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第11章 関わりのなかで成熟する
第12章 人生を振り返る
親としての発達
表11.4 親になることによる成長・発達因子 項目
柔軟さ ・角がとれて丸くなった・考え方が柔軟になった・他人に対して寛大になった
自己抑制 ・他人の迷惑にならないように心がけるようになった・自分のほしいものなどががまんできるようになった・他人の立場や気持ちをくみ取るようになった
運命・信仰・伝統の受容
・物事を運命だと受け入れるようになった・運や巡り合わせを考えるようになった・長幼の序は大切だと思うようになった
視野の広がり
・日本や世界の将来について関心が増した・環境問題に関心が増した・児童福祉や教育問題に関心をもつようになった
生きがい・存在感
・生きている張りが増した・長生きしなければと思うようになった・自分がなくてはならない存在だと思うようになった
自己の強さ
・自分の健康に気をつけるようになった・多少他の人と摩擦があっても自分の主義は通すようになった・自分の立場や考えはちゃんと主張しなければと思うようになった
すべて父<母
第1子が3歳未満の子どもの母親で専業主婦の者を対象とした面接調査(徳田, 2002)
第1子が3歳未満の子どもの母親で専業主婦の者を対象とした面接調査(徳田, 2002)
子どもという存在と共に過ごすことによって得られる時間や愛情家族母親としての自分
獲得
第1子が3歳未満の子どもの母親で専業主婦の者を対象とした面接調査(徳田, 2002)
子どもという存在と共に過ごすことによって得られる時間や愛情家族母親としての自分
獲得
自分の時間出産前の友人関係働いていたはずの自分
喪失
結婚満足度
2011年度調査
http://bridal‐souken.net/data/mc/BS_MC2011_release.pdf
人生を振り返る
私の人生、これでよかったの?本当の私って何?これからどう生きよう?
すごくがんばってきたけど…これでよかったのかな?
できなかったこと、してこなかったこと、あきらめた夢、色々あるなあ…
老親の介護や看取り
• 老親扶養の意識変化• 「当然の義務」「よい習慣」→「やむをえない」
• 介護ストレス• 子育てが一段落した頃,介護問題が浮上することも多い。
• 身体的・心理的・経済的負担
• 時間的な拘束感や人生の喪失感
• 介護・看取りによる成長• 無理をせず,「できる範囲でやる」と気持ちを切り替える
午前 午後正午
「人生の正午」
午前 午後正午
「人生の正午」
中年期の危機身体的・心理的老化
残された時間の限界
自分の限界の自覚
人生の目標の再吟味
新しい生き方の模索
自分の人生が発達的に増大・成長する方向から、
衰退・下降する方向へと転換することを自覚する
自己への向き合い
ブリッジズのトランジションモデル(金井, 2002, p.76より)
終わり
中立圏
始まり
何かが終わる時期
混乱や苦悩の時期
新しい始まりの時期
中年期のアイデンティティ再体制化のプロセス(岡本, 1985, p.33より抜粋)
Ⅰ.身体感覚の変化に伴う危機期• 体力の衰え、体調の変化への気づき
• バイタリティの衰えの認識
↓
Ⅱ.自分の再吟味と再方向づけの模索期• 自分の反省への問い直し• 将来の再方向付けの試み
↓
Ⅲ.軌道修正・軌道転換期• 将来へ向けての生活、価値観などの修正
• 自分と対象との関係の変化
↓
Ⅳ.アイデンティティ再確立期• 自己安定感、肯定感の増大
Aレベル
• 中年期の危機の由来:中年期の心理社会的課題そのもの
• ↓
• カウンセラーがその辛い気持ちをしっかりと受け止め、これまでの生き方や現在の生活について整理しながら話を聴いていくことで、アイデンティティの立て直しが進んでいく。
Bレベル
• 中年期の危機の由来:それまで先送りにしてきた青年期・成人期初期の課題
• ↓
• 面接状況では、これまでの未解決の課題や意識されていない葛藤の見直しを行う必要• ていねいにこれまでの半生の経験を見直していくことで、気づいていなかった自分の葛藤や未解決の課題に気づき、中年期にようやく心理的な自立と主体的なアイデンティティを達成する
Cレベル
• 中年期の危機:乳幼児期の葛藤に由来↓
• これまでに体験されてきたネガティブな体験を時間をかけて受容し、自我の土台を形成し直していくことが必要とされる。• カウンセラーに全面的に抱えられ、自我の育て直しを支えられる中で、「自己感覚の獲得」がなされるようになる。
ジェネレイショナル・ケア
• 「子育て」と「介護」は世代から世代へと受け継がれていくケアの営み• ライフサイクルは個人の中で完結するものではなく,世代から世代へと継続していく大きなサイクル
• 世代と世代が歯車のように噛み合い,世代交代によってリニューアルされる
• ケア• 気遣い,配慮,いたわり,育てる,世話,教育,介護,看護など人が人に対して援助する多様な事象
• 成人中期• ケアの担い手として,どのようなケアを引き受けるのかという選択や労力の配分が問われる世代
Question 12‐1
• 成人後期(高齢期)になると,どのような心理的変化が起こるのだろうか。
• また,あなたは高齢者や歳をとることをどのようにとらえているだろうか。
Question 12‐2
• まずは質問項目に回答してみよう• 19以外の奇数番号の項目は「F」• 項目19と偶数番号は「T」• が正解。• 誤答が多いほど,エイジズムの傾向が強い。
• エイジズム:年齢に対する差別• ステレオタイプ:高齢者は病気がちである• 態度:歳はとりたくない• 制限:雇用など
• 若者の時間的展望にも否定的影響をもたらす
知恵:人間発達の調和のとれた統合
• 結晶的知能の部分が成長した一形態
• 実践に生きる熟達化した知識体系• 例)15歳の少女が結婚したいと言っているとき,どのように考え,どのような対応をするか
• ①人生の問題に対する豊富な知識(宣言的知識)
• ②人生の問題に対処するための方法(手続き的知識)
• ③問題の背景や文脈の理解(文脈理解)
• ④多様な価値観があることや人生の優先順位の理解(価値相対性の理解)
• ⑤人生には予測不能で不確実な事柄があることの理解(不確実性の理解)
どのように人生を振り返るか
• 統合 対 絶望• 人生をかけがえのないものとして,よい面も悪い面もありのままに受けとめる統合と,
• 後悔を感じながらも,やり直す時間がないと感じる絶望
• 老年的超越• 従来の価値観から解放されて,表面的な人間関係や社会的地位を重要視しなくなり,自己にこだわる気持ちが薄れて利他的になり,先祖や昔の時代とのつながり,人類や宇宙との一体感,生命の神秘を感じ,死への恐れからも解放されること
• 人生の意味づけの変容
老年期の課題
• 統合:私の人生はこれでよかったのだろうか,私として生まれてきてよかったのだろうか• 中年期以降,人生の終わりが意識される中で肉体と精神両面における喪失や機能低下などの脅威に直面し,それらに対処すべく,統合を達成することが重要な発達課題になる
• 知恵・英知(wisdom)が必要• 死に向き合う中での,生そのものに対する,十分な知識をもとにした,とらわれのない関心
• いろいろな加齢のあり方について幅広い知識をもち,自分自身を含めて特定の事例にとらわれない柔軟な「見方」あるいは構えをもつこと
知恵は年齢によらない
知恵(英知)とは
• 人間についての幅広い知識をもちつつ,ものごとを相対化して捉えること
• 狭い意味での有能さや個別分野での熟達化と異なる…“公益(common good)”に方向づけられている
• 実践的知能の基本的要件:自分が身をおいている業界や組織の慣習やルールに精通していること• ただしそれに沿った判断がつねに公益に合致するとは限らない。倫理や社会常識に反することをしている場合もある。
• 「何が大切なのか」「自分が大切だと思っていることは他人から見てもそうなのか」…自分の価値観や信念を自問し対象化すること
“知恵”の獲得をめぐって
• Clayton(1976):賢者を表現する形容詞の分析• 知恵の要素には,感情的要素,内省的要素,および認知的要素の3要素がある + 加齢的要素
• Holliday & Chandler (1986):賢者の特性の因子• 経験に基づいた卓越した理解力(経験から学ぶ,大きな文脈から物事を見る)
• 判断力とコミュニケーション能力(よいアドバイスをする,人生を理解する)
• 一般的コンピテンス(知的な,教養のある)
• 対人スキル(愛想がよい,交際好きな)
• 社会的慎ましさ(世俗から離れている)
一般に
• 「年齢や経験を重ね,人生の問題を多角的な視点から把握できる力」
• 「問題の本質を見極めて適切な判断ができる力」
• 「他者に対してアドバイスができる力」
• と考えられている
• 知恵を備えた人には優れた理解力,判断力と同時に,人格面での豊かさ,円熟さが期待されている
知恵の測定
知恵の測定
• 宣言的知識• 人生上の問題(または人生の回顧)に関して,幅広くかつ深い知識がある
• 5点:課題文に書かれている知識・情報についても,書かれていない知識・情報についても多くの言及がある。
• 手続き的知識• 人生上の問題を解決する(または人生を回顧する)ために必要な情報の探索,状況分析,意思決定,評価決定に関わる知識がある.
• 5点:状況の分析やいろいろな選択肢に対して考慮し,条件に応じていくつもの解決策を提案している。また,解決策を実現するために,具体的な方法や助言を与えている。
• 文脈理解• 人生上の問題(または人生そのもの)は年齢的文脈,社会歴史的文脈,生活史的文脈など様々な文脈と複雑に絡みあっているので,その文脈を把握しないと問題を解決する(または人生を回顧する)ことはできないことを理解している,
• 価値相対性の理解• 人生問題を解決する(または人生を回顧する〉ときに,どのような価値観や目標を持つかで方向性が変わることを理解している.
• 不確実性の理解• 人生は相対的に予測不可能なものであるということ,そして人生上の問題の解決策を考える(またはある時点でそれまでの人生を回顧する)ときに,不確実性を完璧に排除することはできないということを理解している
日常的知能:実際的問題解決能力と社会的問題解決能力の各4題