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小児科救急
平成30年2月8日 モーニングレクチャー
鳥取市立病院 小児科
藤井 宏美
目次
•小児科救急の特徴
•初期評価と初期対応
•代表的な症状
小児科救急の特徴
<救急外来>
•主な受診目的は・・・相談
「結果として」軽症が多い
• 「帰してはいけない児」 or 「帰してよい児」
「吐いた!熱ある!いつもと違う~」「これからどうなるの?」「どうすればいいの?」
+助言±処置
<病院内>
•状態の変化に気付き、対応する
いつもと違う?でも入院したから大丈夫かな
変化あり?なし?
朝まで観察可?
緊急コール?
いま検査?いま処置?
初期評価と初期対応
気付き、判断するために
【初期評価】
緊急度の把握(トリアージ)、一見の診断を行う
→ 第一印象「initial impression」(旧称PAT)
Appearance
Breathing
Circulation to skin
小児救急治療ガイドライン改訂第3版,2015,診断と治療社
Appearance 外観
頭文字TICLS、PALSなどいろいろ覚え方はあるが
「見た目が元気か、健康的か」
小児救急治療ガイドライン改訂第3版,2015,診断と治療社
ぐったりしていないか?視線は合うか?ぼんやりしていないか?
自分で座れるか?手足を動かしているか?興味を示すか?遊んでいるか?
保護者があやして落ち着くか?優しくして落ち着くか?
会話は可能か?泣き方は弱くないか?かすれ声でないか?診察に抵抗するか?
initial impression
それぞれのいつも通り
少し大人な会話
落ち着いて座る
指示に従える
声掛けで落ち着ける
緊張して固くなる
不安で泣く
つらくて泣く
褒められて得意げ
会話ができる
階段をのぼる
走る
単語が出る
歩く
よたよた歩く
伝い歩きする
独り立ちする
つかまり立ちする
ハイハイする
四つ這いになる
母から離すと泣く
安定して座る
ぐらぐら座る
寝返りする
片側だけ寝返りする
おもちゃを握る
手を顔の前で合わせる
首がぐらぐらしない
なんだか言っている
追視する
固視する
抱っこで揺らすと寝る
手足をばたばたする
Breathing 呼吸状態
小児救急治療ガイドライン改訂第3版,2015,診断と治療社
呼吸数喘鳴(ゼーゼー)、咳嗽(コンコン、ケンケン)
肩呼吸シーソー呼吸(胸と腹が交互に波打つ)陥没呼吸(鎖骨上窩、胸骨上窩、肋間、心窩部)呻吟(うーうー)鼻翼呼吸(鼻の穴がぴくぴく)
※できれば服をまくり上げて確認する
「違和感を感じるか」
initial impression
努力呼吸
Circulation to Skin 皮膚への循環
小児救急治療ガイドライン改訂第3版,2015,診断と治療社
チアノーゼ(蒼白)末梢冷感まだら皮膚
「不自然な色、冷たさ」
initial impression
部屋は暖かいのに手足が冷たい
ここまで30秒が目安
Appearance いつも通りの外観か
Breathing 違和感のない呼吸状態か
Circulation to skin 不自然な皮膚色ではないか
第一印象のまとめinitial impression
初期評価の後、または平行して【バイタルチェック】
Airway 気道
Breathing 呼吸
Circulation 循環
Disability 神経学的評価
Exposure 全身観察
PALSプロバイダーマニュアル,AHAガイドライン2010準拠
Airway 気道
「上気道の開通性を判定する」
バイタルチェック
PALSプロバイダーマニュアル,AHAガイドライン2010準拠
陥没呼吸異常な呼吸音(いびき、吸気性喘鳴)
気道開通〇
気道開通×
なし
あり
頭部後屈あご先挙上法/下顎挙上
鼻腔・口腔内吸引
背部叩打法/腹部突き上げ法
鼻咽頭・口咽頭エアウェイ
持続的気道陽圧法(CPAP)
気管挿管
輪状甲状間膜切開
初期対応
Breathing 呼吸
「計測値は年齢相当か」
バイタルチェック
PALSプロバイダーマニュアル,AHAガイドライン2010準拠
見る
聴く
計測
努力呼吸(initial impression参照)
吸気性喘鳴呼気性喘鳴
など 初期対応
ボスミン吸入ベネトリン吸入
呼吸数SpO₂
酸素投与(鼻カヌラ、マスク、吹き流し)
時間外の小児救急 ERの小児,2013,市川光太郎ら
Circulation 循環
「計測値は年齢相当か」
バイタルチェック
PALSプロバイダーマニュアル,AHAガイドライン2010準拠
見る
触る
計測
皮膚色(initial impression参照)
末梢冷感毛細血管再充満時間(CRT:capillary refilling time)脈拍触知
心音リズム聴く
脈拍数、血圧
時間外の小児救急 ERの小児,2013,市川光太郎ら
時間外の小児救急 ERの小児,2013,市川光太郎ら
Disability 神経学的評価
「意識レベルの低下はないか」
バイタルチェック
PALSプロバイダーマニュアル,AHAガイドライン2010準拠
GCS
AVPU
瞳孔
Eye opening (開眼)Verbal (言語)Motor (運動)
Alert (意識清明)Voice (声掛けに反応)Painful (痛みにだけ反応)Unresponsive (意識なし)
Glasgow Coma Scale
※成人用、小児用、乳児用がある
径、同・不同、対光反射
PALSプロバイダーマニュアル,AHAガイドライン2010準拠
Exposure 全身観察
「重症の徴候を確認する」
バイタルチェック
PALSプロバイダーマニュアル,AHAガイドライン2010準拠
見る
計測
外出血、打撲痕、骨折、点状出血、紫斑
体温(四肢・体幹、表在・深部)
触る
計測時の注意バイタルチェック
信頼度
児 モニター
安静 適切に装着
啼泣、体動、食事 外れている
高
低
第一印象や初期評価とつり合っているか
計測時の状況で適切な評価ができるか
代表的な症状
※鑑別疾患、各疾患は成書参照
発熱
•体温37.5~38.0℃以上を発熱とする中学生以上はその時の体調と平熱を考慮し判定
•原因は感染症、環境温度が多い
環境温度の影響:1枚脱いで10分後に再検してみる
•高熱が必ずしも重症というわけではない
「40℃台で脳に後遺症がでる」は迷信
継続的な飲水ができれば「わりと元気」
ただし、急性脳症・脳炎時は高熱を放置しない
• しんどい、眠れないときは解熱剤(生後6ヶ月~)アンヒバ® アルピニー® カロナール® コカール®
×「病気を治す」 △「熱をさげる」 ◎「体が少し楽になる」
効果があるうちに、飲水、休息をとらせる
•月齢、随伴症状の確認
生後1ヶ月以下:発熱のみで無呼吸発作がでる可能性
生後1~6ヶ月:
随伴症状がないときこそ要注意(ex.髄膜炎)
たかが鼻閉でも飲めない、眠れない、で入院適応
汗、涙、排尿量/回数減少、ぐったりは補液~入院検討
• 研修医のうちは「生後3ヶ月未満の発熱は小児科コール」
【救急外来】
【病院内】
•新たな症状の発見が、診断に役立つときもある
ex.川崎病(初発、再燃)
呼吸障害
• モーニングレクチャー「小児の呼吸障害」参照
•泣かさず評価する努力をする
評価した項目の信頼性
泣くと状態が悪化する(より苦しくなる)
•喘鳴があれば吸入をしてみる
吸気時:ex.ボスミン0.2ml + 生食1ml
呼気時:ex.ベネトリン0.3ml + 生食1ml
最短20分間あければ反復可
•待合い室での呼吸状態はどうか診察室で泣くなら、診察室以外で正しい評価を
苦しくても泣く
【救急外来】
【病院内】
• SpO₂だけで評価しない
楽になれば心拍数、呼吸数も正常化する
•寝ることも治療
呼吸筋を休ませるため
できるだけ起こさない方法で・・・管理は大変ですが。
腹痛
•痛いかどうか、表情と身体に聞く
言えない、言わない、我慢している、おおげさ、かも
「痛い?痛い?」と聞かないほうがよい、かも
• 「おなかがいたい」けど全身をチェックする
胸痛、陰嚢痛、頭痛も「おなかがいたい」
放散痛かもしれない
•便秘が多いが、緊急性のある腹痛を見逃さない浣腸しても腹痛消失しないときは便秘痛ではないかも
グリセリン(GE)浣腸 10ml/kg
【救急外来】
【病院内】
• 「痛がって泣いていないとき」の状態が大切
◎「吐かない、元気」 ×「ぐったり、ぼんやり、不機嫌」
嘔吐/下痢
•胃腸炎が多いが、そうとも限らない
腸重積、虫垂炎などでも胃腸炎らしくみえることも
腹部疾患ではないことも多い
•安易な制吐剤投与より適切な飲水助言
胃腸炎は半日で嘔吐がおさまることが多い
×「ペットボトルを渡す」 ◎「小さじ一杯から」
• 「下痢のない嘔吐」は注意
胃腸炎もはじめは下痢がないけれど・・・
他疾患が除外できれば胃腸炎かもしれない
【救急外来】
【病院内】
• いつ、どのような、そしてどうなったか、で診断に近づく
入院時は暫定診断、経過観察の入院であることが多い
飲食後、就寝中
噴水様、胆汁性、泥状便、水様便、血便
ぐったりした、スッキリした
痙攣
• モーニングレクチャー「小児けいれん性疾患」参照
•止まっているか、続いているか
×「啼泣/入眠しているから止まっている」
四肢関節の硬さ、眼球偏位の有無を確認
•私たちが落ち着くこと
吸って吐いての2秒間、それから観察と行動開始でよい
•帰すとき、次の受診はいつか必ず伝える
翌朝、再発時、なにかおかしいと思った時
【救急外来】
【病院内】
• 「それぞれのいつも通り」か経時的に観察する
動作、会話、興奮性
「なにかおかしい」が再痙攣の前兆かも
アナフィラキシー/皮疹
•適切な体位をすすめる
低血圧(のリスク有) → 寝る、枕なし、下肢挙上
呼吸が苦しそう → 座る、意識レベルに注意
•皮疹の随伴症状はなにか
元気でかゆい、かゆくない
嘔吐、咳、腹痛、熱、むくみ
• トリアージから診察までに変化する可能性
1回のトリアージで安心ができない
「initial impression」のまずそうなものを早く診る
【救急外来】
【病院内】
• どのように変化するか、変化したか
考えられる変化(増悪)を知り、備える
詳細な記録で伝える(症状消失後はその記録だけが頼り)
まとめ 小児科救急のコツ
•発達、発育段階にあわせた評価が大切
• なんとなく、の印象を大切にする
•保護者と会話をする(助言、安心、注意を伝える)
•知りたいこと、わからないことは小児科へ★
(自主学習も大切・・・・・・)
勉強も・・・
• 「レジデントノート2018増刊 小児救急の基本」
• 「ERの小児」 シービーアール,2010
• 「症状からみた小児看護」 メディカルビュー,2009
• 「写真でわかる小児看護技術」 インターメディカ,2011
• AHAプロバイダーコース 「PALS」 「PEARS」