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顧客サービス統括部 東京都港区南青山 2-5-20 TEL:03-5775-1092 http://www.tdb.co.jp/ 共同研究 ©2012 TEIKOKU DATABANK, LTD. 共同研究(2012-011金型産業の動態分析 大阪市立大学大学院経営学研究科 教授 田口直樹 キーワード 金型、動態分析 1.はじめに 2.売上高と税引後利益の動態 2.1 『工業統計』・『機械統計』から見た動態 2.2 企業規模別の平均値で見た動態 2.3 売上高ベースで見た成長率の動態 2.4 税引後利益ベースで見た成長率の動態 2.5 売上高ベースの成長率と税引後利益ベースの成長率の相関関係 3.おわりに 【本レポートについて】 本レポートは、工業集積研究会(代表:慶應義塾大学経済学部・植田浩史教授)と帝国データバンクによ る共同研究プロジェクトの成果の一部であり、大阪市立大学・田口直樹教授による「金型産業の動態分 析」レポートである。このレポートでは、日本のモノづくりを支えてきた金型産業について、バブル崩壊後の 1994 年から、リーマンショックを経た 2011 年までの動態を売上高、税引後利益を軸に分析する。分析の際には、 『工業統計表』では分析できない従業員規模別の考察を行う。

金型産業の動態分析 - TDB · 本レポートは、工業集積研究会(代表:慶應義塾大学経済学部・植田浩史教授)と帝国データバンクによ る共同研究プロジェクトの成果の一部であり、大阪市立大学・田口直樹教授による「金型産業の動態分

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顧客サービス統括部

東京都港区南青山 2-5-20

TEL:03-5775-1092

http://www.tdb.co.jp/

■ 共同研究 ◇ 

©2012 TEIKOKU DATABANK, LTD.

共同研究(2012-011)

金型産業の動態分析

大阪市立大学大学院経営学研究科 教授

田口直樹

キーワード 金型、動態分析

1.はじめに 2.売上高と税引後利益の動態

2.1 『工業統計』・『機械統計』から見た動態 2.2 企業規模別の平均値で見た動態 2.3 売上高ベースで見た成長率の動態 2.4 税引後利益ベースで見た成長率の動態 2.5 売上高ベースの成長率と税引後利益ベースの成長率の相関関係

3.おわりに

【本レポートについて】

本レポートは、工業集積研究会(代表:慶應義塾大学経済学部・植田浩史教授)と帝国データバンクによ

る共同研究プロジェクトの成果の一部であり、大阪市立大学・田口直樹教授による「金型産業の動態分

析」レポートである。このレポートでは、日本のモノづくりを支えてきた金型産業について、バブル崩壊後の 1994

年から、リーマンショックを経た 2011 年までの動態を売上高、税引後利益を軸に分析する。分析の際には、

『工業統計表』では分析できない従業員規模別の考察を行う。

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1.はじめに

金型はモノづくりを支える基盤的技術の一つである。自動車や家電産業をはじめ、これまで日本経済を牽引し

てきた量産型機械工業を支えてきた基盤産業の一つである。バブル崩壊以降の大きな特徴として、1990 年代

後半以降、とりわけ 2000 年代に入り、経済のグローバル化が進展し、日本の製造業は厳しいグローバル競争

という経済環境の中におかれている。とりわけ、この 20 年間、韓国や台湾、中国をはじめアジア諸国の工業化

の進展が著しく、日本にとって新たな競争相手として台頭してきており、その環境は一層厳しいものになってきてい

る。

金型はその技術の特殊性、すなわち製造工程における技能的要素が大きい関係からモノづくりを得意とする

日本は世界でも有数の金型先進国であった。しかし、製造工程の IT 化の進展に伴い、金型後発国でも相当

の金型が製造できるようになり、日本の金型産業も大変厳しい状況に置かれている。事実、2000 年代まで日

本は世界一の生産大国であったが、2010 年には出荷額では中国が 1 位となっている。

本稿の問題意識は、1994 年を起点に最新データが得られる 2011 年までの金型産業の動態的変化を考察

するところにある。1994 年は時期的にはバブル崩壊直後であり、いわゆる「失われた 10 年」と評される期間の動

向を把握するために次の基点を 2004 年に設定しバブル崩壊後の 10 年間の動向を把握する。

2000 年代は中国の急成長をはじめとして、アジア諸国が世界経済の中でプレゼンスを高めてきた時代であり、

日本の製造業も一気にグローバル化を進めた時代であるという観点から 2004 年以降今日までの動向を考察

する。そして 2000 年代の大きな画期として 2008 年のリーマンショックがあるが、その影響を考察するために次の

画期を 2009 年においた。以上の時代背景を問題意識として、1994 年、2004 年、2009 年、2011 年の帝国デ

ータバンクの COSMOS2 データ1(以後、C2 データと表記)を抽出し、日本の金型産業の動態を分析していく。

経済産業省の『工業統計』を用いればマクロ的な動向は把握できる。しかし、どういった企業が伸びており、ど

ういった企業が衰退し、結果としてマクロ的な動向を規定しているのかについては把握できない。そこで C2 デー

タから金型関連企業を抽出し、ミクロ的なレベルからその特徴を考察していく。本稿では、従業員規模別にその

特徴を考察していく。『工業統計表』によると金型産業は約 80%が従業 20 名未満の企業であり、中小零細性

を特徴としている。そこで本稿では、10 名以下、11 名~50 名、51 名~100 名、101 名~200 名、201~300

名、301 名以上という 6 つのグループに分けその特徴について考察していく。

1 帝国データバンクでは、訪問調査による信用調査報告書以外にも、聞き取り項目の少ない「企業概要デー

タ(COSMOS2)」を電話調査などにより毎年更新している。COSMOS2 には、「企業所在地」「創業年」「従業員

数」「資本金規模」「売上高」などが入力されており、その他のデータ項目に関しては帝国データバンクウェブペ

ージ(http://www.tdb.co.jp/lineup/cnet/cn_conct_c2.html#01)を参照されたい。

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2.売上高と税引後利益の動態

2.1 『工業統計』・『機械統計』から見た動態

図表 1 1990 年代以降の事業所数と出荷額の推移

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

0

500000

1000000

1500000

2000000

2500000 社百万円

生産額

事業所数

出所:経済産業省『工業統計表』各年版より筆者作成。

まず、経済産業省の『工業統計表(品目編)』を用いて、長期的な日本の金型産業の動態を確認しておく。

図表 1 は 1990 年代以降の日本の金型産業の出荷額と事業所数の推移を見たものである。1991 年に 2 兆円

弱の出荷額を記録した後、1994 年には1兆 4000 億円弱程度まで出荷額を減らすが、1998 年には1兆 9000

億円弱まで出荷額を伸ばし、2002 年に 1 兆 5000 億円程度に落ち込む後、その後は、1 兆 7000 億円程度で

推移していることが分かる。

一方で、事業所数の推移を見ると最高 1 万 3000 程あった事業所は継続的な減少傾向の一途を辿り、2008

年時点では1万事業所を割り込んでいる。この 20 年間で 30%弱の事業所が淘汰されていることがわかる。出

荷額については、事業所程の落ち込みはないことからすると、1事業所あたりの出荷額が増えていることになる。

ここで、経済産業省『機械統計』を用いて、金型の生産数量と単価の推移を見ると図表 2 のような結果が得ら

れる。明らかな特徴は、生産数量は減少傾向にあるが、金型1組あたりの単価は 2002 年以降上昇していると

いうことである。すなわち、事業所数が減少し、生産数量も減少している中で出荷額が一定の水準を維持して

いるということは、高付加価値を有するような金型を生産することにより出荷額を維持しているということである。逆

に言えば、グローバル競争の中で、後発国でも生産できるような金型を生産している企業は需要を奪われ、淘

汰されていっているということが推察される。

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図表 2 金型の生産数量と単価の推移

300000

350000

400000

450000

500000

550000

600000

650000

700000

700000

800000

900000

1000000

1100000

1200000

1300000

19891991199319951997199920012003200520072009

組円

生産数量

単価

出所:経済産業省『機械統計』各年版より筆者作成。

2.2 企業規模別の平均値で見た動態

上記の動態の規定要因をミクロレベルで把握するために、C2 データを用いて傾向を考察する。C2 データから

抽出した金型関連企業 5788 社を従業員規模別に区分しその動態を見ていく2。冒頭にも述べたように金型産

業は中小企業性を特徴としていることから、10 名以下、50 名以下(11 名以上)と区分し、それ以降は、100 名

単位で、100 名以下(51 名以上)、200 名以下(101 名以上)、300 名以下(201 名以上)、301 名以上に区

分し、傾向を見ていく3。5788 社のうち従業員規模がわかる企業データ 5475 社についての構成は図表 3 に示

す通りである。10 名以下企業が 2975 社(54%)、50 名以下が 1949 社(36%)、100 名以下が 337 社(6%)、

200 名以下が 140 社(2%)、300 名以下 38 社(1%)、301 名以上 36 社(1%)となっており、10 名以下、50

名以下の 2 つのカテゴリーで 90%を占めている。

2 帝国データバンク SPECIA レポート「金型産業の構造(1)」(愛媛大学・藤川健講師 2011 年 7 月 29 日弊社

HP 掲載)における金型関連企業の抽出方法と同様に、C2 データにおける「TDB 産業分類名 1」(主業)及び

「TDB 産業分類 2」(従業)に「金型・同部品等製造」と記入のある企業(2011 年 12 月時)を抽出した結果、

5788 社が抽出された。本レポートで取り扱う金型関連企業の経年データとは、この 5788 社の過去の C2 データ

を意味する。そのため、1994 年、2004 年、2009 年時において、これらの企業が、事業内容の変化などにより金

型関連企業でない場合も含まれていることに注意されたい。 3 帝国データバンクの C2 データでは、従業員数に事業主と役員の人数が含まれておらず、原則として正規雇

用者数を意味する。

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54%36%

6%

2% 1% 1%

図表3  従業員別企業数(構成比率)

10名以下

50名以下

100名以下

200名以下

300名以下

301名以上

出所:C2 データより筆者作成。

これらの従業員規模別で、1994 年から 2011 年までの売上高推移と税引後利益の推移を、それぞれのグル

ープの平均値を求め、表したものが図表 4 および図表 5 である。

0.0

5000.0

10000.0

15000.0

20000.0

25000.0

1994年 2004年 2009年 2011年

(

百万円)

図表4  企業規模別売上高の推移

10名以下

50名以下

100名以下

200名以下

300名以下

301名以上

出所:C2 データより筆者作成。

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‐300000

‐200000

‐100000

0

100000

200000

300000

400000

1994年 2004年 2009年 2011年

(

千円)

図表5 企業規模別税引後利益の推移

10名以下

50名以下

100名以下

200名以下

300名以下

301名以上

出所:C2 データより筆者作成。

まず、売上高の推移であるが、10 名以下企業は 1994 年以降、減少額は少ないものの、一貫して漸次的減

少傾向にある。50 名以下の企業は、増減はあるもののほぼ横ばいの推移を示している。100 名以下の企業は

2009 年までは増加傾向にあるが、それ以降は、減少傾向を示している。200 名以下、300 名以下の企業もほぼ

同様の傾向を示している。唯一 301 名以上の企業は、2011 年には若干減らしているものの、一貫した増加傾

向を示しているのが特徴である。

売上高の推移だけを見ると、2008 年のリーマンショックの影響は受けていないように見えるが、税引後利益の

推移を見ると、その影響が色濃く反映されていることが分かる。どの企業規模も 2009 年に大幅な利益の減少を

示している。100 名以下、200 名以下、300 名以下はプラスを示しているが、それ以外の企業規模は、マイナスを

示すまで落ち込んでいる。2009 年以降はどの企業規模も回復基調になるが、2004 年時点で比較的高い利

益をあげていた 300 名以下、200 名以下の企業の回復度合いは、2004 年の水準からすると極めて低い水準

にとどまっている。2004 年時点で利益がそれほど高い値を示していない 100 名以下、50 名以下、10 名以下の

企業規模グループは、2004 年に近い値まで回復しているとみることも出来る。例外的なのが、301 名以上の企

業規模のグループで、落ち込みも激しいが、回復も激しく、2004 年の水準を大きく上回る値を示している。

以上のことから言えることは、2004 年以降、売上高で見るとリーマンショックも含めて大きな落ち込みは示して

いないが、税引後利益の推移で見ると、大きく減少しており、リーマンショックの影響が非常に大きかったことが

分かる。とりわけ、10 名以下、50 名以下、301 名以上の企業規模グループへの影響が大きかったことがわかる。

しかし、301 名以上の企業規模グループについては、リーマンショックの影響も大きいが回復の程度も大きいこと

から金型産業の中でも例外的なポジションにいることが分かる。

以上の傾向はあくまでも各企業規模グループの平均をみたものである。一部の企業が突出した値を示す場

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合にも平均値を押し上げることから各企業グループ内のデータのばらつきをみておく必要がある。図表 6 は、1994

年、2004年、2009年、2011年の各企業グループ内における、平均値、最小値、中央値、最大値、標準偏差

を示したものである。

図表6 各企業規模グループの売上高、税引後利益の偏差

平均値 最小値 中央値 最大値 標準偏差 平均値 最小値 中央値 最大値 標準偏差売上額 145.3 7.0 100.0 3,450.0 157.3 115.4 1.0 90.0 1,930.0 111.6

税引後利益 561.7 -60,000.0 1,000.0 40,715.0 10,466.2 3,521.7 -82,000.0 2,000.0 51,000.0 7,968.7売上額 498.2 33.0 350.0 10,116.0 627.4 465.6 19.0 342.5 7,202.0 415.1

税引後利益 3,710.3 -438,810.0 3,000.0 240,750.0 31,074.3 12,077.0 -340,000.0 7,000.0 888,485.0 39,156.7売上額 1,425.8 50.0 1,000.0 16,315.0 1,472.2 1,572.3 200.0 1,269.5 19,208.0 1,383.0

税引後利益 17,545.1 -197,590.0 8,000.0 403,974.0 61,604.8 37,279.9 -436,824.0 20,000.0 1,855,000.0 131,745.3売上額 3,000.3 120.0 1,974.5 29,493.0 3,783.9 3,329.9 500.0 2,602.0 22,200.0 2,733.8

税引後利益 17,790.4 -879,644.0 16,000.0 550,000.0 138,992.9 98,000.3 -467,187.0 42,328.0 1,851,061.0 238,579.5売上額 4,967.1 310.0 3,956.0 17,186.0 3,304.2 6,548.5 750.0 5,742.5 18,320.0 4,211.7

税引後利益 73,308.7 -700,000.0 56,926.0 500,000.0 211,278.5 188,935.5 -137,930.0 132,500.0 861,010.0 209,086.9売上額 15,676.4 1,000.0 8,060.0 69,797.0 17,192.3 17,234.0 2,939.0 13,092.0 103,926.0 19,899.1

税引後利益 157,454.3 -1,266,062.0 81,000.0 1,684,298.0 530,254.6 208,792.1 -4,493,555.0 293,534.0 2,847,000.0 1,093,124.9

平均値 最小値 中央値 最大値 標準偏差 平均値 最小値 中央値 最大値 標準偏差売上額 106.0 1.0 83.0 1,451.0 97.2 87.2 1.0 70.0 759.0 76.8

税引後利益 -2,509.5 -98,000.0 200.0 74,886.0 12,595.7 592.7 -54,088.0 822.0 42,713.0 8,160.6売上額 503.3 40.0 353.0 15,000.0 610.4 425.8 35.0 300.0 16,500.0 570.7

税引後利益 -2,812.9 -454,000.0 1,000.0 182,951.0 39,439.8 4,060.2 -474,000.0 3,609.0 460,000.0 38,068.9売上額 1,757.0 90.0 1,467.0 25,432.0 1,625.2 1,554.1 250.0 1,200.0 24,517.0 1,608.0

税引後利益 843.7 -762,011.0 6,988.0 635,000.0 115,031.8 24,485.7 -1,402,000.0 17,926.0 1,117,333.0 140,895.5売上額 3,664.5 130.0 2,906.0 14,360.0 2,358.4 3,197.1 750.0 2,576.5 11,158.0 2,030.0

税引後利益 17,535.1 -871,751.0 25,072.0 515,673.0 198,064.8 60,053.7 -711,470.0 41,599.0 895,145.0 174,138.3売上額 7,097.6 2,295.0 5,904.0 23,965.0 4,580.6 6,168.1 2,251.0 5,082.0 18,044.0 3,625.5

税引後利益 8,753.7 -889,000.0 17,316.5 562,977.0 263,719.1 47,462.1 -2,236,730.0 109,335.0 745,000.0 437,152.7売上額 21,204.2 5,870.0 12,545.0 103,993.0 22,589.3 21,086.0 3,645.0 11,407.0 143,069.0 27,616.3

税引後利益 -188,103.6 -4,121,657.0 6,000.0 4,358,000.0 1,409,800.6 328,845.3 -5,556,913.0 191,000.0 7,169,000.0 2,036,740.7出所:C2データより筆者作成。注:売上高の単位は百万円、税引後利益の単位は千円。

1994年 2004年

10名以下

50名以下

100名以下

200名以下

300名以下

301名以上

2009年 2011年

10名以下

50名以下

100名以下

200名以下

300名以下

301名以上

図表 6 は図表4、図表 5 を具体的な数値で示したものでもあるが、これから以下のことがいえる。冒頭にも述べ

たように、企業規模グループでみた場合、10 名以下、50 名以下が 90%を占めている。しかし、売上高、税引

後利益額を見ても、300 名以下企業グループ、301 名以上企業グループの影響が大きいことが分かる。企業

構成でみたら全体の 2%に過ぎないが、これら少数の企業グループが全体の傾向を規定しているということが言

える。

また、データのばらつきを示す標準偏差を見ても、どの時代のどの企業グループを見ても、その値は、平均値か

ら大きく乖離していることが分かる。すなわち、各企業グループの傾向は、平均的な傾向として収束しているので

はなく、安定的な経営が出来ている企業と経営環境の変化の影響を大きく受けている企業間での格差が明確

になっていることが推察される。

各企業グループ内の個別的な動向を把握するために、以下では、2004 年から 2011 年の売上高と税引後利

益の変化に着目してその特徴について考察してみる。

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2.3 売上高ベースで見た成長率の動態

ここでは、2011 年の売上高および税引後利益が 2004 年時のそれと比較してどれくらいの伸びを示したかを計

算して業績を伸ばした企業、悪化させた企業がどの程度存在しているかについて考察してみる。まず、売上高に

ついての特徴を考察していく。

図表 7 は各企業規模グループの売上高の伸び率毎の企業数を振り分けたものである。両期間の売上を比較

することが出来た、10 名以下企業:2220 社、50 名以下企業:1748 社、100 名以下企業:318 社、200 名以

下企業 131 社、300 名以下企業:37 社、301 名以上企業:36 社についてみてみたものである。

まず、伸び率がマイナスになった企業数および増加した企業数について見てみる。10 名以下企業でみると、マ

イナスになった企業数は 1582 社(71.3%)、プラスになった企業数は 638 社(28.7%)である。50 名以下企業で

みると、マイナスになった企業数は 1058 社(60.5%)、プラスとなった企業数は 690 社(39.5%)である。100 名

以下企業でみると、マイナス企業は 183 社(57.5%)、プラス企業は 135 社(42.5%)である。200 名以下企業

では、マイナス企業は 64 社(48.9%)、プラス企業は 67 社(51.1%)、300 名以下企業ではマイナス企業は 21

社(56.8%)、プラス企業は 16 社(43.2%)、301 名以上企業ではマイナス企業は 13 社(36.1%)、プラス企業

は 23 社(63.9%)という結果になっている。301 名以上の企業は売上高を伸ばしている企業が 6 割強存在して

いるが、それ以外の企業規模グループでは、6 割程の企業が売上を減少させていることが分かる。

図表7 2004年~2011年間の売上高の伸び率

2004年~2011年売上伸び率

企業数 比率 企業数 比率 企業数 比率 企業数 比率 企業数 比率 企業数 比率

▼90以下 3 0.1 1 0.1 0 - 0 - 0 - 0 - ▼90-80 35 1.6 2 0.1 1 0.3 1 0.8 0 - 0 - ▼80-70 59 2.7 14 0.8 1 0.3 0 - 0 - 1 2.8 ▼70-60 100 4.5 42 2.4 8 2.5 1 0.8 1 2.7 1 2.8 ▼60-50 171 7.7 74 4.2 8 2.5 3 2.3 1 2.7 0 - ▼50-40 220 9.9 117 6.7 25 7.9 9 6.9 4 10.8 1 2.8 ▼40-30 279 12.6 203 11.6 28 8.8 6 4.6 6 16.2 3 8.3 ▼30-20 267 12.0 180 10.3 29 9.1 14 10.7 2 5.4 4 11.1 ▼20-10 272 12.3 220 12.6 43 13.5 16 12.2 0 - 1 2.8 ▼10-0 176 7.9 205 11.7 40 12.6 14 10.7 7 18.9 2 5.6 △0-10 231 10.4 202 11.6 26 8.2 19 14.5 1 2.7 2 5.6 △10-20 99 4.5 113 6.5 20 6.3 11 8.4 6 16.2 5 13.9 △20-30 81 3.6 90 5.1 20 6.3 6 4.6 1 2.7 3 8.3 △30-40 59 2.7 60 3.4 9 2.8 4 3.1 2 5.4 4 11.1 △40-50 39 1.8 45 2.6 12 3.8 6 4.6 2 5.4 0 - △50-60 27 1.2 33 1.9 5 1.6 7 5.3 1 2.7 3 8.3 △60-70 27 1.2 27 1.5 8 2.5 2 1.5 1 2.7 0 - △70-80 15 0.7 16 0.9 2 0.6 2 1.5 0 - 0 - △80-90 14 0.6 14 0.8 6 1.9 0 - 1 2.7 0 - △90-100 4 0.2 11 0.6 3 0.9 8 6.1 0 - 1 2.8 △100-200 31 1.4 52 3.0 17 5.3 1 0.8 0 - 4 11.1 △200-300 8 0.4 15 0.9 6 1.9 1 0.8 0 - 0 - △300-400 0 - 5 0.3 0 - 0 - 0 - 0 - △400-500 1 0.0 3 0.2 1 0.3 0 - 1 2.7 0 - △500-600 0 - 1 0.1 0 - 0 - 0 - 0 - △600-700 0 - 0 - 0 - 0 - 0 - 0 - △700-800 0 - 0 - 0 - 0 - 0 - 0 - △800-900 0 - 0 - 0 - 0 - 0 - 0 - △900-1000 0 - 0 - 0 - 0 - 0 - 0 - △1000-2000 1 0.0 3 0.2 0 - 0 - 0 - 1 2.8 △2000-3000 1 0.0 0 - 0 - 0 - 0 - 0 - 出所:C2データより筆者作成。注:▼はマイナス、△はプラスを意味する。範囲は、△▼ともに左側の数字を含み、右側の数字含まない範囲である。

10名以下 50名以下 100名以下 200名以下 300名以下 301名以上

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では、企業規模グループ毎の伸び率の特徴についてみてみる。二桁の割合を示すレンジをみてみると、10 名

以下企業でマイナス成長の企業は、▼40-30 で 12.6%、▼30-20 で 12.0%、▼20-10 で 12.3%存在している。

他方で売上高を伸ばしている企業は、△0-10 の範囲が 10.4%と一番多い。50 名以下企業について見てみる

と、▼40-30 が 11.6%、▼30-20 が 10.3%、▼20-10 が 12.6%、▼10-0 が 11.7%と集中している。伸び率が

プラスになっている企業は、△0-10 の範囲が 11.6%と一番多い。100 名以下の企業では、▼20-10 が 13.5%、

▼10-0 が 12.6%と多く、売上高を伸ばした企業ついては、△0-10 の 8.2%が一番多い割合となっており。200

名以下でみると、▼30-20が10.7%、▼30-20 が12.2%、▼20-10が10.7%、▼ 10-0 が14.5%となっている。

一方、プラスについては、△0-10 の 14.5%が一番多く集中しているが、他は広く分散しているといえる。300 名以

下企業については、▼50-40 に 10.8%、▼40-30 に 16.2%、▼10-0 に 18.9%となっており、プラスについては、

△10-20 の範囲に 16.2%と大きな値を示している。最後 301 名以上の企業については、▼30-20 が 11.1%を

示しているに過ぎず、プラスについても△10-20 が 13.9%、△30-40 が 11.1%、△100-200 が 11.1%と他の企

業規模グループよりも高いレンジに集中している。

2.4 税引後利益ベースで見た成長率の動態

次に 2004 年と比較した際の 2011 年の税引後利益の伸び率について見ていく。図表 8 は各企業グループの

税引後利益の伸び率毎の企業数を振り分けたものである。両期間の税引後利益を比較することが出来た、10

名以下:723 社、50 名以下:1031 社、100 名以下:270 社、200 名以下:120 社、300 名以下:36 社、301

以上:33 社についてみたものである。

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図表8 2004年~2011年間の税引後利益額の伸び率

2004年~2011年税引後利益額伸び率

企業数 比率 企業数 比率 企業数 比率 企業数 比率 企業数 比率 企業数 比率

▼10000以下 1 0.1 4 0.4 4 1.5 0 - 0 - 1 3.0 ▼10000-1000 21 2.9 24 2.3 5 1.9 5 4.2 2 5.6 0 - ▼1000-900 1 0.1 2 0.2 2 0.7 1 0.8 0 - 0 - ▼900-800 1 0.1 5 0.5 3 1.1 0 - 0 - 1 3.0 ▼800-700 1 0.1 5 0.5 1 0.4 1 0.8 0 - 0 - ▼700-600 1 0.1 9 0.9 2 0.7 0 - 0 - 0 - ▼600-500 4 0.6 14 1.4 2 0.7 1 0.8 0 - 1 3.0 ▼500-400 5 0.7 9 0.9 0 - 0 - 0 - 0 - ▼400-300 6 0.8 21 2.0 2 0.7 1 0.8 0 - 2 6.1 ▼300-200 16 2.2 30 2.9 12 4.4 5 4.2 1 2.8 1 3.0 ▼200-100 33 4.6 84 8.1 24 8.9 6 5.0 3 8.3 1 3.0 ▼100-90 453 62.7 357 34.6 47 17.4 22 18.3 4 11.1 2 6.1 ▼90-80 14 1.9 37 3.6 12 4.4 5 4.2 0 - 0 - ▼80-70 11 1.5 33 3.2 9 3.3 5 4.2 1 2.8 1 3.0 ▼70-60 18 2.5 25 2.4 6 2.2 1 0.8 4 11.1 1 3.0 ▼60-50 4 0.6 18 1.7 8 3.0 5 4.2 3 8.3 1 3.0 ▼50-40 15 2.1 26 2.5 6 2.2 2 1.7 1 2.8 4 12.1 ▼40-30 7 1.0 18 1.7 13 4.8 5 4.2 2 5.6 0 - ▼30-20 9 1.2 15 1.5 9 3.3 1 0.8 1 2.8 2 6.1 ▼20-10 6 0.8 13 1.3 7 2.6 2 1.7 2 5.6 2 6.1 ▼10-0 4 0.6 7 0.7 4 1.5 5 4.2 0 - 0 - △0-10 16 2.2 22 2.1 5 1.9 2 1.7 0 - 0 - △10-20 2 0.3 6 0.6 4 1.5 3 2.5 1 2.8 1 3.0 △20-30 1 0.1 5 0.5 6 2.2 3 2.5 0 - 0 - △30-40 1 0.1 12 1.2 3 1.1 1 0.8 0 - 0 - △40-50 0 - 12 1.2 3 1.1 2 1.7 0 - 1 3.0 △50-60 3 0.4 12 1.2 6 2.2 1 0.8 1 2.8 1 3.0 △60-70 6 0.8 6 0.6 2 0.7 1 0.8 0 - 0 - △70-80 1 0.1 4 0.4 2 0.7 2 1.7 1 2.8 0 - △80-90 1 0.1 10 1.0 2 0.7 2 1.7 0 - 0 - △90-100 0 - 6 0.6 3 1.1 1 0.8 0 - 0 - △100-200 28 3.9 44 4.3 10 3.7 7 5.8 1 2.8 6 18.2 △200-300 0 - 27 2.6 8 3.0 15 12.5 2 5.6 1 3.0 △300-400 0 - 21 2.0 7 2.6 2 1.7 1 2.8 1 3.0 △400-500 0 - 15 1.5 3 1.1 0 - 1 2.8 0 - △500-600 33 4.6 13 1.3 5 1.9 0 - 1 2.8 0 - △600-700 0 - 6 0.6 3 1.1 0 - 0 - 1 3.0 △700-800 0 - 5 0.5 2 0.7 0 - 0 - 0 - △800-900 0 - 3 0.3 2 0.7 1 0.8 0 - 0 - △900-1000 0 - 8 0.8 2 0.7 1 0.8 0 - 0 - △1000-10000 0 - 37 3.6 13 4.8 3 2.5 3 8.3 0 - △10000より大きい 0 - 1 0.1 1 0.4 0 - 0 - 1 3.0 出所:C2データより筆者作成。注:▼はマイナス、△はプラスを意味する。範囲は、△▼ともに左側の数字を含み、右側の数字含まない範囲である。

10名以下 50名以下 100名以下 200名以下 300名以下 301名以上

まず、税引後利益の伸び率がマイナスになっている企業数とプラスになっている企業数につてみてみる。10 名

以下規模の企業グループでは、マイナスになった企業数は 631 社(87.3%)、プラスになった企業数は 92 社

(12.7%)となっている。50 名以下規模の企業グループでは、マイナス企業は 756 社(73.8%)、プラス企業は

275 社(26.7%)である。100 名以下規模の企業グループでは、マイナス企業は 178 社(65.9%)、プラス企業は

92 社(34.1%)である。200 名以下規模の企業グループでは、マイナス企業は 73 社(60.8%)、プラス企業は

47 社(39.2%)、300 名以下規模の企業グループでみると、マイナス企業は 24 社(66.7%)、プラス企業は 12

社(33.3%)となっている。301 名以上規模の企業グループでは、マイナス企業は 20 社(60.6%)、プラス企業は、

13 社(39.4%)という値になる。

ここで、先ほど考察した売上高の伸び率と税引後利益の伸び率を比較すると図表 9のようになる。200名以下

規模の企業グループを除き、すべての企業規模のグループで、税引後利益においてマイナス成長の割合が、

プラス成長の割合よりも高いことが分かる。

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0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

70.0%

80.0%

90.0%

100.0%

10名以下 50名以下 100名以下 200名以下 300名以下 301名以上

図表9 売上高と税引後利益の伸び率の比較 マイナス(売上)

マイナス(利益)

プラス(売上)

プラス(利益)

出所:C2 データより筆者作成。

次に、企業規模グループ毎の伸び率の特徴について見てみる。二桁の数値を示すレンジを見てみると、10 名

以下規模の企業グループでマイナス成長の企業は、▼100-90 に 62.7%と集中している。他方で利益を伸ばし

ている企業は、特に集中した範囲はなく、△500-600 が 4.6%、△100-200 が 3.9%と比較的高い数値を示して

いるが、すべての範囲に点在している。50 名以下規模の企業グループでは、マイナス成長の企業は、▼100~

90 の範囲に 34.6%と集中している。プラス成長の企業は、△200-200 の範囲に 4.3%、△1000-100003.6%と

比較的高い数値を示しているが、あとは広く点在している。100 名以下規模の企業グループでは、マイナス成長

の企業は▼100~90 の範囲に 17.4%と集中しており、プラス成長の企業に関しては、△1000-10000 の範囲に

4.8%、△100-200 の範囲に 3.7%と比較的集中しているが、あとは広く点在している。200 名以下規模の企業

グループでは、マイナス成長の企業は、▼100-90 の範囲に 18.3%と集中しており、プラス企業に関しては、△

200-300 の範囲に 12.5%と集中しているのが特徴である。300 名以下規模の企業グループでは、マイナス成長

の企業は▼100-90 の範囲と▼70-60 の範囲に 11.1%の値を示しており、プラス成長の企業は、△1000-10000

の範囲に 8.3%の値を示している。301 名以上規模の企業グループでは、マイナス成長の企業は、▼50-40 の

範囲に 12.1%の値を示しており、プラス成長の企業は、△100-200 の範囲に 18.2%と比較的集中している。総

体として、マイナス成長の企業は、▼100~90 の範囲に集中しており、特に、10 名以下、50 名以下ではその割

合が高いことが分かる。また、伸びている企業は企業規模が小さくても非常に高い伸び率を示していることも特

徴的である。

2.5 売上高ベースの成長率と税引後利益ベースの成長率の相関関係

最後に、売上高の伸び率と税引後利益の伸び率をクロス集計し、両者の相関関係を見てみる。図表 10 は

企業規模グループ毎のクロス集計を示したものである。売上高と税引後利益が伴にプラス成長している企業は、

10 名以下企業規模で 4.3%、50 名以下企業規模で 14.9%、100 名以下企業規模で 20.0%、200 名以下

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企業規模で 25.0%、300 名以下企業規模で 27.8%、301 名以上企業規模で 31.4%となっており、企業規模

が大きくなるほど、売上高、税引後利益伴にプラス成長をしている割合が大きくなっていることが分かる。

図表10 売上高の伸び率と税引後利益の伸び率のクロス集計

利益マイナス成長 利益プラス成長 利益マイナス成長 利益プラス成長 利益マイナス成長 利益プラス成長

売上マイナス成長 493(68.2%) 61(8.4%) 529(51.3%) 121(11.7%) 119(44.1%) 38(14.1%)

売上プラス成長 138(19.1%) 31(4.3%) 228(22.1%) 154(14.9%) 59(21.9%) 54(20.0%)

利益マイナス成長 利益プラス成長 利益マイナス成長 利益プラス成長 利益マイナス成長 利益プラス成長

売上マイナス成長 43(35.8%) 17(14.2%) 19(52.8%) 2(5.6%) 11(31.4%) 2(5.7%)

売上プラス成長 30(25.0%) 30(25.0%) 5(13.9%) 10(27.8%) 11(31.4%) 11(31.4%)

出所:C2データより筆者作成。

10名以下 50名以下 100名以下

200名以下 300名以下 301人以上

売上高はマイナス成長であるが、利益はプラス成長をしている企業を見ると、10 名以下企業規模は 8.4%、

50 名以下企業規模は 11.7%、100 名以下企業規模は 14.1%、200 名以下企業規模は 14.2%、300 名以

下企業規模は 5.6%、301 名以上企業規模は 5.7%となっており、50 名、100 名、200 名以下企業規模で比

較的大きな値を示している。

他方で、売上高も税引き利益もマイナス成長を示している企業は、10 名以下企業規模で 68.2%、50 名以下

企業規模で 51.3%、100 名以下企業規模で 44.1%、200 名以下企業規模で 35.8%、300 名以下企業規

模で 52.8%、301 名以上で 31.4%と 10 名、50 名、300 名以下企業規模で 5 割を超える数値を示しており、

全体として厳しい現状を物語っていることが分かる。また、売上高はプラス成長を示しているものの税引後利益

ではマイナス成長を示している企業は、10 名以下企業規模で 19.1%、50 名以下企業規模で 22.1%、100 名

以下企業規模で 21.9%、200 名以下企業規模で 25.0%、300 名以下企業規模で 13.9%、301 名以上企

業規模で 31.4%となっており、全体として 20~30%の企業が売上高を伸ばしつつも利益を減少させている企業

が存在していることが分かる。

3.おわりに

本稿では、1994 年を基点に、グローバル化が本格的に進展する 10 年後の 2004 年、リーマンショックの影響

を見るための 2009 年、そして直近の 2011 年を画期として金型産業の動態を売上高、税引後利益を軸として考

察してきた。

『工業統計表』では 2004 年以降、出荷額は 1 兆 7000 億円前後で推移しているが、企業規模のミクロレベル

で見ると、全体の 9 割を占める 10 名以下、50 名以下企業規模のグループで売上高は減少させており、一部

の大規模企業グループが出荷額を押し上げている結果であることが分かった。売上高を伸ばしている企業でも

税引後利益は減少している企業も 20~30%あり、全体として金型産業を取り巻く環境が非常に厳しい現実が

浮き彫りになっている。特に全体の 9 割を占める 10 名以下企業、50 名以下企業規模のグループでは、7 割~

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9 割弱が税引後利益の数値がマイナスを示しており、非常に深刻な事態を物語っている。

しかし、一方で売上高、税引後利益伴にプラス成長している企業も存在していることも事実であり、成長してい

る企業の特徴について考察する必要があるが、今後の課題としたい。

分析・執筆

田口直樹 (大阪市立大学大学院経営学研究科)

データ加工

藤本迪也 (産業調査部[当時] 客員研究員)

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