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水曜2西2-302 米山 茂美 経営戦略 (2013)

経営戦略 (2013) - yoneyama.net · 経営学の中心的な科目の1つである「経営戦略」に ついての主要な概念や理論を体系的に理解すること 戦略的に考えるとはどういうことなのか?という

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水曜2限 西2-302

米山 茂美

経営戦略 (2013)

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❖経営学の中心的な科目の1つである「経営戦略」に

ついての主要な概念や理論を体系的に理解すること

❖戦略的に考えるとはどういうことなのか?という

「戦略思考」を身につけること

❖様々な企業の事例に関心を持ち、ゼミ等で行う研

究上の問題意識を高めること

この講義で学ぶこと

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❖第1学期

♦ 戦略立案の基礎となる外部環境や自社資源・能力の分析、事業範囲の決定、および企業成長のための基本戦略等について解説します。

❖第2学期

♦ 競争戦略と企業の利益に焦点を当て、さらにビジネスモデル戦略やグローバル戦略等、より発展的な内容について解説します。

※ 講義内容及びスケジュールは、進捗等により変更の可能性

があります。

講義スケジュール

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4 講義スケジュール(1学期)

月日 内容 1 4月10日 ガイダンス、経営戦略の概念と体系

2 4月17日 外部環境分析

3 4月24日 内部資源・能力分析

4 5月1日 外部環境と内部資源・能力の包括的分析

5 5月8日 企業ドメインと事業ドメイン

6 5月15日 製品ライフサイクルと企業成長

7 5月22日 成長戦略の類型

8 5月29日 休講

9 6月5日 市場浸透戦略

10 6月12日 新製品・サービス開発の戦略

11 6月19日 休講

12 6月26日 市場開発の戦略

13 7月3日 多角化戦略と垂直統合戦略

14 7月10日 相補効果と相乗効果

15 7月17日(補講) PPM分析

※変更の可能性があります

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❖学年末試験

❖出席確認の代わりとして、小テストまたはレポート

を課すことがあります

※成績分布の方針

「優」:20%

「良」:40%

「可」:40%

※成績評価は客観的かつ公平に行います。「進級・卒業が

かかっている」等の事情による加点は一切行いません。

成績評価

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❖講義は、パワーポイントで作成した資料に基づいて行います。

❖各回の授業前に各自、以下の方法でダウンロードして用意してください。

1. http://www.yoneyama.net にアクセスする

2. トップページ上方の「講義」をクリックする

3. 経営戦略の欄の「講義資料」をクリックする

4. パスワード 2013strategy を入力する

5. 必要となる授業内容をクリックする

6. pdfファイルで講義資料が表示されるので、印刷して持参する

講義資料のダウンロード

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❖淺羽茂、牛島辰男 『経営戦略をつかむ』第1版、 有斐閣、2010年

❖網倉久永、新宅純二郎 『経営戦略入門』第1版、 日本経済新聞社、2011年

参考文献

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第1回

経営戦略の概念と体系

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❖「戦略」とはどのようなものだと思いますか?

❖皆さんが知っている会社の中で、「この会社は

戦略的だ!」と思うのはどの会社ですか?

それはなぜですか?

経営戦略とは何か?

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❖戦略は、企業だけのものではない

♦ 大学 e.g. 学習院大学の戦略

♦ 野球チーム e.g. シアトル・マリナーズ

♦ 劇団 e.g. 劇団四季

♦ 東京都 e.g. オリンピック誘致

♦ 日本 e.g. 新成長戦略

❖企業を含め、すべての「組織」の有効かつ効率的な運営のためには必ず戦略が必要となる

様々な組織の戦略

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♦ 「環境要因と自社資源との関係の中で、組織のあるべき

姿・進むべき方向性を明らかにし、それを実現するため

のシナリオ(道筋)を設計すること」

経営戦略の概念

戦略

あるべき姿

進むべき方向性

現状

シナリオ

e.g.成長戦略

競争戦略…

自社資源

外部環境

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❖企業のあるべき姿・進むべき方向性の決定

♦ 経営目標

▸ 成長・利益・存続…

♦ 事業領域(ドメイン)

▸ どのような分野で、どんな事業を行うか?

❖あるべき姿を実現するためのシナリオの設計

♦ 成長の戦略

▸ 企業の持つ資源をどのように創造・展開・配分して企業の 持続的な成長を実現していくか?

▹ 新規事業の開発、新製品・サービスの開発、新市場の形成…

♦ 競争の戦略

▸ 企業間の競争にどのように対処し、利益を獲得していけるか?

▹ 競争排他性の設計、競争優位性の設計、競争と協調のバランシング…

♦ 業務分野の戦略

▸ 戦略の実現のために、どのような人を採用・育成し(人事戦略)、どの ように資金を獲得し(財務戦略)、どのような技術を開発・権利化して いくか(研究開発戦略、知財戦略)…

戦略を立てるとは?(経営戦略の構成要素)

目標 (どこに向かって)

領域 (どのような分野で)

打ち手 (何を行うか)

方法 (どのように行うか)

論理

(なぜうまくいくか?)

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❖経営戦略

♦ 全社戦略(企業戦略)

▸ 多角化戦略(新規事業の開発)

▸ M&A戦略

▸ グローバル戦略・・・

♦ 事業戦略

▸ 競争戦略

▸ 新製品・サービス開発戦略

▸ 市場戦略

▸ 提携戦略(協調戦略)・・・

♦ 機能分野別戦略

▸ 財務戦略

▸ 人事戦略

▸ 研究開発戦略

▸ 知財戦略・・・

経営戦略の体系

知財戦略

人事戦略

生産戦略

財務戦略

研究開発戦略

A事業戦略

B事業戦略

C事業戦略

全社戦略

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❖企業のあるべき姿・進むべき方向性の決定

♦ 経営目標 (全社戦略)

▸ 成長・利益・存続…

♦ 事業領域(ドメイン)(全社戦略)

▸ どのような分野で、どんな事業を行うか?

❖あるべき姿を実現するためのシナリオの設計

♦ 成長の戦略 (全社戦略、事業戦略)

▸ 企業の持つ資源をどのように創造・展開・配分して企業の 持続的な成長を実現していくか?

▹ 新規事業の開発、新製品・サービスの開発、新市場の形成…

♦ 競争の戦略 (事業戦略、機能分野別戦略)

▸ 企業間の競争にどのように対処し、利益を獲得していけるか?

▹ 競争排他性の設計、競争優位性の設計、競争と協調のバランシング…

♦ 業務分野の戦略 (機能分野別戦略)

▸ 戦略の実現のために、どのような人を採用・育成し(人事戦略)、どの ように資金を獲得し(財務戦略)、どのような技術を開発・権利化して いくか(研究開発戦略、知財戦略)…

戦略を立てるとは?(経営戦略の構成要素)

目標 (どこに向かって)

領域 (どのような分野で)

打ち手 (何を行うか)

方法 (どのように行うか)

論理

(なぜうまくいくか?)

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戦略

❖「戦略」と「戦術」

♦ 戦略とは「将軍」の術

▸ 将軍は自ら刀や槍を持って直接 敵軍と戦うわけではない。将軍の役目は、戦いの意図を明確にし、 戦う相手の兵士の数はどのくらいか、もし戦うとしたらどの地域を戦場に決めるか、そしてどの様な陣型にし、どの様な戦い方を するかを決める。

▸ 「頭の中」で決めることであるから、目には見えにくい

♦ 戦術とは「兵士」の術

▸ 兵士は刀や槍などの武器をもって直接敵兵と戦う。作戦計画に基づき敵の兵士と技を競う。

▸ 戦術と は目で見えるもの

❖「戦略」と「作戦」と「戦術」と「兵站」

♦ 戦略:「イベントを開催するべきか、いくらの予算をかけて、

どんな成果を求めるか?」

♦ 作戦:「いつ開催するか、どこで開催するか、どんなイベント

にするか、どこで宣伝するか?」

♦ 戦術:「受付のシステムはどうするか、VIPが来た時には誰が

案内するか、講演者の昼食はどうするか?」

♦ 兵站: 講演者集め、会場下見・設営、会場受付スタッフの調達、

来場者向けのネームタグの準備、弁当の手配…

15 「戦略」と「戦術」の違い

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❖日常の事業展開・業務活動の指針

♦ 戦略は、企業が中・長期にわたってどこに、どのように向っていくかがを指し示す道標となり、事業部門や管理部門、そしてそこで働く個々の従業員の思考・行動の枠組みを提供するという役割を持つ

❖組織成員の一体感・凝集性の醸成

♦ 戦略は、企業における従業員の一体感や凝集性を高め、組織的な秩序を生み出す

❖事業活動の評価軸

♦ 戦略として計画した成長戦略や競争戦略のシナリオがしっかり実行されているかどうか、あるいはその戦略シナリオが果たして適切だったのかどうかなど、事業活動を振り返り、評価・改善していくための準拠点となる

❖学習のための仕掛け

♦ 戦略は、事業活動の出発点であると同時に、事業活動から得られる様々な知識や情報を通じて進化していく

♦ 戦略は行動を促し、その行動から学習するための契機となる

企業経営における戦略の役割

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❖ハンガリーの軍隊がアルプス山脈で冬季軍事演習(雪中行軍)をしていた。ある日の夕刻、部隊長である中尉は演習を終えた隊員にベース基地の設営を指令するとともに、数名を明日の演習に備えて偵察に送り出した。

❖ところがそれまで良好だった天候がその直後に崩れた。雪が降り始めたのである。降雪は二日間続いたが、その間、偵察隊は戻ってこなかった。隊長は隊員の遭難を確信し、自分が部下たちを死に追いやったのでないかと思い悩み同じ場所を動かなかった。 しかし、三日目になって、偵察隊は全員無事に帰ってきた。肩を抱いて喜ぶ中尉に、偵察隊長が報告する。

❖ 「われわれは吹雪の中で道に迷い、もう終わりだと思いました。そのとき、隊員の一人がポケットの中に地図をみつけました。そのおかげで冷静になれました。われわれはテントを張って野営し、吹雪に耐え抜きました。それからこの地図を手がかりに帰り道をみつけました。そして、ここにたどり着いたわけです」。

❖ 中尉が「なるほど」と偵察隊の命を救った地図を手にとってじっくりと見ると、驚いたことに、それはアルプス山脈の地図ではなく、ピレネー山脈の地図だった。

アルプス山脈で見つけた地図(K. Weick, 1987)

戦略とは、

「強固な思い込み」

である!

組織成員の凝集性を高め、行動を喚起する

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❖「商品を店内にぎゅうぎゅうに詰め込んで、床から天井まで積み上げられた商品の間をすりぬけるように買い物をする。買い物と言うより宝捜しというべきだろうか。深夜営業は便利だけど・・・」。

❖いまや全国に107店舗、売上高は2330億円、経常利益で130億円を上げるドンキホーテは、ナイトマーケット(深夜市場)を切り開き、「圧縮陳列」「ジャングル売り場」という新しいマーケティング戦略のコンセプトを生み出した。

❖しかし、このような考え方は、創業当時からの構想ではなかった。むしろ、それは「すべてが苦肉の策だった」(安田)。1978年に手持ち資金800万円で杉並区桃井に開いた雑貨屋は、わずか20坪。最初に店舗を借りてしまったために、保証金などで肝心の商品を仕入れる資金がなく、仕方なく激安のバッタ品やサンプル品、廃番品などを仕入れるはめになった。仕入れた商品は、大型ダンボールに積み込まれ、トラックで次々と店に到着する。もちろん、倉庫を借りる余裕などない。だから、すべて狭い店の中に押し込まなければならなかった。通路も商品とダンボールに占拠され、売り場はまるでジャングル状になった。

「ドン・キホーテ」の戦略?(1)

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❖開業当時は、アルバイトを雇う余裕もなかった。営業時間は朝10時から夜10時までの12時間であったが、商品の入れ替えや陳列は閉店後の夜間に1人でやるしかなかった。当然、店の玄関は開けっ放し、店内には煌々と明かりが灯っていた。それを営業中と勘違いした客がふらりと入ってきた。

❖このようなことがきっかけとなって、「あの店はごちゃごちゃとおもちゃ箱をひっくり返したような変わった店で、深夜も営業している」と地元で評判になり、開業数年後には年商2億円という繁盛店になった。

「ドン・キホーテ」の戦略?(2)

戦略とは、学習プロセスである

行動の結果をどのように次につなげるか、事後的解釈能力が戦略の有効性を左右する

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❖経営実務家の「戦略」に対する認識

♦ 経営は「泥臭い」営みであり、計画通りには行かない

▸ どんなに分析してもすべてを見通すことなどできない

♦ 優れた戦略というのも、多くは「後付け」的に意味づけられたものである

▸ 戦略とは結果論ではないのか?

❖仮説としての戦略

♦ 「計画」と「実行」

▸ 計画の緻密さ、正確さ

♦ 「仮説」と「検証」

▸ 行動の結果得られる様々な知識・情報に基づいて、新しい行動の方向性についての「仮説」を立てる。仮説としての戦略は、常に完全なものであるとは限らない

▸ 戦略の実行とは、その仮説の「検証」のプロセスであり、それが新たな「仮説」設定(=戦略策定)のきっかけとなる

▸ 戦略の立案と実行は「仮説作りと検証」のプロセスであり、その繰り返しを通じて戦略の完成度は高まっていく

現実の企業経営と戦略

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❖より確実性の高い戦略(仮説)を立案する能力としての戦略的知識

♦ 「でたらめな」戦略では意味がない

♦ 信頼でき、行動を喚起する戦略の立案のために…

❖実行(検証)の結果を事後的に解釈する能力としての戦略的知識

♦ すべて当初の想定通りには進まない

♦ 結果を解釈し、何が良かったのか、何が悪かったのかを理解して、より適切な戦略を導くために…

経営戦略を学ぶことの意義