社員 (5)契約社員 (6)自営業主 (7)家族従事者 (8)内職 (9)学生 (10)無職

(11)父はいない

表 8 15 歳時の父親の仕事の度数分布

1935~ 55 年までは自営業主の数が多かったが、1956 年以降は正社員の数が多く

なっている。

男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性経営者 21 18 45 57 50 35 29 28正社員 69 57 235 292 296 342 252 335パートアルバイト 3 2 3 8 2 4 2 6派遣社員 1契約社員 1 1 1自営業主 95 94 276 306 145 157 73 108家族従事者 4 3 11 17 8 5 1 2内職 1学生 1無職 7 1 9 7 4 6 3 3父はいない 39 49 24 23 7 7合計 199 176 619 736 530 573 367 491

1935~40年生 1941~55年生 1956~70年生 1971~85年生

注:「常時雇用されている一般従業者」を「正社員」、「臨時雇用・パートアルバイト」を「パートアルバイト」と記入している。

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5 被説明変数

被説明変数を本人の最終学歴にする。その時の分布は下記の表 9 である。

表 9 被説明変数(最終学歴)の相対度数分布 (%)

先行研究にもあった通り、1955 年頃を境に男女とも大学卒業者の割合が高くな

っている。また、女性は大学卒業者だけでなく、短大・高専卒業者の割合も高

くなっている。

男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性中学 31.2 36.9 18.6 17.3 4.2 2.3 3.0 1.6高校 48.2 56.8 48.8 67.3 48.3 62.0 52.0 49.5

短大・高専 0.5 4.6 3.2 9.1 3.4 21.1 2.7 22.8大学 19.6 1.7 27.5 6.4 40.0 14.1 39.2 24.2

大学院 0.5 1.9 4.2 0.5 3.0 1.8合計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0

注:旧制学校は含まれていない。

注:短大と高専は一般的に教育年数が同じであるから同等とみなす。

1935~40年生 1941~55年生 1956~70年生 1971~85年生

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第 4 章 分析手法

本稿では順序プロビットモデルによる分析を行う。通常の回帰分析では、被

説明変数が連続的な値を取ることを前提に通常の最小二乗法 (OLS)によって説

明変数の係数を推測する。しかし、被説明変数が離散的な値をとる場合、 OLS

は正しくない。本稿では被説明変数の本人の最終学歴は、 1 中学校卒業 2 高校

卒業 3 高専・短大卒業 4 大学卒業 5 大学院卒業のように離散的な値をとる。

順序プロビットモデルを考える際には、順序に応じて与えられている数値間

の絶対的な差に意味合いがないことに注意する必要がある。例えば、 1 中学卒

業と 2 高校卒業の差が 5 大学卒業と 6 大学院卒業に等しいということはないと

いうことである。本人の最終学歴を示す 1~ 5 の数字は、 A~E のような記号の

ようなものとして捉えればよい。

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第 5 章 分析結果

先行研究と同様に高齢コーホート (1935~ 40 年生 )、中年後期コーホート

(1941~ 55 年生 )、中年前期コーホート (1956~ 70 年生 )、若年コーホート (1971

~ 85 年生 )に分けた。

各コーホートを男女に分けて分析した結果を表 10 にまとめた。

表 10 順序プロビットモデルの推定結果

表 10から

① 一人っ子ダミー

高齢コーホートの男性にのみマイナスの有意性を観測できた。

② 第一子ダミー

中年前期コーホートの男性、若年コーホートの女性にプラスの有意性を観測で

きた。

③ 末子ダミー

中年後期コーホートの女性、中年前期コーホートの男性にプラスの有意性を観

測できた。

④ 男きょうだい数

高齢コーホートの男性、中年後期コーホートの男性と女性、中年前期コーホー

トの男性、若年コーホートの男性と女性にマイナスの有意性を観測できた。

⑤ 女きょうだい数

高齢コーホートの男性、中年後期コーホートの男性と女性、若年コーホートの

男性と女性にマイナスの有意性を観測できた。

男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性

一人っ子ダミー -0.99 * 0.51 -0.39 -0.17 0.45 0.00 -0.36 0.15第一子ダミー 0.16 -0.02 0.04 -0.01 0.42 ** 0.19 0.16 0.40 **

末子ダミー -0.06 0.14 0.17 0.38 *** 0.46 *** 0.01 0.11 0.15男きょうだい -0.15 ** -0.08 -0.17 *** -0.14 *** -0.13 * -0.03 -0.23 * -0.25 **女きょうだい -0.12 * 0.08 -0.08 ** -0.10 ** -0.02 0.03 -0.36 *** -0.21 **

15歳時の暮らし向き -0.22 ** -0.16 -0.24 *** -0.38 *** -0.33 *** -0.33 *** -0.07 -0.22 ***父親最終学歴 0.27 *** 0.21 *** 0.18 *** 0.14 *** 0.05 ** 0.03 0.15 ** 0.30 ***

母親最終学歴 0.20 ** 0.13 0.04 0.10 *** -0.02 0.01 0.12 0.15 **

15歳時の父親の仕事 -0.06 * -0.04 -0.06 *** -0.08 *** -0.05 *** -0.09 *** -0.05 -0.04N 199 176 619 736 530 573 367 491注:***:有意水準1% **:有意水準5% *:有意水準10%

1941~55年生まれ 1956~70年生まれ 1971~85年生まれ1935~40年生まれ

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末子は中年後期コーホートの女性、中年前期コーホートの男性にプラスの有

意性を観測できた。これは先行研究で紹介した 1955 年頃を境に起きた高学歴化

の影響を受けたものだと思われる。しかし、若年コーホートでは男女ともに観

測されていない。逆に若年コーホートの女性では第一子がプラスの有意性を観

測している。

きょうだい数は先行研究と同様に男きょうだい、女きょうだいともにほとん

どのコーホートでマイナスの有意性を観測できた。これはきょうだいが多くな

ることで親が子ども一人当たりに使えるお金が減ってしまうためと推測できる。

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説明変数は順序変数のためダミー変数を用いて分析を行った。その結果が

下記の表 11、 12 である。

表 11 説明変数をダミー変数にした結果 (男性 )

一人っ子ダミー -1.25 -0.45 0.46 -0.24

第一子ダミー 0.25 -0.01 0.41 ** 0.23

末子ダミー -0.05 ** 0.18 0.44 ** 0.16

男きょうだい -0.14 ** -0.17 *** -0.17 ** -0.21 *

女きょうだい -0.14 -0.07 * -0.06 -0.45 ***

暮らし向き豊か 0.22 0.63 ** 1.09 *** 0.08暮らし向きやや豊か 0.93 ** 0.70 *** 1.23 *** -0.30暮らし向きふつう 0.71 *** 0.40 ** 0.77 ** -0.52暮らし向きやや貧しい 0.59 ** 0.17 0.54 * 0.30父旧制尋常小学校 -0.77 -0.18 0.20父旧制中学校 -0.10 0.16 -0.04 -0.50父実業学校 0.82 0.67 ** -0.06父師範学校 1.43 1.01 *** 0.67父旧制高校 0.53 0.66 ** -0.05 0.60父旧制大学 0.24 0.95 *** 0.31父新制中学校 0.43 -0.39 -0.62父新制高校 -0.16 0.20 -0.34父新制短大・高専 0.25 0.35父新制大学 0.80 *** 0.05父新制大学院 0.11 0.41父その他 -0.18 0.36母旧制尋常小学校 0.22 ** -0.20 -0.35母旧制中学校 0.93 0.30 * 0.06 -1.51母実業学校 0.42 0.35 -1.03母師範学校 0.46 ** -0.40母旧制高校 1.90 0.59 * 0.92 **母旧制大学母新制中学校 0.08 -0.28 -1.13 *母新制高校 0.47 -0.01 -1.08 *母新制短大・高専 0.08 0.44 -0.70母新制大学 0.64 0.38 0.03 -0.55母新制大学院 1.04母その他 -6.86 -0.97父経営者 0.10 1.37 * -0.51 0.62父正社員 0.07 1.36 * -0.46 0.42父派遣社員父契約社員 1.09父自営業主 -0.27 1.21 -0.62父家族従事者 -0.51 1.04 -1.21 0.37父内職 -0.62父学生 -0.76父無職 -0.25 1.10 -1.11 -1.16父はいない 0.70 -1.07 0.33N 199 619 530 367注:***:有意水準1% **:有意水準5% *:有意水準10%

1956~70年生 1971~85年生

注:「常時雇用されている一般従業者」を「正社員」、「旧制中学校・高等女学校」を「旧制中学校」、「旧制高校・専門学校・高等師範学校」を「旧制高校」と記入している。

1935~40年生 1941~55年生

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表 12 説明変数をダミー変数にした結果 (女性 )

一人っ子ダミー 0.66 -0.37 0.07 -0.14

第一子ダミー 0.24 -0.07 0.31 * 0.30

末子ダミー 0.43 0.38 *** 0.07 0.05

男きょうだい -0.04 -0.16 *** 0.01 -0.28 ***

女きょうだい 0.08 -0.10 ** 0.06 -0.27 ***

暮らし向き豊か 1.56 ** 1.21 *** 1.23 *** 1.06暮らし向きやや豊か 1.15 1.41 *** 1.37 *** 1.37暮らし向きふつう 1.34 ** 0.87 *** 0.87 ** 0.87暮らし向きやや貧しい 1.23 * 0.53 ** 0.71 * 0.40父旧制尋常小学校 -0.56 * -0.01 -0.45父旧制中学校 -0.85 * 0.01 -0.37父実業学校 0.99 0.10 0.01父師範学校 0.10 0.42 -0.79父旧制高校 -0.17 0.24 0.15父旧制大学 0.89 0.87 *** 0.06 -0.43父新制中学校 0.14 -0.97 *** 0.33父新制高校 0.31 -0.32 0.69父新制短大・高専 -1.25 ** 1.32父新制大学 2.40 ** 1.68 *** 0.24 1.29父新制大学院 0.02 1.18父その他 3.02 *** -0.61 -1.58 -0.50母旧制尋常小学校 -0.11 -0.50 *** 0.03母旧制中学校 0.92 ** 0.37 ** 0.81 ***母実業学校 -0.48 0.97 ** -0.70母師範学校 -1.31 0.34 0.86母旧制高校 1.16 0.73 ** -0.08母旧制大学母新制中学校 0.47 0.25 0.39 0.65母新制高校 0.72 * 0.67 ** 0.74母新制短大・高専 1.27 1.12 *** 1.02母新制大学 7.88 1.42 *** 1.59母新制大学院母その他 -0.98 0.24 1.19父経営者 4.25 1.37 *** 0.51 0.31父正社員 4.65 1.39 *** 0.70 0.43父派遣社員 0.72父契約社員 5.85父自営業主 4.20 1.18 ** 0.63 0.15父家族従事者 7.00 0.68 0.61 1.79 *父内職 0.10父学生父無職 5.54 0.01 0.41 0.12父はいない 0.52 -0.50 0.19N 176 736 573 491注:***:有意水準1% **:有意水準5% *:有意水準10%

1956~70年生 1971~85年生

注:「常時雇用されている一般従業者」を「正社員」、「旧制中学校・高等女学校」を「旧制中学校」、「旧制高校・専門学校・高等師範学校」を「旧制高校」と記入している。

1935~40年生 1941~55年生

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表 11、 12 の結果は表 10 と大きく違いはないが以下の点で異なる。

1935~ 40 年生の男性の末子にマイナスの有意性が新たに観測できた。一人

っ子と女きょうだいの有意性がなくなった。

1941~ 55 年生の男性の女きょうだいの有意性が 5%から 10%に変わった。

1956~ 70 年生の男性の末子の有意性が 1%から 5%に、男きょうだいの有意性

が 10%から 5%に変わった。

1956~ 70 年生の女性の第一子にプラスの有意性を新たに観測できた。

1971~ 85 年生の女性の男きょうだいと女きょうだいの有意性が 5%から 1%

に変わった。

1971~ 85 年生の女性の第一子の有意性がなくなった。

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第6章 おわりに

本稿では調査対象本人が無作為抽出されている本人データを使用している。

同じ親のもとで育ったきょうだいのデータである、いわゆるきょうだいデータ

を使用していない。きょうだいデータを使用して末子に焦点を当てるとより高

い精度の分析ができるだろう。

数年後に公表される SSM15 のデータを用いることで若年コーホートよりもさ

らに若い年代の分析が出来るようになり、より新しい結果が得られることが楽

しみである。

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謝辞

本稿の分析に当たり、東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカ

イブ研究センター SSJ データアーカイブから〔「 2005 年社会階層と社会移動

( SSM)全国調査」( 2005SSM 研究会データ管理委員会)〕の個票データの提

供を受けました。

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参考文献

平沢和司 (2011)「きょうだい構成が教育達成に与える影響について‐ NFRJ08

本人データときょうだいデータを用いて‐」『第 3 回家族についての全国調査

( NFRJ08)第 2 次報告書 4『階層・ネットワーク』』日本家族社会学会全国家族

調査委員会、 21-43 頁

Monique de Haan, (2010) “ Birth order, family size and educational

attainment” Economic of Education Review 29 (4)pp.576-588