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幼稚園教育と小学校教育の滑らかな接続の在り方について ~学びの芽生えを育て,自覚的な学びへとつなぐ教育課程や指導方法の在り方~ 徳島県・藍住町

幼稚園教育と小学校教育の滑らかな接続の在り方について...- 1 - 国研教育課程研究指定校事業 研究協議会資料 藍住町教育委員会 Ⅰ 研究主題

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幼稚園教育と小学校教育の滑らかな接続の在り方について

~学びの芽生えを育て,自覚的な学びへとつなぐ教育課程や指導方法の在り方~

徳島県・藍住町

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目 次

Ⅰ 研究主題 1

Ⅱ 研究の目的 1

Ⅲ 研究の内容と方法 1

Ⅳ 研究の経過 2

1 研究組織 2

2 研究経過 3

Ⅴ 研究の実際 5

1 連携の体制・組織づくり 5

(1) 町全体での研究推進体制 5

(2) 各幼稚園・小学校において 5

(3) 実務担当者会 6

2 「成長に必要な段差」と「配慮が必要な段差」 6

(1) 「成長に必要な段差」と「配慮が必要な段差」 6

(2) 「段差」についての考え方 6

3 「段差」を踏まえた接続期の工夫 6

(1) 幼稚園において 6

(2) 小学校において(西小学校の取り組みを中心に) 10

(3) 子どもの育ちをつなぐ幼稚園・小学校・家庭の連携 12

4 「育てたい子どもの姿」の共有 14

(1) 「育てたい子どもの姿」の共有 1 4

(2) 「言葉で伝え合うことができる子」をめざして 15

5 合同活動におけるカンファレンスの重視 20

(1) 合同活動への取り組み 20

(2) 合同活動の見直しと充実 21

(3) カンファレンスによる教師の意識の変化 24

6 接続カリキュラム「藍住モデル」の作成 27

(1) 接続カリキュラム「藍住モデル」について 27

(2) 各校の接続カリキュラム 27

Ⅵ 研究の成果と課題 28

1 研究成果 28

(1) 「段差」についての協議から「段差」を踏まえた指導の工夫 2 8

(2) 「育てたい子どもの姿の共有と見通しをもった指導」 2 8

(3) 合同活動カンファレンスによる教師の意識の変化と活動の充実 2 9

(4) 接続カリキュラム「藍住モデル」の作成 2 9

2 課題 29

(1) 「接続カリキュラム」を基にした接続期の実践と検証,改善の積み重ね 29

(2) 全ての教職員の発達や学びの連続性に対する理解と,それを踏まえた指導力の向上 29

※ 接続カリキュラム資料 30

藍住北幼稚園・小学校 30

藍住南幼稚園・小学校 31

藍住西幼稚園・小学校 32

藍住東幼稚園・小学校 33

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国研教育課程研究指定校事業 研究協議会資料藍住町教育委員会

Ⅰ 研究主題幼稚園教育と小学校教育の滑らかな接続の在り方について

~学びの芽生えを育て,自覚的な学びへとつなぐ教育課程や指導方法の在り方~

Ⅱ 研究の目的幼・小で一貫した「育てたい子どもの姿」を共有し,その実現に向けて,子どもの発達と学びの

連続性をふまえ,幼稚園から小学校へと滑らかにつなぐ教育課程や指導方法の在り方について探り,

実践する。

(幼)・子どもの発達と学びを長期的視点で捉え,遊びの中で育まれる「学びの芽生え」を意識し

た保育を展開する。

・幼児が期待と意欲をもって小学校生活に移行できるようにする。

(小)・子どもの発達と学びを長期的視点で捉え,幼稚園での「学びの芽生え」を生かし,「自覚的

な学び」へと移行させ,充実した指導を展開する。

・新入学児童が,期待と意欲を保ちながら小学校での生活や学習に意欲的に取り組みむことが

できるようにする。

Ⅲ 研究の内容と方法

1 8年間を通して「育てたい子どもの姿」を共有し,育ちを見取り,見通しをもった指導を行う。

(1)育てたい子どもの姿の共有

(2)幼・小それぞれにおける指導方法の検討と共通理解

(3)育ちのつながりや見通しをもった指導の展開

2 幼稚園教育と小学校教育についての相互理解を図り,それぞれの教育の独自性と発達や学びの

連続性を踏まえた指導の充実を図る。

(1)連携の体制・組織づくりと合同研修会等の実施

(2)幼稚園教育と小学校教育についての相互理解

(3)発達や学びの連続性を踏まえた幼・小それぞれの教育の充実

3 子どもの発達や学びの連続性を踏まえ,接続期における指導の在り方を探る。

(1)小学校における育ちや学びを意識した5歳児後半における教育課程や指導の工夫

(2)アプローチカリキュラムの作成

(3)幼稚園における育ちや学びを意識した入学当初の教育課程や指導の工夫

(4)スタートカリキュラムの作成

4 幼・小合同活動を実施し,互恵性のある活動における子どもの育ちや学びを検証し,合同活動

を充実させる。

(1)合同活動の計画・実施

(2)活動後のカンファレンスによる子どもの育ちや学びの共有

(3)合同活動の充実を図る工夫や年間計画の充実

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Ⅳ 研究の経過

1 研究組織

【県】 幼・小連携協議会

○ 会 長 阪根 健二 教授(鳴門教育大学)

○ 委 員 学識経験者,県教育委員会関係者

藍住町内4幼稚園長,4小学校長

藍住町内4幼・小PTA会長代表者

藍住町教育委員会関係者

※ 県指定事業

幼・小・中連携推進事業「学びのかけ橋」プロジェクト

平成25年度推進協議会を兼ねる

【町】

推進運営協議会

○ 会 長 藍住町教育長

○ 委 員 4幼稚園代表(園長・主任)

4小学校代表(校長・教頭)

幼・小・中連携推進コーディネーター

藍住町教育委員会関係者

※ 県指定事業

幼・小・中連携推進事業「学びのかけ橋」プロジェクト

平成25年度推進協議会を兼ねる

実務担当者会議

○ 4幼稚園・4小学校代表

○ 幼・小・中連携推進コーディネーター

○ 藍住町教育委員会関係者

藍住北 藍住南 藍住西 藍住東

幼 小 幼 小 幼 小 幼 小

教稚 教学 教稚 教学 教稚 教学 教稚 教学

職園 職校 職園 職校 職園 職校 職園 職校

員 員 員 員 員 員 員 員

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2 研究経過

(1)平成24年度月 日 内 容

3/2(金) ○平成24年度教育課程指定校事業新規委嘱事前連絡協議会

・実施計画書を基に研究方法等について協議

・担当調査官指導・講評

3/9(金) ○町内幼・小管理職研修会

・事前連絡協議会の報告 ・協議 ・県教委指導主事より指導・講話

3 月 ○保護者アンケート実施(幼稚園5歳児保護者対象)

5/9(水)~24(木)○幼・小連携についての研究会

・共通理解 ・協議 ・県教委指導主事より指導,講話

5 月 ○今後の取り組みについての実務担当者会議(小学校区毎に実施)

5/16(水) ○講演会(幼稚園職員対象)

演題「育ちと学びをつなげる連携・接続について」

講師 鳴門教育大学 木下光二 教授

6 月 ○教職員アンケート実施

6/13(水) ○第1回推進運営協議会

・幼小中連携推進事業「学びのかけ橋」プロジェクト及び国研事業概要説明

・研究計画及び普及について協議

・各学校の取り組みの方向性について検討

8/9(木) ○第1回実務担当者会議

・各学校の1学期の取り組み状況の報告

・2学期以降の取り組みの方向性についての検討・協議

8/29(水) ○幼稚園部会

・各園における1学期の取り組み状況の報告

・研究の重点(4つの柱)の捉え方について

・教育課程見直し・検討・合同保育授業指導案の形式検討

10/22(月) ○町学校教育研究会

・公開保育(幼小連携) ・研究協議 ・県教委指導主事指導・講評

10/30(火) ○第2回実務担当者会議

・11/21開催の国研研究会に向けて

・あわ教育発表会における研究成果発表について協議・検討

11/21(水) ○教育課程研究指定校事業合同研究会 指導者 津金美智子 教育課程調査官

・合同保育授業 ・各学校(園)取り組み状況報告

・研究協議 ・指導講評

12/24(月) ○県教育発表会(あわ教育発表会)において成果発表

1/21(月) ○第3回実務担当者会

・国研 指定校事業研究協議会発表資料検討

2/4(月) ○平成24年度 国研指定校事業研究協議会において成果発表

2/20(水) ○第4回実務担当者会

・本年度の成果,課題,次年度の方向性について

2/26(火) ○平成25年度教育課程研究指定校事業連絡協議会

・研究経過報告

・指導講評

3/ 6(水) ○第2回推進運営協議会

・本年度の成果,課題について検証

※ 各幼・小での実務担当者会議は,各学校区毎に適宜行う。

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(2)平成25年度月 日 内 容

4/5(金) ○第1回 実務担当者会議

・昨年度の成果・課題を踏まえた研究計画の検討

・本年度の「育てたい子どもの姿」(町全体)の検討

5/1(水) ○第2回 実務担当者会議

・本年度の「育てたい子どもの姿」(町全体)決定及び共通理解

5 月 ○本年度の取り組みについての実務担当者会議(小学校区毎に実施)

○アンケート調査実施(保護者,教職員)

5/22(水) ○第3回 実務担当者会議

・各園校の取り組み状況についての情報交換

6/4(火) ○第1回推進運営協議会

・幼小中連携推進事業「学びのかけ橋」プロジェクト及び国研事業概要説明

・研究計画及び普及について協議

・各学校の取り組みの方向性について検討

8/20(火) ○第4回 実務担当者会議

・各園校の1学期の取り組み状況の報告

・2学期以降の取り組みの方向性についての検討・協議

・情報交換

8/26(水) ○第5回 実務担当者会議(幼小中合同)

・各園校における1学期の取り組み状況の報告

・2学期以降の取り組みの方向性についての検討・協議

・あわ教育発表会について検討

10/31(木) ○教育課程研究指定校事業合同研究会

指導者 津金 美智子 教育課程調査官

・藍住東幼小合同活動(藍住東小学校にて)

・実務担当者との協議・御指導

・各園校の取り組み状況報告 ・協議 ・指導助言

・指導講話(全体研修)

12/24(火) ○県教育発表会(あわ教育発表会)において成果発表

1/20(月) ○第6回実務担当者会

・国研 指定校事業研究協議会発表資料検討

2/6(木) ○平成25年度 国研指定校事業研究協議会において成果発表

2/28(金) ○第2回推進運営協議会

・研究実践報告

・研究内容の広報及び成果の普及等

・今後の取り組み促進

・その他

※ 各幼・小での実務担当者会議は,各学校区毎に適宜行う。

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Ⅴ 研究の実際

1 連携の体制・組織づくり

(1)町全体での研究推進体制(*p2「研究組織」参照)

【県】 幼・小連携協議会 ※県指定事業 幼小中連携推進事業を兼ねる学識経験者,県教委,4幼稚園長,4小学校長,PTAの代表者,藍住町教委

【町】 推進運営協議会 実務担当者会 北幼・北小 西幼・西小4幼稚園長・小学校長,町教委 4幼・小実務担当者,町教委 南幼・南小 東幼・東小

藍住町では,4つの幼稚園のほとんどの幼児が,そのまま4つの小学校へと入学するなど,幼小

接続に取り組みみやすい環境にある。各幼小の担当者を中心に,4つの幼稚園・小学校でそれぞれ

の実情にあった取り組みを進めた。また,町全体で研究を推進していくため,4幼稚園・小学校の

代表者と教育委員会担当者による実務担当者会を実施した。平成25年度からは,連携推進コーデ

ィネーターを町教育委員会に置き,研究推進の中核とした。推進運営協議会,幼・小連携協議会で

は,管理職やPTA会長代表者,学識識経験者らを加え,研究の方向性と成果を検証していった。幼

小接続についての全町での研究会も実施し,町全体での取り組みとなるよう考えた。

(2)各幼稚園・小学校において各幼小では,これまでもあった日常の交流や合同活動につ

いての話し合いを,幼小接続を意識して行うようになった。参

観日の保育や授業を相互に参観し感想を述べ合ったり,合同研

修会を実施したりしたことで教員同士の関係性が築かれてい

き,日常的な情報交換が自然にできるようになっていった。

合同活動や接続カリキュラム作成に関する話し合いでは,互

いの教育方法や文化に違いや違和感を感じながらも,取り組み

を重ねることで,幼稚園教育・小学校教育に対する理解が少し

ずつ進んでいった。

平成25年度には,幼小連携年間計画も見直し精選され,年間を見通した無理のない計画となっ

た。幼小とも教員の異動により連携が継続・発展されないという課題をかかえていたが,このよう

な年間計画を基に継続が可能になると考える。

〔幼小担当者会〕

〔幼小連携年間指導計画〕

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相互理解が進むに伴い,幼小で共に子どもを育てようという意識や,幼稚園での生活の延長線上

に小学校での生活があるという発達や学びの連続性への意識が高まってきている。特に,幼稚園で

のため込みが小学校の授業の中で引き出されている姿が見取れたり,幼稚園での体験が学習の基盤

となっていることを実感したりするなど,子どもの姿を共有することによる理解が進んでいる。

(3)実務担当者会各幼稚園・小学校で研究を推進している担当者による実務

担当者会は,各幼小の取り組みを交流するとともに,研究の

方向性を協議し共通理解する場となった。幼小の段差につい

ての協議や接続カリキュラムの作成,入学当初の指導の工夫

など,研究の柱となるものがこの実務担当者会の中で協議さ

れた。また,各幼小の取り組みを交流することがよい刺激と

なり,各幼小の独自性を自覚しながら,町全体の研究の方向

性を共有し,研究を向上させていく基盤となった。

2 「成長に必要な段差」と「配慮が必要な段差」

(1)「成長に必要な段差」と「配慮が必要な段差」5歳児後半から小学校入学当初の教育課程や指導方法の在り方について協議する中で,「段差が

あるからこそ,小学生になった誇らしさや自信,小学校生活への憧れや期待をもつことができる。」

との意見が出た。そこで,あらためて子どもにとって「成長に必要な段差」と「配慮の必要な段差」

について幼小で考えを出し合った。

(2)「段差」についての考え方「成長に必要な段差」として,幼稚園教員は,遊びを通した学びから教科学習の中での学びにな

ること,新しい環境に対する緊張感とその環境に適応していくこと等があげられ,小学校教員から

は,45分間座って学習することをはじめとする環境や生活の流れの違いがあげられた。

「配慮の必要な段差」として,幼稚園からは不安や緊張に対する個々の子どもの受け止め方の違

いや教師との信頼関係づくりがあげられ,小学校生活に対して意欲や安心感のもてる配慮が必要と

考えた。小学校教員からは,教科学習への移行を丁寧にすることの必要性があげられ,教科学習を

合科的に行ったり,授業の1時間を45分に固定せず,様々な活動が入るように短いユニットで弾

力的に授業を構成するなどの指導の工夫が提案された。

生活の流れの違いや教科学習の始まりによる学び方の変化,新しい環境や人間関係などは,不安

や緊張を生むものであるが,憧れや期待,自分自身の成長の実感にもつながる。そこで,子どもの

成長にとって必要な段差を越えていくために教師の配慮が必要であると考え,接続期の教育課程や

指導方法を検討していった。

3 「段差」を踏まえた接続期の指導の工夫

(1)幼稚園において「段差」についての協議を踏まえ,各幼小で接続期の教育課程や指導の工夫に取り組んだ。

幼稚園では,幼稚園教育を充実させることが小学校教育の基盤となるとの考えから,保育の充実

を図った。幼児の学びの芽生えを見取る視点を設け,簡単な見取りシートを基に考察したことを次

の保育に生かすことを重ね,教師の関わりと環境構成の質を高めようと取り組みんだ。

ポイント 捉え方

①関心をもつ ・興味をもち,自らやってみようとする。

〔見取りの視点〕

〔実務担当者会〕

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②熱中している ・目的をもち,集中し,一定時間,取り組んでいる。

③困難に立ち向かう ・困ったこと・難しいことに対し,試行錯誤・工夫・

協力などで解決しようとする。

④考えや気持ちを ・表情・動き・仕草・絵・音楽・言葉など様々な方法

表現する で表現する。

⑤責任ある行動 ・ルールや自分の役割が分かり,友達と協同し最後ま

でやり遂げる。

平成25年5月31日(金) 「砂遊び」

幼児の活動 発達や学びの芽生えの見取り

④砂場でケーキ作りを楽しんでいたBさんが ○砂の湿り具合が型押しに適していたことに

「あっ,いいことがある。」と考えたことを 気付いたことが,ケーキづくりの遊びを深

C,D,Eさんに相談した。「今日,Aちゃ め,一緒に遊んでいる友達同士の中に「誕

んの誕生日だから,パーティーをしてあげた 生会」という共通のイメージを生んだ。ま

い。D,Eちゃんがごちそうを作って,私と た,クラスでの友達関係が深くなってきた

Cちゃんでメッセージを書いて渡したい。で ことで,友達の喜ぶ顔が見たい,そのため

もAちゃんに内緒ね。」と伝えにきたので, には自分の思ったことや感じたことを伝え

教師は「いいね。」と賛同した上で,片付け たいという思いが強くなった。

の時間が迫っていることを知らせた。 ○Aさんに内緒にしておき,サプライズ

早速,⑤B,Cさんはメッセージカード にしたほうが,より一層相手が喜んでくれ

づくりをするために保育室まで走っていき, るだろうと推測したので,Aさんには話さ

D,Eさんはケーキづくりに急いでとりかか ず,遊びを進めようとした。

った。ケーキ型を移す皿がなく,④困ってい ○遊びを一緒に進める仲間で,役割分担をす

るD,EさんにそばにいたFさんが「これ使 ることで効率よく遊びが進むことが毎日の

う?」と自分が使っていた皿を差し出した。 遊びからわかっていた。また片づけの時間

また,Dさんは園庭のシロツメクサとクロー が迫っていることを確認したことで,より

バーを一緒に束ねブーケにして,テーブルの 集中して遊びが進んだ。

中央にある穴に挿して飾った。 ○周りにいた子もB,Cさんの困っている様

B,Cさんが書き上げたメッセージカー 子に気づき,自分がいいと思ったことをし

ドには『Aちゃん,おたんじょうびおめでと た。

う。このケーキ食べてね。Aちゃん大好きだ ○言葉だけでなく,絵や文字・飾り付けなど

よ。』とカラフルな絵とともに描かれていた。 を工夫して取り入れることにより,Aさん

Aさんの誕生会をして④みんなで片付け終 への心を込めた思いを伝えようとした。

えた後,Bさんが「こっちが幸せな気分にな

ったわぁ。」と満足そうにつぶやいた。 ○最後まで自分たちで遊びをやり遂げられた

降園時,Aさん,Bさんの保護者に本日の 達成感が,「こっちが幸せな気分になった

遊びの様子を伝えると,「Aのことに友達が わぁ。」という言葉を生み出した。

気づいてくれて嬉しい」という気持ちやBさ

んは家族の誕生日を全部覚えていてその都度

お祝いをしているという様子を話してくれた。

<考察>

教師が事前に砂を湿らせておいたことが,ケーキづくりから友達の誕生会へと遊びが発展

するきっかけとなった。その遊びのなかでBさんが中心となっているが,遊びに関わってい

るC,D,Eさんもそれぞれに「Aさんを喜ばせたい」「誕生会を成功させたい」という共

通の目的をを持って,自分たちで遊びを進めやり遂げた。また,時間を知らせることで,効

〔事例と考察(藍住西幼稚園)〕

この記録から,「学びの芽生え」を見取り,「自覚的な学び」を意識しながら次の手立てを考える。

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率のよいやり方を自分たちで考え出した。このこ

とから遊びこめる環境づくりや友達関係を深めて

いくこと・遊びの達成感を味あわせることが,子

どもたちの学びやコミュニケーション力を育んで

いくために大切であることを改めて感じた。

また,降園時の保護者の話からBさんは家族に

大切にされており,そのことが園での友達との遊

びに反映していることがよくわかった。園でも毎

月の誕生会や様々な体験があり,家庭での体験が

重なり合って遊びが深まっていくものとこの事例

を通して思われた。

このような見取りの視点を設け,教師の関わりや環境構成を考えていくことで,幼児の育ちの段

階や活動に対しての意欲を捉えやすくなり,その育ちを深めたり次への活動へととつなげたりする

ための,教師の関わりや環境構成など,手立てを考えやすくなった。また,共通のシートによる記

録をもとに話し合うことで,教職員間の幼児の育ちや環境の再構成などについて共通理解が進んだ。

また,小学校生活を見通したときに子どもが感じるであろう「段差」から,5歳児後期に身に付

けておくべき力を考え,明確にした上で取り組んだ。

① 年長児としての自覚をもち,自分たちで生活や活動を進めていこうとする力

② 1日の生活の流れを知り,見通しをもって生活する力

③ 一つの目標に向かって友達と意見を伝え合いながら,遊びを進めていく力

平成25年12月 「ジュース屋さんにお客さんが来てくれんようになった。」

月日 幼児の活動 教師の配慮

12/12 ○友だちと一緒にジュース屋さんをして ○自分の考えを話したり,友だちの話もよ

いたNが帰りの会で今日困ったことを く聞いたりできるように,子ども同士の

発表した。 話し合いを大切にしてきた。

N「ジュース屋さんを始めた時はお客 ○「Nちゃん,困ってるみたいやけん,い

さんがいっぱい来てくれたけど,ホッ い考えあったら教えて。」

トドッグ屋さんが始まってお客さんが N子の困った話を聞いて,子どもたちに

来てくれんようになった。」 どう思うか,自分ならどうするかを問い

かけて,自分の気持ちを言葉で伝える機

○③「ホットドッグ屋でジュースを売れ 会にした。

ばいい」「お店を合体させる」「皆に来 ○「Nちゃんお友だちがいろいろ言ってく

てって言う。」「チケットを配りに行く」 れてるけど,どうする?」

などの意見が子ども達から出た。 ③子どもたちの発言を聞いて,Nが友だ

ちの意見にも耳を傾け,参考にできるよ

○N「来てって言うても来てくれんかっ うに,Nにどうするか問いかけた。

た」「言うといてって言うたけど来てく ○「お店を合体させるのは嫌なんやな・・

れんかった」などと発言し,「店を合体 ・お友だちが言ってくれようけん,チケ

させる」という皆の意見を聞き入れよ ットを配ったり,4 歳児を誘ったり,も

うとしなかった。 うちょっと考えてみようか」と③時間を

12/13 ○③K「Nちゃん,ホットドッグ屋さん おいて気持ちの整理ができるように話を

とジュース屋さん一緒にしていい。」 終えることにした。

N「うん,いいよ。」

NがA・Kと一緒にお店屋さんごっこ

〔5歳児後期に身に付けておきたい力(藍住西幼稚園)〕

〔事例と考察(藍住西幼稚園)〕

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をする姿があった。

○昨日のNは,友だちの意見を聞いてもす

ぐには受け入れられず,店を合体させる

のを嫌がっていたが,時間を置くことに

より気持ちの切り替えや整理ができたよ

うであったので「Nちゃん,いいお店に

なったね。」とNの気持ちを認めた。

<考察>

帰りの会は,1 日の困ったことや楽しかったことなどを言葉にして友だちに伝え,他の子

も友だちの話を聞いて考え自分の思いを伝えるという,子ども同士の話し合いの場にしてい

る。

Nが困ったことを友だちに伝えることにより,他児たちも自分ならどうするか,どう思う

かを考える良い機会になったのではないか。教師は,自分の思いは伝えたが,他児たちの意

見を受け入れることはできなかったNの気持ちに寄り添い,Nの気持ちを受け止めた。また,

自分の考えを出してくれた他児たちの気持ちや意見も大事にすることで,Nが友だちと協力

して遊ぶ楽しさが味わえるのではないかと考えた。そして,その場で解決させるのでなく,

気持ちの整理がつくように,時間をおくことでNが友だちの意見を受け入れることのできる

自己調整力が育つのではないかと考えた。

「玄関掃除,自分たちでできるよ」

月日 幼児の活動 教師の配慮

4/9 ○自分たち年長児が中心となり当番活動に取 ○前年度の 3 学期から新学期からのために,

り組んできた。 当番の引き継ぎを行った。

11/18 ○T「玄関掃除,自分たちでできるよ。」 ○今までと同じよ

R「うんできるよ,まかせて。」 うに玄関掃除を

手伝いに行く

○Kは,今週自分たちの当番活動である階段 が,子どもたち

掃除の方法を年少児に伝えている時,①K の頼もしい言葉

1/16 は「雑巾びちょびちょやけん,もっと強く に「すごいでえ。

絞ってきい。すべる 自分たちだけで

けんな。」と年少児 できるん。」「じゃあ,まかせるわ。頼むよ。」

の雑巾に気付き伝え

ている。 ○年長児から年少児に当番活動の仕方を伝えて

○①K「ぎゅーっと絞 いる様子を見守り,年長児としての自覚や

るんよ。」と伝え自 自信につながるようにした。

分もして見せてい

る。年少児Uもそれ

を見て同じように力

いっぱい雑巾を絞っ

ている。

○①S「ここ拭くんよ。」と,手すりを拭いて

いる年少児Yに床(階段)を拭くことを知 ○帰りの会で,「S君とK君が下組さんに,雑

らせたので,Yも階段を拭き始めた。掃除 巾の絞り方や洗い方を,強く絞ってきいと

が終わると,Sは①「ゴシゴシ洗うんよ。」 かゴシゴシ洗うんよとか,上手に教えてあ

〔事例と考察(藍住西幼稚園)〕

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と雑巾を丁寧に洗いながら伝えていた。 げてたよ。」と,①S・Kが年少児にどう伝

○②K「長い針が8になったけん,もう部屋 えているかを知らせ,クラスの子たちの活

に帰ろう。」と年少児に声をかけ,片付け 動へとつなぎ,今後も意欲的に取り組める

をして当番活動を終えた。 ようにした。

<考察>

当番活動に関しては,皆の役に立っていることに喜びを感じ,自分たちだけでもやり遂げられると

いう自信をもって当番活動に取り組めるようになってきていると考えられる。

昨年度,自分たちが年長児から教えられたことを思い出しながら,年少児に当番活動の仕方を一つ

一つ丁寧に教えている。それは「もうちょっとで 5 歳児になるから,当番の仕事を教えておかなけれ

ば。」との思いからであると考えられる。

仕方を具体的にして見せながら,言葉でも伝えている。また,年長児が全部してしまうのではなく,

年少児がしているのを見て,できるまで待ってあげるという,教え方の工夫ができていると考えられ

る。また「長い針が8になったら当番活動が終わって,帰りの用意をする」という,生活の流れや見

通しがもてていると思われる。

(2)小学校において(藍住西小学校の取り組みを中心に)小学校では,入学当初における指導を生活面,学習面,友達や教師との関係から考えていった。

幼稚園での育ちと小学校生活への期待をいかにつなぎ,新しい環境の中でいかに安心して自己発揮

できるように支えられるかが取り組みの視点となった。

①生活面での配慮

担任による玄関での出迎えや複数の教員による下校時の引率,生活の流れに見通しがもてる絵カ

ードの表示等により環境変化による不安の軽減に努めた。また,学校での生活様式については,幼

稚園での経験を取り入れ,教師が一緒にしながら時間をかけてていねいに指導し,全員ができるよ

うになるまで,繰り返し指導した。

小学校生活を安心してスタートするための導入部分として「すまいるタイム」と名付けた時間を

設定した小学校もある。幼稚園で経験した遊びができる環境をワークルームに用意し,登校後に自

由に遊べるようにした。「できる活動」に取り組むことで児童は自信と満足感をもって次の活動へ

の意欲を高めることができた。活動の終わりには読み聞かせなど全員での活動も取り入れ,授業へ

の自然な接続も意識した。新しい環境にとまどいの見られる子どもにとっては有意義な時間となり,

教師にとっても一人一人の子どもや子ども同士の交友関係を把握する機会としてその後の指導に生

かすことができた。

(児童・保護者の言葉から)

「すまいるタイム」を実施している時期に,ある保護者から次のような言葉を聞いた。

〔「すまいるタイム」の実施(藍住西小学校)〕

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「熱があっても休もうとしないんです。」「どうしてですか。」「「すまいるタイム」があるから行き

たいって言うんです。」

この言葉を聞いて,児童たちが「すまいるタイム」の時間を楽しみにしていることを実感した。

実際に,児童たちは『こま回し』など自分ができることを「先生,見て見て。」と,何人もが教師

のまわりにやってくる。自分のことを見てほしいという表情で,精一杯アピールしてくる。「すご

いね。上手だね。」とほめると,にっこりほほえんで満足したような顔で,さらに夢中で活動して

いる。

つまり,新しい担任の先生たちに認めてほしいという気持ちが,このような行動に表れていると

考えられる。担任と児童たちの親和的関係を結ぶことにも,「すまいるタイム」は役立っていると

感じている。

(今後について)

このように,「すまいるタイム」は入学期の緊張した気持ちをほぐすという意味で,効果的な内

容であった。しかし,児童たちの実態は年によって違うこともあり,実施する内容は実態に応じて

工夫する必要がある。年度末の幼稚園からの引き継ぎの話し合いの際に,そういったことも検討し

ていく必要がある。

②学習面での配慮

入学当初の授業時間は,1時間を45分に固定

せず,児童の実態に合わせて弾力的に運用するよ

うにしている。集中できる時間も考慮し,1時間

の中に「聞く・話す・見る・書く」などの様々な

活動が入るように短いユニットで授業を構成した。

言葉の指示は短く,できるだけ一時に一事のこと

を伝えるようにし「話を聞いてできた」という達

成感を得られるようにするとともに,教師が受容

的態度で分かりやすい発問をすることで安心して

自分の意見を発言できるように配慮している。

幼稚園の遊びの中で様々な感動体験や成功体験を

積み重ねてきた子どもたちは,小学校での学習を楽しみにし,どんな活動にも臆することなく意欲

的に取り組もうとする。その意欲をつなぎながら自覚的な学びへと移行できるように意識している

〔入学当初の指導の工夫と配慮事項〕

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③友達関係・教師との関係への配慮

「すまいるタイム」など,できるだけ多くの友達と関わることができるよう,学級の枠を外した

活動を行ったり,自由に交流ができたりする活動を設定した。一人一人の子どもについて幼稚園教

員と引継ぎを行うとともに,幼稚園教員の幼児理解を児童理解に生かし,教師との信頼関係が築か

れるように努めている。

保護者との連携を図ることが児童理解や児童との信頼関係づくりにもつながっている。小学校で

の様子を家庭へも伝えたり,家庭と緊密に連絡を取り合うことで保護者の不安を解消し信頼関係を

築いている。

(3)子どもの育ちをつなぐ幼稚園・小学校・家庭の連携①保護者の安心感

保護者との連携を図ることが子どもと保護者の安心感を生んでいる。小学校入学当初の指導の工

夫や子どもの生活の様子を伝えることが,保護者の小学校生活に対する不安を解消し,子どもの安

心感にもつながっている。入学後も幼小の取り組みを教育委員会や幼稚園・小学校から発信するこ

とで,保護者にとっても見通しをもって小学校生活への移行ができるように思われる。

〔藍住町教育委員会だより〕

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②幼稚園・小学校・家庭との連携による事例

平成25年4月~ 事例「かぶとむし」

入学式後のある朝,交通指導に出ていた幼稚園教師が,送ってきた母親と離れず泣いている1年

生のS児を見かける。困った表情の母親に声を掛けたが,母親も離れられない様子。S児は,母子

分離が不完全で,幼稚園の頃から登園時や行事の度に母親と離れられない状態が続いていた。また,

〔藍住西小学校 すまいる通信〕

〔藍住町教育委員会実施アンケート結果より抜粋〕

(藍住北幼稚園・藍住北小学校)〕

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園生活の中で頑張って獲得したことでも時と場によって発揮できない幼児であった。

幼稚園においては,家庭との連携を図る中で,S児への関わりを工夫したが,一進一退の状況が

続いた。しかし,5歳児の秋から冬にかけ,S児が虫に詳しい父親の助けも借りながら,大好きな

カブトムシが産んだ卵を育てるということを通し,自己発揮し友達からも認められるという出来事

があった。それをきっかけとしてS児の園生活が少しずつ変わっていった。

小学校入学後,新担任もS児についての引き継ぎ事項から,配慮が必要であるということを理解

し,S児の実態の把握に努めている段階であった。数日,泣きながら登校するS児を心配した幼稚

園教師が交通指導の帰り道,新担任にS児の様子を尋ねたり幼稚園の時の様子を話したりして情報

の交流を図った。それを契機に,新担任も幼稚園教師の姿を見かけると,S児の様子を伝えたり相

談したりすることが増えていった。そんな時,S児が幼稚園で中心となって育てていたカブトムシ

がサナギになった。そこで,幼稚園教師は2匹のサナギをS児が元気に登校できるようにという願

いを込めて,小学校へ贈る。その数日後,小学校から幼稚園に1本の電話。「S児が自分から,家で

飼っているホワイトアイというカブトムシをみんなに見せたい!と言い,泣かずに登校してきたん

です!」1年生担任がS児の変容に嬉しさを感じ,思わず掛けた幼稚園への電話だった。サナギが

身近に来たことによって世話をし始めたS児。「先生,家から違うカブトムシを持ってきたんよ。幼

稚園からもらったカブトムシも脱皮したよ!」と通りかかった幼稚園教師に嬉しそうに話すS児。

カブトムシの世話を通して新しい小学校の環境や先生・友達との関わりもでき始めたようであった。

<考察>

このように,不安だった小学校という新しい場で,大好きなカブトムシに出会えたことや友達や教

師に認められたことから,S児の心が開かれていったと思われる。幼稚園で築かれた幼児や保護者

との信頼関係が,幼小教師の連携によって,小学校での信頼関係に移行していく,そんなことを実

感した事例であった。

現在もS児の内面に十分配慮しながら,ていねいな指導を継続しているところである。

4「育てたい子どもの姿」の共有

(1)「育てたい子どもの姿」の共有子どもの発達と学びの連続性を踏まえた指導を行うために,それぞれの幼小で「育てたい子ども

の姿」を検討し共有した。幼児・児童の育ちの課題を踏まえた協議を行うことで,各地域の子ども

をともに育てようという意識が生まれるとともに,取り組みの視点が焦点化された。各幼小の「育

てたい子どもの姿」は次のとおりである。また,これは,県指定幼小中連携推進事業での取り組み

において中学校まで共有されている。

(北) (南) (西) (東)

言葉で伝え合うこと ・人の話をしっかり聞 ・人の話を聞くことが ・人の話を聞くこと

ができる子 ける子 できる子 ができる子

・自分の思いを伝える ・自分の思いを伝える ・自分の思いを伝え

ことができる子 ことができる子 ることができる子

・人との関わりをもつ ・人との関わりをも

ことができる子 つことができる子

コミュニケーション能力の基礎を養う

4つの幼小とも「コミュニケーション能力の基礎を養う」ことが大きな目標としてあがっている。

これは,中学校までの11年間を通しての藍住町の子どもたちの課題でもあることが再確認され,

〔各幼小の「育てたい子どもの姿」〕

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各幼小で取り組み方法について話し合った。

幼小において指導方法を検討し取り組んでいく過程で,幼小の「伝え合う力」の捉えと指導方法

の違いに気付いたことは,それぞれの教育の独自性を踏まえた取り組みの第一歩となった。幼稚園

では,幼児の発達の姿や言葉の育ちを捉えながら援助や環境構成を行うこと,小学校では,「言語

活動の充実」として,伝える際の技術や態度などを大切にしながら指導すること等を幼小で共通理

解しながら進めている。

5歳児と1年生だけの取り組みではなく,8年間を見通しながら各年齢,各学年で指導を重ねて

いくことが重要であり,取り組みを進めている。今後,子どもの育ちを検証しながら「8年間の育

ちの見通し表」作成に集約していくことができればと考えている。

(2)「言葉で伝え合うことができる子」をめざして①「言葉で伝え合うことができる子」

言葉で伝え合うことができる

「育てたい子どもの姿」を設定するにあたり,子どもの実態から課題を洗い出したところ,幼小

共通の課題として次の4点があげられた

・生活経験に偏りがあり,個人差が大きい。

・自然との関わり,異年齢の友達との関わりや集団での遊びが少ない。

・自己中心的で友達や周囲の思いを受け入れることが苦手である。

・集中して話を聞くことが苦手である。

【言葉で伝えたいと思える直接体験や感動体験】・近くの神社や校庭などに出かけ,秋の自然に関わったり季節による自然の変化に気付いたりする。・親しみをもって栽培物の水やりや飼育している小動物の世話をする。・分からないことや不思議に思ったことを,友達と相談したり図鑑で調べたりする。・氷や雪,霜など身近な冬の自然に気付き,触れたり試したりする。・冬から春への自然の移り変わりに関心を持ち,見たり触れたりする。・絵本や物語などに親しむ中で,いろいろな言葉に触れたり,物語に入り込み想像をふくらませて聞いたりする。

【話を聞くことが楽しいと感じられる共通体験】・園全体での「朝のほぐしタイム」やクラスの中で教師や友達の話を聞くことを楽しむ。・言葉で体験の共有をし,自分の生活の中での実体験と重ね合わせていく。

【伝え合う喜びが感じられる園での生活】・ルールのある遊びを通して,友達の思いに気付いていく。・いろいろな遊びの中で友達と考えを出し合い,試したり工夫したりしながら遊ぶ。・帰りの会で,友達の前で話をしたり,友達の思いや考えを聞いたりする。・友達の思いに共感したり,自分のこととして受け止めたりしながら聞く。・友達と思いを伝え合いながら,自分たちで協力して遊びを進める。・友達のよさに気付き,よさを生かしながら遊ぶ。・帰りの会を自分たちで進める。・遊びや生活の中で文字を使おうとする。

【伝え合う喜びが感じられる学校での生活】・期待感をもって学習に参加する。・積極的に自分の考えや思いを伝える。・友だちの考えや思いを受けとめながら聞く。・自分や友だちのよさに気付き、仲良く学習や活動に参加する。・「朝の会」「帰りの会」の司会進行を友だちと協力して進める。

【話すこと・聞くこと】・聞く大切さと約束・授業の中での聴き方や応答の仕方・集中して聞くことと相手に合う応答の仕方

【書くこと】・書くときの姿勢や鉛筆の持ち方を正しくする・自分の名前を丁寧に書く・ひらがなを書く

【読むこと】・友達と声を合わせて音読する楽しさを味わう・全校音読集会「北っ子広場」

【各教科における言語活動の充実】・各教科の特質を踏まえた言語活動の充実を図る。

小学校4 月

小学校

6 月

幼稚園

10月

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表現力を身に付け,人と関わり合うことのできる子どもを育てるため,「言葉で伝え合うことがで

きる子」の育成を共通の目的とし「育てたい子どもの姿」とした。さらに,人権教育の視点からも

アプローチすることで,「集団の中で他者と共に話し合い学び合う子ども」,「自他の存在を認め,

尊重し合う子ども」を育てたいと考えた。

接続カリキュラムには,項目の一つを「言葉で伝え合うことができる」とし,前頁のように表し

た。(*p31「接続カリキュラム」参照)

②幼稚園での取り組み

「言葉」は,自分の思いを伝える手段であると同時に,相手の思いが「言葉」になることによって

分かっていくという,相手を理解する手段である。また,「言葉」によって自分なりに考えたり試

したりすることで,思考が深まり世界が広がっていく。

幼児は,友達との遊びや生活の中で,思わず伝えたくなった感動体験や感情体験を「言葉」にし

ながら積み重ねていく。そして,「言葉」を媒介として友達との関係が成り立ち,いざこざもおき

るが楽しさや嬉しさの共有も経験していくことができ,だんだんと「伝え合う」関係になっていく。

このような幼児期の育ちが,小学校以降の生活や学習の基盤となっていくのではないだろうかと考

えた。幼稚園における「学びの芽生え」を見取り,小学校における「自覚的な学び」へどうつなげ

ていくか,実践を重ねていった。

平成25年9月10日(月) 4歳児・5歳児 「 砂 で 遊 ぼ う 」幼児の活動 指導内容

1学期の経験を生かし,足が濡れてもいいよう 先週は雨が続いたため,久しぶりの砂遊び。本

に裸足になり,トイやパイプの用意をし,意気揚 格的には2学期初めての砂遊びである。

々と遊び始める。 ・倉庫から道具を出したり,スノコの用意,裸足

トイを組み合わせてつなげ水を流すコースを作 になるなど要領よく準備をしようとする子どもた

る。組み合わせた隙間から水が漏れると,砂を盛 ちとともに準備をする。

って固めようとする。水に流されて,なかなかう ・5歳児・4歳児が入り混じって砂・水に触れて

まくいかない。繰り返し挑戦する。4歳児は,バ 楽しむ姿を見守ったり,思いに共感したりしなが

ケツで水を汲んできて流す係りを繰り返ししてい ら久々の開放的な砂遊びの時間をともに楽しん

る。 だ。

<降園前の5歳児の保育室で>

「ああ,楽しかった。先生,明日も遊ぶからパ よほど楽しかったのか,出して組み合わせたパ

イプとかそのままにしておいてもいい?」「いいよ」イプや掘った川などをそのままにしておきたいと

「私もすごく楽しかった。そうだ,タクミくんが 言う。他の友達の了解も得て,そのままにしてお

パイプから水が漏れるってスコップを使っていた くことにする。

けど,うまくいかなかったんよね」「うん,水を止 ・本時の砂遊びの中心となって取り組んでいたタ

めるやつがほしいなあ」「木がいいんと違う?」「箱 クミの挑戦と工夫を認め,友達に知らせることに

とか段ボールは?」「じゃあお家で探して明日持っ よって,目的意識をもったり思いが共有できるよ

てくる?」「うん,家から持ってくる」「何がいい うにと,話し合いの方向性をもたせた。

か考えてこよう」「家で探してみる」次々と意見が

出る。

<本時のねらい>

・思いを出し合いながら友達と遊ぶ中で,つながっていく楽しさを味わう。

<考察>

始業式の後,先週ずっと雨で久しぶりの晴れ間。月末の運動会に向けての練習を終えた後,園庭に

飛び出していった子どもたち。慣れた様子で準備を始め,思い思いの遊びを楽しみ出し徐々につなが

り出した遊びと子どもたち同士の気持ち。よほど楽しかったのか明日も続きがしたいとそのまま残し

ておくことを提案したタクミ。漏れ出す水を止めたい一心で使ったスコップを友達が引き抜いてしま

った。普段のタクミなら怒り出すところだがそうではなかったことに驚いた。友達との楽しい経験の

中で,友達の気持ちを受け入れる心が育ってきているのではないかと思われる。

〔事例と考察(藍住北幼稚園)〕

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帰りの会で砂場での出来事を取り上げたことによって,興味関心の広がりや次へのつながりができ

てきた。自分なりに考え,気付いたことや思ったことを発言する姿も見られた。このことが家庭へと,

明日の活動へとつながり,試したり工夫したりする姿,協同する姿へとつながっていくよう,今後の

環境や関わり方を考えていきたい。

平成25年9月11日(火) 4歳児・5歳児 「 砂 で 遊 ぼ う 」<事例>

4歳児

トイを2つつなげてタライに立て掛ける。ハヤト「流しそうめんするけん,食べに来てよ」

T「わかった,できたら言うてよ」「うん」トイに水を流すが,トイのつなぎ目が外れてしまう。

ハルト「あーあ,またはずれた」ユウマ「直そう」カイ「いいこと思いついた,バケツがいいんじゃない?」

外れる度に,重ね合わせたり見つけたバケツを下に置いてみたりする。

4回目のやり直し。

T「このトイが2つくっついたらいいのに,どうしたらいいかなあ」

ユイト「この木は?」と言い木片をトイの下に置く。外れてしまう。「あーあ」

T「そうだ!このカゴを置いて みようか?」「うん,そうしよう!」トイ2つが安定する。

カンタが5歳児から貸してもらった大小の木片を流す。大きいのは流れない。小さい木片を流す。

木片を取り食べる真似をする。交代で木片を流す。水をたくさん流すとよく流れる・木が水に浮かぶ・トイが途中

で外れる・つなぎ目で木片がひっかかるなど,試して気付き,直しながら繰り返す。

5歳児

ノノカ「ユイちゃん達がつな

げようって言ようけん」水が

流れるように水路を掘ってい

く。

ミハルは穴にたまった水に触

ったり足を入れたりし「水が

少なくなってきたから水汲ん

できてくれる?」と周りに

声を掛ける。

ユヒロがノノカに声を掛け,

ノノカがトイから水を流す。

ユヒロが作った団子をトイの

上に置く。あっという間に

崩れた団子。

ノノカ「消えた!」ユヒロと

驚いた顔を見合わせる。砂で トイにトンネルを作ることを繰り返し試みる。

トモカが家から木片とトレーを持ってくる。

トシキ「貸して」「いいよ」タクミがパイプを持っ

てきてつないでいく。

トシキ「はい,タクミくん」バケツに水を汲んで

くる。

ユウキ「こうやったら?」ハルト「合体したら?」

色々なパイプをどんどんつなげる。

水を汲んできたタクミ「はいはい,行きますよ」

と流す。リュウタも続く。

T「あっ,漏れてる!」

タクミがトイとパイプのつなぎ目に木片を置き砂

で埋め水漏れを止めようとする。

リュウタ「行きますよ」また水漏れ。

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タクミは砂で木片を固め直そうとする。見ていた ミチオも一緒に手で押さえ固めようとする。

リュウタが流す。また漏れ出す。

ハルト「もっと埋めたら?」隣で川作りをしてい たトモカが気付き「これだったらどう?」と木片 を差し出す。

トイの下に木片を置く。

「あっ止まった!」

ハルト「どこにつなげていく?次は」水を流す度 にグラグラと傾くパイプに気付いたトモカ。木片 3つを今度

はパイプの下に積んで調整。

「トモちゃん,すごい」とタクミ。 ケイトの川までつながる。 ミハル・アオイが作っていた川はモモ川と名付

けられる。 ユイ達が作っていた山とトンネル,イブキ達が作っていた川へと,次々とつながっていった。

<事例・降園前の5歳児の保育室で> <指導内容>

「川を作って遊んで楽しかった。モモ川って言 降園前の短い時間だが,楽しかったことや出来

う名前にしたんよ」「つなげて長~い川 事を伝え合う場と位置付け,話し合いをもつ。

になったよ」「うん,水の迷路!」 ・発見したことや気付いたこと,驚いたことなど,

T「パイプから水が漏れるって言ってたけど, 次々と話す子どもたちを受け止めながら,その場

どうなったん?」「トモちゃんが持ってきて にいた子どもたちには,その時の気持ちを再度共

くれたカマボコの板を置いたんよ」 有できるように,周りの友達にも知らせることが

T「考えて持ってきてくれたんやね」「砂が できるようにと,言葉をはさんでいく。

水に溶けたんよ」「お団子を置いたら,すっ ・次の遊びに意欲をもち,つながっていくように

と溶けた」「そう,水を止めようと思っても, と話を進める。

砂では溶けて水が漏れたんよ」

<本時のねらい>

・友達と思いを出し合う中で,試したり工夫したりしながら遊びを楽しむ。

<考察>

5歳児の多くは,前日の思いをつなげて今日の遊びを始めた。昨日の降園前の話し合いから,目的

をもって素材を用意してきた子どもも多くいた。同じ砂場での遊びが始まり,気の合う友達同士で集

まって,そのグループで思いを出し合いイメージを共有し合って楽しむ姿が見られていた。ところが,

時間が経つにつれそのグループ同士がつながり始めた。言葉による伝え合いからイメージがつながっ

ていったのではないかと思われる。気持ちがつながり遊びがつながっていき,遊びがつながり気持ち

がつながっていったのでないだろうか。

また,共有したイメージの中で目的を達成するため,考え,試したり工夫したりする姿や気付いて

いく姿が多くの場面で見られた。つなげたパイプとトイに段差があって水が思ったように流れないこ

とに気付いたトモカは,トイの下に木片3つを置くことを思い付いた。そのことを周りにいた友達や

教師が認め,体験を共有することができた。昨年4歳児の時の遊びや生活,6月の一年生との砂での

遊び,前日の話し合いや家に帰ってからの思い,そして本時の遊び,様々な体験が積み重ねっていっ

ていることを実感した5歳児の事例であった。

4歳児は同じ場にいたが,4歳児だけのグループで自分たちの遊びを楽しんでいた。うまくいかな

いといろいろな方法を考え試し,何度も何度も挑戦していた。教師は根気よく見守っていたが,提案

する時を見計らってカゴの提示をする。そのことをきっかけに「流しそうめん」という遊びが続き,

そのおもしろさをどの子もが感じていった。4歳児では,5歳児に比べ経験が少ないことから,様子

を見ながらの具体的な方法の提示やアイディアの提供は必要なのでないか。今回のようなうまくいか

ない体験やその後の成功体験は,ため込みにつながっていくのでないか。また,すぐ横で遊んでいる

5歳児の会話や遊びの様子を,一緒に遊んでいるのではないが見聞きしながら学んでいることも分か

る。

6月の頃は,自分の思いを出し合うことから,ぶつかり合いも多く言い合う場面もあったが,9月

の今は,5歳児は5歳児なりに,4歳児は4歳児なりに,友達の考えを受け入れて試したり工夫した

りする姿が見られる。自分の思いや考えと違う友達の行動も,すぐに否定せず認めようとしている。

友達同士や教師との信頼関係のうえに今の姿があることを実感する。言葉で伝え合っての友達との関

係が,一年間のサイクルの中で,行きつ戻りつしながら緩やかに育っていき,らせん状に,一段階上

がったところから次の1年間の育ちがまた緩やかに続いていくのではないだろうか。今後も実践の中

から考えていきたい。

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③小学校での取り組み

ⅰ「伝え合う」喜びが感じられる学校での生活

まず,教師が受容的態度で聞き,共感したり賞賛したりすることで,入学当初の不安を払うとと

もに教師と子どもとの信頼関係を築くよう努め,子どもたちが安心して小学校生活が送れるよう配

慮している。入学当初の帰りの会では,幼稚園での帰りの会を受け,その日一日を振り返り,「楽し

かったこと」「うれしかったこと」を話すようにしている。「体育の時間に遊具で遊んで楽しかった

よ」「消しゴムがなくて困っていたら,○○さんが拾ってくれたのでうれしかった」「○○くんが遊

ぼうと誘ってくれた」等,自分の思いを素直に発言したり,友だちの思いを受け止めたりすること

で,互いに認め合い,友だち同士の関係を深めるようにしている。

次の段階では,「今日のきらりさん」として,友だちの良い行いやがんばりを互いに紹介し合うよ

うにしている。友だちや教師からの賞賛は,子どもたちが学校生活への自信を持つことができるた

めの励みとなっている。

また,5月から日直の仕事として,朝の会・帰りの司会を全員が順番にしている。幼稚園の頃は

担任の先生がしていた司会をできるということで,子どもたちは大はりきりでその日を待っている。

友だちと協力して司会をすることは,人前で話すことへの抵抗をなくし,中には,母親を相手に,

家で練習してくる子もいると聞いている。また,司会をすることができたという成功体験が子ども

たちの自信にもつながっている。

ⅱ 「伝え合う力」

小学校においては,「伝え合う力」について学習指導要領「国語科」の中で明確に位置づけられて

いるように,「人間と人間との関係の中で,互いの立場や考えを尊重し,言語を通して適切に表現し

たり正確に理解したりする」力である。幼稚園での「言葉の育ち」をふまえ,段階的に言葉で「伝

え合う」力を育むことができるよう配慮して指導にあたっている。

ア 「聞き方名人」「発表名人」

入学当初の子どもたちは,緊張感をもって授業に臨んでいる。そこで,担任は導入の時間を長く

設定し,具体物を使ったり視覚に訴える教材を工

夫したり,幼稚園で習った手遊びなどを取り入れ

たりして,緊張をほぐすことから始めている。「ど

んな勉強が始まるのかな」「先生はどんなことを

話すのかな」と期待感をもって学習が始められる

ようにすることで,主体的に「聞く」ことのでき

る子が増えてきている。また,聞く態度がよい子

を見つけ「~さんの聞き方はとてもいいね。聞き

方名人だね」とほめ全体に広がるようにしている。

発言する際も,「はい~です」のように,上手

に言えたときには「発表名人」として積極的にほ

めるようにしている。

イ ことば集め

「話す」ことへの抵抗をなくすために,4月・5月は,国語科の中でひらがなを一文字習う毎に,

「ことば集め」をしている。「あ」の書き順を学習した後,「『あ』のつく言葉を探そう」と教師が

呼びかけると,子どもたちはこれまでの生活経験から「あり」「あし」「あじさい」・・・と,口々

に知っている言葉を挙げていく。「ぼくは,こんな言葉を知っているよ」「みんなに教えたいな」と

いう子どもたち一人一人の思いを,教師がしっかりと受け止め,クラス全体に広げている。

N さんは読書好きで知識は多いが,おとなしい性格のため入学当初は教師の問いかけにも反応は

なく,なかなか発言できなかった。しかし,「ことば集め」の時になると目を輝かせながらたくさん

の言葉を発表し,友だちに認められたことをきっかけに,次第に自信を持って発表できるようにな

ってきた。

ⅲ 人権教育の視点から

道徳の時間での学習や人権問題学習においては,自分の気付いたこと,感じたことや思ったこと

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等の初発の感想を大切にしつつ,学習を進めている。登場人物を中心に他者の心情を読み取ったり,

様々な場面を想定しての自分の思いを素直に伝えたり,友だちの思いをしっかりと聞いて受け止め

るたりすることのできる子どもを育てるため,幼稚園での実体験を生かしながら次のような学習を

展開した。

ア「ふわふわことばがいっぱい」(5月)

聞いた人の心が温かくなるような言葉を集め,言葉によって

相手がうれしくなったり悲しくなったりすることを知るととも

に,相手の立場を考えて言葉を大切に使おうとする態度を育て

ることを目標に,授業を行った。入学して間もないこともあり,

身近なエピソードを元に自分の体験を重ね合わせながら考るこ

とができるようにした。子どもたちは,友だちからの言葉で心

が温かくなり,力がわいてくることに気付くことができた。さ

らに,子どもたちが集めた「ふわふわことば」を,子どもたち

がいつも目にすることができるよう教室に掲示した。この授業を通し,友だちに進んで優しい言葉

をかけようとする児童が増えてきた。

イ「こんなとき どうする」(6月)

友だちとの関わり方について,学級であった事例を元に,友

だちが困っている時どんな言葉をかければよいか,役割演技を

通して考えた。友だちから優しい言葉をかけてもらって「うれ

しかった」「心がぽかぽかした」「自分もお返しに優しい言葉を

かけたい」などの感想が出た。

このような人権問題学習の取り組みを通し,相手を思いやり,

言葉を通して友だちと仲良くしていこうという気持ちが高まり

つつある。

5 合同活動におけるカンファレンスの重視

(1)合同活動への取り組み①合同活動の見直し

1年目には,これまで実施していた合同活動を,担当者間の話し合いをより密にしながら行った。

それまでは実施することのみに主眼が置かれがちであったが,活動のねらいや方法について子ども

の姿を出し合いながら一歩踏み込んだ協議がなされるようになった。年度末には,実施時期や場所,

活動内容やねらいを明確にしながら検討し,年間計画を作成した。各幼小では,幼稚園と小学校の

距離や規模,子どもの実態,これまでの取り組みの独自性を踏まえながら,互恵性のある合同活動

の実現を目指して取り組んだ。年間計画を見直すことで,新しい活動内容や方法,活動の工夫を取

り入れた幼小も多い。回数をこなすことが大事なのではないとの考えから活動を精選したり,隣接

する幼小では,日常的な行き来や休み時間の交流,学級や子どもの生活からうまれてきた計画には

ない活動もみられるようになった。合同活動の計画についても,指導案を共通の1枚にすることで

指導する側の意識の共有が図れるようにしたり,書き込みながら相談できる簡単なシートを作成し

たりすることで,充実した活動を無理なく続けられるよう工夫した。

②合同活動カンファレンスから

合同活動の事前事後に行うカンファレンスは,幼稚園教育と小学校教育に対する相互理解を深め

幼小の教師間の段差を縮めるのに,非常に有効であった。カンファレンスを行う保育室や教室の環

境の違いを知ることからはじまり,教師間のつながりができていくにしたがい,一人一人の子ども

の様子や活動内容についての話し合いが本音でできるようになっていった。しかし,具体的な子ど

もの姿とその見取り,そこに関わる教師の指導方法の違いは,当初,幼小間でお互いに違和感をも

つものも多かった。回数を重ねるごとに,違いを理解し,それぞれの良さをどう生かしていくか,

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子どもの姿をもとに話し合うことができるようになっていった。

(2)合同活動の見直しと充実①南幼稚園・小学校の合同活動

園児数200名を超える南幼稚園では,これ

までも4歳児と5歳児とでペアを組み,互いに

気遣ったり世話をしたりすることで,自分の居

場所や安心感をもつことができる生活を大事に

してきた。1年目に合同活動に取り組む際にも,

この幼稚園での活動の延長と捉え,ペア活動を

核に進めることにした。ペア活動を通して,相

手のことを考えながら関わったり,友達のよさ

を認め合ったりする気持ちが育まれるだろう。

また,園児も児童も共に活動する相手を意識し

やすく,活動にも主体的に取り組めるだろうと

考えた。

活動しやすいように,まず幼小あわせて18

人程度のグループを12作り,その中でペアを

作った。このペアは1年間固定とした。1年目

は出席番号や身長をもとに,機械的にペア作り

を行ったが,2年目はカンファレンスによる情

報交換を踏まえ,園児・児童の特性も考慮した。

このペア活動を核に次の3点に留意して合同

活動を展開していった。

ⅰ 幼小の教師で,共に子どもたちを育てるという意識をもって行う。

ⅱ 細かい情報交換をすることにより,一人一人の子どもの成長を見守り,

その時期や場面に応じた関わりをする。

ⅲ それぞれの発達段階に応じた指導,支援を考える。

上記の年間計画においては,育ちのつながりや見通しをもった指導を展開できるように,幼小互

いの教育課程に沿いながら無理のない活動にすることを確認し,精選を図った。

個々の合同活動については,事前に何度も話し合うとともに,事後には活動中の言動や感想を持

ち寄り,成果と課題について省察していった。

②合同活動の実際

ⅰ 合同活動「水遊び」

子 ど も の 姿 教師の見取りと関わり

・交流活動前日,ペアの子を覚えているか確認 ・幼稚園の友達や先生に会えることを大変楽

したところ,ほとんどの児童が覚えていた。 しみにしている。合同活動への期待感が膨

数日前から名簿で確認していた児童もいた。 らんでいる。プールでは,すべらないよう

「明日,幼稚園のみんなと会えるのが楽しみ にゆっくり歩くこと,シャワーのときにも

です。」 手をつないであげること,

「ペアの○○ちゃんが怖 並ぶ場所を教えてあげるこ

がらないか,心配で となどについて確かめた。

す。」と発表していた。

・1年生の体育の時間にプ

ールに入ったときには,

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大きいプールやシャワーの勢い,冷たさに泣

いて立ちすくんでしまった子が数人いた。と

ころが,合同活動では,泣くことなく活動で

きた。

・「ここのシャワーは,下向いとったら天国シ ・自分が年上であるという自覚をもつと同時

ャワーやけんな。」 に,園児を思いやる心が育っていると感じ

と言って,園児と手をつないで一緒にシャワ られる。

ーを浴びていた。 ・園児の立場に立って考え,不安感を取り除

・「(幼稚園の子が)プールのシャワーで泣かん いてあげようという優しさが見える。

かって,えらいなと思いました。」 ・実は,自分も怖かったのだろう。しかし,

・「(自由遊びの)途中で○○くんと離れてしま 今日は頑張って泣かなかった。

ったので,今度は離れないように気をつけま ・自分の行動を客観的に振り返ることができ

す。」 ている。

・交流活動においてペアが休んでいた児童は,

「○○くんがいなくてさびしかった。次は一 ・ペアと一緒に楽しもうと考えていたので,

緒に遊びたいな。」 楽しみが半減してしまったのだろう。1年

と感想を書いていた。 生なりに責任感をもって活動に臨めていた

・活動後,どの子も活発に発表できた。 ようだ。

「シャワーが怖かった。」 ・活動に満足したと思われ,伝えたい思いが

「シャワーがおもしろかった。」 溢れている。ペアの相手の名前を出して感

「○○ちゃんと一緒に泳いだのが,楽しかっ 想を言える子も多く,自分のパートナーと

た。」 楽しみを共有できていることを喜びに感じ

「1年生の○○ちゃんが優しかった。」 ていると考えられる。

「水中ウォーキング,からだじゃんけんが楽

しかった。」

「自由遊びが楽しかった。」

「また一緒にプールで遊びたい。」

「幼稚園にも,また来てほしい。」

【考 察】

プールの周りにある花の水やりをしている時に,「幼稚園のプールは小さいなあ。」「この間,

小学校のプールは大きくて楽しかったよ。」「今度は〇〇さんたちが行くなあ。一緒に遊ぼうな。」

と4歳児と5歳児のペアの会話が聞こえた。来年は自分たちが小学生になり,5歳児と一緒に

経験するんだと期待を脹らませている様子であった。

小学校の体育の時間には,シャワーが苦手で泣いていた子たちも,ペアの園児と手をつなぎ,

冷たいシャワーを浴びていた。その様子から,自分が年上であると自覚し,園児を思いやる心

が生まれたと共に,苦手なことも頑張ろうとする気持ちが育ってきたと思われた。また,泣か

ずにシャワーを浴びることができたという体験が,その後の体育の授業においても,できると

いう自信につながった。

ⅱ 合同活動「合同運動会」その後

幼 児 の 姿 教師の見取りと関わり

・運動会に向け1年生の玉入れを応援すること ・昨年の5歳児の姿を覚えており,今年は自

についてクラスで話し合う。 分がすることを楽しみにしている様子であ

「知っとう,知っとう。」と口々に言う。 る。どんな応援がいいか子どもたちからい

「どんな応援が1年生喜んでくれるかな。」 ろいろな方法が出るのを聞きたくて,どん

「野球の応援テレビで見たことある。」 どん発想が膨らむように,いろいろなスポ

「バレーの見た。なんかたたっきょったよ。」 ーツの応援の真似をしたりしながら,意欲

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「ヴォルティスの(応援)行ったことある。」 をもたせるようにした。

「応援の言葉は何て言う。」 1年生(ペア)を力いっぱい応援できる

「『ファイト,ファイト。』がええ。」 方法を一緒に考えながら,自分たちの応援

「がんばれ,がんばれ,がんばれ。」 で玉入れが盛り上がることや,1年生の意

など次々言葉を出し合った。 欲が高まるようになるだろうと思われる。

話し合いの結果, 「がんばってほしい。」「勝ってほしい。」

「フレー,フレー,3組。がんばれ,3組, という思いを言葉やパフォーマンスで伝え

いけ,いけ,3組。」 ることの一環であると捉えられる。

に決まり,練習を始めた。

・ある日,園庭でリレーの練習をしていると, ・自分たちが対組(※注)に応援してもらっ

対組の4歳児がテラス たことにより,1年生

に出て来ていて応援し の気持ちにも気づけた

てくれた。帰りの会で, ようである。応援して

「はずかしかったけど, もらうことで嬉しいと

嬉しかった。」 感じたり,勝てるとい

「またしてくれるかな。」 う自信が持てたりする

「勝つかもな。」 という経験をしたよう

という言葉も聞かれた。 である。

※注…4歳児と5歳児のペアのこと。

【考 察】

昨年の運動会での5歳児が応援している様子を覚えている子も多くいた。そこで,幼稚園の

年長時代とは違う小学生になった1年生をより身近に感じ,親しみをもって応援しようとする

ことができた。そして,勝ってほしいという思いを言葉にして伝えられるよう話し合い,言葉

(掛け声)を選んだことも,一生懸命応援する姿につながった。

また,4歳児対組に自分たちのリレーの練習を応援してもらい,応援される側の気持ちも味

わうことができ「嬉しかった。」という言葉で表現できていた。4歳児との関わりの中で自分た

ちが1年生になったときの姿が見通せたことは,5歳児担任だけでなく,4歳児担任教師も小

学校を見通したつながりのある保育を考えていくということが定着したと思われる。

さらに,「運動会の応援ありがとう。」と1年生に喜んでもらったという経験は,12月に行

われる小学校のマラソン大会を応援したいという意識へとつながっていき,子どもたちの中か

ら自発的に工夫した旗を作る姿が見られ,みんなで応援する活動へと発展した。5歳児も昨年

4歳児の時に応援した経験はあるが,今年は1年生ペアを必死に探し「がんばれー。」と元気よ

く応援する姿や,ペアを見つけて嬉しそうに「〇〇さんがおった。」と喜ぶ姿が見られた。多く

の1年生が1キロメートル近く走り,苦しくなってきた時に,園児の応援を受けて励まされ,

再び元気よく走り出すことができた。

そして小学生を応援することに心地よさを感じた子どもたちは,1年生だけでなく,次に走

ってきた2年生,3年生まで自分で作った旗が

ボロボロになるまで力一杯応援した。

1年生のマラソン後の感想から,「○○ちゃん

が応援してくれて嬉しかった。」「○○ちゃんを

捜したよ。」「また元気が出たよ。」「みんなが応

援してくれたから,最後まで走れた。」など,園

児の応援が1年生の頑張りを後押ししたことも

わかった。

このような一連の合同活動から,仲間を応援

することで,仲間を支える喜びや活動の力にな

ることを実感することができた。

ペアによる合同活動の経験を重ねることで,子どもたちが1年後の自分や1年前の自分の姿を実

感できたように感じる。

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5歳児にとっては,小学生になった自分をイメージすることで,小学校生活をより身近に感じ,

安心感や自信,意欲や期待をもって入学していくことができるだろう。「来年はペアになる5歳児

にこんなことを教えてあげたい」といった思いが,主体的に小学校生活を送ることにもつながって

いくと考える。1年生にとっても,5歳児との活動が自覚や責任感を生み,自分自身の成長の実感

につながっている。子どもたち自身がつながりと成長を実感できることにペア活動の意味があった

と考えている。

今後は,ペア活動を継続するとともに,活動内容においても互恵性を意識しながら,充実を図っ

ていきたいと考えている。

(3)カンファレンスによる教師の意識の変化①東幼稚園・小学校の合同活動「あきとあそぼう」から

次のようなねらいと活動で合同活動「あきとあそぼう」を計画した。

(活動のねらい)

・身近な秋の自然物を使って工夫しながら作ったり遊んだりすることを楽しむ。(幼)

・秋の自然を利用しておもちゃを作る中で,季節を感じたり,自然の面白さを感じたりしながら

作り方や遊び方を工夫することができる。(小)

・1年生や友達と考えを出し合いながら活動を進めていくことを楽しむ。(幼)

・園児と共におもちゃを作ったり遊んだりする中で,人と関わることの楽しさを感じ,自分自

身の成長に気付くことができる。(小)

(活動の全体計画)

第1次(2時間) あきをさがそう

・南陽神社で一緒に秋探しをする

第2次(6時間) おもちゃで遊ぼう・作ろう

・1年生が作ったおもちゃで遊び,一緒に作りたいものを相談する。

・ 秋の自然物を使って遊んだり遊びに使うものを作ったりする。

②カンファレンスによる教師の意識と活動の変化

第2次の活動の実際とカンファレンスによる活動の変化は次のようなものであった。

【第1回 10月24日】

秋の自然物を使って1年生が作ったおもちゃで遊んだ後,友達やグループで作りたいものを相

談し作っていく。このときのカンファレンスでは,次のような内容が話し合われた。

・体育館という広い場所,大きな段ボールやたくさんの材料があ

るだけで,子どもたちの活動への期待は高まっていたが,作り

たいもののイメージがもてず,活動に入り込めない子どもがみ

られるなど,個々にばらばらな活動となってしまった。

・全体の進行はすべて小学校担任が行い,幼稚園担任は個々の活

動に入り込んでいた。教師の役割分担が十分にできておらず,

具体的な関わり方や進め方もちがっていた。

・結果的に全体の活動に対しても個々のグループの活動に対して

も十分な見取りと支援ができなかった。

・ねらいを再確認することで,導入や振り返りの内容を事前に検

討し,どのコーナーで誰がどのように関わっていくか考えて

おく必要がある。活動中の教師同士の情報交換も必要だ。

・材料や用具の準備不足もみられた。子どもの活動を予測し必要

と思われる材料や用具の準備が必要だ。環境が整っていれば,

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自分の必要なものを選ぶことができ,材料からの発想も広がる。

片付けも準備も子どもが主体となってできるのではないか。

・それぞれがばらばらに活動している。関連した制作物などを教

師が意図的に配置することで,友達の活動への気付きや遊びの

コラボ,全体のまとまりが生まれ ,活動が豊かになっていくの

ではないか。

第1回合同活動のカンファレンスから,第2回目に向けて次のことを決めた。

○遊びのコラボをねらった環境づくり

○進行上の教師の役割分担

○遊びのコーナーごとの役割分担

○振り返りの時間を設けること

○一人一人の動きと内面の見取りをする

【第2回 10月28日】

カンファレンスを踏まえ,幼児の動線を意識した材料や道具の配置,子ども同士をつなぐ支援,

教師同士の連携を意識して取り組んだ。どんぐり落としの場ではつぎのような姿があった。

・5歳児Aさんが,ペットボトルを段ボールの壁にガムテープで

貼り,ドングリ落としを作ろうとしていた。ガムテープが何度

もはがれ四苦八苦しているのを見ていた1年生Fさんが,Aさ

んが貼りやすいようにペットボトルを押さえ補助する場面があ

った。

・やがて,興味をもった1年生が仲間入りし,「今度はこっちに

したらいいんとちゃう。」「うまくできとるなあ。」とアドバイ

スしたり共感したりする姿がみられるようになった。教師は,

そんな姿を受け止め,自然な関わりが広がっていくように,

仲立ちとなって子ども同士をつなぐ援助に徹した。

・どんぐりの落ち方を5歳児と1年生が一緒になって試し,落ち

る角度を考えたり,落とすどんぐりの大きさに合わせたりしな

がら作っていった。

・一つのペットボトから始まったどんぐり落としは,いくつもの

ペットボトルを迷路のように組み合わせた。

〈カンファレンスから〉

・5歳児のしている遊びに1年生が自然な形で仲間入りし,思

ったことを伝え合う姿が見られた。小学校担任は,1年生が

教えられるようにとの意識が強かったが,幼児と1年生が互

いに影響を与えながら遊びを進めていくことを実感した。

・教師同士が互いに目的や動きのイメージを共有し,役割分担

をし,活動中も情報交換しながら進めたことで,子どもたち

のやる気や発想を引き出すことができたのではないかと思う。

・活動が響き合うような配置や材料の準備など,環境を整えた

ことで,ダイナミックな活動へとつながったように思う。

・導入や振り返りも幼小の教員が連携し,子どもの活動を取り

上げ広げたことが,幼児と児童のつながりや活動の発展のき

っかけとなったように感じた。

・1回目に比べ,子どもの活動が具体的に見とれるようになっ

たのは,何を見取り援助するかがはっきりしてきたからだと

どんぐりころがし①

どんぐりころがし③

どんぐりころがし②

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・5歳児の遊びを発展させていく姿が1年生への刺激となっている。一緒に活動することで相手の主体性が引き出されている。これこそ互恵性のある活動ではないだろうか。

思う。教師も子どもの発想を共に楽しむことができた。

2回目の活動に手応えを感じた子どもたちは,3回目の活動に向けて意欲的に動き出した。

友達と話し合い,活動のイメージを膨らませ,仕掛けを考えたり,チケットを作ったりした。

教師は,カンファレンスの中でグループの配置を考え,グループ同士でのコラボや関わり

が深まるように配慮した。また,3回目の活動後,4歳児や2年生を招待する計画を伝え,

見通しをもって活動に取り組めるようにした。

③教師の意識の変化

合同活動を通して,幼小の違いを実感をもって理解することができた。

小学校は,学習の到達目標があり,そこに向けて授業を進めるが,幼稚園は,子ども達の育ちに

今何が必要であるかを考え,適切な経験ができるよう遊びを投げかけたり,幼児とともに遊びに必

要な物を準備したりする等の環境構成を行っている。その中で教師は,学びを見取ったり,さらに

学びを深めていくための声かけや援助を行ったりしている。幼稚園は,このように時間と空間を十

分に整えているが,小学校は時間の制約が多い。そのため,小学校では全体を一斉に指導すること

を考えがちであるが,幼稚園では遊びの中の育ちを見取り,そこから何を育てつないでいくかを考

えながら保育を行う。

このような指導方法の違いは幼稚園と小学校の文化の違いでもある。本合同活動において,幼小

の教師間にはとまどいや不安,葛藤があり,お互いの教育への理解と信頼につながっていく過程が

あった。第1回事前のカンファレンスでは,互いの教育方針や指導方法の主張になってしまい,一

つの目標に向かうという話し合いにはならなかった。小学校で実施する時は,小学校主導で進めて

いかねばと考え,小学校側が活動の提案を行った,幼稚園は提案された活動そのものに不安があっ

たが,遠慮もあり意思疎通できなかった。このような悶々とした状況を打破することができたのは,

育てたい子どもの姿に向かうには何が大切なのかということを確認し合うことができ,共通の目的

意識が持てたからである。その後のカンファレンスでは,共通の目的の達成に向け,遠慮すること

なく意見や知恵を出し合った。

この合同活動では,幼小の違いとそれぞれの教師の優れた点を認め合いながら,カンファレンス

を重ねていくことが,教師の意識の変容とチームワークの向上につながった。それは,幼稚園教育

から小学校教育に滑らかに接続するために最も大切なことであると実感している。

・お化け屋敷のグループは,この日に向けて友達と話し合いお客さんを驚かすためのしかけを考えた。「貞子」のイメージを共有し,衣装や井戸などの準備を進めた。当日は,チケットを配る係,入り口でチケットをもらう係,井戸の中の貞子にお客さんがきたことを知らせる係などを相談して決めた。・お化け屋敷は大盛況であった。・5歳児が貞子やおばけに変装しているのをみて,1年生も「お化けになりたいのでカラーポリ袋をください。」と言ってきた。ビニール袋を切って衣装を作りだした。5歳児の姿がヒントとなり,自分たちもしたいという思いを実現しようとしている

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6 接続カリキュラム「藍住モデル」の作成

(1)接続カリキュラム「藍住モデル」について「段差」や「育てたい子どもの姿」についての話し合い,合同活動の事前事後のカンファレンス

等を通じて,幼稚園から小学校へ何をつなぐのか少しずつ明確になっていった。そこで,5歳児後

半から1年生前半までを1枚の紙面に表し,接続カリキュラムとした。カリキュラムの視点や項目,

接続期の始期と終期は,各幼・小の子どもの実態やねらいによって独自に考えた。何をつなぐのか

を明確にしつつ,各幼小の独自性を生かしたこの接続カリキュラムを「藍住モデル」とした。

作成過程において,接続期に何を育てつなぐべきかといった「接続カリキュラム」に対する考え

方,教育課程や指導計画の在り方,入学当初の指導の工夫や合同活動のもつ意味が練られ,共有さ

れていった。

この接続カリキュラムは,まだ完全なものではないが,現段階での研究を集約したものである。

今後,この接続カリキュラムをもとに実践し,小学校での育ちや学びを意識した5歳児後半におけ

る教育課程や指導の工夫や,幼稚園における育ちや学びを意識した入学当初の教育課程や指導の工

夫についての研究を深めていくとともに,実践から「接続カリキュラム」の検証,改善を行ってい

きたい。

(2)各校の接続カリキュラム①北幼稚園・小学校(*p31~参照)

1年目は,幼稚園の就学を見通してのねらいとして,「ア言葉で伝え合うことができる」「イ年長

児としての自覚や自信と,小学校への憧れや期待をもつ」「ウ小学校生活を見通した園生活を送る」

の3点をあげると同時に,段差について考えていった。イ・ウは「子ども自身が段差を感じ,乗り

越えようとすることによって成長する節目と捉え,幼稚園時代にその段差を乗り越える力をできる

だけ付けていく」,アは,「段差を感じることなく積み重ね,身に付けていく力・学びの芽生えから

自覚的な学びへとつなげていく」と捉えた。

活動と内容について,アの項目は幼小共通の育てたい子どもの姿に向けての幼稚園における具体

的方策の中から,「言葉で伝え合いたいと思える直接体験や感動体験」「話を聞くことが楽しいと感

じられる共通体験」「伝え合う喜びを感じられる園での生活」の3つを取り上げ,イ・ウの項目と

ともに,1年目の実践を整理して記入し,カリキュラム作成を行っていった。特に,ウに関しては,

幼小の話し合いの中で共通理解し実践したことや,気付いたことを盛り込んでいった。

小学校では,「言葉で伝え合うことができる」「小学校生活への期待を満たす」「小学校生活への

適応と学習リズムの確立」を入学当初のねらいとし,活動や内容を記入していった。10月から5

月までを実際に並べてみると,幼稚園の活動や内容が小学校のどの活動や内容につながっていくの

か,つなげていくのかが難しく課題として残った。

2年目は,教育課程の「育ちの姿」と「言葉に関するねらい」を示し,再度,見直しを行ってい

った。特に,「ア言葉で伝え合うことができる」の項目では,「自己表現から自己調整や思考する言

葉へ」「音声言語から文字言語へ」ということを意識し,検討を重ねた。今後も,幼稚園の「学び

の芽生え」から小学校の「自覚的な学び」への滑らかな接続という観点から,実践をもとに検証し

ていきたい。

②南幼稚園・小学校(*p32~参照)

接続カリキュラムを作成するにあたっては,5歳児後半から1年生始めを接続期と捉え,これま

でよりさらに幼小の連携を進めた接続カリキュラムを作成することにした。

5歳児の3つの柱を「①言葉で伝え合うことができる」「②主体的な経験や活動をする」「③小学

校に見通しをもった生活をする」と設定した。それを受け継ぐ1年生では「①言葉で伝え合うこと

ができる」ことを「コミュニケーション力の基礎を養う」とし,深化・定着を図ろうと考えた。「②

主体的な経験や活動をする」については,「②意欲的に学ぶ」ことへ,「③小学校に見通しをもった

生活をする」は,「学校生活への適応と学習リズムを確立する」へとつなぎ,小学生としての生活

の充実を図った。子どもの活動や教師の意識がより把握しやすいものへと検証を続けていきたい。

また,ペア活動を取り入れた合同活動に取り組んできたことで,5歳児には1年生への憧れや小

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学校生活への期待と意欲が感じられるようになった。1年生も5歳児だった自分を思い出して成長

を感じたり,小学生としての自覚や責任感をもって5歳児に接しようとしたりする姿がみられる。

南幼小の重要な取り組みとして,ペア活動を取り入れた合同活動を接続カリキュラムに位置付けた。

③西幼稚園・小学校(*p33~参照)

1年目のアプローチカリキュラムは,幼稚園行事・幼小合同活動・日々の活動(生活・遊び)か

ら,「育てたい子どもの姿」を踏まえ,3つの自立(「学びの自立」「生活上の自立」「精神的な自

立」)を促すアプローチカリキュラムのみを1紙面に作成し,小学校のスタートカリキュラムは1

週間分の時間割に指導内容や配慮事項を書き込むことで作成した。

しかし,学びの基礎力(「生活する力」「関わる力」「学ぶ力」等)の育成が,幼稚園における「聞

く・話すなどのコミュニケーション力の基礎」,小学校における「言語活動の充実」,共通の目標で

ある「コミュニケーション力の育成~ことばで伝え合う力」に深くつながるとともに,3つの自立

にもつながることを踏まえ,学びの基礎力を考慮した接続カリキュラムとして1紙面に表した。

「生活する力」「関わる力」「学ぶ力」と3つの自立との関係を考え,8つの項目で整理した。また,

幼稚園から小学校へとつなぐ指導内容は,教科の枠を外し,幼稚園における教育課程や指導計画と

同じ形で記し,子どものどんな姿をつなぐかを明確にした。

④東幼稚園・小学校(*p34~参照)

1年目は,実践の中から手探りで作成に取り組んだ。しかし,東幼小のテーマである「聞く」「伝

える」「関わる」に焦点が絞れず,幼稚園から小学校へ何をつないでいくかという点も明確にでき

なかった。そこで,「聞く」「話す」「考える」力をカリキュラムの中に位置付けた。5歳児後半に

は,小学校教育を見通して「人と関わる力」の育成・向上を目的とし,豊かな体験の中で自発性・

主体性を育んでいこうと考えた。「人と関わる力」は,生活の基盤となる。「聞く力」「話す力」「考

える力」をこの中に位置付け,「人と関わる中で,聞く・話す・考える言葉の力を育成する幼小接

続カリキュラム」とした。

5歳児にとって仲間は大切な存在で,仲間との協同の学びをよりよく実現し,小学校での学びに

つなぐことが大切だと考えた。相手に自分の気持ちや考えを言葉で伝えたり,相手の気持ちや考え

を受け止めたりする「人と関わる力」が協同的な学びを支える。思考の芽生えとなる「考える力」

を遊びや生活の中で身に付けていくことが,豊かな感性や表現力,探究心や論理的思考となり小学

校での学びにつながっていくと考えている。

Ⅵ 研究の成果と課題

1 研究成果

(1)「段差」についての協議から「段差」を踏まえた指導の工夫生活の流れや学び方の変化等による幼小間の段差は,不安や緊張を生むが,乗り越えれば成長

を実感できる。子どもが乗り越えられる段差は子どもの成長にとって必要な段差であり,乗り越

えられない段差に対する配慮が必要であることを共通理解した。不安の軽減や小学校生活への意

欲の面から入学当初の指導を見直し,授業時間の弾力的運用や幼稚園での生活を踏まえた指導,

学習に対する期待感を大切にした授業展開,個人差への対応等を行った。家庭との連携を図るこ

とで,より効果をあげた。

(2)「育てたい子どもの姿」の共有と見通しをもった指導協議の中で気付いた「伝え合う力」の捉えや指導方法の違いを踏まえ,「伝え合う喜びが感じら

れる生活」を幼小でつないだ。幼稚園では「言葉で伝えたいと思える直接体験や感動体験」を大

事にし,言葉の育ちを見取り支えることを考えた。小学校では幼稚園での育ちを受け,体験を大

切にした指導や教材の工夫,一人一人の学習経験に応じたきめ細かい指導を行い,成就感や達成

感を味わうことができるようにしながら,学習指導要領に示されたねらいと内容を達成できるよ

う考えた。「伝え合う力」の育ちに加え,児童の学習に対する安心感や期待感が感じられるように

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なった。

(3)合同活動カンファレンスによる教師の意識の変化と活動の充実年間計画の見直し,指導案や見取りシートの工夫,カンファレンスの充実により,互恵性のあ

る合同活動になるように取り組んできた。事後のカンファレンスでは,活動の見取りや今後の指

導に関する幼小の考え方の違いに気付き,互いに違和感を覚える場面も多かった。「子どもにとっ

てどうか」をよりどころに話し合い,回を重ねることで,互いの指導の良さを引き出しながら活

動を充実させ,理解も深まっていった。活動中の子どもの学びも豊かになり,それを見取る教師

の目も確かになっていった。

(4)接続カリキュラム「藍住モデル」の作成「藍住モデル」として,5歳児後半から1年生前半までを一つの表に表した。各幼小で話し合

い,接続期に何を育てつなぐかを明確にしながら作成し,視点や項目は子どもの実態やねらいに

よって独自性をもたせた。3つの自立,伝え合う力,関わる力,基本的生活習慣,意欲や期待等

をつなぐ項目としている。「段差」の捉えや育てたい子どもの姿,合同活動も織り込み,滑らかな

接続に関する包括的なカリキュラムとなった。今後,実践と検証を重ねていく必要はあるが,2

年間の取り組みの成果であり,今後の取り組みの基盤になると考える。

2 課題

(1)「接続カリキュラム」を基にした接続期の実践と検証,改善の積み重ね「学びの芽生え」を育て「自覚的な学び」へとつなぐ教育課程や指導方法の在り方について4

つの研究の柱をたて取り組んできたが,「学びの芽生え」と「自覚的な学び」を具体的な子どもの

姿から明確にし教育課程に生かしていくには,実践・検証・改善の更なる積み重ねが必要である。

2年間の取り組みの集約である接続カリキュラムを基に,研究の深化を図っていきたい。

(2)全ての教職員の発達や学びの連続性に対する理解と,それを踏まえた指導力の向上「育てたい子どもの姿」を設定し,全ての学年での取り組みを進めたが,5歳児と1年生を中

心とした実践となった。幼小8年間の子どもの発達や学びを支えていくために,幼稚園教育と小

学校教育に対する理解に加え,子どもの発達の連続性を踏まえた指導力の向上が必要である。

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〔接続カリキュラム(藍住北幼稚園・小学校)〕

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〔接続カリキュラム(藍住南幼稚園・小学校)〕

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〔接続カリキュラム(藍住西幼稚園・小学校)〕

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〔接続カリキュラム(藍住東幼稚園・小学校)〕