Upload
others
View
7
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
61 授業科目 情報法
担当者 森脇敦史
授業科目群 展開・先端 必修・選択の別 選択 開講年次・学期 2年次・後期
履修条件 インターネットに関する基本的知識を有し、日常的に利用しながら問題意識を持
っていること。
学習の目標 情報法では、基礎科目について一定の知識を有していることを前提に、情報に
関して生じている問題を整理しつつ明確化することを目標とする。授業の中では、
判例や事件を素材とした具体的事案をもとに、その背景を検討しながら、どのよ
うな推論の可能性が存在し、妥当な結論を導くことが出来るのかを、質疑応答を
通じて考える。
授業の計画 第 1回 情報社会の現状、表現の自由総論
第 2回 マスメディア(1)
第 3回 マスメディア(2)
第 4回 名誉毀損(1)
第 5回 名誉毀損(2)
第 6回 プライバシー侵害(1)
第 7回 プライバシー侵害(2)
第 8回 放送制度
第 9回 情報公開(1)
第 10 回 情報公開(2)
第 11 回 個人情報保護
第 12 回 インターネットと名誉毀損・プライバシー
第 13 回 インターネットと違法・有害表現
第 14 回 プロバイダーの責任と役割
第 15 回 全体のまとめ
教科書 1 高橋和之・松井茂記編『インターネットと法[第 4 版]』(有斐閣、2010 年)
2 松井茂記『インターネットの憲法学』(有斐閣、2002 年)
3 宇賀克也・長谷部恭男編『改訂版 法システムⅢ 情報法』(放送大学教育
振興会、2006 年)
主な参考文献 1 堀部政男、長谷部恭男編『メディア法判例百選』(有斐閣、2005 年)
2 岡村久道編『サイバー法判例解説』(商事法務、2004 年)
試験・成績評価
の方法
授業参加 30%、期末試験 70%で評価する。
科
目 情報法
担
当
者
森脇 敦史 第1回
全15回 情報社会の現状、表現の自由総論
事例(授業内容)
表現の自由は、憲法上の人権において優越的地位を占め、特に経済的自由と比較して厳格な審査が求められる(二
重の基準論)といわれる。しかし、「優越」とは何を意味するもので、なぜ「優越」しているといえるのであろう
か。また、厳格な審査とはどのような審査のことを指すのであろうか。 以上の問題を検討するためには、諸外国において表現の自由が憲法上どのように位置づけられているのかを知る
ことが不可欠である。特に、アメリカとドイツの判例や学説は、日本の学説に大きな影響を与えており、最近では
ヨーロッパ人権裁判所の判断も参考にされている。海外では、表現の自由がどのように理解され、また運用されて
いるのかを確認する。
要点
(1)表現の自由の歴史 (2)「表現の自由の優越的地位」と二重の基準論 (3)諸外国における表現の自由
関係条文
憲法21条・22条、民法709条 キーワード
民主政過程、自己実現、内容規制、内容中立規制、定義づけ衡量、 必ず予習すべき文献・判例
(1)北方ジャーナル事件(最大判昭和61年6月11日民集40巻4号872頁) (2)小売市場事件(最大判昭和47年11月22日刑集26巻9号586頁) (3)未決拘禁者新聞閲読制限事件(最大判昭和58年6月22日民集37巻5号793頁) (4)市川正人『表現の自由の法理』207~232頁(日本評論社、2003年) (5)佐藤幸治「立憲主義と『二重の基準論』」『現代立憲主義の展開(上)』3~35頁(有斐閣、1993年)
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1)井上達夫『法という企て』180~187頁(東京大学出版会、2003年) (2)松井茂記『二重の基準論』(有斐閣、1994年) (3)阪口正二郎『立憲主義と民主主義』(日本評論社、2001年)
科
目 情報法
担
当
者
森脇 敦史 第2回
全15回
マスメディア(1)
……報道・取材活動
事例(授業内容)
現代では、マスメディアの存在が表現の自由を実現する上で必要不可欠である。社会に流通する膨大な量の情報
を収集した上で取捨選択を行い、受け手としての国民に提供することは、組織化されたメディアなしには不可能で
ある。 プレスの自由を、一般的な言論の自由と区別して規定するドイツの基本法と異なり、日本国憲法上は、表現主体
による区別は設けられていない。日本国憲法は、マスメディアに対してどのような扱いを求めているのだろうか。
別異取扱いをすることが憲法違反なのか、しなければ憲法違反なのか。それとも別異取扱いが憲法上禁止はされな
いが、義務づけられない領域があるのだろうか。近年では、憲法上の権利を、切り札としての人権と公共の福祉の
ため認められる権利に区別した上で、マスメディアの特権及び義務を論じる主張があるが、このような主張は人権
総論の理解として、またその具体的帰結が妥当と考えられるだろうか。
要点
(1)情報収集活動、特に取材活動の憲法的位置づけ (2)取材活動と報道活動の関係 (3)マスメディアの活動に対して、取材活動の制約が与える影響
関係条文
国家公務員法100条、自衛隊法96条の2 キーワード
プレスの制度的理解、職務上の秘密、防衛秘密、特別防衛秘密、 必ず予習すべき文献・判例
(1)北海タイムス事件(最大決昭和33年2月17日刑集12巻2号253頁) (2)博多駅事件(最大決昭和44年11月26日刑集23巻11号1490頁) (3)レペタ事件(最大判平成元年3月8日民集43巻2号89頁) (4)外務省秘密電文漏洩事件(最1小決昭和53年5月31日刑集32巻3号457頁) (5)未決拘禁者取材制限事件(東京高判平成7年8月10日訴月42巻7号1783頁) (6)精神鑑定書秘密漏示事件(奈良地判平成21年4月15日判時2048号135頁)
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1)駒村敬吾『ジャーナリズムの法理』(嵯峨野書院、2001年) (2)鈴木秀美「マス・メディアの取材活動とその限界」渡辺武達・松井茂記責任編集『メディアの法理と社会的
責任』75頁(ミネルヴァ書房、2004年) (3)鈴木秀美「マス・メディアの自由と特権」小山剛・駒村圭吾編『論点探求憲法』158頁(弘文堂、2005年)
科
目 情報法
担
当
者
森脇 敦史 第3回
全15回 マスメディア(2)……取材源秘匿
事例(授業内容)
取材活動は、報道を行うためには必要不可欠な行為である。取材情報を目的外に使用しないこと、取材源を秘匿
することは、ジャーナリストの基本的倫理とされる。一方、取材によって得られた情報、取材源が裁判等において
証拠価値を有することがある。そのような場合に。ジャーナリストは一般国民に課されている証拠提出義務ないし
捜索・押収の受忍義務から免除されうるだろうか。また、取材源の証言を刑罰によって強制したとしても、証言義
務者が証言を行うとは限らない。そうだとすれば、取材源の証言を義務付けることは、真相の解明という観点から
有効であろうか。さらに、放送番組の録画テープを証拠提出する場合には、メディアに対しては直接的義務付けは
存在しない。そのような場合に、証拠としての利用を制限する必要はあるだろうか、またあるとしてその根拠は何
であろうか。
要点
(1)取材源秘匿の目的 (2)取材情報目的外使用の態様と害悪 (3)番組テープの目的外使用
関係条文
刑事訴訟法99-105条、143条、149条、民事訴訟法190条、197条 キーワード
取材源秘匿、証言義務、職業の秘密 必ず予習すべき文献・判例
(1)石井記者事件(最大判昭和27年8月6日刑集6巻8号974頁) (2)NHK記者証言拒絶事件(最3小決平成18年10月3日民集60巻8号2647頁) (3)博多駅事件(最大決昭和44年11月26日刑集23巻11号1490頁) (4)日本テレビ事件(最2小決平成元年1月30日刑集43巻1号19頁) (5)TBS「ギミア・ぶれいく」事件(最2小決平成2年7月9日刑集44巻5号421頁)
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1)浜田純一『情報法』(有斐閣、1993年)40-52頁 (2) (3)
科
目 情報法
担
当
者
森脇 敦史 第4回
全15回 名誉毀損(1)
事例(授業内容)
人の社会的評価としての名誉は、憲法13条の幸福追求権によって保障される人権として保護され、表現活動を
規制する根拠になりうると考えられている。しかし、名誉毀損は「地位も名誉もある人」の活動に対する批判を、
刑事罰や賠償義務をもって封じる手段としても用いられている。このような名誉権の濫用は、公職者の活動は常に
公衆の批判によって検証されるべきだという、民主主義の基盤を掘り崩す危険をもっている。両者のバランスをど
のように取るべきであろうか。また、事実の摘示による名誉毀損と、意見の表明による名誉毀損は、区別して扱わ
れているが、その境界を分けるものは何であろうか。
要点
(1)名誉権と表現の自由の調整方法 (2)民事名誉毀損と刑事名誉毀損の違い (3)萎縮的効果とその除去 (4)事実の摘示と意見の表明の区別
関係条文
民法709条・723条、刑法230条・230条の2 キーワード
真実性の抗弁、相当性理論、現実の悪意、対抗言論、公正な論評の法理、配信サービスの抗弁 必ず予習すべき文献・判例
(1)月刊ペン事件(最1小判昭和56年4月16日刑集35巻3号84頁) (2)夕刊和歌山時事事件(最大判昭和44年6月25日刑集23巻7号975頁) (3)長崎教師批判ビラ事件(最1小判平成元年12月21日民集43巻12号2252頁) (4)ロス疑惑報道夕刊フジ事件(最3小判平成9年9月9日民集51巻8号3804頁) (5)脱ゴーマニズム宣言事件(最1小判平成16年7月15日民集58巻5号1615頁)
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1)松井茂記「名誉毀損と表現の自由」山田卓生・藤岡康弘編『新・現代損害賠償法講座(2)』79頁(1998年) (2) (3)
科
目 情報法
担
当
者
森脇 敦史 第5回
全15回 名誉毀損(2)
事例(授業内容)
表現内容の真実性は、名誉毀損の成立を阻却する事由の一要件として認められているが、その立証対象は何であ
り、どのように立証すればよいのか。特に現代のマスメディアでは、他者の取材活動により得られた情報を用いる
ことがあるが、配信者はどのような責任を負い、免責を受けるにはどのような要件を満たせば良いのか。 名誉毀損の成立が認められたとして、どのような救済が認められるのだろうか。名誉毀損の程度や類型によって、
用いることが許される救済手法は異なるのだろうか。
要点
(1)真実性証明の立証対象・手法 (2)名誉毀損の救済方法 (3)配信サービスの抗弁
関係条文
民法709条、715条、少年法61条 キーワード
必ず予習すべき文献・判例
(1)北方ジャーナル事件(最大判昭和61年6月11日民集60巻4号872頁) (2)サンケイ新聞事件(最2小判昭和62年4月24日民集41巻3号490頁) (3)ロス疑惑北海道新聞事件(最3小判平成14年1月29日判時1778号24頁) (4)ロス疑惑共同通信社第1事件(最3小判平成14年1月29日民集56巻1号185頁) (5)ロス疑惑共同通信社第2事件(最2小判平成14年3月8日判時1785号38頁)
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
科
目 情報法
担
当
者
森脇 敦史 第6回
全15回 プライバシー侵害(1)
事例(授業内容)
プライバシー権は、名誉権と同様に憲法13条によって保障される人権として、表現活動を規制する根拠とされ
ている。しかし、何がプライバシーかということに関しては、名誉と比較すると明らかにプライバシーの方が多様
な理解が示されており、一致を見ていない。そもそも、プライバシー権とはどのような権利であろうか。また、プ
ライバシー権と表現の自由との調整は、どのように図られるべきであろうか。その際、どのような点が、名誉権と
表現の自由との調整とは異なるのであろうか。また、対抗言論による権利の回復が可能な名誉毀損とは異なり、プ
ライバシーには事後的救済手段が限られる。ここから、救済方法としての差止めを名誉毀損より緩やかな要件で認
めるべきことが提唱されているが、このような考えは妥当であろうか。
要点
(1)プライバシー権の歴史と理解 (2)プライバシー該当情報の判断基準 (3)肖像権、実名報道(特に少年事件)
関係条文
民法709条、715条、少年法61条 キーワード
「一人で放っておいてもらう権利」、自己情報コントロール権、前科、肖像権、実名報道 必ず予習すべき文献・判例
(1)「宴のあと」事件(東京地判昭和39年9月28日下民集15巻9号2317号) (2)「逆転」事件(最3小判平成6年2月8日民集48巻2号149頁) (3)「石に泳ぐ魚」事件最高裁判決(最3小判平成14年9月2日判時1802号60頁) (4)長良川リンチ殺人報道事件(最2小判平成15年3月14日民集57巻3号229頁) (5)和歌山カレー毒物混入事件法廷写真事件(最1小判平成17年11月10日民集59巻9号2428頁) (4)早稲田大学江沢民主席講演会名簿提出事件(最2小判平成15年9月12日民集57巻8号973頁)
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1)長谷部恭男「プライヴァシーについて」同著『憲法学のフロンティア』107~128頁(岩波書店、1999年) (2)田島泰彦ほか『表現の自由とプライバシー』(日本評論社、2006年) (3)
科
目 情報法
担
当
者
森脇 敦史 7回
全15回 プライバシー侵害(2)
事例(授業内容)
公権力は、個人に関する多種多様な情報を収集している。社会の情報化に伴い、公権力が個人に関する情報を収
集する必要性は増す一方、無制限の情報収集は個人の自由を侵害する。公権力は、いかなる場合に個人情報を収集
利用することが許されるのか、また本人はいかなる形で関与することができるのかを検討する。
要点
(1)公権力による情報収集の許容性 (2)個人情報利用の適切性
関係条文
個人情報保護3法、個人情報保護条例(都道府県、市町村) キーワード
必ず予習すべき文献・判例
(1)京都府学連事件(最大判昭和44年12月24日刑集23巻12号1625頁) (2)前科照会事件(最3小判昭和56年4月14日民集35巻3号620頁) (3)指紋押捺拒否事件(最3小判平成7年12月15日刑集49巻10号842頁) (4)X線無断検査事件(最3小決平成21年9月28日刑集 63巻7号868頁)
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1)宇賀克也『個人情報保護法の逐条解説 第3版』(有斐閣、2009年) (2)岡村久道『個人情報保護法 第2版』(商事法務、2008年) (3)
科
目 情報法
担
当
者
森脇 敦史 第8回
全15回 放送制度
事例(授業内容)
電波を用いた表現である放送メディアは、現代の社会生活において重要な役割を果たしている。特にテレビは、
(最近では地位が低下したとされるものの)日常生活に欠かすことができないものであり、その影響力は、日常生
活から政治にいたるまで、大きなものがある。 このように、放送メディアは現代の言論市場を考える上で欠かすことができないものであるが、一方で放送メデ
ィアには、放送免許制度や公正原則、集中排除規制など、活字を用いた印刷メディアにはない法規制が存在してい
る。このような規制がなぜ存在し、また認められるべきかを考える。また、名誉毀損やプライバシー侵害に関する、
放送メディア特有の問題についても取り扱う。
要点
(1)放送制度の概要 (2)印刷メディアと放送メディアの違い (3)放送メディア特有の規制根拠 (4)公正原則 (5)取材者と被取材者の関係
関係条文
放送法、放送局の開設の根本的基準(昭和25年電波管理委員会規則第21号)3条・9条 キーワード
電波稀少性理論、社会的影響力理論、印刷メディア・放送メディア、公正原則 必ず予習すべき文献・判例
(1)テレビ朝日ダイオキシン報道事件(最1小判平成15年10月16日民集57巻9号1075頁) (2)「生活ほっとモーニング」事件(最1小判平成16年11月25日民集58巻8号2326頁) (3)女性国際戦犯法廷報道事件(最1小判平成20年6月12日民集62巻6号1656頁) (4)政見放送事件(最3小判平成2年4月17日民集44巻3号547頁) (5)斉藤愛「放送の自由」安西文雄ほか『憲法学の現代的展開 第2判』397頁(有斐閣、2009年)
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1)長谷部恭男『テレビの憲法理論』(弘文堂、1992年) (2)鈴木秀美ほか編『放送法を読みとく』(商事法務、2009年) (3)舟田正之・長谷部恭男編『放送制度の現代的展開』(有斐閣、2001年)
科
目 情報法
担
当
者
森脇 敦史 第9回
全15回 情報公開(1)
事例(授業内容)
国政に関する情報を国民が入手できることは、民主主義が機能する大前提である。公権力の活動に際して作成さ
れる文書は、可能な限り国民に開かれるべきであるが、日本においては情報公開法の制定はかなり遅れ、地方自治
体による情報公開が先行する形となった。裁判所による判断も、現時点では情報公開条例の運用に対するものが大
多数であるが、条例解釈において示された考え方は、法律と条例の文言や対象文書の違いを考慮する必要はあるも
のの、情報公開法の解釈においても基本的には引き継がれるものと考えられる。情報公開法は、情報が不開示とさ
れる自由を列挙しているが、これらはどのように解釈されるべきであろうか。
要点
(1)情報公開制度の歴史 (2)知る権利の憲法上の位置づけ (3)開示手続、部分開示、存否応答拒否 (4)不開示情報……個人識別情報(食糧費、交際費)
関係条文
情報公開法(行政文書の保有する情報の公開に関する法律)、民訴法223条1項、232条1項 キーワード
知る権利、個人識別情報、公務員情報、部分開示、情報単位論 必ず予習すべき文献・判例
(1)大阪府知事交際費公開請求事件第1次上告審判決(最1小判平成6年1月27日民集48巻1号53頁) (2)大阪府知事交際費公開請求事件第2次上告審判決(最3小判平成13年3月27日民集55巻2号530頁) (3)大阪府水道部接待費等公開請求事件(最3小判平成6年2月8日民集48巻2号255頁) (4)大阪市食糧費訴訟最高裁判決(最3小判平成15年11月11日第57巻10号1387頁) (5)愛知県食糧費公開請求事件第2次上告審判決(最3小判平成19年4月17日判時1971号109頁)
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1)松井茂記『情報公開法 [第2版] 』(有斐閣、2003年) (2)宇賀克也『新・情報公開法の逐条解説 第4版』(有斐閣、2008年) (3)
科
目 情報法
担
当
者
森脇 敦史 第10回
全15回 情報公開(2)
事例(授業内容)
国政に関する情報を国民が入手できることは、民主主義が機能する大前提である。公権力の活動に際して作成さ
れる文書は、可能な限り国民に開かれるべきであるが、日本においては情報公開法の制定はかなり遅れ、地方自治
体による情報公開が先行する形となった。裁判所による判断も、現時点では情報公開条例の運用に対するものが大
多数であるが、条例解釈において示された考え方は、法律と条例の文言や対象文書の違いを考慮する必要はあるも
のの、情報公開法の解釈においても基本的には引き継がれるものと考えられる。情報公開法は、情報が不開示とさ
れる自由を列挙しているが、これらはどのように解釈されるべきであろうか。
要点
(1) 不開示情報……法人情報、審議検討情報、事務事業情報 (2) 審査手法……ヴォーンインデックス、インカメラ審査 (3) 公文書管理
関係条文
情報公開法(行政文書の保有する情報の公開に関する法律)、各地の情報公開条例 キーワード
意思形成過程情報、行政執行情報、部分開示 必ず予習すべき文献・判例
(1)鴨川ダムサイト訴訟(最2小判平成6年3月25日判時1512号22頁) (2)大阪府知事交際費公開請求事件第2次上告審判決(最3小判平成13年3月27日民集55巻2号530頁) (3)イレッサ承認申請書公開請求事件(東京地判平成19年1月26日裁判所ホームページ) (4)省エネ法報告訴訟大阪地裁判決(大阪地判平成19年1月30日裁判所ホームページ) (5)省エネ法報告訴訟大阪高裁判決(大阪高判平成19年10月19日裁判所ホームページ) (6)検証物提示命令許可抗告訴訟(最決平成21年1月15日民集63巻1号46頁)
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1)松井茂記『情報公開法 [第2版] 』(有斐閣、2003年) (2)宇賀克也『新・情報公開法の逐条解説 第4版』(有斐閣、2008年)
科
目 情報法
担
当
者
森脇 敦史 第11回
全15回 個人情報保護
事例(授業内容)
現代では、さまざまな手段で人の活動を監視することが可能となっている。かつては銀行や重要施設に限定され
ていた監視カメラは、街のあらゆるところに存在している。幹線道路にはスピード違反を取り締まるカメラや、N
システムと呼ばれるナンバー識別装置が設置され、高速道路の料金支払いに用いられるETCも、車両の位置情報
を入手する手段として利用可能である。このような監視手段は、具体的な嫌疑がない時点でも利用されているが、
このような撮影は許されるのだろうか。
要点
(1)監視社会の実態 (2)監視カメラによる情報収集 (3)収集画像の証拠能力
関係条文
個人情報保護法、警察法2条1項 キーワード
監視社会、住基ネット、Nシステム、肖像権、プライバシー、強制処分、任意処分 必ず予習すべき文献・判例
(1)西成労働会館監視カメラ事件(大阪地判平成6年4月27日判時1515号116頁) (2)自動速度監視装置事件(最2小判昭和61年2月14日刑集40巻1号48頁) (3)Nシステム訴訟地裁判決(東京地判平成15年2月6日判時1748号144頁) (4)Nシステム訴訟高裁判決(東京高判平成21年1月29日判タ1295号193頁) (5)防犯ビデオ撮影事件(最2小決平成20年4月15日民集62巻5号1398頁)
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1)デイヴィッド・ライアン(川村一郎訳)『監視社会』(青土社、2002年) (2)井上正仁『捜査手段としての通信・会話の傍受』(有斐閣、1997年) (3)
科
目 情報法
担
当
者
森脇 敦史 第12回
全15回 インターネットと名誉毀損・プライバシー
事例(授業内容)
インターネットは、わずか10年強の間に、欠かすことのできないインフラとして、電気や電話、水道に近い地
位を確立した。インターネットを基盤とする技術により、従来の情報サービスを置き換えるだけでなく、全く新し
い情報流通サービスが、日々生み出されている。 しかし、既存の法律群は、必ずしもインターネットの存在を前提として作られておらず、法の規律が不十分な領
域が幅広く存在する。そのような領域において、どのような態度で既存の法を解釈して事案に当たるべきか。また、
制度設計にどの程度政府が関わり、どのような設計を行うべきなのか。今回は、名誉毀損、プライバシー侵害に関
する従来の法理が、インターネット空間においてどのような変容を迫られるのかを検討する。
要点
(1)インターネットの特質 (2)対抗言論の可能性 (3)調査の程度と真実誤信の相当性
関係条文
民法709条、刑法230条、230条の2 キーワード
対抗言論、相当性理論 必ず予習すべき文献・判例
(1)ニフティ現代思想フォーラム事件(東京高判平成13年9月5日判時1786号80頁) (2)ニフティ本と雑誌のフォーラム事件(東京地判平成13年8月27日判時1778号90頁) (3)2ちゃんねる動物病院事件高裁判決(東京高判平成14年12月25日判時1816号52頁) (4)ラーメンフランチャイズ事件地裁判決(東京地判平成20年2月29日判タ1277号46頁) (5)ラーメンフランチャイズ事件最高裁判決(最1小判平成22年3月15日刑集64巻2号1頁)
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1) (2) (3)
科
目 情報法
担
当
者
森脇 敦史 第13回
全15回 インターネットと違法・有害表現
事例(授業内容)
インターネットの出現は、従来であれば印刷所や書店の段階で差し止められていた「わいせつ」な表現物を、発
信者から受領者に直接届けることを可能とした。「わいせつ」規制に対しては、もともと実効性の乏しさが指摘さ
れていたが、インターネットはその傾向に追い討ちをかけることとなった。しかし、わいせつ表現に対する規制は
なくなったわけではなく、逆に社会的要請としてはより強くなっているとも言える。 また、性的表現に対しては、私的団体による自主規制も行われている。特にインターネットにおいては、利用者
がフィルタリングソフトを用いることで、一定の情報に対するアクセスを遮断することができる。これらの自主規
制は、柔軟な解決を可能とする一方で、本来規制対象とならない表現物をも規制してしまう危険も有している。フ
ィルタリングという方法を、いかに評価すべきだろうか。
要点
(1)わいせつの概念 (2)言論の価値序列と審査基準 (3)わいせつに関するインターネット特有の問題 (4)保護手段としてのフィルタリングとその問題点
関係条文
刑法1条・175条、児童ポルノ法 キーワード
わいせつ物、青少年保護、フィルタリング、 必ず予習すべき文献・判例
(1)チャタレー夫人の恋人事件(最大判昭和32年3月13日刑集11巻3号997頁) (2)あまちゅあふぉとぎゃらりー事件(大阪地判平成11年3月19日判タ1034号283頁) (3)FLMASK事件(大阪地判平成12年3月30日判例集未掲載) (4)京都アルファネット事件(最3小決平成13年7月16日刑集55巻5号317頁) (5)「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(総務省ホームページ)
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1)長谷部恭男「インターネットによるわいせつ画像の発信」法時69巻1号123頁(1997年) (2)大沢秀介「科学技術の発展と人権-インターネットと表現の自由」法教194号81頁(1996年) (3)紙谷雅子「チャイルド・ポルノグラフィと表現の自由」法時70巻11号37頁(1998年)
科
目 情報法
担
当
者
森脇 敦史 第14回
全15回 プロバイダーの責任と役割
事例(授業内容)
インターネット上では、多くの表現活動が匿名で行われている。そのため、表現によって被害を受けた者が直接
に相手方を訴えることは難しい。加害者にインターネットへの接続環境を提供している接続プロバイダや、掲示板
等を運用しているコンテンツプロバイダは、加害者とされる者に関する情報を多く保有しており、特に有料の接続
プロバイダであれば、課金が必要なため、個人を特定可能な、情報を保有していることが一般的である。また、プ
ロバイダは、加害情報の削除や利用停止等の措置を執ることにより、被害の拡大を食い止められる立場にもいる。
このような事情から、被害者はプロバイダに対して情報の提供を求め、また加害情報を放置したことに対するプロ
バイダ自身の責任を追及することも多い。一方、プロバイダが加害者とされる者と契約関係にある場合は、利用停
止や削除等の措置を執ることが、サービスを提供するという債務の不履行にあたるとされたり、違法な検閲あるい
は情報提供が不法行為にあたるとされる危険もある。このような状況で、プロバイダはどのような責任を負うべき
だろうか。
要点
(1)プロバイダが直面する利害対立の理解 (2)プロバイダ責任制限法の内容 (3)発信者情報開示制度 (4)プロバイダのボトルネック性
関係条文
プロバイダ責任制限法、電気通信事業法、民法415条・709条 キーワード
コモンキャリア、発信者情報開示、”notice and take down” 必ず予習すべき文献・判例
(1)ニフティ現代思想フォーラム事件地裁判決(東京地判平成9年5月26日判時1610号22頁) (2)ニフティ現代思想フォーラム事件高裁判決(東京高判平成13年9月5日判時1786号80頁) (3)東京都立大学事件(東京地判平成11年9月24日判時1707号139頁) (4)2ちゃんねる動物病院事件高裁判決(東京高判平成14年12月25日判時1816号52頁) (5)ヤフー眼科医開示請求事件(東京地判平成15年3月31日判時1817号84頁) (6)WinMX開示請求事件(東京高判平成16年5月26日判タ1152号131頁)
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1)松本恒雄「違法情報についてのプロバイダーの民事責任」ジュリスト1215号107頁(2002年) (2) (3)
科
目 情報法
担
当
者
森脇 敦史 第15回
全15回 全体のまとめ
事例(授業内容)
本講義のまとめとして、情報法をめぐって社会変化の最前線で何が起きているかを見ながら、法がどのような役
割を果たしているかを討議する。併せて、これまでの授業で生じた疑問点の確認・解消を行う。
要点
関係条文
キーワード
必ず予習すべき文献・判例
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1) (2) (3)