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愛知県高齢者虐待対応マニュアル (各論編:初動期対応を中心として平成23年3月 財団法人愛知県健康づくり振興事業団 あいち介護予防支援センター

愛知県高齢者虐待対応マニュアルⅠ 高齢者虐待対応マニュアル(各論編)の活用にあたって 基本的な考え方 平成19年、愛知県では「愛知県高齢者虐待対応マニュアル(総論編と事例編)」を作成し

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愛知県高齢者虐待対応マニュアル

(各論編:初動期対応を中心として)

平成23年3月

財団法人愛知県健康づくり振興事業団

あいち介護予防支援センター

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はじめに

わが国はいよいよ超高齢社会へ突入、家庭での介護力低下も相まっ

て、高齢者虐待の問題がクローズアップされています。 これまで家

庭の外からは見えにくかった問題が、介護保険制度の導入によって介

護者の目に触れる機会が増え、顕在化したという側面もあるのかもし

れません。 このような状況のなか、高齢者虐待防止法の制定を契機として、各

市町村では対策の推進が図られてきました。高齢者の身近な相談窓口

である地域包括支援センターと市町村は高齢者の心身の安全を守り、

生活を再構築していく上で中心的な役割を担うことが期待されていま

す。しかし担当者からは、「虐待かどうかの判断に迷った」、「役割分担が不明確。包括が連絡して

も自治体が動いてくれない」、「担当になったばかりで、どうすればよいのかわからない」などの

声が聞かれました。

虐待対応では市町村と包括の密な連携を必要としますし、医療機関や介護施設、警察等との連

携も不可欠です。このようなとき、関係者が対応の基本的な流れを理解して、責任とスピード感

をもって対応することが求められます。 そこで本マニュアルでは、虐待に関して専門的な知識と経験を有する社会福祉士だけでなく、

保健師等の医療職、事務職、介護職等の関係者にとって、わかりやすい、シンプルな流れを意識

して作成しました。具体的な 3 つの事例を通して、虐待対応の筋道を考えていただけるように工

夫しています。 初動期対応は、医療でいえば急性期対応に相当し、本人の命を守る立場から分離や措置などの

判断も必要とする局面といえます。初動期以降の対応は本人と家族の生活の再構築を目指して調

整を図っていくものであり、いわば慢性期の対応に相当するといえます。 被虐待者となりやすい認知症については、その基本的な理解と対応法を押さえておく必要があ

るため、パーソン・センタード・ケアを紹介、高齢者の気持ちに寄り添ったアプローチを考えて

いきます。 さらに、「虐待のない社会」をめざして、どのような地域づくりが必要なのかを皆さんで考えて

いただきたいと願って、第Ⅴ章を置きました。個々の事例に対応するだけでは、後追いにすぎま

せん。どうしたら高齢者が安心して生活できる社会を築いていけるのか、虐待の予防策について

もぜひ考えていただけたらと思います。 本マニュアルは平成 19 年の「愛知県高齢者虐待対応マニュアル(総論編)」をもとに、愛知県

高齢者虐待防止対策検討会議の構成員のみなさんのご指導をいただいて作成したものです。しつ

こいぐらいに議論と吟味を繰り返したつもりではありますが、まだまだ成長過程であると認識し

ています。 このマニュアルをたたき台にして、各市町村で虐待対応のしくみを整備していただき、さらに

その対応状況を介護予防支援センターにもフィードバックしていただくことを願っております。 平成 23 年 3 月 あいち介護予防支援センター

センター長 津下 一代

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Ⅰ 高齢者虐待対応マニュアル(各論編)の活用にあたって 目 次

はじめに

Ⅰ 高齢者虐待対応マニュアル(各論編)の活用にあたって ·············· 1

Ⅱ 高齢者虐待とは ·················································· 2

Ⅲ 高齢者虐待対応の具体的な事例 ···································· 3

1 高齢者虐待対応を具体的な事例から考える ····························· 3

2 初動期対応 ··················································· 4

3 初動期以降の対応~安心・安全な暮らしの再構築~ ················· 23

Ⅳ 認知症の高齢者に対する虐待 ····································· 36

1 事例対応 ···················································· 36

2 認知症の基本的な理解 ········································· 45

3 認知症の高齢者への支援 ······································· 48

4 家族への支援 ················································ 53

Ⅴ 高齢者虐待防止対応の体制・地域づくり ··························· 55

1 愛知県における高齢者虐待への対応状況 ·························· 55

2 虐待のない地域を目指して ····································· 59

3 高齢者虐待対応の迅速な対応に向けて ···························· 65

Ⅵ Q&A~よりよい対応を目指して~ ··································· 68

1 高齢者虐待 ·················································· 70

2 成年後見制度 ····················································· 75

3 日常生活自立支援事業 ············································· 82

巻末資料

1 参考資料 ························································· 85

2 様式集 ·························································· 101

3 索引 ······················································· 108

4 参考文献 ··················································· 112

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Ⅰ 高齢者虐待対応マニュアル(各論編)の活用にあたって

基本的な考え方

平成 19 年、愛知県では「愛知県高齢者虐待対応マニュアル(総論編と事例編)」を作成し

ており、養護者による高齢者虐待対応について、基本的な支援の実施方法と代表的な事例の

紹介及びその支援のポイントをまとめています。

本マニュアルは、「愛知県高齢者虐待対応マニュアル(総論編と事例編)」発行以降の市町

村における対応状況を踏まえ、最も重要な初動期の基本的な考えと対応方法等について、市

町村、地域包括支援センター職員等の行政関係者を対象に作成しました。

また、近年、認知症の高齢者への虐待も増えていることから、虐待対応をする際に必要と

思われる、認知症に関する基本的な知識及び本人、家族への対応方法についても併記し、地

域支援の具体的な参考になるよう組み立てています。

そして、高齢者虐待防止を更に推進していただくために、これからの体制・地域づくりに

向けてのあり方を示しました。

本マニュアルを有効に利用していただけるよう、構成の特徴を紹介します。

●高齢者虐待対応の具体的な事例

高齢者虐待の相談・通報の受付から虐待の終結まで、プロセスに沿って確実に実施してい

くための方法を具体的に示しました。各段階での対応のポイントや、関係機関との連携のあ

り方等を整理しています。

●認知症の高齢者に対する虐待

認知症の高齢者に対する二つの虐待事例から、その対応についての考え方を整理しました。

また、基本となる認知症の理解と、認知症の高齢者及び家族それぞれについての支援のあり

方を示しました。

●高齢者虐待防止対応の体制・地域づくり

高齢者虐待防止対応の状況を「潜在期」「顕在期」「対応期」「予防期」の 4つのステージで

捉え、地域での取り組みについて提案をしています。

●Q&A ~よりよい対応を目指して~

高齢者虐待対応に関しての業務上、判断に迷う点や、成年後見制度、日常生活自立支援事

業のあらましについて紹介しています。

1

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1 高齢者虐待の定義

介護保険制度の普及、活用が進む中、一方では高齢者に対する身体的・心理的虐待、介護

や世話の放棄・放任等が表面化し、社会的な問題となっています。このような中、平成 17 年

11 月 1 日に国会において「高齢者に対する虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関

する法律」(以下「高齢者虐待防止法」という)が議員立法で可決、成立し、平成 18 年 4 月

1 日から施行されました。法では、高齢者を 65 歳以上の者、また、虐待者を養護者※と養介

護施設従事者等に分け、養護者による高齢者虐待を、養護者が養護する高齢者に対して行う

下表の行為としています。

※養護者とは:「高齢者を現に養護する者であって養介護施設従事者等以外の者」とされており、

高齢者の世話をしている家族、親族、同居人等が該当すると考えられます。

虐待の種類 行 為

身体的虐待 高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴力を加えること

介護・世話の放棄・放任高齢者を衰弱させるような著しい減食、長時間の放置、養護者以外の同居人によ

る虐待行為の放置など、養護を著しく怠ること

心理的虐待 高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心

理的外傷を与える言動を行うこと

性的虐待 高齢者にわいせつな行動をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせる

こと

経済的虐待 養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分すること、その他当該

高齢者から不当に財産上の利益を得ること

本マニュアルでは養護者による虐待について取り上げています。

2 高齢者虐待として対応が必要な範囲について 高齢者虐待防止法では、高齢者虐待を上記のように定義していますが、これらは、高齢者

虐待を「高齢者が他者からの不適切な扱いにより権利利益を侵害される状態や生命、健康、

生活が損なわれるような状態に置かれること」と規定したものということができます。

また、介護保険制度の改正によって実施される地域支援事業(包括的支援事業)のひとつ

として、市町村に対し、「高齢者に対する虐待の防止及びその早期発見のための事業その他

の高齢者の権利擁護のための必要な援助を行う事業」(介護保険法第 115 条の 38 第 1 項第

4 号)の実施が義務づけられています。

市町村は、高齢者虐待防止法に規定する高齢者虐待かどうか判別しがたい事例であっても、

高齢者の権利が侵害されていたり、生命や健康、生活が損なわれるような事態が予測される

など支援が必要な場合には、高齢者虐待防止法の取扱いに準じて、必要な援助を行っていく

必要があります。

3 高齢者虐待対応への基本姿勢 虐待対応は、虐待を受けている高齢者の生命、身体、財産を保護し、安全で安心な生活を

再構築するための積極的介入支援です。

責任主体である市町村が地域包括支援センターをはじめとした虐待対応協力機関と連携し、

対応するシステムの整備をしていくことが重要です。

Ⅱ 高齢者虐待とは

・高齢者本人の権利擁護を最優先する

・高齢者本人の意思を尊重する

・高齢者本人と共に養護者を支援する(家族支援の考え方を踏まえる)

・組織で対応する(チームアプローチ)ことで課題の解決を図る

・長期的な視点に立った支援策を検討していく

2

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事例中のマークについて

「みなさんへの問い」を示すときに使用します

「みなさんへの問いに対する考え方」を示すときに使用します

「みなさんへの問いに対する答え」を示すときに使用します

「確認すべき内容」を示すときに使用します

「重要である用語の説明」を示すときに使用します

※「対応の基本的な考え方」の中で数種の様式を紹介していますが、それは全て巻末

にありますので実際にご活用ください。

1 高齢者虐待対応を具体的な事例から考える

高齢者虐待対応の具体的な事例を通して、市町村、地域包括支援センター等の役割や業務

を進める上でのポイントを示しながら、「①相談・通報の受付」から「⑦虐待対応の終結」ま

での支援展開を紹介しています。

各支援過程において、まず事例経過を示し、次に対応についての基本的な考え方、最後に

事例に当てはめた対応について説明します。

虐待対応の実際の支援展開をイメージできるような形で進めていきますので、どのような

考え方のもとで事例の支援を行なったのか確認しながら読み進めてください。

本マニュアルでは、「コアメンバー会議」と「個別ケース会議」の役割を明確にするために、

構成員(厚生労働省マニュアル参考)と会議の目的から両者を次のように位置づけました。

したがって、初動期以降の対応において、緊急性の判断を要する場合には、再び「④コア

メンバー会議」に戻る形で、その後の対応が進められています。

【構成】

コアメンバー会議 個別ケース会議

虐待の有無・緊急性の判断とそれに伴う支

援方針を決定する会議

虐待の有無・緊急性の判断以外の個別対応

における支援方針を決定する会議

Ⅲ 高齢者虐待対応の具体的な事例

事 例 経 過 紹 介

対 応 の 基 本 的 な 考 え 方

本事例にあてはめた 対 応 と 解 説

考え方

キーワード

3

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2 初動期対応 初動期対応とは、相談・通報を受け付けてから事実確認、情報収集を行い、虐待の有無

と緊急性の判断を行うコアメンバー会議を実施し、その結果による当面の支援計画立案ま

でのながれを指します。初動期対応で重要なことは、各支援過程において市町村が責任を

持ち実施することと、緊急性をもち、速やかに高齢者本人の安全な生活の確保を中心に対

応を図ることです。

ポイント

・市町村が責任をもち、各支援過程を実施する

・緊急性をもって、速やかに高齢者本人の安全な生活の確保を中心に対応を図ること

【支援過程】

⑤コアメンバー会議の決定に基づく対応 当面の支援方針に基づき、期限までに適切な支援を実施し、必要に応じ

で市町村はやむを得ない事由による措置等の対応を図る

④コアメンバー会議 市町村がその責任において虐待の有無と緊急性の判断を行い、

その判断に基づいて当面の支援方針(支援計画)を決定する

③コアメンバー会議に向けた事実確認

通報された情報について高齢者の安全やその状況の確認を行う

②相談内容の共有 組織内で検討し、市町村と地域包括支援センターの両者で事実確

認に向けた段取りの調整を行う

①相談・通報の受付

虐待を確実にキャッチし、緊急対応の必要性を予測しながら相談・

通報内容の聞き取りを行う

初動期対応

⑦虐待対応の終結 虐待の現状及び将来の予測のもと、終結ができるか組織決定し、包括的

継続的ケアマネジメントへの移行についても併せて確認する

⑥個別ケース会議、その後の支援 虐待の要因を捉え、高齢者や養護者、地域等それぞれの支援課題に対して関係機関が

関与し、虐待の解消、高齢者の権利擁護を目指す支援計画を立て、支援を進める

高齢者虐待防止ネットワークの構築と運用

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事例紹介

初動期対応

① 相談・通報の受付 P6~P8

地域包括支援センター(以下、包括と略す)に、介護支援専門員から利用者のことで相談

がありました。

相談内容

介護支援専門員が利用者宅を訪問すると、母親は台所の床に布団1枚で寝かされており、

布団は多量の尿で汚れている状態でした。

母親が右大腿部に痛みを訴えたため、何があったのかを尋ねましたが、はっきりした答え

は返ってきませんでした。介護支援専門員は母親に病院受診を勧めましたが、同席していた

長男も母親も頑なに拒否するだけでした。

② 相談内容の共有 P9~P11

包括内で打ち合わせを行い、虐待の疑いがあるのではないかと考えました。 包括から市高齢者担当課に連絡し、コアメンバー会議を開催することになりました。

③ コアメンバー会議に向けた事実確認 P12~P15

コアメンバー会議に向けて、包括は事実確認のため、介護支援専門員と自宅を訪問しました。母親が台所に寝かされている状態は前日と変わらず、右大腿部の腫れが見過ごせない状態であるため病院受診を勧めましたが、母親も長男も頑なに拒否しました。 市高齢者担当課は、市役所の担当部署から必要な情報を収集しました。

④ コアメンバー会議 P16~P20

事実確認を終え、市高齢者担当課が中心となりコアメンバー会議を開催しました。

会議の結果、母親の早期受診に向けて支援を開始することになりました。

長男には、市障害者担当課及び障害者相談支援センターによる相談支援を開始することに

なりました。

⑤ コアメンバー会議の決定に基づく対応 P21~P22

コアメンバー会議開催の翌日、包括、市高齢者担当課、市障害者担当課は、母親、長男に受診の必要性を訴え、母親を病院に搬送しました。 病院で診察を受けた結果、母親は右大腿骨骨折のため約 1 ヶ月間入院することになりまし

た。 しかし、翌日より、長男から母親を早く帰すよう何度も電話で要求が続きました。 入院から 1週間後、手術も終わり、母親の状態も安定してきました。 病院の相談員が母親と面談し、母親の今後の意向について確認しましたが、気持ちの揺れ

が見られました。

※ 本事例の初動期以降の対応「⑥個別ケース会議、その後の支援」「⑦虐待対応の終結」

については、P24 をご覧ください。

事例1 やむを得ない事由による措置を行った事例

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事例1 やむを得ない事由による措置を行った事例

◆相談者:介護支援専門員

◇相談先:地域包括支援センター(以下、包括と略す)受付者は社会福祉士

地域包括支援センターに介護支援専門員から「実は、私が担当する利用者さんのことなん

ですが・・・」と電話が入りました。

① 相談・通報の受付

包括による相談の受付

以下が介護支援専門員からの相談内容です。

母親の訪問介護サービス利用にあたり、契約のため、訪問介護員とともに介護支援専門員が

自宅を訪問しました。

訪問すると、台所の床に布団が1枚敷かれそこで母親は寝かされており、布団が多量の尿で

汚れている状態でした。

母親が右大腿部に痛みを訴えたため、何があったのかを尋ねましたが、はっきりした答えは

返ってきませんでした。介護支援専門員は母親に病院受診を勧めましたが、同席していた息子

は「お母さん、別に行かなくてもいいよね?」と病院受診を頑なに拒否し、母親も「お兄ちゃ

んが、そう言うなら行かない。」と拒否するだけでした。

この後、あなたは介護支援専門員に対し、何を聞けばよいのでしょうか?

考 え 方 まず、問題を整理することから始めます。

① この相談内容の中に、あなたが気になる情報はありましたか?

② それはどんな情報でしたか?

③ その情報がなぜ気になったのですか?

次に、具体的に今回の相談内容を①~③のプロセスを通してアセスメントをします。

考 え 方

① 気になる状況(情報) → 右大腿部の痛みを訴えた

② なぜ気になるのか(理由) → けがをしているかもしれない

→ 治療が必要かもしれない

③ 推測される問題 → けがの放置 → けがの悪化

虐待対応は、虐待かどうかを疑うことから始まります。

『高齢者への虐待発見チェックリスト』をご活用ください。(P102)

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相談受付時に相談者に確認すべきことは主に次の6点です。

※ここでは、総合相談の窓口として包括に相談が寄せられた場合を想定しています。

① 高齢者本人の状況

・氏名、年齢、性別、住所、連絡先(もしくは、個人が特定できる情報)、心身の状況(要

介護状態)、生活状況、意思表示能力、養護者及び家族の状況 等

② 養護者の状況

・氏名、続柄、同居の有無、心身の状況、介護(世話)の状況 等

③ 高齢者と養護者や家族の関係

・現時点での家族関係、今までの家族関係や家族の歴史

④ 介護サービスなどの利用状況や関係者の有無

・関わっている人は誰か、どのような人が出入りしているのか 等

⑤ 相談者・通報者の情報

・氏名、住所、連絡先、高齢者やその家族とどのような関係にあるのか 等

⑥ 虐待の状況(虐待の疑いがある場合)

・だれが、いつ、どこで、誰に、どのように、どうしたのか

・虐待を疑う事実(身体に虐待によると思われるあざやけがが見られる等)があれば、

その事実が、いつから、どれくらいの頻度で発生しているのか

・どのように把握したのか(見た、本人から聞いた、養護者から聞いた、第三者から聞

いた場合は、どこのだれから聞いたのか確認する)

・虐待の有無の判断の根拠となる情報があるか(相談者が虐待を疑って相談してきてい

る場合、相談者が虐待を疑った根拠、理由は何かを確認する)

※客観的な事実をより具体的に聞き出すことが重要です。

※相談者が根拠を持っていなければならないことはありませんが、相談者からの情報を整理

することにより根拠を見出すことができます。また、相談者には、今後の対応において支援

協力をお願いすることもありますので、丁寧に対応し、信頼関係を築くようにします。

包括は、高齢者虐待の通報窓口というだけでなく、地域の総合相談の機能を有し

ているため、高齢者虐待についての第一報が明らかに「虐待」とわかるようなもの

ばかりではありません。

相談を受けた者それぞれが、相談内容の一つ一つの情報から、本人・家族・世帯

全体に権利侵害の疑いがあるかどうかを察知する目が必要です。

また、「虐待の可能性」や「虐待の予防としての権利擁護の支援の必要性」を感

じるアンテナをもつことが重要です。

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「気になる状況(情報)」が「なぜ気になるのか」考え、推測される問題を整理し、相談者

である介護支援専門員に、高齢者本人の生活状況や養護者である息子に関する情報をさらに

詳しく聞き取りをしました。

気になる状況 なぜ気になるのか(理由) 推測される問題

台所の床に布団が1枚敷かれ

そこで母親は寝かされており

・普通、床には寝かせない ・養護者から大切にされていない

のではないか

布団が多量の尿で汚れている

状態

・排泄ケアが不十分らしい ・不衛生、尿路感染

・介護放棄

母親が右大腿部に痛みを訴え

・けがをしているかもしれない

・治療が必要かもしれない

・けがの放置、悪化

母親に何があったのかを尋ね

たが、はっきりした答えは返

ってこなかった

・認知症で憶えていないのか

・何かを隠そうとしているのか

・長男へ気遣っているのか

・おびえているのではないか?

介護支援専門員は母親に病院

受診を勧めたが、同席してい

た息子は病院受診を頑なに拒

否した

・なぜ拒否するのか

・母親を受診させると何か不都

合なことでもあるのか

・足の痛みは息子による暴力によ

るものかもしれない

・息子は正常な判断ができない人

かもしれない

母親も「お兄ちゃんが、そう

言うなら行かない。」と拒否

した

・息子の顔色を窺っているので

はないか

・母親は自分の意思を言うことが

できない

・息子に脅されているかもしれな

聞き取った内容

高齢者:母親 70 歳代(要介護 2)

認知症日常生活自立度Ⅰ

高血圧、年金 7 万円/月

※生活費の足りない部分は、母親の貯金でやりくりしている。

養護者 :長男 40 歳代

○家庭状況

(母親) ・介護支援専門員が 2 日前に訪問したときには、自分で立ち上がり、歩くことができていた。

・家事全般は今まで母親が行っていたが、調理中に、なべに火をかけたまま忘れてしまうことが

数回ありその度に長男からひどく注意を受けているとのこと。

・最近では、買い物に出て迷子になり、警察から長男が呼び出され、迎えに来てもらったがひどく

怒られたと話している。

・お金は長男が管理しているため、買い物に必要なお金だけ長男から受け取っている様子。

(長男) ・大学を卒業してから、20 年余り引きこもり状態であり、無職の様子。

・母親の年金は長男が管理をしている。自分の欲しい物を買いに行くことはできている。

(その他家族)・父親は、2 年前に死亡。長女は、関わりを拒否。

本事例に当てはめた対応と解説

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市町村と包括の相談内容の共有

追加情報を含め、包括は、職場内で検討を行い、「長男に十分な介護力がなく、虐待の疑いがあ

るのではないか」と判断しました。

そこで、包括は市高齢者担当課に連絡し、また、包括からの情報より市高齢者担当課も同様に虐

待の疑いがあると判断し、虐待の有無と緊急性の判断をするため、コアメンバー会議を開催すること

にしました。

② 相談内容の共有

相談の受付後、包括と市町村は具体的に

どのような対応を行っていけばよいのでしょうか?

相談の受付後、虐待の疑いがあるかどうかについては、

必ず組織的判断をします。 考 え 方

・ 相談の受付後、虐待の疑いがあるかどうかについて、相談を受け付けた担当者一人

で判断せず、組織として判断をします。

・ 虐待対応は市町村に第一義的な責任があります。

・ 包括においては、虐待の疑いがあると判断した場合は、緊急性が高い低いに関係な

く、必ず、速やかに市町村に報告します。

相談の受付後、市町村と包括は、事実確認に向けた段取りを

調整します。

虐待相談を受け付けた市町村が第一に行うべきことは、虐待のおそれのある高齢者の安

全確認を行い、「生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあるかないか」を見極

めることです。これを『緊急性の判断』と言い、コアメンバー会議(P16 参照)で決定し

ます。

この『緊急性の判断』を行うためには根拠材料となるものが必要になるため、そのため

の情報を収集することを『事実確認』と言います。

したがって、市町村と包括は、まず『事実確認』に向けた段取りを調整していくことに

なります。

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事実確認の事前準備

① 市町村が把握している個人情報のうち、必要な情報の確認

② 事実確認の方法と手順の検討

③ 事実確認の役割分担

④ 通報段階での緊急性の予測に基づき、コアメンバー会議開催日時を決定

※コアメンバー会議は、できるだけ通報から 48 時間を目安に開催します。

事実確認の方法

次の 2 つの手法が考えられます。

① 高齢者、養護者への面接(訪問・来所)

② 関係機関からの情報収集

事実確認における市町村と包括の役割分担について

【市町村の役割】関係機関や庁内の担当部署等に協力を求め、世帯の状況、介護保険情報、

福祉サービスの利用状況、経済状況、医療情報等を高齢者本人中心に把握・

確認します。

① 介護保険担当課:認定の有無、サービスの利用状況、担当介護支援専門員

介護保険料所得段階や介護保険料収納状況

② 高 齢 者 担 当 課:市町村独自の福祉サービスの利用状況

③ 障 害 者 担 当 課:障害者手帳の有無、障害者サービスの利用状況

④ 生活保護担当課:生活保護受給の有無と支援内容、担当ケースワーカー

⑤ 住 民 課:世帯状況(住民票等)

⑥ 税 務 課:税の滞納の有無、収入状況

⑦ 保険年金担当課:年金の有無、国民健康保険・後期高齢者医療の加入状況、医療機関の受診状況

⑧ 保 健 セ ン タ ー:特定健康診査・後期高齢者健康診査等の受診の有無や対象者であれば介護予防教

室への参加状況等

※各市町村で定められている個人情報保護条例の規定に基づき、高齢者虐待対応のために庁舎内

の個人情報の目的外使用申請を年度当初に行っておく等の対応により、迅速に情報を得ること

ができます。

【包括の役割】包括は、高齢者や養護者への面接、関係者への聞き取りを行います。

① 担当の介護支援専門員:本人、家族の情報

② 介護保険サービス事業所:各担当者からの情報収集

③ 民 生 ・ 児 童 委 員:地域での問題の発生状況(近所のトラブルやゴミ出し、回覧板等)

④ 医 療 機 関:主治医や医療機関の相談員からの情報

⑤ 警 察:「パトカーを何回も呼ぶ」などはなかったか等、生活安全課及び地域課が把握している情報

⑥ 自治会や老人クラブ:地域での関わりの有無。地域性もあるが同年者や友人からの情報

⑦ 近 隣:家族の最近の様子や生活状況、近隣トラブルの有無

≪協力を求める関係機関や庁内担当部署の把握している情報の例≫

≪聞き取りをする関係機関と内容の例≫ はなく、必要な情報をいかに迅速に得られるかを考慮し、両者で協力することが重要です。

※基本的には上記のような役割分担で事実確認を行いますが、双方の役割を完全に分けるので

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本事例に当てはめた対応と解説

市高齢者担当課と包括の打ち合わせにより、事実確認の期限、担当者と役割分担を決めま

した。

【事実確認期限】

○年△月□日 13 時まで(相談受付の翌日 13 時まで)

【役割分担】

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※打ち合わせ結果はその内容を次のシートに記載すると明確になります。

●市が把握している必要な個人情報の収集をする

・介護保険料収納状況の確認(介護保険担当課)

・世帯状況の確認(住民課)

・税の滞納状況、世帯の収入状況の確認(税務課)

・年金の有無、後期高齢者医療の加入状況、医療

機関の受診状況の確認(保険年金担当課)

(医療機関に受診しているのであれば、医療機関

名、主治医の確認をする)

包 括(保健師、社会福祉士)

●訪問により家族との面接を行う

・保健師は、母親の足のけがの状態を含め身

体状況について確認

・社会福祉士は、権利擁護の視点から母親の

意向や精神的状況の確認と長男との関係性

の把握

※警戒心を持たせないように担当介護支援専

門員とともに訪問する。

市高齢者担当課(担当者)

*本シートは P104 にありますのでご活用ください。

事実確認のための打ち合わせシート

 シート作成者  ( 包括:社会福祉士 )

 打ち合わせ日時 シート作成日

  :  ○年  △月   ○日  :  ○年  △月   ○日

①≪市町村の庁内関係部署からの情報収集項目≫

世帯構成

介護保険

福祉サービス等

経済状況

関係機関等

その他 ※養護者の長男に障害の可能性あり。手帳保持・サービス利用・障害年金の受給の有無について要確認。 

②≪事実確認の方法と役割分担≫

事実確認の方法 面接調査

聞き取り □ケース会議等 (担当:         )

(担当:         )

□関係機関 (担当:         )

(担当:         )

(担当:         )

(担当:         )

□その他関係者 (担当:         )

事実確認中に予測されるリスクと対応法

事実確認期限 ○ 年 △ 月 □ 日 13時まで

立入調査の必要性

■住民票 □その他(                  )

   高齢者氏名 : 母親 様

■訪問  □来所面接者( 包括の社会福祉士 ・ 保健師 )

■不要  □要検討 (理由 :

□介護認定の有無  □担当居宅介護支援事業所■介護保険料所得段階  ■介護保険料収納状況□その他(                         )

■収入状況  ■国民年金  ■遺族年金■国民健康保険収納状況□その他(                         )

■主治医・医療機関  □保健所・保健センターの関与□他機関(                         )の関与

□生活保護の利用 ■障害者手帳の有無( 身 ・ 知 ・精 )■障害福祉サービス利用状況

社団法人日本社会福祉士会「高齢者虐待対応ソーシャルワークモデル実践ガイド」を参考に作成

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包括による事実確認

相談受付の翌日、包括の社会福祉士、保健師は事実確認のため介護支援専門員と訪問をしまし

た。

室内は、尿臭がひどい状態で、母親は、前日と変わらず台所に布団1枚で寝かされていました。

母親が「太ももが痛くて歩くことができない。」と右大腿部を擦るので、保健師がさりげなく確認した

ところ、右大腿部が大きく腫れており、骨折が疑われました。驚いた保健師が、長男に対し「このまま

お母さんを放っておくことはできないので、今すぐに病院に行って診てもらいましょう。」と話しました

が、長男は母親に向かって「別に病院に行かなくてもいいよね。お母さん。」と言い、母親は長男の顔

色を窺うように「お兄ちゃんがそうやって言うならいいよ。」と答えました。

長男が少し席を外した際に、母親に再度何があったか尋ねたところ「息子に押されて転んだ。時々

そういうことがあって怖い。」と小さな声で返ってきました。

病院受診を説得しましたが、長男、母親双方から拒否をされました。長男からは、「今一番困って

いるのは家事全般だ。これまでは母親がやっていたので自分は全くできない。支援をしてほしい。」と

いう発言がありました。

市町村による事実確認

市高齢者担当課は、住民票、収入状況、介護保険、医療保険、医療機関利用等について情報収

集を行いました。

③ コアメンバー会議に向けた事実確認

事実確認のための情報収集では、どのようなことに

留意しなければならないのでしょうか?

虐待対応の責任主体である市町村がまず行うべきことは、虐待のおそ

れのある高齢者の安全確認を行い、「生命又は身体に重大な危険が生じ

ているおそれがあるかないか」の緊急性の判断を行うことです。

考 え 方

事実確認のための情報収集で留意することは、

緊急性の判断に必要な情報を優先して収集することです。

事実確認は、①身体の状態・けが等、②生活の状況、③話の内容、④表情・態度、⑤適切

な支援、⑥養護者の態度等の 6 つの視点で行います。

○確認項目

外傷等 衣服・寝具の清潔さ 恐怖や不安の訴え おびえ、不安 適切な医療の受診 支援者への発言

全身状態・意識レベル 身体の清潔さ 保護の訴え 無気力さ 適切な服薬の管理 保護の訴え

脱水症状 適切な食事 強い自殺念慮 態度の変化 入退院の状況 暴力、脅し等

栄養状態等 適切な睡眠 あざや傷の説明 その他 適切な介護等サ ヒー゙ス 高齢者に対する態度

あざや傷 行為の制限 金銭の訴え 支援のためらい・拒否 高齢者への発言

体重の増減 不自然な状況 性的事柄の訴え 費用負担 支援者に対する態度

出血や傷の有無 住環境の適切さ 話のためらい その他 精神状態・判断能力

その他 その他 その他 その他

身体の状態・けが等

適切な支援

表情・態度

生活の状況

養護者の態度等

話の内容

表情・態度

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事実確認のための情報収集で留意すること

① 包括と市町村は、高齢者虐待防止法第9条に基づき訪問介護員や介護支援専門員等に任

せず、責任を持って事実確認を行う。

② 初動期段階における事実確認では、緊急性の判断に必要な高齢者の生命の安全に関する

情報を優先する。

③ 情報については、いつの時点の情報なのかを把握し(過去の情報で判断することは正確

性に欠けるため)、できる限り直近の本人、養護者の情報を得る。

④ 訪問するときは、必ず 2 人以上で行く。

(高齢者本人と養護者の話を別々の人が確認する必要がある)

⑤ 面接時には、高齢者が高齢者本人の思いを冷静に話すことができる環境を整える。

(高齢者は養護者が傍にいると養護者を恐れ、態度が変わる可能性があるため、養護者の同

席について配慮する)

⑥ 信頼関係を築きやすい形で訪問する。別の名目で訪問するなどの配慮も必要となる。

別の名目による訪問の例

・「○歳以上の高齢者のお宅に健診のご案内のため訪問しています。」

・「介護サービスのご案内や、ご相談に乗るために介護者の方々のお宅を訪問しています。」

・「この地域の介護保険利用者のお宅を調査のため訪問しています。お父様(お母様)にお会い

したいのですが。」

※担当の介護支援専門員、民生委員、自治会長など、家族と顔馴染みの人や、すでに友好

的な関係が築けている人に同行してもらうことも有効です。

事実確認により得た情報を整理するために、事実確認チェックシート(P105)の活用が有効です。

事実確認チェックシートのメリット ① どのような事実があるのかを把握し、漏れがなく事実確認すると同時に、リスクアセス

メントを行うことができる。

② 把握した事実をもとに、虐待の有無や緊急性の判断の根拠材料とすることができる。

次の場合には、特に緊急性の高い状況と捉えてください。

身体の状態・けが等 話の内容 養護者の態度等

・頭部外傷(血腫、骨折等の疑い)、

腹部外傷、重度の褥そう

・全身衰弱、意識混濁

・重い脱水症状、脱水症状の繰り

返し

・栄養失調

・「怖い」「痛い」「怒られる」「殴られる」

などの発言、「殺される」「○○が怖い」

「何も食べていない」「家にいたくな

い」「帰りたくない」等の発言

・「死にたい」などの発言、自分を否定

的に話す

・「何をするかわからない」「殺してし

まうかもしれない」等の訴えがある

・虐待者が高齢者の保護を求めている、

刃物、ビンなど凶器を使った暴力や

脅しがある

・上記 3 項目のうち、どれか一つでも確認された場合は、緊急性が高いと判断し、緊急保護の

検討が必要と考えます。

・ただし、これ以外の場合でも、高齢者や養護者の心身の状況と生活状況、虐待の頻度や程度

などを総合的に検討し、その事例、その場面ごとに緊急性の判断を行う必要があります。

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●包括の社会福祉士と保健師は、訪問調査で母親、長男、世帯の生活状況についての情報を

得ました。

●市高齢者担当課は、市役所内の関係部署から情報を収集しました。

本事例に当てはめた対応と解説

母親

○身体の状態・けが等

・尿で汚れた布団に寝かされている。

・右大腿部が大きく腫れており、骨折が疑われる。

痛みを訴えている。

・歩くことができない。

○生活の状況

・1週間程度お風呂に入っておらず、髪は少しべた

ついており、尿で汚れた寝巻きと下着を身に着け

たままの状態である。

○話の内容(言動・思い)

・長男が母親に「別に病院に行かなくてもいいよ

ね。お母さん。」と話しかけると、長男の顔色を窺

うように「お兄ちゃんがそうやって言うならいい

よ。」と答えた。しかし、長男がいないところでは

「息子に押されて転んだ。時々そういうことがあっ

て怖い。」と小さな声で話した。

○表情・態度

・常に、長男の様子を窺い、長男の意見に反する

発言はしない。

長男

お母さん。」と何の躊躇もなく淡々とした態度で

話しかけた。

世帯の生活状況 ・食事については、母親が動けなくなってから今日までの 4 日間は出前を取っている。

・長男は、1 年前から精神科受診はしておらず、持病のヘルニアのため、月 1 回A病院の整形外科に通院

しており、そこで抗うつ剤を処方してもらっている。病識はあり、服薬管理もできている。

母親

・A病院に高血圧のため月 1 回通院している。 ・精神疾患あり(うつ病)

・障害年金(2 級) 6 万 5 千円/月

・精神障害者保健福祉手帳 2 級

世帯の生活状況 ・国民健康保険料、介護保険料等の滞納はない。

長男

・「今一番困っているのは家事全般だ。これまで

母親がやっていたので自分は全くできない。支

援をしてほしい。」

○態度

・母親の健康状態等に関して無関心である。

・自分自身のことについては、抵抗なく話す。

・母親に対し「別に病院に行かなくてもいいよね。

○言動・思い

・家事全般を行う能力がない。母親は自分の世

話をする人と捉えており、母親を自分が介護す

るという理解が全くない。

○介護力

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事実確認のための訪問等面接時に確認するポイント

医療情報や数量化できる項目、言葉や行為など、誰からも確認できる項目以外の「おびえている」

「ひどい汚れ」など、確認者側の認識が影響するものについては、日常から市町村、包括など関係者

間において、どのような状況であれば「おびえている」「ひどい汚れ」とするかなど、基準を設けてお

くと判断する際の混乱が少なくなります。他にも、虐待の発生時期や頻度、発生するきっかけ、発生

しやすい時間帯についても可能であれば把握します。

また、高齢者・養護者に会えない状況でも、高齢者・養護者の情報が得られた場合はその状況につ

いて記録しておくことが必要です(例えば、「養護者に電話をするが、興奮して切られた。」など)

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本事例に当てはめた対応と解説

包括は、緊急性の判断に向け、訪問調査結果を事実確認チェックシートに記載しました。 事実確認チェックシート

※ 1:「相談」:相談・通報があった内容に○をつける。「確認日」:市町村および地域包括支援センター職員が確認した日付を記入

2:太字

。←今回は日付の設定がないので○印を記入。

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の項目が確認された場合は、『緊急保護の検討』が必要。

相談 確認日 確認項目 サイン:当てはまるものがあれば○で囲み、他に気になる点があれば(  )に簡単に記入 確認方法

頭部外傷(血腫、骨折等の疑い)、腹部外傷、重度の褥そう、その他(骨折の疑い)

部位:左大腿部        大きさ:大きく腫れている。              

全身状態・意識レベル 全身衰弱、意識混濁、その他(           )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

脱水症状 重い脱水症状、脱水症状の繰り返し、軽い脱水症状、その他(       )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

栄養状態等 栄養失調、低栄養・低血糖の疑い、その他(           )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

身体に複数のあざ、頻繁なあざ、やけど、刺し傷、打撲痕・腫張、床ずれ、その他(     )

部位:           大きさ:        色:        

体重の増減 急な体重の減少、やせすぎ、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

出血や傷の有無 生殖器等の傷、出血、かゆみの訴え、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

その他1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

○ 衣服・寝具の清潔さ 着の身着のまま、濡れたままの下着、汚れたままのシーツ、その他(多量な尿で汚れたシーツ)1.写真 2.目視(包括) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

○ 身体の清潔さ 身体の異臭、汚れのひどい髪、皮膚の潰瘍、のび放題の爪、その他(       )1.写真 2.目視(包括) 3.記録(  )

4.聴き取り(  ) 5.その他(  )

適切な食事菓子パンのみの食事、余所ではガツガツ食べる、拒食や過食が見られる、

その他(            )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

適切な睡眠 不眠の訴え、不規則な睡眠、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

行為の制限自由に外出できない、自由に家族以外の人と話すことができない、

長時間家の外に出されている、その他(    )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

不自然な状況資産と日常生活の大きな落差、食べる物にも困っている、

年金通帳・預貯金通帳がない、その他(      )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

○ 住環境の適切さ 異臭がする、極度に乱雑、ベタベタした感じ、暖房の欠如、その他(         )1.写真 2.目視(包括) 3.記録(  )

4.聴き取り(  ) 5.その他(  )

その他1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

○ 恐怖や不安の訴え 「怖い」「痛い」「怒られる」「殴られる」などの発言、その他(         )1.写真 2.目視(包括) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

保護の訴え「殺される」「○○が怖い」「何も食べていない」「家にいたくない」「帰りたくない」

などの発言、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

強い自殺念慮 「死にたい」などの発言、自分を否定的に話す、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

○ あざや傷の説明 つじつまが合わない、求めても説明しない、隠そうとする、その他(はっきりした答えがない)1.写真 2.目視(包括) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

金銭の訴え「お金をとられた」「年金が入ってこない」「貯金がなくなった」などの発言、

その他(       )

1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

性的事柄の訴え 「生殖器の写真を撮られた」などの発言、その他(          )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

○ 話のためらい 関係者に話すことをためらう、話す内容が変化、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(ケアマネ) 5.その他( )

その他1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

○ おびえ、不安 おびえた表情、急に不安がる、怖がる、人目を避けたがる、その他(長男の顔色をうかがう)1.写真 2.目視(包括) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

無気力さ 無気力な表情、問いかけに無反応、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

○ 態度の変化家族のいる場面いない場面で態度が異なる、なげやりな態度、急な態度の変化、その他(        )

1.写真 2.目視(包括) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

○ その他 長男の意に反する発言はしない1.写真 2.目視(包括) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

○ 適切な医療の受診 家族が受診を拒否、受診を勧めても行った気配がない、その他(本人も同意)1.写真 2.目視(包括) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

適切な服薬の管理本人が処方されていない薬を服用、処方された薬を適切に服薬できていない、

その他(            )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

入退院の状況 入退院の繰り返し、救急搬送の繰り返し、その他(           )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

適切な介護等サービス必要であるが未利用、勧めても無視あるいは拒否、必要量が極端に不足、

その他(            )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

支援のためらい・拒否 援助を受けたがらない、新たなサービスは拒否、その他(          )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

費用負担 サービス利用負担が突然払えなくなる、サービス利用をためらう、その他(       )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

その他1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

支援者への発言「何をするかわからない」「殺してしまうかもしれない」等の訴えがある、

その他(          )

1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

保護の訴え 虐待者が高齢者の保護を求めている、その他(             )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

暴力、脅し等 刃物、ビンなど凶器を使った暴力や脅しがある、その他(               )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

○ 高齢者に対する態度 冷淡、横柄、無関心、支配的、攻撃的、拒否的、その他(母親の健康状態に無関心)1.写真 2.目視(包括) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

高齢者への発言「早く死んでしまえ」など否定的な発言、コミュニケーションをとろうとしない、

その他(            )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

支援者に対する態度援助の専門家と会うのを避ける、話したがらない、拒否的、専門家に責任転嫁、

その他(         )

1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

○ 精神状態・判断能力 虐待者の精神的不安定・判断力低下、非現実的な認識、その他(          )1.写真 2.目視(包括) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

その他1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

※確認方法の(   )には、確認した人を記入します。

1.写真 2.目視(包括) 3.記録(  )

4.聴き取り(ケアマネ) 5.その他( )

1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

4.聴き取り(   ) 5.その他( )

外傷等

出典:社団法人日本社会福祉士会「高齢者虐待対応ソーシャルワークモデル実践ガイド」を参考に作成

身体の状態・けが等

あざや傷

○○

養護者の態度等

適切な支援

話の内容

表情・態度

生活の状況

社団法人日本社会福祉士会「高齢者虐待対応ソーシャルワークモデル実践ガイド」を参考に作成

*本シートは P105 にありますのでご活用ください。

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市町村と包括によるコアメンバー会議

市高齢者担当課と包括は事実確認を終え、市高齢者担当課が中心となりコアメンバー会議を開

催しました。

出席者は、市高齢者担当課(課長、係長、担当者)、包括(社会福祉士、保健師)の計 5 名です。

役割分担にしたがって、それぞれが得た事実確認情報を共有し、協議をしました。

④ コアメンバー会議

コアメンバー会議とは

虐待の有無と緊急性の判断を行い、その判断に基づいて当面の支援方針(支援内容と役割

分担)を決定するための市町村と包括との話し合いの場です。

つまり、コアメンバー会議は、迅速な判断を行う会議と言えます。

しかし、会議といっても、形式に捉われる必要はありません。あくまでも、上記の目的を

実施するためにコアメンバーである市町村と包括が、チームとして検討するための話し合い

の場を設けることが重要です。

また、通報を受けてから、できるだけ 48 時間以内の開催が目安です。

コアメンバー会議のメンバー

高齢者虐待防止事務を担当する市町村職員及び担当部局管理職と、包括の担当職員です。

特に、事例対応において措置や立入調査といった緊急対応の判断が求められることがあるの

で、市町村担当部局管理職は必須です。

※緊急性の判断をするために必要な場合、専門家(医師、弁護士等)の参加を求めること

もあります。

コアメンバー会議で検討・決定する内容

① 虐待の有無と緊急性の判断

② ①に基づく当面の支援方針と具体的な支援計画

③ 役割分担

④ 具体的な支援の期限(評価日)

コアメンバー会議で支援計画を立てる際、最も重要なこと

は何でしょうか?

考 え 方 コアメンバー会議の目的は、虐待の有無及び緊急性の判断をし、高齢者の保護や支援を行うことです。

市町村は、「生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認められる高齢者を一

時的に保護しなければならない」と高齢者虐待防止法第 9 条の 2 項に規定されているため、

その必要性があるかないかを判断しなければなりません。それが、虐待の有無及び緊急性の

判断であり、市町村と包括はその判断に基づき支援計画を策定し、必要な支援を行います

16

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コアメンバー会議で支援計画を立てる際、「高齢者個人の生命

や身体の安全の確保」を最優先します。

虐待事例は一般の困難事例と違い、家族内の関係修復や介護関係者との信頼関係よりも、

高齢者への支援(高齢者個人の生命や身体の安全の確保、救済、人権の擁護等)が最優先さ

れます。

そのために、まずは虐待の有無・緊急性の判断を行います。

虐待の有無を判断するポイント

虐待の有無は、「高齢者本人が地域で安心して暮らす権利」の侵害があるかどうか、それ

を守るために保護や支援の必要性があるかどうかという観点から判断することが基本です。

(参考:社団法人日本社会福祉士会「高齢者虐待対応ソーシャルワークモデル実践ガイド」)

緊急性が高いと判断できる状況

重大な危険が生じていることに対し、養護者に危機意識がない場合

・虐待が恒常的に行われているが、養護者の自覚や改善意欲がみられない

・養護者の人格や生活態度の偏りや社会不適応行動が強く、介入そのものが困難であ

ったり改善が望めそうにない

(4)高齢者が明確に保護を求めている場合

(5)虐待につながる家庭状況・リスク要因がある

・介護負担やストレスは高いが、介護や現状に対する意識や知識・技術が低く、かつ

サービスや介入を拒否するため改善が見込めない場合や他の家族等の支援が得られ

ず孤立している場合などが想定される。

高齢者の生命の危険性、医療の必要性、養護者との分離の必要性、虐待の程度と高齢者の

健康状態、介護者の心身の状態等から総合的に判断することとなる。

たとえば、

(1)現に、高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている状況が確認される、もしくは

予測される場合

・骨折、頭蓋内出血、重傷のやけどなどの深刻な身体的外傷

・極端な栄養失調、脱水症状、衰弱状況等

・「うめき声が聞こえる」などの深刻な状況が予測される情報

・刃物、食器などを使った暴力もしくは脅しがあり、エスカレートすると生命の危険

性が予測される

(2)高齢者や家族の人格、精神状況に歪みを生じさせているもしくはその恐れがある場合

・虐待が原因で、高齢者の人格や精神状況に著しい歪みが生じている

(3)虐待が恒常化しており、改善の見込みが立たない、もしくは高齢者の生命又は身体に

緊急性が高いと判断した場合には、緊急保護に向けた支援計画を立てます。

緊急性が高いと判断した場合、早急に介入する必要があるので、可能な手段から適切なも

のを選択して介入します。いずれにしても高齢者の安全の確認、保護を優先します。

17

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虐待を受けた高齢者を保護・分離する手段

高齢者の心身の状況や地域の社会資源の実情に応じて、保護・分離する手段を検討します。

① 契約による介護保険サービスの利用(短期入所、施設入所等)

② やむを得ない事由等による措置(特養、養護、短期入所等)

③ 市町村独自事業による緊急一時保護(緊急ショートステイ)

などの方法や、心身の状況によっては医療機関への入院もあり得ます。

事実確認ができず虐待の有無、緊急性の判断を行えない場合

事実確認ができず情報が得られない場合の方法についても支援計画に組み込みます。

虐待対応の初動期は、確認できないこと、不明なことが多いと考えられます。

初動期のコアメンバー会議では、確認できた事実に基づいて必要な支援が何かを協議する

だけでなく、不明な点の確認方法についても話し合う必要があります。例えば、高齢者や

養護者が訪問の際に入室を拒み事実確認ができないときには、必要があれば立入調査につ

いても検討し、支援計画に組み込みます。

平成 22 年度の高齢者虐待対応研修会で、講師が受講者のみなさんに、

「コアメンバー会議を経験したことがない人は挙手してください。」と質

問したところ、7割の方が挙手し「ない」との回答でした。緊急な対応

が求められる事案が少ないからなのでしょうか?

平成 18 年から毎年、高齢者虐待についての相談・通報件数は、1,000

件を超え、平成 21 年度は 1,498 件であることを考えると、「コアメン

バー会議」の開催が少ないのでは・・・との印象を持ちました。

「会議」と聞くと、堅苦しいイメージを持ってしまうかもしれません

が、コアメンバー会議は、高齢者の命を守るために「緊急性の判断」を

する大変重要な会議です。そして、虐待対応の中核的な支援機関である

市町村と包括とがチームで同じ方向性を目指すための話し合いの場でも

あります。

また、コアメンバー会議の参加が必須となっている市町村の管理職に、

会議参加を促すことが難しいとみなさんからよくお聞きしますが、その

ようなときには、本マニュアルを説明資料としてご活用いただけると幸

いです。

キーワード

立入調査

「養護者による高齢者虐待により高齢者の生命または身体に重大な危険が生じているおそれがあると認め

られる場合」には、市町村がその権限によって高齢者の居所に立ち入り、調査や質問を行うことができま

す。このことを立入調査と言います。(高齢者虐待防止法第 11 条) (P65 参照

キーワード

18

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①身体の状態:右大腿部骨折の疑い。 ②話の内容:母親は長男に押されて転倒した。時々そういうことがあって怖いと話す。

本事例では、前節「③コアメンバー会議に向けた事実確認」で示した『事実確認チェック

シート』(P15 参照)を活用したところ、緊急保護検討が必要な 2 項目に該当事項がありまし

た。

これは、母親の「生命又は身体に重大な危険が生じている状況が確認された」「虐待につな

がる家庭状況・リスク要因がある」にあたり、母親が安心して暮らす権利が侵害され、尊厳

が傷つけられている状況と考えられます。そのため、最優先課題は、母親本人の心身の安全

の確保となります。

本事例に当てはめた対応と解説

このことを踏まえて行われた虐待の有無・緊急性の判断は、下表の『虐待の有無・緊急性の判

断シート』に示す通りであり、それに基づき、次ページの『高齢者虐待対応支援計画書』を作成

しました。

会議日時シート作成日

 :    ○年   △月   □日 :    ○年   △月   □日

会議の目的 緊急性の判断と支援方針市高齢者担当課(課長、係長、担当者)包括(社会福祉士、保健師)

虐待事実の判断

緊急性の判断

■緊急保護の検討

□防止のための保護検討

□事実確認を継続

緊急性の判断根拠

□なし: ( 理由 :                    )

□あり    □訪問介護  □通所介護  □短期入所生活介護 □認知症対応型共同生活介護        □小規模多機能型居宅介護  □養護老人ホーム  □特別養護老人ホーム

□保護の検討、集中的援助

□継続的、総合的援助

シート作成者  ( 包括:社会福祉士 )

高齢者氏名 : 母親              様

虐待の有無・緊急性の判断シート

出席者

虐待の事実 :□なし■あり ( 身体的 ・ 心理的 ・ 放棄放任 ・ 経済的 ・ 性的 ・その他(                 ))

■入院や通院が必要(重篤な外傷、脱水、栄養失調、衰弱等による検査、治療)

□高齢者本人・養護者が保護を求めている

■暴力や脅しが日常的に行われている

■今後重大な結果が生じる、繰り返されるおそれが高い状態

■虐待につながる家庭状況・リスク要因がある

□その他(                                                       )

措置の適用 ■検討中 ( 理由 : まずは、医療につなぐことを最優先するが、治療後すぐに在宅に戻る可能性もあるため              保護・分離が必要になれば特別養護老人ホームへの措置についても考える。)

社団法人日本社会福祉士会「高齢者虐待対応ソーシャルワークモデル実践ガイド」を参考に作成

*本シートは P106 にありますのでご活用ください。

19

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本事例に当てはめた対応と解説

出席者

長男に入院が必要と理解させる

日常生活に必要なサービスの導入を図る

具体的な役割分担

何を・どのように 支援機関・担当者等 期限

医療関係者が「病院に行かねばならないのでご協力ください。」と指示的に関わる

1週間後

対象 課題 目標

1痛みを訴えている右大腿部の治療

適切な治療を受ける

高齢者

(母親

4

3

①意思決定は長男の 顔色を見ながらなされ る②長男の前で助けてと  言えない

長男がいない場所で落ち着いて意思決定できる環境を整える

翌日

①母親に受診の必要性を訴え、 病院に連れていく②病院への搬送手段を確保する

市高齢者担当課包括:保健師

市高齢者担当課包括:社会福祉士病院の相談員

長男のいない場所で母親と話ができるように調整

5長男の不安の要因について確認し、それに対するサポート体制をつくる

市障害者担当課障害者相談支援センター

1週間後

1市高齢者担当課包括:保健師

翌日

2受診を妨害する恐れがある

長男自身が「母親は病院に行くべきなのだ」と悟る

総合的な

支援方針

1週間後精神科への定期受診未受診理由を確認し、受診に向けた支援を行う

市障害者担当課障害者相談支援センター

養護者

(長男

6精神科受診ができていない

母親の治療の必要性を理解する

医学的な観点から医療の必要性、緊急性を伝える。

緊急性の判断と支援方針

翌日

2 身の安全の確保 病院受診、入院病院の相談員がいれば連携し、入院の協力をあおぐ(入院の調整)

市高齢者担当課包括:社会福祉士病院医師病院の相談員

翌日精神的に不安定

母親自身が保護を求めることができるように促す

母親が今後の生活について自らの希望を語る

①入院の合意、その後の行き場 の確保②必要に応じて措置入所の準備③在宅に戻る場合は在宅サービ スの段取り調整

市高齢者担当課包括:社会福祉士介護支援専門員病院の相談員

翌日

見守り

市障害者担当課障害者相談支援センター

母親の病状より長男自身の生活の不安を優先している

1 母親は右大腿部に痛みを訴えており、歩くことができない状態であるため早急に医療につなぐ必要がある2 母親は治療後すぐの在宅生活は困難と思われるため、必要に応じて保護・分離のため、転院や契約によるショート  ステイ利用、やむを得ない事由による措置についても準備する3 長男の精神的な援助と生活支援の必要がある

計画書作成者 ( 包括:社会福祉士  )会議日時     :     ○年     △月     □日計画作成日   :     ○年     △月     □日計画評価予定日:     ○年     △月    ●日

会議目的

※支援の必要性: ■あり   □なし  □不明

母親に対し「別に病院に行かなくてもいいよね。お母さん。」と言い、母親が病院に行くことを拒む。家事全般が全くできないので、自分の支援もしてほしいと話す。

※話の内容:□ 一貫している ■ 変化する □ 不明

長男の前では、長男の言う通り、病院には行かないと言う。しかし、長男がいないところでは「息子に押されて転んだ。時々そういうことがあって怖い。」と話す。

市高齢者担当課(課長、係長、担当者)包括(社会福祉士、保健師)

養護者の状況

(意見・希望)

高齢者本人の状況

(意見・希望)

治療後、母親をすぐ家に連れて帰ろうとする可能性がある

翌日

翌日市障害者担当課障害者相談支援センター

病院医師病院の相談員

3

4

母親が安全な場所で落ち着いて意思決定できるまで、長男の元に帰さない

今まで家事はほとんど母親がやってきたため長男は全くできない

生活支援

高齢者氏名: 母親 様

高齢者虐待対応支援計画書

社団法人日本社会福祉士会「高齢者虐待対応ソーシャルワークモデル実践ガイド」を参考に作成

*本シートはP107にありますのでご活用ください。

支援計画で決定された役割分担に基づき、関係者が具体的にどのように動けばよいのか事前にシュ

ミレーションをしておくことが大切です。例えば,支援方針の 1 つに位置づけられている

「母親を早急に医療につなぐ」ことについて、確認しておきます。

担当者

包括の保健師、社会福祉士、市高齢者担当課

事前準備

① 市高齢者担当課及び包括の保健師が病院の相談員や医師に母親の状況を伝え、入院の調整をする。

② 包括保健師が病院受診時の救急車等の搬送手段を確保する。

③ 病院に搬送する際、母親には包括の社会福祉士と保健師が付き添う。

④ 長男が母親の受診を妨害する場合には、市高齢者担当課及び市障害者担当課が自宅に残り長男を

落ち着かせ、説得する。

訪問当日

① 市高齢者担当課と包括の保健師が母親と長男に病院受診の必要性を伝え、病院に付き添ってもらえるか確認する。また、医療費の支払いについても協力を求める。長男が付き添わない、行かないと言っても医療の必要性を訴え、受診させる。

② 病院に搬送された後、入院の必要性について医師及び相談員から母親(長男)に対し説明してもらう。※どのように説明するのかを、事前に医師・病院の相談員と調整しておくことが重要です。

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⑤ コアメンバー会議の決定に基づく対応

市町村と包括のコアメンバー会議後の支援内容

コアメンバー会議開催の翌日、包括の社会福祉士と保健師、市高齢者担当課と市障害者担

当課は、母親に受診の必要性を訴え、病院に連れていくために自宅を訪問しました。

包括の保健師の説明に対し母親は「病院には行きたくない。」と拒みました。長男は精神的

に不安定な様子が見受けられ、家から外に出ようとしない状態でした。そこで、包括の保健

師から長男に母親の症状が医学的に診て受診が必要であることを伝え、救急車を呼び、あら

かじめ打ち合わせておいた病院に母親を搬送しました。

また、市高齢者担当課と市障害者担当課が長男と共に自宅に残りました。

病院で診察を受けた結果、右大腿骨骨折のため約 1 ヶ月間入院することになりました。

翌日より、病院に長男から「早く母親を家に帰せ。」「いつになったら退院できるのか。」と

何度も電話で要求が続きました。

市障害者担当課及び障害者相談支援センターが長男と面談をする等支援を開始し、母親の

病状と入院の必要を説明したところ、長男はしぶしぶ了解しました。同時に長男が困ってい

る家事についても自立支援法の訪問介護員による家事支援を週 2 回導入し始めました。

入院から 1週間後、手術も終わり、母親の状態も安定してきました。

病院の相談員が母親と面談し、今後の生活について意向を確認したところ、母親は「息子

が時々怒るので怖い。息子と一緒にいるとまた怒られるかもしれないので不安・・・でも、

息子は家のことが何もできないから、早く家に帰りたい。」と話し、気持ちの揺れが見られま

した。

病院の相談員と包括の社会福祉士は母親に退院後の行き先として、自宅以外にも施設入所

など選択肢があることを提案しましたが「家に帰ったほうがいいのかなー」と言ったつぶや

きで結論までには至りませんでした。しばらくは、長男との信頼関係を築きつつ状況を見守

り、母親本人の健康状態及び生活能力、そして長男との同居等今後の生活についての意向を

把握していくことになりました。

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思うようにできない場合は、どうしたらよいでしょうか?

支援者の説得にも高齢者本人が応じず、予定していた支援が

高齢者本人の生命や身体の安全の確保を最優先します。

○ 高齢者は、養護者が傍にいると、養護者を恐れたり、気遣う感情が働き意思が揺らぎま

す。そのため、本当は高齢者本人も支援を望んでいたとしても、それを拒否することが考

えられます。ただし、その拒否をそのまま受け入れてはなりません。高齢者自らが落ち着

いて冷静に判断できる環境や条件を整えたなかで、何度も本人の意思を確認し、それに合

わせた支援を行っていくことが必要です。

ここで重要なのは高齢者本人の意思よりも、高齢者個人の生命や身体の安全の確保を最優

先することです。したがって、たとえ高齢者の意思が揺らいでいたとしても、コアメンバー

会議で決定した支援計画に基づき必要な支援を行うべきです。

そして、ここで行う支援は個人が責任を負うことのないよう、組織的判断により決定され

たものでなければなりません。

母親は病院への受診勧奨に対し「病院に行きたくない」と拒み続け、そして長男も病院受

診を拒否していました。しかし、コアメンバー会議で判断した緊急対応を行うことが必要で

あるとの決定を受け、その支援計画どおり、病院に母親を救急搬送しました。

つまり、コアメンバー会議という組織で行った判断により、高齢者本人の意思よりも高齢

者個人の生命や身体の安全の確保を優先したことになります。

そして、当然ですが半ば強引に母親を病院に連れていく形になるので、長男からの反発も

ありました。

しかし、支援計画を立てる際、母親も長男も病院受診に対しては拒否するであろうことは

想定内のことであったため、誰がどう説明するかなど、そのことを考慮した対応についても

支援計画には盛り込まれていました。

支援計画に基づき、母親が病院に救急搬送された後も、長男に対するフォローを市高齢者

担当課及び市障害者担当課が行うことで、当面の虐待解消に向けた両者への支援につなげて

いきました。

本事例に当てはめた対応と解説

虐待対応の初動期は、緊急性の判断に基づき、高齢者本人の意思より

も、生命や身体の安全の確保を優先します。保護・分離の対応では、高

齢者の意思が揺れることも多くみられます。

慣れ親しんだ自分の家を離れ、大きく環境が変わることに不安を抱く

のは誰しも同じではないでしょうか。しかし、高齢者の生命や、安心・

安全な暮しを守ることは、何よりも優先されるべきことです。

したがって、支援者は、高齢者の思いを無視するのではなく、その思

いを受け止め、寄り添う形で支援の必要性を伝えていく姿勢が重要です。

それが、初動期以降の対応を円滑に進めることにつながります。

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3 初動期以降の対応~安心・安全な暮らしの再構築~

初動期以降の対応とは、個別ケース会議から虐待対応の終結までの流れを指します。

例えていうと「初動期」は救急対応、「初動期以降の対応」は原因を把握し、適切な治療

及びもとの生活に近づける対応となります。初動期以降の対応で重要なことは、関係者が協

力し、虐待解消に向けた高齢者及び養護者の支援を実施することです。

ポイント ・虐待解消に向けた高齢者及び養護者の支援を行う

【支援過程】

①相談・通報の受付

虐待を確実にキャッチし、緊急対応の必要性を予測しながら相談・

通報内容の聞き取りを行う

②相談内容の共有 組織内で検討し、市町村と地域包括支援センターの両者で事実確認

に向けた段取りの調整を行う

③コアメンバー会議に向けた事実確認

通報された情報について高齢者の安全やその状況の確認を行う

初動期以降の対応

~安心・安全な暮らしの再構築~

④コアメンバー会議 市町村がその責任において虐待の有無と緊急性の判断を行い、

その判断に基づいて当面の支援方針(支援計画)を決定する

緊急対応が必要な状況が発生

した場合は、「④コアメンバー

会議」を開催し、緊急対応に

関する支援方針を決定する

⑤コアメンバー会議の決定に基づく対応 当面の支援方針に基づき、期限までに適切に支援を実施し、必要に応じて

市町村はやむを得ない事由による措置等の対応を図る

⑥個別ケース会議、その後の支援 虐待の要因を捉え、高齢者や養護者、地域等それぞれの支援課題に対して関係

機関が関与し、虐待解消、高齢者の権利擁護を目指す支援計画を立て、支援を進める

⑦虐待対応の終結 虐待の現状及び将来の予測のもと、終結ができるか組織決定し、包括的

継続的ケアマネジメントへの移行についても併せて確認する

高齢者虐待防止ネットワークの構築と運用

23

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事例紹介(P5)の続き

初動期以降の対応~安心・安全な暮らしの再構築~

⑥ 個別ケース会議、その後の支援 P25~P31

母親の入院から 10 日後、コアメンバー会議で決定した対応方針の確認を含め個別ケース会議が開催され、退院後の在宅生活の可能性について検討していくという方針を決定し、関係者による支援が開始されました。 入院から 3週間後、長男が母親を病院から無理やり連れて帰ろうとしたため、緊急にコア

メンバー会議を開催し、会議翌日、やむを得ない事由による措置により母親は特別養護老人ホームに入所しました。 その後、関係者で個別ケース会議を重ね、母親と長男は定期的に市役所で面会をするよう

になりました。

⑦ 虐待対応の終結 P32~P33

母親も長男も、それぞれ安定した生活を送ることができており、また、面会場所を施設に切り替えてからも、問題なく面会が行われていました。 それを踏まえ、市高齢者担当課は個別ケース会議を開催し、措置から契約入所に切り替え、

虐待対応を終結することを決定しました。

24

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⑥ 個別ケース会議、その後の支援

関係者を集めた個別ケース会議

入院から 10 日後、市高齢者担当課は関係者を集め個別ケース会議を開催しました。

出席者は、市高齢者担当課(課長、係長、担当者)、包括(社会福祉士、保健師)、市障害者担当

課、障害者相談支援センター、担当医、病院の相談員の 9 名です。

母親の状態も安定し、長男も市障害者担当課及び障害者相談支援センターの支援により落ち着き

を取り戻しつつありました。また、母親は、迷っているけれども、長男のために家に帰りたいと話し、長

男も在宅で母親と一緒に生活することを望んでいることを踏まえ、退院後の在宅生活の可能性につ

いて検討するという方針決定がされました。ただし、母親が長男との在宅生活に不安を抱いているこ

とは否めないため、退院後の施設入所等も視野に入れながら、慎重に支援を進めていくことが関係

者間で確認されました。

個別ケース会議とは

コアメンバー会議で決められた支援の実施後、それを評価し、新たに集まってきた情報を踏

まえ、虐待対応の終結に向けて、虐待の要因解消を行っていくための支援方針(支援内容と役

割分担)を決定する会議です。市町村が中心となり開催します。

※この会議は、コアメンバー会議で虐待と判断されたケースに対する支援方針を検討するので

あり、虐待の有無について再度議論する場ではありません。

個別ケース会議のメンバー

コアメンバーに加え、虐待の事例に応じて、必要な支援が提供できる各機関等の実務担当者

(事例対応の際に協力を得たい保健医療福祉関係者)や、アドバイスを求める専門職等(精神

科医や、弁護士、虐待対応専門職チーム等)を集めます。

※虐待の解消に向けた支援は、コアメンバーのみで行うことは不可能です。

虐待の要因は複雑に絡み合っていることが多いため、必要な支援のできる関係機関との連携協力

が必要です。

個別ケース会議で支援計画を立てる際に、最も重要な視点は何でしょうか?

個別ケース会議では、高齢者及び養護者双方に対し、虐待対応の終結に向

けて必要な支援計画を立案します。 考 え 方

コアメンバー会議では緊急性を判断するために客観的情報を重視した支援計画を立案しま

す。それに対し、個別ケース会議では、客観的情報に加え、高齢者や養護者が今の状況をどの

ように捉えているのか、また、これからどうしたいのかとういう意向や、家族の歴史及び現在

の家族関係といった情報を収集してアセスメントを行い、高齢者と養護者に対し、虐待解消に

向けて必要な生活全般に渡った支援計画を立案していきます。

25

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○高齢者が本人らしく生きる権利を尊重し、安定した生活の確保を目指します。

高齢者本人が、今後どのような生活やどのような家族関係を望んでいるのかという意思

を尊重しながら、高齢者が本人らしく生きる権利と安定した生活の確保を目指した支援

計画を作成します。

○虐待の再発防止のために必要な養護者への支援も計画に組み込みます。

養護者の介護力や経済、医療状況、高齢者との関係等を再度把握し、高齢者の権利擁護・

虐待解消に向け、養護者に対し、どのような支援が必要かどうかを検討します。そして、

再び家族として生活していくことができるのか等の可能性について分析、課題抽出し、そ

の対応策を支援計画に組み込みます。

AA 26

個別ケース会議で支援計画を立てる際に最も重要な視点は、 「高齢者が本人らしく生きる権利を尊重し、安定した生活の 確保、そして養護者からの虐待の再発防止」を目指すことです。

本事例に当てはめた対応と解説

今回の個別ケース会議で作成した高齢者虐待対応支援計画です。

社団法人日本社会福祉士会「高齢者虐待対応ソーシャルワークモデル実践ガイド」を参考に作成

*本シートは P107 にありますのでご活用ください。

出席者

具体的な役割分担

何を・どのように 支援機関・担当者等 期限対象 課題 目標

1自宅に戻るかどうかの意向が揺れている

自らの希望する生活を落ち着いて考えられ、周りに伝えられる

3退院後の安定した生活の確保

①母親の不安や今後の 生活への希望を確認す る②在宅生活となる場合に は、介護サービス等を 調整する

1週間後

安心できる場所で、落ち着いて判断できる環境を整える

包括:社会福祉士病院の相談員

包括:社会福祉士介護支援専門員

母親の希望を尊重したケアプランを検討する

3

①日常生活に必要なサービ スの利用を継続する②自分で家事ができるよう にサポートしていく

市障害者担当課障害者相談支援センター

1週間後

1市障害者担当課障害者相談支援センター

1ヶ月後

2 精神的に不安定長男の思いや悩みの把握、受け止め

継続的に相談支援を行う

総合的な

支援方針

養護者

(長男

4

精神科への定期受診 継続的な病院受診支援を行う

高齢者

(

母親

4

在宅生活の可能性について

2週間後

2ADLの低下に伴い在宅生活ができるか不安

ADLや生活能力の点から、在宅生活か、施設等か、最もふさわしい生活場所を母親とともに決めていく

①入院中に生活能力の判 断をする②医師や看護師に回復の 可能性を確認してもらう③その結果を逐次、母親に 伝える

包括:保健師病院の相談員

1カ月後家事全般ができない

1ヶ月後

長男の生活支援を主眼としたケアプランの構築

市障害者担当課障害者相談支援センター

精神科受診ができていない

長男の生活も落ち着きを取り戻しつつあり、母親は、迷ってはいるが長男のために、家に帰りたいと話していることや、長男も母親と在宅で一緒に生活することを望んでいることを踏まえ、退院後の在宅生活の可能性について検討していく。ただし、母親が長男との在宅生活に不安を抱いていることは否めないため、退院後の施設入所等も視野に入れながら、慎重に支援を進めていく。

計画書作成者 ( 包括:社会福祉士  )会議日時     :     ○年     △月     ●日計画作成日   :     ○年     △月     ●日計画評価予定日:     ○年     △月    △日

会議目的

※支援の必要性: ■あり   □なし  □不明

生活は、訪問介護員の協力でできているが、早く母親が自宅に帰ってきてほしい

※話の内容:□ 一貫している ■ 変化する □ 不明

息子が時々怒るので怖い、息子と一緒にいるとまた怒られるかもしれないので不安・・・でも、息子は家のことを何もできないから、早く家に帰りたい

市高齢者担当課(課長、係長、担当者)、包括(社会福祉士、保健師)、市障害者担当課、障害者相談支援センター、 病院(医師、相談員)、介護支援専門員

養護者の状況

(意見・希望)

高齢者本人の状況

(意見・希望)

高齢者氏名: 母親 様

高齢者虐待対応支援計画書

26

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緊急対応(やむを得ない事由による措置)の実施

入院 3週間後、日が経つにつれ、母親は「ここの生活はいい、息子と 2人きりになることはやはり不安、本当は息子と離れて暮らしたい。」と言うようになりました。 その矢先、長男がいきなり病院に押しかけ、嫌がる母親を無理やりベッドから引きずり降ろそ

うとした事件が発生しました。止めに入った看護師に対し、長男は「入院してからもう 1か月も経つ。今日こそ母親を連れて帰る。」と訴え、激高しました。 長男は、母親がなかなか家に戻ってこないことに苛立ち、不満が積り、その結果今回の行動に

出てしまったようでした。 主治医から長男に病状の説明をし、何とかその場を収めることができました。 市高齢者担当課は、このままでは母親の身の安全の確保が十分できないと判断し、緊急にコア

メンバー会議を開催しました。その結果、次の理由により、やむを得ない事由による措置を行うことが決定されました。

措置を行うにあたって、母親本人と長男それぞれに対し、市高齢者担当課が責任を持って次のように説明をしました。 そして、支援計画に基づき、特別養護老人ホームへ入所措置を行いました。

措置理由

① 母親は、長男からの暴力により、同居に対して、不安を抱いている。

② 長男は、現在も精神的に不安定。

③ 長男は、母親に対して依存的で、2人だけの生活に戻せば、心理的、身体的虐待が再発することが

予測される。

④ 長男が、今後も母親を取り戻す行動にいつ出てくるかわからない。その際には、本人、関係者に

も危害を及ぼす可能性もあることから、面会制限も必要となる。

母親に対する説明

「息子さんとの生活も大切ですが、今は、安全な生活環境の下、自らの病気の治療や健康状態の回復

を優先することが大切な時期です。今は施設で生活していくことが大切ですが、ずっとということで

はありません。あなたの健康状態の回復や息子さんの生活状況が落ち着けば、その時点でもう一度、

自宅に戻り息子さんとの生活をやり直せるのか、それとも、施設での生活を継続していくのか、それ

以外の方法も含めて一緒に考えていきます。」と伝えました。

長男に対する説明

「このままの生活を続けていくことは、お母さんと、あなたの両者の生活が崩壊してしまう可能性が

高く、特に高齢のお母さんには健康や生活面にも大きな影響があるので、一時的にも保護・分離をす

ることが行政機関として、 善の方法と判断しました。これを、お母さんとの生活を見つめなおして

もらう機会として考えており、当面はお互いの生活に触れないようにしたいので、お母さんの居場所

に関しては教えることはできません。

しかし、お母さんの状況についてはお伝えする機会を定期的に持つので安心して、あなたの健康状

態や生活を立て直してください。

あなたの生活が落ち着き、お母さんの健康状態が回復し、お互いに以前のように同居を希望するよ

うであれば、面会制限や措置解除に向け、市役所等での面会の機会を設けることを考えています。お

母さんには介護サービス等の計画的な活用を行い、安定した在宅生活ができるよう一緒に考え、取り

組んでいきます。」と伝えました。

キーワード 面会制限

虐待を受けた高齢者が養護者と会うことで、更に精神的苦痛などのダメージを受けることが予測されたり、

養護者が高齢者と接触をして高齢者を自宅に連れ戻すことで虐待が再開される可能性がある場合、それを

避けるためのやむを得ない事由による措置の付随的な処分です。(P67 参照)

キーワード

27

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本事例に当てはめた対応と解説

今回のコアメンバー会議の虐待の有無・緊急性の判断の結果です。

会議日時

シート作成日

 :    ○年   △月   ■日

 :    ○年   △月   ■日

会議の目的 緊急性の判断と支援方針市高齢者担当課(課長、係長、担当者)包括(社会福祉士、保健師)

虐待事実の判断

緊急性の判断

■緊急保護の検討

□防止のための保護検討

□事実確認を継続

緊急性の判断根拠

□なし: ( 理由 :                    )

□検討中 ( 理由 :                                             )

■あり    □訪問介護  □通所介護  □短期入所生活介護 □認知症対応型共同生活介護        □小規模多機能型居宅介護  □養護老人ホーム  ■特別養護老人ホーム

□保護の検討、集中的援助

□継続的、総合的援助

シート作成者( 包括:社会福祉士 )

高齢者氏名 : 母親                様

虐待の有無・緊急性の判断シート

出席者

虐待の事実 :□なし■あり ( 身体的 ・ 心理的 ・ 放棄放任 ・ 経済的 ・ 性的 ・その他(                 ))

□入院や通院が必要(重篤な外傷、脱水、栄養失調、衰弱等による検査、治療)

■高齢者本人・養護者が保護を求めている

□暴力や脅しが日常的に行われている

■今後重大な結果が生じる、繰り返されるおそれが高い状態

■虐待につながる家庭状況・リスク要因がある

□その他(                                                       )

措置の適用

社団法人日本社会福祉士会「高齢者虐待対応ソーシャルワークモデル実践ガイド」を参考に作成

*本シートは P106 にありますのでご活用ください。

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出席者

計画書作成者 ( 包括:社会福祉士  )会議日時     :     ○年     △月     ■日計画作成日   :     ○年     △月     ■日計画評価予定日:     ○年     △月    ▲日

1 母親は、長男からの暴力により、在宅に戻ることに不安を抱いているにもかかわらず、長男がいつまた連れ戻  そうとするのかわからないので、早急にやむを得ない事由による措置の準備をする2 長男が母親の年金・貯金を管理しているため、措置費の自己負担分が支払われない場合には、今後、成年後  見制度の市町村長申立てについても検討していく3 長男も精神的に不安定な状態にあるため、長男に対しても生活、医療、精神面への支援が必要である

会議目的

※支援の必要性: ■あり   □なし  □不明

母親を連れて帰りたい

※話の内容:□ 一貫している ■ 変化する □ 不明

病院の生活はいい、息子と2人きりになることはやはり不安、本当は息子と離れて暮らしたい

市高齢者担当課(課長、係長、担当者)包括(社会福祉士、保健師)

養護者の状況

(意見・希望)

高齢者本人の状況

(意見・希望)

1カ月後精神科受診ができていない

1カ月後

精神科への定期受診

市障害者担当課障害者相談支援センター

入所先から母親を連れて帰る可能性がある

高齢者

(母親

4

緊急性の判断と支援方針

翌日

2精神的な動揺やストレスを抱えている

精神的に安定した生活を送ることができる

相談支援を通して今後の生活について話し合う

市高齢者担当課包括:社会福祉士

総合的な

支援方針

1週間後見守り、精神的な支援①継続的に相談・支援を行う②より専門的に相談に乗れ る機関につなぐ

市障害者担当課障害者相談支援センター保健所

養護者

(長男

4 精神的に不安定

母親を、しばらくは別々に生活する必要があることを理解してもらう

措置と面会制限について長男に説明する

市高齢者担当課 翌日

2 家事全般ができない 生活支援

①日常生活に必要なサービ スの利用を継続する②自分で家事ができるよ う にサポートを継続する

1週間後

①保護・分離、面会制限につ いて母親に説明する②施設の確保、措置手続き を実施する

市高齢者担当課

3 継続的な病院受診支援を行う市障害者担当課障害者相談支援センター

1

1 身の安全の確保

退院後そのまま緊急一時保護又はやむを得ない事由による措置を実施し、同時に面会制限を行う

3

具体的な役割分担

何を・どのように 支援機関・担当者等 期限対象 課題 目標

高齢者氏名: 母親 様

高齢者虐待対応支援計画書

今回のコアメンバー会議で作成した高齢者虐待対応支援計画です。

本事例に当てはめた対応と解説

*本シートは P107 にありますのでご活用ください。

社団法人日本社会福祉士会「高齢者虐待対応ソーシャルワークモデル実践ガイド」を参考に作成

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措置後の支援

3 週間が経過し、長男は障害者相談支援センターに自分の思いを話すことができるようになり、

精神科受診も可能となりました。

また、長男は、自立支援法の訪問介護員による週 2 回の家事支援にも慣れ、自宅での生活も安

定してきました。母親の措置費の自己負担については、長男から定期的な支払いが行われていま

す。母親のことは今も気になっているようで、「一度どのような生活をしているのか、会って話し

てみたい。」と口にしますが、表情は落ち着いており、強く要求することはありませんでした。

また、長男は「今は、母親と自宅で一緒に暮らすためにも、自分の身の回りのことは自分でで

きなければならない。」とも話すようになりました。

母親も精神的に落ち着き、身の回りのことは指示があればできるようになりました。そして、

時々「息子はどうしているか、一度会いたい。」と話すようになりました。

それぞれの状態変化を踏まえ、市高齢者担当課は、再度個別ケース会議を開催し、現在、母親

と長男は、2週間に一度、市役所で時間を決め面会を行っています。

この後、どのように支援を行っていけばよいのでしょうか?

保護したことで虐待対応が終結するわけではありません。

やむを得ない事由による措置は、あくまでも高齢者の生命や身体

の安全及び財産の確保を行うための一時的なものであり、 終的

なゴールではないのです。

考え方 1

○家族関係の修復に向けて継続的な支援が必要です。

やむを得ない事由による措置は、高齢者と養護者の間に強制的に距離を置く方法である

ため、養護者等家族の理解や協力が得られず、家族を取り巻く環境は大きく変化します。

家族関係を再度見直し、関係調整や修復に向けた支援を本人、養護者それぞれの支援チー

ムで計画的に行っていく必要があります。

○受け入れる施設も大きなリスクを抱えています。

受け入れた施設は、養護者が暴力や脅迫等により、保護した高齢者を取り戻そうとする

場合など、施設で生活するすべての人の安全が脅かされることになるのではないかと危惧

しています。施設に入所したことにより支援を終了し、施設にすべての支援を任せてしま

うようでは、その関係は悪化し、次回から協力を得られないことにもなりかねません。

※高齢者が退所に至るまで、措置を決定した市町村は責任が継続しているということを認

識する必要があります。

高齢者も養護者も自立した個人として生きていけるように、それ

ぞれの支援者が同じ方向性を目指した支援を行っていくことが

重要です。

考え方2

支援者は、虐待がみられた家族等が、今後どのような生活やどのような家族関係を望んで

いるかという意思を丁寧に聞き取り、その家族にとって もよい生活の形を模索していきま

す。支援者間では、支援方針・支援計画を共有し、家族関係の再構築について同じ方向性を

目指して支援を行っていくことが重要です。

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措置による保護・分離後、主に次の 4 点に留意した支援が必要です。

① 高齢者に対しては、保護している間の精神的なケアとともに、健康状態、生活能力を

把握し措置の解消に向けた対応が必要です。

・急な環境変化や状況変化に対する高齢者の精神的な動揺やストレスは大変大きなもの

であり、身体的精神的ケアを総合的に行なっていかなければなりません。また、今後、

高齢者がどのように生活を再建させていくのか、本人の生活能力の見定めを行うこと

も必要です。

② 養護者に対しても必要に応じて精神的な支援や生活支援を行うことが必要です。

・虐待事例には共依存のケースも多く、養護者にも専門的な精神的ケアが必要です。

③ 認知症等により判断能力が低下している高齢者にも、尊厳が守られるような支援が必

要です。

・高齢者本人の意思を常に確認しながら、その意思を代弁するなどの権利擁護の視点を

持った支援を行うことが重要です。また、高齢者が財産管理できない場合や、契約に

よるサービス利用ができない場合には、必要に応じて、成年後見制度の申立を行うこ

とも検討する必要があります。

④ 養護者、家族との再統合の可能性について判断していきます。

・養護者や家族の生活状況が改善しているのか、どのような方法であれば高齢者が自宅

や自宅以外で生活が可能かなどを検討します。

キーワード キーワード

自分と特定の相手がその関係性に過剰に依存している状態。

ある人間関係に囚われ逃れられない状態。(P34 参照)

「自分を犠牲にして誰かのために尽くす」「お互いに傷つけつつも離れられない」というような、

共依存

本事例に当てはめた対応と解説

本事例でも、母親が病院へ入院することにより、一時的な保護・分離が行われた後、施設

入所に至っていますが、このような措置が 終目的とは考えられてはいません。母親の精神

的なケアをしながら、長男の自立に向けた支援も同時に進められ、双方の支援が継続して行

われています。このような取り組みにより、定期的な面会も行えるようになり、それぞれの

生活が落ち着きつつあります。

今後、母親本人がどのような生活を望むのかにより、その後の生活も変化していきますが、

そのために支援の早い段階から将来を予測し、支援者を増やしていく(地域の見守りネット

ワークづくり)の取り組みも必要です。

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終結に向けて

長男は、市役所で母親と面接を重ねるうち、「お母さんがいなくても、簡単な料理と洗濯は

自分できるようになった。」と自慢げに話すようになってきました。

また、長男は訪問介護員による家事支援にも慣れ、困ったことがあれば、すぐに障害者相談

支援センターに相談するようになり、長男への見守り体制が確立されてきました。

一方、母親は、長男の話に対し、「息子とは離れてよかったと思う。でも、もっと自由に会

いたい・・・」と離れて暮らす長男の成長に喜びを感じつつも、寂しさを感じているようでし

た。

この状況を踏まえ、面会場所を施設に切り替え、面会を重ねてきましたが、長男は落ち着い

た様子で施設とのトラブルも見られませんでした。そこで、市高齢者担当課と包括は、個別ケ

ース会議を開催し、虐待対応は終結とすることを決定しました。同時に、施設の了解を得て、

措置解除を行い介護保険による入所契約に切り替えました。

引き続き、包括による母親への定期的な面談や、長男への障害者相談支援センターの支援に

よる見守りは行われています。

⑦ 虐待対応の終結

虐待対応の終結は、どのように判断したらよいのでしょうか?

考 え 方 終結とは、高齢者虐待が解消し高齢者の生活が安定

した状態と考えます。

○虐待の解消だけをもって終結と判断してはいけません。

虐待の解消のみが目的であるとすれば、高齢者の保護・分離をもって虐待対応が終結し

たことになってしまいます。重要なのは、保護・分離した後、再び虐待を受けないような

安全安心な生活場所を確保することです。家に戻って虐待が再発するようでは、適切な虐

待対応とは言えません。虐待再発のおそれはないか、また新たな権利侵害の発生やそのお

それがないかという点についても、よく検討しておく必要があります。

定期的に虐待事例のモニタリングを行い、支援計画の目標

が達成された場合に、虐待対応の終結と判断します。

○虐待事例への支援は、あくまでも虐待解消のための介入であり、虐待が解消し、生活が

安定した時点で終結すべきものです。

したがって、モニタリングにおいて支援計画の目標が達成されたかどうかを確認し、

達成が確認された場合、市町村の確認を得て支援を終結します。ただし、虐待が再発した

場合には、再度、虐待ケースとしての支援を開始することになります。

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虐待対応の終結のながれ

・虐待対応の継続

・状態の安定についての確認

・支援目標達成の確認

・通常の見守り等の役割分担

・定期的な面接等による確認 ・支援計画の達成度評価 ・支援内容の見直し

支援計画に基づく支援の実施

虐待対応の終結

高齢者虐待防止ネットワークの構築と運用

支援計画のモニタリング・評価

○虐待対応の終結と判断できるのは、次のような状態が考えられます。

保護・分離を行った場合

・介護サービスや必要な社会資源を活用し、虐待の要因が解消されることで、安定した

在宅生活を送るための体制が整い、高齢者が養護者のいる元の家庭に戻ることができ

た状態

・定期的な面会も問題なく行われており、高齢者本人と養護者の同意のもと、契約によ

る入所に切り替えることができた状態

在宅での継続的な支援を行ってきた場合

・介護サービスや必要な社会資源を活用し、虐待の要因が解消されることで、安定した

在宅生活が確保できた状態

○虐待対応の終結を判断しても、必要があれば包括的・継続的ケアマネジメント支援に移行

して関わる必要があります。

虐待対応が終結してもすべてが終了ではありません。重層的な生活課題があるケースと

判断した場合には、包括として、介護支援専門員や介護サービス事業者、民生委員等と連携

し、その高齢者が地域で生活している限り関わりは続きます。すなわち、被虐待者としてで

はなく、地域で生活する一人の高齢者への支援という形での関わりとなります。

本事例に当てはめた対応と解説

施設での定期的な面会が問題なく行われており、母親は、介護保険による入所契約に切り

替えることが可能な状態になりました。また、母親と長男はそれぞれにストレスのない新た

な生活をスタートさせています。

以上の理由により、『高齢者虐待が解消し高齢者の生活が安定した状態』であると考えら

れ、虐待の終結の判断がなされました。

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この家族には、「共依存」の関係が見られます。

共依存の場合、養護者はともかく、高齢者も支援を拒み、養護者をかばいます。養護

者も、高齢者も支援を求めていません。

そうなると、支援者には迷いが生じます。

…長男と母親の仲がよい、そもそもこれのどこがいけないのでしょうか。

福祉の支援で重要な原則の一つが「自己決定」です。…母親が長男のところに帰る、と言

っているのに、なぜ、そうしないよう説得しなければならないのか、と思えてきませんか。

(多くの場合、ここで迷いが生じ、「息子のところに帰したらどうか」「見守ろう」という

判断が出てきます。…この判断、いったい、誰の立場にたっているのでしょうか。)

まず、支援者として高齢者が暴力を受け続けることを容認してはいけません。

暴力を受け続ける結果を選択する人に、「それはやめるべきだ」と言うのは行うべき支援

です。このような場合、支援の仕方は指示的になります。

「あなたが息子さんから暴力を振るわれるのをそのまま見過ごすことはできません。」

そして、「あなたが今、息子さんから離れることで、あなた自身が安心した場所で身体を休

めることができるでしょう。そうすることによって、あなたの息子さんも変わる可能性が

出てくるのです。」ときっぱり母親に言いましょう。

そもそも、長男はなぜ支援を拒むことができるのでしょうか。それは、いつも傍に自分

を助けてくれる母親がいるからです。長男は 40 代になった今も、母親を頼りにしていま

す。母親が傍にいる限り、面倒を看てくれる限り、長男に変わらなければならない理由は

ありません。

長男を変えようと思ったら、まず母親から離すこと、そして長男が困って、支援者(長

男の自立のために必要な支援を提供する役割を担う)を頼るように促していくことが必

要です。

ただし、これには母親にも痛みを伴います。それは長男に必要とされる甘い感覚を失う

からです。そして、母親も不安になるでしょう。そのため、母親に対し、長男と離れて暮

らす生活が心地よいものであること、そして母親に「このままだと息子は一生何も変わら

ないままです。」と常に語っていくことが求められます。

この先、長男側に立って支援する人、母親側に立って支援する人をきちんと分け、それ

ぞれが関わる目的と役割を明確にし、連携をとって支援を進めていくことが必要となり

ます。

コ ラ ム 『共依存』の家族への支援について

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近年、児童虐待や高齢者虐待、独居高齢者の孤独死などの事

件が報道され、住民の生活と健康を守る地方行政がこれらの事

件とどう関わっていたか、公文書であるケース記録などを開示

するよう求められるようになってきました。

高齢者虐待対応は、養護者や虐待対応に疑問を抱いた他の親

族、関係者から情報開示請求や、対応の正当性についての訴訟を起こされる可能性の高

い業務です。

特に、市町村は、高齢者虐待対応の責任主体であることを自覚し、虐待対応に関わる

支援者誰もがその当事者となる可能性を秘めていることを認識する必要があります。

たとえ、あなたが適切な判断のもと、責任ある対応をしたのだとしても、結果として、

予期せぬ事態に見舞われてしまった場合には、あなたを守ってくれるのが、記録です。

記録は、行政対応の適正実施を証明する重要な証拠となる可能性があります。

また、何も記録が残されていなければ、行政として組織として、何もして

いないと判断されてしまう可能性もあります。

つまり、記録を残すということは、組織としての危機管理に他ならない

のです。

しかし、どんなものでも残せばいいというものではありません。

次に示すことを踏まえ、相談受付から虐待の終結まで一貫した記録を残すことのできる

共通の様式(帳票等)をコアメンバー間で整備しましょう。

参考:『こう書けばわかる!保健師記録』(著者)長江弘子/柳沢尚代

コ ラ ム

①事実を客観的に書くこと。主観的な考えや解釈は書かない。 ②事実と支援行為、その結果に一貫性を持たせる。

・どのような判断のもと、いつ、誰が、どこで、誰に、どのような支援を行ったのか ③記録の作成者、作成日を必ず残す。

※このようなことを意識することで記録は、公的機関としての法的根拠と公平性に基づ

いたサービス提供など、これらの経緯や要件を証明し、行政措置や緊急介入、調停や

裁判の際の証拠文書となり得ます。

これがあなたを守る記録作成のポイント!

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① 相談・通報の受付 (P6~)

愛知県の平成 21 年度高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査では、要介護認定

者 763 人における、認知症日常生活自立度「Ⅱ以上」の者は 488 人(64.0%)であり、被虐

待高齢者 1,095 人の中の 44.6%を占め、その件数には増加がみられます。今後、認知症の高

齢者の増加が予想されており、虐待対応の充実は急務となっています。

認知症の高齢者に対する虐待は、認知症による言動の混乱や身体的自立度の低下、また、

家庭内における精神的・経済的な依存関係等のバランスが崩れることなどが重なり合って発

生します。そのため、その対応には、認知症の原因疾患やその症状、認知症の高齢者の心身

の状況とともに、介護を担う養護者のおかれる状況を理解し、虐待要因の解消に向けた取り

組みをする必要があります。

この章では、虐待された高齢者に認知症がみられる 2 事例を通して、始めに対応のポイン

トや制度について説明し、次に認知症についての基本的な理解と、認知症の高齢者への適切

な関わり方、家族支援のあり方について紹介し、より効果的な支援につながるよう解説して

います。

1 事例対応

虐待対応の基本的なプロセスのながれついては、事例 1(P6~33)で示したフローに沿っ

て整理しています。

相談者: 介護支援専門員

相談先: 地域包括支援センター(以下、包括と略す)受付者は保健師

包括に介護支援専門員から電話で「利用者の息子が利用者をたたいているのを、デイ

サービスの職員が見たという報告があったのですが・・・」という相談がありました。

包括による相談の受付

息子(60 代、無職)は母親(80 代、要介護 2、認知症)を自宅で介護していますが、母親

は息子の姿が見えないと何度も呼び続ける、入浴を拒否する、時々徘徊がある、などの行動が

あり、息子には介護疲れがみられました。介護保険サービスは週 2回のデイサービスを利用し

ています。

Ⅳ 認知症の高齢者に対する虐待

事例2 介護疲れから暴力を振るってしまった事例

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市町村と包括の相談内容の共有

包括内で打ち合わせを行い、身体的虐待の疑いがあると考えました。

包括から市高齢者担当課に連絡し、虐待の有無と緊急性の判断のためコアメンバー会議を開

催することとしました。

包括による事実確認

【自宅訪問より】

包括の保健師と担当の介護支援専門員で自宅を訪問しました。

母親の身体には①腕に 2 か所の内出血跡が見られました。

息子に話を聞くと、「母のことを家で看たいと思うが、何度も同じことを聞かれたり、外へ

出て行こうとするため精神的に疲れてしまい、たたくつもりはなかったのに手が出てしまった。

今後は二度としないようにします。」と発言しました。

母親は②「息子に今までたたかれたことはない。息子は私の世話で疲れているから・・・」

と言い、息子は「自分の母親だし、これからも母親の世話をしたい。母もそれを望んでいるか

ら。」と言いました。

【関係機関より】

母親が利用しているデイサービスに身体状況を確認すると、③特に腕以外の傷やあざなどは

見られず、今までにもこのような傷やあざは見られたことはない、とのことでした。

また、母親の主治医は「介護保険の申請時点で受診があり、認知症の専門医療機関への受診

を勧めたが、その後は一度も受診していない。」とのことでした。

民生委員に普段の母親と息子の関係を聞くと、④母親の通院時には息子が病院へ付き添って

行くなど、仲の良い親子だと思っている、とのことでした。

市町村による事実確認

市高齢者担当課は、住民票、収入状況、介護保険、医療保険、医療機関利用等について情報

収集を行いました。

【母親】

年金月 8 万円、後期高齢者医療保険料、介護保険料等の滞納はなし。

高血圧により月 1 回 A病院へ通院。

③ コアメンバー会議に向けた事実確認 (P12~)

② 相談内容の共有 (P9~)

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市町村と包括によるコアメンバ―会議

包括と市高齢者担当課は事実確認を終え、市高齢者担当課が中心となってコアメンバー会議

を開催しました。

出席者は市高齢者担当課(課長、係長、担当者)、包括(保健師、社会福祉士)の計 5 名で

す。

それぞれからの事実確認情報を共有し、当面の支援方針を以下のように決定し、役割分担を

決め、期限を 1 週間後としました。

【支援方針】

事実確認①~④より、虐待の程度や頻度から、現段階では高齢者の生命への危険性は低く、

養護者の介護疲れが軽減されれば虐待がなくなる可能性がある。

したがって、まずは養護者への支援を積極的に進めていく。

【内容】

①息子の介護負担軽減や休息を考慮して、デイサービスの回数を増やすことと、ショートス

テイの利用を勧める。

②介護支援専門員は母親、包括は息子の悩みや訴えを聞くように役割分担し、包括は息子に

対して認知症の知識(P47 参照)と対応方法を伝える。

③認知症の専門医療機関への受診がされていないため、受診するよう促す。

④新しいあざが頻繁に見られるようになる、暴力がエスカレートする等、生命に危険がある

と判断された場合には、一時的にでも分離するような緊急的な対応を視野に入れる。

⑤ コアメンバー会議の決定に基づく対応 (P21~)

市町村と包括のコアメンバ―会議後の支援内容

支援方針に基づき、デイサービスの回数を増やすことと、ショートステイの利用を勧めま

した。

ショートステイの利用に対しては施設入所というイメージがあり、拒否的な反応が見られ

たため、デイサービスの回数を増やすことで施設に慣れていくことを勧めました。

また、今後包括と介護支援専門員にはいつでも相談できること、認知症の介護電話相談の

情報提供や(P97 参照)、家族教室・家族会などへ参加することもできることを伝え、一人で

抱え込まないようアドバイスをしました。

認知症の専門医療機関への受診を早急にするよう勧めました。

④ コアメンバー会議 (P16~)

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関係者を集めた個別ケース会議

2 週間が過ぎ、この間に母親は認知症の専門医療機関を受診することができ、医師の強い勧

めもあって週 4 回のデイサービスを導入することができました。

次の月には 2 泊 3 日のショートステイの利用が決まりました。

また、息子は認知症の母親への接し方を知ることにより、ストレスが軽減され、表情も良く

なってきました。デイサービスの送迎時には、母親と笑顔で会話する様子も見られるとのこと

です。

今後の支援方針を関係者間で検討し、共有するため個別ケース会議を開催しました。

出席者は市高齢者担当課(課長、係長、担当者)、包括(保健師、社会福祉士)、担当の介護

支援専門員、民生委員の計 7 名です。

【支援方針】

①見守りチームを結成する。

・母親を担当の介護支援専門員、息子については包括が中心となり、民生委員を含めて交替

で定期的に訪問することで、母親の認知症の進行状態と生活状況、息子の介護疲れ等の現

状を確認する。

・包括は継続して、息子の悩みや不安を受け止めながら、認知症についての正しい知識と対

応方法を伝えていく。

・デイサービス事業者へ、入浴時などの身体の状態確認を依頼し、何かあれば包括へ連絡を

するようにする。

②息子からの虐待が確認されたときは、包括に連絡が入るようにし、緊急時には関係者が集

まるようにする。

その後

息子が母親の認知症を正しく理解し、母親に合わせた対応をとることができるようになったこと、

認知症の専門医療機関を受診し、薬物治療を行うことにより、母親の認知症の症状は落ち着いてき

ました。デイサービスでも他の利用者と談笑する姿も見られるようになっているとのことです。

また、息子はデイサービスやショートステイを利用することで、自分の時間を持てるようになり、趣

味である魚釣りへ出かけることができるようになりました。認知症への理解も少しずつできてきてい

るようで、母親への対応に前ほどストレスを感じなくなってきているとのことです。

⑥ 個別ケース会議とその後の支援 (P25~)

39

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⑦ 虐待対応の終結 (P32~)

終結に向けて

息子の母親への対応の仕方が変わったことや、薬物治療により、母親の認知症の症状が落

ち着いてきました。

また、母親の介護サービスの量を増やしたことで、息子は自分の時間を持ち、趣味に時間を

使うことができるようになりました。

そして、地域の家族会にも入会し、他の介護者と情報交換をするようになりました。

息子は自分の時間ができた余裕と、相談できる相手がいる安心感から精神的安定が保たれ

るようになり、母親への暴力も見られなくなりました。

この状況を踏まえて市高齢者担当課と包括は個別ケース会議を開催し、虐待対応は終結とす

ることを決定しました。

虐待対応は終結しましたが、その後も関係者による定期的な訪問等が行われ、見守りは続

けられています。

② 認知症の高齢者が徘徊で行方不明となった時には、包括を窓口とし、そこから市高齢者担当課、警察、自治会へ連絡をするという緊急連絡体制を築く。

① 母親を含めた認知症の高齢者への理解と、徘徊時の見守りや声かけが地

域全体で取り組めるよう「認知症サポーター養成講座」を開催した。

包括はその後の支援として、次の①②を地域の虐待対応の体制づくりとして展開していきました。

40

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相談者:介護支援専門員

相談先:市高齢者担当課職員

業務連絡会終了後、市高齢者担当課に介護支援専門員から「利用者の家族が介護サー

ビス利用料を滞納し、催促しても支払ってくれないのですが・・・」と相談がありまし

た。

① 相談・通報の受付 (P6~)

市町村による相談の受付

父親(80 代、要介護 4、重度の認知症)は訪問看護(月 2 回)とデイサービス(週 7 日)、

ショートステイ(2 週間/月)を利用していますが、3 か月ほど前から介護サービス利用料の滞

納があります。

父親は息子(50 代、事業の失敗により現在は無職、借金あり)と 2 人で生活しており、介

護は息子が行っています。5 か月前までは息子の妻も一緒に暮らしていましたが、離婚して家

を出て行きました。

父親の年金(月 12 万円支給、通帳管理は息子)は息子の生活費や遊興費、借金返済等に充

てられているようで、サービス事業所が息子に対して何度も支払いの催促をしてきましたが、

一向に支払われないので、このままではサービスの利用ができなくなります。

市町村と包括の相談内容の共有

市高齢者担当課内で打ち合わせを行い、経済的虐待の疑いがあるのではないかと考えま

した。

市高齢者担当課から包括に連絡し、虐待の有無と緊急性の判断のためコアメンバー会議

を開催することとし、包括にコアメンバー会議に向けての事実確認を依頼しました。

② 相談内容の共有 (P9~)

事例3 重度の認知症のため、経済的虐待を受けていた事例

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包括による事実確認

【自宅訪問より】

市高齢者担当課から連絡を受けた翌日、包括の社会福祉士は事実確認のため担当の介護支援

専門員と自宅を訪問しました。父親はデイサービスのため不在で、息子から話を聞くと、「家

での介護は自分が行っている。事業を失敗してからは仕事をしていない。介護サービス利用料

はお金がないから払えない。」とのことでした。

【デイサービスの訪問より】

デイサービスにいる父親を訪問すると、父親は車椅子に座りテーブルについていましたが、

重度の認知症のため意思表示はありませんでした。デイサービス担当者は、「送迎時は息子が

送り出している。」とのことでした。

市高齢担当課による事実確認

市高齢者担当課は、住民票、収入状況、介護保険、医療保険、医療機関利用等について情報

収集を行いました。

【父親】

後期高齢者医療保険料、介護保険料等の滞納はなし、高血圧・糖尿病の既往歴あり

市町村と包括によるコアメンバ―会議

市高齢者担当課と包括は事実確認を終え、市高齢者担当課を中心にコアメンバー会議を開催

しました。

出席者は市高齢者担当課(課長、係長、担当者)、包括(社会福祉士、主任介護支援専門員)

の計 5 名です。

それぞれからの事実確認情報を共有し、当面の支援方針を以下のように決定し、役割分担を

決め、期限を 1 週間後としました。

【支援方針】

父親が介護サービスを継続して使えるよう、息子に対して介護サービス利用料の支払い

を促し、息子の借金に関しては問題解決につながる機関を紹介する。

【内容】

①サービス事業所と包括は、息子に、父親には介護サービスが必要であることを説明し、今

後もサービスを継続していくために、サービス利用料の支払いをどうしていくかについ

て、息子と一緒に考えていく。

②息子の借金の処理については法テラス等へ相談するよう伝える。

の 2 点に加え、世帯の生活状況についても継続的に事実確認を行っていくことになりまし

た。

④ コアメンバー会議 (P16~)

③ コアメンバー会議に向けた事実確認 (P12~)

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⑤ コアメンバー会議の決定に基づく対応 (P21~)

市町村と包括のコアメンバ―会議後の支援内容

コアメンバー会議の翌日、包括の社会福祉士と担当の介護支援専門員、サービス事業所の

担当者で自宅を訪問しました。息子に、このまま介護サービス利用料の支払いをしないとサ

ービスの継続は難しくなることを伝え、今後どのようにサービス利用料の支払いをしていく

かについて話をしました。

また、「父親の年金は父親のものであり、父親のために使って欲しい。家族であっても本人

の同意なく年金を使い込む、必要な保健福祉医療サービスを受けさせないなどは経済的虐待

と見なされる。」ということを何度も伝えましたが、息子は「仕事をしていないので、自分が

父親の介護をします。」と言い、介護サービスについては利用を止めることになりました。

月 2 回の訪問看護だけは、医療的な処置のこともあり、「その費用ぐらいなら支払うことが

できる。」ということで継続することになりました。

上記のことを包括は市高齢者担当課へ伝え、今後息子による父親の介護が十分にされず、

父親に生命の危険等があれば保護・分離についても検討する必要があることを伝えました。

関係者を集めた個別ケース会議

2 週間が過ぎ、訪問看護の看護師が自宅を訪問したところ、部屋は尿臭が強く、父親は布団

の上で横たわっている状況でした。オムツ交換はされておらず、布団も排泄物で汚れた状態で

した。また、布団の横には封の切っていない菓子パンが 1つ置いてあり、食事も取れていない

様子で脱水状態になっていました。看護師から市高齢者担当課に連絡が入り、医療機関へ一時

入院を行いました。

その後息子に連絡を取り、何度か会うことはできましたが、一切関わろうとせず、父親の年

金についても返す意思はありませんでした。この状態では父親を在宅に戻すことはできないた

め、3 日後に予定していた個別ケース会議を急遽変更し、緊急にコアメンバー会議を開催する

ことになりました。

出席者は市高齢者担当課(課長、係長、担当者)、包括(社会福祉士、主任介護支援専門員)

の計 5 名です。

【支援内容】

①父親の健康で安全な暮らしを確保するための生活場所を検討する。

成年後見制度の利用に向け、調査を開始するとともに、とりあえず市高齢者担当課が入

所先の施設を探し、見つかるまではショートステイを利用する。

②包括と市高齢者担当課にて、息子の生活状況を確認しつつ、借金の処理については、法テ

ラス等へ相談するよう引き続き伝えていく。

⑥ 個別ケース会議とその後の支援 (P25~)

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その後

脱水症状を起こしていた父親は特別養護老人ホームに措置され、また、成年後見制度につ

いては、二親等以内の親族に申立てを行う意思が見られなかったため、市町村長による申立

てを行いました。

包括は父親の状況の説明と息子の生活状況を確認するため、息子に連絡をしましたが、息

子は「父親の面倒を看る気はない、自分のことは自分で何とかする。」と言い、その後は連絡

を取り合おうとはしませんでした。

終結に向けて

父親は施設での生活にも慣れ、安定した生活を送ることができています。成年後見制度の利

用により、父親の財産は保護され、経済的虐待は解消されました。

この状況を踏まえて市高齢者担当課と包括は個別ケース会議を開催し、虐待対応を終結する

ことを決定しました。

息子へは、定期的に父親の健康、生活状況を伝え、面会する意思がないかを確認していま

す。

⑦ 虐待対応の終結 (P32~)

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2 認知症の基本的な理解

事例 2、3 では、認知症の高齢者が上手く自分の思いや訴えを伝えることができないため、

虐待に発展してしまった事例といえます。認知症について正しく理解し、その人に合った適

切な対応ができれば、養護者のストレスは軽減し、虐待の予防につながります。

支援者として、認知症の高齢者を介護する家族や地域住民が抱く誤解や偏見を理解へと変

えていくために、認知症についての基本的な理解をしておく必要があります。

(1)認知症について

認知症とは、老化と密接な関連がありますが、老化ではなく病気が原因で起こります。色々

な原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったために、様々な症状が起こり、生

活する上で支障が出ている状態(およそ 6 か月以上継続)を指します。つまり、認知機能の

障害が現れるいくつかの病気の総称です。高血圧、糖尿病と同様に早期発見・治療すべき疾

患です。

◆加齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れの違い

もの忘れがあると年のせいだからと思いがち

ですが、加齢によるもの忘れと認知症によるも

の忘れは全く異なります。

加齢によるもの忘れ 認知症によるもの忘れ

体験の一部分のもの忘れ 体験全体のもの忘れ

もの忘れの自覚がある もの忘れの自覚が乏しい

日常生活に支障はない 日常生活に支障が起こる

記憶の連続性:あり

(例)夕食に何を食べた

かは忘れたが、夕食をと

ったことは覚えている

記憶の連続性:なし

(例)夕食をとったこと

自体を忘れてしまう

認知症によるもの忘れは、ある期間の出来事

全体が抜け落ち、思い出すことがありません。

自分がどういう行動をして生きてきたのか、つ

じつまの合う物語にならず、自信喪失、不安、

焦りをきたしたり、周りとのトラブルになった

りして、周辺(行動・心理)症状(P47 参照)

のきっかけになります。

◆軽度認知障害( Mild Cognitive Impairment = MCI ) 軽度認知障害とは、正常と認知症の中間に位置する状態をいいます。認知症に関する診断

技術が進歩する中で使われるようになった言葉です。

定義としては、次の 1~3 であり、2 と 3 が認知症の定義との違いです。

1.本人または家族が訴える記憶障害(年齢相応では説明できないと気づき悩む)

2.記憶障害以外の他の認知機能は概ね正常

3.日常生活は自立

MCIと診断された人の約 10%は 3 年後に認知症に進行するというデータがありますが、

正常に戻る人もいますので、必ずしも悲観的になる必要がないことを伝える必要があります。

(2)認知症の原因疾患

認知症には元になる原因疾患があります。アルツハイマー型認知症あるいはアルツハイマ

ー病と呼ばれる疾患は、全体の約50%を占めています。次に多いのは脳血管性認知症で約20%

です。日本では、1985 年ごろまでは、アルツハイマー型認知症よりも脳血管性認知症の方が

多くみられましたが、1995 年以降はアルツハイマー型認知症の方が多いという報告がされて

います。近年では、鑑別診断が進み、レビー小体型認知症が多いということが明らかになっ

てきました。

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◆アルツハイマー型認知症

脳の神経細胞が通常の老化よりも急速に、いわば病的に減ってしまうこと(変性)により、

正常な働きを徐々に失い認知症になる病気です。

◆脳血管性認知症

脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化等のために、神経の細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、

その結果その部分の神経細胞が死んでしまったり、神経のネットワークが壊れてしまうこと

による認知症です。

◆レビー小体型認知症

アルツハイマー病と同様に脳の変性が起こりますが、記憶障害より先に幻視(実際には存

在していないものが存在するものとして生々しく見える)等の症状が先に出現することが多

く、近年では第 3 の認知症として注目されている病気です。

疾患の特徴

アルツハイマ―型認知症 脳血管性認知症 レビー小体型認知症

好発年齢 70歳前後 初老期50歳代より 初老期・老年期・ときにより若年

性別 女性に多い 男性に多い 男性に多い

・全般性の認知症で高度 ・まだら認知症で、度合いは軽度 ・比較的軽度

・初期に記銘・記憶障害が目立つ ・初期に頭痛・めまい・しびれ ・初期に幻視やパーキンソニズ ム(筋固縮・動作緩慢・振戦) が出現する、初期診断が困難

・外界に対する注意力が低下する ・外界に対する注意力は保たれる

・多幸・抑うつ・妄想・急性錯乱、 徘徊、独語、無意味な多動・ 監集などが認められる

・感情失禁・せん妄が認められる ・幻視、被害妄想が多い 抑うつ、REM睡眠行動異常

経過 緩徐進行性で遅い 急性の発症で階段状に増悪 進行性で比較的早い

症状

参考:認知症介護研究・研修東京センター『認知症介護実践研修テキストシリーズ 3「図表で学ぶ 認知症の基礎知識」』

(3)早期診断、早期治療のメリット

アルツハイマー型認知症では、人により薬で進行を遅らすことが可能であり、早く薬を使

い始めることで自立した生活をより長く保つことができます。

他にも認知症の症状を出現させる病気はいくつかありますが、中でも正常圧水頭症、慢性

硬膜下血腫、脳腫瘍、ビタミン B12 欠乏症、甲状腺機能低下症等は早期に治療することで良

くなり、症状が改善されます。しかし、手遅れになると重い後遺症を残す場合がありますの

で、早期に専門の医療機関を受診し、MRIやCTなどの画像診断による鑑別診断を受ける

ことが必要です。

また、生活面においては、病気が理解できる時点で受診し、少しずつ理解を深めていくこ

とで、必要な公的サービスの利用や日常生活への援助を頼むことができ、その後のトラブル

を減らすことにつながります。

症状の軽いうちに診断・治療を受け、自立した生活をできるだけ長く保つようにしつつ、

症状が重くなったときに備えて、後見人を自分で決めておく任意後見制度等(P75 参照)の

準備や手配をすることで、認知症であっても自分らしい生き方を全うすることが可能になり

ます。

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(4)認知症の症状の理解と対応

認知症の症状は、中核症状と、周辺(行動・心理)症状に分けられます。

中核症状は脳の神経細胞の死滅に基づく症状であり、経過と共に進行し、記憶障害、見当

識障害、理解・判断力の障害、実行機能障害等の障害が現れます。

周辺症状は、中核症状があるために生ずる心理的ストレスに基づく症状で、必ず発症する

ものではなく、周囲の対応や環境に影響を受け、必ずしも疾患の重症度や進行と平行するわ

けではありません。

なお、中核症状に対する適切な支援により日常生活を維持することは可能であり、適切な

ケアや環境により周辺症状を改善することができます。

中核症状や周辺(行動・心理)症状による行動や言動は、周りの人々に「何を考えている

のかわからない」「訳のわからない行動」と映り、地域からの誤解や偏見、家族からの虐待を

受ける原因となりかねません。認知症の高齢者は何もできないわけではなく、本人の行動か

ら症状を理解し、その人に合った対応方法を考え、支援へとつなげていく必要があります。

脳の神経細胞死滅

47

性格・資質 環境・心理状態

周辺(行動・心理)症状

参考:NPO 法人地域ケア政策ネットワーク 全国キャラバンメイト連絡協議会『キャラバンメイト養成テキスト』

中核症状

記憶障害

(新しいことが覚えられない、覚えていた記

憶が失われていく)

・毎日同じものをスーパーで買ってくる

・鍋を火にかけてあることを忘れる

見当識障害

(時間や季節感が薄れる、方向感覚が薄れる)

・何月何日かと何度も質問する

・季節感のない服を着てしまう

実行機能障害 (計画を立てる、順序立てて行動する等がで

きなくなる)

・決まった時間に薬を飲むことができない

・味噌汁を作る手順がわからない 理解・判断力の障害

(考えるスピードが遅くなる、観念的な事柄と

現実的、具体的なことが結びつかなくなる)

・朝起きて何を着れば良いのかわからない その他(失認・失行)

(見たり聞いたりしたものが何かわからない)・訪問販売に引っかかり多額のローンを

組んで布団を買ってしまう ・衣服の上下がわからず逆さまに着てしまう

・石鹸を食べてしまう

不安・焦燥

・本人が症状に漠然と気づき、

自信を失う

幻覚・妄想

・物を取られたと思い込んだり、

見えないものが見えてしまう

うつ状態

・将来に望みをなくし、

うつ状態になる

徘徊

・実家に帰ると言って、家出

をしてしまう

不潔行為

・便をさわる

興奮・暴力

・突然興奮したり、暴力を振るう

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3 認知症の高齢者への支援

認知症の高齢者は自分の意思や要望を上手く伝えることができないため、支援者が本人の

望む生活・生き方を把握し、自己決定を尊重することは簡単ではありません。また、本人の

思いや訴えを聞いていたはずが、気が付くと、支援者の「このようにした方がいいから」と

いう自分の判断を押しつけていたり、逆に「これで本当に良かったのだろうか」と不安に感

じることがあると思います。

認知症の高齢者を支援するためには、パーソン・センタード・ケアの考え方の基本を押さ

え、本人とのコミュニケーションやアセスメントを通じて、「その人らしさ」を尊重できるよ

うな支援をすることが必要です。

(1)パーソン・センタード・ケアとは パーソン・センタード・ケアとは、英国のブラッドフォード大学のトム・キットウッド教

授が提唱した概念で、日本では「利用者中心のケア」あるいは「その人らしさを尊重するケ

ア」と呼ばれています。

さらに、パーソン・センタード・ケアという言葉には、『その人を取り巻く人々や社会と

かかわりをもち、人として受け入れられ、尊重されていると、認知症の本人が実感できるよ

うに、共に行っていくケア』という深い意味が込められています。

(2)パーソン・センタード・ケアの考え方を踏まえた支援のながれ

①コミュニケーションのポイントを押さえる(P49)

認知症の高齢者は認知機能の障害のために、自分の感情を上手く言葉で表現することが難し

くなっています。支援のどの段階においても、認知症の高齢者とのコミュニケーションのポイ

ントを押さえ、本人の思いを引き出せるよう積極的にコミュニケーションを図ることが大切で

す。

④本人の心理的ニーズが満たされるような支援を行う(P52)

③心理的ニーズを知る(P51)

認知症の高齢者は様々な認知機

能の障害のために、誰もが持つ心

理的ニーズを自らの力で満たすこ

とが難しいです。周囲の人や支援

者は、認知症の高齢者の上手く表

現できない思いや、満たされない

ニーズを共に考え、言動や行動の

背景にある思いを知ることが必要

です。

②5つの視点からアセスメント

を行い、本人の状態を判断

する(P50)

認知症の高齢者の症状や行動

には必ず意味があります。本人の

言葉で表現できない感情を5つの

視点(①脳の障害②健康状態③生

活歴④性格⑤環境(その人を取り

囲む社会心理)から捉えることで、

本人を理解する手がかりになりま

す。

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◆コミュニケーションのポイント

① わかりやすい言葉で簡潔明瞭に話す

一度に多くの情報を伝えると混乱しやすいので、一つずつ区切って話します。

② 多感覚的な手がかりを活用する

言葉だけでなく、身ぶりをつける、わかりやすく文字で書く、写真などを示す、音や味・

香りのする小物を活用し、本人から表現や応答の意欲を引き出します。

③ 選択肢を用いた質問をする

漠然とした質問ではなく、自分で選択することによって、主体性を尊重されていると感

じられます。

④ 最後までしっかり話を聞く

話の途中で間違いがあっても、訂正や否定をせず、最後まで話を聞きます。

中断すると何を話していたのかが分からなくなり、訂正されると失敗をしてしまったと

思い、不安になります。

⑤ 会話を補い、話を促す

会話の中で、内容の要領が得ないものになっている時は、キーワードを差し挟んだり、

欠けている情報を適当な言葉で補い、内容を明確にします。

⑥ 疎外感を与えないようにする

本人の前で家族と話をするときは時々話題を振り、会話に参加してもらいます。

⑦ 昔の話を聞く

昔のことはよく覚えているので、進んで話してもらいます。

昔話には、その人の人生について豊富な情報がたくさんあります。

⑧ 本当に伝えたい気持ちを意識する

言葉の背後にある、本当に伝えたい気持ちや要求を意識し、それに応えるような言葉を

返します。隠れた気持ちを汲み取ることで、安心感を与えることができます。

① コミュニケーションのポイントを押さえる

認知症の高齢者は言語能力が低下しても、誰かと話をしたい、自分の気持ちや考えを伝え

たいという思いを私たちと同じように持ち続けています。

コミュニケーションを通じて周囲の人たちとの絆を保ち続けることで、自分はまだみんな

の仲間であり、存在する価値があるという感覚を取り戻します。

支援をするためには、積極的にコミュニケーションを図る必要がありますが、認知症の高

齢者はたくさんの音があると気が散りやすく、時に不安を感じてしまうため、できるだけ静

かな環境の中で話しかけるなど、時間や場所などに配慮します。

また、認知症の高齢者は相手の雰囲気を感じ取る直感力が鋭いため、支援者は信頼できる

人、安心できる人と思ってもらえるように、話をする時の姿勢、表情、口調などにも注意し

ます。

コミュニケーションのポイントに注意しながら、相手との会話や言葉の内容だけでなく、

行動にも注目し、わずかな変化も見逃さないように心がけます。

参考:小長谷陽子『本人・家族のための若年認知症サポートブック』

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◆アセスメントを行うための 5 つの視点

① 脳の障害

脳の障害は、認知症の高齢者の行動にもっとも影響を及ぼします。

認知機能の状態を確認し、不安や不快感をアセスメントします。

② 健康状態

認知症になると、自分の健康状態が悪化しても、適切な言葉で表現することが難しくなりま

す。

いつもとは違う突発的な行動の裏には、思わぬ病気や薬の副作用などが隠されていることも

多いので、健康状態や、目や耳の状態などを確認することが大切です。

③ 生活歴

人は今までどのような人生を歩んできたかによって、物事の考え方、捉え方や行動様式が違

います。

今、目の前にいる認知症の高齢者の状態や行動を理解するには、生い立ちや生活歴、とくに

人生の転機となるような過去の出来事を知ることが必要です。

④ 性格

性格は認知症の高齢者の症状の現れ方に影響を及ぼします。

その人の性格を踏まえて、症状を理解し対応するために、元来の性格(気質)を把握するこ

とが必要です。

⑤ 環境(その人を取り囲む社会心理)

認知症になっても、感情やプライドは豊かに残っています。

認知症の高齢者を取り巻く対人関係が、本人の行動に与える影響は非常に大きいです。

また、物理的な環境が影響していることもあります。

② 5 つの視点からアセスメントを行い、本人の状態を判断する

認知症の高齢者は、自分の要求や思いを相手に伝えることが難しいため、自分にできる手

段・方法を用いて何かを伝えようとします。

それが周りからは奇異な言動・困った行動と映ります。

その訴えを単なる「困った行動」と片付けるのではなく、何を伝えたいかを考える必要が

あります。

認知症の高齢者を 5 つの視点(①脳の障害 ②健康状態 ③生活歴 ④性格 ⑤環境(そ

の人を取り囲む社会心理)からアセスメントし、本人の真意を理解した上で、状態を判断す

ることが必要です。

・暴力・暴言

・落ち着きなく歩き回る(徘徊)

・人の助けは借りたくない

(介護拒否)

実は…「子供扱いしないで欲しい」という周囲

の関わりへの不満の訴えかもしれません

実は…「お腹の具合が変だけどどうしたらよい

だろう」という体調不良のサインかもしれません

実は…「人に迷惑をかけたくない」という性格

の表れかもしれません

50

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③心理的ニーズを知る

認知症の高齢者の心理的ニーズを大別すると、右の

図のように 5 つのニーズに分けることができます。こ

れは、誰もが持つ当たり前のニーズであり、私たちは

意識する、しないに関わらず、そのニーズを満たすた

めに行動しています。しかし、認知症の高齢者は様々

な認知機能の障害により、自らの力で満たすことが難

しくなり、また他者に自分自身の思いが気づかれにく

く、ニーズを満たしてもらうことが難しくなります。

周りの人や支援者は、認知症の高齢者が上手く表現

できない言動や行動の背景には、どのような潜在的ニ

ーズがあるかを知り、どんなニーズを満たしたいと思

っているのかということを考え、本人の心理的ニーズ

を満たしていくための支援につなげることが大切です。

心理的ニーズ (潜在的ニーズ)

◆心理的ニーズを意識する

① くつろぎ

様々な障害によって不安感や不快感を抱きやすく、そこから逃れるために歩き回ったり、

それを止めようとする人に抵抗したりします。それは、ケアへの敵意や反抗ではなく、心

身ともにくつろぎたいと願っているからです。

身体的な苦痛がなく、他者との交流を通して、心からゆったりとリラックスできる安心の

感情を求めています。

② アイデンディティ(自分が自分であること)

過去の記憶が失われ、断片的にしか残らないため、「過去からつながっている自分である」

という感覚が失われやすくなっています。自分が誰かを知っていること、過去との連続性

を感じていられることは、人としてもっとも重要なニーズです。

認知症の本人が忘れてしまっても、周りの人がその人の人生歴を覚えていて、過去と現在

をつなぎ、「自分でありたい」というニーズを満たしてあげることが必要です。

③ 結びつき

記憶障害や見当識障害のため、自分と周りの世界とのつながりが途切れやすくなります。

昔からよく知っている馴染みの人や物とのつながりに頼ることによって、安心を得たいと

感じ、誰か他の人との絆や結びつきを求めています。

④ たずさわること

火の不始末があるから家事をさせない、失敗すると危険だからと仕事や役割を奪われるこ

とが多くなります。それでもなお、自らの能力を使って「人々や社会の役に立ち、認めて

もらいたい」と思っています。

⑤ 共にあること

認知症になると、人の輪から外され、無視されることがあります。そのため、疎外感を感

じ、「誰かと共にある」ことを求め、社会から排除されず、人や社会とのつながりの中で生

きていることを実感したいと願っています。

51

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◆もっと知りたいパーソン・センタード・ケア

パーソン・センタード・ケアについて詳しくは、認知症介護研究・研修大府センタ

ーの『大府センター式コミュニケーションパック』(ホームページ:http://cp.o-dcrc.net/)を参照して下さい。

家族・地域の理解、支援 家族・地域の誤解、無関心

認知症の高齢者の支援において大切なことは、本人を私たちの輪から外さないことです。

話しかけても「反応のない人」ではなく、支援者をはじめ周囲の人が認知症のことを知り、

意識した関わりをすることによって本人の反応を引き出すことができます。

本人に寄り添い、共に行う支援、それがパーソン・センタード・ケアの考え方を踏まえた

支援です。

認知症の高齢者とのコミュニケーションのポイントを押さえ、5 つの視点からアセスメン

トを行うことで、本人の心理的ニーズが満たされ、よい状態を保てるような支援、すなわち

「その人らしさ」を尊重した支援へとつなげていくことができます。

本人の状態を的確に判断することができれば、本人との結びつきが強い家族や地域住民に

対して、丁寧に説明をすることができ、双方の意見や考え方を聞きながら、誤解や偏見を緩

和していくことができます。

また、介護支援専門員や主治医、隣近所の住民や普段利用するお店など、本人を中心とし

て、本人を見守り、また家族を支えるための地域のネットワークを構築するためにも、常に

本人の状態を的確に判断することが必要であり、地域のネットワークによって社会とのつな

がりを保つことも、本人の心理的ニーズが満たされるための大きな支援といえます。

◆よい状態のサイン◆

・ゆったりしている

・ユーモアがある

・周囲の人に対する思いやり

・人に何かしてあげようとすること

・愛情を示すこと

・自尊心(汚れ、乱れを気にする)

◆よくない状態のサイン◆

・強度の怒り・不安・恐怖・退屈

・身体的な不快感

・身体の緊張、こわばり

・動揺、興奮・無関心、無感動

・引きこもり

・力のある他人に抵抗することが

困難

④本人の心理的ニーズが満たされるような支援を行う

52

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4 家族への支援

認知症の高齢者を支援するために大切なことは、本人への支援と同時にその家族への支援

を考えることです。親や配偶者が認知症になったことを受け入れる難しさ、介護がいつまで

続くか分からない不安、見守りが欠かせないため常に何かに縛られているような拘束感、周

囲の協力・理解が得られず、追い詰められていく孤独感、病気だと分かっていても本人に怒

りを向けてしまうことへの罪悪感・葛藤等、様々な否定的感情を抱えながら家族は日々認知

症の高齢者に向き合っています。

(1)家族の心理の変化

支援者は家族介護者の抱える気持ちを推し量りながら、家族がどのような気持ちの変化を

たどるかを理解し、家族をとりまく背景はそれぞれ異なるという個別性にも配慮する必要が

あります。

◆家族の心理の変化

53

家族の気持ちは次の①~④の段階をたどると言われますが、新たな症状が現れることで、心理状態が

変化し、次の段階に進んでも時には前の段階に戻ってしまうことがあります。

① とまどい・否定

・異常な言動にとまどい、否定しようとする。

・他の家族にすら打ち明けられずに悩む。

② 混乱・怒り・拒絶(必要に迫られ、認知症や介護保険サービスに関する情報を手あ

たりしだい、探し求め始める)

・認知症の高齢者への知識の不十分さからどう対応してよいかわからず混乱し、

ささいなことに腹を立てたり叱ったりする。

・精神的・身体的に疲労困憊、拒絶感・絶望感に陥りやすく最もつらい時期。

③ 割り切り

・怒ったり、イライラしても何もメリットはないと思いはじめ、割り切るように

なる時期。

・症状は同じでも介護者にとって「問題」としては軽くなる。

④ 受容

・認知症に対する理解が深まって、認知症の高齢者の心理を介護者自身が考えなくても

わかるまでになる。

・認知症である家族のあるがままを受け入れられるようになる。

参考:NPO 法人地域ケア政策ネットワーク 全国キャラバンメイト連絡協議会 『キャラバンメイト養成テキスト』

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(2)家族の心理的状態を意識した関わり方

家族にはそれぞれの背景と事情があります。支援者は家族を認知症の高齢者の介護者とし

てだけでなく、その人の人生もあることを認識し、家族が抱える思いに寄り添いながら、介

護者が自分自身を大切にできるような支援を行います。

そのためには、介護者が認知症に対する理解を深め、相談できる人、場所等があることが

必要です。

介護者が前向きに明るい気持ちになれることで、認知症の高齢者も気持ち良く過ごすこと

ができるのです。

54

◆家族の心理的状態を意識した関わり方

① 相談ができる場所があることを知らせます

・本人も家族も悩んでいながら、適切な相談先がわからないために、支援者や医療機関につ

ながっていないことが多くあります。相談機関のパンフレット・窓口、電話相談など、認

知症支援を行っているところを紹介します。(P97 参照)

・また、紹介できる社会資源が乏しかったとしても、一緒に悩んで考えていくつもりでいる

ことを伝えることで、家族は心強く感じられることができます。

② 診断のメリットを知らせ、早期の受診を勧め、適切な受診先を紹介します

・診断のメリットを知らせ、早期の受診を勧めるとともに、症状や居住地域に合わせて認知

症を診ることができる専門医療機関を紹介します。(P100 参照)

③ 仲間と出会えるようにします

・診断後は拒否や絶望、抑うつ状態になりますが、多くの人は、認知症の高齢者を介護する

同じ立場の人に会い、「自分だけではない、同じ思い、体験をしている人がいること」を

知ることによって、勇気づけられ、現状を受け入れ、希望を見出します。できるだけ早い

段階で仲間と出会えるようにすることが大切です。

・家族は認知症への社会的無理解を感じることが多くあり、そのために、他の人や支援を受

け入れたくないという心理的防衛が働きがちです。仲間を知ることで、社会的無理解や偏

見が自分たちの現状とは違うものであると気づき、“自分だけでない”と心理的防衛が緩

和されると考えられます。

④ 時期に合わせたアドバイスを行います

・本人や家族はその時々の変化に合わせた相談を求めています。一度に多くのアドバイスを

するのではなく、段階に応じた支援を行います。また、家族に「必要な支援を受けよう」、

「手続きをしてみよう」と思ってもらうためには、信頼関係を築くことが重要です。

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55

1 愛知県における高齢者虐待への対応状況 ~平成 21年度高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査等より~

(1)養護者による高齢者虐待についての相談・通報対応

養護者による高齢者虐待についての相

談・通報総件数は、平成 20 年度までほぼ横

ばいでしたが、21年度は 1,498件と増加しま

した(表1)。

21 年度の相談・通報対応件数1)1,502 件

中、1,464 件(97.2%)に事実確認調査が実

施され、市町村が虐待を受けた又は受けたと

思われたと判断した事例(以下、「虐待判断

事例」という)は、1,057件でした(図1)。

その中で法第 11 条に基づく「立入調査を

行った事例」は 4件(0.3%)でした。また、

相談・通報総件数は、市町村による差が大き

い状況が見受けられました。

*1) 図1の平成 21年度の相談・通報対応件数 1,502

件は、平成 20年度に相談・通報があったもののう

ち、平成 21年度に入って事実確認を行ったものが

含まれるため、相談・通報総件数 1,498 件と一致

しない。事実確認を行っていない理由は、相談・

通報を受理した段階で、明らかに虐待ではなく事

実確認調査不要と判断し、後日、事実確認調査を

予定している又は事実確認調査の要否を検討中で

あった。

相談・通報者は、介護関係者(介護支援専

門員、介護サービス事業所(職員)が最も多

く、その割合も徐々に増加していますが、民

生委員、近隣住民といった地域住民の割合に

ついては大きな変化がみられていません

(図 22))。

*2) 図 2の相談・通報者数の総数は、1件の事例に

対し複数の者から相談・通報があった場合、それ ぞれ該当項目

に 重複して計上されるため、合計人数は相談・通報総件数と一致しない。

・養護者による高齢者虐待についての相談・通報総件数、事実確認調査件数は増加

・事実確認調査による虐待でないとの判断事例の割合は年々増加

・相談・通報者は、介護関係者の割合は増加、民生委員、近隣住民の割合は減少

●虐待でないとの判断事例割合の増加は、高齢者虐待防止法施行 4年目になり、虐待対応経験

の蓄積から、その判断ができる状況となっていることが考えられる。

●通報・相談者をみると、介護関係者の周知・理解は進んでいるものの、地域住民はまだ十分

でないことが伺われ、高齢者虐待の入り口である相談・通報に係る地域全体の啓発、市町村

での初動期対応の仕組みづくりがさらに必要である。

Ⅴ 高齢者虐待防止対応の体制・地域づくり

18年度 19年度 20年度 21年度

相談・通報総件数 1,121 1,154 1,137 1,498

事実確認調査件数 1,107 1,120 1,105 1,464

虐待判断事例総件数 951 973 902 1,057

表 1 相談・通報対応等件数

951 973 9021,057

63 103118

24693 44 85

161

14 34 32

38

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

18年度(1,121) 19年度(1,154) 20年度(1,137) 21年度(1,502)

事実確認を行ってない事例件数

事実確認で虐待判断に至らなかった事例件数

事実確認で虐待と判断されなかった事例件数

虐待判断事例総件数

図 1 相談・通報対応の中の事実確認と虐待判断件数

508 466 522793

30 7158

61

61 78 66

53

150 159 154

152

119 127 141

177

11 16 18

30

164 144 44

63

34 4861

76

87 96 115

136

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

18年度 19年度 20年度 21年度

その他

警察

市町村職員

虐待者自身

家族・親族

被虐待高齢者

本人

民生委員

近隣住民

介護関係者

図 2 相談・通報者(重複計上)

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(2)虐待を受けていた高齢者本人と虐待者の状況

ア 虐待を受けていた高齢者本人の状況

虐待の種別・類型では、身体的虐待が 679件(64.2%)と最も多く、次いで心理的虐待 415

件(39.3%)、経済的虐待 263件(24.9%)、介護放棄 248件(23.5%)の順でした(複数回答)。

虐待を受けていた高齢者の実人数 1,095人は 65歳以上人口 10万対 74.9人であり、性別は、

男性 259 人(65 歳以上男性人口 10 万対 39.6 人)、女性 835 人(65 歳以上女性人口 10 万対

103.2人)、不明 1人で、女性は男性の 2.6倍となっていました。年齢は、65~69歳が 133人

(同年代人口 10万対 28.2人)、70~79歳が 400人(同 62.2人)、80~89歳が 419人(同 144.2

人)、90歳以上が 115人(同 205.1人)、不明が 28人(2.6%)でした。

介護保険の利用状況は、申請を行い「認定済み」の者が 763 人(69.7%)であり、その要

介護区分は「要介護1~3」が 438 人(57.4%)でした。未申請者は 234 人(21.4%)、認

定非該当(自立)は 47人(4.3%)となっていました。

認知症日常生活自立度からみると「Ⅱ以上」の者が 488 人で虐待を受けていた高齢者全体

の 44.6%を占め、増加傾向となっています。

虐待判断事例の世帯の状況は、虐待者との同居が 891 件(84.3%)であり、世帯構成は未

婚の子と同一世帯が 408件(38.6%)で最も多く、次いで既婚の子と同一世帯が 272件(25.7%)、

夫婦二人世帯が 204件(19.3%)となっており、未婚の子と同一世帯が年々増加傾向にありま

した。

イ 虐待者の状況

虐待者 1,154人の状況は、息子が 447人(38.7%)で最も多く、次いで夫 201人(17.4%)、

娘 190人(16.5%)でした(複数回答)。

(3)虐待への対応策としての分離の有無

分離を行った事例は 297件(27.8%)で、そ

の割合はやや減少傾向がみられます(図 3)。

分離後の対応は、「契約による介護保険サー

ビスの利用」が 131 人(44.1%)と最も多く、

次いで「医療機関への一時入院」17.8%、「緊

急一時保護」15.2%であり、「やむを得ない事

由等による措置」は 9.1%でしたが、その割合

はここ 3年間同じ傾向でした(図 4)。

・女性、高齢化、要介護状況、認知症など高齢者の状況と、介護スキルが十分でないと考えられ

る男性等、養護者の状況などが虐待ハイリスク要因

・介護保険未申請者や認定非該当(自立)に対する虐待への視点

●虐待は様々な要因が重なり合って発生する。加齢に伴う高齢者の状況とかかわり方・介護の仕

方などについてのスキル不足は虐待につながりやすい。これらの情報発信に加え、相談窓口の

周知、サービス利用勧奨など住民への情報提供が必要である。

●要介護でない高齢者をも視野に置いた虐待対応システムの検討が必要である。

図 3 分離の有無

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57

分離していない事例の対応としては、

「見守り」が 136 件(18.5%)で(図 5)、

「その他」599件の対応は、複数回答で「養

護者に対する助言・指導」303 件が最も多

く、次いで「既に介護保険サービスを受け

ているが、ケアプランを見直し」184 件、

「被虐待高齢者が介護保険サービスを新

たに利用」94件であり、これらは増加傾向

にありました(図 6)。

(4)権利擁護に関する対応

成年後見制度利用開始済が 19件、成年後見

制度利用手続き中が 10件で、これらを会わせ

た中での市町村長申し立ての事例は 11件とな

っており、利用は増加しています(表 2)。

(5)虐待等による死亡事例について

介護している親族による、介護をめぐって発生した事件で、被介護者が 65歳以上かつ虐待

等により「養護者の虐待による被養護者の致死」に至った事例は「心中」1件でした。高齢

者夫婦世帯で、被虐待高齢者は介護保険を利用し、認知症日常生活自立度はⅠ、養護者は夫

でした(平成 19年度は、「養護者のネグレクトによる被養護者の致死」が 3件あり、被虐待

高齢者は 3件とも認知症があり、養護者は、養護者及び他家族と同居している「娘の配偶者」

1件、「妻」1件、「息子」1件でした。)。

・虐待対応で分離を行う事例は約 3割。分離しない事例の約 2割が見守り対応となり、見守

り以外の対応は、虐待者に対する助言・指導、介護保険サービスのケアプラン見直しが多

くこれらは年々増加傾向

●養護者への支援は、高齢者虐待防止法にも規定されており(高齢者虐待防止法第 14条)、

虐待対応上重要である。養護者支援は、虐待背景にある様々な要因の問題解決が必要であり、

虐待を受けている高齢者対応と同様、支援体制を作りながら進めていく必要がある。

115

112

183

136

587

518

408

599

0% 20% 40% 60% 80% 100%

18年度(702件)

19年度(630件)

20年度(591件)

21年度(735件)

図5 分離していない事例への対応

見守り その他

0

20

40

60

80

100

120

140

18年度(213件)

19年度(294件)

20年度(268件)

21年度(297件)

図4 分離後の対応

契約による介護保険サービスの利用やむを得ない事由等による措置緊急一時保護医療機関への一時入院その他

0

100

200

300

400

500

600

700

18年度 19年度 20年度 21年度

図6 分離していない事例へのその他の対応(複数回答)

養護者に対する助

言・指導

養護者介護負担軽

減のための事業参

被虐待高齢者の新

たに介護保険サービ

ス利用

既介護保険サービス

のケアプラン見直し

被虐待高齢者が介

護保険サービス以外

利用

その他

18年度 19年度 20年度 21年度

成年後見制度利用開始済

1 7 7 19

成年後見制度利用手続き中

2 8 8 10

上記のうち市区町村長申立ての事例

(1) (6) (1) (11)

日常生活自立支援事業の利用

10 16 13 16

表2 権利擁護に関する対応件数表 2 権利擁護に関する対応件数

0

20

40

60

80

100

120

140

18年度(213件)

19年度(294件)

20年度(268件)

21年度(297件)

契約による介護保険サービスの利用 やむを得ない事由等による措置

緊急一時保護 医療機関への一時入院

その他

図 4 分離後の対応

115

112

183

136

587

518

408

599

0% 20% 40% 60% 80% 100%

18年度(702件)

19年度(630件)

20年度(591件)

21年度(735件)

見守り その他

図 5 分離していない事例への対応

0

100

200

300

400

500

600

700

18年度 19年度 20年度 21年度

養護者に対する助言・指導養護者介護負担軽減のための事業参加被虐待高齢者の新たに介護保険サービス利用既介護保険サービスのケアプラン見直し被虐待高齢者が介護保険サービス以外利用その他

図 6 分離していない事例「その他」の対応(複数回答)

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(6) 市町村における高齢者虐待防止対応のための体制整備について

・対応窓口となる部局の設置は 19年度に全市町村で完了

・地域包括支援センター等関係者への研修実施は 8割、独自マニュアル、業務方針作成は 7割、

居宅介護サービス事業者へ法についての周知は約 8割で年々増加

・住民への講演会・広報等での啓発活動は約 6 割、老人福祉法による措置に必要な居室確保の

ための関係者調整は約 6 割、法に定める警察署長に対する援助要請等に関する警察署担当者

との協議は約 5割で横ばい状態

・「早期発見・見守りネットワーク」の構築への取組は 3割から 6 割、「保健医療福祉サービス

介入支援ネットワーク」の構築への取組、「関係専門機関介入支援ネットワーク」の構築への

取組は 3割から 5割となっているが、それぞれ約半数の市町村の取り組みがない。

●高齢者虐待防止は虐待の事後対応だけでなく、未然の防止を含めた高齢者虐待防止のネッ

トワークの整備が重要である。ネットワークづくりは組織的で迅速な対応と継続支援を可能

にし、予防・発見・対応・再発防止の包括的な虐待対応につながる。体制整備に向け、それ

ぞれの取組の計画的な推進が必要である。

表3 市町村にお ける高齢者虐待防止対応のための体制整備につ いて市町村数 (% )

項 目 18年度実施 1 9年度実施 2 0年度実施 2 1年度実施

対応窓口 となる部局の設置 6 0( 95 .2 ) 6 1( 1 00 )

対応窓口部局の住民への周知 (窓口設置後) 4 4( 69 .8 ) 6 1( 1 00 ) 6 1 (1 00 ) 5 7 (1 00 )

対応窓口部局の住民への周知 (年度中 ) 5 2 (8 5. 2) 5 0 (8 7. 7)

地域包括支援センター等の関係者への研修 2 8( 44 .4 ) 4 0( 6 5.6 ) 4 1 (6 7. 2) 4 6 (8 0. 7)

独自の対応マニュアル、業務指針等の作成 3 0( 47 .6 ) 4 1( 6 7.2 ) 4 0 (6 5. 6) 4 0 (7 0. 2)

居宅介護サー ビス事業者に法についての周知 3 1( 49 .2 ) 4 3( 7 0.5 ) 4 3 (7 0. 5) 4 4 (7 7. 2)

講演会や広報誌等による住民への啓発活動 3 2( 50 .8 ) 3 4( 5 5.7 ) 4 1 (6 7.2 ) 3 6 (6 3. 2)

介 護保険施設に法について周知 3 2( 50 .8 ) 3 6( 59 .0 ) 3 8 (6 2.3 ) 3 7 (6 4. 9)

老人福祉法によ る措置に必要な居室確保のための関係機関との調整

3 2( 50 .8 ) 3 7( 6 0.7 ) 3 6 (5 9. 0) 3 5 (6 1.4 )

法に定める警察署長に対する援助要請等に関する 警察署担当者との協議

2 9( 46 .0 ) 3 3( 5 4.1 ) 3 2 (5 2.5 ) 3 2 (5 6. 1)

「早期発見・見守りネットワーク 」の構築への取組 2 2( 34 .9 ) 2 9( 4 7.5 ) 3 2 (5 2. 5) 3 5 (6 1. 4)

「保健医療福祉サービス介入支援ネットワーク」の構築への取組

1 7( 27 .0 ) 2 1( 3 4.4 ) 2 8 (4 5. 9) 2 8 (4 9. 1)

「関係専門機関介入支援ネットワーク 」の構築への取組

1 9( 30 .2 ) 2 8( 4 5.9 ) 2 9 (4 7. 5) 3 1 (5 4. 3)

成年後見制度の市町村長への申立への体制強化

3 1( 49 .2 ) 4 6( 7 5.4 ) 4 5 (7 3. 8) 5 0 (8 7. 7)

虐 待を行 った養護者に対する相談 、指導または助言

4 7 (8 3. 5)

日常生活を営むのに支障がありながら 、必要なサービスを利用していない高齢者の権利利益の養護を図るための早期発見の取組や相談等

4 2 (7 3. 7)

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2 虐待のない地域を目指して

(1)地域の連携協力体制整備の必要性

高齢化が急激に進み、介護の社会化の要望の高まりに応じて介護保険制度は整備された

ものの、高齢者に係る介護や、要介護状態でなくても必要な支援の個別性は幅広く、ニー

ズが多様化しています。

虐待が起きてしまう養護者側の要因として、養護者自身が疾病や障害を抱えている、高

齢者の加齢に伴う心身の機能の低下や認知症など病気についての理解不足がある、家事・

介護・仕事などを一人で担わなければならない環境にある、親の面倒は自分がみなければ

という責任感や世間体を気にするなどの周囲からのプレッシャーがあるなど、介護負担が

心身に高いストレスを及ぼしていることがあります。また、身近に相談者がいないことな

どから周囲に相談できない場合があります。そして、介護の問題だけでなく、これまでの

人間関係や経済的な問題など、多くの要因が重なりあって虐待は発生しています。

高齢者の人権侵害、生命・健康・生活が損なわれないよう、虐待から高齢者を保護する

ためには、組織として虐待の判断を行い、迅速かつ適切な支援が必要です。虐待の背景に

ある介護疲れ、孤立、アルコール問題、金銭トラブル等の複数要因による生活上の課題に

対して担当者は、①高齢者と養護者それぞれに対応の必要があること、②医療、保健、福

祉、法律等の専門家の協力・支援により適切な対応ができることを踏まえ、関係者とチー

ムによる支援(チームアプローチ)を進める必要があります。そして、地域において関係

者、関係機関が連絡を取り合い、連携して対応できるよう連携協力体制(ネットワーク)

へ発展させることが重要です。高齢者虐待防止法では、虐待の事後対応だけでなく未然防

止を含めた高齢者虐待防止のネットワーク整備を求めています。

私たちがめざすのは虐待のない社会ではないでしょうか。現状は高齢者虐待防止体制ス

テージ(図 7)のどの時期にあるかを確認していただき、国が示している機能別の 3つのネ

ットワーク「早期発見・見守りネットワーク」、「保健医療福祉サービス介入ネットワーク」、

「関係専門機関介入支援ネットワーク」を参考にしながら、どのような地域になるといい

のか、どのように実現させていくかを関係者と検討・共有し、予防期を目指して計画的に

体制整備に取り組みます。

あなたの地域はどのステージ?

潜在期

(ネットワーク未整備)

•住民の関心の低さ、躊躇

•情報の収集不足

•相談・通報件数ほとんどなし

顕在期

(ネットワーク構築と取り組み)

•住民の関心の高まり

•情報収集力の向上

•相談・通報件数増加

対応期

(ネットワークによる対応)

•相談・通報対応の実績

•ネットワークの活用

•対応のスピード化

予防期

(ネットワークの維持・発展)

•相談・通報件数減少

•地域の抑止力向上

•セーフティーネットの構築

相談・通報件数

図7 高齢者虐待防止体制のステージ

59

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表4 高齢者虐待防止体制のステージ

ステージ ネットワーク 対  応  状  況

潜在期ネットワーク

未整備

・高齢者虐待対応に関しての認識が低く情報収集不足・市町村高齢者虐待防止ネットワーク会議について未設置、準備中・機能別の高齢者虐待防止ネットワークについて、関係者間の連携不十分で 効果的に機能していない・関係者や住民への高齢者虐待対応に関する情報発信ほとんどなし

顕在期ネットワーク

構築とネットワークによる取り組み

・高齢者虐待(特に緊急事例)への対応・市町村高齢者虐待防止ネットワーク会議の設置・機能別の高齢者虐待防止ネットワークについて、構築への取り組み・地域住民への高齢者虐待対応に関する情報発信開始・高齢者虐待防止マニュアルの作成準備

対応期ネットワークによる対応

・高齢者虐待対応のスピード化・市町村高齢者虐待防止ネットワーク会議の効果的、機能的な運営・機能別の高齢者虐待防止ネットワークについて、効果的な連携、協働に より効果的な支援の実施・ネットワーク関係者や住民への高齢者虐待対応に関する定期的な情報発信・高齢者虐待防止マニュアルの作成、活用

予防期ネットワーク

による維持、発展

・高齢者虐待対応の予防的な支援に向けた取り組み(関係者が虐待を未然 に防ぐような働きかけに取り組む)・市町村高齢者虐待防止ネットワーク会議の継続的な発展(職員異動に影響 されない組織的・継続的な仕組みづくり)・機能別の高齢者虐待防止ネットワークの継続的な発展(関係機関の関係者 異動やに影響されない組織的・継続的な仕組みづくり)・より効果的な支援に向けた新たな社会資源の開発(実施緊急一時保護の場 の確保や虐待者への教育プログラム等)・高齢者虐待防止のまちづくりに向け住民の積極的参画へ働きかけをする・高齢者虐待防止マニュアルの実情に合わせた改訂、活用

表5 機能別のネットワーク

ネットワーク 構成メンバー 機  能

早期発見見守り

民生委員、家族会、自治会、老人クラブ社会福祉協議会、ボランティア、NPO団体等

①虐待の早期発見②身近な支え合い、見守り③安心の得られる地域づくり

保健医療福祉サービス介入

居宅介護支援事業所、訪問介護、訪問看護、短期入所生活介護等の居宅サービス事業所、特別養護老人ホーム等の社会福祉施設、病院等の医療施設等

①虐待事例への介入、支援、継続 支援へのつなぎ②サービス提供による関わりから の虐待の早期発見

関係専門機関介入支援

警察、消防、保健所、精神保健福祉センター、精神科等を含む医療機関、弁護士会、権利擁護団体、家庭裁判所、消費者センター等

①保健医療福祉サービスの範囲を 超えた場合に必要な介入、支援

※関係機関の役割については「愛知県高齢者虐待対応マニュアル(総論編)P19~32 を御参照

ください。

図8 高齢者虐待防止ネットワーク構築の例

出典:厚生労働省マニュアル P19

60

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(2)高齢者虐待防止のネットワークの充実に向けて

ア 市町村の役割

高齢者虐待防止法においては、市町村が連携協力体制(ネットワーク)の整備をするこ

とになっています。市町村が地域包括支援センターに業務を委託した場合、地域包括支援

センターが中心的な役割を担いますが、市町村はその支援、ネットワーク構築には主導す

ることが求められています。

市町村において「市町村高齢者虐待防止地域連絡協議会」などの名称で開催される代表

者による会議では、①ネットワークの基盤整備、②運用上のルール作り、③市町村におけ

る課題集約・整理、④運営等の合意形成等の協議を行い、連携協力体制(ネットワーク)

整備を推進します。高齢者虐待防止対策に関わる多様な関係機関の参加を求め、個別の支

援から、予防に向けた体制整備まで、高齢者虐待対策の検討を図ります。市町村全体の対

策推進ができる機動性のある会議にするためには、市町村職員と関係者による実務者の会

議も組織して、日常業務の課題やその対応を検討し、代表者による会議へそれが反映でき

るようなしくみ作りをしていきます。代表者会議と実務者会議が十分に機能することが、

地域における機能別の 3 つのネットワークのさらなる発展につながっていきます。

市町村の連携協力体制(ネットワーク)整備とその充実を図るためには、関係者の共通

理解を高めるための取り組みが重要です。現状把握のための実態調査などについての情報

提供や学習会の開催を行いながら、市町村高齢者虐待防止携協力体制(ネットワーク)の

代表者会の設立、要綱整備、ネットワークシステムの整備へと計画的に取り組みます。

イ 高齢者虐待防止ネットワークの充実に向けて

ネットワークをより充実させるためには、2つのアプローチがあります。

まず個人のアプローチから入るものですが、「愛知県高齢者虐待対応マニュアル(総論編)

P15~18」にあるように、以下の 6つのポイントでネットワーク構築に取り組み、それを個

別支援に関する関係者間の連携として評価し、次のステップの検討内容を代表会議等に報

告することでネットワークを確立、発展させていく方法です。

① 関係者を束ねるための中核機関、コーディネーターを決める

② 情報の一元化と対応の意思統一を図る

③ 虐待者及び被虐待者それぞれに対して支援と関係者による役割分担を行う

④ お互いの専門性を認め合い、実践を行うためのネットワークを考える

⑤ ネットワークを行う関係者間の連携の課題を意識する

⑥ ネットワークに必要な機関を整理する

もうひとつは、地域のアプローチから入るもので、地域全体を焦点にして、地域の団体・

機関の関係者を集め、現状分析から課題を明確にし、地区全体としての対応策を検討して

いく方法です。

個人からのアプローチでは利用者のプライバシー保持に係る配慮を行い、地域のアプロ

ーチでは、地域内の組織関係や歴史を理解しながら、この両者の一体的な推進を図り、高

齢者虐待対応ステージを予防期へ進めていくことが必要です。

61

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(3)地域の体制整備に向けた現状把握

地域の体制整備を進めるにあたって、地域やその地域に居住する高齢者について、全体

的な地域データと個別ニーズに関する情報から、高齢者虐待対応に関する個別支援と地域

支援についてのニーズや課題を分析し、それを必要に応じて、個別支援や予防対策に活か

していきます。

①� 全体的な地域データ

※データは加工して分析すると、具体的な対策に結びつきます。

①経年的、地区別、年代別、保険別等で情報収集

②国・県、同規模の市町村と比較

統計データ

※高齢者の集団としての特徴把握と動向をみることができます。

・高齢化率・後期高齢化率、独居・高齢者世帯数

・人口の推移、人口ピラミッド

・死亡数(率)、訂正死亡率、主要死因別死亡数(率)

・介護保険利用状況、認知症日常生活自立度、介護予防事業の実施状況

・国民健康保険加入状況、国民健康保険受療状況(主要傷病別受療率)

・生活保護状況(保護率推移、被保護世帯別累計型別世帯数、被保護世帯の扶養種別世

帯数)

・高齢者福祉施設、医療機関、住宅状況

・関係機関事業内容等(高齢者保健事業実施状況、教育委員会、社会福祉協議会等)

・地域組織等の状況(民生委員、老人クラブ・老人会、ボランティア)

実態調査

※調査目的に沿った対象者の実情を把握できます。対象範囲によっては限界もありま

すが、概況を知ることができます。

・高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査(虐待者の相談、通報件数の推

移・通報者の状況、個別事例への対応状況、地域のネットワーク作りに係る市町村の

体制整備状況)

・介護保険事業計画に係る高齢者ニーズ調査の活用

②個別のニーズに関する情報

個別支援に関するアセスメント

※個別の高齢者の具体的なニーズの把握ができます。個別ニーズの集積からその地域の

高齢者ニーズとして類推することもできます。

・虐待相談件数、相談内容

・個別支援の成功・困難事例の状況

・地域でのケア会議や事例検討会などでの情報

・地域住民からの情報

・介護保険等関係者からの情報

・虐待対応に係る関係者からの情報

62

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(4)医療機関との連携

医療機関は在宅高齢者の身体的・性的・経済的虐待や介護放棄等の発見、また、介入ネ

ットワーク機関として重要な役割があります。高齢者虐待で生命に危険のある場合、その

発見者は、市町村高齢者福祉担当課や地域包括支援センターへの通報義務があります。ま

た、医師等高齢者虐待を発見しやすい立場にある者は、高齢者虐待の早期発見に努めなけ

ればならないこととなっています。

63

表6 高齢者虐待に気づくための身体所見

1 全身症状①脱水、低体重、意識障害がある②不衛生(あかまみれ、ひどい汚れ)がある

2 皮膚

①新旧混在の外傷瘢痕、多数の小さな出血、不審な傷 (ヒモ型挫傷)がある②不自然な火傷(多数の円形の火傷、手背部や口腔内、 背部の火傷)がある

3 骨折 多発性の骨折、新旧混在する骨折、肋骨骨折がある

4 頭部①頭部外傷(頭蓋骨骨折、脳挫傷)がある②頭蓋内出血(クモ膜下出血、急性硬膜下出血、慢性 硬膜下出血)がある

5 眼球損傷 前眼房や網膜の出血がある

6 難聴 鼓膜破裂がある

7 性器 性器や肛門周囲の外傷がある

8 腹部 内臓損傷、内臓破裂がある

 その他 反復する尿路感染症がある9

出典:愛知県高齢者虐待対応マニュアル(総論編)P28

しかし、現状では医療関係者へ、高齢者虐待対応に関する情報や市町村での取り組み等

の情報は十分には届いていない状況も見受けられます。そのために、診療の中で、虐待が

疑われるような事例に接しても、どこに情報を知らせるか、その後の対応はどうなってい

くのかなどが不明確なために見守る状況になっていることも考えられます。

個別支援に係る連携をするときやネットワーク構築の中はもちろん、機会を設けて医療

機関に出向き、市町村における高齢者虐待の実態や対策を伝え、よりよい協力、連携が得

られるよう積極的に働きかけていくことが必要です。

※PR用資料をP64 に示していますので、参考にしてください。

(5)愛知県弁護士会と愛知県社会福祉士会による「愛知県高齢者虐待対応専門職チーム」

について

愛知県弁護士会と愛知県社会福祉士会は、平成 22 年 10 月から高齢者虐待対応の法的対

応の支援を目的に、「愛知県高齢者虐待対応専門職チーム」派遣事業を試行的に尾張地区で

開始しました。これは、市町村の派遣要請に応じて、弁護士と社会福祉士の 2 名による専

門職チームが、高齢者虐待の個別案件についてのケース会議や事例検討会へ出向き、虐待

対応への専門的知識・技術の助言をするものです。必要に応じて御活用いただき、効果的

な虐待対応の推進に結び付けてください。

連絡先:受付時間 平日(土日祝日を除く 午前 10~午後 4 時) 愛知県社会福祉士会事務局 電話 052-264-0687 FAX 052-264-0695

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高齢者が、身体的虐待や、介護放棄により身体的ダメージを受けた場合、医療機関に受診(救急搬送

の場合もあります)します。医療機関では、虐待の疑いのある高齢者を「患者」として受け入れること

になります。医療従事者の皆様は、日々の診療を通して高齢者の不審なけがやあざなどの状況を把握で

きるほか、家族・養護者の様子や変化等に気づくこともできます。

日常の業務において、少しでも虐待の疑いをお持ちになりましたら、

高齢者虐待相談受付窓口である市町村又は地域包括支援センター に通報してください!

早期発見の努力義務

養介護施設、病院、保健所その他高齢者の福祉に職務上関係のある者には、高齢者虐待の早期発見

の努力義務があります(高齢者虐待防止法第5条)。 虐待の通報義務及び努力義務

高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、速やかに通報しなければならない、または

通報するよう努めなければならないとされています。 ・「高齢者の生命または身体に重大な危険が生じている場合」 →市町村に通報しなければならない (高齢者虐待防止法第7条1項)

・「高齢者の生命または身体に重大な危険が生じている段階には至らないが、虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合」 →市町村に通報するよう努力しなければならない(高齢者虐待防止法第7条2項)

高齢者虐待防止法に定められている医療機関の役割

◆法律では次のようなことも規定されています。

A:虐待の事実がないにもかかわらず誤って通

報してしまったとしても、法的責任を問われる

ことはありません。 虐待を受けたと思われる場合は、通報するよ

う法律で規定されています(高齢者虐待防止法

第7条1項、2項)。

通報者が特定されないよう、自然な形で関わ

りを始めますので、安心して通報してください

(高齢者虐待防止法第8条)。

A:通報を行っても守秘義務違反にはなりません。 業務上の守秘義務よりも高齢者虐待の通報義

務を優先してください(高齢者虐待防止法第7条

3項)。

虐待の通報や虐待対応において関係機関で情

報交換を必要とする場合、本人の同意を得ずに、

第三者に目的外の個人情報の提供を行うことが

可能です(個人情報保護法第23条)。

Q:虐待かどうか判断するのが難しい。思い違いかもしれないしなぁ。

Q:守秘義務があるから、個人情報の提供はできないなぁ。

※病院における個人情報とは、カルテ、処方せん、手術記録、看護記録等も含みます。

市 課

高齢者虐待相談受付窓口

☎連絡先

64

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3 高齢者虐待対応の迅速な対応に向けて

(1)市町村の役割と行政権限の行使

高齢者虐待防止法(以下法と記す)では、高齢者虐待の防止、高齢者虐待を受けた高齢者

の迅速かつ適切な保護及び適切な養護者に対する支援について、市町村が主体的に役割を担

うことが規定されています。

また、地域包括支援センターなど高齢者虐待対応協力者のうち適当と認められる機関に以

下の事務の一部又な全部を委託することが可能とされています(法第 17 条)。

委託可能な事務の内容

①相談、指導及び助言(法第 6 条) ②通報又は届出の受理(法第 7 条、第 9 条) ③高齢者の安全の確認、通報又は届出に係る事実確認のための措置(法第 9 条) ④養護者の負担軽減のための措置(法第 14 条)

介護保険法において、地域包括支援センターは、主要な業務の一つである権利擁護業務等

の中で、高齢者虐待の防止や虐待を受けた高齢者、養護者等への支援を行うこととなってい

ます。地域包括支援センターは、虐待対応の中核機関の一つでありますが、あくまでも高齢

者虐待防止法に規定されている業務の責任主体は市町村であることから、市町村は、地域包

括支援センターに業務を委託した場合も、業務への関与を継続することが基本になります。

業務の委託にあたっては、「立入調査」及び「やむを得ない事由による措置」等については、

市町村の行政権限であることから、直営の地域包括支援センターを除き法第 17 条に規定する

委託事項に含むことはできません。また、行政権限の行使に際しては、迅速かつ適切に連携

を図り協力体制を築くことが必要です。

ア 立入調査権(法第 11 条 )

市町村は、養護者による高齢者虐待により高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じてい

るおそれがあると認められる場合、高齢者の住所又は居所に立ち入り、必要な調査又は質問

を行うことができます。

(ア)立入調査権の有する権限の範囲

立入調査権の有する権限の範囲は、「世帯の同意なく住居内に立入をしても住居侵入罪等

の犯罪を問われない」「立入を拒否した場合に罰則により罰金が科せられることによる間接

強制ができる」に留まり、自ら鍵をこじ開けたり業者に解錠させることまではできません。 立入調査を実施する際に、目的や理由、確認したい事項を説明します。立入調査を拒ん

だ場合は、「刑事罰を科される場合があるほか、警察署長に対する援助要請を行うこともで

きる」など説明し、説得します。それでも応じない場合は、職務を執行するために警察署

長に対し援助を求め、警察官職務執行法等により援助を受けることになります。(事前に「高

齢者虐待事案に係る援助依頼書」の提出が必要です)

65

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(イ)立入調査権の要件の判断

立入調査権を行使できるのは、「養護者による高齢者虐待により高齢者の生命または身体

に重大な危険が生じているおそれがあると認めるとき」だけです。 しかし、現場では、この要件を満たしているかどうかの事実確認をすることなく、とに

かく関わりを拒否する孤立した世帯であるというだけで、立入調査を行おうとする傾向が

あります。様々な工夫を重ねた上でなければ、立入調査の要件や必要性を満たすとはいえ

ません。

(ウ)立入調査権の発動までの準備と手順の確立

立入調査は、強制的な介入になるため、対応を誤ると養護者との関係を悪化させ、事後

の関係調整に膨大な労力を費やすことになってしまいます。そのため、立入調査の発動ま

での準備と立入調査をするときの手順を確立し、その後の支援に結びつきやすくする必要

があります。

立入調査が必要と判断される状況の例

・高齢者の姿が長期にわたって確認できず、また養護者が訪問に応じないなど、接近する手がかりを

得ることが困難と判断されたとき。 ・高齢者が居所内において物理的、強制的に拘束されていると判断されるような事態があるとき。

何らかの団体や組織、あるいは個人が、高齢者の福祉に反するような状況下で高齢者を生活させた

り、管理していると判断されるとき。 ・過去に虐待歴や援助の経過があるなど、虐待の蓋然性が高いにもかかわらず、養護者が訪問者に高

齢者を会わせないなど非協力的な態度に終始しているとき。 ・高齢者の不自然な姿、けが、栄養不良、うめき声、泣き声などが目撃されたり、確認されているに

もかかわらず、養護者が他者の関わりに拒否的で接触そのものができないとき。 ・入院や医療的な措置が必要な高齢者を養護者が無理やり連れ帰り、屋内に引きこもっているような

とき。 ・入所施設などから無理やり引き取られ、養護者による加害や高齢者の安全が懸念されるようなとき。

・養護者の言動や精神状態が不安定で、一緒にいる高齢者の安否が懸念されるような事態にあるとき。

・家族全体が閉鎖的、孤立的な生活状況にあり、高齢者の生活実態の把握が必要と判断されるような

とき。 ・その他、虐待の蓋然性が高いと判断されたり、高齢者の権利や福祉上問題があると推定されるにも

かかわらず、養護者が拒否的で実態の把握や高齢者の保護が困難であるとき。

(出典:厚生労働省マニュアルP52)

イ やむを得ない事由による措置(法第 9 条 2 項)

市町村は虐待防止と高齢者保護のため、生命又は身体に重大な危険が生じているおそれが

あると認められる高齢者を一時的に保護しなければならないと規定されており、その保護・

分離の手段の一つとして『老人福祉法に基づく市町村長によるやむを得ない事由による措置』

があります。

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(ア)積極的な措置権限行使が求められる場合

① 「生命または身体に重大な危険の生じるおそれがある」場合に、高齢者の判断能力の

有無にかかわらず、「やむを得ない事由による措置」をとる典型的な場合 ② 緊急性はないものの、認知症等で高齢者の判断能力が減退して高齢者の意思が確認で

きず、かつ、養護者がサービスの利用の拒否をしている場合 ③ 高齢者に判断能力はあるが、経済的虐待などがあって、介護保険制度によるサービス

利用の利用者負担金を支払うことができない場合 ④ 高齢者に判断能力はあるが、養護者の虐待をおそれ、あるいは養護者のことをかばい、

また、施設や介護サービスへの無知や偏見等から、虐待を耐えてでもサービス利用を

拒否する場合

(イ)面会制限の検討(法第 13 条)

養護者による高齢者虐待を受けた高齢者についてやむを得ない事由による措置の対応がとら

れた場合においては、市町村長又は養介護施設の長は、養護者による高齢者虐待の防止及び高

齢者の保護の観点から、養護者について高齢者との面会を制限することができます。 したがって、面会制限はやむを得ない事由による措置の付随的な処分であることから、面会

制限が予測される場合については、やむを得ない事由による措置を適用させる必要があります。

※面会制限を行うにあたっての注意点 面会制限を行う趣旨を明確に伝えるために、養護者にはその旨を文書で通知するか又は口頭で

あったとしても、複数の関係者がいる前で伝えるようにします。事後に、養護者が人権侵害等

を理由に不当な要求を行ってくる場合も考えられますので、危機管理等の意味も含めこのよう

な対策を行う必要があります。

市町村として、必要な場面で措置権の行使をしないということは、事後的に市町村の権限不

行使として責任を問われる可能性もあります。市町村は、地域包括支援センターと協力し、

訪問面接、関係者からの情報収集等の事実確認を踏まえ、コアメンバー会議による緊急性の

判断に基づいた適切な対応を図る必要があります。

立入調査、やむを得ない事由による措置の実施は、市町村が判断しない限りできません。

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1 高齢者虐待 Q&A

1-1 通報者が特定されないように、通報者の情報は守られているのですか

P70 1-2

介護保険対象外の 64 歳の方が介護放棄されていますが、市町村が対応する

のですか

1-3 妻(63 歳、要介護状態)に対する夫(65 歳)から暴力がある場合には、

DV防止法と高齢者虐待防止法ではどちらが優先されるのですか

1-4

高齢者(認知症等、独居)が自己管理できず、また、本人自身が周りとの

関係を拒絶し、不適切な衣食住の環境に暮らしている時はどのように対

応したらよいですか P71

1-5 被虐待高齢者を対応する市町村は、住所地、居住地どちらが優先になりま

すか

1-6 事実確認のための調査において、個人情報保護法を理由に情報を提供して

もらえないことがあるのですが、どうしたらよいですか P72

1-7

家族が医療費の負担を嫌い、高齢者本人に必要な医療を受けさせていませ

ん。「やむを得ない事由による措置」のように行政権限により医療を受けさ

せる方法はありますか

P73 1-8 措置中の被虐待高齢者を特別養護老人ホームへ優先的に入所させるための

法的根拠はありますか

1-9 緊急一時保護をするため、養護老人ホームを利用したい場合、どのような

手続きが必要ですか

1-10 契約による施設入所の場合にも、面会制限を行うことができますか

P74 1-11

介護保険の認定調査を受けていない被虐待高齢者を、特別養護老人ホーム

へ措置した場合の費用はどうなりますか。また、介護認定を受けた結果、

非該当となった場合には、その費用はどうなりますか

1-12 身元保証人が立てられないために特別養護老人ホームから入所を拒否され

る場合は、どうしたらよいですか

個別ケース会議、その後の支援 コアメンバ―会議の決定に基づく対応

コアメンバ―会議に向けた事実確認

Ⅵ Q&A ~よりよい対応を目指して~

相談・通報の受付

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2 成年後見制度 Q&A

2-1 成年後見制度とはどのような制度ですか P75

P76

2-2 どのような場合に成年後見制度を利用していますか P77

2-3 市町村長申立ての手順、方法はどのように行ったらよいですか P78

P79

2-4 成年後見制度を利用するのに、本人にお金がない場合はどうしたらよいで

すか P80

2-5 審判までの間、早急に成年後見制度の利用が必要な場合はどうしたらよい

ですか P81

2-6 本人、家族への成年後見制度の説明はどのようにしたらよいですか

3 日常生活自立支援事業 Q&A

3-1 日常生活自立支援事業とはどのような事業ですか

P82 3-2 日常生活自立支援事業を利用するには、どこへ相談したらよいですか

3-3 事業利用の必要性はどのように判断したらよいですか

3-4 成年後見制度とどのように異なりますか P83

3-5 メリットとデメリットはどのようなことがありますか

P84 3-6 施設入所者は利用することができますか

3-7 同居の家族がいても利用することはできますか

69

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1 高齢者虐待 Q&A

相談・通報の受付

1-1 通報者が特定されないように、通報者の情報は守られているのですか

A:相談者、通報者の秘密は守られます。

通報を受付けた市町村や地域包括支援センター等職員、高齢者虐待対応協力者は、通報

者の情報を漏らしてはならないと法律で規定されています(高齢者虐待防止法第 8 条、第

17 条)。

1-2 介護保険対象外の 64 歳の方が介護放棄されていますが、市町村が対応する

のですか

A:65 歳未満の者に関する相談事例であっても、その者の権利が侵害されていたり、生命や

健康生活が損なわれるような事態が予測されるなど支援が必要な場合には、高齢者虐待防

止法の附則(検討)2 に記されている「高齢者以外の者であって、精神上又は身体上の理

由により養護を必要とするものに対する虐待の防止等のための制度については、速やかに

検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。」をもって、市

町村が虐待に対する対応・保護を行うことができます。

また、老人福祉法第 11 条第 1項では、一定の要件のもとに 65 歳未満の施設への入所措

置が規定されています。

1-3 妻(63 歳、要介護状態)に対する夫(65 歳)から暴力がある場合には、DV

防止法と高齢者虐待防止法ではどちらが優先されるのですか

A:高齢者の権利擁護の観点から、対応、支援に有効な法律を適用します。

DV防止法は、配偶者からの身体的暴力や、これに準ずる言動から他方の配偶者を保護

するための法律であり、活用することができます。特に、一定期間の離別措置が必要な場

合は有効です。DV防止法は、年齢の規定はないため、配偶者からの暴力であれば対象に

なります。

また、1-2 でも述べているとおり、65 歳未満の者であっても高齢者虐待防止法に基づい

て対応することが可能な場合もあります。

どの法律を優先するかについては、妻の心身の状態や虐待の状況、経済面等も考慮し、

双方の担当課が一緒に検討を行い、総合的に判断します。

70

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1-4 高齢者(認知症等、独居)が自己管理できず、また、本人自身が周りとの

関係を拒絶し、不適切な衣食住の環境に暮らしている時はどのように対応

したらよいですか

A:認知症などにより判断能力の衰えた一人暮らしの高齢者が、自ら他者に対して援助を求

めず、高齢者自身が自己を放任状況に追いやることを「自己放任」(セルフネグレクト)

といいます。

セルフネグレクトは、高齢者虐待防止法に定義されておりませんが、高齢者の権利利益

が客観的に侵害されていることには変わりがないので、高齢者自身による虐待も高齢者の

尊厳の保持にとって防止することが重要であると考えられ、見守りや定期的に状況を確認

するなど、高齢者虐待防止法の取り扱いに準じた支援を行っていく必要があります。

1-5 被虐待高齢者を対応する市町村は、住所地、居住地どちらが優先になり

ますか

A:法の趣旨から、生活の実態がある居住地が優先と考えます。

居住地と対応自治体の考え方

居住地による措置:居住地のある者の実施者は、その居住地を管轄する市町村とします。

◆居住地とは◆

客観的に居住の事実(すまい)が相当期間継続している場合又は居住の事実が継続す

ることが予想される場所をいいます。

したがって、現にその場所で生活していなくても、現住地に生活していることが一時

的な便宜のためであり、一定期限の到来とともにその場所に復帰して起居を継続してい

くことが期待される場合は、その場所を居住地として設定します。

※ 終的には相当の期間をどのように捉えるかは、市町村間の話し合いによります。

措置を要する者の状況 措置の実施者

居住地のある者 居住地を管轄する市町村

居住地のない者

居住地が不明な者 現在地を管轄する市町村

外国人 居住地又は現在地を管轄する市町村

参考:愛知県高齢者虐待対応マニュアル総論編 P70

71

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コアメンバー会議に向けた事実確認

1-6 事実確認のための調査において、個人情報保護法を理由に情報を提供

してもらえないことがあるのですが、どうしたらよいですか

A:個人情報保護法第 23 条には、例外規定として情報収集の目的が「人の生命、身体または財産

の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」本人の同

意なく第三者へ提供することができるとあります。

虐待対応における事実確認のための情報収集は、その規定に該当すると考えられます。

したがって、誤った個人情報保護の理解のために、緊急性の判断に必要な情報が得られず、

虐待対応の判断を遅らせることのないよう、地域の医療機関等も含めて関係者間で個人情報取

扱い方法を定めるなど、ルール化しておくことが重要です。

個人情報保護法の例外規定の高齢者虐待における解釈例(個人情報保護法第 23 条)

次の場合、本人の同意を得ずに、第三者に目的外の情報提供を行うことができます。

1 法令に基づく場合

・高齢者虐待防止法に基づく高齢者虐待の通報等

2 人の生命、身体または財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得る

ことが困難であるとき

・虐待により本人の生命等を保護するための対応が必要であるが、意識不明または認知症等に

より同意の確認が困難な場合等

3 略

4 国の機関もしくは地方公共団体またはその委託を受けた者が、法令の定める業務を遂行す

ることに協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより、当該事務の遂行

に支障を及ぼすおそれがあるとき

・高齢者虐待防止法に基づき、市区町村と地域包括支援センター、介護保険事業者、民生委員、

警察等の関係機関がネットワークを組んで対応するため、関係機関との情報交換を必要とする

場合

※同一機関内での情報提供は第三者提供に該当しないため、本人の同意なく情報交換できます。

参考:厚生労働省マニュアル P40

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コアメンバー会議の決定に基づく対応・個別ケース会議、その後の支援

1-7 家族が医療費の負担を嫌い、高齢者本人に必要な医療を受けさせていません。

「やむを得ない事由による措置」のように行政権限により医療を受けさせる方法

はありますか

A:医療法等には、老人福祉法における「やむを得ない事由による措置」のような制度はな

いため、行政権限で医療を受けさせ、医療費を支弁することはできません。

市町村の保健部局や地域包括支援センターの保健師や看護師と同行訪問等により、本人

の状態等を観察し、本人と家族に医療機関への受診の必要を説明し、説得を続けることが

基本です。合わせて、医療費の支払いを拒む理由を確認し対応策を検討します。

経済的に医療費が負担できない場合

経済的に困窮している場合は、

①生活福祉資金の貸付(65 歳以上の高齢者の属する世帯)の利用

②高額療養費制度

③限度額適用認定証等の活用

について説明を行い受診を勧奨します。

その他、家庭の状況に応じて、生活保護法による医療扶助等の給付対象になるか生活保

護担当課と協議し対応します。

経済的虐待により支払いが困難な場合

高齢者本人に年金等財産があり、家族がそれらを管理しているため医療費が支払えない

場合は、金銭の管理能力等を加味し、状況に応じて成年後見制度の利用を積極的に進めて

いくことも必要です。

成年後見制度の市町村長申立て手続きには、後見人等の選任までには、2から 3月程度

かかる場合もあります。後見人により、本人の年金等が確保されるまでの間、病院と医療

費の支払いについては、行政機関を中心に、事前調整しておくことも大切です。

1- 8 措置中の被虐待高齢者を特別養護老人ホームへ優先的に入所させるための

法的根拠はありますか

A:平成 14 年 8 月 7 日に指定介護老人福祉施設等への優先的な入所(入院)に係る運営基準

の一部改正により、「必要性が高いと認められる入所申込者を優先的に入所させるよう努め

なければならない」と定められたことから、各市町村において「特別養護老人ホーム優先

入所指針」を策定し、「特別な事由による入所」に「虐待」を盛り込むことで可能となりま

す。

1-9 緊急一時保護をするため、養護老人ホームを利用したい場合、どのような

手続きが必要ですか

A:老人福祉法 10 条の 4に基づいて、老人短期入所等事業実施要綱を定め、養護老人ホ

ーム(老人短期入所施設等)に短期間入所させ、養護することを委託する必要があり

ます。

※成年後見制度に関してはQ&A(P75)を参照して下さい。

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1-10 契約による施設入所の場合にも、面会制限を行うことができますか

A:虐待を受けた高齢者が「やむを得ない事由による措置」ではなく、契約による入所をし

た場合については、法文上は、高齢者虐待防止法に基づいた面会制限はできません。

しかしながら、高齢者の状況等から面会を制限した方がいいと判断される場合は、高齢

者虐待防止法に基づいた面会制限と同様に、当該高齢者の保護等の観点から、施設長は、

「施設管理権」により養護者の面会を拒否することも可能と思われます。

・施設長が「施設管理権」により養護者との面会を拒否する場合には、必要に応じて、事

前に市町村と施設は養護者への対応方法等について協議をしておくことも大切です。

・面会制限が必要で、養護者の理解が得られない場合は、措置に切り替えることを検討す

るとよいと思われます。

1-11 介護保険の認定調査を受けていない被虐待高齢者を、特別養護老人ホームに

措置した場合の費用はどうなりますか。また、介護認定を受けた結果、非該当

となった場合には、その費用はどうなりますか

A:①地域包括支援センター等の協力により、要介護認定の申請を至急行います。

②要介護認定を受けた時には、9 割は施設から介護保険請求をしてもらい、介護保険で

の自己負担相当分の1割+食費、居住費(ホテルコスト)を市町村が措置費として支弁し

ます。要介護認定前に措置を開始した場合にも、申請日に遡って介護保険からの給付が可

能です。措置費で支弁した費用は、介護保険制度に準じる考え方で本人等の負担能力に応

じて徴収することとなります。

③要介護認定結果が自立又は要支援 1、2 であった場合は、市町村が一旦全額措置費

として支弁した後、本人等の負担能力に応じて徴収することとなります。

また、できるだけ早い時期に、養護老人ホーム等への措置入所に切り替えます。

参考:愛知県高齢者虐待対応マニュアル総論編 P69

1-12 身元保証人が立てられないために特別養護老人ホームから入所を拒否される

場合は、どうしたらよいですか

A:身元保証人を立てられないことは、施設側が入所を拒否する理由になりません。

特別養護老人ホームは、正当な理由(入院治療の必要がある場合その他入所者に対し自ら

適切な指定介護福祉施設サービスを提供することが困難な場合)なく入所を拒否してはな

らないこととなっており(平成 11 年 3月 31 日厚生省令第 39 号「指定介護老人福祉施設の

人員、設備及び運営に関する基準」第 4 条の 2)、「正当な理由」の解釈にもよりますが、

身元引受人を立てられないことを理由として、入所を拒否することは相当ではありません。

上記のことを施設にねばり強く説明し、それでも施設が身元引受人を求め、利用契約に

よる入所ができない場合は、家族からの虐待又は無視を受けているために、介護保険サー

ビスが利用できない場合に該当しますので、「やむを得ない事由による措置」を実施して、

特別養護老人ホームへの入所措置を検討してください。

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2 成年後見制度 Q&A

A:2000 年(平成 12 年)4月より開始された、認知症、知的障害や精神障害により判断能

力が不十分な方々を、法律的に保護し、支えるための制度です。

例えば、預金の解約や施設入所等福祉サービス利用契約の締結、不動産売買等の財産処分

を行う必要があっても、判断能力が不十分な状態ではこれらのことをするのが難しい場合

があります。また、本人にとって不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結ん

でしまい、悪徳商法の被害にあうおそれもあります。このため、家庭裁判所が、判断能力

が不十分な方々を援助する人を選ぶことにより、本人を法律的に支援するというのが成年

後見制度になります。

成年後見制度が施行される以前は、「禁治産(現在の「後見」に該当)」「準禁治産(現

在の「保佐」に該当)」とされ、禁治産の宣告を受けると、本人の戸籍に記載されました

が、現在では戸籍には一切記載されません。その代わりに、全国の成年後見登録事務を取

り扱っている東京法務局に本人の住所、氏名、成年後見人等の氏名等を登録しています。

成年後見制度

法定後見制度

任意後見制度

後見

保佐

補助

2-1 成年後見制度とはどのような制度ですか

法定後見制度

本人がすでに判断能力が十分ではない場合、本人、配偶者、四親等内の親族等から家庭裁判

所に申立てを行い、家庭裁判所で後見人を選定してもらう制度です。本人の判断能力に応じ

て、補助、保佐、後見の 3 つに支援は分かれます。申立てを行う人が不在の場合、市町村長

申立てという方法もあります(市町村長申立てとは、親族が申立てできない場合で、市町村

長が特に必要であると認めるときに行うものです)。

任意後見制度

本人の判断能力が十分なとき、将来の判断能力の低下に備えて、本人が後見人を選定し、本

人の希望する支援内容を定めて公正証書で契約を結び、将来の不安に備えておく制度です。

後見人には、自分の身近な人を選ぶこともできますし、弁護士、司法書士、社会福祉士等の

専門家を支援内容に応じて複数選任しておくこともできます。

例:日常生活も自分一人ではできない。

後見 常時、判断能力を欠いている人を対象

要なことが自分一人ではできない

例:日常的な買い物はできても、不動産の売買や自動車の購入、お金の貸し借りなどの重

保佐 判断能力がかなり不十分になってきた人を対象

例:一人暮らしで「預貯金など日常的な金銭管理が心もとない」「介護サービスなどの契約

内容がよく理解できず、一人で手続きができない」

補助 判断能力が不十分な人を対象

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成年後見制度をすすめるための支援者の動き

本人又は親族による申立てができる

いいえは い

◆本人又は親族等による申立て準備の支援

を行う。

・申請書等作成、関係書類の準備

・診断書の準備(医師への説明と依頼)

・鑑定人候補者の調整

・後見人候補者の調整

◆家庭裁判所への申立てを行う

申立て書類の完成<審判手続き>

・家庭裁判所の調査 ・医師の鑑定 ・審判

地域の医療機関との連携

・診断書作成の協力依頼

・鑑定の協力依頼

後見人候補者を推薦する団

体の紹介・連携

◆スクリーニング(判断)

高齢者の判断力や生活状況から成年後見制度利用の必要性を判断する。

2-2 へ(どのような場合に成年後見制度を利用していますか)

◆説明

本人、家族に制度の概要や手続き及び利用の必要性について説明する。

2-6 へ(本人、家族への成年後見制度の説明はどのようにしたらよいですか)

◆市町村長による申立ての準備をする

2-3 へ(市町村長申立ての手

順、方法はどのように行ったらよいで

すか)

参考:財団法人 長寿社会開発センター「地域包括支援センター 業務マニュアル」2010 年

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2-2 どのような場合に成年後見制度を利用していますか

A:世帯内に適切な意思決定できる人がいない独居等の認知症の高齢者や、養護者から

虐待により高齢者を保護し、支援する場合等に制度を利用します。

・医療機関の受診や福祉サービス利用等の契約に関して支援が必要な場合

・悪質商法や消費者金融等の経済的被害を現に受けていたり、その可能性がある場合

・預貯金管理等の財産管理、遺産相続等、法律行為の支援が必要な場合

などがあります。

※判断に迷った時は早めに専門機関や、市町村の顧問弁護士等に相談しましょう。

成年後見制度の相談機関

◆アイズ(愛知県弁護士会 高齢者・障害者総合支援センター)

愛知県弁護士会が高齢者・障害者の方々を法的な側面から支援するために設立したセンターです。

(平成 12 年より活動)

高齢者・障害者の方々で、財産の管理、介護・福祉サービスの利用、虐待や財産侵害などについて、

生活支援につながるようにアドバイスや事件解決を行っています。

センターの活動として、個々の相談活動、成年後見の申立て、財産管理・財産侵害に関する事件を

受任するなどの活動を行うとともに、こうした活動につながる、支援弁護士の研修、市民向けの啓発

事業、福祉関係者とのネットワークの形成などを行うため、5つの部会で支える活動を展開しています。

◆リーガルサポート(社団法人成年後見センター・リーガルサポート)

高齢者・障害者等の権利を擁護することを目的に、司法書士を正会員として設立された全国組織の

社団法人です。

現在、約 5,100 名の会員が、全国各都道府県 50 か所の支部を中心に、成年後見制度等を利用して、

高齢者・障害者等の権利を護る活動を展開しています。

◆愛知ぱあとなあセンター(社団法人愛知県社会福祉士会)

社会福祉援助を必要とする人々(高齢者・障がい者・児童・社会的疎外の状況にある人々等)の生

活と権利を擁護するため、県民に向けた啓発や支援に関する次の事業を行います。

①県民に向けた啓発・相談活動を行うこと

②権利擁護システムづくりに向けた他団体との協働を推進すること

③権利擁護に関する制度利用促進に向けた諸活動を展開すること

④家庭裁判所等からの成年後見人候補者推薦依頼に対し、適切なぱあとなあ登録会員を推薦すること

により、成年後見人受任を円滑に行うこと

⑤成年後見人として活動する、もしくは活動しようとする会員のスキルアップをはかること

⑥その他、社会福祉分野における県民の権利擁護に関する活動を推進すること

※連絡先等は参考資料 P98 を参照して下さい。

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2-3 市町村長申立ての手順、方法はどのように行ったらよいですか

A:

④申立ての要否の検討

⑤市町村長申立ての決定

(1)情報の把握

(2)調査・検討

本人の状況を的確に把握し、申立てを行うべきかどうか市町村として判断

する。

①本人調査

②親族調査

・寄せられた情報の事実関係を確認

・本人の心身・日常生活の状況、資産状況(分かる範囲)等の把握

・二親等以内の親族(他の申立権者)の有無を戸籍等により確認

いる

いない

二親等以内の親族に申立ての意思を確認し、申立ての意思がある、またはす

でに四親等以内で申立てを行う予定の者が明らかな場合は、その者に申立て

を行うよう支援・依頼をする。

※ただし、二親等以内の親族がいるが、「申立てを拒否している」「本人への

虐待がある」または「連絡がつかない」等の場合は、「いない」として扱う。

③後見登記有無の確認 東京法務局から本人の「登記事項証明書」を取り寄せ、任意後見

受任者等の有無を確認 登記あり

登記なし

任意後見受任者等に対応を依頼する。

(任意後見受任者が家庭裁判所に任意後見監督人の選任申立てを行

い、選任をもって任意後見が開始される)

(3)申立て書類の作成 申立てに必要な書類を作成する

①診断書の依頼

②成年後見人等候補者の検討

③申立て費用の負担について検討

診断書(家庭裁判所指定様式)を医師に依頼する。(医師は精神科医

が望ましいが、本人の状況をよくわかっている主治医でもよい)

申立て費用については、原則として申立人、この

場合は市町村長が負担する。

成年後見制度利用支援事業があれば活用する。

(4)家庭裁判所に申立て 本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる。

①必要書類等の提出

②申立て費用の予納

(5)後見開始の審判等(審判確定後、法定後見開始)

家庭裁判所については参考資料 P98 を参照してください。

(P80 参照)

出典:長野県社会部地域福祉課「成年後見制度 市町村長申立ての手引き」 2010 年 一部改変

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 成年後見事件の申立には以下の書類が必要となります。必要書類に不足・不備がありますと、再度ご来庁をお願いする場合がありますので、よく確認のうえ、お越しください。

1 申立書類□

2 添付書類

□ 申立人の 戸籍謄本

□ 戸籍謄本

□ 住民票又は戸籍の附票

□ 登記されていないことの証明書

□ 候補者の 住民票又は戸籍の附票

本人の財産についての資料(裁判所にお越しいただく際、預貯金通帳・証書の現物をご持参ください。)

□ 不動産(土地・建物)の全部事項証明書(登記簿謄本) 法務局でお取り寄せください。

□ 市町村役場税務課でお取り寄せください。

□ (預金) 預貯金の通帳・証書のコピー(過去1年分のコピー)コピーについては、別紙「コピーの取り方」を

参考にしてください。以下同じ。

□ (有価証券)有価証券については、表・裏全部をコピーしてください。

□ (保険) 保険証券の表裏全部をコピーしてください。

□ (負債)例えば、金銭消費貸借契約書、住宅ローン契約書・保証書・返済計画一覧表などのコピー

本人の収支についての資料

□ (収入)本人の収入を示す資料のコピーをご提出くださ

い。

□ (支出)本人に関する支出を示す資料のコピーをご提

出ください。

3 費用

□ 収入印紙  800円 × (1~3)組

□ 登記印紙  4000円

□ 郵便切手

  300円 × 3枚

  100円 × 1枚   80円 × 15枚

   10円 × 10枚 1040円 × (1~2)組

□ 現   金  5万円程度

3 その他□ 印   鑑 (認印で可。申立書に押印したものを持参してください。)

審理中の、通信費用となります。(不足場合、追加をお願いすることがあります。)(後見開始の場合は1組、保佐又は補助開始の場合は2組)

後見開始、保佐開始の審判をするうえで必要となる鑑定手続費用の一部となります。鑑定金額は、事案により、更に高額(又は低額)になる場合があります。

あらかじめ、ご了承ください。

成年後見事件申立必要書類 (チェックリスト)

従前から、金銭出納帳又は家計簿等をつけている場合には、金銭出納帳、家計簿等のコピーも提出してください。

候補者に関する照会書

住民票は本籍の記載のあるものが必要です。

※「本人に関する照会書」、「候補者に対する照会書」の中で、提出をお願いしているもの

(不動産)

保佐開始又は補助開始の申立ての際、同意権付与・代理権付与の申立てを同時に行う場合

には、各付与の申立につき800円追加

(例)補助開始、同意権付与、代理権付与の申立ての場合、2400円

審判確定後の登記嘱託費用となります。

上記不動産の固定資産税評価証明書(固定資産税納税通知書の原本またはコピー ・・・・物件及び不動産評価額

の記載のあるものが提出されれば、固定資産税評価証明書の提出は不要です。)

有価証券(株式、出資金、国債、社債、債権、投資信託等)のコピー、または証券会社発行の取引残高証明書のコピー

各種保険契約の保険証券のコピー

本人が債務者・連帯債務者・保証人・連帯保証人となっている負債について、その具体的な内容を示す資料のコピー

年金・手当額通知書、賃貸契約書、確定申告書、給与明細書、配当金支

払明細書等のコピー

医療費や施設費の領収書、税金・社会保険の通知書(納付指示書)、請求

書等のコピー

本 人の

診断書等は、主治医に記入してもらってください。

名古屋市愛護手帳(判定1度・2度)、愛知県療育手帳(判定A)の交付を受けておられる本人

の場合、手帳のコピーの提出があれば、診断書等の提出は不要です。

財産目録、本人収支表については、別紙記入例にしたがって記入してください。親族同意書は、可能な限り本人の相続人となるべき立場の方全員に書いてもらってください。

親族関係図も、本人の相続人となるべき方まで記載してください。

申立てをする人の立場によっては(例:甥・姪・いとこ等)、申立人と本人との親族関係がわか

る戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)を提出してもらう場合があります。外国籍の方は、「外国人登録記載事項証明書」を提出してください。

「登記されていないことの証明書」は、最寄りの法務局の本局でお取り寄せください。

「登記されていないことの証明申請書」に記載された証明事項については、上から3番目である「成年被後見人、被保佐人、被補助人、任意後見契約の本人とする記録がない」にチェック

してください。

診断書等

申立書(後見・保佐・補助)

本人に関する照会書(財産目録、本人収支表・親族同意書・

親族関係図)

します。

※申立書の「申立ての実情」の末尾に、「申立て費用は本人の負担とする旨の命令を求める」と付記

市町村長申立てにおいて、本人に財産があり公費負担の妥当性を欠くと判断される場合は、申立て

費用を請求することができます。(申立て時に市町村負担により予納することは必要です)

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2-4 成年後見制度を利用するのに、本人にお金がない場合はどうしたら よいですか

②法テラスに相談すると、民事法律扶助を利用することもできます。

A:①自治体によっては成年後見制度利用支援事業を実施しているので、それを利用する

ことができます。

◆成年後見制度利用支援事業とは

成年後見制度の普及、活用を目的とした市町村の取り組みを支援するための事業です。

介護保険法に基づく地域支援事業の任意事業であり、財源構成は1号被保険者保険料 20%、

国 40%、県 20%、市町村 20%(高齢者の場合)となっています。

この事業によって、鑑定料を含めた申立て費用や一部の自治体では後見報酬が助成されま

す。利用は市町村長申立て以外でも可能です。

※障害者については地域生活支援事業となっています。

◆民事法律扶助とは

資力の乏しい方が法的トラブルに遭遇したときに、無料法律相談を行い、必要な場合、弁

護士又は司法書士の費用の立て替えを行う制度です。

法律相談援助:弁護士、認定司法書士による無料法律相談

代理援助:裁判や調停、交渉などで専門家の代理が必要な場合に、弁護士、司法書士を紹介

し、その費用を立て替える

書類作成援助:自分で裁判を起こす場合に、裁判所提出書類の作成を行う弁護士・司法書士

を紹介し、費用を立て替える

※立て替えたお金は申立人等が支払える範囲で金額を設定して返済していきます。

返済が難しい場合には免除してもらえる場合があります。

◆法テラス(日本司法支援センター)

どこでも、法的なトラブルの解決に必要な情報やサービスの提供を受けられるようにしよ

うという構想のもと、総合法律支援法に基づき、平成 18 年 4 月 10 日に設立された法務省所

管の公的な法人です。借金、相続、離婚、消費者被害等さまざまな相談に応じています。

※詳しくは法テラスホームページを参照して下さい。

(http://www.houterasu.or.jp/)

※連絡先等については参考資料 P98 を参照して下さい。

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◆審判前の保全処分とは

次の 3種類があり、どの内容の保全処分を申立てるかは本人の状況が基本となります。

①財産管理者の選任(預貯金の管理、年金の受領、各種支払い等を行う)

②本人の財産管理もしくは本人の監護に関する事項の指示

③後見命令・保佐命令・補助命令(いわゆる消費者被害への対応等、本人が財産管理者の同

意を得ずに行った契約等を無効にすることができる)

※後見等開始の申立てを行っていることが前提で、単独で保全の申立てはできません。

※申立てを行うのにお金がない場合は 2-4 を参照して下さい。

A:成年後見制度の目的は、本人の尊厳が守られ、安心して暮らせるようにすることであり、

成年後見制度の利用をしたとしても、今までと生活が何も変わらないことをしっかり伝え、

本人と家族が不安にならないように説明をします。また、後見人を立てることによって、

社会的信用が得られる、将来も今までと変わらない生活が送れる、などのメリットを説明

します。

2-6 本人、家族への成年後見制度の説明はどのようにしたらよいですか

A:「審判前の保全処分」という方法を利用することができます。

2-5 審判までの間、早急に成年後見制度の利用が必要な場合はどうしたらよいですか

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3 日常生活自立支援事業Q&A

3-1 日常生活自立支援事業とはどのような事業ですか

A: 認知症等により判断能力が低下していても、簡単な契約が可能な程度の能力が維持され

ている人を対象として、福祉サービスの利用に関して相談を受け、福祉サービスの提供を

受けるために必要な手続き又は福祉サービスの利用に要する費用等の支払い、日常金銭管

理に関する支援等を行う事業です。具体的には、①福祉サービス利用援助 ②日常金銭管

理 ③通帳・印鑑などの書類預かりサービスを実施し、利用者として主体的に生きる権利

を擁護し、地域生活維持のサポートを行います。

◆日常生活自立支援事業の3つのサービス

1 福祉サービスの利用援助

・福祉サービスについての情報提供と助言

・福祉サービスの利用、又は利用をやめる際の手続き

・福祉サービスの利用料の支払い

・福祉サービスについての苦情解決制度の利用手続き

2 日常金銭管理サービス

・年金や福祉手当の受領手続き

・税金、公共料金、医療費、光熱費、家賃等の支払い手続き

・日常生活に必要な預貯金の払い戻し・預け入れ、解約の手続き

3 書類などの預かりサービス(金融機関などの貸金庫に保管)

・年金証書、預貯金の通帳、権利証、契約書類、保険証書、実印、銀行印など

※預かれないもの:宝石、貴金属、書画、骨董品、頻繁に出し入れがあるもの

3-2 日常生活自立支援事業を利用するにはどこへ相談したらよいですか

A:最寄りの社会福祉協議会(実務を行うのは基幹型社会福祉協議会)

3-3 事業利用の必要性はどのように判断したらよいですか

A:日常生活を支える福祉サービスや日常的な金銭管理が必要かどうかで判断を行います。

生活状況を把握した上で、成年後見制度に結び付けるのか、日常生活自立支援事業を利用

するのかを判断します。

判断能力の低下が進む前の対応として、契約能力が維持されているうちは、日常生活自

立支援事業の契約ではなく、任意後見契約や本人申立てによる補助や保佐の申立てを勧め

ることも考えられます。

※基幹型社会福祉協議会については参考資料 P99 を参照して下さい。

※詳しくは愛知県社会福祉協議会ホームページを参照して下さい。

(http://www.aichi-fukushi.or.jp/intoro/sodan/kenri.html)

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3-4 成年後見制度とどのように異なりますか

A:

成年後見制度 日常生活自立支援事業

対象者 認知症や精神・知的障害で判断能

力が低下している人

※判断能力に欠ける人も可

認知症や精神・知的障害で判

断能力が不十分な人

※著しく低下している人は不可

サービス

提供者

家庭裁判所により選任された人・

法人(親族、弁護士、後見センター

等)

社会福祉協議会と利用契約を

結び実施する。

実施する

内容

・通帳等財産の管理

・金融機関から必要な出入金

・必要な支払いの代行

・施設入所等各種契約の代行

・福祉サービスの利用支援

・不必要な契約の取り消し 等

※後見人等は一定の法的権限を持つ

・通帳等財産の管理

(日常的な金銭管理に限る)

・金融機関から必要な出入金

・必要な支払いの代行

・福祉サービスの利用支援

※社協に法的な権限はない

本人の資産に応じて裁判所が決定す

活動1回あたり

愛知県 1,200 円

名古屋市 1,000 円

書類等預り金 月 250 円

※生活保護受給者は無料

利用料

家庭裁判所へ申込をする。

※申込に関して、判断能力の診断等

を行いますので、数万円程度必要

※申込から決定まで数ヶ月必要

社会福祉協議会へ申込をする。

※申込費用は必要ない

※申込から決定まで 1 ヶ月程度

必要

利用申込方法

どんな人が

利用できるか(例)

・入院しているが、認知症のため判

断能力に問題があり、入院費の支

払いができない

→(後見人等が代わりに支払います)

・知的障害があり、度々悪質商法に

騙され高額商品を購入してしまう

→(後見人等が契約を取り消します)

・軽い認知症があり、自宅での

生活はできるが度々通帳を紛

失する

→(社協が通帳の保管・生活費

の管理を行います)

・福祉サービスの利用について

よく分からず、また、利用料

の支払いが上手くできない

→(社協が利用援助します)

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3-5 メリットとデメリットはどのようなことがありますか

A:

メリット デメリット

事業の実施主体は都道府県・政令指定都

市の社会福祉協議会ですが、実際の援助は

市区町村の社会福祉協議会が担当するの

で、地域に密着した利用者にふさわしいサ

ポートが期待できます。

契約も利用者本人に契約を結ぶだけの判断

能力があれば、比較的簡単に結ぶことがで

き、手軽に利用することができます。また、

利用者はいつでも契約内容の変更や解約を

申し出ることが可能です。

成年後見制度と異なり、不動産の売却や施

設入所の代理契約など、日常的な生活援助の

範囲を越えた事柄についてのサポートはでき

ません。

また、取消権がないため悪質商法などの財

産侵害に対しては、完璧に利用者を保護する

ことは困難です。それ以上の支援が必要な場

合は、成年後見制度を利用することを考える

必要があります。

3-6 施設入所者は利用することができますか

A:在宅の人に限らず、老人ホームなどの施設入所者や入院患者も利用することができます。

専門員や生活支援員が定期的に訪問し、施設での生活やサービスに関する情報提供、相談、

助言、利用料の支払い等をサポートしてくれます。

3-7 同居の家族がいても利用することはできますか

A:できます。家族に頼らず、利用する方もみえます。

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参考資料

1 高齢者虐待防止法 ······································· P86~93

2 高齢者虐待対応に関する社会資源 ······················· P94~96

警察署(生活安全課)

DV 相談機関

弁護士等相談機関

無料定額診療事業実施医療機関

3 認知症に関する社会資源 ······························· P97

認知症介護電話相談

認知症病棟入院料算定病院

重度認知症患者デイ・ケア施設

4 その他社会資源 ······································· P98、99

成年後見制度関係相談機関

家庭裁判所

日常生活自立支援事業実施機関

5 情報提供 ············································· P100

認知症専門医・医療機関等

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1. 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律

(平成十七年十一月九日法律第百二十四号)

第一章 総則(第一条一第五条)

第二章 養護者による高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等(第六条一第十九条)

第三章 養介護施設従事者等による高齢者虐待の防止等(第二十条一第二十五条)

第四章 雑則(第二十六条一第二十八条)

第五章 罰則(第二十九条・第三十条)

附則

第一章 総則

(目的)

第一条 この法律は、高齢者に対する虐待が深刻な状況にあり、高齢者の尊厳の保持にとって

高齢者に対する虐待を防止することが極めて重要であること等にかんがみ、高齢者虐待の防

止等に関する国等の責務、高齢者虐待を受けた高齢者に対する保護のための措置、養護者の

負担の軽減を図ること等の養護者に対する養護者による高齢者虐待の防止に資する支援(以

下「養護者に対する支援」という。)のための措置等を定めることにより、高齢者虐待の防

止、養護者に対する支援等に関する施策を促進し、もって高齢者の権利利益の擁護に資する

ことを目的とする。

(定義)

第二条 この法律において「高齢者」とは、六十五歳以上の者をいう。

2 この法律において「養護者」とは、高齢者を現に養護する者であって養介護施設従事者等

(第五項第一号の施設の業務に従事する者及び同項第二号の事業において業務に従事する者

をいう。以下同じ。)以外のものをいう。

3 この法律において「高齢者虐待」とは、養護者による高齢者虐待及び養介護施設従事者等

による高齢者虐待をいう。

4 この法律において「養護者による高齢者虐待」とは、次のいずれかに該当する行為をいう。

一 養護者がその養護する高齢者について行う次に掲げる行為

イ 高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。

ロ 高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、養護者以外の同居人によるイ、

ハ又はニに掲げる行為と同様の行為の放置等養護を著しく怠ること。

ハ 高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を

与える言動を行うこと。

ニ 高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること。

ホ 養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から

不当に財産上の利益を得ること。

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5 この法律において「養介護施設従事者等による高齢者虐待」とは、次のいずれかに該当す

る行為をいう。

一 老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の三に規定する老人福祉施設若しく

は同法第二十九条第一項に規定する有料老人ホーム又は介護保険法(平成九年法律第百二十

三号)第八条第二十項に規定する地域密着型介護老人福祉施設、同条第二十四項に規定する

介護老人福祉施設、同条第二十五項に規定する介護老人保健施設、同条第二十六項に規定す

る介護療養型医療施設若しくは同法第百十五条の三十九第一項に規定する地域包括支援セン

ター(以下「養介護施設」という。)の業務に従事する者が、当該養介護施設に入所し、そ

の他当該養介護施設を利用する高齢者について行う次に掲げる行為

イ 高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。

ロ 高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置その他の高齢者を養護すべき職務

上の義務を著しく怠ること。

ハ 高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を

与える言動を行うこと。

ニ 高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること。

ホ 高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。

二 老人福祉法第五条の二第一項に規定する老人居宅生活支援事業又は介護保険法第八条第

一項に規定する居宅サービス事業、同条第十四項に規定する地域密着型サービス事業、同条

第二十一項に規定する居宅介護支援事業、同法第八条の二第一項に規定する介護予防サービ

ス事業、同条第十四項に規定する地域密着型介護予防サービス事業若しくは同条第十八項に

規定する介護予防支援事業(以下「養介護事業」という。)において業務に従事する者が、

当該養介護事業に係るサービスの提供を受ける高齢者について行う前号イからホまでに掲げ

る行為

(国及び地方公共団体の責務等)

第三条 国及び地方公共団体は、高齢者虐待の防止、高齢者虐待を受けた高齢者の迅速かつ適

切な保護及び適切な養護者に対する支援を行うため、関係省庁相互間その他関係機関及び民

間団体の間の連携の強化、民間団体の支援その他必要な体制の整備に努めなければならない。

2 国及び地方公共団体は、高齢者虐待の防止及び高齢者虐待を受けた高齢者の保護並びに養

護者に対する支援が専門的知識に基づき適切に行われるよう、これらの職務に携わる専門的

な人材の確保及び資質の向上を図るため、関係機関の職員の研修等必要な措置を講ずるよう

努めなければならない。

3 国及び地方公共団体は、高齢者虐待の防止及び高齢者虐待を受けた高齢者の保護に資する

ため、高齢者虐待に係る通報義務、人権侵犯事件に係る救済制度等について必要な広報その

他の啓発活動を行うものとする。

(国民の責務)

第四条 国民は、高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等の重要性に関する理解を深めると

ともに、国又は地方公共団体が講ずる高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等のための施

策に協力するよう努めなければならない。

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(高齢者虐待の早期発見等)

第五条 養介護施設、病院、保健所その他高齢者の福祉に業務上関係のある団体及び養介護施

設従事者等、医師、保健師、弁護士その他高齢者の福祉に職務上関係のある者は、高齢者虐

待を発見しやすい立場にあることを自覚し、高齢者虐待の早期発見に努めなければならない。

2 前項に規定する者は、国及び地方公共団体が講ずる高齢者虐待の防止のための啓発活動及

び高齢者虐待を受けた高齢者の保護のための施策に協力するよう努めなければならない。

第二章 養護者による高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等

(相談、指導及び助言)

第六条 市町村は、養護者による高齢者虐待の防止及び養護者による高齢者虐待を受けた高齢

者の保護のため、高齢者及び養護者に対して、相談、指導及び助言を行うものとする。

(養護者による高齢者虐待に係る通報等)

第七条 養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、当該高齢者の生

命又は身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに、これを市町村に通報しなければな

らない。

2 前項に定める場合のほか、養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した

者は、速やかに、これを市町村に通報するよう努めなければならない。

3 刑法(明治四十年法律第四十五号)の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の

規定は、前二項の規定による通報をすることを妨げるものと解釈してはならない。

第八条 市町村が前条第一項若しくは第二項の規定による通報又は次条第一項に規定する届出

を受けた場合においては、当該通報又は届出を受けた市町村の職員は、その職務上知り得た

事項であって当該通報又は届出をした者を特定させるものを漏らしてはならない。

(通報等を受けた場合の措置)

第九条 市町村は、第七条第一項若しくは第二項の規定による通報又は高齢者からの養護者に

よる高齢者虐待を受けた旨の届出を受けたときは、速やかに、当該高齢者の安全の確認その

他当該通報又は届出に係る事実の確認のための措置を講ずるとともに、第十六条の規定によ

り当該市町村と連携協力する者(以下「高齢者虐待対応協力者」という。)とその対応につ

いて協議を行うものとする。

2 市町村又は市町村長は、第七条第一項若しくは第二項の規定による通報又は前項に規定す

る届出があった場合には、当該通報又は届出に係る高齢者に対する養護者による高齢者虐待

の防止及び当該高齢者の保護が図られるよう、養護者による高齢者虐待により生命又は身体

に重大な危険が生じているおそれがあると認められる高齢者を一時的に保護するため迅速に

老人福祉法第二十条の三に規定する老人短期入所施設等に入所させる等、適切に、同法第十

条の四第一項若しくは第十一条第一項の規定による措置を講じ、又は、適切に、同法第三十

二条の規定により審判の請求をするものとする。

(居室の確保)

第十条 市町村は、養護者による高齢者虐待を受けた高齢者について老人福祉法第十条の四

第一項第三号又は第十一条第一項第一号若しくは第二号の規定による措置を採るために必要

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な居室を確保するための措置を講ずるものとする。

(立入調査)

第十一条 市町村長は、養護者による高齢者虐待により高齢者の生命又は身体に重大な危険が

生じているおそれがあると認めるときは、介護保険法第百十五条の三十九第二項の規定によ

り設置する地域包括支援センターの職員その他の高齢者の福祉に関する事務に従事する職員

をして、当該高齢者の住所又は居所に立ち入り、必要な調査又は質問をさせることができる。

2 前項の規定による立入り及び調査又は質問を行う場合においては、当該職員は、その身分

を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入り及び調査又は質問を行う権限は、犯罪捜査のために認められた

ものと解釈してはならない。

(警察署長に対する援助要請等)

第十二条 市町村長は、前条第一項の規定による立入り及び調査又は質問をさせようとする場

合において、これらの職務の執行に際し必要があると認めるときは、当該高齢者の住所又は

居所の所在地を管轄する警察署長に対し援助を求めることができる。

2 市町村長は、高齢者の生命又は身体の安全の確保に万全を期する観点から、必要に応じ適

切に、前項の規定により警察署長に対し援助を求めなければならない。

3 警察署長は、第一項の規定による援助の求めを受けた場合において、高齢者の生命又は身

体の安全を確保するため必要と認めるときは、速やかに、所属の警察官に、同項の職務の執

行を援助するために必要な警察官職務執行法(昭和二十三年法律第百三十六号)その他の法

令の定めるところによる措置を講じさせるよう努めなければならない。

(面会の制限)

第十三条 養護者による高齢者虐待を受けた高齢者について老人福祉法第十一条第一項第二号

又は第三号の措置が採られた場合においては、市町村長又は当該措置に係る養介護施設の長

は、養護者による高齢者虐待の防止及び当該高齢者の保護の観点から、当該養護者による高

齢者虐待を行った養護者について当該高齢者との面会を制限することができる。

(養護者の支援)

第十四条 市町村は、第六条に規定するもののほか、養護者の負担の軽減のため、養護者に対

する相談、指導及び助言その他必要な措置を講ずるものとする。

2 市町村は、前項の措置として、養護者の心身の状態に照らしその養護の負担の軽減を図る

ため緊急の必要があると認める場合に高齢者が短期間養護を受けるために必要となる居室を

確保するための措置を講ずるものとする。

(専門的に従事する職員の確保)

第十五条 市町村は、養護者による高齢者虐待の防止、養護者による高齢者虐待を受けた高齢

者の保護及び養護者に対する支援を適切に実施するために、これらの事務に専門的に従事す

る職員を確保するよう努めなければならない。

(連携協力体制)

第十六条 市町村は、養護者による高齢者虐待の防止、養護者による高齢者虐待を受けた高齢

者の保護及び養護者に対する支援を適切に実施するため、老人福祉法第二十条の七の二第一

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項に規定する老人介護支援センター、介護保険法第百十五条の三十九第三項の規定により設

置された地域包括支援センターその他関係機関、民間団体等との連携協力体制を整備しなけ

ればならない。この場合において、養護者による高齢者虐待にいつでも迅速に対応すること

ができるよう、特に配慮しなければならない。

(事務の委託)

第十七条 市町村は、高齢者虐待対応協力者のうち適当と認められるものに、第六条の規定に

よる相談、指導及び助言、第七条第一項若しくは第二項の規定による通報又は第九条第一項

に規定する届出の受理、同項の規定による高齢者の安全の確認その他通報又は届出に係る事

実の確認のための措置並びに第十四条第一項の規定による養護者の負担の軽減のための措置

に関する事務の全部又は一部を委託することができる。

2 前項の規定による委託を受けた高齢者虐待対応協力者若しくはその役員若しくは職員又

はこれらの者であった者は、正当な理由なしに、その委託を受けた事務に関して知り得た秘

密を漏らしてはならない。

3 第一項の規定により第七条第一項若しくは第二項の規定による通報又は第九条第一項に

規定する届出の受理に関する事務の委託を受けた高齢者虐待対応協力者が第七条第一項若し

くは第二項の規定による通報又は第九条第一項に規定する届出を受けた場合には、当該通報

又は届出を受けた高齢者虐待対応協力者又はその役員若しくは職員は、その職務上知り得た

事項であって当該通報又は届出をした者を特定させるものを漏らしてはならない。

(周知)

第十八条 市町村は、養護者による高齢者虐待の防止、第七条第一項若しくは第二項の規定に

よる通報又は第九条第一項に規定する届出の受理、養護者による高齢者虐待を受けた高齢者

の保護、養護者に対する支援等に関する事務についての窓口となる部局及び高齢者虐待対応

協力者の名称を明示すること等により、当該部局及び高齢者虐待対応協力者を周知させなけ

ればならない。

(都道府県の援助等)

第十九条 都道府県は、この章の規定により市町村が行う措置の実施に関し、市町村相互間の

連絡調整、市町村に対する情報の提供その他必要な援助を行うものとする。

2 都道府県は、この章の規定により市町村が行う措置の適切な実施を確保するため必要があ

ると認めるときは、市町村に対し、必要な助言を行うことができる。

第三章 養介護施設従事者等による高齢者虐待の防止等

(養介護施設従事者等による高齢者虐待の防止等のための措置)

第二十条 養介護施設の設置者又は養介護事業を行う者は、養介護施設従事者等の研修の実施、

当該養介護施設に入所し、その他当該養介護施設を利用し、又は当該養介護事業に係るサー

ビスの提供を受ける高齢者及びその家族からの苦情の処理の体制の整備その他の養介護施設

従事者等による高齢者虐待の防止等のための措置を講ずるものとする。

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(養介護施設従事者等による高齢者虐待に係る通報等)

第二十一条 養介護施設従事者等は、当該養介護施設従事者等がその業務に従事している養介

護施設又は養介護事業(当該養介護施設の設置者若しくは当該養介護事業を行う者が設置す

る養介護施設又はこれらの者が行う養介護事業を含む。)において業務に従事する養介護施

設従事者等による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合は、速やかに、これ

を市町村に通報しなければならない。

2 前項に定める場合のほか、養介護施設従事者等による高齢者虐待を受けたと思われる高齢

者を発見した者は、当該高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに、

これを市町村に通報しなければならない。

3 前二項に定める場合のほか、養介護施設従事者等による高齢者虐待を受けたと思われる高

齢者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報するよう努めなければならない。

4 養介護施設従事者等による高齢者虐待を受けた高齢者は、その旨を市町村に届け出ること

ができる。

5 第十八条の規定は、第一項から第三項までの規定による通報又は前項の規定による届出の

受理に関する事務を担当する部局の周知について準用する。

6 刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第一項から第三項まで

の規定による通報(虚偽であるもの及び過失によるものを除く。次項において同じ。)をす

ることを妨げるものと解釈してはならない。

7 養介護施設従事者等は、第一項から第三項までの規定による通報をしたことを理由として、

解雇その他不利益な取扱いを受けない。

第二十二条 市町村は、前条第一項から第三項までの規定による通報又は同条第四項の規定に

よる届出を受けたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該通報又は届出に係る養

介護施設従事者等による高齢者虐待に関する事項を、当該養介護施設従事者等による高齢者

虐待に係る養介護施設又は当該養介護施設従事者等による高齢者虐待に係る養介護事業の事

業所の所在地の都道府県に報告しなければならない。

2 前項の規定は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項

の指定都市及び同法第二百五十二条の二十二第一項の中核市については、厚生労働省令で定

める場合を除き、適用しない。

第二十三条 市町村が第二十一条第一項から第三項までの規定による通報又は同条第四項の規

定による届出を受けた場合においては、当該通報又は届出を受けた市町村の職員は、その職

務上知り得た事項であって当該通報又は届出をした者を特定させるものを漏らしてはならな

い。都道府県が前条第一項の規定による報告を受けた場合における当該報告を受けた都道府

県の職員についても、同様とする。

(通報等を受けた場合の措置)

第二十四条 市町村が第二十一条第一項から第三項までの規定による通報若しくは同条第四項

の規定による届出を受け、又は都道府県が第二十二条第一項の規定による報告を受けたとき

は、市町村長又は都道府県知事は、養介護施設の業務又は養介護事業の適正な運営を確保す

ることにより、当該通報又は届出に係る高齢者に対する養介護施設従事者等による高齢者虐

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待の防止及び当該高齢者の保護を図るため、老人福祉法又は介護保険法の規定による権限を

適切に行使するものとする。

(公表)

第二十五条 都道府県知事は、毎年度、養介護施設従事者等による高齢者虐待の状況、養介護

施設従事者等による高齢者虐待があった場合にとった措置その他厚生労働省令で定める事項

を公表するものとする。

第四章 雑則

(調査研究)

第二十六条 国は、高齢者虐待の事例の分析を行うとともに、高齢者虐待があった場合の適切

な対応方法、高齢者に対する適切な養護の方法その他の高齢者虐待の防止、高齢者虐待を受

けた高齢者の保護及び養護者に対する支援に資する事項について調査及び研究を行うものと

する。

(財産上の不当取引による被害の防止等)

第二十七条 市町村は、養護者、高齢者の親族又は養介護施設従事者等以外の者が不当に財産

上の利益を得る目的で高齢者と行う取引(以下「財産上の不当取引」という。)による高齢

者の被害について、相談に応じ、若しくは消費生活に関する業務を担当する部局その他の関

係機関を紹介し、又は高齢者虐待対応協力者に、財産上の不当取引による高齢者の被害に係

る相談若しくは関係機関の紹介の実施を委託するものとする。

2 市町村長は、財産上の不当取引の被害を受け、又は受けるおそれのある高齢者について、

適切に、老人福祉法第三十二条の規定により審判の請求をするものとする。

(成年後見制度の利用促進)

第二十八条 国及び地方公共団体は、高齢者虐待の防止及び高齢者虐待を受けた高齢者の保護

並びに財産上の不当取引による高齢者の被害の防止及び救済を図るため、成年後見制度の周

知のための措置、成年後見制度の利用に係る経済的負担の軽減のための措置等を講ずること

により、成年後見制度が広く利用されるようにしなければならない。

第五章 罰則

第二十九条 第十七条第二項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に

処する。

第三十条 正当な理由がなく、第十一条第一項の規定による立入調査を拒み、妨げ、若しくは

忌避し、又は同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、若しく

は高齢者に答弁をさせず、若しくは虚偽の答弁をさせた者は、三十万円以下の罰金に処する。

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附 則

(施行期日)

1 この法律は、平成十八年四月一日から施行する。

(検討)

2 高齢者以外の者であって精神上又は身体上の理由により養護を必要とするものに対する

虐待の防止等のための制度については、速やかに検討が加えられ、その結果に基づいて必要

な措置が講ぜられるものとする。

3 高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等のための制度については、この法律の施行後三

年を目途として、この法律の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必

要な措置が講ぜられるものとする。

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2. 高齢者虐待対応に関する社会資源

◆警察署生活安全課(暴力・告訴・保護命令に関することなど)◆

警察署名 電話番号 担当地域

千種 052-753-0110 名古屋市千種区

東 052-936-0110 名古屋市東区

北 052-981-0110 名古屋市北区

西 052-531-0110 名古屋市西区

中村 052-452-0110 名古屋市中村区

中 052-241-0110 名古屋市中区

昭和 052-852-0110 名古屋市昭和区

瑞穂 052-842-0110 名古屋市瑞穂区

熱田 052-671-0110 名古屋市熱田区

中川 052-354-0110 名古屋市中川区

南 052-822-0110 名古屋市南区

港 052-661-0110 名古屋市港区

緑 052-621-0110 名古屋市緑区

名東 052-778-0110 名古屋市名東区

天白 052-802-0110 名古屋市天白区

守山 052-798-0110 名古屋市守山区、尾張旭市

愛知 0561-39-0110 豊明市、日進市、東郷町、長久手町

瀬戸 0561-82-0110 瀬戸市

春日井 0568-56-0110 春日井市

小牧 0568-72-0110 小牧市

西枇杷島 052-501-0110 清須市、北名古屋市、豊山町

江南 0587-56-0110 江南市、岩倉市、大口町

犬山 0568-61-0110 犬山市、扶桑町

一宮 0586-24-0110 一宮市

稲沢 0587-32-0110 稲沢市

津島 0567-24-0110 津島市、愛西市、あま市、大治町

蟹江 0567-95-0110 弥富市、蟹江町、飛島村

半田 0569-21-0110 半田市、阿久比町、武豊町、東浦町、南知多町、美浜町

東海 0562-33-0110 東海市、大府市

知多 0562-36-0110 知多市

常滑 0569-35-0110 常滑市

刈谷 0566-22-0110 刈谷市

碧南 0566-46-0110 碧南市、高浜市

94

(2011 年 3 月現在)

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◆警察署生活安全課(暴力・告訴・保護命令に関することなど)◆

警察署名 電話番号 担当地域

安城 0566-76-0110 安城市、知立市

西尾 0563-57-0110 西尾市、一色町、吉良町、幡豆町

岡崎 0564-58-0110 岡崎市、幸田町

豊田 0565-35-0110 豊田市(旧東加茂郡を除く)、みよし市

足助 0565-62-0110 豊田市(足助地区、下山地区、旭地区、稲武地区)

設楽 0536-62-0110 設楽町、東栄町、豊根村

新城 0536-22-0110 新城市

豊川 0533-89-0110 豊川市

蒲郡 0533-68-0110 蒲郡市

豊橋 0532-54-0110 豊橋市

田原 0531-23-0110 田原市

【愛知県】

施設名 電話番号 所在地

愛知県女性相談センター 052-913-1101 名古屋市北区大野町 2-4

尾張駐在室 052-961-7211 名古屋市中区三の丸 2-6-1

海部駐在室 0567-24-2111 津島市西柳原町 1-14

知多駐在室 0569-31-0121 半田市出口町 1-45-4

西三河駐在室 0564-27-2719 岡崎市明大寺本町 1-4

豊田加茂駐在室 0565-33-0294 豊田市錦町 1-22-1

新城設楽駐在室 0536-23-2111 新城市字石名号 20-1

東三河駐在室 0532-54-5111 豊橋市八町通 5-4

※各駐在室では、女性相談員が市町村に出かけて「定例出張相談」を行っています。

市町村の規模により異なりますが、毎週 2 回~月 1回の頻度です。

【名古屋市】

施設名 電話番号

名古屋市配偶者暴力相談支援センター 052-351-5388

(愛知県女性相談センター(配偶者暴力相談支援センター)「市町村向け 事例による DV 相談マニュアル」平成 18 年より)

◆DV相談機関◆

「DV防止法」では、各都道府県にDV被害者の相談を受け、必要な援助を行う

「配偶者暴力相談支援センター」を置くことになっています。

愛知県では、愛知県女性相談センター及び 7ヶ所の駐在室がこの機能を果たしています。

(2011 年 3 月現在)

95

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◆弁護士等相談機関◆(法律、権利擁護に関することなど)

愛知県弁護士会 アイズ

( http://www.aiben.jp/page/frombars/katudou/k-09aiz/aiz_00.html)

来所相談 052-252-0044(名古屋法律相談センター)

相談料(30 分):5,250 円(消費税込み)

予約受付:月曜日~金曜日 10:00~19:00

土・日・祝日 10:00~16:30

所在地:〒460-0008 名古屋市中区栄 4-1-1 中日ビル3階

出張相談 052-203-2677(アイズ事務局)

原則として弁護士 2 人で出張します。

相談料は 1回弁護士 1人あたり 10,500 円(消費税込み)交通費・実費別

予約受付:月曜日~金曜日 10:00~16:00

電話相談 052-252-0018(相談専用電話)

無料、15 分程度の簡単な相談が原則

受付時間:毎週火・木曜日(祝日を除く)10:15~13:00

福祉関係者向けファックス相談「ほっとくん」 専用 FAX 052-203-2677

※無料、原則 48 時間以内に電話又は FAX で回答します。

但し休前日、年末年始をはさむ場合はこの限りではありません。

受付:月曜日~金曜日 10:00~16:00

相談申込書のダウンロード:

( http://www.aiben.jp/page/frombars/katudou/k-09aiz/2_Hot_moushikomi.pdf)

◆無料低額診療事業実施医療機関(医療費の支払いに関すること)◆

低所得者(住民税非課税世帯等)などで経済的、社会的理由により医療費の支払いが困難

な方に対しては、社会福祉法第 2条第 3項の規定に基づき、医療費を減免(無料・低額診療)

する病院があります。利用方法や減免金額等は病院によって異なりますので、事前に各病院

の医療ソーシャルワーカーに相談し、調整しておく必要があります。

県内では次の 3ヶ所の医療機関が無料低額診療事業を実施しています。

施設名 電話番号 所在地

愛知県済生会病院 052-571-5251 名古屋市西区栄生一丁目 1番 18 号

聖霊病院 052-832-1181 名古屋市昭和区川名山町 56 番地

名古屋掖済会病院 052-652-7711 名古屋市中川区松年町 4-66

(2011 年 3 月現在)

96

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3.認知症に関する社会資源

◆認知症介護電話相談◆

認知症に関する悩み事の電話相談を受けています。

愛知県認知症電話相談 0562-31-1911(認知症の人と家族の会・愛知県支部)

相談時間:月曜日~金曜日 / 10:00~16:00 ※祝日、年末年始は除く

介護に関する悩み事の相談を受けています。

介護支え合い相談 0120-070-608(社会福祉法人 浴風会)

FAX 0120-502-588 (24 時間受付)

相談時間:月曜日~金曜日 / 10:00~15:00 ※祝日、年末年始は除く

若年性認知症に関する悩み事の電話相談を受けています。

若年性認知症の電話無料相談 0800-100-2707(認知症介護研究・研修大府センター)

相談時間:月曜日~土曜日 / 10:00~15:00 ※祝日、年末年始は除く

◆認知症病棟入院料算定病院◆

精神症状や問題行動が著しい認知症の高齢者を専門的に治療する病棟を持っている病院

です。

施設名 電話番号 所在地

仁大病院 0565-45-0110 豊田市猿投町入道 3-5

共和病院 0562-46-2222 大府市梶田町 2-123

七宝病院 052-443-7800 あま市七宝町下田矢倉下 1432

桶狭間病院

藤田こころケアセンター 0562-97-1361 豊明市栄町南舘 3-879

あさひが丘ホスピタル 0568-88-0284 春日井市神屋町字地福 1295-31

いまいせ心療センター 0586-45-2531 一宮市今伊勢町宮後字郷中茶原 30

◆重度認知症患者デイ・ケア施設◆

在宅の認知症の高齢者の生活機能を回復させるための訓練や家族に対する介護指導等

を実施する施設です。

施設名 電話番号 所在地

大府病院 0562-83-3161 知多郡東浦町森岡字上源吾1

仁大病院 0565-45-0110 豊田市猿投町入道 3-5

(愛知県「介護保険・高齢者福祉ガイドブック 平成 22 年度版」より)

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4.その他社会資源

◆成年後見制度関係相談機関【相談機関/成年後見人等推薦・支援団体】◆

アイズ 052-203-2677(愛知県弁護士会高齢者・障害者総合支援センター)

〒460-0002 名古屋市中区三の丸一丁目 4番 2 号 愛知県弁護士会館内

受付時間:月曜日~金曜日 10:00~16:00

リーガルサポートセンター愛知支部 052-683-6696

(社団法人成年後見センター・リーガルサポート)

〒456-0018 名古屋市熱田区新尾頭一丁目 12 番 3 号 愛知県司法書士会館

受付時間:月曜日~金曜日 10:00~15:00 ※電話相談のみ(面談不可)

愛知ぱあとなあセンター 052-264-0696(社団法人 愛知県社会福祉士会)

FAX : 052-264-0695

〒460-0012 名古屋市中区千代田 5-21-3 サンマンション鶴舞 402 号

受付時間:月曜日~金曜日 10:00~17:00(12:00~13:00 除く)

法テラス愛知 050-3383-5460

〒460-0008 名古屋市中区栄 4-1-8 栄サンシティ―ビル 15F

受付時間:月曜日~金曜日 9:00~17:00

法テラス三河 050-3383-5465

〒444-8601 岡崎市十王町 2-9 岡崎市役所西庁舎 1F

受付時間:月曜日~金曜日 9:00~17:00

法テラスコールセンター 0570-078-374 (http://www.houterasu.or.jp/)

受付時間:月曜日~金曜日 9:00~21:00

土曜日 9:00~17:00

◆家庭裁判所◆

裁判所名・支部名 電話番号

名古屋家庭裁判所 052-223-3411(代表)

名古屋家庭裁判所 一宮支部 0586-73-3191(庶務課)

名古屋家庭裁判所 半田支部 0569-21-1610(庶務係)

名古屋家庭裁判所 岡崎支部 0564-51-8972(庶務課)

名古屋家庭裁判所 豊橋支部 0532-52-3212(庶務課)

(2011 年 3 月現在)

98

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◆日常生活自立支援事業実施機関◆(愛知県基幹的社会福祉協議会等)

【愛知県】

基幹型社会福祉協議会名 電話番号 担当地域

豊橋市社会福祉協議会 0532-54-0294 豊橋市、田原市

岡崎市社会福祉協議会 0564-23-8938 岡崎市、幸田町

一宮市社会福祉協議会 0586-24-2940 一宮市、稲沢市

瀬戸市社会福祉協議会 0561-84-2011 瀬戸市、尾張旭市、豊明市、日進市、

東郷町、長久手町

半田市社会福祉協議会 0569-23-7361 半田市、阿久比町、南知多町、美浜町、

武豊町

春日井市社会福祉協議会 0568-85-4321 春日井市、犬山市

豊川市社会福祉協議会 0533-85-2157 豊川市、蒲郡市

津島市社会福祉協議会 0567-25-8411 津島市、愛西市、弥富市、あま市、

大治町、蟹江町、飛島村

豊田市社会福祉協議会 0565-32-4341 豊田市、みよし市

安城市社会福祉協議会 0566-72-0123 安城市、碧南市、刈谷市、知立市、

高浜市

西尾市社会福祉協議会 0563-56-5900 西尾市、一色町、吉良町、幡豆町

常滑市社会福祉協議会 0569-34-4018 常滑市、東海市、大府市、知多市、

東浦町

小牧市社会福祉協議会 0568-77-0123 小牧市、江南市、岩倉市、大口町、

扶桑町

新城市社会福祉協議会 0536-23-5618 新城市、設楽町、東栄町、豊根村

北名古屋市社会福祉協議会 0568-22-1111 北名古屋市、清須市、豊山町

【名古屋市】

基幹型社会福祉協議会名 電話番号 担当地域

障害者・高齢者権利擁護

センター 052-678-3030

昭和区、瑞穂区、熱田区、中川区、

港区、南区、緑区、天白区

障害者・高齢者権利擁護

センター北部事業所 052-919-7584

千種区、東区、北区、西区、中村区、

中区、守山区、名東区

【その他】

基幹型社会福祉協議会名 電話番号 担当地域

AJU自立の家ほかっと軒 052-841-5768 愛知県内全域

(2011年3月時点)

99

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5.情報提供

◆認知症専門医・医療機関◆

①日本認知症学会(http://dementia.umin.jp/)

学会会員の中で認知症診療において十分な経験と知識を有し本学会の審査に合格した医師

を、認知症学会専門医として認定し本学会 web ページ等で公開しています。

②日本老年精神医学会 (http://www.rounen.org/) 老年精神医学についての優れた学識、高度な技能、倫理観を備えた臨床医を、日本老年精

神医学会が認定した資格であり、『高齢者のこころと病と認知症』に関する専門医として位

置づけられています。

(2011 年 3 月現在)

愛知県では、「認知症サポート医養成研修修了者」と「かかりつけ医認知症対応力向上研

修修了者」の名簿(平成 18 年~20 年分)を各市町村の介護保険担当課に配布しています。

平成 21 年度以降につきましては、愛知県医師会のホームページをご覧下さい。

(http://wwwinfo.aichi.med.or.jp/kenmin/kaigo/index.html)

◆「認知症サポート医養成研修修了者」とは、愛知県の「認知症サポート医養成研修」を修

了した医師であり、次の 3つの役割を持っています。

①かかりつけ医を対象とした認知症対応力の向上を図るための研修の企画立案

②かかりつけ医の認知症診断等に関する相談役・アドバイザーとなるほか、他の認知症サポ

ート医との連携体制の構築

③各地域医師会と地域包括支援センターとの連携づくりへの協力

◆「かかりつけ医認知症対応力向上研修修了者」とは、「愛知県のかかりつけ医認知症対応

力向上研修」を修了し、認知症に関する正しい知識と理解を持ち、地域で認知症の人や家族

を支援することができる医師です。

(2011 年 3 月現在)

100

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様式集

1 高齢者への虐待発見チェックリスト ··························· P102、103

2 事実確認のための打ち合わせシート ··························· P104

3 事実確認チェックシート ····································· P105

4 虐待の有無・緊急性の判断シート ····························· P106

5 高齢者虐待対応支援計画書 ··································· P107

101

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高齢者への虐待発見チェックリスト

☆ 虐待が疑われる場合の高齢者の発する『サイン』として、以下のものがあります。複数

のものにあてはまると、疑いの度合いはより濃くなってきます。これらは例示ですので、

この他にも様々な『サイン』があることを認識しておく必要があります。

《身体的暴力による虐待サイン》

チェック欄 サイン例

身体に小さなキズが頻繁にみられる。

太腿の内側や上腕部の内側、背中等にキズやみみずばれがみられる。

回復状態が様々な段階のキズ、あざ等がある。

頭、顔、頭皮等にキズがある。

臀部や手のひら、背中等に火傷や火傷跡がある。

急におびえたり、恐ろしがったりする。

「怖いから家にいたくない」等の訴えがある。

キズやあざの説明のつじつまが合わない。

主治医や保健、福祉の担当者に話すことや援助を受けることに躊躇する。

主治医や保健、福祉の担当者に話す内容が変化し、つじつまがあわない。

《心理的障害を与える虐待のサイン》

かきむしり、噛み付き、ゆすり等がみられる。

不規則な睡眠(悪夢、眠ることへの恐怖、過度の睡眠等)を訴える。

身体を萎縮させる。

おびえる、わめく、泣く、叫ぶなどの症状がみられる。

食欲の変化が激しく、摂食障害(過食、拒食)がみられる。

自傷行為がみられる。

無力感、あきらめ、投げやりな様子になる。

《性的暴力による虐待のサイン》

不自然な歩行や座位を保つことが困難になる。

肛門や性器からの出血やキズがみられる。

生殖器の痛み、かゆみを訴える。

急に怯えたり、恐ろしがったりする。

ひと目を避けるようになり、多くの時間を一人で過ごすことが増える。

主治医や保健、福祉の担当者に話すことや援助を受けることに躊躇する。

主治医や保健、福祉の担当者に話す内容が変化し、つじつまが合わない。

睡眠障害がある。

《経済的虐待のサイン》

年金や財産収入等があることは明白なのにもかかわらず、お金がないと訴える。

自由に使えるお金がないと訴える。

経済的に困っていないのに、利用負担のあるサービスを利用したがらない。

お金があるのにサービスの利用料や生活費の支払いができない。

資産の保有状況と衣食住等生活状況との落差が激しくなる。

預貯金が知らないうちに引き出された、通帳がとられたと訴える。

102

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《介護等日常生活上の世話の放棄、拒否、怠慢による虐待(自己放任含む)のサイン》

居住部屋、住居が極めて非衛生的になっている、また異臭を放っている。

部屋に衣類やおむつ等が散乱している。

寝具や衣服が汚れたままの場合が多くなる。

汚れたままの下着を身につけるようになる。

かなりのじょくそう(褥創)ができてきている。

身体からかなりの異臭がするようになってきている。

適度な食事を準備されていない。

不自然に空腹を訴える場面が増えてきている。

栄養失調の状態にある。

疾患の症状が明白にもかかわらず、医師の診断を受けていない。

《家族の状況に見られるサイン》

高齢者に対して冷淡な態度や無関心さがみられる。

高齢者の世話や介護に対する拒否的な発言がしばしばみられる。

他人の助言を聞き入れず、不適切な介護方法へのこだわりがみられる。

高齢者の健康や疾患に関心がなく、医師への受診や入院の勧めを拒否する。

高齢者に対して過度に乱暴な口のきき方をする。

経済的に余裕があるように見えるのに、高齢者に対してお金をかけようとしない。

保健、福祉の担当者と会うのを嫌うようになる。

《地域からのサイン》

自宅から高齢者本人や介護者・家族の怒鳴り声や悲鳴、物が投げられる音が聞こ

える。

昼間でも雨戸が閉まっている。

庭や家屋の手入れがされていない、または放置の様相(草が生い茂る、壁のペン

キがはげている、ゴミが捨てられている)を示している

郵便受けや玄関先等が、1週間前の手紙や新聞で一杯になっていたり、電気メー

ターがまわっていない。

電気、ガス、水道が止められていたり、新聞、テレビの受信料、家賃等の支払い

を滞納している。

気候や天気が悪くても、高齢者が長時間外にいる姿がしばしばみられる。

家族と同居している高齢者が、コンビニやスーパー等で、一人分のお弁当等を頻

繁に買っている。

近所づきあいがなく、訪問しても高齢者に会えない、または嫌がられる。

配食サービス等の食事がとられていない。

薬や届けた物が放置されている。

道路に座り込んでいたり、徘徊している。

《その他のサイン》

通常の生活行動に不自然な変化がみられる。

体重が不自然に増えたり、減ったりする。

ものごとや自分の周囲に関して、極度に無関心になる。

睡眠障害がみられる。

出展:愛知県高齢者虐待対応マニュアル総論編

103

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関与

104

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事実確認チェックシート

※1:「相談」:相談・通報があった内容に○をつける。「確認日」:市町村および地域包括支援センター職員が確認した日付を記入。※2:太字の項目が確認された場合は、『緊急保護の検討』が必要。相談 確認日 確認項目 サイン:当てはまるものがあれば○で囲み、他に気になる点があれば(  )に簡単に記入 確認方法

頭部外傷(血腫、骨折等の疑い)、腹部外傷、重度の褥そう、その他(  )

部位:           大きさ:                

全身状態・意識レベル 全身衰弱、意識混濁、その他(           )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

脱水症状 重い脱水症状、脱水症状の繰り返し、軽い脱水症状、その他(       )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

栄養状態等 栄養失調、低栄養・低血糖の疑い、その他(           )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

身体に複数のあざ、頻繁なあざ、やけど、刺し傷、打撲痕・腫張、床ずれ、その他(     )

部位:           大きさ:        色:        

体重の増減 急な体重の減少、やせすぎ、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

出血や傷の有無 生殖器等の傷、出血、かゆみの訴え、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

その他1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

衣服・寝具の清潔さ 着の身着のまま、濡れたままの下着、汚れたままのシーツ、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

身体の清潔さ 身体の異臭、汚れのひどい髪、皮膚の潰瘍、のび放題の爪、その他(       )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

適切な食事菓子パンのみの食事、余所ではガツガツ食べる、拒食や過食が見られる、その他(            )

1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

適切な睡眠 不眠の訴え、不規則な睡眠、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

行為の制限自由に外出できない、自由に家族以外の人と話すことができない、長時間家の外に出されている、その他(    )

1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

不自然な状況資産と日常生活の大きな落差、食べる物にも困っている、年金通帳・預貯金通帳がない、その他(      )

1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

住環境の適切さ 異臭がする、極度に乱雑、ベタベタした感じ、暖房の欠如、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

その他1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

恐怖や不安の訴え 「怖い」「痛い」「怒られる」「殴られる」などの発言、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

保護の訴え「殺される」「○○が怖い」「何も食べていない」「家にいたくない」「帰りたくない」などの発言、その他(         )

1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

強い自殺念慮 「死にたい」などの発言、自分を否定的に話す、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

あざや傷の説明 つじつまが合わない、求めても説明しない、隠そうとする、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

金銭の訴え「お金をとられた」「年金が入ってこない」「貯金がなくなった」などの発言、その他(       )

1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

性的事柄の訴え 「生殖器の写真を撮られた」などの発言、その他(          )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

話のためらい 関係者に話すことをためらう、話す内容が変化、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

その他1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

おびえ、不安 おびえた表情、急に不安がる、怖がる、人目を避けたがる、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

無気力さ 無気力な表情、問いかけに無反応、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

態度の変化家族のいる場面いない場面で態度が異なる、なげやりな態度、急な態度の変化、その他(        )

1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

その他1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

適切な医療の受診 家族が受診を拒否、受診を勧めても行った気配がない、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

適切な服薬の管理本人が処方されていない薬を服用、処方された薬を適切に服薬できていない、その他(            )

1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

入退院の状況 入退院の繰り返し、救急搬送の繰り返し、その他(           )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

適切な介護等サービス必要であるが未利用、勧めても無視あるいは拒否、必要量が極端に不足、その他(            )

1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

支援のためらい・拒否 援助を受けたがらない、新たなサービスは拒否、その他(          )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

費用負担 サービス利用負担が突然払えなくなる、サービス利用をためらう、その他(       )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

その他1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

支援者への発言「何をするかわからない」「殺してしまうかもしれない」等の訴えがある、その他(          )

1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

保護の訴え 虐待者が高齢者の保護を求めている、その他(             )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

暴力、脅し等 刃物、ビンなど凶器を使った暴力や脅しがある、その他(             )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

高齢者に対する態度 冷淡、横柄、無関心、支配的、攻撃的、拒否的、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

高齢者への発言「早く死んでしまえ」など否定的な発言、コミュニケーションをとろうとしない、その他(            )

1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

支援者に対する態度援助の専門家と会うのを避ける、話したがらない、拒否的、専門家に責任転嫁、その他(         )

1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

精神状態・判断能力 虐待者の精神的不安定・判断力低下、非現実的な認識、その他(          )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

その他1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

参考: 社団法人日本社会福祉士会『高齢者虐待対応ソーシャルワークモデル実践ガイド』 ※確認方法の(   )には、確認した人を記入します。

養護者の態度等

適切な支援

話の内容

表情・態度

生活の状況

1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )4.聴き取り(   ) 5.その他( )

身体の状態・けが等

外傷等

あざや傷

105

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106

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107

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索引 索引 索引 索引 索引 索引 索引

アイズ(愛知県弁護士会) 77. 96. 98

愛知ぱあとなあセンター 77. 98

アセスメント 25. 48. 50. 62.

アルツハイマー型認知症 45. 46

一時保護 31

医療機関との連携 63

うつ状態 47

介護・世話の放棄・放任(ネグレクト) 2. 8. 56. 63. 64. 70

家族の心理の変化 53

家庭裁判所 75. 76. 77. 78. 83. 85. 98

基幹型社会福祉協議会 82. 98

記憶障害 45. 47

基本姿勢 2

虐待の有無 3. 4. 9. 16. 17. 18. 28. 37. 41

虐待の有無・緊急性の判断シート 19. 27. 106

虐待対応の終結 4. 23. 24. 25. 30. 32. 33. 35. 40. 44

共依存 31. 34

行政権限の行使 65

記録 35

緊急一時保護 56. 68. 73

緊急性の判断 3. 4. 9. 12. 13. 14. 16. 17. 18. 22. 28. 37. 41. 67. 72

警察署 853 94. 95

経済的虐待 2. 41. 56. 63. 67. 73

軽度認知障害(MCI) 45

幻覚・妄想 47

見当識障害 47

権利擁護 2. 7. 23. 26. 31. 57. 65. 70. 77

コアメンバ―会議 3. 4. 5. 10. 12. 16. 17. 18. 19. 21. 22. 23. 24. 25. 27. 28. 29. 37.

38. 41. 42. 43. 67. 72. 73

108

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コアメンバ―会議に向けた事実確認 4. 5. 23. 37. 42. 68

コアメンバ―会議の決定に基づく対応 4. 5. 23. 38. 43. 68

甲状腺機能低下症 46

興奮・暴力 47

高齢者への虐待発見チェックリスト 6. 102. 103

高齢者虐待対応支援計画書 19. 20. 26. 29

高齢者虐待防止体制のステージ 59. 60

高齢者虐待防止法 2. 13. 36. 55. 57. 61. 64. 65. 68. 70. 71. 72. 74. 85. 86

高齢者虐待防止ネットワーク 4. 23. 33

個別ケース会議 3. 23. 24. 25. 26. 27. 30. 39. 40. 43. 44. 68

個人情報保護法 64. 65. 73

コミュニケーション 48. 49.

支援方針 18. 19. 23. 30

支援計画 16. 17. 19. 20. 22. 23. 25. 26. 27. 30. 32. 33

自己放任(セルフネグレクト) 71

事実確認 9. 10. 11. 12. 13. 15. 18. 19. 38. 42. 66. 67. 68. 72

事実確認のための打ち合わせシート 11. 104

事実確認チェックシート 13. 14. 19. 105

市町村の役割 61. 65

市町村長申立て 57. 69. 73. 78. 79

失行 47

実行機能障害 47

失認 47

重度認知症デイ・ケア施設 85. 97

周辺(行動・心理)症状 45. 47

情報収集 12. 13

心理的ニーズ 48. 51. 52

初動期対応 4. 5

身体的虐待 2. 27. 37. 56. 64

心理的虐待 2. 56. 63

正常圧水頭症 46

性的虐待 2. 63

成年後見事件申立必要書類(チェックリスト) 79

成年後見制度 1. 31. 44. 57. 69. 73. 75. 76. 77. 80. 81. 83. 84. 92. 98

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成年後見制度利用支援事業 80

相談・通報の受付 4. 5. 6. 23. 35. 36. 41. 68. 70

相談内容の共有 4. 5. 9. 23. 37. 41

措置 24. 30. 31. 35. 68. 70. 71. 73. 74. 87. 88. 89. 90

立入調査 18. 65. 66. 89

立入調査権 65. 66

地域支援事業 2

地域データ 62

中核症状 47

DV相談機関 85. 95

DV防止法 68. 70

日常生活自立支援事業 1. 69. 82. 83. 98

任意後見制度 46. 75

認知症 1. 31. 36. 38. 39. 40. 41. 45. 46. 47. 48. 49. 50. 51. 52. 53. 54. 67. 68. 71

75. 77. 82. 83. 85. 97

認知症対応力向上研修終了者 100

認知症介護電話相談 85. 97

認知症サポート医養成研修修了者 100

認知症専門医・医療機関 85. 98

認知症病棟入院料算定病院 85. 97

脳血管性認知症 45. 46

脳腫瘍 46

パーソン・センタード・ケア 48. 52

徘徊 40. 46. 47. 50

ビタミン B12 欠乏症 46

不安・焦燥 47

不潔行為 47

110

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111

法定後見制度 75

法テラス(日本司法センター) 42. 80. 98

訪問調査 15

保健所 88. 29. 60

保健センター 10

保護・分離 18. 31. 32. 33

慢性硬膜下血腫 46

身元保証人 68. 74

民事法律扶助 80

無料定額診療事業 85. 96

面会制限 27. 67. 68. 74. 89

もの忘れ 45

やむを得ない事由による措置 5. 6. 24. 27. 30. 56. 65. 66. 67. 68. 73. 74

養護者 1. 2. 7. 8. 10. 13. 15. 17. 18. 23. 25. 26. 27. 30. 31. 33. 34. 36. 38. 55. 57.

59.65. 66. 67. 77. 86. 87. 88. 89. 90. 93

リーガルサポート(社団法人成年後見センター) 77. 98

理解・判断力の障害 47

レビー小体型認知症 45. 46

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参考文献

【高齢者虐待】

・加藤悦子『愛知県高齢者虐待対応マニュアル 総論編』愛知県 2007 年

・社団法人日本社会福祉士会 虐待対応ソーシャルワークモデル研究会『高齢者虐待対応ソーシャルワーク

モデル実践ガイド』中央法規出版 2010 年

・大渕修一『高齢者虐待対応・権利擁護実践ハンドブック』法研 2008 年

・池田直樹・谷村慎介・佐々木育子『Q&A 高齢者虐待対応の法律と実務』学陽書房 2007 年

・日本弁護士連合会高齢者・障害者の権利に関する委員会『高齢者虐待防止法活用ハンドブック』 民事法

研究会 2007 年

・高齢者虐待防止研究会(津村智惠子・大谷昭)『高齢者虐待に挑む<増補版>-発見、介入、予防の視点―』

中央法規出版 2006 年

・内閣府『平成 22 年度版高齢社会白書』佐伯出版 2010 年

・長江弘子・柳澤尚代『保健師必携 こう書けばわかる!保健師記録』医学書院 2004 年

【認知症】

・社会福祉法人 仁至会 認知症介護研究・研修大府センター

『「大府センター式」コミュニケーションパック』 2009 年

・NPO 法人 地域ケア政策ネットワーク 『キャラバンメイト養成テキスト』2009 年

・小長谷陽子『本人・家族のための若年認知症サポートブック』中央法規出版 2010 年

・特定非営利活動法人PASネット

『福祉専門職のための権利擁護支援ハンドブック』ミネルヴァ書房 2009 年

・本間昭・六角遼子『介護に役立つ!やさしくわかる認知症ケア』ナツメ社 2011 年

・三宅貴夫『認知症への対応がよくわかるQ&Aブック 認知症なんでも相談室』 日本医療企画 2010 年

・認知症介護研究・研修東京センター『認知症介護実践研修テキスト 図表で学ぶ 認知症の基礎知識』

中央法規出版 2009 年

【成年後見制度】【日常生活自立支援事業】

・[社]成年後見センター・リーガルサポート

『老後の財産管理 制度の上手な利用法』(今すぐ役立つ介護シリーズ➉)創元社 2010 年

・特定非営利活動法人 知多地域成年後見センター『今から考えたい成年後見Q&A』2008 年

・財団法人 長寿社会開発センター『地域包括支援センター業務マニュアル』2010 年

・「社団法人 愛知県社会福祉士会」http://www.aichi-acsw.or.jp/(2011/2/3)

・「社団法人 成年後見センター・リーガルサポート」http://www.legal-support.or.jp/ (2010/12/25)

・「愛知県弁護士会」http://www.aiben.jp/(2011/2/3)

・「法テラス」http://www.houterasu.or.jp/(2011/1/20)

・「長野県社会部地域福祉課 成年後見制度 市町村長申立ての手引き」

http://www.pref.nagano.lg.jp/syakai/comofuku/seinenkoken/tebiki.pdf(2011/2/17)

・「愛知県社会福祉協議会」http://www.aichi-fukushi.or.jp/(2010/12/25)

【その他】

・『介護保険・高齢者福祉 ガイドブック』愛知県 2010 年

・「厚生労働省」http://www.mhlw.go.jp/(2010/12/25)

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Page 116: 愛知県高齢者虐待対応マニュアルⅠ 高齢者虐待対応マニュアル(各論編)の活用にあたって 基本的な考え方 平成19年、愛知県では「愛知県高齢者虐待対応マニュアル(総論編と事例編)」を作成し

愛知県高齢者虐待対応マニュアル(各論編:初動期対応を中心として)

製作・発行 あいち介護予防支援センター

センター長 津下一代

木戸美代子、鮎川征一郎、石川裕哲、木全良子、村上智絵

〒470-2101 愛知県知多郡東浦町大字森岡源吾山 1-1

電話 0562-84-1177 FAX 0562-84-1660

E-mail [email protected]

協 力 湯原悦子(日本福祉大学)、石川敦男(実法(みのり)法律事務所)

塚本鋭裕(大府西包括支援センター)、認知症介護研究・研修大府センター

今井友乃(知多地域成年後見センター)、東浦町包括支援センター

常滑市地域包括支援センター、常滑市社会福祉協議会、

愛知県健康福祉部高齢福祉課

発行年月 平成23年3月