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DPC下における病院経営改革
聖隷浜松病院 事務長 日下部 行宏
第23回 北海道核医学技術セミナー
2009/9/26(土) 札幌アスペンホテル 2階 アスペンA
目次1. 当院の紹介2. DPC基礎知識3. 至適在院日数について4. コスト削減に向けての
経営マネジメント
5. DPCの戦略的活用6. 核医学関連のDPC7. 次期DPC改定予測
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Ⅰ. 当院の紹介
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聖隷福祉事業団 医療事業の展開
99床
874床
152床
744床
256床
250床
306床
計2681床
聖隷富士病院
聖隷三方原病院
聖隷淡路病院
聖隷佐倉市民病院
聖隷横浜病院
聖隷沼津病院聖隷浜松病院
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聖隷浜松病院 概要
開設者 社会福祉法人 聖隷福祉事業団
病院名 総合病院 聖隷浜松病院
所在地 静岡県浜松市
病床数 744床常勤職員数 1,671名 (2009年4月1日現在)
内訳: 医師 235名
看護師 793名 (一般病棟7対1入院基本料)
医療技術 288名
事務・その他 355名
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聖隷浜松病院 実績
※2008年度実績
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主な認定施設
■ 地域医療支援病院
■ 地域がん診療連携拠点病院
■ 開放型病院
■ 総合周産期母子医療センター
■ エイズ拠点病院
■ 臓器移植モデル指定病院
■ 臨床研修医研修指定病院
■ 二次救急指定病院
■ 治験拠点医療機関
■ 地域肝疾患診療連携拠点病院 など
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その他
日本医療機能評価機構 認定病院
「医療の質奨励賞」 受賞病院
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Ⅱ. DPC基礎知識
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先ずはDPCのおさらい -DPCとは?-
DPC( Diagnosis Procedure Combinationとは?
従来までの出来高計算方式とは異なり、診断群分類ごとに設定された包括点数により、診療費を計算する方法。包括点数には薬・検査・レントゲンなど多くの診療内容が包括される。
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DPCのおさらい② -診断群分類とは?-
国際疾病分類(ICD10)で1万以上ある病名を、マンパワー、医薬品、医療材料などの医療資源の必要度から、統計学的に意味のある500から1500程度の疾患グループに整理し、分類する方法。
診断群分類とは?
※国際疾病分類(ICD10)
世界保健機関(WHO)が作成した分類で、様々な国や地域から、異なる時点で集計された死亡や疾病データの体系的な記録、分析、解釈及び比較を行うことを目的にしている。
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DPCのおさらい③ -DPC算定イメージ-
入院期間Ⅰ日
在院日数の25パーセンタイル値
入院期間Ⅱ日
平均在院日数
特定入院期間
標準偏差の2倍を超えた日
15%加算
(1日あたりの点数) 包括評価 出来高算定
②の85%に減
(在院日数)
A
B
A=B①
②
③
1日あたりの平均点数
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DPCのおさらい④ -DPC計算方法-
DPCの計算方法
DPCだからといって診療すべてが包括される訳ではなく、医療者の技術を評価されるものは医科点数表に基づき出来高での評価となる。
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DPCのおさらい⑤ -医療機関別係数とは?-
医療機関別係数とは?
医療機関別係数 = 機能評価係数 + 調整係数機能評価係数 ⇒ 医療機関ごとの機能にもとづいて算定する係数。調整係数 ⇒ 医療費が前年実績と一致するように割り戻すた
めの係数。
※この「調整係数」はDPC導入時におこる激変を緩和する過渡的な調整値であり、2010年より段階的に廃止される。
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DPCの本来の目的
・ 疾患の特性に応じた包括評価は、ICD-10という世界共通のものさしを使用することにより、各病院間の比較や評価に使用することができる
・ 医療の標準化と効率化の推進を図る
DPCは単なる支払のための仕組みではない
DPCの目的は病院マネジメントの改革
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病院経営に求められること
現在の病院経営は、長引く医療財源の枯渇や、高齢化による医療費の高騰とそれに対する政府の医療費削減政策の影響で厳しい現実に直面している。
急性期病院においてはDPC包括評価制度が導入されて以来、経営面で大きな変革期を迎えている。出来高診療の時代とは異なりDPC包括評価制度では、コスト削減の努力なくしては医療行為の継続すら危うくなる。
しかしながら経済性を追求するあまりに粗診粗療をしていては病院の評判を落とすだけでなく、医療事故や訴訟にもなりかねない。
これからの病院経営にはコスト削減と医療の質の確保。この相反する二つの目標を同時達成することが求められる。
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Ⅲ. 至適在院日数について
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在院日数と収支の関係
先ずは在院日数と収支の関係を
医療現場に理解させることが必要
在院日数の単なる短縮は収支を悪化させる
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DPC = 実収入
出来高 = コスト(費用)
DPCを活用した経営マネジメント
DPC/出来高比較
計算式: DPC点数 - 出来高換算点数
本来ならば患者別成果計算 ⇒ 非常に困難
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(DPC-出来高)積算点数と入院日数との相関
退院時(DPC-出来高) プラス事例:+981点
090010xx9700xx 乳房の悪性腫瘍 手術あり 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 なし
出来高点数 DPC-出来高点数
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(DPC-出来高)積算点数と入院日数との相関
退院時(DPC-出来高) ナイナス事例:-99点
090010xx9700xx 乳房の悪性腫瘍 手術あり 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 なし
出来高点数 DPC-出来高点数
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DPC病院において画像診断が経営に及ぼす影響
入院中のCT・MRI・RI・PETは高額な診療報酬が包括点数に含まれる。出来高比較でマイナスに陥る可能性が高い。
入院中にRIを2回、CTとMRIをそれぞれ1回実施。退院時のDPC-出来高比較で24,000点のマイナス。
070560xx99x0xx 全身性臓器障害を伴う自己免疫性疾患 手術なし 手術処置等2なしCase①出来高点数 DPC-出来高点数
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診断群分類名:120010xx99x30x(卵巣・子宮附属器の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等23あり 副傷病なし)
化学療法と入院日数
プロトコール別散布図
タキソテール+カルボプラチンを2日で帰すとマイナス
ベンチマーク (対象:2008年7月-12月退院患者)
ベンチマーク分析(医療機関間比較)040040xx01x0xx 肺の悪性腫瘍 肺悪性腫瘍手術等 手術・処置等2 なし
ベンチマークの結果、当該分類においては当院の平均在院日数が医療機関間で最も短くDPC-出来高がマイナスとなっている。入院日数をもう少し延長できないかを検証
ベンチマーク (対象:2008年7月-12月退院患者)
ベンチマーク分析(医療機関間比較)040080xx97x1xx 肺炎、急性気管支炎、急性細気管支炎 手術あり 手術・処置等2 あり
DPC-出来高は良好でも在院日数が長いようであれば治療期間が長いことを意味する。こういうものは短縮させる必要あり
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DPC対策委員会でのディスカッション
検査入院など1泊2日入院の見直し
1泊2日入院
・(患者)午前入院→説明→午後検査と忙しい。・(看護)当日入院の当日検査では、説明する時間がギリギリとなり大変。
・(収支)投入する費用を回収できない。
2泊3日入院
・(患者)余裕をもったサービスが受けられる。
・(看護)病床稼働率が上がっても余裕を持って説明可能・(収支)収入アップ
在院日数の調整は医療者や患者のニーズに添わなければ意味がない。経営面のみを前面に押し出しては反発される。
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ベンチマークのポイント
ベンチマークは地域において同じような役割を担い且つ
自院と同規模の病院間での比較することがポイント
⇒設立目的や地域における役割の違う医療機関との比較
は意味がない
当院は同規模民間病院間でベンチマーク
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在院日数の調整
在院日数の調整を図った場合は病床稼働率の変化を追うことが必要
■陥りやすい事例 在院日数短縮の結果 ⇒ 空床が発生し収入減少 在院日数延ばした結果 ⇒ 満床となり救急患者の受け入れが困難となり
地域医療に課題を残す
これでは本末転倒! 病床稼働率とのバランス見ながら徐々に調整することが必要
DPC対応型クリニカルパスの作成が効果的
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DPC対応クリニカルパスの整備
DPC対策委員会とのクリニカルパス委員会の連携により作成
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Ⅳ. コスト削減に向けての経営マネジメント
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コスト削減に対する経営マネジメント
安全性や医療の質を担保するものを削減してはならない。
「無駄な医療はないか?」「効率化が図れないか?」との観点から削減を図ることが必要
入院時(手術前)検査・画像は外来移行薬は後発医薬品へのシフトが基本
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040040xx01x0xx 肺の悪性腫瘍 肺悪性腫瘍手術等 手術・処置等2 なし
構成比率ベンチマーク分析(医療機関間比較)
ベンチマーク (対象:2008年7月-12月退院患者)
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case study ① 急性腎盂腎炎
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case study ② 急性腎盂腎炎
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医師別事例比較
病名 : 急性腎盂腎炎診断群分類: 腎臓の感染症 手術なし
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診療の改善事例
注射出来高点数(点) DPC-出来高点数(点)
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診療科別DPCの状況
※ 区間指数: 平均在院日数がA区間ちょうどであれば1.0、B区間ちょうどであれば2.0、特定入院期間を超えた場合を3.0とし、それぞれの区間の中での相対位置を数字で表したもの
在院日数適正化延長の検討
診療内容の見直し過剰診療の防止
診療内容の見直し医療の質の担保
在院日数適正化短縮の検討
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乳腺科 DPCの状況
※ 区間指数: 平均在院日数がA区間ちょうどであれば1.0、B区間ちょうどであれば2.0、特定入院期間を超えた場合を3.0とし、それぞれの区間の中での相対位置を数字で表したもの
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結論
いかなる医療機関の状況にも効果のある唯一万能の至適在院日数はなく適切な在院日数は医療機関個々の状況によって異なる
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Ⅴ. DPCの戦略的活用
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医療の質のチェックと経営改善の素早い執行体制を作ることを目的とした当院の組織体制
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DPC対策委員会
課題解決のため病院マネジメントを推進する組織横断チーム
■ 委員長 : 担当副院長(医療の質及び診療報酬請求担当副委員長)
■ 副委員長 : 診療部長
■ 事務局 : 入院医事課
■ 診療部長 : 内科、整形外科、外科、臨床検査科、放射線科
■ 看護 : 総看護部長、看護次長
■ 医療技術 : 薬剤部長、臨床検査センター技師長、放射線部技師長、他
■ 事務 : 事務長、事務次長、診療録管理室長、入院医事課長、
医療情報室長、総務課長、経理課長、資材課長 他
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MDC別構成比率
DPC対策委員会
2007年度
2008年度
各種指標
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DPC対策委員会 ベンチマーク
同規模民間病院間ベンチマーク (対象:2004年7月~10月退院患者)
CT/MRI 材料比率比較
聖隷浜松 聖隷浜松
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ジェネリック医薬品導入 メリット/デメリット
ジェネリック医薬品を上手に使うには?
外来 先発品 出来高 差益
入院 後発品 DPCコスト削減
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DPC対策委員会 各種指標
地域シェア(占有率)分析
出処:対象期間:2008年度 当院退院患者2次医療圏疾病数:DPC活用ハンドブック 伏見著 参考
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年間退院数/二次医療圏シェア
DPC対策委員会 各種指標
MDC別SWOT(環境特性)分析
段階的施策
積極的攻勢差別化戦略
専守防衛
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DPC対策委員会 各種指標
疾病別SWOT(環境特性)分析
1日平均単価/二次医療圏シェア
地域シェア拡大へ
向けての検討
地域医療を活用する流れを検
討
積極的攻勢差別化戦略
専守防衛
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DPC対策委員会 各種指標
医療圏分析
半径20km以上40km以内22%
半径20km以内76%
出処:分布図:地理情報分析支援システム「mandara」 参考対象期間:2006年度 心外退院患者(MDC14のみ)
MDC14 医療圏 分布図
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Ⅵ. 核医学関連のDPC
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核医学が評価されるDPC
DPC分類に核医学が設定されるもの
など1入院差異がマイナスにはなっていない
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核医学の有無によるDPCの違い
診断群分類名:050130xxxx02xx(心不全 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし) 診断群分類名:050130xxxx02xx(心不全 手術・処置等1なし 手術・処置等22あり)
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(DPC-出来高)積算点数と入院日数との相関
出来高点数 DPC-出来高点数
診断群分類名:050130xxxx02xx(心不全 手術・処置等1なし 手術・処置等22あり)
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Ⅶ. 次期DPC改定予測
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DPC点数の設定方法の見直し
平成21年度第8回診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会 資料
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DPC点数の設定方法の見直し②
平成21年度第8回診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会 資料
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調整係数段階的廃止後の新たな機能評価係数候補
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①部位不明・詳細不明コードの発生頻度による評価
部位不明・詳細不明コード = .9(ドット ナイン)コード
DPC病院として正確なデータを提出していることの評価
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DPC対象病院は7月~12月の間、様式1・様式3・様式4・Dファイル・Eファイ
ル・Fファイルの厚生労働省保険局医療課への提出が義務付けられている。
様式1の項目
DPC病院として正確なデータを提出していることの評価②
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①効率性指数による評価
参考:DPCデータ活用ブック 第2版 参考 伏見清秀 編著
:診断群分類を活用した医療サービスのコスト推計に関する研究報告 松田晋哉
効率性指数とは?
見かけ上の平均在院日数が評価されるのではなく、入院患者の患者像(ケースミックス)の要素を加味して算出した在院日数を指標としたもの
厚生労働省の公表している在院日数の指標 = 医療機関個々の効率性を示す指標(効率性指数)
(※数字が大きいほど効率的)
効率化に対する評価
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厚生労働省が公表している在院日数の指標
出典:診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会 「 H19年度DPC導入影響調査報告」資料
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①複雑性指数による評価
参考:DPCデータ活用ブック 第2版 参考 伏見清秀 編著
:診断群分類を活用した医療サービスのコスト推計に関する研究報告 松田晋哉
複雑性指数とは?
入院患者の「複雑度」あるいは、「重症度」の要素を加味して算出した患者構成を指標としたもの
厚生労働省の公表している患者構成の指標 = 医療機関個々の複雑性を示す指標(複雑性指数)
(※数字が大きいほど複雑性が高い)
複雑性指数による評価
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厚生労働省が公表している患者構成の指標
出典:診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会 「 H19年度DPC導入影響調査報告」資料
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新機能評価係数については
係数は前年度の実績を基に設定される
したがって、今から対応しなければ、来年度からの新機能係数の恩恵はない
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まとめ
DPCは医療費支払い方法の仕組みではなく病院マネジメントツールである
在院日数の単なる短縮は病院経営を悪化させる。コスト削減も同時に取り組む必要がある
DPCから得られるデータを上手に活用すれば病院の経営と医療の質を同時に向上させることができる
特に他施設との比較(ベンチマーク)はマネジメントを推進する上で効果的
薬剤に関してはジェネリック薬品に変更するとかなり効果的 安全性の問題等は十分考慮
これからの病院経営には戦略的なマーケティングの視点での分析が重要となる
常に政策の方向性を注視し対策を講じる必要がある
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■引用文献論文等
・DPC点数早見表(医学通信社)
・診断群分類を活用した医療サービスのコスト推計に
関する研究報告(主任研究者 松田晋哉)
・DPCデータ活用ブック(じほう 伏見清秀著)
・変革期における病院経営の研究(武臣ゆみ)
・DPC制度導入は在院日数短縮のインセンティブとなるか?(康永秀生)
・DPCデータ分析入門(じほう 藤森研司著)
■参考システム
・ベンチマークシステム
プロジェクト2010 新棟完成後イラスト