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インターネットを利用するマーケティング手法と、 それを支える情報技術は常に時代の最先端を走っている。 2013年のキーワード「O2O (Online to Offline) マーケティング」についても、 位置情報やビッグデータ分析などの技術により、さらなる高度化が期待されている。 O2Oマーケティングと 位置情報技術 スマートフォンの爆発的な普及が拓くマーケティングの最前線 2

CONTENTS O2Oマーケティングと 位置情報技術 · インターネットを利用するマーケティング手法と、 それを支える情報技術は常に時代の最先端を走っている。

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Page 1: CONTENTS O2Oマーケティングと 位置情報技術 · インターネットを利用するマーケティング手法と、 それを支える情報技術は常に時代の最先端を走っている。

インターネットを利用するマーケティング手法と、それを支える情報技術は常に時代の最先端を走っている。

2013年のキーワード「O2O(Online to Offl ine)マーケティング」についても、位置情報やビッグデータ分析などの技術により、さらなる高度化が期待されている。

O2Oマーケティングと位置情報技術

スマートフォンの爆発的な普及が拓くマーケティングの最前線

『てら』には2つの意味があります。1つは、数量単位で「兆=10の12乗」。これはギガビットの次の大容量伝送処理能力のこと。もう1つは、「地球・大地」(ラテン語)の意味で、環境にやさしい企業活動を続けたいということです。

 毎年、この時期は桜の開花予想が多くの人々の関心を集め、桜前線が北上する様子が日々テレビや新聞で伝えられる。 一般的には春の暖かさが早く訪れると桜の開花も早まるが、開花時期を決める要因はそれだけではない。実は、桜が春に花を咲かせる準備は半年以上前の夏から始まっているの

だ。夏の間に花か が

芽というつぼみの元が形成され、その後、花芽は休眠状態に入る。それが冬の寒さにさらされることで休眠打破が起こり、目覚めた花芽は気温の上昇とともに成長してつぼみとなる。しかし、冬の寒さが十分でないと休眠打破が遅れ、開花の時期

にも遅れが出る。 近年、地球温暖化の影響で、全

国的に桜の開花時期は早まる傾向にあるが、この先さらに温暖化が進んで冬場の気温が高い状態になったとしたら、休眠打破はどうなるのか。コンピュータシミュレーションに基づいて約90年後までの予測を行った研究結果が、九州大学から公表されている。それによると、2082年から2100年頃には、南九州や静岡県から千葉県にかけての太平洋沿いなどの暖かい地方では、現在より開花が遅くなる地域や、開花はしても満開にならずに散ってしまう地域、開花すらしない地域も出て来るという。 さて、今年の桜はどうだろう。東京都心では3月31日まで開花しなかった昨年とは違い、今年は3月25日頃には開花が予想されている(日本気象協会・桜の開花予想〈第2回〉2013年2月27日発表)。半年間もの準備期間を経て春の到来を告げてくれる桜に敬意を表し、見頃を逃さぬよう花見プランを立てたい。

桜の開花と気候の秘密

CONTENTS

TERAの視点桜の開花と気候の秘密

01

特集

O2Oマーケティングと位置情報技術

02

社長対談[3]

光サービスの強みを生かした新たな利用シーンを実現し地域や社会に貢献するビジネスを展開西日本電信電話株式会社 代表取締役社長村尾 和俊 氏NTTコムウェア 代表取締役社長海野 忍

07

@COMWARENTTコムウェアから日本人で2人目のワールドワイド認定エンジニア「Oracle ACE」(MySQL分野)が誕生しました

11

COMWARE'S EYEお客さま応対業務をフローでナビゲートする『ぷ

ぷ る ぷ る

る2ナビ』~お客さまの声を取り入れた新機能追加で、さらに進化!~

12

研究開発部技術レポートSDN/OpenFlowを活用したより便利に・つながるネットワークの実現に向けて~ 災害や故障に強い、いつでも安心して使える 新世代ネットワーク実現を目指した研究開発の取り組み~

15

ニッポン・ロングセラー考トモエそろばん

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O2Oサービスの現在と未来O2Oとは何か?

  位置情報から関心事への“気づき”を呼ぶマーケティングマーケティング技術やセンサ技術とともに、大量に集まった情報(=ビッグデータ)の分析技術が向上して、これまではリアルタイムでの予測が困難であった消費者動向を、適切なタイミングでつかめるようになってきた。今後のO2Oマーケティングの進化につながるさまざまな実験と検証が、すでに行われている。

「O2O」とはオンライン・ツー・オフライン(Online to Offl ine)の略称である。インターネット上(Online)で提供する情報や施策によって、実店舗(Offl ine)における商品やサービスの購入につなげようというマーケティング手法だ。

位置情報をどう使うか?

ことが起こりうる。役に立たない情報を「ノイズ」と感じて、位置情報による情報提供アプリケーションをオフにする人も出てくるだろう。しかし高精度の測位が実現すれば、実店舗が消費者の目に入る範囲で、ピンポイントに情報をプッ

シュできるようになる。この時情報はノイズではなく、価値を持つものになる。さらに、消費者が店舗内のどの陳列棚の前にいるかで送る情報を変えれば、より的確に購買行動へ結びつけられるだろう。

 こうした情報提供の仕組みは、商業的な活用だけでなく、人々の行動が引き起こす社会的な課題、例えば交通量の測定、事故や障害の検知、災害発生時などの地域ごとの状況把握にも役立つようになると期待されている。

O2Oマーケティングの動向

 メール等でクーポンを提供して来店を促すといった比較的早くからあるサービスを含め、現在ではさまざまなO2Oマーケティングの手法が実現されている(図1)。中でも本稿では、位置情報技術を利用したO2Oマーケティングに注目してみたい。 O2Oマーケティングが今注目されている背景には、スマートフォンやタブレット端末などのモバイルデバイスの急速な普及がある。最近のモバイルデバイスにはGPS機能が搭載されており、消費者の位置情報が容易に取得できるようになった。測位技術の1つであるGPS自体は古くからあるものだが、GPS受信機を実装したモバイルデバイスを多くの人が持つようになったのだ。 NTTドコモでは本年2月から、「ショッぷらっと」というO2Oサービスのトライアル提供を開始した。スマートフォンの位置情報を基に近隣のサービス参加店舗を探すことができ、実際に店舗に入店するとポイントやクーポンがもらえる。こうしたサービスのほか、自分のいるスポットの情報をソーシャルメディアで共有するサービスなど、位置情報を利用

するサービスが提供されている(図2)。 さらに、従来はパソコンで利用していた各種コンテンツやサービスが、モバイルデバイスで利用可能になった。そのため、コンテンツやサービスの提供者は、消費者の利用履歴について、パソコンからの情報だけでなく、外出先等でのモバイルデバイスからの情報も含めて、より広範囲に把握できるようになった。 このようにモバイルデバイス経由で利用履歴を多く集積・分析し、位置情報と組み合わせることで、消費者ごとに「その時、その場所で必要としている情報」をタイムリーにリコメンドすることが可能となる。そこから実店舗に誘導して商品やサービスの利用に結びつけることを、O2Oマーケティングは目指している。 こうした位置情報の積極利用は、今後もさらに質の向上が図られ、発展していくと見込まれる。消費者からも、これまでとは違った経験の提供を期待されている分野である。

位置情報技術の動向と将来展望

 O2Oマーケティングの質的な向上に大きな役割を果たしているのがGPS

だ。現在位置を地図で見るといった測位情報を利用したサービスが実現する一方で、事業者側ではモバイルデバイスの位置情報を受け取り、サーバに蓄積し統計処理を加えて、より正確な情報を提供できるようになった。モバイルデバイスから収集した数十万人・数年分の位置情報データを、曜日や時間帯などの切り口で分析して提供する販売促進支援サービスも登場してきている。 GPSは、建物内・地下で利用できない点や、屋外でも高層ビル群に囲まれた場所では測位に誤差が出る点などが弱点とされてきた。ところが最近では、屋内や地下の公共施設でも無線LANでのインターネット接続サービスが提供されるようになり、このアクセスポイントの情報を使った測位技術が確立されてきている。さらには現在整備が進められている国産の準天頂衛星システムがフル稼働を始めると、屋外での誤差は10m~1m以内という高精度な測位が可能になるとされる。 測位が高精度になると、位置情報を使って、より効果的なマーケティングが実現する。例えば測位の誤差が数十メートルあると、せっかく情報を受け取っても実店舗が見えず役に立たないという

特集 O2Oマーケティングと位置情報技術図2 位置情報を利用したO2Oサービスの例

図1 O2Oマーケティングの分類

ホットペッパーグルメ

ルートマップ/渋滞情報/スポット検索

乗り換え情報/渋滞情報/スポット検索

旅行クチコミサイト

shopkick

2クーポンの利用やポイントの取得といったお得情報で来店を誘導する

3商品やサービスに関するクチコミ評価で関心

を引く心心心心心心心心心

4ゲームやイベントなどのエンターテインメント性をトリガーにアクションを促す

位置情報と時間軸を利用する「エリアダス」とは

 O2Oマーケティングの要素技術やアプリケーションの研究・開発の例として、NTTグループが阪急阪神グループ各社、博報堂とともに取り組んでいる実証実験「SMART STACIA(スマートスタシア)」がある。大阪市の梅田や兵庫県の西宮市の商業施設で行われているこの実験は、消費者の関心にマッチした情報を提供することにより、消費を拡大させようとするマーケティング・ソリューションの試みである。 もう1つの例はNTTサービスエボ

リューション研究所が取り組む地域情報の検索サービス「エリアダス」で、位置情報と時間軸を使って、消費者の関心と情報をマッチングさせるサービスである。 ここではこの「エリアダス」に着目して、そのアーキテクチャと将来への課題を紹介する。 「エリアダス」は、Android搭載のモバイルデバイスに、無償提供のアプリケーション(以下、アプリ)をインストールすれば利用できる。アプリを起動したら、自分のいる地域を「エリアダス」上で自動で認識させるか、もしくは旅行先など関心のある地域を地図上で選択

する。すると、その地域の中の「どこで」「何が」多く話題になっているかという情報を当該地図上にキーワードで表示して、リコメンドしてくれる(次頁図3)。 表示する情報は、位置だけではなく「2013年3月」というように、時期(時間軸)でも絞り込める。地図上に提示されたキーワードをタップすると、関係するブログを閲覧でき、イベントや店舗についての生の情報を知ることができる。 このようにアプリケーション上で消費者にリコメンドするために、システムのサーバ側でインターネット上のブログを定期的にクロール(収集)し、内容を解析した上でデータベース化している。

1実店舗での価格情報や在庫情報を提供することで集客を図る

3 4

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りから、「多くの人(ブログを書いている人)が話題にしているものは何か」を基にして、消費者が関心を持つと思われる情報を提示するという方法でアプローチする。検索アクション自体は曖昧でいいが、こと位置情報についてはデバイスが人間より正確に把握していて、具体的になる。 何を探したいのか、明確な意図を持たない消費者に対してキーワードを提供することで、潜在的な関心への“気づき”を与え、次のアクションへと促す。1回のタップでイベントや店舗の情報を取得し、さらに実際にその場を訪れる行動へとつながるO2O的なプロセスが期待できるのだ。 「エリアダス」の今後の進化について廣嶋氏は、「今後の改善ポイントは、

①ブログよりもリアルタイム性の高い“つぶやき系”のSNSの情報を加味すること、②情報内容がネガティブなのかポジティブなのかという情報を盛り込むこと、さらには③消費者個別の利用履歴を基に一人ひとりに異なるリコメンドをすること--等が考えられます。こうした多様な軸を追加していくことで、消費者の情報への満足度も向上し、よりアクションを起こしやすくなると考えられます」という。 廣嶋氏は、さらなる応用例として「消費者に情報をリコメンドするタイプのマーケティングサービスだけでなく、それぞれの地域ごとに話題の特性や広がりを評価する定性的なマーケティング調査へも展開が可能です」ともいう。例えば、店舗の名称で検索すればおおよその商圏が分かるし、ブランドの地理的な浸透度合いも知ることができる。ブログは主観を書くものなので、「エリアダス」を利用すれば、膨大なデータから、主観や印象に重きを置いた分析結果が地域別定性評価として得られる。調べる側のアイデア次第で、ビジネスの分野でも多彩な活用が可能になるだろう。

Internet of Thingsへ

 O2Oマーケティングと位置情報技術を紹介してきたが、この分野をめぐ

る情報処理技術が高度化するにつれ、“Internet of Things”の世界との関わりを深めていくと考えられる。世の中のあらゆるモノが各種センサを内蔵してインターネットに常時接続している状況だ。 現在、世界中で約15億台のパソコンと約10億台の携帯電話がインターネットに接続されているという。それが、2020年までには約500億台のデバイスがインターネットに接続されるとする推計がある。500億台といえば、地球上のすべての人、1人当たり約7台という計算だ。パソコンや携帯電話はもちろん、家電や自動車、街中の機器、腕時計や靴などといったものまで、ありとあらゆるものがインターネットに接続される可能性がある。 消費者の位置情報を含めて、センサが生成しデータベースに蓄積される膨大な情報は、ビッグデータとして分析される。企業のマーケティング活動も高度化し、人間が意識する前にシステムが次の行動を予測して、自動的にサービスを提供するような仕組みが実現するとも考えられている。高度な“Internet of Things”の世界の中で、O2Oサービスも、現在とは比べものにならないほどの進化を遂げるにちがいない。

膨大なブログを収集し、そこで言及されている場所や日時を独自のアルゴリズムで解析した上で、データベースを構築していく(図4)。

Dig-A-Mapに集積されたさまざまなコア技術

 「エリアダス」の研究段階でのシステム名称は「Dig-A-Map」だ。「エリアダス」というアプリケーションの魅力は、消費者インタフェースの工夫による部分も大きいが、その中核となるシステム「Dig-A-Map」の本質的な技術

要素は別のところにある。 最も重要なのは、サーバ側に集積された技術群である。その中には、かねて研究所で取り組んできた自然言語処理の技術をはじめとする研究成果が盛り込まれている。例えば語句の「重み付け」の技術である。ある場所に関連して「道路」という語の出現する頻度が高いとしても、「道路」は他の場所でも頻出するだろう。それに対し、出現する絶対頻度は低くても他の場所ではあまり出てこない「酒蔵」という語が使われていたら、それは「その場所らしさ」を表す単語と考えられる。そうした「その場所」「その時」に特徴的なキーワードを提示するよう、語句の重み付けがなされるのだ。 さらに、消費者が「エリアダス」を利用したログを分析することで、より満足度の高い情報を消費者に提供し、提供側の望む行動へと誘引するための改善が継続的に行われる。消費者からのフィードバックデータを基にして、消費者からは見えないバックエンドでの改善を行うアプローチは、GoogleやFacebookといった企業の技術者も採用しているマーケット主導型の製品開

発である。 さらに、「エリアダス」では地図上のキーワード表示以外にも、話題が盛り上がっているエリアを色の塗り分けで示すヒートマップ表示(図5)を使うことができる。これを見ると、どこの地域で、どのような範囲で、情報が拡散しているかという“面”による視覚化が可能になる。つまり、あるキーワードがどこで“熱い”かが、まるでサーモグラフィを見るかのように分かるのだ。

さらに多様な軸を追加することで可能性が広がる

 「『Dig-A-Map』の開発意図は、現在の主要な検索サービスでは十分にできない検索方法を提供しようということでした」とNTTサービスエボリューション研究所の研究主任である廣嶋伸章氏は語る。現在の一般的な検索サービスでは、消費者が明確な意図を持ち、具体的なキーワードを入れない限り、適切な情報にたどり着かない。 一方、「エリアダス」は明確な検索意図やキーワードを前提としない。「消費者が現在いる場所がどこか」「求めるのはいつの情報か」といった手がか

特集 O2Oマーケティングと位置情報技術

Dig-A-Map 既存サービス

地図上、日時上の注目範囲および検索キーワード

データセンター

エリアタグ/キーワード分布および検索結果

検索されたページへのアクセス

Dig-A-Map時空間マップ型Web検索技術

キーワード

地理情報

時間情報

インデックス

ブログを中心としたWeb文書

インデックス作成

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図3 時空間マップ型Web検索技術 Dig-A-Map 図4 Dig-A-Mapのシステム構成と強み

図5 ヒートマップ表示

日本電信電話株式会社 NTTサービスエボリューション研究所サービスハーモナイズプロジェクト 研究主任

廣嶋 伸章(ひろしま のぶあき)

提示されたキーワードをタップすれば

検索キーワードを手入力することなく、表示された地図をタップ操作するだけで、今いる場所の周辺情報が簡単に分かる。

その場所について位置情報データベースに登録された情報しか利用できない。自動収集した、膨大かつ鮮度の高い情報を利用できる。

アプリを立ち上げると

©2012 Google - 地図データ ©2012 ZENRIN -

この辺は何が有名なんだろう?

三浦半島で桜?

河津桜の名所があるんだ!

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