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解析学 I/第 1回
藤田 博司
基本事項の復習
ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
解析学 I/第 1回
藤田 博司
愛媛大学理学部
2020年 4月 8日 (最終更新: 2020年 4月 19日)
解析学 I/第 1回
藤田 博司
基本事項の復習
ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
講義全体の概要
連続関数の性質
一様連続関数
関数列の各点収束と一様収束
関数項級数 とくに べき級数
リーマン積分
積分と極限の順序交換
解析学 I/第 1回
藤田 博司
基本事項の復習
ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
指定テキスト
黒田 成俊 著『微分積分』(共立出版 2002年)
かならず用意しておいてください.
解析学 I/第 1回
藤田 博司
基本事項の復習
ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
きょうの授業内容
連続関数の性質 (1)
基本事項の復習
ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
解析学 I/第 1回
藤田 博司
基本事項の復習
ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
基本事項の復習(概略のみ)
◆ 実数の集合の上限・下限 (テキスト§ 2.3~2.4)
【確認】実数の集合 A ⊂ R が上に有界とは?→テキスト p.35, 定義 2.4を参照
【確認】実数の集合 A ⊂ R の上限とは?→テキスト p.32, 定義 2.3を参照
A の上限を supA と書く
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基本事項の復習
ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
基本事項の復習(概略のみ)
連続性の公理
実数の上に有界な集合には上限が存在する
上限 supA は A の最小上界である (テキスト p.38, 定理 2.5)
「下に有界」「下限」についても同様に定義する
A の下限を inf A と書く
下限 inf A は A の最大下界である
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藤田 博司
基本事項の復習
ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
基本事項の復習(概略のみ)
◆ 数列とその極限 (テキスト§ 2.5)
数列a1, a2, a3, . . . , an, . . .
これを {an} と書く
【確認】数列 {an} が実数 α に収束することの定義は?→テキスト p.42, 定義 2.6を参照
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基本事項の復習
ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
基本事項の復習(概略のみ)
数列 {an} が α に収束するとき,
limn→∞
an = α
と書く (α を数列 {an} の極限という)
注意:数列が収束するとき, その極限 α はただ一つに定まる (テキスト p.45, 命題 2.8)
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藤田 博司
基本事項の復習
ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
基本事項の復習(概略のみ)
【確認】数列 {an} が無限大に発散するとは?→テキスト p.46「正負の無限大への発散」を参照
数列 {an} が無限大に発散することを
limn→∞
an = ∞
とあらわす (「∞ に収束する」と読まないように!!)
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基本事項の復習
ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
基本事項の復習(概略のみ)
◆ 関数の極限 (テキスト§ 3.2)
テキスト p.93, 定義 3.1
0 < |x − a| < δ0 の範囲で定義されている関数 f (x) について, f (x) が x → a のとき実数 α に収束するとは,
任意の ε > 0 に対して正の数 δ (δ < δ0) が存在して
0 < |x − a| < δ ならば |f (x)− α| < ε
が成立することである.
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ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
基本事項の復習(概略のみ)
このときlimx→a
f (x) = α
と書く
f (x) は x = a のとき定義されてなくてよいことに注意
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ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
基本事項の復習(概略のみ)
x > R0 の範囲で定義されている関数 f (x) について, f (x) が x → ∞のとき実数 α に収束するとは, 任意の ε > 0 に対して実数 R ≥ R0 が存在して
x > R ならば |f (x)− α| < ε
が成立することである (テキスト p.94, 定義 3.2(i))
このとき limx→∞ f (x) = α と書く
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ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
テキスト p.57, 定理 2.14
有界な数列 {an} は収束する部分列をもつ
【確認】数列 {an} の部分列とは?→テキスト p.53「2.5.6 部分列とその極限」を参照
この定理をすでに学んでいる人は, 左側のメニューから, 次の「連続関数」のセクションへ進みなさい.
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ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
☆証明の鍵となる考察☆
無限に多くの番号 n について c ≤ an ≤ d が成立しているとき, 区間[c , d ] を中点 b = (c + d)/2 で二分割すると,
無限に多くの n について c ≤ an ≤ b
または無限に多くの n について b ≤ an ≤ d
の, 少なくとも一方は成立する
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ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
【定理の証明】
定理の仮定から {an} は有界な数列なので, 下界 c1 と上界 d1 がある.このとき, すべての番号 n について
c1 ≤ an ≤ d1
が成立している. 区間 [c1, d1] を中点 b = (c1 + d1)/2 で二分割して,もしも無限に多くの n で c1 ≤ an ≤ b が成立するなら c2 = c1,d2 = b と定めよう. そうでなければ c2 = b, d2 = d1 と定めよう. するといずれにせよ, 無限に多くの n で c2 ≤ an ≤ d2 が成立する. (つづく)
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ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
【定理の証明】(つづき)
同様に区間 [c2, d2] を中点 b2 = (c2 + d2)/2 で二分割して, 無限に多くの n で c2 ≤ an ≤ b2 が成立するなら, c3 = c2, d3 = b2 とし, そうでなければ c3 = b2, d3 = d2 としよう. するといずれにせよ, 無限に多くの n で c3 ≤ an ≤ d3 が成立する.
以下同様に, 区間 [ck , dk ] を二分割して, 無限に多くの n でck+1 ≤ an ≤ dk+1 が成立するように, ck+1 と dk+1 を選んだとする.すると, (つづく)
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ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
【定理の証明】(つづき)
c1 ≤ c2 ≤ · · · ck ≤ · · · ≤ dk ≤ · · · ≤ d2 ≤ d1
dk − ck = (d1 − c1)/2k−1
無限に多くの n で ck ≤ an ≤ dk
となる.
それでは部分列を選ぼう. まず n(1) = 1 とする. c1 ≤ an(1) ≤ d1 である. つぎに, 無限に多くの n で c2 ≤ an ≤ d2 となっていることから,n(1) < n かつ c2 ≤ an ≤ d2 をみたす n は必ず存在する. そのような最小の n を n(2) としよう. 以下同様に進み, すでに n(k) が選ばれているとして, n(k) < n かつ ck+1 ≤ an ≤ dk+1 をみたす n は必ず存在する. そのような最小の n を n(k + 1) としよう. (つづく)
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ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
【定理の証明】(つづき)
こうして ck ≤ an(k) ≤ dk となるように部分列 {an(k)} が選ばれた.ところで
c1 ≤ c2 ≤ · · · ck ≤ · · · ≤ dk ≤ · · · ≤ d2 ≤ d1
dk − ck = (d1 − c1)/2k−1
だったから, 集合 {c1, c2, c3, . . .} は上に有界, {d1, d2, d3, . . .} は下に有界であるから, 上限 sup{c1, c2, c3, . . .} と下限 inf{d1, d2, d3, . . .} が存在する. これらはそれぞれ数列 {ck} と {dk} の極限値であるが,dk − ck = (d1 − c1)/2
k−1 より dn − cn はゼロに収束するから
limk→∞
ck = limk→∞
dk = α
である. (つづく)
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ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
【定理の証明】(つづき)
ところがすべての番号 k で ck ≤ an(k) ≤ dk であるから, (はさみうちの原理によって)
limk→∞
an(k) = limk→∞
ck = limk→∞
dk = α
となる. すなわち部分列 {an(k)} は収束する. (証明終)
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藤田 博司
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ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
連続関数
連続関数については微積分の授業などを通してすでに学んでいるが,ここで改めて, 関数の極限にもとづいて関数の連続性を定義する.
◆ 関数の連続性の定義
テキスト p.100, 定義 3.3
f (x) は a を含む区間 (c , d) 上で定義されているとする. そのときf (x) が a で連続であるとは, 極限 limx→a f (x) が存在して
limx→a
f (x) = f (a)
が成り立つことをいう.
注意:1点における右連続性, 左連続性についてもテキストで確認すること (p.100, 定義 3.4)
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藤田 博司
基本事項の復習
ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
連続関数
テキスト p.101, 定義 3.5
f (x) は I 上で定義されているとする. そのとき f (x) が区間 I で連続であるとは, f (x) が I のすべての点 a において連続であることをいう. ただし, a が I の左端 (または右端)の点であるときには f (x) はx = a で右連続 (または左連続)であるとする.
ここでは区間 I は開区間, 閉区間, 半開区間のどれでもよく, また無限区間でもよい.
注意:「グラフがつながっていること」というイメージ的な理解からは, いったん抜け出す必要がある. (テキスト p.101, 例 3.14を見よ) ただし, 定義が改まったからといって, いままで連続だと思っていた関数が今日から連続でなくなったりするわけではないので安心しなさい.
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ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
連続関数
関数の連続性は次のように数列の言葉で言いあらわすこともできる.
テキスト p.101, 命題 3.3
f (x) は a を含む区間 (c , d) 上で定義されているものとする. そのとき, 次の 3条件は同値である:
1 f (x) は a で連続である;2 f (x) は a で右連続かつ左連続である;3 an ∈ (c , d) かつ limn→∞ an = a であるような任意の数列 {an}に対して limn→∞ f (an) = f (a).
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ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
最大値・最小値の存在
テキスト p.13, 定理 1.4/ p.103, 定理 3.7
関数 f (x) が閉区間 [a, b] で連続ならば f (x) は [a, b] で最大値および最小値をとる. 言い換えれば a ≤ c ≤ b かつ
a ≤ x ≤ b であるすべての x に対して f (x) ≤ f (c) (1.31)
をみたす c が存在し, また a ≤ d ≤ b かつ
a ≤ x ≤ b であるすべての x に対して f (x) ≥ f (d) (1.32)
をみたす d が存在する.
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ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
最大値・最小値の存在
定理の直観的な意味あいは次の図から明らかだろう.
テキスト p.104にある証明は少しオカシナところがある. 修正した証明を以下に述べる.
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藤田 博司
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ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
最大値・最小値の存在
【定理の証明 (前半)】
最大値の存在だけ証明するが, 同様に最小値の存在も証明できる.
前半では, 値域 f (I ) が上に有界であることを背理法で示す.
値域 f (I ) が上に有界でなかったと仮定しよう. このとき, f (I ) の上界は存在しない. どの自然数 n も集合 f (I ) の上界ではないので,f (xn) > n をみたすように区間 I 上の実数 xn をとれる. すると数列{xn} が得られる.
数列 {xn} はすべての項が I に属するので有界な数列で, ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理によって, 収束する部分列 {xn(k)} をもつ. limk→∞ xn(k) = c としよう. このとき a ≤ c ≤ b である (→テキスト p.49, 極限と順序の関係). 関数 f (x) は c で連続だからlimk→∞ f (xn(k)) = f (c) となる.
いっぽう, f (xn(k)) > n だったから limk→∞ f (xn(k)) = ∞ でもある.これは矛盾である.
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ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
最大値・最小値の存在
【定理の証明 (後半)】
前半の結果から値域 f (I ) は上に有界であるから, 上限 β = sup f (I )が存在する. β は集合 f (I ) の最小の上界であるから, それより小さい実数 β − 1/n は (どんな自然数 n についても) f (I ) の上界ではない.
そこで β − 1/n < f (xn) をみたすように I 上の実数 xn がとれる. こうして I 上の数列 {xn} が得られる. この数列 {xn} は有界な数列だから, 収束する部分列 {xn(k)} をもつ. limk→∞ xn(k) = c としよう. すると a ≤ c ≤ d である. 関数 f (x) は c で連続だからlimk→∞ f (xn(k)) = f (c) となる.
各 k で k ≤ n(k) だから β − 1/k ≤ β − 1/n(k) < f (xn(k)) ≤ β であって, limk→∞ f (xn(k)) = β であることがわかる. したがってf (c) = β である. β は f (I ) の上限だったから, I 上のすべての実数 xについて f (x) ≤ β = f (c) である. これは f (c) が f (x) の最大値であることを意味する. (証明終)
解析学 I/第 1回
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ボルツァーノ=ワイエルストラスの定理
連続関数
最大値・最小値の存在
最大値・最小値の存在
定義域 I が閉区間でない場合や, 関数が連続でない場合には, 最大値は存在するとは限らない.