30
230 3.5 型技術分野 3.5.1 型技術分野ロードマップの考え方 (1) 型技術とは 金型は、一対の金型により構成される三次元空間を用い、素材に対し形状を転写す る道具である。この金型は成形材料ごとに異なり、その製作には、最新の技術が活用 されている。従って、型技術には、材料・熱処理技術、加工技術、解析技術、設計技 術が基盤技術としてあり、さらに高度な技能が組み合わされて成り立っているもので ある。 (2) 金型とそれを取り巻く現状 「型」を用いた転写技術によって世の中の工業製品は生み出されると言っても過言 ではない。電気機器・自動車の例からわかるように、これら日本の代表的工業製品は、 型を用いて製作された素形材の組み合わせで構成されているのがほとんどである。素 形材製造の技術もかなりの部分は型技術に集約されおり、 2 次加工が不要な成型技術 が追求されている。素形材製造には鋳造、鍛造、金属プレス、燒結、射出成形等があ り、成型材料ごとにそれぞれの加工法に応じた型が使用される。 日本では、多くの型技術を海外から導入し、さらに CAD/CAMNC 加工機の導入 に伴い型生産技術の高度化を実現することで、世界一の金型生産国としての地位を築 いてきた。しかしながら、日本の製造業のグローバル展開に伴い、国際的な価格競争 に巻き込まれ、近年では生産量において縮小傾向にあると言われている。従来、日本 の金型メーカの強みの一つであった大型プレス金型においても、過度な価格競争を展 開するあまり、収益率の悪化から国際競争力も低下しつつある。 製造業のグローバル展開が進むほど、部品や金型の地元調達率向上が必須条件とな る。したがって、日本の金型メーカも海外展開や海外型メーカとの連携も視野に入れ ざるを得ず、それが海外特にアジア諸国における型メーカの技術レベルアップにつな がり、コスト競争において厳しい立場におかれるという皮肉な結果を招いている。多 くの日本の金型メーカは苦しい経営を余儀なくされているが、常に高度な型技術を追 求することは継続しなければならない。 日本の製造業は今急速に変化している。自動車産業においては、国内生産量が海外 生産量を下回る状況となっている。新車開発から量産に至るまでの時間はさらに短く なり、また世界中に同品質の車を同時期に供給することが要求されている。型の品質 やリードタイムに対する要求はさらに厳しくなることが予想され、こうした状況は、 日本の金型メーカにとって千載一遇のチャンスとも言える。高度な技術を要するもの、 少量生産品や開発のリードタイムの短いもの、商品サイクルが短いものなどの生産は 今でも日本に残っている。また、たとえ量産品でも、新製品開発や最初の立ち上げは 日系メーカが行なう場合が多い。したがって、我が国のものつくりの中に占める新製 品開発産業の割合は相対的に大きくなることが予想される。 多品種少量生産は時代の流れであり、グローバル展開が進んだ現在、自動車などで は各国で同時期に生産するため、ひとつのモデル用に多数の金型を同時に短期間で調

型技術分野 - 素形材センター...230 3.5 型技術分野 3.5.1 型技術分野ロードマップの考え方 (1) 型技術とは 金型は、一対の金型により構成される三次元空間を用い、素材に対し形状を転写す

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230

3.5 型技術分野 3.5.1 型技術分野ロードマップの考え方 (1) 型技術とは 金型は、一対の金型により構成される三次元空間を用い、素材に対し形状を転写す

る道具である。この金型は成形材料ごとに異なり、その製作には、最新の技術が活用

されている。従って、型技術には、材料・熱処理技術、加工技術、解析技術、設計技

術が基盤技術としてあり、さらに高度な技能が組み合わされて成り立っているもので

ある。 (2) 金型とそれを取り巻く現状 「型」を用いた転写技術によって世の中の工業製品は生み出されると言っても過言

ではない。電気機器・自動車の例からわかるように、これら日本の代表的工業製品は、

型を用いて製作された素形材の組み合わせで構成されているのがほとんどである。素

形材製造の技術もかなりの部分は型技術に集約されおり、2 次加工が不要な成型技術

が追求されている。素形材製造には鋳造、鍛造、金属プレス、燒結、射出成形等があ

り、成型材料ごとにそれぞれの加工法に応じた型が使用される。 日本では、多くの型技術を海外から導入し、さらに CAD/CAM、NC 加工機の導入

に伴い型生産技術の高度化を実現することで、世界一の金型生産国としての地位を築

いてきた。しかしながら、日本の製造業のグローバル展開に伴い、国際的な価格競争

に巻き込まれ、近年では生産量において縮小傾向にあると言われている。従来、日本

の金型メーカの強みの一つであった大型プレス金型においても、過度な価格競争を展

開するあまり、収益率の悪化から国際競争力も低下しつつある。 製造業のグローバル展開が進むほど、部品や金型の地元調達率向上が必須条件とな

る。したがって、日本の金型メーカも海外展開や海外型メーカとの連携も視野に入れ

ざるを得ず、それが海外特にアジア諸国における型メーカの技術レベルアップにつな

がり、コスト競争において厳しい立場におかれるという皮肉な結果を招いている。多

くの日本の金型メーカは苦しい経営を余儀なくされているが、常に高度な型技術を追

求することは継続しなければならない。 日本の製造業は今急速に変化している。自動車産業においては、国内生産量が海外

生産量を下回る状況となっている。新車開発から量産に至るまでの時間はさらに短く

なり、また世界中に同品質の車を同時期に供給することが要求されている。型の品質

やリードタイムに対する要求はさらに厳しくなることが予想され、こうした状況は、

日本の金型メーカにとって千載一遇のチャンスとも言える。高度な技術を要するもの、

少量生産品や開発のリードタイムの短いもの、商品サイクルが短いものなどの生産は

今でも日本に残っている。また、たとえ量産品でも、新製品開発や最初の立ち上げは

日系メーカが行なう場合が多い。したがって、我が国のものつくりの中に占める新製

品開発産業の割合は相対的に大きくなることが予想される。 多品種少量生産は時代の流れであり、グローバル展開が進んだ現在、自動車などで

は各国で同時期に生産するため、ひとつのモデル用に多数の金型を同時に短期間で調

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231

達しなければならず、規模も大きくなってくる。コスト低減は当然であり、そのため

にコピー型による生産方式が取られようとしている。こうした流れに対応し、日本で

なければ製造できない高度な金型やその成形品に特化し、また製造技術やノウハウを

社外に持出さないこと、あるいは常に新しい技術開発が継続できれば、日本の金型メ

ーカが世界一の地位を保つことは十分可能である。 (3) 将来の金型技術 日本の金型産業は、現在アジア諸国の型技術の猛追に直面し、厳しいグローバル競

争にさらされている。国内の金型生産も縮小傾向にあると言われているが、国内メー

カからの非常に厳しい品質、納期、コスト管理の中、日本の金型メーカは高度な型生

産技術を身に付け、生き残りを賭けている。当然のことながら日本の金型メーカは、

海外では生産できない素形材用の高度な金型に取り組んでいる。 高度な金型とは、複雑形状の素形材、軽量難加工の素形材、微小細密な素形材、高

精度な素形材を生産する金型であり、これらを生産する素形材製造技術が優れている

こと必要になる。 国内メーカからは、現在も短納期や低コスト、高性能といった要件を満たす金型への

要望が強い。これらを実現するため、金型生産における IT 技術の開発・活用が継続

されなければならない。金型設計では 3 次元 CAD の利用が不可欠であり、金型設計

に特化した機能開発あるいはパラメトリック設計機能、さらにはユーザー毎の機能開

発環境の整備が進んでいる。また CAE システムによる成型シミュレーション技術は

ほぼ実用粋にあり、型設計支援から自動型設計へ機能開発がすすみつつある。3 次元

CAM による高精度な NC 加工は一般化しており、多軸加工技術が型加工に適用され

ることも可能な状況にある。さらに、高速ミーリング加工、ラピッドプロトタイピン

グ、電子ビームを応用した型鏡面加工といった新加工法が開発され活用されている。

さらには、型生産における工程管理システム、加工データベースの活用といった IT技術も普及している。

金型の設計・生産技術の革新は、関連の先端技術を次々と取込むことによって成さ

れてきた。日本には、型産業を支える工作機械、工具、材料メーカが多く集積してい

ることも、日本の金型メーカの強みにつながっている。したがって、こうした企業間

の連携をさらに強化し、新しい技術開発を促進することは必要である。 金型の生産において、ラピッドプロトタイピング技術が型製作に応用されている。

しかしながら多種多様の金型に十分対応できるレベルではない。したがって、当面は、

切削加工、研削加工、放電加工等の除去加工が活用されることになる。こうした除去

加工を行う工作機械の高機能化・高精度化は著しく、金型加工において工作機械への

依存度が高まってきている。したがって、さらに高度な技術開発とその導入により金

型加工技術を差別化した上で、高付加価値な製品を生み出さなければならない。高速

ミーリング加工、高精度放電加工、レーザ加工などの最先端の加工技術をさきがけて

導入することが重要である。また一方で、型設計技術の高度化、あるいは技能の伝承

にも取り組まなければならない。

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日本の製造業は日本でないと生産できない高度なものづくりを指向し、今後もこれ

が徹底されるものと推測される。日本でものづくりが継続する以上金型は存在する。

高度なものづくりには高度な金型が求められる。その高度な金型は、高度な技術の開

発が必須である。世界の中でそのような技術開発を率先できる国は現状では日本が最

も適した国である。

将来の金型技術の方向性として今般、型技術戦略をまとめたが、その概念図である

「革新的次世代型技術」を本項の文末に掲載する。 (4) 取り組むべき技術課題

金型技術において取り組むべき技術課題を、次の 4 つの大項目に分けて抽出し、重

要度を評価した上で戦略的課題として、技術ロードマップに明確にすることとした。 ・大項目 Ⅰ 高品質、高付加価値の素形材製品を製造するための技術 Ⅱ 設計・製造プロセスを高度化するための技術 Ⅲ 社会的要請や制約に対応するための技術 Ⅳ 素形材技術革新を支える技術的基盤

ロードマップ作成作業では、上記大項目をさらに下記に示す中項目に分け、中項目

毎に技術課題を抽出した。 Ⅰ 高品質、高付加価値の素形材製品を製造するための技術

Ⅰ -1 新機能を実現するための新材料技術 Ⅰ -2 高度な生産を可能とする技術 Ⅰ -3 高品質高付加価値を実現するための新プロセス Ⅰ -4 新規ユーザー分野に対応する新素形材製品

Ⅱ 設計・製造プロセスを高度化するための技術

Ⅱ -1 設計製造プロセス最適化のための知能化情報化技術 Ⅱ -2 グローバルネットワークを活用した統合システム Ⅱ -3 設計データの即時製品化技術 Ⅱ -4 高品質、新機能を支える評価技術

Ⅲ 社会的要請や制約に対応するための技術

Ⅲ -1 省エネ・温暖化ガス削減のための素形材技術 (長寿命化など ) Ⅲ -2 省資源のための素形材技術 (資源枯渇問題への対応 ) Ⅲ -3 安全・安心・快適な生活のための素形材技術 (医療・生体関連、低騒音・低

振動、有害物質の排出抑制など)

Ⅳ 素形材技術革新を支える技術的基盤

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233

Ⅳ–1 新たな技術体系の構築 Ⅳ -2 素形材技術の支援技術・周辺技術の構築 Ⅳ -3 研究開発体制の整備 Ⅳ -4 技術・技能の伝承 Ⅳ -5 人材の育成と確保 Ⅳ -6 技術と経営の融合 Ⅳ -7 グローバル化への対応

抽出した各技術課題は、以下の 8 項目に関して検討を加え、8 項目中 5 項目以上該

当する技術課題を重点技術課題とし、さらに詳細な検討を加えた。

1.日本の技術競争力優位

2.共通基盤性

3.ブレークスルー技術

4.市場のインパクト

5.基礎技術の開発が必要

6.安全・安心の確保のために必要

7.標準化の検討が望まれる技術

8.省資源、省エネルギ

型技術に関しては、鋳造分野、鍛造分野、金属プレス分野、粉末冶金分野、熱技術

分野においても個々に検討が加えられており、各分野からの提案も加味することとし

た。さらに 6 分野に共通する課題も抽出し、ロードマップの作成を行った。

すなわち、大項目「Ⅳ 素形材技術革新を支える技術的基盤」における技術体系の

構築、支援技術の構築、研究体制、技術・技能伝承、人材育成や技術と経営の融合お

よびグローバル化への対応といった内容は共通課題とした。

今回のロードマップを作成するにあたり、プラスチック成型分野を追加すべきとの

提言があったことを付記する。

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革新的次世代型技術-高付加価値製品を生み出すオンリーワン・マザーツール-

現状と課題

・メンテナンスフリーな金型・低コスト、短納期で納入可能な金型・ユーザーニーズをタイムリーに実現できる金型

・高精度な成形品を安定して生産できる金型を設計・生産すること

型技術のプロセスの革新

型技術の将来像①技能に依存しなくても良い金型の設計・生産技術②高度に自動化された型生産技術③トライ工程の省略が可能な型技術④超短納期が可能な型技術の確立

ムダゼロプロセスで歩留まりが極限まで高まる・シミュレーション技術を活用したトライレス化

・高度な工程管理

実効性高いシミュレーション予測、工程管理システム、加工データベース、インライン精密計測

ITで高効率生産が実現される・CAD/CAM/CAE技術に基づく型生産技術

・迅速な設計変更対応

ゼロエミッションに変

革される

・完全循環型生産技術

・型材、成形材の完全な再利用

3次元ソリッドデータに基づく型設計

型製作の高度な自動化

高精度なオンライン計測

型加工・

組み立て

将来材料分野の革新寿命予測可能な型材と成形性が向上した成形材料の開発

型設計トライ・型修正

型技術のプロセス革新

将来成形品特性・超薄肉軽量化成形品・欠陥のない高強度成型品

・優れた表面特性の外観成形品

・一体成形した精密成形品

環境に配慮したプロセスで製品ができる・完全ドライ切削技術

・離型剤、潤滑剤フリーな成形技術

234

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235

3.5.2 型技術分野のロードマップ概要一覧

Ⅰ. 高品質、高付加価値の素形材製品を製造するための技術

中項目 小項目

(テーマ名) 重要度 技術の概要

開発・実用化・普及 線表

現在 5 年後 10 年後 15 年後 20 年後 25 年後律速要因

重点化の評価

1 2 3 4 5 6 7 8

Ⅰ-1

新 機 能 を

実 現 す る

た め の 新

材料技術

Ⅰ○1 リサイクルを考慮し

た型材の開発 各種の金型に使用される金型材の標準化、成分表示

化により、リサイクル化に可能な金型材料の確立。

開発:金型材の標準化、金型純化技術開

実用化:リサイクル技術、ルート確立

普及:リサイクル金型の使用、安定供給体

現 5 10 年後 ● ● ●

開発 実用化 普及

リ サ イ ク ル 手

法、ルート

○ ○ ○ ○

Ⅰ○2 寿命が予測できる型

材の開発 ◎ 操業過程における金型の寿命予測材料の開発は材料

のみならず、予知技術、金型の事前評価技術の確立

が必要になる。それにより各種の生産数量にあった適

正品質の高合金添加元素の少ない金型材料を開発す

る。

開発:寿命に応じた金型材の開発、金型

評価・予知技術

実用化:金型の操業評価、相関性確認

普及:最適な操業形態普及

現 5 10 年後 ● ● ●

開発 実用化 普及

低合金高品質

金型材開発

寿命評価、予

知技術

○ ○ ○ ○ ○

Ⅰ○3 超精密(サブミクロン)金型用材料の開発

形状加工する際に、結晶粒界や炭化物の大きさが問

題になる。これらをさらに小さくした鋼材・セラミック材の

開発。

現 2 5 年後 ● ● ●

開発 実用化 普及

工具素材

工具開発

加工条件 ○ ○ ○

Ⅰ○4 EDM 用新素材の活用

技術 深物金型の形状加工では EDM が多用される。新たに

開発された炭素電極を加工するための最適条件の探

索が必須。

現 3 5 年後 ● ● ●

開発 実用化 普及

工具素材

工具開発

加工条件 ○ ○ ○ ○

【重点化の評価】 1.日本の技術競争力優位 5.基礎技術の開発が必要 2.共通基盤性 6.安全・安心の確保のために必要 3.ブレイクスルー技術 7.標準化の検討が望まれる技術 4.市場のインパクト 8.省資源、省エネルギ

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236

中項目 小項目

(テーマ名) 重要度 技術の概要

開発・実用化・普及 線表

現在 5 年後 10 年後 15 年後 20 年後 25 年後律速要因

重点化の評価

1 2 3 4 5 6 7 8

Ⅰ○5 材料リユースのため

の型設計技術 生産合理化による金型材の有効利用、カセット金型化

を可能とする型設計技術の開発。並びに、溶接、肉盛

り、表面改質による高機能化設計技術の開発。

開発:金型材分割設計方法、金型表面改

質方法の開発

実用化:高機能表面改質・溶接技術、設

計ソフト

普及:加工手法の開発普及。

現 5 10 年後 ● ● ●

開発 実用化 普及

設計手法開

発、改質技術

○ ○ ○

Ⅰ-2

高 度 な 生

産を可能と

する技術

Ⅰ○6 高速・高効率生産技術

の開発(高速ミーリン

グ、複合加工、試作対

応)

◎ 高速ミーリングによる高速・高精度加工、多軸加工を用

いた省段取りによる高効率化、積層造形を用いた試作

品の迅速製作などの高速・高能率化技術。

現 5 10 年後 ● ● ●

一部実用化 実用化 普及・高度化

アップデイト

○ ○ ○ ○ ○

Ⅰ○7 高速・高精度加工を実

現するためのデータ

ベース構築(工程すみ

分けソフト)

◎ 高速・高精度な加工を実現するためには、使用する素

材、製作する形状に応じて最適な加工法を選択してく

れるソフトウェアがあれば便利。CAM の高度化。

現 3 5 7 10 年後 ● ● ● ● ●

開発 実用化 普及・高度化

一部実用化 実用化

アップデイト

○ ○ ○ ○ ○

Ⅰ○8 断面変化中空形材製

造用金型モジュール

(複雑中空部品成形用

金型システム)

例えば複雑中空部品の押し出し成形において、金型

構造をリアルタイムで変化することによって異形形状の

パイプなどが成形できる技術。

現 3 5 年後 ● ● ●

開発 実用化 普及

○ ○

Ⅰ-3

高品質・高

付加価値を

実現するた

めの新プロ

セス

Ⅰ○9 成形シミュレーショ

ンソフトの高精度化

と活用 (プラモール

ド・プレス)

◎ 成形シミュレーションの高精度化によるトライ0の実現

や冷却用配管のシミュレーションによる温度勾配の減

少による射出成形品のひけやソリの防止。

現 5 10 年後 ● ● ●

開発 実用化 普及

○ ○ ○ ○ ○

Ⅰ○10 高機能化成形技術(表面機能、軽量化、ナノ

インプリント等)の開

◎ 表面機能を活用するためのナノインプリントや微細形

状転写技術、さらなる薄膜化技術や軽量化技術の確

立。新メッキ材の開発やエッチング技術の高度化。

現 5 10 15 年後 ● ● ● ●

基礎開発 開発 実用化 普及

○ ○ ○ ○ ○

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中項目 小項目

(テーマ名) 重要度 技術の概要

開発・実用化・普及 線表

現在 5 年後 10 年後 15 年後 20 年後 25 年後律速要因

重点化の評価

1 2 3 4 5 6 7 8

Ⅰ-4

新 規 ユ ー

ザ ー 分 野

に対応する

新 素 形 材

製品

Ⅰ○11 航空宇宙などに対応す

る型技術

航空宇宙関連は今後ますます需要が増大する。現状

では高価なチタン、高強度アルミなどを材料にした機

械加工による一品料理であるが、型を駆使したこれら

の分野での生産技術の確立。

現 10 15 年後

● ● ●

開発 実用化 普及

安全に対する

信頼性

成形材料品質

の確保

多品種少量へ

の生産性

○ ○ ○

Ⅰ○12 医療などに対応する型

技術

高齢化に伴い、歯や骨の代用部品などの医療関連は

今後ますます需要が増大する。個人差があるため最終

的には高価なチタン、セラミックなどを材料にした機械

加工による一品料理であるが、中間製品として型を駆

使したこれらの分野で生産技術の確立。

現 5 10 年後

● ● ●

開発 実用化 普及

安全に対する

信頼性

成形材料品質

の確保

多品種少量へ

の生産性

○ ○ ○

Ⅰ○13 医療用微細金型加工

技術

◎ 医療分野において、装置の小型化・経済性、測定の容

易性より、μTAS(マイクロトータルアナリシスシステム)、Lab-on-a-Chip、 マイクロマシン用部品等が求められ

ている。金型の設計と、微細加工の高度化技術。

現 5 10 年後

● ● ●

開発 実用化 普及

安全に対する

信頼性

成形材料品質

の確保

加工条件

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

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238

Ⅱ.設計・製造プロセスを高度化するための技術

中項目 小項目

(テーマ名) 重要度 技術の概要

開発・実用化・普及 線表

現在 5 年後 10 年後 15 年後 20 年後 25 年後律速要因

重点化の評価

1 2 3 4 5 6 7 8

Ⅱ-1

設計・製造

プロセス最

適化のため

の知能化・

情 報 化 技

Ⅱ○1 3D を活用した製造プ

ロセスの効率化 ◎ 金型設計・製造に寄与する 3 次元ソリッドシステムの機

能向上、及び異システム間のモデル変換ソフトの開

発。

現 3 5 年後 ● ● ●

開発 実用化 普及

1)非接触測定

ツール 2)機上測定精

度向上 3)5 軸マシニン

グ セ ン タ ー の

精度保証 4)微細切削工

具 に よ る加 工

精度向上

○ ○ ○ ○

Ⅱ○2 データ互換性のある

型専用ソリッドシス

テム CAD/CAM の開

100%互換性の有るソリッドソフト(或いは 100%元デー

タが壊れない変換ソフト)が開発されると、金型製作上

最も重要な上流工程である金型設計と三次元形状が

モデリング作業が飛躍的に工期短縮・精度向上が期待

出来る。

現 3 年後 ● ●

開発 実用化

情報処理技術

○ ○ ○ ○ ○

Ⅱ-3

設計データ

の 即 時 製

品化技術

Ⅱ○3 ラピッドマニュファ

クチャリング金型(粉末、板積層、ピンの活

用)の製造技術の開発

◎ 型製作の自動化あるいは最適な内部構造を実現する

ために、金属粉末や薄板を積層し金型を造形する技

術。

現 5 10 年後 ● ● ●

一部実用化 問題解決 普及

高度化 アップデイト

○ ○ ○ ○

Ⅱ-4

高品質・新

機能を支え

る評価技術

Ⅱ○4 上下型クリアランス

(ギャップ)の 3 次元自

動測定法

◎ プレス金型製造プロセスにおける適正板厚調整作業

やプレス成形時のパネルの歪による製品不具合対策と

して、繰り返し作業となっている上下型のクリアランス設

定をプレス機内で高精度・高能率で且つ簡便な方法

によって全面測定し、定量化する技術。

現 3 5 年後 ● ● ●

開発 実用化 普及

技 能 伝 承 問

題 、 納 期 短

縮、コストダウ

ン要請(技能者

の経験や繰り

返し作業上か

ら、)

○ ○ ○ ○ ○ ○

【重点化の評価】 1.日本の技術競争力優位 5.基礎技術の開発が必要 2.共通基盤性 6.安全・安心の確保のために必要 3.ブレイクスルー技術 7.標準化の検討が望まれる技術 4.市場のインパクト 8.省資源、省エネルギ

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239

中項目 小項目

(テーマ名) 重要度 技術の概要

開発・実用化・普及 線表

現在 5 年後 10 年後 15 年後 20 年後 25 年後律速要因

重点化の評価

1 2 3 4 5 6 7 8

Ⅱ○5 超高速、高精度非接触

三次元計測技術(と成

形品)

◎ 主に複製型を作成する上で、非接触で形状や面性状

を計測できる技術。

現 5 10 年後 ● ● ●

開発 実用化 普及

3D測定システ

ムの開発

○ ○ ○ ○ ○

Ⅱ○6 超高速、高精度複製技

術の開発

トライ・修正を繰り返し熟成させた金型とまったく同じ性

能を持つ複製型を作成する技術。

現 3 年後 ● ●

開発 実用化

Ⅱ○7 高機能コーティング (潤滑剤レス、離型剤

レス)

◎ 耐摩耗性と耐酸化性を兼ね備えた TiAlN 系膜や耐摩

耗性と潤滑性を兼ね備えた DLC 膜を冷間から熱間ま

での金型に適用することにより、潤滑剤や離型剤の減

少や削減を図る。

現 3 8 年後 ● ● ●

一部実用化 問題解決 普及

実用化

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240

Ⅲ.社会的要請や制約に対応するための技術

中項目 小項目

(テーマ名) 重要度 技術の概要

開発・実用化・普及 線表

現在 5 年後 10 年後 15 年後 20 年後 25 年後律速要因

重点化の評価

1 2 3 4 5 6 7 8

Ⅲ-1

省エネ・温

暖化ガス削

減のための

素 形 材 技

術(長寿命

化など)

Ⅲ○1 超軽量化樹脂の開発

(プラ型) ◎ 市販車に適用するには、成形速度および成形材料コ

ストの低減に課題がある。超軽量化材料(CFRP 相当

新材料)の開発と高速・高精度成形する型技術・設備

技術が開発課題である。

現 5 10 年後 ● ● ●

開発 実用化 普及

高 強 度 ・ 高 速

成形

を 可 能 と す る

新樹脂材料

○ ○ ○ ○ ○

Ⅲ○2 ネットシェイプ鋳鍛

造(素形材加工レス) 鋳造における冷却過程での成形品の変寸・変形、冷間

鍛造における成形品のスプリングバック・カス上がりな

どの原因により、後加工レスのネットシェイプ鋳・鍛造は

難課題である。成形設備の革新も含めて高精度成形

金型の開発が課題である。

現 2 年後 ● ●

開発 実用化

○ ○

Ⅲ-2

省資源のた

め の 素 形

材技術(資

源 枯 渇 問

題 へ の 対

応)

Ⅲ○3 砂型造型に対する耐

摩耗性が高く、再コー

ティング可能な表面

処理

常温・高温(250℃)・アミンガス雰囲気等の砂型鋳型造

型条件に耐えられ、砂型からの離型性良い表面処理

が求められる。更に主に鋳鉄と鋼材の 2 種類ある金型

母材に対応出来ること。

現 3 年後 ● ●

開発 実用化

○ ○

Ⅲ○4 ハイテン、ウルトラハ

イテン(1000-1500 MPa)材成形用金型材

料表面処理技術開発

自動車用プレス成形材料は、安全性、軽量化、燃費向

上のために、高強度化している。金型材料の廉価傾向

と同時に表面安定性の維持に新たな高機能表面処理

やセラミック系硬質皮膜の開発が今後の課題である。

現 3 7 年後 ● ● ●

開発 実用化 普及

高 硬 度 ・ 高 強

度の多層皮膜

○ ○ ○ ○

Ⅲ○5 材料歩留まりを向上

させるプレス新成形

技術

自動車ボディプレスの材料歩留りは 60%前後と低く、

従来の板押さえを基本とした「絞り成形」をブレイクスル

ー新成形法の開発が期待されている。

現 5 15 20 年後 ● ● ● ●

開発 実用化 普及

板 押 さ え レ ス

新工法

○ ○ ○ ○

【重点化の評価】 1.日本の技術競争力優位 5.基礎技術の開発が必要 2.共通基盤性 6.安全・安心の確保のために必要 3.ブレイクスルー技術 7.標準化の検討が望まれる技術 4.市場のインパクト 8.省資源、省エネルギ

Page 12: 型技術分野 - 素形材センター...230 3.5 型技術分野 3.5.1 型技術分野ロードマップの考え方 (1) 型技術とは 金型は、一対の金型により構成される三次元空間を用い、素材に対し形状を転写す

241

中項目 小項目

(テーマ名) 重要度 技術の概要

開発・実用化・普及 線表

現在 5 年後 10 年後 15 年後 20 年後 25 年後律速要因

重点化の評価

1 2 3 4 5 6 7 8

Ⅲ○6 超流動性樹脂の実用

化(超薄肉成形技術の

開発含む:プラ型)

固体強度の高い超流動性樹脂は、製品の小型化・薄

型化や機能集約による部品点数削減が可能。成形工

程の省エネ化や、樹脂特性を活かす金型機構・ガスベ

ント・金型温度制御などの成形・金型技術が課題であ

る。

現 5 10 年後 ● ● ●

開発 実用化 普及

超流動性樹脂

の特性

○ ○ ○ ○

Ⅲ○7 金型の局所温度制御

技術(ハイサイクル成

形技術)の開発

樹脂成形において、流動距離に相関する圧力損失の

解消や蓄熱部冷却のため、高精度で金型の局所を温

度コントロール(加熱・冷却)する技術。 ハイサイクルと転写性向上による加飾工程レス等で省

エネ化を図る。

現 3 7 年後 ● ● ●

開発 実用化 普及

温度制御の精

度とレスポンス

○ ○ ○

Ⅲ○8 型のコンパクト化 海外生産拡大に伴い、建屋・成形機含めた工場のコン

パクト化による投資低減が要請されている。この決め手

は金型のコンパクトである。制約要因である型機能部

品のコンパクト化や型材の剛性アップが開発課題であ

る。

現 3 7 年後 ● ● ●

開発 実用化 普及

コンパクト型部

品構造・材料

○ ○ ○ ○

Ⅲ○9 超薄肉成形の実現/

プレス成形面 現在、薄板フープ材を用いプレス成形している現成形

システムに対し、高い平坦度、成形後の高精度板厚コ

ントロールを可能とする成形システムの実現は、これま

で対象商品ごとに板厚を変えていた材料の種類を大

幅に減らすことが期待できる。

現 5 10 年後 ● ● ●

開発 実用化 普及

超 高 精 度 ・ 高

剛性プレス

○ ○ ○ ○

Ⅲ○10 少量生産・サービスパ

ーツ用のフレキシブ

ル形状金型

少量生産やサービスパーツ向けに金型を最小にする

インクリメンタルフォーミング、ブロー成形などの成形技

術はあるが、成形スピード・成形精度・設備コストなどに

課題があり、実用化は皆無に近い。廉価・高速・高精度

なフレキシブル成形システムが期待される。

現 3 年後 ● ●

開発 実用化

○ ○

Ⅲ○11 レアメタル(超硬材の

型材、切削工具)の代

替材料の開発

レアメタルの高騰に対応するため、機能性は維持しつ

つ低廉な材料による型材や工具を開発する。リサイク

ル性などを考慮すると、セラミックス系や金属系の炭化

物で、なおかつ、廉価であることが必要条件。

現 7 12 年後 ● ● ●

開発 実用化 普及

資源

廉価

○ ○ ○

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242

中項目 小項目

(テーマ名) 重要度 技術の概要

開発・実用化・普及 線表

現在 5 年後 10 年後 15 年後 20 年後 25 年後律速要因

重点化の評価

1 2 3 4 5 6 7 8

Ⅲ-3

安 全 ・ 安

心・快適な

生活のため

の 素 形 材

技 術 ( 医

療・生体関

連 、 低 騒

音 ・ 低 振

動、有害物

質 の 排 出

抑制など)

Ⅲ○12 成形トライ時の調整

作業削減技術 団塊の世代の大量退職、海外における型技能指導者

の増加に伴い、型技能者、特に豊富な経験を必要とす

る成形トライ時の調整作業削減は、最重要経営課題で

ある。成形性シミュレーション、型たわみ予測技術など

エンジニアリングで事前予測する技術は進展しつつあ

るが、実機での調整作業は必要不可欠であり、調整作

業削減技術が期待される。

現 3 年後 ● ●

開発 実用化

○ ○

Ⅲ○13 粉塵レス(加工技術、

グラインダー作業)

型加工における切粉の飛散(特に鋳物の乾式加工)、手仕上げ時のグラインダー作業など型製作では粉塵

作業が課題である。加工時に工具内に吸い込む、磨き

粉を出さない手仕上げ作業法など、粉塵レス化が快適

な型製造職場実現の課題である。

現 2 年後 ● ●

開発 実用化

Ⅲ○14 安全安心商品の金型

による成形(医療、電

池関係)

プレス型技術による「痛くない注射針」の実用化や、燃

料電池・2 次電池の金属薄板成形技術開発、太陽電

池の効率を上げる精密プレス技術など、安全・安心商

品の金型による精密成形は重要開発課題である。

現 5 10 年後 ● ● ●

開発 実用化 普及

高齢化

地球温暖化

健康被害

○ ○ ○

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243

Ⅳ.素形材技術革新を支える技術的基盤

中項目 小項目

(テーマ名) 重要度 技術の概要

開発・実用化・普及 線表

現在 5 年後 10 年後 15 年後 20 年後 25 年後律速要因

重点化の評価

1 2 3 4 5 6 7 8

Ⅳ-1

新たな技術

体 系 の 構

Ⅳ○1 商品設計・金型製作・

商品製造の広範囲な

技術体系を基盤とす

る企業構造の育成

型だけを製作して販売するやり方は、コスト競争で最初

から負けてしまう。成形部門も持つ会社が強みを発揮

している。さらに商品開発力までもてば、さらに企業体

質が強化される。

現 3 年後 ● ●

開発 実用化

Ⅳ-2

素 形 材 技

術 の 支 援

技術・周辺

技 術 の 構

Ⅳ○2 製造情報データベー

スの構築による、見込

み量の定量化や造型

データの類似部品適

過去の製造情報をデータベース化し、見込み量の定

量化や類似部品の金型設計の効率化につなげる。

現 5 10 年後 ● ● ●

開発 実用化 普及

○ △ ○ △

Ⅳ-3

研 究 開 発

体 制 の 整

Ⅳ○3 型技術の開発のため

の産学連携や実施体

制の整備

◎ 多くの型メーカは、研究開発部門を持っておらず、研

究開発に取り組みたくても取り組む余力のない企業が

多い。このため、中小企業からの研究開発を受託でき

る組織の整備が必要。例として産業技術総合研究所

や公設試験研究機関、あるいは大学が中小金型メー

カの研究受託を積極的に実施する体制や産学連携の

仕組みを整える。

現 5 年後 ● ●

開発・実用化・普及

ラ イ バ ル 国 企

業のキャッチア

ップ

Ⅳ-4

技術・技能

の伝承

Ⅳ○4 金型設計技術や技能

をデータベースとし

たナレッジシステム

金型設計技術や技能をデータベース化して若年者へ

の技術・技能の伝承に生かす。ただし海外への技術・

技能流出を防止するため、ある程度クローズな運用形

態とする。

現 10 年後 ● ●

開発・実用化・普及

○ ○ ○

Ⅳ○5 OB 人材活用の積極化 優れた経験、知識を持った OB を金型メーカに送りコン

サル業務を担ってもらう「技術者・技能者人材バンク登

録制度」の仕組みを構築する。同制度による技術者の

海外流出防止にも期待。

現 5 年後 ● ●

開発・実用化・普及

【重点化の評価】 1.日本の技術競争力優位 5.基礎技術の開発が必要 2.共通基盤性 6.安全・安心の確保のために必要 3.ブレイクスルー技術 7.標準化の検討が望まれる技術 4.市場のインパクト 8.省資源、省エネルギ

Page 15: 型技術分野 - 素形材センター...230 3.5 型技術分野 3.5.1 型技術分野ロードマップの考え方 (1) 型技術とは 金型は、一対の金型により構成される三次元空間を用い、素材に対し形状を転写す

244

中項目 小項目

(テーマ名) 重要度 技術の概要

開発・実用化・普及 線表

現在 5 年後 10 年後 15 年後 20 年後 25 年後律速要因

重点化の評価

1 2 3 4 5 6 7 8

Ⅳ-5

人 材 の 育

成と確保

Ⅳ○6 若者に対する金型等も

のづくりの重要性につ

いての普及啓発(インタ

ーンシップなどの促進)

大学生はほとんど素形材産業のことを知らないの

が現状。工作機械工業会が大学生に技術を知っても

らうため JIMTOF へ招待している、というような

活動が必要。

現 5 年後 ● ●

開発・実用化・普及

Ⅳ○7 大学理工系における教

育 ・ 研 究 内 容 の 充 実

(材料力学ほか基礎理

論だけでなく創造性を

育む教育)

PBL(Problem Based Learning)の手法をとりいれ

た教育の試みを、企業の協力の元実施する仕組みの

構築が重要

現 10 年後 ● ●

開発・実用化・普及

Ⅳ○8 金型技術者育成に有

効 な 産 学 連 携シ ス テ

ム、大学における金型

コース等の創設

大学や企業のエキスパートによる金型技術者育成

のための教育システムについては、既に「中核人材

育成プログラム」として始動したところである。今

後このプログラムの内容を日本金型工業会および

日本塑性加工学会金型分科会の連携の下、さらに充

実したものとし、継続性のある事業として確立させ

る。同時に、材料、機械、設計、力学等の金型技術

者に必要な基礎科目を習得し、さらに金型技術を学

んだ学生を輩出できる大学や労働省系の大学校の

整備が重要。さらに地方の公設試を人材育成拠点と

して充実させることも不可欠。

現 5 年後 ● ●

開発・実用化・普及

Ⅳ-6

技術と経営

の融合

Ⅳ○9 知的財産戦略の強化 金型図面や金型加工データの意図せざる流出の防

止については、今後も金型工業会を中心に取り組ん

でいくことが必要。さらに特許取得等が難しい中小

企業を支援するため、金型に関する知財センター的

な組織を設置する。

現 3 年後 ● ●

開発 実用化

Ⅳ○10 技能を適正評価し、そ

の優位性をユーザーに

積極的にアピールする

仕組み

我が国の金型技術の優位性をユーザーに対して積

極的にアピールし、市場からの評価を確立するため

の「金型ジャパンブランド」戦略を今後も強力に進

めていく。

現 5 年後 ● ●

開発・実用化・普及

○ ○ ○ ○

Page 16: 型技術分野 - 素形材センター...230 3.5 型技術分野 3.5.1 型技術分野ロードマップの考え方 (1) 型技術とは 金型は、一対の金型により構成される三次元空間を用い、素材に対し形状を転写す

245

中項目 小項目

(テーマ名) 重要度 技術の概要

開発・実用化・普及 線表

現在 5 年後 10 年後 15 年後 20 年後 25 年後律速要因

重点化の評価

1 2 3 4 5 6 7 8

Ⅳ○11 受注の谷間を凌ぐため

の新分野への進出 新しい素材向けの金型研究とその研究成果による

新たな量産システムの提案や金型加工技術による

新しい市場の開拓(航空機産業への加工部品の提供

など)を目指す。

現 5 年後 ● ●

開発・実用化・普及

○ ○ ○

Ⅳ-7

グローバル

化 へ の 対

Ⅳ○12 人材の国際化(外国人

技術者の積極的な活

用)

これからの社会を考えると、金型分野で優秀な日本

人が十分に確保できるとは考え難い。そこで海外の

理工系卒業生の積極的な採用を考え、これらの人材

で海外進出にも備えるという経営感覚が重要。

現 10 年後 ● ●

開発・実用化・普及

Ⅳ○13 海外展開の際の技術

流出を防止するための

技術管理システム構築

イントラネットなどに流通する図面や工法ノウハ

ウデータベースなどのセキュリティを確立するた

め大容量データに対する暗号化技術が必要となる。

現 5 10 年後 ● ● ●

開発 実用化 普及

○ ○ ○ ○ ○

Page 17: 型技術分野 - 素形材センター...230 3.5 型技術分野 3.5.1 型技術分野ロードマップの考え方 (1) 型技術とは 金型は、一対の金型により構成される三次元空間を用い、素材に対し形状を転写す

3.5.3 型技術分野の技術マトリクス

目標製品高度化 A 生産性向上 B 期間短縮 C 環境保全 D 経 営 E 情報化 F

コスト削減 (CAD・CAM・CAE)

技術要素

      目標内容

 技術内容

寸法精度 A1 生産速度 B1 リードタイム  C1 CO2・エネルギー削減 D1 人材育成 E1 CAD F1

強度 A2 歩留り B2 工程検討 C2 資源保護 D2 国際化 E2 CAM F2

形状 A3 省エネルギー B3 リサイクル・廃棄物処理 D3 技能・技術伝承 E3 CAE F3

表面性状 A4 省資源 B4 作業環境改善 D4 産学連携 E4 データベース化 F4

組織 A5 多品種少量生産 B5 地域環境改善 D5 品質保証 E5 エキスパートシステム F5

軽量化 A6 自動化 B6 有害物質削減 D6 標準化(規格) E6

複合化 A7 システム化 B7 潤滑剤・加工油削減 D7 安全管理 E7

長寿命化 A8 設計 B8

生産管理 B9

材料 a

高靭快削鋼 a1 Ⅰ③:a6A4Ⅰ④:a3A3(Ⅰ⑦:a6A4)Ⅰ⑪:a4A5,a5A8Ⅰ⑫:a5A8(Ⅰ⑬:a6A4)(Ⅲ⑭:a3A1,a3A2)

(Ⅰ②:a2.B4) Ⅰ①:a2.D3 (Ⅰ①:a1.E6)

熱処理不用 a2

耐磨耗性 a3

耐熱性 a4

経年変化 a5

鏡面性 a6

設計 b

ソリッドモデラ b1 Ⅰ⑤:b5A7(Ⅰ⑦:a6A4)Ⅰ⑬:b3A3

(Ⅰ⑦:b5B7)Ⅰ⑪:b5B5Ⅰ⑫b4B5,b2B6(Ⅰ⑬:b5B7)Ⅱ①:b1B6,b2B6,   b1B8,b2B8Ⅲ⑥:b5B4(j3D1)

Ⅰ⑨:b7C1Ⅱ①:b2C1

Ⅳ④:b3E3 (Ⅰ⑨:b7F3,b7F4)Ⅱ①:b1F1~F5, b2F1~F5Ⅱ②:b1F1,b1F2,b2F1Ⅳ④:b3F4

3次元設計 b2

設計方案 b3

変更対応 b4

型構造 b5

センサ b6

解析 b7

プロセス c

形状加工 c1 Ⅰ⑤:c6A4,c6A8Ⅰ⑩:c1A1,c1A4,   c1A6Ⅱ⑦:c6A8Ⅱ④:c1A1,c7A1,   c7F1

Ⅰ②:c1B1,c2B1Ⅰ④c1B1Ⅰ⑥:c1B1,c2B1Ⅱ③:c4BⅡ⑦:c6B3B4

Ⅰ②:c1C1c2C1Ⅰ⑥:c1C1,c2C1Ⅰ⑧:c1C1Ⅱ③:c4C1Ⅱ⑥c1C1Ⅲ⑭:c1D1,c1D2Ⅳ②;c3C1

Ⅱ⑦:c6D7 Ⅳ④:c3E3Ⅳ⑤:c3E1,c3E3

Ⅰ②:c1F4Ⅰ⑥:c1F4Ⅱ⑦:c4F4Ⅳ②;c3F4Ⅳ④:b3F4,c3F4,f1F4,   b3E3,c3E3,f1E3

複合・多軸加工 c2

技能 c3

RM c4

工具・段取り c5

表面処理 c6

型合せ c7

模型 d

フルモールド d1

木型(樹脂型) d2

RP d3

測定 e

金型寸法 e1 Ⅱ④:e1A1,e1F1,   e1F3,e2F1

Ⅱ⑤:e1B6,e2B6 Ⅱ⑤:,e1C1,e2C1Ⅱ⑥:e2C1

接触・非接触測定 e2

仕上げ f

技能 f1 (Ⅰ③:f3A4)(Ⅰ⑦:f3A4)(Ⅰ⑬:f3A4)

Ⅲ⑫:f1C1Ⅳ②;f1C1

Ⅲ⑬:f2D4,f3D4 Ⅳ④:f1E3Ⅳ⑤:f1E1,f1E3

Ⅳ②;f1F4Ⅳ④:f1F4

仕上げ加工 f2

鏡面仕上(磨き)技術 f3

工程設計  g 工程設計 g1 Ⅰ⑤:g1B9

検査  h 製品寸法 h1

保全変更 i

溶接 i1 Ⅰ⑤:i1B8,i2B9 Ⅰ⑤:i1D4,i1D2,i2D4 Ⅰ⑤:i1E5,i2E5,i3E6 Ⅰ⑤:i1F4,i2F4

肉盛り i2

保全 i3

その他 j

周辺機器 j1 Ⅰ②:j3.A2Ⅰ⑤:j1A41j1A2(Ⅲ①:j3A6)(Ⅲ④:j3A6)(Ⅲ⑨:j3A6)

Ⅲ②:j3B1,j3B4Ⅲ③:j3B1,j3B2,j3D2(Ⅲ⑤:j2B2)Ⅲ⑦:j4B1

Ⅲ③:j3D2Ⅲ④:j3D1Ⅲ⑤:j2D2(Ⅲ⑥:j3D1)(Ⅲ⑦:(j1D2)Ⅲ⑨:j3D1Ⅲ⑩:j3D1

Ⅳ①:j3E2Ⅳ③:j3E4,j3E1Ⅳ⑥:j3E1Ⅳ⑦:j3E1Ⅳ⑧:j3E1,j3E4Ⅳ⑨:j3E2Ⅳ⑪:j3E4

成形機 j2

研究 j3

熱交換性能 j4

246

Page 18: 型技術分野 - 素形材センター...230 3.5 型技術分野 3.5.1 型技術分野ロードマップの考え方 (1) 型技術とは 金型は、一対の金型により構成される三次元空間を用い、素材に対し形状を転写す

247

3.5.4 型技術分野のロードマップ個票

分野名:型技術

小項目№:Ⅰ② 小項目(テーマ名) 寿命が予測できる型材の開発 関連マトリクス分野 j3.A2、(a2.B4)

技 術 の 概 要

操業過程における金型の寿命予測材料の開発は材料のみならず、予知技術、

金型の事前評価技術の確立が必要になる。それにより各種の生産数量にあっ

た適正品質の高合金添加元素の少ない金型材料を開発する。

経 済 社 会 的 背 景 生産性向上、生産効率化にとって、合理的な生産システム、適正品質による

適金型材料の開発により生産性向上・合理的操業形態の達成が可能になる。

重 要 度 ◎ 生産性、 適生産効率の達成には、寿命予測可能な金型材の使用が生産

安定化並びに操業安定化には も重要課題である。

緊 急 性 ① 各種の金型の 適寿命予知技術の確立により、金型材の品質と型寿命の

相関性が精度よく得られる、材料ならびに評価機器の開発が必要である。

現在の技術レベル

プラスチック、プレス、熱間用金型(ダイカスト、鍛造など)材の寿命評価お

よび予知技術は遅れている。各種の金型における操業過程での経験的技術に

基づいている。

到達目標の時期と

レベル

要素項目 現状 短期

(2 年後)

中期

(5 年後)

長期

(10 年後)

適素材グレ

ードの開発

寿命予知技術

プラ、冷間、

熱間用金型 なし

各 領 域 の

適 適 切 寿 命

金 型 材 の 鋼

種開発

寿 命 予 知 評

価 検 証 技 術

の開発

型 材 に よ る

合 理 的 生 産

方式の開発

目 標 設 定 の根 拠

今日の金型材料には各使用金型の寿命にマッチさせる 適な指針がなく、ま

た企業でも過剰品質材を使用している背景から、寿命に応じた 適な金型材

の開発ならびに寿命評価技術の開発の必要がある。

目標に到達するた

めの技術開発内容

・プラスチック、冷間、熱間金型材(ダイカスト、鍛造など)にマッチした金

型材の開発。 ・金型材の寿命評価、予知技術の開発(超音波探傷による表面劣化情報の検

出)。 ・評価・予知技術と金型寿命との相関性の検証技術。

波 及 効 果 寿命評価技術は、素形材産業全般に利用できる。また予知技術の確立による

操業安定性、合理的生産システムによる波及効果は大きい。

海外の取組状況・

技術レベル

・積層造形技術による各種型材の製造・加工方法。 ・結晶粒微細化による低合金高機能金型材の開発。 ・レーザ変位計測に伴う金型表面の破壊挙動の研究。

国 際 的 優 位 性 の

予測

実際の金型への適用技術は金型の生産性向上に有利であり、非常に高い。

備 考 このテーマは、金属プレス(Ⅱ-4)、鍛造(Ⅱ-1)の各分野にも共通する課題。

技術指針の関連項目* 2 (1)①オ⑤ア、(2)③ウ 3 *:「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」に基づく技術高度化指針(案)において「2.高度化の方向性」または「3.配慮事項」として掲げられた項目

Page 19: 型技術分野 - 素形材センター...230 3.5 型技術分野 3.5.1 型技術分野ロードマップの考え方 (1) 型技術とは 金型は、一対の金型により構成される三次元空間を用い、素材に対し形状を転写す

248

分野名:型技術

小項目№:Ⅰ⑥ 小項目(テーマ名) 高速・高効率生産技術の開発(高速ミーリング、複合加工、試作対応)

関連マトリクス分野 c1B1、c2B1、c1C1、c2C1、c1F4

技 術 の 概 要 高速ミーリングによる高速・高精度加工、多軸加工を用いた省段取りによる

高効率化、積層造形を用いた試作品の迅速製作などの高速・高能率化技術。

経 済 社 会 的 背 景

現在の金型製作は、ハイテク機器を駆使して、迅速かつ高精度でそれなりの

価格設定が強いられている。製品のリードタイムがますます短縮されている

昨今において特に重要な事項は、高速、高能率化による製品供給の迅速化で

ある。自動車、家電をはじめとして、グローバルに展開している我が国の製

造業にとって、いかに早く製品を各国に供給するかは永遠の命題である。

重 要 度 ◎ 我が国のものづくり産業が発展するためのキーテクノロジーの一つであ

り、この分野への注力は重要である。

緊 急 性 ① グローバル化、環境、省エネルギが言われている昨今、この技術がすべ

てに関わってくるので、緊急性は高い。

現在の技術レベル

高速ミーリングに関しては、工作機械メーカをはじめとして諸外国より技術

は高い。複合加工に関しては多軸加工が進んでいるヨーロッパより若干低い。

ラピッドマニュファクチャリングもヨーロッパの方が研究は進んでいる。

到達目標の時期と

レベル

要素項目 現状 短期

(2 年後)

中期

(5 年後)

長期

(10 年後)

工作機械 駆動系、回転数遅

い 大型機の高速化 平均 3m/min 5m/min(大型)

工 具 cBN、ダイヤ、 コーティング

減りにくい工具、

減らない条件 工具の高度化、

DB の構築、

CAM、材料

CAM と連動で

適加工条件

RM ごく一部の型 型種で棲み分け 小物金型で普及

目 標 設 定 の根 拠

実用化に向けての代表的課題を要素項目にした。一部実現されているが、こ

れらが普及するのには時間を要する。例えば、高速ミーリングが一般的なる

のには 15 年かかっている。

目標に到達するた

めの技術開発内容

1.工作機械の駆動系の設定値に近い速度での送り速度実現。 2.多軸加工での高速化、CAM の充実、工具などの要素技術。 3.高速・高精度加工を実現するためのデータベースの構築。 4.ラピッドマニュファクチャリングの汎用化技術開発。

波 及 効 果 金型製作のリードタイムが大幅に向上することにより、製品開発のスピード

アップが図れ、国際的競争力を持つ。

海外の取組状況・

技術レベル

高速ミーリングは日本が優位、多軸、RM はヨーロッパが優位。

国 際 的 優 位 性 の

予測

高速ミーリングは優位性あり、多軸は今後の頑張りでヨーロッパに追いつけ

るか。ラピッドマニュファクチャリングは研究開発者の育成が急務。

備 考

技術指針の関連項目* 2 (1)②イ⑥ア 3 *:「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」に基づく技術高度化指針(案)において「2.高度化の方向性」または「3.配慮事項」として掲げられた項目

分野名:型技術

Page 20: 型技術分野 - 素形材センター...230 3.5 型技術分野 3.5.1 型技術分野ロードマップの考え方 (1) 型技術とは 金型は、一対の金型により構成される三次元空間を用い、素材に対し形状を転写す

249

小項目№:Ⅰ⑦ 小項目(テーマ名) 高速・高精度加工を実現するためのデータベース構築(工程すみ分けソフト) 関連マトリクス分野 c1B1、c2B1、c1C1、c2C1、c1F4

技 術 の 概 要 高速・高精度な加工を実現するためには、使用する素材、製作する形状に応じて

最適な加工法を選択してくれるソフトウェアがあれば便利。CAM の高度化。

経 済 社 会 的 背 景

現在の金型製作には、迅速かつ高精度でそれなりの価格設定強いられている。

製品製作へのリードタイムの短縮が販売を左右する。これを強力に推進でき

るのが高速加工である。CAD データが完成した後すぐに、熟練技術者なみの

加工工程のすみ分けができれば、加工時間は短縮され、先の要求に応えるこ

とができる。

重 要 度 ◎ 高速・高精度加工は我が国の金型加工技術のレベルを低下させないため

にも恒常的に技術開発しなければならない重要案件。

緊 急 性 ① 熟練技術者や製造業の人材不足などが深刻であり、自社にカスタマイズ

したこの種のソフトウェアの要求は急務である。

現在の技術レベル 金型形状に応じた加工すみ分けソフトウェアはない。個別の技術に対応する

加工条件の 適化 CAM は一部存在する。

到達目標の時期と

レベル

要素項目 現状 短期

(2 年後)

中期

(5 年後)

長期

(10 年後)

すみ分け CAM CAE

なし 要高度化、カスタ

マイズ 他との連動なし

一部で使用可能 棲み分けと連動 要高度化、連動し

て使用可

形状に応じて加

工法分類 各種加工条件の

適化

全てが連動して

機能を発現、予測

機能を有して棲

み分け可能

目 標 設 定 の根 拠 多種、多様な金型に応じてこのようなソフトウェアが開発されるかどうかは

難しい。CAD/CAM/CAE と連動させることを重要要素と設定。

目標に到達するた

めの技術開発内容

1.金型形状に応じた形状加工すみ分けソフトウェアの開発 2.すみ分け後の加工条件 適化ソフトウェアの開発 3.加工技術、CAE に対応したソフトウェアのアップデート 4.DB を活用した予測機能を有するソフトウェアの開発

波 及 効 果 金型製作のリードタイムが大幅に向上することにより、製品開発のスピード

アップが図れ、国際的競争力を持つ。

海外の取組状況・

技術レベル

このような取り組みはあまり聞かない。

国 際 的 優 位 性 の

予測

開発できれば明らかに優位性を発揮する。我が国は CAD で明らかに遅れて

いるので、CAM や CAE を含有したこの種のソフトウェアの開発で頑張るべ

きである。

備 考

技術指針の関連項目* 2 (1)②イ⑥ア、(2)③イ 3 *:「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」に基づく技術高度化指針(案)において「2.高度化の方向性」または「3.配慮事項」として掲げられた項目

Page 21: 型技術分野 - 素形材センター...230 3.5 型技術分野 3.5.1 型技術分野ロードマップの考え方 (1) 型技術とは 金型は、一対の金型により構成される三次元空間を用い、素材に対し形状を転写す

250

分野名:型技術

小項目№:Ⅰ⑨ 小項目(テーマ名) 成形シミュレーションソフトの高精度化と活用(プラモールド・プレス) 関連マトリクス分野 b7C1、(b7F3)、(b7F4)

技 術 の 概 要 成形シミュレーションの高精度化によるトライゼロの実現や、冷却シミュレ

ーション活用による射出成形品のひけやソリの低減およびハイサイクル化。

経 済 社 会 的 背 景 3 次元 CAD の普及や PC の性能・コストの飛躍的向上という IT インフラの

変化。経験を積んだ習熟した成形金型技術者が限られている。

重 要 度

◎ 金型(成形品)の立上げが製品リードタイムに直結するため、製品競争力

維持のためには重要。ひけやソリを予測し、防止するツールとしても有

効。

緊 急 性 ① シミュレーション技術は、グローバルな開発・実用化が加速しており、

高精度化と活用面で先頭を走ることが重要である。

現在の技術レベル プ ラ:充填を主体とした解析が実施されている。ソリ変形解析は精度不足。

プレス:絞り成形工程の解析主体。離型後の変形予測精度不足。

到達目標の時期と

レベル

要素項目 現状 短期

(2 年後)

中期

(5 年後)

長期

(10 年後)

プラ:非線形

性解析

充填解析主体 現行での精度

限界 非線形性解析

に目処 特定分野で実

用化開始 プレス:解析

対応領域

絞り成形解析

主体 スプリングバ

ック精度向上

適化手法の

実用化 全工程解析へ

の領域拡大

目 標 設 定 の根 拠 1.非線型性導入による高精度化達成、IT インフラ進化(3 次元解析の実用化) 2.金型弾性変形影響の反映、全工程解析への拡大、難加工材対応の必要性。

目標に到達するた

めの技術開発内容

・金型温度の厳密計算、離型抵抗・材料非線型性を導入した解析モデル ・プリポスト整備、解析作業効率の向上(活用技術) ・材料モデル化技術高度化。金型弾性変形解析技術確立。 ・ソリッド要素解析の実用化(鍛造、全工程、連成解析の実現) ・ 適化手法の併用化

波 及 効 果

・3 次元 CAD と連携した解析作業の自動化と計算の高速化により、広範な成

形部品において生産性(品質・コスト)を向上できる。 ・スプリングバック解析精度の向上により解析信頼性が向上できる。 ・精密プレス部品へのシミュレーション適用範囲拡大が図れる。

海外の取組状況・

技術レベル

・解析ソフト開発は、海外でも強力に推進されている。 ・シミュレーション活用による高付加価値化の取組み意識は、日本が勝る。

国 際 的 優 位 性 の

予測

製品立上げリードタイム及び成形品の品質・コストにおいて、優位性を確保

するための必須ツール。 自動車業界を中心に活用技術面で国内外をリード。

備 考 Ⅱ⑤「超高速、高精度非接触三次元計測技術(と成形品)」と関連

技術指針の関連項目* 2 (1)③ア、(2)②ウ、(3)③エ 3 *:「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」に基づく技術高度化指針(案)において「2.高度化の方向性」または「3.配慮事項」として掲げられた項目

Page 22: 型技術分野 - 素形材センター...230 3.5 型技術分野 3.5.1 型技術分野ロードマップの考え方 (1) 型技術とは 金型は、一対の金型により構成される三次元空間を用い、素材に対し形状を転写す

251

分野名:型技術

小項目№:Ⅰ⑩ 小項目(テーマ名) 高機能化成形技術(表面機能、軽量化、ナノインプリント等)の開発 関連マトリクス分野 c1A1、c1A4、c1A6

技 術 の 概 要 表面機能を活用するためのナノインプリントや微細形状転写技術、さらなる

薄膜化技術や軽量化技術の確立。新メッキ材開発やエッチング技術の高度化

経 済 社 会 的 背 景

ナノインプリントや微細形状転写技術は、表面に撥水性制御や摺動性制御な

ど新らたな機能を付与し、次世代製品を生み出す成形技術となりえる。軽量

化技術は製品の軽量化だけでなく、省エネ、省資源化をもたらす。

重 要 度

◎ 微細形状形成技術や軽量化その他関連技術は次世代製品のコア技術とな

る。次世代コア技術の一角を成形技術も占めるには、本技術の重要度は

高い。

緊 急 性

① 多分野で微細形状形成技術や軽量化技術等の開発が急ピッチで進められ

ており、これら分野に遅れることなく技術確立するには、緊急度は 高い。

現在の技術レベル

μm レベルの微細形状転写技術は、一部で実用化技術となっている。多孔質

材などを用いた軽量化技術も一部で見られる。サブμm レベルや大幅な軽量

化はこれからであり、特にラージスケールの成形技術は未着手に近い。

到達目標の時期と

レベル

要素項目 現状 短期

(2 年後)

中期

(5 年後)

長期

(10 年後)

微細金型 >μm サブμm基礎 小サイズ 大サイズ

微細転写 >μm サブμm基礎 小サイズ 大サイズ

軽量化 20% 20% 30% 40%

目 標 設 定 の根 拠 他分野の微細形状形成技術等の現状を元に、これらの技術が実用化(デバイス

応用)される時期を睨み、成形技術応用の期間を盛り込む

目標に到達するた

めの技術開発内容

・ナノインプリントや微細形状形成技術のキャッチアップ ・形状転写技術の基礎確立と応用拡大(小サイズ→大サイズ、3 次元化) ・軽量化材料の成形技術、極限の薄板成形技術 ・上記と併行した新メッキ材開発やエッチング技術の高度化。

波 及 効 果 ・更なる機能付与 ・構造部品だけでなく機能部品への成形技術の展開

海外の取組状況・

技術レベル

微細形状形成技術や軽量化技術は各国で重点取組みがなされ、国際競争は激

しい。成形技術は品質向上が主要な課題である。

国 際 的 優 位 性 の

予測

海外各国で、微細形状形成技術や軽量化技術を成形技術に応用していく視点

は、一部を除き、必ずしも強くない。今からスタートすれば国際的な優位性

を確立できる可能性が高い。

備 考

技術指針の関連項目* 2 (1)①ア②ア 3 *:「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」に基づく技術高度化指針(案)において「2.高度化の方向性」または「3.配慮事項」として掲げられた項目

Page 23: 型技術分野 - 素形材センター...230 3.5 型技術分野 3.5.1 型技術分野ロードマップの考え方 (1) 型技術とは 金型は、一対の金型により構成される三次元空間を用い、素材に対し形状を転写す

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分野名:型技術

小項目№:Ⅰ⑬ 小項目(テーマ名) 医療用微細金型加工技術 関連マトリクス分野 b3A3、(a6A4)、(b5B7)、(f3A4)

技 術 の 概 要

医療分野・予防医療分野への対応において、装置の小型化・経済性、測定の容

易性より、μTAS(マイクロトータルアナリシスシステム)、Lab-on-a-Chip、 マイクロマシン用部品等が求められている。金型の設計と微細加工の高度化技

術。

経 済 社 会 的 背 景 従来の血液検査、臓器内検査が、微細加工・複雑形状加工により、小型・低価

格化・短時間処理が可能となる。

重 要 度 ◎ 従来は少量生産により対応されてきたが、微細金型製作技術を高度化する

ことにより、小型化、安価、高機能化が期待され、重要度は高い。

緊 急 性 ① 欧米においても製品化の検討がなされ、市場性の大きさからも緊急性は高

い。

現在の技術レベル 精度等の課題があり、一般に普及するレベルには達していない。

到達目標の時期と

レベル

要素項目 現状 短期

(2 年後)

中期

(5 年後)

長期

(10 年後)

成形材料 2液性シリコン

系樹脂 プラスチック・2液性シリコン

系樹脂(量算)

型構造 試作レベル 量産金型 微細形状・高

精度 複雑形状化

目 標 設 定 の根 拠

現状は試作レベルであり、低コストとなることが求められている。 μTAS 等の場合、超精密加工により、光学特性を高め光学的検出の性能を高め

目標に到達するた

めの技術開発内容

1.微細溝加工部における成形転写技術の構築 2.成形材料特性 及び 表面処理 3.複雑形状に対応する金型設計 4.光透過特性が必要な場合、金型の鏡面加工

波 及 効 果 ・環境測定 ・光学デバイスも含め、微細金型の適用拡大

海外の取組状況・

技術レベル

欧米においても開発が進められている。中国では、ナノ非球面レンズ金型加工

が始められており、金型研究者が急増している現況を考えると、早急な対応が

必要。

国 際 的 優 位 性 の

予測

金型ノウハウの豊富な蓄積という強みを活かし、かつ産学が連携して、欧米を

凌駕する実践的で実効性が高い技術を構築することが可能で、国際的優位性が

増すと考えられる。

備 考 Ⅰ⑩「高機能化成形技術の開発」の開発に関与する。

技術指針の関連項目* 2 (1)①ア②ア、(2)④ア③イ 3 *:「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」に基づく技術高度化指針(案)において「2.高度化の方向性」または「3.配慮事項」として掲げられた項目

Page 24: 型技術分野 - 素形材センター...230 3.5 型技術分野 3.5.1 型技術分野ロードマップの考え方 (1) 型技術とは 金型は、一対の金型により構成される三次元空間を用い、素材に対し形状を転写す

253

分野名:型技術

小項目№:Ⅱ① 小項目(テーマ名) 3D を活用した製造プロセスの効率化 関連マトリクス分野 b1B6、b2B6、b1B8、b2B8、b2C1、b1F1~F5、b2F1~F5

技 術 の 概 要 金型設計・製造に寄与する 3 次元ソリッドシステムの機能向上、及び異シス

テム間のモデル変換ソフトの開発

経 済 社 会 的 背 景

3 次元ソリッドシステムを用いた金型の 3 次元設計が徐々に普及しているが、機能・運用

上の課題が多い。CAMシステムの利用と機能開発は、CADモデルの形状とデータ精度

を補う形で行われているが、製造プロセスに直結した CAD システムの高精度化と機能向

上が必要である。また、ソリッドモデルのカーネルには Siemens PLM Software 社の

Parasolid 系、米国スペイシャル社の ACIS 系があり、さらに CATIA はハイエンドシステ

ムとしてセットメーカでシェアーを拡げている。こうしたシステム間のデータ変換には、

IGES,STEP といった変換仕様やダイレクトトランスレータが用いられているものの、シス

テムごとにデータ精度が異なり、100%の信頼性をもって変換されるわけではない。 参考:素形材産業の 3 次元CAD を中心とする IT 化の現状と課題-ものづくりの国

際競争における 3 次元CAD の戦略的活用-報告書

重 要 度

◎ 熟練工の経験と技能に頼ってきた日本の金型メーカは、3 次元ソリッド

モデルの活用が遅れ、2 次元図面による製造情報の伝達が主流で自動化

が進まず、生産性が停滞している。

緊 急 性

① 産業の空洞化に直面し、受注に苦しむ日本の中小金型メーカにとって

は、3 次元ソリッドシステムによる解析・設計・加工データ出力を行な

って生産性を向上させることが、大きな競争力となる。(生き残りの鍵)

現在の技術レベル

モデリングに関しては、金型設計において支障はなくなってきている。 解析に関しては、精度・時間・コストの点で充分活用できていない。 加工情報出力(CAM)については、3 次元ソリッドシステムと一元化されてい

る例は非常に少ない。別ソフトにモデルを変換して加工データを作成してい

るのが実情である。また、 適加工工程や加工属性の出力ソフトは皆無。

到達目標の時期と

レベル

要素項目 現状 短期

(2 年後)

中期

(5 年後)

長期

(10 年後)

CAM

機能不足 (別ソフト使用)

機能強化

ソフト一元化 (変換不要)

工程・属性 無し 付加 自動生成

目 標 設 定 の根 拠 各金型メーカが 3 次元設計を意図し、設計・製造ノウハウの標準化を進める

ことで、カストマイズは可能であるが、CAM の機能が不足している。

目標に到達するた

めの技術開発内容

モデル変換を行なわずに加工データを出力できる CAM の開発 加工手順(粗加工→仕上加工)に合ったモデルを自動生成するソフトの開発 モデルの形状から、 適加工工程や加工属性を付加出力出来るソフトの開発

波 及 効 果

設計ミス・加工ミスの減少による金型製作期間の短縮と原価低減。 熟練工の減少に際して、金型と製品の精度維持及び向上 中小金型メーカ間の生産補完(ネットワークの推進)

海外の取組状況・

技術レベル

経験が少なく熟練工が存在しない海外の金型メーカにとっては、3 次元ソリ

ッドモデルによる金型設計・製造が一般的な手段とされ広く活用されている。

国 際 的 優 位 性 の

予測

金型新興国(韓国・中国等)と同等レベルの 3 次元ソリッドモデル活用と、日

本の経験・熟練による技術(摺りあわせ)を組み合わせたデジタルエンジニア

リングの実現と金型製作期間の短縮が、日本の優位性を確立する。

備 考 現段階で、設計・製造情報を含むデータの完全互換を実現するために、新た

なソリッドカーネルを開発するには、莫大な経費と時間が必要になる。

技術指針の関連項目* 2 (2)①アイ②アイウエ③アイウエ④アイ 3 *:「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」に基づく技術高度化指針(案)において「2.高度化の方向性」または「3.配慮事項」として掲げられた項目

分野名:型技術

Page 25: 型技術分野 - 素形材センター...230 3.5 型技術分野 3.5.1 型技術分野ロードマップの考え方 (1) 型技術とは 金型は、一対の金型により構成される三次元空間を用い、素材に対し形状を転写す

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小項目№:Ⅱ③ 小項目(テーマ名) ラピッドマニュファクチャリング金型(粉末、板積層、ピンの活用)の製造技術の開発 関連マトリクス分野 c4B、c4C1

技 術 の 概 要 型製作の自動化あるいは最適な内部構造を実現するために、金属粉末や薄板を

積層し金型を造形する技術。

経 済 社 会 的 背 景

金型製作には、迅速かつ高精度でそれなりの価格設定強いられている。製品

のリードタイム短縮がますます要求される昨今、従来にない型製作手法によ

る製品供給のスピードアップは重要である。積層造形による型製作は、ラピ

ッドツーリングからラピッドマニュファクチャリングへと移行しつつあり、

これにより直接金属製品・金型を製作することにより大幅なリードタイム短

縮が達成できる。

重 要 度 ◎ 金型製作時間の短縮化は、製品供給のためのリードタイム短縮につなが

り、強いては環境問題や省エネの対策にも有用。

緊 急 性 ② 現状技術はあるが開発すべき課題があり、競争力をつけるには比較的緊

急性がある。

現在の技術レベル RM は解決すべき課題が多い。熱による残留応力、材料の制限など。 SLS と高速ミーリングの複合化では一部のプラ型で実用化。

到達目標の時期と

レベル

要素項目 現状 短期

(2 年後)

中期

(5 年後)

長期

(10 年後)

RM RT RP

あ ま り も の

に な っ て い

ない、一部の

小物金型 モ ッ ク ア ッ

小 物 金 型 や

プ ラ 型 で は

一部普及

ダ イ カ ス ト

金 型 の 試 作

型、小物プラ

棲 み 分 け が

確立して、使

用 さ れ る 分

野が確定

目 標 設 定 の根 拠

RM、RT、RP に分類して金型適用について設定。RP、RT から RM で使用

できようになることが目標。ダイカスト型まで使用できる素材開発が急務と

なろう。 目標に到達するた

めの技術開発内容

1.レーザの廉価化。 2.レーザ+高速ミーリングの 適加工条件。 3.大型、平坦化への対応。

波 及 効 果 試作型製作の迅速化には有用。実型として、多くの型種に採用されるかは疑

問である。

海外の取組状況・

技術レベル

ピン、板積層による金型技術およびレーザ、電子ビームによる RM はヨーロ

ッパが主流である。

国 際 的 優 位 性 の

予測

RM は現時点では先行しているといえないし、今後格差が広がる可能性ある。

金型製作におけるこの手法のデータベースの構築は必須である。

備 考 技術指針の関連項目* 2 (1)⑥ア 3

*:「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」に基づく技術高度化指針(案)において「2.高度化の方向性」または「3.配慮事項」として掲げられた項目

Page 26: 型技術分野 - 素形材センター...230 3.5 型技術分野 3.5.1 型技術分野ロードマップの考え方 (1) 型技術とは 金型は、一対の金型により構成される三次元空間を用い、素材に対し形状を転写す

255

分野名:型技術

小項目№:Ⅱ④ 小項目(テーマ名) 上下型クリアランス(ギャップ)の 3 次元自動測定法 関連マトリクス分野 e1A1、e1F1、e1F3、e2A1、e2F1、c1A1、c7A1、c7F1

技 術 の 概 要

プレス金型製造プロセスにおける適正板厚調整作業やプレス成形時のパネルの歪に

よる製品不具合対策として、繰り返し作業となっている上下型のクリアランス設定

をプレス機内で高精度・高能率で且つ簡便な方法によって全面測定し、定量化する

技術。

経 済 社 会 的 背 景

標記の技術について、現在は熟練の金型製造技能者の持つ経験による重要な金型製

造プロセスとなっている。 また完成品(特に自動車の外板部品)の品質を大きく左右するプロセスでもある。

重 要 度 ◎ 金型製造リードタイムを削減する(または新機種(車種)の立ち上げ期間)

重要なテーマである

緊 急 性 ① 金型製造技能者の経験や繰り返し作業になっている現在の状況からも

緊急性は大であると判断する。

現在の技術レベル

金型製造の初期設定クリアランス値での加工は可能 トライアウト後の品質対策→クリアランスを箇所によって変更する 場合の測定については未実施(成形シミュレーションとの組み合わせが重要)

到達目標の時期と

レベル

要素項目 現状 短期

(2 年後)

中期

(5 年後)

長期

(10 年後)

金型加工後の

高精度測定技

30μm 赤ペン当たり

でアナログ評

⇒ 上 下 金 型

個々の測定は

可能レベル

30μm

測定技術のデ

ジタル化の動

向調査 (上下

金型加工時の

クリアランス

測定技術)

10μm

デジタル測定

技術構築+不

具合発生箇所

の予測と必要

クリアランス

値予測

1~3μm

更なる高精度

化+成形シミ

ュレーション

予測と 1:1 の

クリアランス

設定

目 標 設 定 の根 拠

1.測定技術の革新 2.製品に厚さの違うシートを当てる測定方法 3.全面測定技術(技能者の作業をミクロン単位で自動化・データ化)を図る

目標に到達するた

めの技術開発内容

上下金型が組み合わさった状態でのクリアランスを 3 次元で高速高精度に測

定可能にするために金型加工自体の高精度加工と効率的全面測定技術が必要

である。 1.当たりを定量化できるクリアランスシートの開発 2.金型精度とクリアランス調整時間関連の研究(測定) 3.単品精度と金型製品精度の比較⇒上下クリアランスの比較⇒クリアランス

の簡便なデジタル測定方法の開発 4.成形シミュレーションによる不具合予測と必要クリアランス予測 5.立て壁部の高精度加工技術

波 及 効 果 プラスチック用の大型用にも適用できる。

海外の取組状況・

技術レベル

高速高精度加工技術については EU 自動車メーカ等で実施しているがクリア

ランスの適正化や自動測定については未開発である。

国 際 的 優 位 性 の

予測

金型製造リードタイムの大幅削減、金型製造コスト削減、自動車外板部品の

高品質化

備 考

技術指針の関連項目* 2 (1)④オ、(2)②エ④アイ 3 *:「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」に基づく技術高度化指針(案)において「2.高度化の方向性」または「3.配慮事項」として掲げられた項目

Page 27: 型技術分野 - 素形材センター...230 3.5 型技術分野 3.5.1 型技術分野ロードマップの考え方 (1) 型技術とは 金型は、一対の金型により構成される三次元空間を用い、素材に対し形状を転写す

256

分野名:型技術

小項目№:Ⅱ⑤ 小項目(テーマ名) 超高速、高精度非接触三次元計測技術(型と成形品) 関連マトリクス分野 e1B6、e1C1、e2B6、e2C1

技 術 の 概 要 主に複製型を製作する上で、形状や面性状を必要な測定精度を確保し、実用

に足る速度で計測できる非接触計測技術。

経 済 社 会 的 背 景

金型のパンチとダイ等のクリアランス調整は、中間処理、 終調整処理を含

め熟練機能者による成形のトライアンドエラー作業によってなされており、

熟練技能者の経験に頼る傾向が強い。 また、製品の意匠面の品質や部品同士の合わせ面の品質・寸法精度調整につ

いても金型製造において多大な時間が掛かっている。 熟練技能者の減少が叫ばれる中、当該技術が確立することにより、データに

基づいた作業への転換が可能となり、製作リードタイムの短縮、ひいては手

作業の機械化への転換等が可能になる。

重 要 度 ◎ 経済社会的背景に基づく

緊 急 性 ② 現状技術があり、緊急性はそれほど高くない。但し、日本の金型ユーザ

の海外展開は急を要しており、当該技術の確立により複製金型を簡単に

製作できるようになることは緊急課題ともいえる。

現在の技術レベル 実際の取り組みはなされているが、測定精度、計測速度、測定システム(接触

方式・カメラ方式との複合方式等)等その実用化には課題は多い。

到達目標の時期と

レベル

要素項目 現状 短期

(2 年後)

中期

(5 年後)

長期

(10 年後)

測定精度 ばらつく 安定 計測速度 遅い 実用速度に 測定システム 模索中 確立 公的規格 存在しない 規格確立

目 標 設 定 の根 拠 実用化に向けての代表的課題を目標要素にしたが、到達時期に関しては希望

的観測

目標に到達するた

めの技術開発内容

1.有効な非接触センサの開発(測定環境に強い、測定精度が高い) 2.測定システムの開発(トレーザビリティの確保) 3.測定データ処理技術

波 及 効 果

・非接触測定技術の向上 ・複合的な(例えば自動車のボディのようにプレス部品の組み合わせ)品質 ・精度についても短期間で目標到達できる可能性がある。

海外の取組状況・

技術レベル

海外の自動車メーカでは、複製型(同じデザインの車を違う国でしかも短期間

に)を製造する必要性が現時点では少ないために取り組みも進んでいないと

思われる。

国 際 的 優 位 性 の

予測

現時点では先行しているといえないが、複製型を製造する際にデジタル化し

たデータを利用して日本の熟練金型技術者による金型造り(デザイン面の仕

上げや見込み技術)を圧倒的に短い期間で製造可能になると国際的にも優位

性が出ると考えられる。

備 考 Ⅱ④「上下型クリアランス(ギャップ)の 3 次元自動測定法」の開発に貢献す

る。

技術指針の関連項目* 2 (1)④イエ、(2)①ア②アイ 3 *:「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」に基づく技術高度化指針(案)において「2.高度化の方向性」または「3.配慮事項」として掲げられた項目

Page 28: 型技術分野 - 素形材センター...230 3.5 型技術分野 3.5.1 型技術分野ロードマップの考え方 (1) 型技術とは 金型は、一対の金型により構成される三次元空間を用い、素材に対し形状を転写す

257

分野名:型技術

小項目№:Ⅱ⑦

小項目(テーマ名) 高機能コーティング(潤滑剤レス、離型剤レス)関連マトリクス分野 c6B3B4、c6D7、c6A8、c4F4

技 術 の 概 要

耐摩耗性と耐酸化性を兼ね備えたTiAlN系膜や耐摩耗性と潤滑性を兼ね備え

た DLC 膜を冷間から熱間までの金型に適用することにより、潤滑剤や離型

剤の減少や削減を図る。

経 済 社 会 的 背 景

近の産業界の大きな問題の一つに環境に対する配慮がある。金型の製作に

は、多大なエネルギが必要であるが、ひとつの金型で大量生産することはエ

ネルギの削減につながる。しかし、製品を作る際に、例えばプレス型で使用

する潤滑油やダイカスト型で使用する離型材を大量に使用する。これらを大

幅に減少あるいは削減させることは社会的要求に合致する。

重 要 度 ◎ 産業界において環境問題の解決は重要である。潤滑剤や離型剤の減少は

これらの一助となる。

緊 急 性 ① 環境問題の解決は、緊急性が高い。

現在の技術レベル コーティング技術は年々高度化されており、膜種も用途に応じて開発されている。

最近ではマルチコーティング(多層膜)技術が開発され有用されている。

到達目標の時期と

レベル

要素項目 現状 短期

(2 年後)

中期

(5 年後)

長期

(10 年後)

CVD 処理温度高 変形、変寸汎

用性低い

PVD 低 温 、 膜 種

多、切削工具

溶融金属使用

で金型には不

PCVD 各種金型に適

用可能 実型で一部使

用、金型の寿

命向上でも寄

小物金型では

普及、要複雑

形状、大型化

への対応

かなりの分 野

で 離 型 材 レ

ス 、 潤 滑 油 レ

スを実現

目 標 設 定 の根 拠 実用化されている代表的手法について検討。金型への適用では PCVD が も

有望であり、目標値はクリアできると考える。

目標に到達するた

めの技術開発内容

1.各種金型への 適コーティング技術の確立。 2.大型化、複雑形状化への対応。 3.新機能膜の開発(マルチコーティング)。

波 及 効 果 省エネルギ、環境問題の解決に貢献することは間違いない。

海外の取組状況・

技術レベル

環境問題に関しては欧米の方が関心は高い。産業界からのこの種の取り組み

は必須。

国 際 的 優 位 性 の

予測

現時点でのコーティング技術は同等である。

備 考

技術指針の関連項目* 2 (1)①オ、(3)①アイ 3 *:「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」に基づく技術高度化指針(案)において「2.高度化の方向性」または「3.配慮事項」として掲げられた項目

Page 29: 型技術分野 - 素形材センター...230 3.5 型技術分野 3.5.1 型技術分野ロードマップの考え方 (1) 型技術とは 金型は、一対の金型により構成される三次元空間を用い、素材に対し形状を転写す

258

分野名:型技術

小項目№:Ⅲ① 小項目(テーマ名) 超軽量化樹脂の開発(プラ型) 関連マトリクス分野 j3D1、(j3A6)

技 術 の 概 要

市販車に適用するには、成形速度および材料単価の低減に課題がある。中期的に

は、最も超軽量化のポテンシャルがある CFRP(炭素繊維強化プラスティック)の成

形速度の向上、長期的には、CFRP に匹敵する廉価な新材料開発が課題である。

経 済 社 会 的 背 景 自動車車体軽量化は燃費向上の有効策であり、軽量かつ高強度である CFRP の

採用が決め手である。すでに F1 レーシングカー、航空機では一般的技術である。

重 要 度

◎ 自動車などの軽量化は、省エネルギを実現する決め手であり、高強度な

超軽量化樹脂材料の開発は、技術開発として極めて重要である。 (参考:鉄に対する CFRP の性能:強度 10 倍、剛性 7 倍、重量 1/4)

緊 急 性

① 自動車軽量化は,CO2 低減を推進する上で極めて緊急性が高い。例えば,

自動車の鋼材が炭素繊維に置き換えられれば、40%の軽量化と燃費 30%向上が見込める可能性がある。

現在の技術レベル 成形速度が遅い(1 時間以上)。材料単価が高い(約 3,000 円/kg)。

到達目標の時期と

レベル

要素項目 現状 短期

(2 年後)

中期

(5 年後)

長期

(10 年後)

成形時間 (ボディ部品)

1 時間/個 30 分/個 10 分/個 1 分/個

成形材料費

3,000 円/kg 代替廉価材料

調査 代替廉価材料

実用化 (1,500円/kg)

代替廉価材料

実 用 化 (500円/kg)

目 標 設 定 の根 拠 現行の大物自動車樹脂部品である、インパネ、バンパー並の成形時間、材料

費になれば、鋼板からの材料置換が飛躍的に進み、軽量化が促進される。

目標に到達するた

めの技術開発内容

成形時間短縮:温間プレスの高速化 (金型の温度調整、材料投入・取り出し) 成形材料費 :CFRP 相当新材料開発(ナノテク技術の応用に期待) 成形工法 :積層シートの 3 次元締結量産技術の開発

波 及 効 果

家電・産業機器などの軽量化による。 1.物流エネルギ低減 2.ハンディ化による利便性

海外の取組状況・

技術レベル

強化繊維技術として、国内外で以下の開発が進行中である。 ・BPO 繊維(Zylon-HT)・ケプラー・バイオナノファイバー ・膨張化炭素繊維

国 際 的 優 位 性 の

予測

プラスチック強化技術は海外大手化学メーカであるデュポン、NASA など宇

宙関連技術の転用など素材開発では欧米優位であるが、繊維化や 3 次元化な

どは日本優位であり、先行開発できれば国際的優位性が高まる。

備 考

技術指針の関連項目* 2 (1)①ウ、(2)③エ、(3)①ア 3 *:「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」に基づく技術高度化指針(案)において「2.高度化の方向性」または「3.配慮事項」として掲げられた項目

Page 30: 型技術分野 - 素形材センター...230 3.5 型技術分野 3.5.1 型技術分野ロードマップの考え方 (1) 型技術とは 金型は、一対の金型により構成される三次元空間を用い、素材に対し形状を転写す

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分野名:型技術

小項目№:Ⅳ③ 小項目(テーマ名) 型技術開発のための産学連携や実施体制の整備 関連マトリクス分野 j3E4、j3E1

技 術 の 概 要

大部分の型メーカは、研究開発部門を持っておらず、研究開発に取り組みたくても取

り組む余力のない企業が多い。このため、中小企業からの研究開発を受託できる組織

の整備が必要。例として産業技術総合研究所や公設試験研究機関、あるいは大学が中

小金型メーカの研究受託を積極的に実施する体制や産学連携の仕組みを整える。

経 済 社 会 的 背 景

プラスチック金型分野においては、工作機械の進化による製造技術の向上、3 次元

CAD/CAMによる設計・製造の標準化を背景に中印韓台等のアジア諸国の技術力が向

上している。また、各国政府(韓国、中国等)が自国産業の進展のためには「金型産業

の構築」が重要であると位置づけ、その人材訓練に力を入れている。

重 要 度

◎ アジア諸国の金型技術力の向上に対応していくためには高難度、高精密、超大型

などの技術的に高度な金型をターゲットとしていくべき。このよう金型を単独で

開発できる企業は少ないため産学連携による研究開発体制を整備していく必要

がある。

緊 急 性

① 我が国の金型メーカがアジア諸国との競争に打ち勝つため、付加価値の高い技術

的に高度な金型製品に特化していく必要があることから、ここ数年で取り組み完

成させていかなければならないテーマ。

現在の技術レベル

○平成 19 年度のアンケートによると、積極的に大学と連携したいと回答した企業は

25.5%、積極的に企業と連携したいと回答した大学は75.2%。大学と共同研究した

いと考えている企業は 21%、企業と共同研究したい大学は 42%。大学へ委託研究

したい企業は6%、企業から受託研究をしたい大学は22%であり産学の研究に対す

る意識にはずれが大きい。特に産業界の大学に対する連携の意識が低い。 ○産総研中部センターの平成 19年度における企業との共同研究実績

・総件数:244 件(うちサステナブルマテリアル研究部 120 件(資金付き 29 件、他

91件)) ・内訳:共同研究企業166件、資金提供企業58件、収入133(百万円)

到達目標の時期と

レベル

要素項目 現状 短期

(2 年後)

中期

(5 年後)

長期

(10 年後)

産学連携体制

の整備 公設試験研究

機関の整備

研究機関と産

業界との連携

がとれていな

産学双方が連

携して実施し

たい内容の整

研究受託・委託

体制の整備 産学連携シス

テムの整備

技術を活かし

た攻めの経営

の実現

目 標 設 定 の根 拠

まずは、産学の間で双方がどのように連携を図っていくのか、どのようなテーマにつ

いて研究していくのかを明確にする必要がある。また産業界から見ると、大学や研究

機関が何をやっているのか分からない企業が多いので研究機関の「見える化」が必要。

目標に到達するた

めの技術開発内容

・大学、研究機関等と中小金型メーカとの対話の醸成 ・研究機関の見える化 ・産学連携のためのシステム、スキームの構築

波 及 効 果 中小金型メーカを中心とした技術力が向上し、我が国金型産業の競争力強化につなが

る。

海外の取組状況・

技術レベル

中国の華中科技大学においては、総面積 11,000 ㎡の 3 階建ての校舎で技術教育に携

わる職員49名で素形材を含めたものづくり教育に力を入れている。

国 際 的 優 位 性 の

予測

中小金型メーカの研究開発能力が向上することによって我が国金型産業の 国際競

争力が向上する。

備 考 技術指針の関連項目* 2 3 (3)

*:「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」に基づく技術高度化指針(案)において「2.高度化の方向性」または「3.配慮事項」として掲げられた項目