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五日熱ノ臨牀的實驗的研究(第1囘 報告) 第1篇 臨牀的研究 八 木 ...ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/4/47037/... · 2017. 4. 14. · 其ノ讀人ハ不明ナルモ恐

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  • 1693

    五日熱 ノ臨牀的實驗的研究(第1囘 報告)

    第1篇  臨 牀 的 研 究

    倉 敷中央病院,内 科(醫 長松 原博士)

    八 木 忠 亮

    内 容 目 次

    第1章  緒論及ビ文獻概觀

    第2章  實驗例

    第1節  患者及ビ其ノ病歴

    第2節  初診時ノ状態及ビ入院後經過ノ一般

    第3節  臨牀的經過各論

    第1項  前驅症

    第2項  熱 型

    第3項  自覺的症候

    第4項  他覺的症候

    イ 一般症候

    ロ 血液所見

    ハ 血清學的及ビ細菌學的所見

    ニ 神經系所見

    ホ 「レン トゲ ン」線所見

    第4節  診 斷

    第5節  豫後及 ビ本症例 ニ於テ施 セシ療法

    第3章  考 按

    第1節  症候總論

    第2節  症候各論

    第3節  合併症

    第4節  流行學的觀 察

    第5節  鑑別診斷

    第6節  豫後及 ビ免疫

    第7節  療 法

    第4章  結 論

    附  文 獻

    第1章  緒 論 及 ビ 文 獻 概 觀

    五 日熱 ハ歐 洲 戰 爭 中 主 トシテ1914年 ヨ リ1915年 ニ亙 ル冬 季 及 ビ1915年 ヨ リ1916年 ニ亙 ル冬 季 ニ於 テ

    歐 洲 戰 場 殊 ニ東 部 戰線(Weissruss1and, Galizien, Wolhynien)ノ 軍 人 ニ流 行 セ ル,發 作 性 ノ發 熱 ヲ伴 ツ獨

    立 ノ疾 患 ニ シテ,獨 逸 陸軍 ニ於 テ ハ1916年1月17日Warschanニ 於 ケル軍 醫 會 議 ニWerner210)氏 ニ ヨ リ

    始 メテ 報 告 セ ヲ レ.同 時 ニHis及Minkowski兩 氏 ノ追 加 ア リテ 以 來,大 ニ世 ノ視 聽 ヲ集 ム ル ニ至 レ リ.

    Werner氏 ハ1915年9月 頃 ヨ リ遭 遇 セル 症例 ニ於 テ,概 ネ5日 ノ週 期 ヲ以 テ繰 リ返 シ來 ル定 型 的 ナ ル熱 發

    作 ア ル ヲ見,之 ヲ五 日熱(Funftagefieber, Febris quintana)ト 命 名 シ, His68)氏 ハ1915年4月 東 部「ブ ロ シ

    ヤ 」ニ於 ケル露 人 俘 虜 収 容 所 ニ於 テ始 メテ 本病 ニ接 シ,其 ノ流 行 地 ノWolhynienニ 因 ミテ,「 ウ オ ル ヒ ニエ

    ン」熱(Wolhynisches Fieber, Febris Wolhynica)ト 稱 セ リ.英 國 陸軍 側 ニ於 テ ハ1915年4月 一 般 ノ注 意

    ヲ喚 起 ス ル ニ至 レ リ ト雖, Herringhum64)氏 ハ 業 ニ1914年10月 ヨ リ1915年10月 ニ至 ル 間 ニ於 テ5名 ノ該

    患 者 ヲ觀 察 セ リ.而 シテ 最 初 ニ之 ガ記 載 ヲ爲 セ シモ ノハGraham54)氏 ニ シテ,次 デHunt and Rankin77)及

    ビRobinson161)氏 等 ノ報 告 トナ リ,何 レモ塹 壕 熱Tiench feverト シテ 發 表 スル ニ及 ビ,獨,英,米 ノ各 國 學

    者 競 ヒ テ 此 ノ疾 病 ノ研 究 ニ努 力 セ リ.

    155

  • 1694  八 木 忠 亮

    其 ノ後 間 モ無 ク獨 逸 側 ニ於 ケルRumpel166-167, Gratzer55), Werner211-221), Korbsch104-105), Hasenbalg62)

    及 ビBrasch15-16)氏 等,英 國 側 ニ於 ケルMcNee, Brunt and Renshaw121-122氏 等 ノ詳 細 ナ ル 發 表 トナ リ.後

    英 國研 究 團及 ビStrong氏 ノ率 ヰ タル 米國 研 究 團 等 ノ報 告 相 踵 ヒデ 世 ニ出 デ,特 ニ1920年Harvey Lecture

    ニ於 ケ ルSwift192)氏 ノ本病 ニ關 ス ル發 表 ハ能 ク其 ノ知見 ヲ綜 説 セ ル モ ノ ト謂 フ可 シ.偶 ,當 時 他 ノ戰 場 及 ビ

    墺 太 利,「 ル ー マ ニ ア」,「マセ ドウ ニ ア」,「メ ソボ タ ミヤ」,北 部 佛 蘭西,「 フラ ンデ ル ン」,伊太 利,英 吉 利,露

    西 亞 ノ諸 國 ニ モ本 症 ノ發 生 ス ル ア リ,爲 ニ益 々一 般 ノ注 意 ヲ喚 起 シ,種 々 ノ異 名 ヲ以 テ 報 告 セ ラ ル ル ニ至 レ

    リ.即 チHis氏 ノ例 ニ做 ヒ流 行地 ノ河 川 名 ヲ採 リシモ ノ ニlkwafieber(Stiefler u. Lehndorf), Lipafieber,

    Massfieber,國 名 ヲ採 リシモ ノ ニRussisches Wechselfieber(Moltrecht), Influenza polonica(Gratzer),

    Polnisches Fieber,本 症 ノ特 徴 ニ基 キ シモ ノニPeriodisches Fieber(Stuhmer), atypisches Ruckfallfieber,

    Schienbeinfieber,流 行 箇 所 ノ關 係 ニ從 ヒ シモ ノ ニSchutzengrabenfieber, Sumpffieber, Sumpfgrippeア リ,

    或 ハ最 初 ノ發 表 者 ノ名 譽 ノ爲 ニ其 ノ名 ヲ採 リWerner-Hissche Krankheit(R〓cha-Lima), His-Wernersche

    Krankheit(Jungmann)ト モ稱 セ ラル,其 ノ他Feb is recurrens quintana(Muller), kankasisches Fieber

    u. s. w.ト 稱 セ ラ ル ル モ ノ モ恐 ラ ク本 病 ニ屬 ス可 キ モ ノナ ラ ン乎.

    抑,本 五 日熱 ノ歐 洲 戰 爭 當時 ニ於 テ初 發 セ ル モ ノ ニ非 ズ シテ,昔 ヨ リ存 在 セ シ モ ノナ ル ハ,次 ノ諸 事實 ニ

    據 リテ 推 知 ス ル ニ難 カ ラズ. Werner216) 氏 ノ爲 セ ル精 密 ナ ル文 獻 考察 ニ據 レバ古 代(Rhazes, Galen, Hippo

    crates)中 古 代(Isengrimus)ニ 於 テ 既 ニ恐 ラ ク五 日 熱 ト同 一 ノ疾 患 ト認 ム可 キ モ ノ ニ就 テ ノ記 述 ア リ.而

    シテGalen u. Hippocrates時 代 ニ於 テ ハ5-6日 ノ週 期 ヲ以 テ 繰 リ返 ス熱 ニ 就 テ記 載 シ,中 古 代 ニ於 テ ハ

    Hosse氏 ノ報 告 ニ ヨ リ 第12世 紀 第2囘 十 字 軍 ノ時 代 ニ端 ヲ發 セル動 物 敍 情 詩Meister Isengrimus内 ニ次

    ノ六 脚 韻 詩"Aut habet aut fingit quintanae f〓igora feb〓is."ア ル ヲ注 意 セ リ。 其 ノ讀人 ハ 不 明 ナ ル モ恐

    ラ ク「ラ イ ン」地 方 ノ住 民 ラ シキ所 ヨ リ ミ レバ,當 時該 地 方 ニ流 行 セ シ事 ア ル ヲ想 像 セ シム ル ト同 時 ニ,是 レ

    實 ニ五 日熱 ニ關 スル 最初 ノ記 載 タル ヲ知 リ得 ベ シ ト謂 ヘ リ.尚 ホ 「ア ラ ビア」 ノ文 獻 ニ於 テ ハAvicenna(第

    11世 紀)及 ビGilbert von England(第13世 紀)ト シテ 文獻 ニ知 ラ レタル著 者ハ5-6-7-8日 ノ週 期 ヲ以

    テ繰 リ返 ス熱 ニ就 テ記 述 セ リ.其 ノ他 當 時 歐 洲 ノ東 部 及 ビ西 部 ニハ 五 日熱 ニ合致 ス可 キ疾 患 ア リ, Quintana

    ト呼 バ レタル モ,後 ニ ハ5日 目毎 ニ熱 發 ス ル型 ノモ ノハ 常 ニ「マ ラ リア」ニ算 入 セ ラ レ タル ガ如 シ.且 近 クハ

    1877年 露 土 戰 爭 ノ際Dehio31)氏 ノSistowa(Bulgarien)ニ 於 ケ ル衛 戍 病 院 ニ於 テ 觀 察 セ ル所 ノモ ノ ヲ 「マ ラ

    リア」 ノ特 別 型 トシテWallachisches Fieber od. Moldaufieberト シテ 記 載 セ ル ヲFleischmann氏 ハ注 意 セ

    ル モ,是 レ全 ク五 日熱 ニ一 致 ス ル モ ノ ト考 フ ル ヲ得 ベ シ ト云 ヘ リ(Werner).

    獨 逸 ニ於 テ モ,歐 洲 戰 亂 ノ大流 行 ニ先 チ, 1904年Apolant2)氏 及 ビ1910年Weitz209)氏 ニ ヨ リ五 日熱 類 似

    ノ疾 患 報 告 セ ラ レ,他 ノ諸 家 亦 各 獨 特 ノ見 解 ヲ有 セ シ ガ如 キ モ, Werner, His兩 氏 ノ發 表 ニ ヨ リ獨 立 ノ一 疾

    患 タル事 明 白 トナ ル ヤ,之 ガ證 左 ト爲 ル可 キ實 驗 例 モ簇 々 トシ テ踵 ヲ接 ス ル ニ至 レ リ.斯 ク永 ク諸 説 紛 々 ト

    シテ 歸 一 ス ル所 ヲ知 ラ ザ リシ當 時 ニ於 テ,本 症 ノ本 態 ヲ 明 カ ニ シテ 獨 立 ノ疾 患 タル 事 ヲ高 唱 セ シ兩 氏 ノ功

    績 ヤ偉 大 ナ リ ト謂 フヲ得 ベ シ.

    飜 ツテ本 邦 ノ文 獻 ヲ觀 ル ニ最 近 ニ至 リ入 澤147),竹 内193),中 本139)氏 等 ノ著 書 中 ニ於 テ 本症 ニ關 ス ル簡 單 ナ

    ル記 載 ア リ.是 レ ニ由 リテ 吾人 ハ僅 ニ歐 洲 ニ於 ケ ル本 症 ノ存 在 ヲ窺知 シ得 タル ニ過 ギズ.

    然 ル ニ大 正14(1925)7月 加 來(得 英)95)軍 醫 ハ滿 洲 旅 順 衛 戍 病 院柳 樹 屯 分 院 ニ於 テ,一 種 固 有 ナ ル病

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  • 五 日熱 ノ臨牀的實驗的研究(第1囘 報告) 1695

    症 ヲ呈 セル一病 兵ヲ觀察 シ,五 日熱 ノ1例 トシテ報告 セ リ.是 レ實 ニ本邦 ニ於 ケル五 日熱文獻 ノ嚆矢 ナ リ

    トス.大 正15年(1926)10月 稻田(進)教 授,堀 部及 ビ氏平83)3氏 ハ定型的 ナル熱發作 ヲ有 スル1例 ニ際會

    シ,精 密 ナル研究 ノ結果五 日熱 タル事 ヲ確診 シ,其 ノ實驗例及 ビ之 ガ動物實驗 ノ結果 ニ關 シテ詳細 ナル記

    載 ヲ發表 セ リ.次 デ昭和2年3月8日 東京松山病院集談 會席上守矢128)氏 ノ1例 報告 ア リ.更 ニ昭和2年4

    月12日 第17囘 日本病理學會席上吉野225)氏ハ2例 ノ五 日熱 患者 ニ就 キ述 ベタ リ.

    偶,大 正15年(1926)10月 倉 敷 中央 病院 内科 ニ收 容 セラ レ,數 旬 ニ亙 ル觀 察 ノ結 果 五 日熱 ト

    診 定 セラ レタル 一患 者 ア リ.余 ハ幸 ニ シテ該 患 者 ニ就 テ,啻 ニ臨牀 上 ノ攻 究 ノ ミナ ラズ,進 ン

    デ動物 實 驗 及 ビ試 獸 ノ病 理解 剖學 的 檢索 ヲ モ遂 グル ノ機 ヲ得 タル ヲ以 テ,今 茲 ニ 主 トシテ 臨 牀

    的 方 面 ニ關 シ,其 ノ得 タ ル所 ヲ報 告 セ ン ト欲 ス.

    惟 フニ稻 田 教授 等 ノ發 表以 來 相 次 デ本 症 ニ關 スル報 告 ニ接 スル ハ,本 邦 醫 界 ノ注 意 ヲ喚 起 セ

    シニ由 ル モ ノ ト見 ル可 ク,醫 學 上 興 味 少 カ ラザ ル所 ニ シテ,其 ノ報 告例 益 々多 キ ヲ加 フル ニ從

    ツ テ,本 邦 ニ於 ケ ル斯 病 ノ存 在 ハ益 々確 實 トナ リ,一 方 實 驗 的研 究 ト相 俟 チ,五 日熱 ノ本 態 的

    研 究 ニ向 ツテ寄 與 スル所 多 カ ル可 キ ヲ想 ヒ,杜 撰 ヲ顧 ミズ敢 テ禿 筆 ヲ呵 シテ 一文 ヲ草 シ,以 テ

    先 輩 諸 賢 ノ叱 正 ヲ乞 ハ ン ト欲 スル モ ノ ナ リ.

    第2章  實 驗 例

    第1節  患 者 及 ビ其 ノ病 歴

    患者  吉○政○  岡山縣都窪郡萬壽村 ノ産  男  72歳  骨董商

    大正15年10月2日 初診.大 正15年10月11日 入院.昭 和2年1月29日 退院.觀 察 日數120日 内入院

    日數111日.

    初診時主訴  全身特 ニ下肢 倦怠,食 慾不進,下 腹部緊滿感.

    家族歴  父ハ81歳 ニテ腎臟病 ニテ斃 レ,母ハ68歳 ニテ腹水(?)ニ テ死亡.祖 父母以前ニ遡 リテハ不明 ナ

    ルモ遺傳的疾 患 ヲ有 セザ ルガ如 シ.患 者同胞1ア リ, 53歳 ニテ健在.子 女2,皆 健ナ リト.其 ノ他 血族的關

    係 ニ於テ特記 ス可 キモノ無 シ.

    既往歴  患者ハ幼時麻疹 ヲ經過 シ, 18歳 ノ時横痃 ニ罹 リ切開手術 ヲ受 ケテ治癒. 20歳 頃天然痘 ニ罹 リ本

    病 全治セ シニ拘 ラズ,爾 後5-6年 間胃部膨滿 感 ニ惱 ミシ事 ア リ. 25歳 ノ頃 ヨリ貧面 ヲ來 シ,顔 面,脛 骨稜,

    足背 ニ浮腫 ヲ訴 ヘ病名定 カナ ラズ,數 年 間醫療 ヲ受 ケ輕快セ リ. 30歳 頃2度 淋疾 ニ感染 シ,初 囘 ノ時淋 毒

    性 結膜炎 ヲ合併 ス.其 ノ治癒後 ハ健康大 ニ進 ミ, 64歳 ノ時「ヂ フテ リー」ニ罹 リシ以外著患 ヲ識 ラザ リシニ,

    3-4年 前 ヨ リ夏季 ヨ リ秋季 ニ亙 リ,脛 骨稜,足 背 ニ極 ク輕微 ノ浮腫 ヲ證 シ,心 悸亢進,全 身倦 怠 ヲ訴 フル ニ

    至 レリレ云 フ.

    本病歴  大正15年6月 頃 一日菜 園ニテ勞働 シ,歸 宅後 左足外〓 上方約10cmノ 部, 2銭 銅 貨大ニ發赤腫

    脹 シ,稍 疼痛〓痒感 ア リ,中心 部 ニ小刺傷 アルニ氣附 キ,蟲 ニ刺サ レタルモ ノト思惟セ リ.間 モナ ク兩膝部,

    大腿内側,上 肢 屈側面ニ〓痒性 ノ蕁麻疹樣發疹生 ジ,不 快 ヲ覺 エ タルモ,第2日 以後,該 發赤 部及ビ發疹 ハ

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  • 1696 八 木 忠 亮

    漸次消退 シ, 6-8日 ニシテ全 然消失 セ シ事 ア リ.次 デ本年8月 中旬 ヨ リ全身特 ニ下肢倦 怠,食 慾不進,下 腹

    部 特 ニ右腸骨窩 ニ緊 滿感,時 々頭痛,頭 重 ヲ訴 フル ニ至 リ, 10月2日 當院 内科 ヲ訪 ヅ レ脚氣(?)ノ 診 斷 ヲ受

    ク.當 時 體温36゜7C.肝 臟 ヲ觸ル ルモ脾 ヲ觸 レズ.屎,尿,何 等 ノ所見 ヲモ呈 セズ.血 壓最高155最 低80mm

    Hgヲ 算 ス.數 囘通院セ ルモ症状 輕快ニ至 ラズ,大 正15年10月11日 入院 スル ニ至 レ リ.

    第2節  初 診 時 ノ状 態 及 ビ 入 院 後 經 過 ノ一 般

    體格 ハ中等大 ニシテ強,身 長5尺1寸8分,營 養 ハ中等度,體 重14貫(52.8kg)餘,筋 肉 及ビ皮下脂 肪組

    織 ノ發育 ハ良 好ナ リ.顔面稍 貧血ノ状 ヲ呈 シ,多 少 頬部 ニ憔悴 ノ觀無 キ ニシモアラズ.何 處 ニモ淋巴腺 ノ腫

    大 ヲ證明 セズ.皮 膚 光澤,緊 張度共 ニ稍減弱 セルモ,薔 薇疹樣發疹,出 血點,黄 疸等 ヲ認 メズ.舌 苔ナ ク咽

    頭 正常,齲 齒6ヲ 算 ス,脉 搏正調1分 時90至,緊 張可 ナ リ,心 悸稍亢進セルモ心臟 濁音界殆 ド正常 ナ リ.心

    尖 搏動ハ左第6肋 間乳線 内方 ニ觸 レ,心 音ハ純.呼 吸ハ胸腹 式1分 時18ヲ 算 ヘ,肺 臟 ハ聽診上右肺尖呼氣

    延 長ア リ,肺臟下界1肋 間下降 セル以外 異常 ヲ認 メズ.腹 部 ハ一般 ニ稍膨滿セ ルモ腹水 ヲ證 セズ.右 乳 線 ニ

    テ肋弓下2指 横徑 ノ所 ニ鋭利 ナラザ ル平滑 ナル肝縁 ヲ觸 レ.壓 痛無 シ.脾 ハ觸知 セラ レズ,其 ノ濁音界亦増

    大 ヲ見 ズ,且 壓痛 ナ シ.腎 ハ觸知 シ群 ズ.膝 蓋腱反射及 ビAchilles腱 反射ハ消失 セ リ.又 脛骨稜 ニ輕度,足

    背 ニ中等度 ノ浮腫 ヲ認 メ,上下肢 ニ一種 ノ知覺異常 ヲ訴 フル モ知覺鈍麻 ヲ證 セズ.便 通概 ネ1日1行 ニシテ

    普遍便,寄 生蟲卵 ヲ認 メズ.尿 ハ正常色,酸 性,清 澄 ニシテ異常成分ナ シ.

    以上 ノ所見 ヨリシテ脚氣(?)ノ 診斷 ノ下 ニ治療 ヲ開 始 シ,經 過 ヲ觀察 スル事 トセリ.浮 腫ハ稍速 ニ減退

    シ,歩 行頗 ル容易 トナ レリ.食慾 モ亦亢進 シ自覺的身神 ノ爽快 ヲ覺 エ,患 者ハ少 カラズ感謝 ノ意 ヲ表 セ シ折

    柄. 10月13日 即 チ入院後第3日 目ノ午後 ニ至 リ,惡 寒戰慄ナ ク,突 然體 温38゜3Cニ 達 シ,翌 日ハ38゜8Cノ

    上昇 ヲ見 タリ,但 シ輕度 ノ頭重,四 肢倦 怠感,脛 骨痛 ノ他 ニ自覺的著 シキ苦訴ナ ク,勿 諭發熱 ヲ自覺 セズ.

    他覺的 ニ何等 ノ所見 ヲ捉 フルヲ得 ズ.唯 僅 ニ顔面 ノ潮紅 ヲ認 メシニ過 ギズ.尿 中異常成分 無 ク,尿 量1日

    600-1300ccヲ 上下セ リ.翌 日即 チ發熱後第3日 目午前中 ニハ體温既 ニ降下 シテ 平温ニ復 シ,自 他覺的共 ニ

    些 ノ異變 ヲモ殘サズ. 11月19日 ニ至 リ再 ビ何等 自覺症状無 クシテ,體 温卒然 トシテ39℃ ニ上昇セ リ.偶,

    肛門痛 ア リ,外 科 ニ診 ヲ乞 ヒシニ,單 ニ痔核 ニ過 ギズ,夫 レヲ以テ直 ニ發熱 ノ原因 ト認 ム可 キモ ノ無 シトノ

    コ トナ リ.發 熱ハ約12時 間繼續 セ シ後再 ビ分利的 ニ下降 シ,何 等 ノ苦痛 ヲモ殘サザル事前囘 ノ發作 ト同樣

    ナ リ.脛 骨稜及 ビ足背 ノ浮腫 ハ19日 來全然消失,肝 臟 モ稍縮 小 ノ感 ア リ,食 慾愈 々振 ヒ,身 神益 々爽快 ヲ

    覺 ユル ニ至 レ リ,如 上 ノ熱發作ハ更 ニ10月23日 年後 ヨ リ24日 ニ亙 リテl囘 及 ビ10月29日 ヨ リ30日 ニ

    亙 リテ1囘 出現 セ リ.發 作繼續時間ハ約30時 間,間 歇 ハ前後4囘 共ニ略ボ5日 ナ リ.

    上 述 ノ經 過 中 吾人 ノ意 ヲ惹 ク ハ前 後4囘 ニ亙 ル熱 發作 ニ シテ,而 モ略 ボ5日 ノ間歇 ヲ以 テ繰

    リ返 サ レ,卒 然 トシテ 發 熱 シ,發 作時 ハ 自他 覺 的 ニ2-3ノ 輕 度 ナ ル症 状 ヲ除 キ テ ハ特 記 ス可 キ

    モ ノ無 ク, 1-2日 ノ持 續 ノ後,多 ク ハ分利 的 ニ下 熱 シ,下 熱 後 些 ノ苦 痛 ヲモ殘 存 セズ.

    斯 ク ノ如 キ熱 發 作 ハ果 シテ何 ニ由 テ來 ル カ.當 時恰 モ岡 山 醫 大 稻 田教 授 等 ノ 「五 日熱 ノ1例 」

    ノ報 告 ア リ.余 ガ檢 索 ノ鋒 鋩 亦實 ニ此 方 面 ニ向 ハザ ル ヲ得 ザ リキ.茲 ニ於 テ余 ハ先 ヅ諸般 ノ臨

    牀 的研 究 ヲ企 テ,以 テ本 疾 患 ノ本 態 ヲ究 メン トセ リ.以 下順 ヲ追 ヒテ記 述 セ ン.

    158

  • 五日熱ノ臨牀的實驗的研究(第1囘 報告) 1697

    第3節  臨 牀 的 經 過 各 論

    第1項  前 驅 症

    本患者ニ於テハ前驅症 ト考 フ可キ全身倦怠及 ビ不定ノ關節痛或 ハ頭痛ノ如キモノ,何 レノ發

    作時ニ於テモ認ムルヲ得ズ.

    第2項  熱 型

    第1表  ノ1

    第1表  ノ2

    第1表  ノ3

    熱 發 作 ハ體 温 表(第1表)ニ 示 ス ガ如 ク,概 ネ午 後 ニ始 マ リ,入 院 全經 過111日 中,前98日

    間 ニ於 テ19囘 起 リ,第6囘 目 マ デハ5日 目毎 ニ規則 正 シク繰 リ返 サ レタル モ其 ノ後 ハ不 規 則 ト

    ナ リ,多 ク ハ早 發Anteponieren(2-3-4日 目)シ,或 ハ遲 發Postponieren(6或 ハ8日 目)セ

    159

  • 1698 八 木 忠 亮

    リ(第2表 參照).而 シテ經 過 ト共 ニ最 高體 温漸 次 低 下 シ,最

    後2囘 ノ發 作 ノ如 キハ纔 ニ37°2-37°4Cノ 體 温 上 昇 ニ ヨ リ發

    作 タ ル ヲ識 リ得 タ ル ノ ミ.發 作 不 規則 トナ リ,體 温 ノ高 度漸

    次 減 ズル ト共ニ,有 熱 時 間次 第 ニ延 長 サル ル ヲ見 ル.熱 持績

    時 間 ハ概 ネ24-48時 間 ナ ル モ,其 ノ範 圍 ヲ脱 セル モ ノ2-3

    ア リ,第2, 15, 18, 19囘 發 作 ノ如 キ是 ナ リ(第2表 參 照).

    第3項  自 覺 的 症 候

    間 歇 時 ニ在 リテ ハ,自 覺 的 ニ何 等 ノ苦 訴 ナ シ.發 作 的 ト雖,

    自覺 的症 状 ハ 一般 ニ輕 微 ニ シテ,殆 ド發熱 ヲ 自覺 セズ.唯 輕

    微 ノ頭痛,頭 重,全 身 就 中 四 肢倦 怠及 ビ四肢 筋 肉 殊 ニ腓 腸部

    ノ壓 痛 アル ノ ミ.然 レ ドモ稍 特 異 トスベ キ ハ,一 種 ノ脛 骨痛

    Schienbeinschmerzヲ 訴 フル事 ナ リ.即 チ發 作 ト共 ニ脛 骨稜

    ニ當 リテ 自覺 的 ニ鈍 痛 ヲ覺 エ,且 指 壓 又 ハ叩 打 ニ ヨ リ疼 痛 ヲ

    感 ジ,發 作 ノ終 ル ト共 ニ輕 快 スル ヲ常 トセ リ.尚 ホ最 初1-2

    囘 ノ發 作 時 ニ於 テ ハ,極 メテ 輕微 ノ惡 寒 ヲ伴 ヘ リ.

    第4項  他 覺 的 症 候

    イ 一 般 症 候

    第2表

    他覺的 ニハ皮膚稍蒼白ナルモ,黄 疸ヲ證 セズ.熱 發作時ニハ初期,顔 面,咽 頭及 ビ扁桃腺 ハ

    稍潮紅 シ,四 肢末端ハ輕度ニ紫藍色ヲ呈ス.角 膜ハ光澤 ヲ發 シ,瞳 孔對光反射尋常,輻 輳機ニ

    異常ナク,眼 底ニ出血其 ノ他 ノ所見ナシ.呼 吸數ハ熱發作時之ニ伴ヒ特 ニ増加 スルガ如 キ事ナ

    シト雖,脉 搏 ハ熱ノ高サニ比例 シテ其 ノ數 ヲ増加ス.但 シ常ニ整調 ニシテ中等大,緊 張佳良ナ

    リ.且 心音ハ入院直後一時不純 トナリシモ,間 モ無ク正常 ニ復歸 シ何等雜音ヲモ聽カズ.血 壓

    ハ初メ最高155最 低80mmHgヲ 算 セシモ,漸 次最高血壓低下 シ,第17及 ビ第18囘 發作間歇

    時ニハ115mmHgヲ 算 スルニ至 レリ.胸 部ニハ發作時兩肺後下部ニ少數 ノ〓 音ヲ聽キ氣管支加

    答兒ノ徴ヲ認 ムルモ,痙 攣性咳嗽發作或 ハ咳嗽刺戟等 ナシ.上 肢屈側面,下 肢,前 胸部,背 部

    ヲ精檢 スルニ,發 作時一種 ノ蕁麻疹樣發疹生ジ稍痒感アリ.斯 カル皮疹 バ初期ニ於テハ發作毎

    ニ著明ナ リシモ發作囘數 ヲ重ヌルニ從ツテ漸次不著明 トナ レリ.肝 臟 ハ依然右肋弓縁下2指 横

    徑 ノ處ニ其 ノ下縁ラ觸ルルモ,發 作 ノ爲ニ増大 シ壓痛ヲ感ズルガ如キ事無 シ.脾 臟 ノ腫大ナク,

    濁音界亦尋常.發 作時,時 ニ薄キ舌苔ヲ認 ムル事 アリ.始 メ多少ノ食慾減退 ヲ證 セシモ,後 ニ

    至 リテハ無熱時 ト差違ナク食慾佳良.日 唇 ニ「ヘルペス」等 ヲ認 メズ.便 通ハ1日1行 アリ.便

    ノ性状 ハ黄褐色有形 ニシテ中等度硬便.嘔 吐,下 痢等 ナシ.尿 ニハ一過性ニ蛋白質ヲ微 ニ證明

    セシ事アリシモ,多 クハ陰性 ニシテ糖,「インヂカン」,膽汁色素,「ウロビリン」,「アツエ トン」

    ヲ證明セズ.「 ヂアツオ」反應亦陰性 ニシテ顯徴鏡的ニモ異常ノ沈渣ヲ認 メズ.

    160

  • 五日熱ノ臨牀的實驗的研究(第1囘 報告) 1699

    ロ  血 液所 見

    赤 血 球 平 均437萬,血 色 素量

    70%(Sahli氏 法 ニ ヨル),著 色

    系 數0.8ヲ 算 ス.最 モ特 有 ナ ル

    ハ白 血球 像 ニ シテ,即 チ發 作 間

    歇 時 ニハ 平 均約9500ノ 數 ヲ示

    セル モ ノ,熱 發 作 時 ニ ハ約12755

    ヨ リ24750ニ 迄 増 加 ス.而 シテ

    其 ノ増 加 ノ度 ハ 初 期 ノ發 作 ニ テ

    ハ 極 メテ顯 著 ナ リ シモ,發 作 ノ

    囘 數 ヲ重 ヌ ル ト共 ニ次 第 ニ不 著

    明 トナ レ リ(第3表 參 照).

    次 ニ興 味 アル ハ本 疾 患 全 經 過

    中 ニ於 クル 白血 球 各種 類 ノ消 長

    ナ リ トス(第4表 參 照).

    先 ヅ中性 顆 粒白 血球 ニ

    就 テ檢 スルニ,熱發 作 時 ニ

    ハ66.5%-83.0%ニ 達 シ,

    間歇 時 ニハ37.5%-71.0

    %ヲ 算 ス.淋 巴球 ハ發 作

    時 ニハ10.5%-24.0%ニ

    シテ,間歇時ニハ23.5%-

    50.5%ナ リ.即 チ熱發作

    ニ對スル該二者 ノ消長ハ

    其 ノ關係互 ニ相反 シ,中

    性顆粒白血球ハ熱發作時

    ニ絶對的及 ビ比較的ニ増

    加 シ,間 歇時ニ絶對的及

    ビ比較的減少 シ,淋 巴球

    ハ之ニ反 シテ間歇時ニ比

    第3表  白血球數消長表

    第4表  各種白血球ノ消長表

    N… 中 性 顆粒 白 血球, L… 淋 巴細胞, M… 單核細胞及ビ移行型E… 「エオ ジ ン」嗜 好細 胞, B… 鹽基性嗜 好細胞

    較的増加 シ,發 作時ニ比較的減少セリ.斯 ク兩者ノ消長相反 スル事實ハ疾病ノ初期ニハ顯著ナ

    ルモ,經 過ノ進行 ト共 ニ漸次ニ各自特有ナル傾向ヲ失 ヒ,其 ノ増減ノ曲線ハ次第ニ相接近ス.

    一般 ヨリ云 ヒテ淋巴球ハ次第ニ増加 シ,中 性顆粒白血球ハ次第ニ減少 ノ傾向ヲ有 シ,治 癒 ニ入

    161

  • 1700 八 木 忠 亮

    ル ヤ兩 曲 線 ハ次 第 ニ相 接 近 シ終 ニ交 叉 スル ニ至 レ リ.「 エオ ジ ン」嗜 好 細 胞 ハ前 二 者 ノ如 ク消 長

    著 明 ナ ラザ ル モ,向 ホ且 熱 發 作 時 ニ減 少(0%-6.5%),間 歇 時 ニ増 多(0%-9.0%),而 シテ全

    經 過 ノ進 ム ト共 ニ一般 ニ増加 ノ傾 向 ヲ認 ム,單 核 白 血 球 及 ビ移 行 型 モ,發 作時 ニ減少(1.0%-

    5.5%),間 歇 時 ニ増 多(1.0%-7.0%)シ,亦 經 過 ト共 ニ多少 ノ増加 ア リ.

    次 ニ中性 顆粒 白血 球 ノ核 移 動 ニ 就 テ 一 言 セ ン.先 ヅ中性 顆 粒白 血 球 ヲSchilling氏 ニ從 ツテ,

    骨髓 細 胞,幼 若 型,桿 状 核,分 核状 ノ4種 類 ニ分 チ,熱 發 作 時 及 ビ間歇 時 ニ於 テ,其 ノ 各 自 ガ

    如 何 ナル消 長 ヲ呈 スル カ ヲ檢 セ リ(第5表 參 照).骨 髄 細胞 ハ10發 作 中 唯3囘 ニ於 テ0.5%ニ

    認 メタル以 外 之 ヲ證 セズ.幼 若 型 ハ發 作時0%-7.0%,間 歇 時 ハ0%-2.0%.桿 状 核 白 血球

    ハ發 作時6.5%-15.5%,間 歇 時4.5%-10.5%.分 核 状白 血 球 ハ發 作時54.0%-76.0%,間 歇

    時31.5%-66.0%ヲ 算 セ リ.斯 ク ノ如 ク熱 發作 時 ニ ハ 間歇 時 ニ比 シテ桿 状 核 白血 球 ノ多 數 出 現

    ス ル ハ所 謂 左 方 核 移 動 ノ像 ニ シテ,此 左方 核 移 動 ノ傾 向 モ,經 過 ノ初 期 ニハ顯 著 ナル モ,經 過

    ノ進 行 ス ル ト共 ニ次 第 ニ不 著 明 トナ ル モ ノ ナ リ.

    第5表  中性 嗜 好 顆 粒白 血 球核 移動

    太字 ハ發作 日ヲ,細 字ハ間 歇時 ヲ示 ス

    162

  • 五 日熱 ノ臨 牀的 實驗的研究(第1囘 報告) 1701

    此 他 淋 巴 球 ノ所 謂 刺戟 型 ノ出現 スル モ ノ多 ク,中 性 顆 粒白 血球 中 ニ ハ屡 々Dohle氏 封 入體 ヲ

    認 ム.尚 ホ少 數 ナ ガ ラ時 トシテ,單 核 ニ シテ濃 染 シ原 形 質 内 ニ微 細 ナル 中性 嗜 好 顆粒 ヲ有 スル

    小 白血球 即 チ所 謂 小 中性 嗜 好 白血球kleine neutrophile Pseudolymphozyten od. neutrophile

    Zwergleukozytenト 呼 ブモ ノヲ認 ム.其 ノ他 赤 血球 ニ於 ヲ嗜 鹽 基顆 粒性 赤 血球 及 ビ多 染 色性 赤

    血 球 ヲ見 ル 事 ア リ.發 作 時 ノ「ペ ルオ キ シダー ゼ」反 應 ハ陰 性 ナ リ.赤 血球 ノ超 生 體 染 色 ニ依 リ

    網 纎 状 物 質 ヲ27-29‰ ニ證 明 ス.

    ハ  血 清 學 的 及 ビ細 菌學 的所 見

    血液 ニ於 ケルWassermann氏 反 應, Meinicke氏 反應, Sachs-Georgi氏 反 應 及 ビ石 原 氏反 應,

    共 ニ陰 性 ナ リ.尚 ホ 發 作時 ニ於 ケルWeil-Felix氏 反 應, Widal氏 反應 亦陰 性 ナ リ.赤 血 球 沈 降

    速 度 ヲWestergren氏 法 ニ據 リテ檢 セ シ ニ,發 作 時 及 ビ間歇 時 ノ間 ニ大 差 ヲ認 メズ.發 作時 ニ

    於 テ ハ1時 間後10.6cm間 歇 時 ニ於 テ ハ1時 間 後11.0cm(共 ニ室 温65°F)ノ 結 果 ヲ得 タ リ.又

    血 液 中「マ ラ リ アプ ラ スモ ヂウ ム」ヲ發 見 スル ニ至 ラズ.其 ノ他 發 作 中及 ビ間歇時 ニ於 ケ ル患 者

    血液 塗抹 標 本 ニ種 々染 色 ヲ施 シ,或 ハ患 者 ノ血 液,尿 等 ニ就 テWerner u. Benzler兩 氏 ニ傚 ヒ,

    人 血 清及 ビ人 血清 或 ハ腹 水 加 寒天 ニ於 ケ ル嫌 氣 性培 養 ヲ行 ヒ シモ所 謂Strongyloplasmen又 ハ

    類 似 ノ微 生體 ヲ發 見 スル ニ至 ラズ.其 ノ外 患 者 ノ血 液,尿,腦 脊 髓 液 ニ就 キテ,屡 々 暗視 野 装

    置 ヲ使 用 シ檢 索 ニ努 力 スル モ,「 ス ビロヘー テ」其 ノ他 ノ細 菌,原 蟲 等 ヲ發 見 セズ.

    ニ  神 經 系 所 見

    神 經 系 ニ於 テハ 上 下肢 殊 ニ下 腿 ニ一種 ノ知覺 異常 ヲ證 スル外,膝 蓋 腱反 射 及 ビAchilles腱

    反射 消失 セ リ. Babinski氏 現 象, Oppenheim氏 及 ビMendel氏 現象 竝 ニ足 〓搦 等 何 レモ陰 性

    ナ リ.大 神 經 幹 ノ進 出部 ニ壓 痛 ナ シ.

    第7囘 發 作 時施 行 セル腰 椎穿 刺 ニ ヨ リ得 タル腦 脊 髓 液 ノ所 見 ハ第6表 ノ如 シ.

    第6表  腰 椎 穿 刺 檢 査 成 績 表

  • 1702 八 木 忠 亮

    ホ 「レン トゲ ン」線所 見

    本 患 者 ノ管 状 骨 中疼 痛 ヲ著 明 ニ訴 フル 左側 下腿 ノ骨系 統 ヲ「レ」線 的 ニ檢 ス ル ニ,附 圖 ニ示 ス

    ガ如 ク左 脛 骨 體 ノ上1/5部 ヨ リ下 方 中央 部 ニ及 ブ,主 トシテ 内側 ニ相 當 スル 部 及 ビ左 腓 骨 ノ上

    部 比 較 的 狹 キ部 ニ限 局 シ,平 坦 ナ ラ ザル 骨膜 ノ肥 厚 ヲ認 ム.次 デ右 上肢 ヲ檢 スル ニ,上 膊 骨 中

    央 部 ニ,及 ビ橈 骨中 央 部 ヨ リ上 方 ニ於 テ2箇 所 同樣 ノ肥 厚 ラ認 ム.尚 ホ 其 ノ際 再 ビ左 脛 骨 ヲ檢

    スル ニ,前 同樣 ノ所 見 ヲ得 タ リ.其 ノ後 約20日 ニ シテ 退 院 前,更 ニ前述 諸 骨 ニ就 テ 「レ」線 檢

    査 ヲ爲 ス ニ,依 然 トシテ前 同樣 ノ變 化 ヲ認 ム.即 チ四 肢 ノ管状 骨 ニ ハ強弱 ノ差 コ ソ ア レ,相 對

    性 ニ斯 ク ノ如 キ 骨膜 肥 厚 アル モ ノ ト思 惟 ス ル ニ足 ル.

    第4節  診 斷

    要 之,本 例 ニ特 有 ト爲 スハ1)前 後19囘 ニ亙 ル發 作 性 發熱, 2)血 液所 見, 3)脛 骨 部叩 打

    痛 ノ存 在及 ビ其 ノ「レ」線 的 所 見, 4)四 肢 筋 肉 ノ壓 痛, 5)發 作 間歇 時 ノ 自覺 的症 状 僅 微 ナル等

    ノ諸點 ナ リ.今 文 獻 ニ據 リテ按 ズル ニ,此 等 ノ所 見 ハ 實 ニ嘗 ツテ, Werner, His氏 等 ニ ヨ リテ

    發 表 セ ラ レタ ル所 謂 五 日熱 ノ病 像 ヲ髣 髴 セ シムル モ ノナ リ.而 シテ他 方 動物 實驗 ノ陽 性 成 績 及

    ビ試獸 ノ病 理 組 織 學 的 所 見 ノ,文 獻 記 載 ノ事 實 ト一 致 セル ハ(他 日篇 ヲ改 メテ説 カ ン)本 例 ノ

    五 日熱 タル ノ診 斷 ヲ,更 ニ強 ク裏書 スル モ ノナ リ ト信 ズ.

    第5節  豫 後 及 ビ本 症 例 ニ 於 テ 施 セ シ療 法

    五 日熱 ノ豫 後 ハ絶 對 的 良好 ニ シテ死 ノ輻 歸 ヲ取 ル事 殆 ド無 ク,自 然 治 癒 ニ赴 ク モ ノ ナ リ ト謂

    ハ レタ リ.

    本 例 ハ入院 當 時輕 度 ノ浮 腫 ア リ,脚 氣 トシテ 治 療 シ,「 オ リザ ニ ンエ キ ス」及 ビ其 ノ他 ノ利 尿

    強 心 劑 ヲ投 與 セ シニ,日 ナ ラズ シテ浮 腫 去 リ,一 般症 状 輕 快 セ リ.五 日熱 トシテ ノ特 有 ナル症

    候 ニ對 シテ モ,專 ラ對 症 的 ニ處 置 シ,何 等 特 殊 ハ療法 ヲ施 サ ザ リシモ,漸 次 發 作 ノ強度 減 弱 シ,

    入 院 後 約99日 ニ シテ全 然 其 ノ襲來 ヲ見 ズ,身 神 頓 ニ恢 復 シ欣 然 トシテ退 院 セ リ.

    附  其 ノ後 ノ消息

    其 ノ後矍鑠 トシテ餘生 ヲ樂 シメリト(昭 昭3年2月).

    第3章  考 按

    第1節  症 候 總 論

    第1項  潜 伏 期

    五 日熱 ノ傳染 ヲ衣服虱 ハ刺傷 ニ由ル ト信 ズル學者(Jungmann87-92), Munk136) 138), Strisower188), Topfer

    199-200)u. A.)少 カラズ.但 シ其 ノ機會或 ハ事實 ヲ認知 シ得 ル場合稀 ニシテ,從 ツテ其 ノ刺螫 ヨ リ病症發現迄

    ノ期間(即 チ潜伏期)ノ 決定 ハ,頗 ル困難ナル問題 ナ リトス. Werner u, Benzler214)氏 ノ自家 ニ施 セル直接

    血液傳染試驗 ニヨ レバ24-23日, Jungmann92)氏 ハ一般 ニ多 クノ場 合ニ於テハ12-25日 ヲ算 ス ト云 ヘ リ.

    164

  • 五 日熱 ノ臨牀的實驗的研究(第1囘 報告) 1703

    又Schittenhelm u. Schlecht173)氏ハ約3週 間, McNee, Renshaw and Brunt121-122)氏ハ6-22日 ヲ, Hurt and

    McNee78)氏 ハ14-24日 ヲ潜伏期 ト爲 セ リ.

    今本 患 者 ニ就 テ觀 ル ニ,大 正15年6月 頃,左 足 外〓 上部 發赤 腫 脹 シテ恰 モ小 刺 傷 ヲ受 ケタ ル

    ガ如 キ感 ア リシ ト云 ヘ リ.是 レ一 ツノ傳 染 機 會 ト考 ヘ得 可 キ モ ノ ナ リ.而 シテ 同 年8月 中 旬 ニ

    至 リ,全 身特 ニ下肢 倦 怠等 ノ 自覺 症 状 ヲ訴 フル ニ至 レル ヲ見 レバ,其 ノ 間約2箇 月 ヲ算 シ,前

    述 諸 家 ノ言 ニ比 シ永 キ ニ過 グル ガ如 キモ, Werner221)氏 ノ虱傳 染 試 驗 ニ據 レバ,發 症 マ デ ニ約

    60日 ヲ要 シ, Strisower188)氏 ハ約60日 ノ潜 伏期 ヲ記 載 セル ヲ見 レバ,夫 レヲ以 テ潜 伏 期 間 ト

    見 做 スモ何 等 不 合理 ナ ル コ ト無 カル 可 シ.但 シ本 例 ノ左 足外 〓 上部 ノ發 赤 腫 脹 ハ,果 シテ刺傷

    ナ リ シヤ否 ヤ,或 ハ刺傷 ト爲 スモ何物 ノ刺 螫 ニ ヨ リシヤ,此 點 不明 ニ 〓 確 定 シ得 ザ ル ヲ遺 憾

    トス.

    第2項  前 驅 症 状

    五 日熱 ニ於 テハ潜伏期間中殆 ド,自覺的症状 ヲ缺如 スルヲ常 トス. Jungmann92)氏 ハ僅 ニ最初 ノ熱發作 ノ

    略 ボ前 日ニ於テ,全 身違和,頭 痛,眼 内壓迫感,四 肢 ニ於 ケル輕度 ノ牽引感及 ビ重感,輕 度 ノ惡寒或 ハ腰痛

    ヲ訴 フルニ過 ギズ.他 覺 的ニモ其 ノ際 既 ニ輕度 ノ脾腫 大 ヲ證明 スル モノノ如 シ ト謂 ヒ, Fleischmann41)氏 ハ

    同樣脾腫 ヲ反覆觀察 セ リト云 フ.

    本 例 ニ於 テ ハ,最 初 ノ熱 發 作時 期 識 ル ニ由 ナ ク,前 驅 症 状 ノ有 無 從 テ不 明 ナ リ.但 シ脾 腫 ハ

    入 院經 過 中遂 ニ觸 レズ.本 邦 ニテ詳 述 セラ レ シ唯1例 タル 稻 田83)氏 等 ノ例 ニ於 テ モ上述 ノ如 キ

    前嘔 症状 ヲ見 ズ ト記 載 セ ラル.

    第3項  發 病 ノ状 態

    多 クノ場合前驅症状 ヲ缺如 シ,殆 ド常 ニ急劇 ニ發病 ス.即 チ強度 ノ惡寒,或 ハ屡々激 シキ惡寒戰慄 ヲ以テ

    始 マ リ,次 デ發 汗 ヲ伴 ヒ39.0-40.0℃ ニ體 温 上 昇 ス. Lehndorf u. Stiefler110)氏 ハ體 温 上 昇 ハ可 ナ リ急速 ニ

    約4-6時 間 ノ經 過 ニ於 テ 極度 ニ達 ス ル モ,激 シキ惡 寒 戰慄 ハ頗 ル稀 ニ シテ,通 常 ハ 屡 々反 覆 ス ル惡 寒 ヲ伴

    フニ過 ギズ ト云 ヘ リ.

    Jungmann92)氏 ニ據 レバ,體 温上昇 ノ際,前 額部及 ビ顳〓 部ニ限局 セル激 シキ頭 痛 ヲ訴 ヘ,頭 部破 ルルガ

    如 ク,各 種體勢變動ハ夫 レ等 ノ苦惱 ヲ増大 シ,眼 球運動 ハ疼 痛 ヲ感ゼ シメ,同 時 ニ強度 ノ全身倦怠及 ビ衰 弱

    起 リ,時 ニハ失神又ハ嘔吐ヲ來 ス事 スラア リト報 ゼラル.時 ニハ筋肉,關 節又ハ骨自身 ニ波 及スル牽引樣若

    クハ裂 クガ如キ疼 痛 ヲ臀部 及 ビ上下肢 ニ感 ジ,胃 部 ニ於 ケル不快感,左 右季肋部特 ニ脾臟部 ニ於 クル刺痛,

    睡眠障碍 ヲ訴 フルヲ記セ リ.其 ノ他 ノ諸家 モJungmann氏 ノ記 載セルガ如 ク強度ナ ラザルモ,大 同小異 ノ

    症 状ヲ以 テ本病 ノ突發スルヲ認ム.

    本 例 ニ於 テ ハ,病 歴 調 査 ニ當 リ,患 者 ノ陳 述少 カ ラズ 不定 ニ シテ,入 院 前 ノ發 作 ノ有 無或 ハ

    最 初 ノ發 作 ノ時 期 等詳 知 シ難 キ モ,入 院 ニ至 ル迄 ニ然 カ ク強 度 ノ苦 痛 ヲ自 覺 セル 事 ナ ク,入 院

    後 ニ發 現 セ シ第1囘 發作 ヲ以 テ最 初 ノ モ ノ ト假 定 ス レバ,稻 田83)氏 等 ノ例 ノ如 ク突 然 高熱 ヲ發

    シ, Jungmann92), Lehndorf u. Stiefler110)氏 等 ノ掲 ゲ タル モ ノ ノ如 ク,熱 ノ高 キニ比 シテ 強

    度 ナ ル 自他 覺 的 症 状 ヲ見 ズ.眼 ハJungmann92), Munk138)氏 等 ノ記 載 セル ガ如 ク光 澤 ヲ放 ツ モ

    165

  • 1704 八 木 忠 亮

    結 膜 充 血 等 ヲ起 ス事 ナ ク,肝 臟 ハ壓 ニ對 シテ過 敏 ナ ラズ.脾 臟 ハ終 始 觸 ル ル 事 能 ハザ リキ.

    第4項  全 經 過

    本症 ハ通例經過 ト共 ニ熱高度 ヲ減 ジ,自 他覺的症 状亦更 ニ僅微 トナ リ,終 ニ治癒 ニ赴 クモ ノナ リ.本例 ニ

    於 テ其 ノ全經過 ヲ見 ル ニ8月 中旬 ヨ リ發病 セシモノ トス レバ, 5箇 月 ノ永キ ニ及 ビ,入 院後 第1ノ 發作 ヲ以

    テ病 初 ト見 做セバ,全 經過約3箇 月 ヲ算 ス.一 方泰西 ノ文獻 ヲ觀 ルニ,五 日熱 ノ全經過 ハ通常4-6週 間ナ

    ル モ,本 例 ノ如 ク數箇月 ニ亙ル例 モ決 シテ稀 ナラザル ガ如 シ.即 チBittorf12)氏 ハ斯 カル2例(1ハ 約40日,

    1ハ 非定型的 ナル モ約100日)ヲ 報 告 シ, Jungmann92)氏 ハ1箇 年後 ニモ尚 ホ時 ニ新發作 ヲ見 タルヲ記 載 シ,

    Cassirer27)氏 ハ是 レ迄 ニ最モ永 キ經過 ヲ取 リシモノ トシテ15-16箇 月 ニ及 ブヲ觀察セ リト云 フ.

    五 日熱 ノ豫後 概 ネ良好 ナル ハ既 ニ屡 々述 ベ タル 處 ナ ル ガ,本 例 ニテ モ發 作漸 次 其 ノ度 ヲ減 ジ,

    頭 重,食 慾 不進等 ノ 自覺 的症 状 モ相 次 デ輕 快 ス ル ニ至 リ,入 院 後99日 以 降, 37℃ 以 上 ニ上 昇 ス

    ル 事 ナ ク,稍 僅 ニ貧 血 ヲ殘 シテ退 院 スル ニ至 レ リ.其 ノ 間發 作 囘 數19囘 ニ及 プ.

    第2節  症 候 各 論

    第1項  熱 型

    五 日熱 ニ於テ,最 モ顯 著ニ シテ確實 ナル症候ハ發作性熱型 ナ リ. Jungmann92)氏 ハ之 ヲ次 ノ如 ク分 類 シ,

    其 ノ百分 率 ヲ掲ゲタ リ.

    1.發 作 性 熱 型 … … …47%

    2.「 チ フス」性 熱 型 …20%

    3.移 行 型 … … … … …33%A.發 作性 ヲ 主 トスル モ ノ…… …12%

    B.「 チ フス」性 ヲ主 ト スル モノ …21%

    Richter158)氏 ハ次 ノ如 ク分 類 セ リ.

    1.定 型 的 熱 型 … … …45%

    2.稍 定 型 的 ニ シテ 間 歇5日 ヨ リ短 キ或 ハ永 キ モ ノ… … … …21%

    3.其 ノ他 熱 型 ノ ミニテ ハ診 斷 ヲ決 スル 事 能 ハザ ル モ總 テ ノ臨 牀 上 ノ 目標 ヲ有 ス ル モ ノ…34%

    何 レモSchittenhelm u. Schlecht173-175)兩 氏 ノ非定 型 的 ナ ル モ ノ,定 型 的 ナル モ ノ ヨ リ遙 ニ多 シ ト云 ヘ ル

    ニ一 致 セ リ.

    本 例 ハJungmann氏 ノ 發 作 性 ニ屬 ス ル モ ノ ニ シテ,最 モ 定 型 的 ナ ル モ ノ ナ リ.即 チ19囘 ノ

    發 作 中 第6囘 目 マ デ ハ,一 往 一 來,規 則 正 シ ク, 5日 目 毎 ニ繰 リ返 ヘ サ レタ ル モ,其 ノ後 ハ 稍

    不 規 則 トナ リ,或 ハ 早 發 シ或 ハ遲 發 セ リ. Arneth4-6)氏 ハ 熱 型 ヲ精 細 ニ研 究 シ,發 作 間 歇 時 ノ

    持 續 ハ21日 及 ビ半 日 ノ 間 ヲ 動 搖 シ,就 中3-4-5-6日 ナ ル モ ノ 多 數 ヲ 占 メ,多 ク ノ 發 作 ハ

    可 ナ リ平 等 ナ ル 間 歇 ヲ示 ス モ,又 一 方 稍 廣 キ 範 圍 ニ於 テ 動 搖 ス ト謂 ヘ リ.其 ノ他 ノ學 者 例 ヘ バ

    Werner u. Haenssler213)氏 ハ5日 稀 ニ4或 ハ6日, His68)氏 ハ4-6日, Apolant3)氏 ハ5或 ハ

    6日, Brasch15)氏 ハ 多 ク ハ5日 屡 々 又4-6日,時 ニ3日 或 ハ14日, Hasenbalg62)氏 ハ4日 時

    ニ3-5日, Jahn84)氏 ハ3-7日 多 ク ハ5日, Korbsch104)氏 ハ4-6日, Lehndorf u. Stief ler110)

    氏 ハ3-6日, Linden112)氏 ハ5日, Stintzing186)氏 ハ 多 ク ハ5日,其 ノ他4-6-7日 及 ビ1囘

    166

  • 五 日熱 ノ臨牀的實驗的研 究(第1囘 報告) 1705

    9日 ナル ヲ觀 察 セ リ ト云 フ.即 チ各 報 告者 ニ ヨ リテ間歇 期 間 區 々 タ リ ト雖,尚 ホ 且5日 ト爲 ス

    者 最 モ多 キ コ ト斯 ク ノ如 シ.是 レ實 ニ本 症 ノ五 日熱 ナル 稱 呼 ヲ有 スル所 以 ナ リ トス.

    普 通 本病 ノ初 期 ニ於 テ定 型 的 發 作 ヲ起 セル モ ノ,發 作 ヲ重 ヌ ル ニ從 ヒ,其 ノ去 來 次第 ニ不 規

    則 トナル 事 多 シ(Lehndorf u. Stiefler110), Richter158)).本 例 ノ如 キ入 院 後 第1囘 發 作 ヲ以 テ

    病 初 ト考 ヘ得 ザ ル ニ非 ザ ル モ,潜 伏 期 間等 ノ關 係 ヨ リ シテ,恐 ラク8月 中 旬 ヨ リ既 ニ發 病 セ リ

    ト考 フル ヲ至當 ナ リ ト信 ズ.果 シテ 然 ラバ定 型 的5日 目毎 ノ發 作 ハ,其 ノ時 ヨ リ入 院 時 ニ至 ル

    マ デ可 ナ リ頻 囘 起 レル モ ノ ト考 ヘザ ル ヲ得 ズ. Jungmann92)氏 ハ其 ノ發 作 ノ數 ノ決 定 ニ關 シテ

    ハ屡 々困 難 ヲ感 ズ ル モ,多 ク ハ4-6發 作,時 ニ12-14發 作 ヲ見 ル 事稀 ナ ラズ ト云 ヘ リ.然 レ

    ドモ氏 自身 モ18-20發 作 アル ヲ多 數 ノ場 合 ニ就 テ觀 察 セル所 ヨ リ觀 テ,本 例 ノ發 作19囘 ニ

    及 ベ ル モ決 シテ奇 トスル ニ足 ラズ ト信 ズ.尚 ホ 五 日熱 ニ ハ再 感 染或 ハ再 發 ノ起 ル事 アル ヲ記 載

    セラル. Bittorf12)氏 ハ非 定 型 的 ナ ル モ100日 後 再 發 ヲ起 セル1例 ヲ報 ジ, Jahn84)氏 ハ1例,

    Korbsch105)氏 ハ2例, Moltrecht126)氏 ハ2例(中1例 ハ3囘 ノ再發 ア リ)ヲ 記 載 シ, Sachs169)

    氏 等 ハ東 部 ヨ リ斯 ク ノ如 キ非 定型 的 ノ經 過 ヲ取 リ シモ ノ ヲ報 告 セ リ.

    發 作時體 温 上昇 ノ度 ハ文 獻 ニ示 ス所 ニ據 レバ,大 抵38-40℃ ニ達 シ,且 最 初 ノ發 作 ニ於 テ最

    モ 高 キ ヲ常 トス. Lehndorf u. Stiefler109-110)氏 ノ多 數 ノ經 驗 ニ ヨ レバ39℃ ヲ普 通 トシ, 40℃

    以 上 ニ昇 レル ハ單 ニ例 外 トシテ觀 察 セル ニ過 ギズ ト謂 フ.本 例 ニ於 テ ハ39℃ 以 上 ニ昇 レル 事 兩

    3囘 ニ シテ,多 クハ38-39℃ ノ間 ニ在 リ.最 高1囘395℃ ヲ示 セル ニ過 ギザル モ,最 初 ノ發 作

    ノ最 高 ナ リシヤ否 ヤハ,發 病時 期其 ノ モ ノ ノ決 定 不能 ノ爲 明 言 スル 事 能 ハ ズ.而 シテ最 高度 ノ

    體 温 ヲ示 セル ハ入 院 後 第3囘 目 ノ發 作 ナ リキ. Werner210-222)氏 モ最 初 ノ發 作最 モ高 ケ レ ドモ,

    其 ノ發 作 ハ 通常 觀 察 スル 事能 ハザ ル ヲ以 テ,最 初 ノ發 作 熱 ノ精 確 ナ ル觀 察 ヲ爲 シ得 ル ハ比 較 的

    稀 ナ リ ト云 ヘ リ.

    熱 持 續 時 間 ハ,本 例 ニ於 テ ハWerner氏 ノ如 ク大 約24-48時 間 ニ シテ3-4囘 ノ例 外 アル ニ

    過 ギズ. Arneth4-6)氏 ノ精 密 ナ ル觀 察 ニ據 レバ,通 常1-2-3日 或 ハ4-6日 ニ シテ, 2例 ニ於

    テ ハ ヨ リ永 キ期 間 ヲ示 セル モ ノ ア リ.氏 ハ斯 カル例 ニ於 テ惡 寒 戰慄 頻 々 タ ル ヨ リ見 テ,此 ノ比

    較 的永 キ發 作 持 續 ハ,一 部毎 日ノ發 作 合 シテ成 立 セ シモ ノ ト爲 セ リ.其 ノ他Brasch15-16)氏 ハ

    唯 數時 間稀 ニ12-24時 間, Frese44)氏 ハ28-34時 間, Jahn84)氏 ハ 多 ク ハ48時 間 以 内 ナ ル モ,

    尚 ホ永 キ持 續 ノ存 スル ヲ注 意 シ, Korbsch104-105)氏 ハ通 常3日, Lehndorf u. Stiefler110)氏 ハ

    24-36時 間, Moltrecht126)氏 ハ2日 稀 ニ3日 ヲ擧 ゲ, Stintzing186)氏 ハ稀 ニ唯1日 多 ク ハ2-3

    日 ナル ヲ報 ゼ リ.稻 田83)氏 等 ハ約12時 間 内外 ニ シテ 平温 ニ復 シ, 24時 間續 キ シ事無 シ ト云 ヘ

    リ.

    熱 ノ極 度 持續 時 間 ハ,本 例 ニ於 テ ハ 平均5-12時 間 ニ シテ, Frese44)氏 ハ8-12時 間 時 ニハ

    20時 間, Jungmann92)氏 ハ 同樣8時 間,時 ニ20時 間 ニ亙 ル 事 ア リ ト謂 ヘル ニ一 致 ス. Lehndorf

    u. Stiefler110)氏 ハ單 ニ數 時 間 ニ過 ギ ズ ト云 ヘ リ.

    167

  • 1706 八 木 忠 亮

    Werner221)氏 ハ,發 作 ヲ重 ヌ ル ニ從 ヒ,熱 表 ニ於 テ見 ル發 作 基 底廣 ヲ,其 ノ熱 ノ高 サ ノ減 少

    ニ比 例 シテ増 加 ス ト云 ヘ リ.本 例 ニ於 テ モ同樣 ノ状 態 ヲ認 メ得 タ リ.即 チ第5, 9, 15, 16囘 發

    作 ニ於 ク ル ガ知 シ.

    本 例 第7囘, 12囘 及 ビ14囘 發 作 ニ ア リテ ハ, Werner221)氏 ノ所 謂Doppelzackeヲ 形 成 シ,

    第6,第7囘 發 作 ノ間即 チ11月14日 ニハ特 有 ナル 體 温 ノ上 昇 ヲ見 ズ,僅 ニ輕 度 ナル頭 痛 等 ヲ訴

    ヘ タ ル ニ過 ギザ リキ.是 レWerner氏 ノ所 謂Aequivalentニ 相 當 ス可 キ モノ ニ シテ,氏 ハ豫 期

    セル發 作 日 ニ體 温上 昇 ヲ見 ズ シテ,却 ツテ 下腿 痛,腰 痛,頭 痛 等 ノ特 有 ナル 臨 牀 的 症 候 群 ノ發

    現 スル ヲ目 シテAequivalentト 呼 ベ リ.又Jungmann92)氏 ノ謂 ヘル ガ如 ク發作 時熱 型 ニ シテ,

    其 ノ尖端 ヲ缺 如 セル等 邊 三 角 形 ヲ第1, 5, 9, 13囘 ノ發 作 ニ於 テ認 メ得 タル モ, Kongruenz der

    Teilkurvenト 謂 フ ガ如 キニ ハ遭 遇 セズ. Werner221)氏 ハ五 日熱 ニテ ハ 「マ ラ リア」發 作 ノ際 ト

    同 樣 ニ,熱 分利 後 體 温 却 ツテ 正常 以 下 ニ降 下 スル事 ア リ ト云 ヘ リ.本 例 ニ於 テ モ 第3, 4, 13囘

    發 作後 ニ於 テ35゜5-35゜9Cニ 達 スル體 温 下降 ヲ見 タ リ。

    第2項  口 腔,咽 頭 及 ビ呼 吸 器 系

    本 病 ニ於 テ,口 腔,咽 頭 及 ビ呼 吸 器 等 ノ變 化 ハ 比較 的緊 要 ナ ラザ ル ガ如 シ.最 初 ノ熱 發 作 中 ニ於 テ 通 常 多

    少 ノ全 咽 頭 扁 桃腺 輪及 ビ限 局 セ ル軟 口蓋 ノ發 赤 及 ビ腫 脹 ヲ認 メ, Richter158)氏 ハ之 ヲ以 テ 本 病 ノ症 候群 ニ

    加 ヘ,特 別 ノ「ア ンギ ーナ」トヤ ル モ,其 ノ際 扁桃 腺 ニ義 膜 ヲ認 メズ,且 附 近 淋 巴 腺腫 脹 ヲ缺 如 セ ル ヲ以 テ,

    Jungmann92)氏 ハ該 變 化 ヲ 目 シテ「ア ンギ ーナ」ト呼 ブニ ハ當 ヲ失 セ ル ガ如 シ ト云 ヘ リ. Buchbinder20-21)氏

    ハ「イ ンフ ル エ ンザ 」及 ビ 「ロイ マ チ ス」性 疾 患 トヲ區 別 スル特 別 ノ咽 頭 症 候 トシテ,多 數 例 ニ於 テ懸 壅 垂 ノ

    上 方 口蓋 粘 膜 ノ三 角 帶 ニ,一 般 ニ發 赤 無 ク,一 部 ハ著 明 ナル 血 管 ノ網 状 出 現 及 ビ一 部 ハ 群 ヲ爲 シ,屡 々列 ヲ

    爲 シテ 排 列 セ ル帽 針 頭 大 若 クハ更 ニ小 ナル水 樣透 明 ノ強 ク光 線 ヲ反 射 ス ル 小水 疱 ヲ觀 察 セ ル ヲ記 載 セ ル モ

    (同 氏 モ其 ノ後 ハ遭 遇 セ ズ トイ ヘ リ), Jungmann92)氏 ハ斯 カ ル症 状 ヲ認 メズ,後 發 ノ發 作及 ビ永 キ發 作期 間

    ニ於 テ ハ,一 般 ニ總 テ ノ咽頭 症 状 ヲ缺 如 スル モ ノナ リ ト主 張 セ リ.

    本 例 ニ於 テ モ,初 期 ニ於 テ ハ 咽 頭 及 ビ扁 桃 腺 ル輕 度 發 赤 ヲ 認 メタ ル モ,後 ニ ハ 殆 ド斯 カ ル 變

    化 ヲ 證 明 シ得 ズ.舌 ニ於 テ モ,初 期 發 作 時 ニ於 テ 多 少 ノ 舌 苔 ヲ 認 メタ ル ニ 過 ギ ズ.

    鼻 腔 ニ於 テ ハFreund45), Herzog66), Jahn84)等 ノ諸 家 稀 ニ鼻 出 血 ニ遭 遇 セ リ ト云 ヘル モ,本 例 ニ於 テ ハ全

    經 過 中 斯 ク ノ如 キ事無 カ リキ.

    尚 ホBrasch15), Franke42), Lehndorf u. Stleflor110), Sachs169), Werner210-221)等 多 數 ノ學 者 ハ 呼 吸 器 粘膜

    ニ加 答兒 症 状 ノ發 ス ル ヲ記 載 シ,之 ニ反 シテJahn84), Korbsch104-105), Thorner197)氏 等 ハ斯 カ ル事 實 ヲ否 定

    セ リ.

    本例 ニ於テハ發作時主 トシテ肺後部ニ少數ノ〓音ヲ認 メタルモ,其 ノ際Korbsch104-105)氏 ノ

    説 クガ如キ痙攣性咳嗽,其 ノ他輕度咳嗽 ヲ見タル事ナシ.特 ニ興味多キハ呼吸數 ノ發作時 ト雖,

    脉搏 ニ於 ケル如ク體温上昇ニ伴ヒテ増加スルガ如キ事ナキ點ニシテ,先 學諸家之 ニ注意セルモ

    ル殆 ド無キガ如 シ.

    168

  • 五 日熱 ノ臨牀的實驗的研 究(第1囘 報告) 1707

    第3項  循 環 器 系

    Jungmann92)氏 ノ記載 ニ ヨレバ,個 々 ノ熱發 作中ハ通常體温上昇 ノ程度 ニ相當 シテ脉搏 ノ促進 ヲ來 タシ,

    其 ノ間心悸亢進,時 ニ一過性 ノ靜 カナル偶發性雜音 ヲ心尖 ニ聽 ク事ア リト云 ヘ リ. Korbseh105)氏 ハ8%ニ

    於テ心臟肥大 ヲ證明 ン, 32%ニ 於テ全心臟濁音界上 ニ著明ナル收縮期的吹〓 音 ヲ聽診 シ得 ト云 ヘ リ.

    本 例 ニ於 テ モ,脉 搏 促進 ハ體 温 上昇 ノ程 度 ニ相 當 シテ 認 メ得,多 少 ノ心 働 作 強 盛 及 ビ心 音 不

    純 ヲ10月 下 旬 ヨ リ11月4日 頃 ニ至 ル 間證 明 セ リ.但 シ該 症 状 ハ「ヂ ギタ リス」ノ投 與 ニ由 リ次

    第 ニ輕 減 シ,心 音又 純 トナ レ リ.

    Werner u. Haenssler213)氏 モ第一音不純 ヲ多數 ノ場合ニ 發見 シ,其 ノ際「ヂ ギタ リス」劑 ノ應用 ニ據 リテ,

    速 ニ消失 スルヲ記セ リ, Jungmann92)氏 ハ間歇時特 ニ發作直後及 ビ經過 ノ初期 ニ於テハ1分 時54-60ノ 遲

    脉 ヲ來 タシ,且 屡 々非發 年時 ノ末期 ニ於テ發 作性 ニ脉 搏促進 ヲ來 ダン,而 モ多少 ノ規 則的間歇 ヲ以テ脉搏發

    作 Pulsparoxysmenヲ 示 ス事 ア リ ト云 ヘ リ.

    本 例 ニ於 テ ハ遲 脉 ハ顯 著 ナ ラズ,心 悸 亢 進,左 胸 刺 痛,胸 部 ノ壓 迫,苦 悶 感 及 ビ呼 吸 困難 等

    ヲ見 ザル モ,屡 々氏 ノ所 謂Pulsparoxysmenト 認 ム可 キ發 作 性脉 搏 頻數 ヲ證 シ得 タ リ.例 ヘ バ

    第4, 5, 6, 8, 11囘 熱 發 作 時 ニ於 ケル ガ如 シ.

    Drummond36)氏 ハ之等 ノ關 係 ヲ精密 ニ觀察 シ,脉搏 ノ熱上昇 ニ伴 フモノ,伴ハザルモ ノ及 ビ突然脉 搏増加

    ヲ來 タス モノ等 ノ例 ヲ掲 ゲタ リ.

    血壓 ニ關 シテハLehndorf u. Stiefler110)氏(90mm Hgニ マデ)及 ビAszodi u. Szego8)氏 ハ發熱中血壓 ノ

    低 下ヲ認 メ,其 ノ血壓低下ハ,熱 ノ消退 ト共 ニ直 ニ舊 ニ復 ス トナス. Aszodi u. Szego氏 ニヨ レバ低下 ノ度 ハ

    5-10mm Hgナ リトイ ヘ リ.

    本 例 ニ於 テ ハ經 過 ト共 ニ血 壓 ノ低 下 セル ヲ認 メタ リ.即 チ入 院 時 最 高155最 低80mm Hgヲ

    示 セル モ ノ, 10月20日(發 作 翌 日)ニ 於 テ ハ130-80mm Hgニ, 1月7日(間 歇 時)ニ ハ115-

    78mm Hgヲ 算 セ リ.之 ニ反 シテFischer39)氏 ハ67例 中40例 ハ血壓 亢進 セル ヲ觀 察 セ リ ト云

    フ.

    第4項  消 化 器 系

    最 モ屡 々發 來 ス ル症 候 ハ,發 熱 期 中 ニ於 ケル 強 キ食 慾缺 乏 ニ シテ, Jungmann92)氏 及 ビWerner210-221)氏

    ニ據 レバ,食 慾 缺乏 ハ啻 ニ有 熱 期 中 ノ ミナ ラズ,間 歇 期 中及 ビ恢 復 期 ニ迄 存 シ,本 症 ノ全 快 ヲ遲 延 セ シム ル

    事 ア リ ト謂 ヘ リ.之 ニ反 シテAszodi u. Szego8)氏 ハ 多 ク ノ例 ニ於 テ 食 慾 ノ佳良 ナ リ シ ヲ認 メ タ リ.

    本 例 ニ 於 テ ハ,始 メ約2箇 月 間 食 慾 不 進 ヲ訴 ヘ タ ル ニ,入 院10日 目 頃 ヨ リ 亢進 シ,其 ノ後 ハ

    發 作 時 多 少 ノ 減 少 ヲ認 ム ル モ 間 歇 時 ニ 比 シ大 ナ ル 差 ヲ認 メズ.

    Jungmann92)氏 ハ發 作性 熱 型 ノ約3%ニ 於 テ, Korbsch104-105)氏 ハ14%ニ, Richter158)氏 ハ29%ニ,

    Freund45), Sachs169), Schittenhelm173 175), Topfer199-201)ノ 諸 家 モ同 樣2-3ノ 發 作 中 ニ,體 温 上 昇 スル ト

    共 ニ突 然5-6囘 ノ粥 状 或 ハ水 樣 下 痢 ヲ來 タ シ,屡 々2-3日 又時 ト シテ ハ24時 間 ニ シテ 自 然 ニ治 癒 ニ赴 ク

    モ ノ有 ル ヲ觀 察 セ ル モ, Werner221)氏 ハ之 ヲ以 テ 特 殊 ノ モ ノナ ラズ ト爲 セ リ. Lehndorf u. Stiefler109-110).

    Thorner197), Werner u. Haenssler213)氏 等 ハ著 明 ナ ル胃 腸 障 碍 ヲ見 ズ ト云 ヘ リ.

    169

  • 1708 八 木 忠 亮

    本 例 ニ於 テハ 入院 前 便通1日1行 ナ リ シモ,入 院 後 ハ Fleck40), Oppenheim145 )氏ノ多數例

    ニ於 テ經 驗 セル 如 ク,便 通寧 ロ便 秘 ニ傾 キ,藥 劑 ニ ヨ リ1日1行 タル ヲ得 タ リ.

    Graefenbelg53), Jungmann92) 及 ビSchittenhelm173) 氏等ハ廻盲部 ニ疼痛 ヲ訴 ヘ,激 シキ腹 壁緊張及 ビ輕度

    ノ鼓 腸ヲ來 タシ,爲 ニ急性蟲樣突起炎 ノ症候 群 ト誤診 スル事 アルヲ記 シ, Fieund45)氏 ハ少數例 ニ於テ著明

    ナル鼓腸 ニ遭遇 セルヲ報 ゼ リ.

    本 例 ニ於 テ ハ發作 中,特 ニ下 腹 部 殊 ニ盲 腸 部 ニ頑固 ナ ル緊 滿 感 乃 至 輕 度 鼓 腸 ヲ訴 ヘ タル モ壓

    ニ對 シ過 敏 ナ ラズ,腹 壁 緊張 等 ヲ認 メズ,盲 腸 炎 ヲ想 起 セ シムル程 度 ニ至 ラザ リキ.斯 ク ノ如

    キ症 候 ハ,輕 度 ナ ガ ラ間歇 時 中 ニ モ存 續 セ リ.

    第5項  肝 臟

    肝 臟 ノ肥 大 ハ本症 ニ於 ケル重 要 ナル 他 覺 的症 候 ニ屬 シ,即 ニWerner210-221)及 ビHis68-71)氏

    等 ノ報 告 ニ於 テ此 所 見 ヲ特 筆 シ,其 ノ後 ノ大 多數 ノ學 者何 レモ亦 之 ヲ確 認 セ リ. Jungmann92)

    氏 ハ約60%ニ 肝 ヲ觸 ル ル ト爲 セ ドモ, Munk138)氏 ハ變 化 ヲ示 サ ズ ト謂 ヘ リ. Jungmann92)氏

    ハ 肝 肥大 ヲ以 テ肝臟 容 積 ノ増 加 ニ歸 シ,始 メハ肝 臟 濁 音 界 ノ増 大 シ,後 ニハ乳 線 ニ於 テ 右 肋 弓

    縁 下2-3指橫 徑 ノ部 ニ觸 レ,時 ニ ハ右肺 下 界横 隔膜 ノ擧 上 ニ ヨ リ移 動 僅 少 トナ リ,肝 ハ觸 診 ニ

    際 シ疼 痛 ヲ感 ズ ル ノ ミナ ラズ,自 發 的 ニ モ時 トシテ,背 部 及 ビ肩 胛 部 ニ放 散 ス ル右 上腹 部或 ハ

    右 季 肋 部 ニ限局 セル激 痛 ヲ發 シ,漸 次其 ノ硬 度 ヲ増 シ,其 ノ邊 縁 ハ鋭 利 ニ傾 ク モ ノナ リ ト説 ケ

    リ.本 例 ニ於 テ ハ,肝 下縁 ヲ始 ヨ リ右 肋 弓 縁 下2指 横 徑 ノ部 ニ觸 ル ル モ,觸 診 ニ際 シ疼 痛 ヲ感

    ゼ ズ,上 腹 部或 ハ右季 肋 部 ニ 自發 痛 無 シ.右 肺 下界 左 ニ比 シ移 動 僅少 ナ リ ト思 惟 セ シムル 事 ナ

    ク,肝 臟 ノ發作 中 ノ増 大,發 作後 ノ復 歸 ノ如 キ變 化 ヲ特 ニ認 ム ル ヲ得 ザ リキ.

    尚ホ Brasch15-16), Stintzing186), Werner u. Haenssler213) 氏等ハ其 ノ際起 ル黄疸 ニ就テ記述 シ, Sachs169)

    氏 ハ 時 ニ結 膜 ニ, Korbsch104)氏 ハ鞏 膜 ニ經 度 ノ黄 疸 ヲ見 ル事 ア リ ト云 ヘ ル モ, Jungmann92)氏 ハ決 シテ 斯

    カ ル 例 ニ際 會 セ ル事 ナ ク,且 肝 臟機 能 障 碍 ノ爲 ニ來 タル糖 尿 及 ビ「ウ ロビ リ ン」尿 ニ遭 遇 セズ ト記 セ リ.

    本 例 ニ 於 テ モ 黄 疸 ヲ 見 ズ.屡 々 檢 尿 ス ル モ 糖 尿 及 ビ「ウ ロ ビ リ ン」尿 ヲ證 ス ル 事 能 ハ ザ リ キ.

    第6項  脾 臟

    脾臟モ本病 ニ關係密接 ナルモノノ如ク,多 クノ學者ニヨリテ種 々ノ百分率 ニ於テ其腫大ヲ證

    明 セ ラル.即 チ Arneth5)(34%), Enderle38)(2/5), Korbsch105)(90%), Lehndorf u. Stiefler110)

    (8%), Richter158)(16% 打 診 的 ニ, 10%觸 診的), Schittenhehm u. Schlecht175)(30%), Tate

    and McLeod194-195)(10-15%), Werner u. Haenssler213) (1/4) 氏等 ノ報告之ナ リ,其 ノ他

    Brasch15), Franke42), Munk, Sachs169), Stintzing186), Thorner197), Zollenkopf226) 氏ハ殆 ド

    常 ニ或ハ過半數ニ脾腫ヲ認 ムト爲 シ,•@ Fleck40), Frese44), Hasenbalg62),•@ Herringham64-65),

    •@ Hunt and Rankin77), Jahn84), Kayser96), Oppenheim145), Stuhmer190) ノ諸 家 ハ之 ニ反 シテ

    脾 腫 ヲ證 明 セズ ト云 ヘ リ. Jungmann92) 氏 モ亦10-40%ニ 脾 腫 ヲ證 シ,多 數 ノ場 合 ニ於 テ ハ

    最初 ノ熱發作ニ際 シ,呼 吸ニ當 リ左腹側部或ハ左胸側部ニ感ゼラルル疼痛乃至刺痛ハ殆 ド常ニ

    170

  • 五 日熱 ノ臨 牀的實驗的研 究(第1囘 報告) 1709

    脾 臟 ノ急 劇 ナ ル増大 ニ因 ル被 膜 ノ緊張 ニ由來 ス ル モ ノ ニ シテ,最 初 脾 ノ腫 大 ハ通 常 打 診 ニ依 ツ

    テ ノ ミ證 明 シ得 ル モ, 2-3日 中 ニ其 ノ下端 ヲ モ觸 ルル ニ至 ル モ ノナ リ ト謂 ヒ,間 歇 時 ニ於 テ縮

    小 セ シ脾 臟 ハ(縮 小 セズ シテ殘 存 セル モ ノモ ア リ)屡 々既 ニ次 囘 發 作 ノ 直前 ニ再 ビ腫脹 シ,而 モ

    發 作毎 ニ斯 カ ル現 象 ヲ反 復 スル 事 アル ヲ注 意 セ リ.亦 「チ フ ス」型 及 ビ不 全 型 ニ於 テハ屡 々永 ク

    脾 腫 テ觸 ル ル モ ノナ リ(Jungmann)ト 謂 ハ ル.本 例 ニ於 テ ハ發 作時 又 ハ間 歇時 ノ差 別 無 ク,終

    始 脾臟 ノ腫 大或 ハ脾 濁 音 界 ノ増 大 ヲ證 明 スル事 能 ハズ,且 脾 臟 部 ノ 自發 痛,壓 痛 等 ヲ訴 ヘ タ ル

    コ ト無 シ.

    第7項  泌 尿 生 殖器 系

    各學者 ニヨ リ報 告 サ レタル 本症 ニ於 ケル微量 ノ蛋 白尿ハ,恐 ラク他 ノ傳染病 ノ際 ニ見ル熱性蛋 白尿 ニ相

    當 ス 可 キ モ ノニ シテ, Korbsch, Sachs169), Schittenhelm173-175) 氏 ハ是 レヲ以テ輕度 ノ腎刺戟 ニ歸セル モ,

    Jungmann92) 氏ハ本病 ニ於テハ眞性炎性 症状即 チ強度 ノ上皮剥屑,血 尿等 ヲ決 シテ見 ズ ト云 ヘ リ. Herzog66)

    Munk138), Sachs169), Stuhmer190), Topfer201) 氏等 ハ腎炎性現象部チ蛋白尿,血 尿及 ビ浮腫 ノ起 レルモノ及 ビ

    Sachs氏 ハ「ネ フ ロ ー ゼ」ノ合併 セ ル モ ノ ヲ觀 察 セ ル モ,五 日熱 ノ果 シテ 其 ノ原 因 ヲ爲 セ ル ヤ否 ヤ ニ關 シテ ハ

    種 々 ノ臆 説 ア リ. Schittenhelm u. Schlecht173-175) 氏ハ偶然兩疾患 ノ合併 セルカ,或 ハ既ニ存在 セシ腎炎 ニ本

    病 ノ加 ハ リ シモ ノナ リト謂 ヒ.其 ノ腎炎 成 立 ニ關 スル病 因的 原 因 ト見 ル 可 キ素 因 モ發 見 ス ル ニ至 ラザ リシ

    ヲ 説 ケ リ. Herzog66)氏 ハ五 日熱 ノ際 ニ腎臟 ノ關 興 ス ル事 餘 リニ 稀 ナ ラズ且 既 ニSachs氏 ノ特 筆 セ ル ガ如 ク

    戰 爭 腎炎 ノ際,五 日熱 ハ屡 々原 因 的役 目 ヲ演 ズ ル モ ノナ リ ト云 ヘ リ.之 ニ反 シテ Werner u. Haenssler213) 氏

    ハ腎障碍 ヲ證明 セズ, Fleck40), Lehndorf u. Stiefler110-111), Moltrecht126), Thorner197) 氏ハ亦尿中蛋 白 ヲ認

    メ ズ トイ ヘ リ.但 シ Lehndorf u. Stiefler 氏ハ往 々一過性 ノ輕度 熱性蛋白 ヲ證明 セシ事アル ヲ認 セ リ.

    本例 ニ於テハ1囘 輕度 ノ一過性蛋白尿ヲ證明 セルモ,其 ノ際Jungmann氏 ノ謂ヘル如キ硝子

    樣圓柱等 ヲ見タル事ナク,且 腎炎 ヲ疑ハシムル尿沈渣 ニ遭遇 セズ.但 シ余ノ動物實驗 ニ於ケル

    試獸 ノ組織學的研究ノ結果(後 報第3篇 參照)ニ徴スレバ,腎 炎ヲ惹起 セシメ得ルコ ト恐 ラク可

    能事ニシテ,余 ハ腎炎 ヲ以テ本病ノ部分現象乃至ハ結果的現象ニ歸 ス可キヲ信ズルモノナリ.

    Schwinge180) 氏ハ多數例 ニ於 テ血尿ヲ見, Dressel138), Lichtheim138), Rocha-Lima136) 氏等ハ

    發 作 性 血色 素尿 ニ就 キ テ述 ベ タ リ.此 他Korbsch105)氏 ハ「ウ ロ ク ロ モー ゲ ン」反 應 ノ陽 性 ナ リ

    シヲ報 ジ, Becher9)氏 ハ屡 々「ヂ ア ツオ 」反應 ノ陽 性 ナ リシヲ記 セル モ,他 ノ諸 家 何 レモ之 ヲ否

    定 セ リ.本 例 ニ於 テ ハ「ヂ アツ オ」及 ビ「ウ ロ ク ロ モー ゲ ン」反應 共 ニ陰性 ナ リキ.

    本病經過 中時 ニ膀胱障碍 ヲ起 ス事 アリ ト云 ヘリ. Richter158)氏 ハ17%ニ 於テ尿道尖端 ニ強度 ノ灼熱及 ビ

    〓痒感 アルヲ見, Munk138)氏 又斯 カル1例 ヲ報告 シ, Jungmann92)氏 モ彼 ガ症例 ニ於テ,特 ニ最初 ノ1週

    間 ニ於テ該症状 ノ出現 スル事 アルヲ報告 シ, Reitler及 ビKolischer92)兩 氏 モ亦同樣 ノ障碍 ヲ觀察セ リ.本 例

    ニア リテハ之等 ノ症状全 然無 ク,生 殖器 ニ於テモ特別 ノ變化 ヲ認 メザ リキ.

    第8項  神 經 系

    五 日熱 ニ於 テ,神 經 系障碍 ノ有無 ニ關 シテハ其 ノ報告區 々 タリ.或 ル者ハ強キ神經 症状 ヲ缺如 ス ト爲 ス

    モ,又 該障 碍 ヲ重大視 スル學者 モ少 ナカラザルガ如 シ.

    171

  • 1710 八 木 忠 亮

    Goldscheide〓49)氏 及 ビRichter158)氏 ハ本病 ノ際,遭 遇 セ ラ ル ル神 經 障 碍 ヲ精 密 ニ研 究 シ,殊 ニ前 者 ハ 深

    部 感 覺 ノ領域 ニ於 ケル一 般 痛 覺,就 中 脛 骨 痛 ハ 決 シテ 常存 ノ モ ノナ ラザ ル モ,其 ノ最 タル モ ノニ屬 ス トイ ヘ

    リ.是 レ一 ニ 本病 ノSchienbeinfieberト 名 ヅ ケ ラ レタ ル所 以 ナ リ.

    本病 ニ於 ケル下腿痛 ハ,比 較的特有ナル症候 ニ シテ,多 數 ノ學 者 (Brasch15-16), Enderle38), Fleck40),

    Franke42), Frese44), Goldscheider49), His68-71), Jahn84), Jungmann87-92), Kayser96), Korbsch104-165), Kraus u.

    Citron106), Lehndorf u. Stiefler109-110), Linden112-113), Moltrecht126), Munk u. Rocha136), Sachst169), Stintzing

    186), Thorner197), Werner210-221) u. A.) 何 レモ之 ヲ認 メ, Jungmann 氏 ハ約80%ニ, Lehndorf u. Stiefler

    氏 ハ96%ニ, Schittenhelm u. Schlecht173) 氏 ハ80-85%ニ, Werner氏 ハ約90%ニ 其 ノ存 在 ヲ證 明 セ リ ト

    云 フ.該 疼 痛 ハ通 常 既 ニ 熱發 作前 ニ始 マ リ熱 消退 ト共 ニ輕 快 ス ル モ,間 歇 時 ニ モ全 ク消失 セ ズ シテ屡 々 熱 ノ

    消 退 後 モ尚 ホ永 ク殘 存 セ ル事 ア リ.或 ハ初 期 ニテ ハ僅 ナ ル カ全 ク缺 如 セ ル モ,後 發 ス ル發 作 ニ際 シテ始 メ

    テ 現 レ 來 タル事 ア リ.通 常 兩 側 ニ起 リ牽 引性,倦 怠 性 ,敲 打性,穿 孔 性,燒 灼 性,或 ハ 破裂 性 ニ シテ 時 ニ壓

    迫 又 ハ 敲 打 ニ ヨ リ疼 痛 ヲ増 ス. Lehndorf u. Stiefler110)氏 ハ脛 骨 痛 ノ強 サ ニ於 テ 一 定 ノ週 期 性 ヲ認 メ,其 ノ

    疼 痛曲線 ハ體温曲線 ト嚴重ニ平行 スルモ ノナ リト謂 ヘリ. Jungmann, Lehndorf u. Stiefler 及 ビStuhmer190)

    氏 等 ニ據 レバ疼 痛 ハ午 後 起 ル ヲ常 ト シ,殆 ド夜 間 堪 ヘ得 ザ ル ニ至 リ睡 眠 ヲ妨 グル ニ至 ル事 ア リ.其 ノ際 多 少

    特 殊 ノ顔 貌 ヲ呈 ス ル ヲ以 テAszodi u. Szego8)氏 ハ脛 骨顔Facies tibialisト 名 附 ケ タ リ.

    本例 ニ於 テ モ脛 骨 殊 ニ其 ノ下1/3部 ニ倦 怠 性疼 痛 ヲ訴 ヘ,指 壓 或 ハ叩 打 ニ ヨ リ激 増 シ,發 作

    ノ終 ル ト共 ニ輕 快 セ リ.通 常 兩側 性 ニ シテ左 側 ニ於 テ強 ケ レ ドモ,之 ニ由 テ睡 眠 歩 行 等 ノ障 碍

    セ ラル ル 事 無 ク,自 覺 的 ニ「ガ サ ガ サ」スル ガ如 キ感 ア リ ト云 ヘ リ.間 歇 時 ニハ殆 ド疼 痛 ヲ訴 フ

    ル 事 ナ ク,單 ニ輕 度 ノ倦 怠 及 ビ僅 微 ノ「ガ サ ガ サ」スル ガ如 キ感 ヲ訴 フル ニ過 ギズ.

    本 下 腿 痛 ノ原 因 ニ關 シテハ種 々 ノ説 ア リ. Dehio31)氏(1877)始 メテ脚 痛 ニ就 キ テ記 載 シ,

    •@179), Schuller92), Stransky187) 氏 ハ1914年 冬既 ニ脛 骨 痛 ニ注 意 セル モ夫 々,脛 骨神

    經 痛,脚 絆 痛,戰 場 神 經 痛 ト爲 シ,五 日熱 ノ一 症 候 トハ感 知 セザ リ シモ ノナ リ.然 ル ニ其 ノ後

    Gratzer55), Kraus u. Citron106), Sachs169) 氏等 ノ精密ナル研究相踵 ギ,殊 ニ Kraus u. Citron

    氏 ハ多クノ例 ニ於テ,他 覺的 ニ「レ」線的ニ證明 シ得ル鬆粗性骨變化及 ビ骨膜ノ限局性腫脹 アル

    ヲ確 メ以テ傳染性 シ爲 シ,臨 牀上及 ビ流行學 上ノ見地ヨリ此等 ノ症例 ガ五日熱 ト同一ノモノナ

    ル ヲ 主 張 セ リ.亦Stintzing186)氏 モ 同 樣 ノ所 見 ヲ報 告 シ, Arneth4-6), Lehndorf u. Stiefler

    109-110), Munk u. Rocha-Lima136) 氏等 ハ之 ニ反 シテ如 上ノ病 的 像 ヲ證 明 セザ リキ. Jungmann92)

    氏ハ下腿殊 ニ下半部或ハ下1/3部 ノ内側 ニ於ケル疼痛ハ,骨 膜炎ニ由來 スルモノニハ非ズ シテ,

    筋 肉及 ビ腱 ノ疼痛 ニ關係ヲ有 シ,其 ノ他兩側性 ニシテ屡々腦脊髓黴毒ノ際 ニ於 ケル症状 ヲ想起

    セシム可キモノアルヲ認 メ,以テ恐ラク中樞性原因ニ歸ス可 シト爲 セリ. Goldscheider氏 亦脛

    骨 ニ特 ニ多クノ斯カル痛點ヲ(殊ニ前縁尚ホ内側 ニ)發見シテ,脛 骨痛ハ電氣的刺戟痛 ト同一性

    ナルヲ確認 シ,其 ノ原因ヲ骨及 ビ骨膜 ノ疼痛ニ歸セリ.

    其 ノ他該疼痛ヲ寒暖等 ノ温熱的原因ニ歸セル者ニ Schrotter, stransky, sittmann183) 氏等 ア

    リ. Labor108)氏 ハ榮 養 障 碍 恐 ラ ク「ビタ ミン」缺 乏症 ニ由 來 スル モ ノ ト爲 シ, Pritzi152)氏 ハ因 ヲ

    172

    Sohrotter

  • 五 日熱 ノ臨牀的實驗的研究(第1囘 報告) 1711

    扁 平足 ニ求 メ ン トセ リ. Queckenstedt154)氏 ハ 「チ フ ス」ノ際, Siegert92), Sittmann183)氏 ハ

    「チ フ ス」,「パ ラ チ フ ス」,赤 痢 ル際 ニ脛 骨痛 ヲ認 メ各 獨 特 ノ 見解 ヲ保 有 セ リ. Burchard23)氏 ハ

    精 細 ナ ル研 究 ヲ企 テ,眞 性 五 日熱32例 ニア リテ,其 ノ脛 骨 々端 線 及 ビ稀 ニ ハ腓 骨 々端 線 時 トシ

    テ ハ亦 前膊 骨 ニ於 テ,多 少 ニ拘 ラ ズ,殆 ド常 ニ,骨 膜 炎 ノ像 アル ヲ「レ」線 的 ニ證 明 シ,同 時 ニ

    從 軍者 中非 五 日熱 患 者 及 ビ脛 骨痛 無 キ者 ノ約 半 數 ニ就 テ モ之 ト同樣 ナ ル「レ」線 的 骨變 化 ノ認 メ

    ラル ル ニ注 目 シ,遂 ニ氏 ハ 「該 骨膜 炎 性 變 化 ハ五 日熱 患 者 ニ於 テ特 ニ著 明 ナ リ ト雖,尚 ホ僅 ノ

    百 分 率 ニ於 テ他 ノ從 軍 者 ニモ證 明 サ レ得 ル所 ヨ リ觀 テ,骨 膜 炎 ハ本 疾 患 ノ結 果 ニ非 ズ シテ,本

    疾 患 ノ發 現 以前 ヨ リ既 存 セ シモ ノナ ル可 ク,偶,本 症 ノ加 ハル ア リテ茲 ニ疼 痛 ヲ發 スル ニ至 リ

    シモ ノナ リ」 トノ結 論 ニ到達 セ リ.

    今 本 例 ノ「レ」線 像 ニ就 テ檢 スル ニ,左 脛 骨 體 ノ上1/5部 附 近 ヨ リ下方 中央 部 ニ及 ブ,主 トシ

    テ 内側 ニ相 當 ス ル 箇所 及 ビ腓 骨 ノ上 部 比較 的狹 キ部 位 ニ限 局 セ ラ レ,骨 質 ノ慢性 炎症 性 ノ肥 厚

    ヲ認 ム.是 レ慢 性 ニ經 過 スル骨 膜 下 ノ變 化 ア リテ,遂 ニ骨 膜 ニ及 ビ,骨 膜 ノ皮 質 ニ化骨 現 象 ヲ起

    セ シモ ノ ト思 惟 スル ヲ得.同 時 ニBurchard氏 ノ例 ニ於 ケル ガ如 ク,右 橈 骨 ノ中央 部 拇 指 側 及 ビ

    右 上膊 骨 ノ中 央部 ヨ リ上 部 ニ於 テ,脛 骨 ニ見 タ ル ト殆 ド同樣 ノ變 化 アル ヲ發 見 セ リ. Werner221)

    氏 ハ主 トシテ 骨膜 ヲ襲 ヒ,疼 痛 ノ強 サ ハ「レ」線 的 ニ證 明 シ得 ベ キ骨 膜 炎 ノ變 化 ニ相 當 セザル モ,

    此 等 管状 骨 ノ骨髓 及 ビ骨 膜 ニ於 ケル刺 戟 状態 ハ,五 日熱 病 原體 ノ發 育 ニ關 係 アル ハ明 カ ナ リ ト

    云 ヘ リ.以 上ニ反 シテFranke42)氏 ハStuhmer氏 ノ記 載 セル所 ノ脛 骨 其 ノ モ ノ ノ腫 脹 及 ビ骨

    膜 ノ浮 腫 ハ 見 ル ヲ得 ザ リ シヲ述 ベ タ リ.

    第9項  其 ノ他 ノ神 經 症 状

    本病 ノ際 ニハ身體種々 ノ部分 ニ疼痛 ヲ覺 ユル モノニ シテ, Arneth4-6)氏 ニヨ レバ神 經痛乃至「ロイマチス」

    性 ノ訴 ハ約70%ニ 達 ス ト云 ヘ リ. Buchbinder20-21), Mosler130)及 ビRichter158)氏 等 ハ各獨立的 ニ知覺障碍

    即 チ神經分布領域 ニ於テ,屡 々輕 キ接觸 及ビ寒 冷刺戟 ニ對 シ高度 ノ知覺過敏ア リ,或 ハ部分的 ニ起 ル擴張 筋

    及 ビ括約 筋麻痺 ヲ反 復發見 スル事アルニ注意 シ,更 ニRichter氏 ハ以上諸症候 ノ他 ニ一種 ノ異常感覺 ノ存在

    セルモノニ遭遇 シMyelitis wolhynicaト 呼 ベ リ, Linden112-113)氏 ハ經過 中痙攣 及 ビ牙關緊急 ノ起 ル ヲ觀察

    セ リ.本例 ニ於テハ上下肢殊 ニ前膊及 ビ下腿内側 ニ於テ一種 ノ異常感覺 ヲ證明 セシヲ以 テ,種 々精査 セ シモ

    一 定 ノ神經分布領域 ニ合致セ シモ ノアルヲ發 見セザ リキ. Goldscheider氏 等 ハ下 腿骨 ノ他 ニ,骨,筋 肉及 ビ

    神經幹 ニ於テ疼痛アル ヲ認 シ,之 ヲ以テ本病 ヲ一部「ロイマチス」ニ屬 スルモ ノト考察セ リ. Werner氏 モ其

    ノ疼痛 ハ筋肉屡々骨殊 ニ脛骨 ニ限局 シ,尚 ホ屡々上腿,腰 部及 ビ臀 部 ニ時 トシテハ亦指關節 ニ於テ感 ゼ ラル

    ルモ ノナ リト云 ヘ リ. Munk138)氏 ハ多數 ノ患者 ニ於テ知覺異常即 チ腕,手 等 ノ 「ムヅガ ユク」恰モ感 電セシ

    ガ如 キ感覺 ヲ有スル ヲ認 メ,或 ハ僅 ノ不全麻痺 サヘ見 ラ レ,尚 ホ血管運動神經領域 ニ於テハBuchbinder氏

    ノ云 フガ如 ク手足 ニ厥 冷感 ア リ,他 覺的 ニ四肢 ノ遠隔部紫藍色 ヲ呈 セル ヲ見 ル ト云 ヘ リ.此 他,同 氏 ニ據 レ

    バ強度種 々ニシテ,時 トシテ頻發 スル全 身發 汗ノ外 ニ局所殊 ニ下腿 ニ發 汗 ヲ來 タシ,足,膝 等 ノ全 ク厥冷 ス

    ルニ モ拘 ラズ,腓 腸部 ニ發 汗スルヲ見 ル事ア リト記 セ リ.又 神經出現部位 ニ激 シキ自發痛及 ビ壓痛 アル ヲ

    173

  • 1712 八 木 忠 亮

    觀 察 セ ル モ ノア リ.四 肢 運 動 障 碍 ニ就 テ ハ報 告 セ ル モ ル無 シ.

    Werner u. Haenssler213)氏 ハ高 熱 時幻 覺 的 錯 亂 及 ビ恐 怖 觀 念 ヲ有 セ ル モ ノ ヲ實 驗 シ, Jungmann u. Ku

    ozynski〓9-92)氏 ハ「チ フス」型 ニ シテ失 神,痙 攣,譫 語, 「メ ニ ンギ ス ムス 」ヲ伴 ヒ シモ ノ ヲ報 告 シ, Stahle184)

    氏 ハ激 シキ脛 骨 痛 ヲ有 セ ル5例 ニ於 テOppenheim氏 現 象 ノ陽 性 ナ リシ ヲ認 メ, Oppenheim氏 現 象 ヲ以 テ 脛

    骨 痛 ノ程 度 測 定 器 ナ リ ト云 ヘ リ.

    Sachs169) u. Stintzing186)氏 ハ發 熱 中屡 々膝 蓋 腱 反 射 ノ亢 進 ヲ見, Schittenhelm u. Schlecht173-175)氏 ハ之

    ニ反 シテ發 熱 中 却 ツテ 該 反 應 ノ時 々缺 如 ス ル事 有 ル ヲ注 意 セ リ. Stransky187)氏 ノ報 告 セ ル モ ノハ 反 射 亢 進

    ハ見 ザ ル モ,膝 蓋 腱 反 射 ハ疼 痛 側稍 弱 シ ト爲 セ リ.

    腦 脊 髓 液 ニ 就 テ ハJungmann92)氏 ハ屡 々異 常所 見 ヲ確 證 シ, Zollenkopf226)氏 ハ項 強 直 ヲ伴 ヘ ル例 ニ於 テ,

    腦 膜 炎 ル疑 ヲ以 テ腰 椎 穿 刺 ヲ行 ヒ脊髓 壓 ノ上 昇 及 ビ蛋 白 質 含 量 ノ増 加 セ ル ヲ認 メタ ル モ, Cassirer27)氏 ハ

    膀 胱障 碍 ヲ呈 セ ル モ ノ ニ就 テ檢 シ,其 ノ何 等變 化 無 カ リシ ヲ報 ゼ リ.

    本 例 ニ 於 ケ ル 發 作 時 腦 脊 髓 液 所 見 ニ 就 テ 觀 ル ニ,臥 位 ニ於 テ155mm水 柱 ヲ示 セ ル ハ 稍 高 シ

    トス ベ ク,蛋 白 含 量 等 ハ 正 常 値0.02-0.025%ナ ル ニ 比 ス レバ 少 シ ト云 フ ヲ 得 ベ シ.其 ノ 他 ニ於

    テ ハ 何 等 異 常 所 見 ヲ證 明 ス ル ニ 至 ラ ズ(第6表 參 照).

    第10項  皮 膚

    本 病 初 期 ニ於 テ ハ,身 體諸 所 ニ他 ノ傳 染病 ニ於 ケル ト殆 ド區 別 ス ル事 能 ハザ ル 「ヘル ペ ス」ヲ認 メ タル者

    少 カ ラ ズ.其 ノ頻 度 ハ種 々 ニ シテ, Brasch15-16) 氏 ハ1-2%ニ, Enderle38)氏 ハ多 數 ニ於 テ, Freund15)氏 ハ

    400例 中2例 ニ, Korbsch104-105)氏 ハ殆 ド常 ニ, Werner221)氏 ハ多 ク トモ5%ニ,口 唇 「ヘ ルペ ス 」ヲ證 明 セ

    リ. Buchbinder20-21), Fleischmann41)氏 ハ最 モ屡 々 口唇 「ヘ ルペ ス」ヲ見, Fleischmann氏 ハ時 ニ舌 「ヘ ルペ

    ス」(20%)ヲ, Buchbinder氏 ハ 稀 ニ鼻 「ヘ ルペ ス」ヲ認 メ,特 ニ甚 ダ シ キ1例 ト シテ 口唇 鼻 部(殊 ニ右 顔 面

    ニ),右 外 聽 道外 部 及 ビ耳 殻 ニ群 集 シテ 發 生 シ,更 ニ右 頬 部 及 ビ左 右 眼 縁 マ デ及 ビ,且 永 ク存 在 セ シモ ノヲ

    記 載 セ リ.尚 ホEnderle38). Galambos47), Gratzer55), Jahn84), Lehndorf u. Stiefler109-110)ノ 諸 家 ハ ロ唇 「ヘ

    ルペ ス」ヲ, Mosler129-130)氏 ハ 口唇,鼻 「ヘ ルペ ス」ヲ, Kayser96)氏 ハ 帶状 「ヘ ル ペ ス」ヲ報 告 セ リ。 特 ニ重要

    ナ ル ハ始 メBrasch, Kosbsch民 記 載 シ其 ノ後 諸 家(Bittorf12), Drummond36), Goldscheider49-50), Jahn84),

    Jungmann u. Kuczynski89), Suchs169), Schittenhelm u. Schlecht173-175), Schmincke177), Topfer199-201)u. A.)

    ノ確 證 セ シ特 殊 ナル 發 疹 ノ出 現 ナ リ トス.但 シ該 症 状 ハ頻發 スル症 状 ニ非 ズ シテ, Jungmann92)氏 ハ 自 己 ノ

    症例 ニ於 テ約2%ニ 見 出 セ リ ト謂 ヘ リ.其 ノ記 載 ニ從 ヘ バ,「 一 部 ハ 既 ニ最 初 ノ熱發 作 中 ニ現 ル ルモ,多 ク

    ハ 熱 ノ消 退 ト共 ニ著 明 トナ リ,又 最 モ屡 々後 發 ノ發 作 ニ於 テ 始 メテ認 メ ラル ル モ ノニ シテ,注 意 ス可 キ ハ

    多 ク ノ發 作 ニ於 テ 陸續 トシテ 再 發 シ,其 ノ後 間歇 時 ニハ 全 ク消 失 ス ル ニ在 リ.大 多 數 ノ場 合 ニ於 テ ハ薔 薇

    疹 樣 ノ性 質 ヲ有 シ,其 ノ個 々 ノ小 發 疹 ハ非 常 ニ多 數 ナ ラザ ル モ胸 壁 稀 ニハ腹 部 ニ發 生 シ,直 徑1-2mmニ

    シテ,蒼 白薇 薔 色 ヲ呈 シ,時 トシテ ハ皮膚 面 ヨ リ稍 隆 起 シ,周 圍 ハ不 明 確 且 手 壓 ニ ヨ リ容 易 ニ褪 色 セ シ メ得

    ル モ ノナ リ.發 疹「チ フス」薔 薇 疹 ノ始 マ リ或 ハ新 鮮 ナ ル麻 疹 發 疹 ニ最 モ良 ク類 似 セ ル モ,色 調 ハ通 常hellニ

    シテ1-2日 尚 ホ3日 前後 存 在 シ,其 ノ後 痕 跡 モ ナ ク治癒 ニ赴 クモ ノナ リ」 ト謂 ヘ リ.其 ノ他Schittenhelm

    u, Schlecht氏 ハ薔 薇 疹 類 似 ノ發 疹 以 外 出 血 シ易 キ點 状 ノ發 疹 ヲ記 述 シ, Jungmann氏 及 ビSchmincke177)氏

    174

  • 五 日熱 ノ臨牀的實驗的研究(第1囘 報告) 1713

    ハ該發疹 ノ組 織學的研 究ヲ爲 セルモ, Enderle, Freund, Lehndorf u. Stiefler氏ハ發疹 ヲ見 ズ ト云 ヘ リ.

    本 例 ニ於 テ ハ薔 薇 疹 樣 發 疹 テ見 ズ.但 シ發作 時 上肢 屈 側 面,下 肢,前 胸 部,背 部等 ニ形 態 大

    小 共 ニ不 定,互 ニ癒 合 ノ傾 キ著 明 ニ シテ 皮膚 面 ヨ リ隆 起 セル 一 種 ノ蕁 麻 疹 樣發 疹 ヲ生 ジ,周 圍

    ハ 發 赤 スル モ疹 自 己 ハ色 稍 蒼 白 ニ シテ輕 キ痒 感 ヲ有 セ リ.該 發 疹 ハ熱 消 退 ト共 ニ殆 ド消失 スル

    ヲ常 トシ,斯 ク ノ如 キ状 態 ハ發 作 時 反 覆 セ シモ,經 過 ト共 ニ漸 次 輕度 トナ レ リ. Buchbinder氏

    モ1例 ニ於 テ蕁 麻 疹 ノ臀 部,膝 膕 部 ニ生 ジタル ヲ報 告 セ リ.其 ノ他激 痛 アル片 側 或 ハ兩 側 性 肋

    間 神經 痛 ヲ伴 ヘ ル帶 状 匐 行疹,其 ノ他 手背,指,前 額 部,鼻 側 部 ニ限 局 セル白 癜 風 竝 ニ榮養 性

    皮膚 變 化(以 上Jungmann),毛 髪 脱落(Topfer),爪 現 象(Ludwig117))等 ヲ見 タ ル報 告 アル モ

    本 例 ニ於 テ ハ斯 ク ノ如 キ變 化 ヲ認 メズ.

    本 症 ニ於 テ ハ往 々浮腫 ノ來 タル事 ア リ. Stuhmer190)氏 ハ屡 々之 ニ遭 遇 セ リ ト云 フ.本 例 ニ於

    テ モ始 メ稍 著 明 ナ ル浮 腫 ヲ下 腿 及 ビ足 背 ニ認 メタ リ シモ「オ リザ ニ ン」ノ使 用 ニ ヨ リテ容 易 ニ消

    退 セ リ.コ ノ「オ リザ ニ ン」ニ ヨル好 影響 ヨ リ見 テ本 例 浮 腫 ノ成 立 ヲ「ビタ ミ ン」缺 乏 ニ歸 セ ン ト

    ス ル ニ大 ナ ル矛 盾 ヲ感 ゼ ザル ガ如 キ モ,コ レノ ミヲ以 テ直 ニ五 日熱 ニ於 ケ ル浮 腫 成因 ヲ説 明 セ

    ン トスル ハ,素 ヨ リ早 計 ノ謗 リヲ免 カ レザ ル モ ノ ト信 ズ.

    第11項  血 液

    本 病 ノ經 過 中發 現 スル血 液 ノ形 態 學 的 變 化 ハ,最 モ特 有 ナル モ ノ トシテ,當 初 ヨ リ諸 家 ニ ヨ

    リ特 ニ詳細 ニ研 究 サ レ,既 ニ 多數 ノ報 告(Benzler10-11), Brasch15-16), Jungman u. Kuczynski

    89), Korbsch104-105), Lehndorf u. Stiefler109-110), Linden112-113), Munk136-138), Rumpel166-167),

    Stintzing186), Thorner197), Werner u. Haenssler213)u. A.)存 在 セ リ.就 中最 初 ニ之 ガ血液 像

    ヲ確 立 セ シハWerner, Haenssler兩 氏 ニ シテ,該 血液 像 中殊 ニ興 味 アル變 化 ヲ示 スハ 白血 球 ナ

    リ トス.今 本 實 驗 例 ニ就 テ觀 ル ニ(第3表 及 ビ第4表 參照)發 作 間歇 時 ニ1cmmニ 於 テ平 均 約

    9500ノ 數 ヲ示 セル 白血球 ハ熱 發作 ト共 ニ12755ヨ リ24750ニ 迄 増 加 ス.此 發 作 時 白血 球増 多 ノ

    度 ハ,發 作 ノ囘 數 ヲ重 ヌ ル ニ從 ツテ次 第 ニ不 著 明 トナ レ リ.此 等 ノ事 實 ハ 能 ク文 獻 ノ記 載 ニ一

    致 シ, Jungmann92)氏 ハ發 作 時12000-30000ニ 達 スル 白 血 球 増多 ヲ認 メ,且 最 初 ノ發 作 ニ於 テ

    最 モ顯 著 ナ リキ ト謂 ヒ, Werner u. Haenssler氏 ハ30000至 ヲ算 シ, Brasch氏 ハ10000-12000

    ヲ動 搖 シ, Franke氏 ハ8800-12300, Korbsch氏 ハ8000-12000, Thorner氏 ハ20000或 ハ夫

    レ以 上 ニ達 ス ト謂 ヘ リ. Lehndorf u. Stiefler氏 ハ 發 作時14800ノ 數 ヲ示 シ,稀 ニハ却 ツテ變

    化 ヲ見 ザ ル場 合 アル ヲ記 シ, Benzler氏 ハ發作 時 ニ於 ケ ル 白血 球 増加 ハ一 定 不變 ノモ ノ ナ ラズ

    トイヘ リ. Jungmann氏 ハ 白 血球 増加 ノ持續 ハ平等 ナ ラズ,時 ニ ハ發 作 時 中2-3囘 ナル事 ア

    ル モ,又 屡 々熱 上昇 時數 時 間 増加 ヲ示 セル ノ ミニ シテ,發 作 消 退 ノ際 ニ ハ既 ニ平 常 ニ復 セル例

    アル ヲ記 セ リ.本 例 ニ於 テ ハ持 績 時 間 ハ精 密 ニ述 ブル 事能 ハ ザル モ,概 ネ發 熱 時最 大 數 ヲ示 シ,

    時 ニ前 日 ニ於 テ 既 ニ増加 セル ヲ見 タル 事 ア リ.本 例 ニ見 ル 白血 球 増 加 ハBenzler(比 較 的 及 ビ

    絶 對 的), Brasch, Franke, Hildebrandt67), Jungmann u. Kuczynski氏 等 ノ注 意 セル如 ク,

    175

  • 1714 八 木 忠 亮

    主 トシテ 中性 顆粒 白 血 球 ノ増 加 ニ因 由 シ,且 發 作時Arneth氏 ノ所 謂 左 方 核 移動 ヲ毎 常 證 明 ス

    ル ヲ得 タ リ.即 チ桿 状核 白血 球 ハ熱 發 作時 ニ6.5-15.5%ヲ 示 シ,間 歇 時 ニ ハ4.5-10.5%ニ 過

    ギ ズ.桿 状 核 白血球 多數 出 現 ノ度 モ發 作 ノ囘 數 ヲ重 ヌ ル ニ從 ツテ共 ニ漸 次 不 著 明 トナ レ リ.尚

    ホ發 作 時 ニ ハ時 ニ骨 髄細 胞 ヲ認 メ,又 幼 若 型 ノ比 較 的 多數 出 現 スル ヲ見 ル.但 シ該 型 細 胞 モ疾

    病 ノ進 行 ト共 ニ漸 次 減 少 ス(Arneth, Benzler, Jungmann, Werner u. A.). Werner氏 ハ此

    核 移動 ヲ以 テ五 日熱 ニ特 有 ナ ル 目標 ト爲 セ リ.

    次 ニ興 味 アル ハ中性 顆 粒白 血 球 ト淋 巴球 トノ消 長 ガ發作 シテ 互 ニ相 反 スル 事 ナ リ,即 チ

    中 性 顆 粒 白 血 球 ハ熱 發作 時 絶 對的 及 ビ比 較 的 増 加(66.5-83.0%),間 歇 時 絶 對的 及 ビ比較 的減

    少(37.5-71.0%)ア リ.淋 巴球 ハ之 ニ反 シテ,熱 發 作時 ニ比 較 的 減少(10.5-24.0%),間 歇 時

    ニ比 較 的 増 加(23.5-50.5%)ス.尚 ホ淋 巴 球 ノ間歇 時 増 加 ニ就 テ ハBenzler氏 ハ60%マ デ,

    Franke氏 ハ48%, Lehndorf u. Stiefler氏 ハ58%, Werner u. Haenssler氏 ハ50%ニ 達 ス ト

    云 ヘ リ.殊 ニWerner氏 ハ白 血球 ノ増 加 ニ相 當 シテ,主 トシテ 中性 顆 粒 白血 球 ノ90%ニ 至 ル

    増 加 ヲ來 タ シ,次 デ其 ハ減 少 ニ際 シテ ハ之 ニ反 シテ淋 巴 細 胞 ノ全 白 血 球 ノ50%ニ 至 ル マ デ ノ

    増 加 ヲ認 メタ リ.斯 ク兩 者 ノ相反 スル關 係 ハ疾 病 ノ初 期 ニ ハ顯 著 ナ ル モ,經 過 ノ進 行 ト共 ニ不

    著明 トナル ヲ 見ル.又 一般 ヨ リ云 ヒテ 淋 巴 球 ハ經 過 進 行 ト共 ニ次 第 ニ増加 シ,中 性 顆 粒細 胞 ハ

    次第 ニ減 少 ノ傾 向 ヲ有 シ,治 癒 ニ 入ル ヤ兩 曲 線 ハ次 第 ニ相 接 近 シ終 ニ 交 叉 スル ニ至 ル.是 レ實

    ニArnoldi7)氏 及 ビLehndorf u. Stiefler氏 ノ記載 ニ合 致 スル所 ニ シテ,氏 等 モ亦兩 曲 線 ノ治

    癒 又 ハ輕 快 ニ當 リ,接 近 シ或 ハ交 叉 スル ヲ説 ケ リ.之 ニ反 シPerkins and Urwick150)氏 ハ五 日

    熱 ノ血 液 ヲ精 檢 セ シモ,特 別 ハ變 化 ヲ認 メズ ト謂 ヘ リ. Jungmann氏 ハ淋 巴細 胞 ノ白 血 球増 加

    ノ消 失 ト共 ニ強 キ増 加 ヲ來 タ シ.特 ニ疾 病 ノ初 朝 ニ於 テ ハ所 謂Riederzellen od. Sahlische

    Lymphoidzellenノ 如 キ非 定型 的細 胞 ノ頻 々 タル 出現,其 他Turksche Reizform, Plasmazellen,

    Mastzellenノ 出現 スル ヲ記 述 シ, Enderle, Hildebrandt氏 ハ 骨髓 細 胞成 分 ノ出現 スル ヲ記 セ

    リ.「 エオ ジ ン」嗜 好 細 胞 ハ中 性顆 粒白血 球,淋 巴球 ニ比 シ,消 長 顯 著 ナ ラザ ル モ 尚 ホ且 發作 時

    ニ減 少,間 歇時 増多 ア リ,全 經 過 ノ進 行 ト共 ニ一般 ニ増 加 ノ傾 向 ヲ認 ム.此 事 實 モ本 病 ニ特 有

    ナ ル モ ノ ニ シテ, Benzler氏 ニ據 レバ 發作 中 常 ニ減 少 ヲ來 タ シ,間 歇 時 ニ ハ増 加 シ20%ニ 達 ス

    ト云 ヘ リ. Rumpel, Thorner及 ビWerner氏 等 モ,發 作 中 ノ 「エ オ ジ ン」嗜 好細 胞 ノ減 少 ヲ主

    張 シ, Lehndorf u. Stiefler氏 ハ 「エオ ジ ン」嗜好 細 胞 ノ増 加 ヲ以 テ 特 有 ナル モ ノ ト爲 シ6-14

    %ニ 達 スル ヲ記 セ リ.其 ノ他 發作 時 増加 ヲ説 ケル モ ノ ニBresch(2-3%), Franke(前 日4.8%),

    Korbsch(ca 3%), Jungmann u. Kuczynski氏 ア リ.之 ニ反 シテRumpel, Schittenhelm u.

    Schlecht氏 ハ「エオ ジ ン」嗜 好 細 胞 ノ發 作 時 ニ比 シテ 間歇 時 ノ増 加 ヲ認 メタ リ.

    Benzler氏 ニ ヨ レバ 大單 核 細胞 ハ發 作 時 ニ増 加 スル 事 ナ ク,間 歇 時 ニ増加 ス ト イヒJungmann

    u. Kuczynski氏 ハ通 常値 ナル カ 多少 ノ増 加(6-10%)ア リ,白 血球 増 多 ノ消 失 ニ伴 ヒ,次 第 ニ

    15%ノ 病 的 値,或 ハ夫 レ以 上 ニ達 スル 事 アル ヲ説 ケ リ.本 例 ニ ア リテ ハ該 細 胞 ハ發作 ニ ヨル特

    176

  • 五日熱ノ臨牀的實驗的研究(第1囘 報告) 1715

    別 ナ ル増 減 ヲ示 サ ザ レ ドモ,經 過 ノ進 行 シ白 血 球 増加 ノ輕 減 ス ル ト共 ニ多 少 ノ増加 ヲ認 ムル ヲ

    得 タ リ.

    赤 血 球 ニ就 テ ハJungmann氏 屡 々 多染 色 性 及 ビ嗜 鹽 基 顆 粒 ヲ認 メタル モ,含 核赤 血 球 ニ遭

    遇 セ シハ僅 少 ナル 例 ニ過 ギ ザル ヲ報 ゼ リ. Benzler氏 ハ輕度 ノ不等 赤 血球 症,多 染 色 性,嗜 鹽

    基顆 粒ヲ, Brasch氏 ハ多染 性 及 ビ嗜 鹽基 顆 粒性 細 胞 ヲ認 メ, Lehndorf u. Stiefler氏 ハ特別 ニ

    赤 面 球 ノ減 少 ヲ認 メズ 且大 サ,形 態,粘 稠 度 ニ變 化 無 シ ト云 ヘ リ.尚 ホJungmann u. Kuczynski

    氏 ニ從 ヘ バ,赤 血 球數 ハ發 作 時稍 減少 ヲ示 ス ニ反 シ,血 色 素 含量 ハ一般 ニ變 化 無 ク,唯 長 時 疾

    病 持續 ノ場 合 ニ ハ.遂 ニ輕度 ノ貧 血 ヲ招 來 ス トイヘ リ.又Werner u. Haenssler氏 ハ變 化 ヲ認

    メザ ル モ, Korbsch氏 ハ發作 時 赤 血 球 ノ輕 度減 少(3-4.000.000)及 ビ血 色 素 含量 ノ減 少 ヲ認 メ,

    Brasch氏 ハ疾 病 長期 ニ亙 レバ 赤 血球 ノ減 少 ヲ來 タ ス ト謂 ヘ リ.本 例 ニ就 テ 觀 ル ニ,初 期 赤 血 球

    數 4.410.000ヲ 示 セ ル モ ノ,經 過 中 ニ4.320.000ニ 減 ジ,退 院 前 ニ 於 テ ハ4.370.000ト ナ レ リ.血

    色 素 含 量 モ70%ヨ リ漸次 減少 シ55%ニ 達 シ,外 觀 的 ニ モ多少 ノ皮膚蒼 白 ヲ認 メ シメ タ リ.

    第12項  血清學的及 ビ細菌學的

    五 日熱 ニ特 有 ナ ル 血 清 反應 ハ今 日 マ デ未 ダ發 見 サ ル ル ニ至 ラ ズ. Jungmann92)氏 ハWidal氏 反 應 及 ビ

    Weil-Felix氏 ノProteusagglutinationニ 就テ ハ充分 意 ヲ拂 フ可 キ モ ノナ ル ヲ主張 セ リ. Korbsch104-105)氏 ハ

    本 病 經過 中,多 ク ハ最 初 ノ14日 間 ニ「チ フ ス」凝 集反 應 ノ「チ ーテ ル」低 下 ス ル ヲ説 キ, Jungmann氏 ハ疾 病

    ノ後期 ニ ハ該 反 應 ハ常 ニ全 ク陰 性 ナ リ シヲ報 ゼ リ.本 實 驗 例 ニア リテ モWidal氏 反 應 ヲ檢 セ シニ,患 者 血 清

    ハ腸 「チ フス」菌,「 バ ラチ フス 」AB菌 ノ何 レヲモ凝 集 セザ ル ヲ認 メ タ リ.

    以 上 ニ 反 シテ本 病 經 過 中 時 ニWeil-Felix氏 反 應 ノ陽 性 ニ出 現 ス ル事 アル ヲ報 ゼ ラル ル ハ,學 説 上 興 味少

    カ ラザ ル モ ノ ト信 ズ. Jungmann92)氏 等 ハ實 驗 的五 日熱 ニ シテ 第4病 日尚 ホ發 熱 中偶 然 該 反 應200倍 ノ陽

    性 價 ヲ示 セ ル モ ノニ遭 遇 セ リ.該 例 ハ第10病 日 ニ於 テ凝 集價 既 ニ50倍 ニ 低下 シ,暫 クニ シテ 全 然 陰 性 トナ

    レ リ.其 ノ後 氏 等 ハ尚 ホ6例 中1例 ノ陽 性 反 應 ヲ呈 セ ル ヲ觀 察 セ ル モ50倍 以上 ニ昇 ラザ リ シヲ以 テ 例外 ト

    爲 セ リ.本 例 ニ於 テ モ發 作時 血清 ノProteus X19菌 ニ對 ス ル凝 集 反 應 ヲ檢 セ シニ全 然 陰 性 ノ成 績 ヲ得 タ リ.

    Jungmann氏 ハ自 家 ノ經 驗 ニ據 リ「Weil-Felix氏 反 應 ハ假 令 陽 性 例 アル モ,一 般 ヨ リ云 ヒテ 稀 少ル モ ノ ニ シ

    テ,從 ツテMunk氏 ノ提 唱 セ ル 發 疹 「チ フス」ニ於 ケ ル本 反 應 ノ實 際的 診 斷 的價 値 ヲ決 シテ 傷 ツ クル 事能 ハ

    ズ」 トナ セ リ.

    第3節  合 併 症

    合 併 症 トシテ 定 型的 出 血性 腎 炎(Franke42))擧 ゲ ラ ル.其 ノ他 「ヂ フテ リー」(Werner210-221)),發 作 中及

    ビ發 作後 數 時 間 ニ亙 ル精神 病(Werner u. Haenssler213)),肺 炎 及 ビ肋 膜 炎(Franke u. A.)等 記 載 サ ル.亦 強

    ク増 大 セ ル 甲状 腺 炎(Schittenhelm u. Schlecht173-175))等 發 見 サ ル. Linden112-113)氏 ハ重 症 「テ タ ニー」 ノ

    1例 ヲ記 セ リ.本 實 驗 例 ニ ア リテ ハ全 經 過 中 以 上 掲 グ ル諸 合 併 症 ニ相 當 セ ル症 状 ノ發 現 ヲ認 メザ リキ.唯 一

    過 性 蛋 白尿 ヲ證 明 セ シモ,腎 炎 ノ確 證 ヲ缺 ケ リ.

    177

  • 1716 八 木 忠 亮

    第4節  流 行 學 的 觀 察

    本 病 ニ一 致 ス可 キ症 候 ヲ具 有 ス ル疾 患 ハ既 述 ノ如 ク,業 ニ遠 ク古 代 ヨ リ存 在 セ シ モ,多 クハ 「マ ラ リア」

    ノ一 種 ト考 ヘ ラ レ,詳 細 ナ ル檢 索 ヲ爲 ス モ ノ無 カ リシ ニ,歐 洲 大 戰 ニ至 リテ本 病 ノ大 流 行 ヲ見, Graham54),

    His68-71), Hunt and Rankin77), Werne〓210)氏 等 ノ發 表 トナ リ,大 ニ世 ノ耳 目 ヲ聳 動 シ,諸 家競 ヒテ 其 ノ病

    因 ノ檢 索 及 ビ傳 染 ノ實 驗 ヲ企 ツル ニ至 レ リ.而 シテByam and Lloyd25)氏 ニヨ レバ前 後4箇 年 ニ亙 ル大 戰