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歯科 診療報酬 入門 監修 公益社団法人 日本歯科衛生士会 編集 鳥山佳則 武井典子 石井拓男 金澤紀子 吉田直美 2020 - 2021

歯科診療報酬 診療報酬 入門SPTから歯周病重症化予防治療に移行,歯周病重症化予防治療からSPTに移行,いずれの場 合も算定後,中2月を空けることが必要である.

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  • 2020│

    2021

    歯科診療報酬入門

    歯科診療報酬入門

    日本歯科衛生士会

    鳥山佳則

    石井拓男武井典子

    金澤紀子吉田直美

    監修

    編集

    監修 公益社団法人 日本歯科衛生士会編集 鳥山佳則 武井典子

    石井拓男金澤紀子 吉田直美

    2020-2021

  • 2

    1 医療専門職と診療報酬歯科衛生士を雇用することの意味,価値は何なのか? 歯科医療機関としてのメリットはあるのか? このような疑問をもつ歯科医師は,現在ではかなり少ないものと思われる.多くの歯科医療機関・歯科医師が,歯科衛生士を雇用することを当然のこととしている.それは,歯科衛生士が勤務しているかいないかによって,診療報酬が大きく変わってくることが一因となっている.歯科医療機関の保険診療で得られる医業収益が違ってくるのである.歯科衛生士が歯科医療機関にとって必要なことは制度上でも疑う余地がないものとなっている.公的医療保険における診療報酬の評価が,医療専門職の就業状況に影響することはよく知られたことである.病院のいわゆる7対1看護基準が導入されたことから,看護師の需要が増え,看護師不足と看護師の偏在が生じた.勤務している看護師の数は,病院の死活問題となった.薬剤師,臨床検査技師,言語聴覚士といった医療職種も,診療報酬における施設基準に組み込まれている.その職種が配置されているかいないかで,病院が保険で請求できる点数が違うのである.医師法,歯科医師法を始め,保健師助産師看護師法といった各医療専門職の法律が制定された理由は,それぞれの職種のもつ専門的な知識・技能が国民の健康にとって価値あるものとされたからである.国家資格を定め,その業務を明文化し養成の仕組みを制度として整えたのである.しかし,その専門職を医療保険制度の中でどのように評価するかは別の仕組みとなっている.歯科衛生士の場合は,後で述べるように医療保険制度への位置づけはかなり遅れることとなった.診療報酬は医療機関の安定運営にとって,必要な医業収入の中心となっている.だからといって,単に保険の点数がとれるから医療専門職を雇うというような単純な考えで医療機関が人事を行っているわけではない.医療専門職も,単にいるだけでよいと思って業務を行っているわけではない.診療報酬で医療職種を評価するときには,各業務にそれだけの価値があることを確認して,あるいは医学的なエビデンスに基づいている.医療機関はその専門職にどのような医療行為を行わせるのか,行ってもらわなくてはいけないのかを十分理解して雇用してお

    Ⅰ 歯科衛生士と歯科診療報酬

  • 10

    1 保険診療の概念病気やけがになったときのために医療保険に加入している者を被保険者とい

    う.保険の運営主体を保険者といい,被保険者は,医療保険者に対して保険料を支払う.

    被保険者および被扶養者は,保険医療機関など(病院,診療所,調剤薬局)を受診すると診療を受けることができる(これを療養の給付という).この際,被保険者などは保険医療機関などで一部負担金を支払う.

    保険医療機関などは,審査支払機関に対して一部負担金以外の診療報酬の請求を行う.

    請求後,審査支払機関では審査の結果,医療保険者に対して請求を行い,医療保険者が,審査支払機関に請求金額を支払う.最終的に審査支払機関から保険医療機関などに支払いが行われる(図Ⅱ-1).

    Ⅱ 医療保険制度の概要

    ⑥請求金額の支払い

    ⑤審査済の請求書送付

    ⑦診療報酬の支払い(公定価格)

    ①保険料(掛金)の支払い

    ③一部負担金の支払い

    ②診療サービス(療養の給付)

    ④診療報酬の請求

    被保険者(患者)

    審査支払機関

    保険医療機関等 医療保険者

    (社会保険診療報酬支払基金国民健康保険団体連合会)

    (病院,診療所,調剤薬局)

     図Ⅱ-1 保険診療の概念図

    (https://www.mhlw.go.jp/za/0825/c05/pdf/21010203.pdfより)

  • 81

    1 歯科衛生士に関係する項目

    ❽歯周病重症化予防治療(令和2年改定新設項目)歯周病安定期治療の対象となっていない歯周病を有する患者に対する継続的な治療についての評価項目である(図Ⅵ-15).

    (略称)P重防(点数)3月に1回1歯以上10歯未満 150点10歯以上20歯未満 200点20歯以上  300点

    (対象患者)・�歯科疾患管理料または歯科疾患在宅療養管理料を算定している患者であって,2回目以降の歯周病検査終了後に,歯周ポケットが4mm未満の患者・�歯周組織の多くの部分は健康であるが部分的に歯肉に限局する炎症症状を認める状態またはプロービング時に出血が見られる状態の患者

    (算定要件)・�2回目以降の歯周病検査終了後,一時的に症状が改善傾向にある患者に対し,重症化予防を目的として,スケーリング,機械的歯面清掃処置等の継続的な治療を開始した場合に月1回に限り算定する.

     図Ⅵ-15-1 歯周病重症化予防治療

    歯周病検査

    スケーリング

    歯周病検査

    歯周病検査

    歯周病検査

    SPT

    歯周ポケット4mm未満+

    部分的な歯肉の炎症または

    プロービング時の出血

    歯周病重症化予防治療SRP

     図Ⅵ-15-2 歯周病重症化予防治療への移行時期

    歯周病重症化予防治療への移行の時期は,①スケーリング後の歯周病検査後,②SRP後の歯周病検査後,③SPT後の歯周病検査後の3通りある.いずれの場合も,歯周病検査の結果,歯周ポケットが4mm未満で,部分的な歯肉の炎症またはプロービング時の歯肉の出血が認められる場合である.なお,歯周病重症化予防治療実施後,歯周病検査の結果,歯周ポケットが4mm以上の場合

    はSPTに移行する.SPTから歯周病重症化予防治療に移行,歯周病重症化予防治療からSPTに移行,いずれの場

    合も算定後,中2月を空けることが必要である.

  • 139

    1.歯周治療

    1 フローチャートと算定項目歯周病の治療に関する基本的な考え方(日本歯科医学会HP巻末に掲載)を参考にする.

    ☞point �歯周基本治療(SC・SRP),歯周外科手術,SPTを算定する前には必ず歯周病検査を算定する.

    ☞point 初回に算定する歯周基本治療は必ずSCである.すなわちSCせずにSRPは算定できない.注)なお,エックス線診断に関する記載は省略する

    1.歯周治療

     図Ⅶ-2 歯周治療のフローチャートと点数表(図Ⅵ-1再掲,p.81図Ⅵ-15も参照のこと)

    歯周病検査

    スケーリング

    歯数P基検 P 精検

    点数 点数50/100 50/10020 歯以上10~19 歯1~9 歯

    20011050

    1005525

    400220100

    20011050

    スケーリング(SC)初回時2回目以降

    1/3 顎につき(点)7236

    1/3 顎増すごとに加算(点)3819

    SRP・PCur初回時2回目以降

    前歯(点)6030

    小臼歯(点)6432

    大臼歯(点)7236

    1~9 歯10~19 歯20 歯~

    200250350

    380SPT(Ⅰ)(点) SPT(Ⅱ)(点)

    550830

    1~9 歯10~19 歯20 歯~

    150200300

    歯周病検査

    SRP

    歯周病重症化予防治療

    歯周病検査

    歯周外科手術

    歯周病部分的再評価検査

    歯周病検査

    SPT

  • 176

    Ⅶ 事例

    事例5概要  SPT(Ⅱ)

    かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所

    ❶SPT(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いかかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)における,歯周治療終了後の病状安定期にある患者への歯周病安定期治療が,SPT(Ⅱ)である.月1回の算定が可能だが,管理計画書を作成し,1回目の算定時にはP精検を実施する必要がある.また算定の都度,口腔内カラー写真撮影を行う.SPT(Ⅰ)ではP処,P基処,咬調,歯清,P部検,歯周基本治療が包括項目とされるが,SPT(Ⅱ)ではこれに加えて歯周病検査,歯周病患者画像活用指導料が包括される.

    前年11月1日初診歯周病検査1

    スケーリング

    歯周病検査 2

    SRP

    歯周精密検査

    SPT(Ⅱ)

    SPT(Ⅱ)

    1月11日

    1月11日

    1日目

    4月15日

    2日目 3日目

    6月29日

    4日目

    7月27日

    5日目 6日目

    9月27日

    7日目

     SPT(Ⅱ) SPT(Ⅱ)の算定例(20歯以上の場合)〈診療日ごとの算定項目〉

    1月11日 4月15日 6月15日 6月29日 7月27日 8月3日 9月27日

    再診 53 再診 53 再診 53 再診 53 再診 53 再診 53 再診 53再外来環 3 再外来環 3 再外来環 3 再外来環 3 再外来環 3 再外来環 3 再外来環 3P精検 ― P精検 ― P精検 ― P精検 ― P精検 ―P画像 ― P画像 ― P画像 ― P画像 ― P画像 ―歯管 100 歯管 100 歯管 100 歯管 100 歯管 100 歯管 100文 10 文 10 文 10 文 10 文 10 文 10歯清 ― 歯清 ― 長期 120 歯清 ― 長期 120 長期 120 長期 120実地指1 80 実地指1 80 実地指1 80 歯清 ― 歯清 ―SPT(Ⅱ) 830 SPT(Ⅱ) 830 SPT(Ⅱ) 830 実地指1 80 実地指1 80

    X-ray(D) 58 SPT(Ⅱ) 830 SPT(Ⅱ) 830充形 126

    P処 ― 充塡1(複 雑 なもの)+歯科材料Ⅰ(複雑)

    156+29

    (特定薬剤料) 61

    ※ の箇所はSPT(Ⅱ)に包括されているので請求されていない項目

    「P画像」は歯周病患者画像活用指導料の略