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第3章 乳幼児健診の実際第1節 乳幼児の健康診査1. 乳幼児の健康診査の基本 乳幼児健康診査の目的は全ての子どもが身体的、精神的及び社会的に最適な成長発達を遂げることを助けることにある。具体的な目標としては、(1)子どもの成長発達の状態を明らかにし、最適な成長発達を遂げるよう健康管理、保健指導をおこなう。(2)放置されやすい疾病異常、慢性疾患及び障害を早期に発見する。(3)発見された疾病異常については、早期治療、継続的健康管理及び療育相談等の措置を講ずる。(4)行動発達上の問題を早期に発見又は予防することである。 健康診査並びに保健指導にあたっては、健診にかかわるすべての職種が子育て支援の視点を持って臨み、家族を含めた心理面、精神面、社会経済面を考慮した包括的総合的なものをめざす。
発育・栄養状態身体計測
運動行動発達社会性(遊び)言語聴覚視覚・斜視
先天奇形・外表奇形神経学的異常染色体異常先天性股関節脱臼
脳性まひ
発達遅滞
食事母子関係
保育環境生活習慣
事故防止
発達評価
疾病の早期発見
保育環境
その他
1か月児
◎ ○
○
○(固視)
◎ ◎ ◎◎頭蓋異常、ヘルニア、斜頚、黄疸、ビタミンK欠乏性出血
重症
哺乳状況◎産後うつ 育児不安 ○
○代謝異常検査の実施状況
3~4か月児
◎ ○
○ ○
○(反応) ○(固視)
心疾患◎◎◎頭蓋異常、ヘルニア、斜頚、黄疸、皮膚疾患
中等症~重症
哺乳状況◎産後うつ 育児不安 ○
○予防接種の実施状況
6~10か月児
◎ ○
○ ◎
○(反応) ○(反応)
◎◎
皮膚疾患
重症~中等症精神発達遅滞広汎性発達障害
離乳食 ◎
○
1歳6か月児
◎ ○
○ ◎ ○ ◎ ○
X脚、O脚停留精巣う蝕
重症精神発達遅滞広汎性発達障害
食事の状況 ◎
排泄のしつけ
○予防接種の実施状況乳児期疾病の経過
3歳児
○○
○ ○ ◎ ○ ◎
X脚、O脚停留精巣う蝕不正咬合
軽症精神発達遅滞広汎性発達障害
食事の状況 ◎
清潔・排泄・整頓社会性・自立性
○予防接種の実施状況疾病の経過
目標健診
発育評価
注) ○印に該当する時期を示す。◎はより重点となる時期であることを示す。
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2. 子育て支援に視点を置いた乳幼児健診 健診医の診察のポイント
【ビデオ画像】 東京慈恵会医科大学名誉教授 前川喜平先生乳幼児健診における医師の診察のポイント(モデル事例による3~4か月児の発達評価)
医師の診察のポイント
感染症予防と栄養改善の時代から、障害児の早期発見、そして子育て支援へと乳幼児健診における健康課題は重層化している。子育て支援に視点を置いた乳幼児健診で大切なのは、健診にかかわるすべてのスタッフ、つまり多職種による連携と協働である。おのおのの職域の範囲でやるのが連携、その隙間を埋めるのが協働。それぞれが一歩踏み込んで協働することが必要である。 実際の支援にあたっては、健診を受診した親子の子育て・子育ち、親育て・親育ちの状況に応じて必要な支援をすることが必要となるが、健診受診者のすべてを支援の対象とすることはできない。対象の階層化とそれに応じた支援者側の体制づくりが必要となる。健診で浮かび上がった子どもの発達や家族の健康課題には優先順位をつけ、適材適所で多職種がかかわることが有効である。 疾病のスクリーニングを中心とした疾病志向の乳幼児健診から健康志向の乳幼児健診へと姿勢を変えることにより、医師も健診場面での子育て支援の視点を持つことができる。そのためには、親の子育ての状況をありのまま傾聴し、受容する態度を持つ必要がある。 発達の判定は、一度で決めつけない。境界例は正常のすそ野と考え、親の子育てを支えながらていねいに経過を診ることが大切である。 健診後は、多職種と連携して判断をし、次につなげるような指導が大切である。親が変わると子どもの発達の様子も変わることがある。集団健診で、健診医が継続的に経過を診るためには、健診医間での情報共有や保健師との連携などの方法も考えうる。個別健診では自らの診療所で続けて診ることもできる。子育て支援に視点を置いた健診の実現に向けて、とにかく行動を起こすことがポイントである。
発育状況の確認 体重や身長などの身体計測値とその増加の確認
問診結果の確認 母子健康手帳や保健師などによる問診結果を確認する。 ◇発達状況 運動発達や精神発達などの確認。 ◇既往症 分娩時の異常、新生児期の異常、出生時体重、先天異常や疾病の有無などを確認。 ◇予防接種 接種済みワクチンの確認と未接種ワクチンの勧奨 ◇生活習慣 ◇子育て状況 ◇心配事の有無 問診票に記載がない場合も、医師の立場で尋ねる。
診察の手順と観察ポイント 対象年齢に応じた手順や観察ポイントで行う。
診察結果の判定 ◇ 発育の評価 ◇ 発達の評価 ◇ 疾病スクリーニング
子育て支援に果たす医師の役割 子育て支援には、多職種の連携が大切である。自らは継続的な経過観察ができない場合でも、医師が保健機関や関係機関での相談を勧めることで、親はより安心してその支援を受け容れることができる。
96
第2節 1か月児の健康診査1. 健診の意義 新生児期にみられたいろいろな症状・症候がどう変化しているかをチェックするとともに、新生児期に気づかれなかった新しい所見がないかをチェックする。また、授乳や栄養状態、退院後の母体や母の心理状態、家庭環境や子育てへの支援者などについても確認する。
2. 健診で把握すべき基本事項
一般的事項
栄養
発達
疾
病
子育て
児 一般事項:氏名、性、生年月日、出生順位、受診年月日 (日齢)、両親氏名、年齢、職業、 世帯主氏名、住所、電話番号 出生時状況:在胎週数、身体計測値、アプガースコア、分娩時障害、奇形、低出生体重児 早期新生児期状況:哺乳力、呼吸障害、黄疸、痙攣、未熟児網膜症、先天性代 謝異常・クレチン症検査と治療母 妊娠中の状況:妊娠高血圧症候群、糖尿病、貧血、血液不適合、感染症 分娩時の状況:分娩施設、分娩形態 (正常、胎位異常、吸引、鉗子、帝切)、前早期破水、 分娩遷延、胎盤早期剥離、弛緩性出血家庭 父母の状況:健康状態、既往症(感染症(結核、B型肝炎など)、慢性疾患)、近親婚、た ばこ・アルコール その他:家族構成、健康状態、居住環境、保険の種類、配偶者の育児参加
哺乳状況:栄養法の種類(母乳、混合、人工)、回数(量)、障害 哺乳力(児の吸いつき方、吸う力、哺乳時間、哺乳間隔などから判断) 調乳方法(人工) 便の性状・色に注意
運動(四肢を動かす)、視覚(固視をする)、聴覚(声をかけると泣きやむ)反応(声をかけると表情が変化する)
哺乳不良 (量、吐乳)、体重増加不良、嘔吐、下痢、不機嫌泣き声:かん高い一声泣き(中枢神経系異常)、5P-症候群、嗄声びくつき:びくつきの状況を観察し、必要があれば精検にまわす、痙攣 (ひきつけ)手足を動かさない:分娩麻痺、骨折手を開かない:脳性麻痺(疑い)皮膚の色調の異常 (蒼白、黄疸、チアノーゼ、色素沈着:副腎不全(副腎性器症候群など))皮膚の湿疹・母斑腫瘤(頚部、そけい部、陰のうなど)既往症
保育者、室内の環境、兄弟関係、子育ての不安、産後うつ病等、子ども虐待等に注意清潔(おむつ交換回数、入浴、清拭)
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*吐乳と溢乳の区別をすること。また吐乳が毎回あるか、噴水状かどうか (幽 門狭窄)、また赤ちゃんの抱き方、母親の姿勢、排気のさせ方*、哺乳びんの 状態などもチェックすること。*排気(胃内の空気)のさせ方(右図参照) 乳児の胃部が保育者の肩にあたるような位置に抱き上げ、背中を軽く叩くか、 下から上へさすってやる。(鈴木 榮著:「育児相談のために」より)
4. 早期発見と対応が必要な疾病 ・母乳哺育と乳児ビタミンK欠乏性出血症 母乳栄養児5,000人に1人程度にビタミンK欠乏による低プロトロンビン血症がおきる。この低プロトロンビン血 症予防のため、生後0~1日及び生後1週、1か月時にビタミンK2シロップ2㎎を経口投与する。
・先天性代謝異常等の検査すべての新生児を対象として、血液を用いてフェニールケトン尿症(PKU)などの先天性代謝異常検査や先天性甲状腺機能低下症の検査が行われている。これらの病気は早期に発見することによって、特殊ミルクや甲状腺ホルモンなどで治療することができる。なお、小児の先天性代謝異常のための特殊ミルクは無償で提供される。PKUの女性は、妊娠に当たっては、胎児の障害を予防するため、医師の治療・管理を受ける必要がある。このため、PKUの女児の保護者には、将来女児が子どもを産む年齢に達したら、妊娠する前に女児が医師に相談するよう指導する必要がある。
・黄疸 出生後の皮膚黄染の程度の変化を聴取する。既測定のビリルビン値、栄養法 (母乳栄養)、哺乳力、尿・便の色、その他一般状態を参考に精検を考慮する。柑皮症に注意。
3. 健診に用いられる問診項目 1か月児
◎ お乳をよく飲みますか。◎ 裸にすると手足をバタバタしますか。◎ 大きな音にビクッと、手足を伸ばしたり、泣き出すことがありますか。・ あなた(お母さん)の顔やおもちゃをほんの短い間見つめるようになりましたか。・ 泣いているときに声をかけると泣きやみますか。◎ おへそはかわいていますか。◎ うすい黄色、クリーム色、灰白色の便がつづいていますか。(「胆道閉鎖症」を参照)・ 泣いたりお乳を飲んでいる時に顔色が悪く(紫色に)なりますか。・ からだがかたかったり、そりくりかえりやびくつきが多いですか。・ 泣き声に元気がありますか。・ 泣いて力んだ時など、股の部分に「こぶ」ができますか。・ 今までに何か病気をしましたか。◎ 子育てについて困難を感じることはありますか。
◎印は母子健康手帳の保護者記録欄にある質問と同じ項目
図 排気の姿勢
98
・胆道閉鎖症 胆道が閉鎖しているために肝臓で作られた胆汁が腸管内に排出されない疾患で、発生頻度は1万~2万人の出生に1人、女児に比較的多い。胆道が閉鎖する原因は、以前に考えられていたような胆道系の発生異常ではなく、一度形成された胆道が何らかの炎症機転によって閉塞することが推測されている。胆道閉鎖症に合併した腸閉鎖症で、孤立した閉鎖腸管内に胆汁が認められることがあることからも、胆道系の発生異常を原因として考えることは否定的である。したがって、現在は先天性胆道閉鎖症という病名は用いられない。病理組織的には胆管組織は瘢痕化し、その周囲に形成された偽胆管で形成されたネットワークが肝門部に連続する病態を呈する。(臨床症状) 主な初期症状は黄疸と無胆汁便で、便はうすい黄色、クリーム色、灰白色を呈する。肝臓は次第に膨大し、硬度を増し、手術が行われない場合には肝硬変症に移行する。肝硬変の進行に伴って、高度の腹水貯留や門脈圧の亢進を生じ、食道静脈瘤形成や脾機能亢進によって貧血や出血傾向を呈し、1~3歳頃までに肝不全によって死亡する。(早期発見と鑑別診断) 新生時期からの持続性黄疸、灰白色便と肝腫大で本性を疑う。尿中ビリルビン陽性、ウロビリノーゲン陰性、便中ビリルビン陰性、その他の一般肝機能検査(血清直接型ビリルビン上昇、トランスアミナーゼ上昇、アルカリホスファターゼ上昇、γGTP上昇)異常を認める。鑑別には、新生児肝炎、先天性胆道拡張症、肝内胆管形成不全、その他(尿路感染、溶血性疾患後の胆汁塞栓症、ウイルス性肝炎、代謝疾患、等)がある。 これらとの鑑別には十二指腸ゾンデ法による胆汁排出の証明、血清リポプロテインX測定、超音波による胆嚢と肝門部の特異的所見の描出、胆道排泄シンチグラムが挙げられるが、確定診断には開腹手術による術中胆道造影が必要となる。(治療法) 手術により持続的に十分な胆汁の排泄を得ることができなければ、進行する胆汁性肝硬変の進行を止めることはできない。生後60日以内に肝門部空腸吻合を行うことで、黄疸が消失するのに十分な胆汁排出が期待できる。しかし、日令が進むと肝実質や肝内胆管の荒廃が進み、術後の黄疸消失率が悪くなる。近年、これらの非黄疸消失例の治療として生体肝移植が用いられるようになった。
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第3節 3~4か月児の健康診査1. 健診の意義 3か月や4か月児の健診は、脳性まひや先天性股関節脱臼、斜頚や先天性心疾患など疾病の早期発見、治療と保健指導を目的として開始された。今もその意義は保ちながらも、子育て支援に視点においた健診の重要性が認識されている。親の心の健康や愛着形成など親子の適切な関係性、家庭環境や子育てへの周囲の協力などもこの時期に把握すべき健康課題である。要支援家庭への早期の支援開始の場として、周産期に発見された疾病を持つ子どもの在宅療養への側面支援の場としてもその役割は大きい。
2. 健診で把握すべき基本事項
一般的事項
栄養
発達
疾
病
子育て
児 一般事項:氏名、性、生年月日、出生順位、受診年月日(月-日齢)、両親氏名、年齢、職業、 世帯主氏名、住所、電話番号 出生時状況:在胎週数、身体計測値、アプガースコア、分娩時障害、奇形、低出生体重児 早期新生児期状況:哺乳力、呼吸障害、黄疸、痙攣、未熟児網膜症、先天性代謝異常・クレ チン症検査と治療 1か月児健診状況:受診年月日(日齢)、受診機関、身体計測値、異常の有無 母 妊娠中の異常の有無(妊娠高血圧症候群、貧血、風疹など) 分娩時の異常の有無(分娩遷延、分娩形態の異常)家庭 家族構成と健康状態(現在治療中の疾病、結核などの感染症) (その他1か月児健康診査の項参照)
哺乳状況:栄養法の種類 (母乳、混合、人工)、回数 (量)、障害、哺乳力 (児の吸いつき方、吸 う力、哺乳時間、哺乳間隔などから判断)、調乳方法(人工)
運動(首すわり、両手あそび(4か月))、視覚(追視)、聴覚(声の方を眺める、向く)反応(あやすと笑う、喃語)
哺乳不良、体重増加不良、嘔吐、下痢、便秘、不機嫌、泣き声 (大きさ、音質)、びくつき、そりかえり、痙攣(ひきつけ)、首すわり、首の動き・手足の動き、手の開きが悪い、股の開きが悪い、皮膚の色調 (蒼白、黄疸、チアノーゼ、紅潮)、皮膚の湿疹・母斑、腫瘤 (頚部、そけい部、陰のうなど)、既往症
保育者、室内の環境、兄弟関係、子育ての不安、親の精神的状態、子ども虐待等に注意、保育器具、清潔(おむつ交換回数、入浴、清拭、下着のとりかえ)、外気浴
100
【参考】(1)首すわりの観察(4.2.8 頚定参照)(2)音に対する反応の発達 生後1か月頃までは突然の大きな音にビクッとして腕を急激に屈曲したり (Moro反射)、眼をギュッと閉じたり(眼瞼反射) するだけであるが、2か月以後、次第にこれらの反射は減少し、3か月頃からは人の声や、ガラガラなどの玩具の音、テレビの音、音楽などに対し、ゆっくり顔を向けたり、表情を変えたり、動きを止めたりなどの反応を示すようになる。ただし、3~4か月頃は、まだ状況による反応の仕方の差や、個体差が大きい。 しかし、妊娠中に風疹罹患があった場合、家系内に難聴者がいる場合、出産時に大きな異常があった場合などは、念のため、専門機関で調べておいた方が良い。
(3)目があわない、声をかけても全く知らん顔、極端に夜眠らない (睡眠4~5時間)、極端な偏食があることなどが、 広汎性発達障害の初期症状として注目され始めているが、この時期は診断が困難であると同時に、母親に過 度の心配をかけることが逆効果になるので、現症を正確に捉えることを中心にする。(4)母子関係、相互作用 物 (玩具)、音、声、追視、支えてもらって坐る、ガラガラを振るなど子どもの興味、喜びを母親が認識し、母親自身も喜んで育児をしているかどうか、子どもの受容等をポイントとしてチェックする。
(5)相談者の存在は、夫婦間の関係性や養育者の親・親族との関係、母自身の問題解決能力や精神的・性格的傾向、友人などからのサポートや地域でのつながり等を把握し、精神的負担感を左右する要因として捉える。また、近年では、インターネットによる相談を相談相手とする例も少なくない。(「健やか親子21」第2回中間評価報告」)相談相手として具体的に誰(何)に相談しているかについても確認しておく必要がある。
(6)育児の満足感、母親の育児に関するQOLを把握するための項目である。 母の身体的、精神的負担感を聞き取り、育児協力者や母子の生活を見守る人の存在を確認することができる。家族形態や兄弟関係(人数、疾患、障害等)や父親の育児参加等の父親の協力は大きな要素である。併せて、経済状況等の生活背景を聞き取り、問題があれば現状の生活の中で実現可能な改善の工夫について、具体的に情報提供することが望まれる。
(7)同居家族の喫煙は、子どもの健康状態への影響が大きい。また、虐待との関連が示唆されている。 同居家族のうち、母の喫煙はもっとも身近な人の喫煙であり、出産と同時に再喫煙する産婦も少なくない。夫の喫煙率との関連性も示されていることから、家族全体の禁煙を勧めたい。*SIDSの予防*3歳児の喘息様気管支炎の発症率(右表参照)
(8)事故防止対策の不足、育児知識・情報の不足、発達に関する理解不足の可能性が高く、予測をすることが苦手な親も多い。子への関心、接触度(普段相手をしているのは誰か)、居住(片付け等)状況についても把握したい。
・ お乳をよく飲みますか。◎ 首がすわりましたか。【参考1】◎ あやすと笑いますか。・ 目の前でおもちゃや手を動かすと、それを目で追いますか。◎ 見えない方向から声をかけると、そちらのほうを見ようとしますか。【参考2】・ あやすと、「ア」、「ウー」など声を出して応えますか。・ 両手をよく開くようになりましたか。・ ほんの短い時間なら手におもちゃを握っていますか。◎ 目つきや目の動きがおかしいのではないかと気になりますか。【参考3】・ 涙や目やにがいつもたまっていませんか。・ 泣いたりお乳を飲んでいるときに顔色が悪く(紫色に)なりますか。・ 不機嫌でもないのにからだをよくそらせますか。・ ひどく神経質ですか。◎ 外気浴をしていますか。◎ 最近、何か病気をしましたか。・ 育児は疲れますか。◎ 子育てについて困難を感じることはありますか。(育児は楽しいですか。)【参考4】● 子育てについて相談できる人はいますか。【参考5】● お母さんはゆったりとした気分でお子さんと過ごせる時間がありますか。【参考6】● 同居家族に喫煙する人はいますか。【参考7】● たばこ・ボタン電池・硬貨・ピアスなどの小物(直径39mm以下)は、1m以上の高 さのところに置いてありますか。【参考8】
◎印は、母子健康手帳の保護者記録欄にある質問と同じ項目 ●印は、愛知県共通問診項目
3. 健診に用いられる問診項目 3~4か月児
101
【参考】(1)首すわりの観察(2)音に対する反応の発達 生後1か月頃までは突然の大きな音にビクッとして腕を急激に屈曲したり (Moro反射)、眼をギュッと閉じたり(眼瞼反射) するだけであるが、2か月以後、次第にこれらの反射は減少し、3か月頃からは人の声や、ガラガラなどの玩具の音、テレビの音、音楽などに対し、ゆっくり顔を向けたり、表情を変えたり、動きを止めたりなどの反応を示すようになる。ただし、3~4か月頃は、まだ状況による反応の仕方の差や、個体差が大きい。 しかし、妊娠中に風疹罹患があった場合、家系内に難聴者がいる場合、出産時に大きな異常があった場合などは、念のため、専門機関で調べておいた方が良い。
(3)目があわない、声をかけても全く知らん顔、極端に夜眠らない (睡眠4~5時間)、極端な偏食があることなどが、 広汎性発達障害の初期症状として注目され始めているが、この時期は診断が困難であると同時に、母親に過 度の心配をかけることが逆効果になるので、現症を正確に捉えることを中心にする。(4)母子関係、相互作用 物 (玩具)、音、声、追視、支えてもらって坐る、ガラガラを振るなど子どもの興味、喜びを母親が認識し、母親自身も喜んで育児をしているかどうか、子どもの受容等をポイントとしてチェックする。
(5)相談者の存在は、夫婦間の関係性や養育者の親・親族との関係、母自身の問題解決能力や精神的・性格的傾向、友人などからのサポートや地域でのつながり等を把握し、精神的負担感を左右する要因として捉える。また、近年では、インターネットによる相談を相談相手とする例も少なくない。(「健やか親子21」第2回中間評価報告」)相談相手として具体的に誰(何)に相談しているかについても確認しておく必要がある。
(6)育児の満足感、母親の育児に関するQOLを把握するための項目である。 母の身体的、精神的負担感を聞き取り、育児協力者や母子の生活を見守る人の存在を確認することができる。家族形態や兄弟関係(人数、疾患、障害等)や父親の育児参加等の父親の協力は大きな要素である。併せて、経済状況等の生活背景を聞き取り、問題があれば現状の生活の中で実現可能な改善の工夫について、具体的に情報提供することが望まれる。
(7)同居家族の喫煙は、子どもの健康状態への影響が大きい。また、虐待との関連が示唆されている。 同居家族のうち、母の喫煙はもっとも身近な人の喫煙であり、出産と同時に再喫煙する産婦も少なくない。夫の喫煙率との関連性も示されていることから、家族全体の禁煙を勧めたい。*SIDSの予防*3歳児の喘息様気管支炎の発症率(右表参照)
(8)事故防止対策の不足、育児知識・情報の不足、発達に関する理解不足の可能性が高く、予測をすることが苦手な親も多い。子への関心、接触度(普段相手をしているのは誰か)、居住(片付け等)状況についても把握したい。
家庭内に喫煙者無し
1日に1~19本喫煙する家族がいる
1日に20本以上喫煙する家族がいる
1.7
2.8
3.4
3歳児の喘息様気管支炎の発症率
(愛知県知多保健所)
102
◇ 発育の評価【見逃したくない所見】 体重増加不良、頭囲の拡大(胸囲を5cm以上超える)
【見逃したくない所見】 頚定不良、筋緊張低下、視線が合わない、音に反応しない
診察のポイント 3~4か月児健診
発育状況の確認
問診結果の確認
診察の手順と観察ポイント
診察結果の判定正常では、体重は出生時のほぼ2倍、頭囲は7~9cm増加し、胸囲は頭囲よりやや大きくなっている。
◇ 発達の評価 正常児では、頚が坐り、ガラガラを少しの間握っている、あやすと笑い、母親の声に振り向き、喃語を話すことができる。
◇ 体重・身長・頭囲◇ 栄養
身体発育曲線に沿って増加しているか授乳の状況、哺乳回数
母子健康手帳や保健師などによる問診結果を確認する。
◇ 発達状況
◇ 既往症
◇ 子育て状況
◇ 心配事の有無
123456789101112131415161718
母親の抱っこの姿勢あやした時に声を出して笑うか仰臥位の姿勢、自発運動 おむつだけに脱がせて観察顔貌皮膚追視テスト ペンライト、おもちゃなどを用いて左右に180°聴覚 聞こえの発達チェックリスト胸部聴診 心音・心雑音、呼吸音腹部触診 緊張度、腫瘤、肝、脾の触診頭部触診 変形の有無、大泉門頚部触診 胸鎖乳突筋の腫瘤(斜頚)の有無、翼状頚は背面から観察引き起こし反射 親指を子どもに握らせ手と手首を握って引き起こす視性立ち直り反射 両腋を支えて坐らせ、ゆっくりと左右に体幹を倒す水平抱き 水平に抱いて観察腹臥位の姿勢股関節開排制限 おむつを取って観察外性器、肛門、仙骨部の視診 下肢を挙上もしくは腹臥位で観察口腔内視診
頚が坐っていますか、あやすと笑いますか、見えない方から声をかけると見ようとしますかなど発達状況を確認分娩時の異常、新生児期の異常、出生時体重、先天異常や疾病の有無など既往症を確認ゆったりとした気分で子と過ごせるか、子育ての相談相手がいるかなど子育て状況や支援者を確認問診票に記載がない場合も、医師の立場で尋ねる
4.2.1 体重の評価 4.2.2 身長の評価4.2.3 頭囲 4.2.6 身体発育不良
4.3.2 授乳の支援
3か月初めでは頚は完全には坐らないが、かなりしっかりしている。4か月で大部分は頚が坐る。
人の声などに反応を示す。聴覚や発達の遅れと関連するが個人差も大きい。
4.4 疾病を持つ子どもの理解と支援
疾病を持つ子どもの子育ては、その予後をも変えることがある。
親の抱き方と頚坐りには関連がある。
仰臥位では、ほぼ左右対称の姿勢で、顔が正面を向いて両手が合う。両手を顔の前に持って行き、手をなめたり眺めたりする。
4.2.22 四肢形態異常4.2.12 顔貌4.2.24 母斑、4.2.25 血管腫、4.2.26 湿疹4.2.27 被虐待跡4.2.13 追視4.2.15 聴覚異常4.2.17 心音異常4.2.18 腹部腫瘤 4.2.19 臍ヘルニア4.2.11 大泉門開大4.2.16 斜頚4.2.7 筋緊張 4.2.8 頚定
引き起こし反射 : 引き起こす途中までは、頭部がやや背屈するが、床から45°くらいから体幹と平行になる。
視性立ち直り反射 : 4か月児では左右に倒そうとすると、頭を垂直の位置に戻そうとする反射が起きる。
腹臥位では頭を前方に45~90°挙上し、胸を床から離し、肘で上体を支える。
4.2.23 股関節開排制限4.2.20 停留精巣4.2.21 そけいヘルニア
4.2.1 体重の評価
(章)(節)(項)参照項目 (○○○○)
例
103
◇ 疾病の発見ポイント
乳児期の股関節健診
4.2.27. 被虐待跡
4.2.23乳児期の股関節健診の進め方
2.4.1 虐待予防4.3 子育て支援・保健指導
周産期、新生児期の状況や既往症などの問診結果も参考にして診察する。説明のつかない外傷、皮膚やおむつの清潔が極端に悪い場合は必ず継続的な支援につなげる。
問診が極めて重要、次の危険因子について確認する。①先天性股関節脱臼・亜脱臼、変形性股関節症の家族歴、 ②女児、 ③骨盤位出生、 ④冬季生まれ
臀部や大腿の皮膚溝の非対称 : そけい部の皮膚溝は深く、後方まで延長し、伸展位における大腿内側の皮膚溝も深く、数は増加していることが多い(a)。通常股関節は屈曲外転位をとるが、脱臼のある場合、外転が制限され、膝が前方を向く肢位となる。
1)
開排制限の有無 : 股関節屈曲位での他動的外転の制限(b)2)
クリックサインの有無4)下肢長差3)
坐骨結節と大転子の位置関係の触診 : 開排位で、検者の示指と中指によりそれぞれ坐骨結節と大転子を触診する。正常ではこれらは近接してほぼ平行に触れるが、脱臼股では、大転子は坐骨結節の後上方にやや離れて触れる(c)。時に開排制限が明らかでない例があるため、この診察手技は重要であるものの熟練が必要である。
5)
◇ 子育て支援に果たす医師の役割 子育て支援には、多職種の連携が大切である。子どもの発育発達に遅れが疑われる場合、周産期からの健康課題(低出生体重児、先天異常ほか)を持つ場合には、親の子育てはより困難となり不安も高まる。自らは継続的な経過観察ができない場合でも、医師が保健機関や関係機関での相談を勧めることで、親はより安心して支援を受け容れることができる。子ども虐待が疑われる場合にも、通告義務を果たすとともに、継続的にかかわることのできる支援者へのつなぎをこころがけるべきである。
頭部大きさ、形状、腫瘤(頭血腫)大・小泉門(大きさ、緊張、膨隆、陥凹、閉鎖)毛髪の色(代謝異常)、形状(尖端分岐)
顔貌(表情、顔面に特徴のある症候群)眼(追視、斜視(特に内斜視)、眼脂、流涙多量)耳介異常、口腔(口蓋裂、高口蓋、舌小帯、歯肉)
頚部リンパ節、甲状腺斜頚、翼状頚前頚部腫瘤、正中瘻
皮膚色(蒼白、黄疸、チアノーゼ)緊張感(ツルゴール)[緊満度]発疹(湿疹)、浮腫、血管腫母斑、白斑
四肢形態、自発運動手掌紋(染色体異常)手指の握り方・開き方
泌尿・生殖器、肛門陰のう水腫、停留精巣、そけいヘルニア奇形(半陰陽)、仙骨部腫瘤、瘻孔
顔面
胸部胸郭変形、呼吸パターン(陥没呼吸)心音(心雑音、不整脈)、呼吸音
腹部形状、緊張、血管怒脹肝脾腫、腫瘤、臍ヘルニア
股関節股関節開排制限
姿勢体位、四肢の位置
神経発達引き起こし反射モロー反射垂直保持
a b c
104
黄 疸
湿 疹皮 膚 炎
血 管 腫(血管母斑)
色素性母斑
さかまつげ
斜 視
躯 幹
心雑音
ヘルニア
陰のう水腫
停留精巣
開排制限(股関節脱臼)
出生後の皮膚黄染の程度の変化を聴取する。既測定のビリルビン値、栄養法 (母乳栄養)、哺乳力、尿・便の色、その他一般状態を参考に精検を考慮する。柑皮症に注意。
(1)脂漏性湿疹:脂腺分泌の著しい頭頂部によくみられる。軽度のものはオリーブ油など でよく拭き取るか、石けんでよく洗い流す。経過が長く、黄色調のものは、細菌の繁 殖により皮膚炎を起こしている。この場合は受診が必要。(2)おむつかぶれ:糞便、尿分解産物などにより起こる。排泄後速やかにぬるま湯(水) で洗浄又は清拭し、乾布で水分をとり、しばらくおむつを当てないでおくとよい。(3)汗疹(あせも):汗腺の閉鎖による湿疹様皮膚炎。夏のみでなく暖房のため冬にもあ る。清潔を第一に、入浴、行水は毎日する。(4)アトピー性皮膚炎:かゆみがあり、慢性・反復性に経過する。皮膚を清潔に保ち、刺 激を少なくする。小児科か皮膚科を受診し、塗り薬は、症状・部位に応じて使用する。 特定の食物を食べると悪化する場合は、医師の指示のもと食事制限を行うこともある が、母親の自己判断で食事制限をしないように注意する。
その種類、部位、大きさで処置が異なる。(1)単純性血管腫:皮膚面と平行で、ウンナ型(項部)、サーモンパッチ(眉間、上眼瞼) 以外のものは自然消退しにくいが、1歳以下ではレーザー治療が有効なことがある。 希望があれば専門医を受診させる。(2)苺状血管腫:生後1か月前後に出現し、6~12か月位までは増大するが、その後退行 し、4~5歳までに消失することが多い。1歳以下ではレーザー治療が有効なことが ある。
(1) 蒙古斑:臀部を中心に出現する青色調の色素斑で、東洋人にはほとんど必発するが、 7~8才までに自然消退するので放置してよい。時には背中、四肢にも連続的あるい は単独に出現するが、この中には消退せずに持続するものがある。異所性蒙古斑は、 早期のレーザー治療が有効なことがあるので、希望があれば専門医を紹介する。(2)色素性母斑:褐色~黒褐色~黒色~青色にいたる身体の随所に出現する母斑であり、 消退しない。この中で色調が不整のもの、手掌・足底部に出現するものや巨大なもの は、悪性化の可能性があるので専門医へ紹介する。
通常は自然治癒するので放置でよいが1歳6か月児健診で再チェックする。両親の状態が参考になる。
乳児は一見内斜視様であるが、両眼の間の皮膚をつまむと正常か否かの判別がしやすい。またペンライトによる角膜反射が中央かどうかをみる。斜視:3~4か月児健診で斜視があれば精検また斜視の強いものは中枢神経系の異常にも注 意する。
胸鎖乳突筋に腫瘤を触知する場合は、要精検とする。
先天性心疾患が疑われる場合は、要精検とする。
臍ヘルニア:自然治癒が多いので放置でよい。1歳以降、治癒しない場合は、医療機関を紹 介する。そけいヘルニア:自然治癒もありうるので、3~6か月間かんとん時の注意を与えておいて 経過をみる。再検診の上精検を決定する。 女児で恥骨上に小腫瘤が触れる場合は直ちに小児外科へ紹介する。
自然治癒しやすいので放置でよいが、3~4か月児で内容が多く、緊満している場合は精検へまわす。
生後6か月までは、自然降下が見られることがある。現在、理想的手術時期は、生後6か月から1歳6か月までの間といわれている。精巣が挙上した状態であれば、専門医への受診を勧める。入浴時や睡眠中に触知可能なら問題のないことが多い。
下肢の自然肢位を妨げないように注意し(自然に運動ができるようなおむつのかけ方、抱き方など)、明らかに開排制限がある場合は要精検とする。 *自然肢位の保護
1か月~4か月頃4. 特徴的な疾病や所見
105
◆乳幼児突然死症候群(SIDS) 乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)は、それまで元気だった赤ちゃんが、事故や窒息ではなく眠っている間に突然死亡してしまう病気です。生後2か月から6か月に多く、まれに1歳以上でも発症することがあります。 対策強化月間を開始した平成11年度以降、この病気で亡くなる赤ちゃんの人数は半数以下に減少しているものの、平成21年には全国で157人の赤ちゃんが亡くなっており、乳児(0歳)の死亡原因の第3位となっています。(厚生労働省 政策レポートより http://www.mhlw.go.jp/seisaku/2010/11/02.html)
下記の通知が平成10年に出され、平成11年度からは毎年11月を「乳幼児突然死症候群の対策強化月間」と定め、SIDSに対する社会的関心を喚起するとともに、重点的な普及啓発活動を実施してされている。
黄 疸
湿 疹皮 膚 炎
血 管 腫(血管母斑)
色素性母斑
さかまつげ
斜視
躯幹
心雑音
ヘルニア
陰のう水腫
停留精巣
開排制限(股関節脱臼)
出生後の皮膚黄染の程度の変化を聴取する。既測定のビリルビン値、栄養法 (母乳栄養)、哺乳力、尿・便の色、その他一般状態を参考に精検を考慮する。柑皮症に注意。
(1)脂漏性湿疹:脂腺分泌の著しい頭頂部によくみられる。軽度のものはオリーブ油など でよく拭き取るか、石けんでよく洗い流す。経過が長く、黄色調のものは、細菌の繁 殖により皮膚炎を起こしている。この場合は受診が必要。(2)おむつかぶれ:糞便、尿分解産物などにより起こる。排泄後速やかにぬるま湯(水) で洗浄又は清拭し、乾布で水分をとり、しばらくおむつを当てないでおくとよい。(3)汗疹(あせも):汗腺の閉鎖による湿疹様皮膚炎。夏のみでなく暖房のため冬にもあ る。清潔を第一に、入浴、行水は毎日する。(4)アトピー性皮膚炎:かゆみがあり、慢性・反復性に経過する。皮膚を清潔に保ち、刺 激を少なくする。小児科か皮膚科を受診し、塗り薬は、症状・部位に応じて使用する。 特定の食物を食べると悪化する場合は、医師の指示のもと食事制限を行うこともある が、母親の自己判断で食事制限をしないように注意する。
その種類、部位、大きさで処置が異なる。(1)単純性血管腫:皮膚面と平行で、ウンナ型(項部)、サーモンパッチ(眉間、上眼瞼) 以外のものは自然消退しにくいが、1歳以下ではレーザー治療が有効なことがある。 希望があれば専門医を受診させる。(2)苺状血管腫:生後1か月前後に出現し、6~12か月位までは増大するが、その後退 行し、4~5歳までに消失することが多い。1歳以下ではレーザー治療が有効なこと がある。
(1) 蒙古斑:臀部を中心に出現する青色調の色素斑で、東洋人にはほとんど必発するが、 7~8才までに自然消退するので放置してよい。時には背中、四肢にも連続的あるい は単独に出現するが、この中には消退せずに持続するものがある。異所性蒙古斑は、 早期 のレーザー治療が有効なことがあるので、希望があれば専門医を紹介する。(2)色素性母斑:褐色~黒褐色~黒色~青色にいたる身体の随所に出現する母斑であり、 消退しない。この中で色調が不整のもの、手掌・足底部に出現するものや巨大なもの は、悪性化の可能性があるので専門医へ紹介する。
通常は自然治癒するので放置でよいが1歳6か月児健診で再チェックする。両親の状態が参考になる。
乳児は一見内斜視様であるが、両眼の間の皮膚をつまむと正常か否かの判別がしやすい。またペンライトによる角膜反射が中央かどうかをみる。斜視:3~4か月児健診で斜視があれば精検 また斜視の強いものは中枢神経系の異常にも注意する。
胸鎖乳突筋に腫瘤を触知する場合は、要精検とする。
先天性心疾患が疑われる場合は、要精検とする。
臍ヘルニア:自然治癒が多いので放置でよい。2歳以降、治癒しない場合は、医療機関を紹 介する。そけいヘルニア:自然治癒もありうるので、3~6か月間かんとん時の注意を与えておいて 経過をみる。再検診の上精検を決定する。 女児で恥骨上に小腫瘤が触れる場合は直ちに小児外科へ紹介する。
自然治癒しやすいので放置でよいが、3~4か月児で内容が多く、緊満している場合は精検へまわす。
生後6か月までは、自然降下が見られることがある。現在、理想的手術時期は、生後6か月から2歳までの間といわれている。精巣が挙上した状態であれば、専門医への受診を勧める。入浴時や睡眠中に触知可能なら問題のないことが多い。
下肢の自然肢位を妨げないように注意し(自然に運動ができるようなおむつのかけ方、抱き方など)、明らかに開排制限がある場合は要精検とする。 *自然肢位の保護
SIDS発症の危険性を低くするための留意点 (1)赤ちゃんを寝かせるときは、仰向け寝にしましょう。 ただし、医学上の理由から医師がうつぶせ寝を勧める場合もあるので、 このようなときは医師の指導を守りましょう。 (2)妊娠中や赤ちゃんの周囲で、たばこを吸わないようにしましょう。 これは、身近な人の理解も大切ですので、日頃から協力を求めましょう。 (3)母乳が赤ちゃんにとってよいことはよく知られています。母乳の出方には 個人差がありますが、母乳が出る場合には、できるだけ母乳で育てるよう にしましょう。
乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症予防
平成10年7月13日 児母第53号都道府県・政令市・特別区母子保健主管部(局)長宛厚生省児童家庭局母子保健課長通知 別添3
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5. 保健指導のポイント 1か月児と3~4か月児
発 育発 達
生理現象と保育
栄 養
清潔
健康増進
体重増加
発 達
便
尿
体温
その他
哺乳
離乳と離乳食
皮膚の清潔
外気浴
運動
遊び相手
健診時の測定値だけでなく、出生時、退院時、或いは前回健診時の測定値や、カウプ指数などを参考に判断するが、哺乳量のみならず哺乳方法(母乳栄養の場合は母親の乳房、乳汁の性状、抱き方など、人工栄養の場合は調乳法や哺乳びんの栓のしめ方など)を確認し、指導をする。特別な疾病や症状が認められず、なお観察を要する場合は指導項目を明確にしてから、2~4週後に再測定をする。
特に疾病がない場合でも、保育状況(寝かせっぱなし、声をかけない)によっては、月齢相当の発達を示さないので、保育上の指導を明確にし、3~4週後に再観察をする。
回数、色、性状などについて聴取し、正常か病的かの判断をする。回数が多く、体重増加不良も認められる場合は便を実際確認する。また回数が少ない(3~4日に1回)場合でも、自然排便があり、食欲もよく、腹部の膨満がない場合は特に問題としなくてもよい。肛門部の刺激も試みる。(胆道閉鎖症の項を参照)
尿の回数は一般に母親が考えているよりも多く(食事回数の3倍くらい)、また皮膚に対する刺激も強い(おむつかぶれの原因)ので、それを認識させ、おむつ交換の必要性と、交換時の皮膚の清拭、乾燥を指導する。夏期にはおむつが赤変する(尿酸あるいは他の原因)ことがある。
生後間もない間はまだ体温が不安定であるので、室温に特に注意が必要である(18~20℃)が、2週間も過ぎれば10~30℃程度であれば特に冷暖房を必要としない。冷暖房機器を使用する場合はいずれにしても過度にならないよう注意し、室内の換気に気をくばる。乳児の保育はその家の一番環境のよい(採光、風通し)部屋を選ばせる。衣類の数は、環境温と乳児の発汗状態(衿もとから背中に手を入れてみる)から細やかに調節するのがよいが、暑い時は大人より1枚少なめ、寒い時は1枚多めが目安であろう。なお哺乳時は1枚脱がせてから行った方がよい。
1~2か月頃までは、くしゃみ、はなづまり、せき、喘鳴、いきみ、しゃっくり、口唇や四肢の軽い振戦などが、決して病的でなく起きることが多いので、必要以上の心配をもたせないよう指導する。しかし、これらの症状が単発でなく他の関連症状と重複したり、持続、頻発したり、増強する時には注意をする。
原則として初乳からの母乳哺育をすすめるが、母乳不足の訴えがあった場合は、母乳分泌の状況をチェックしてから必要な場合にのみ人工乳の添加を考慮する。なお母乳栄養の場合は母親の栄養指導も重要である。またビタミンK不足の徴候に注意をすること。哺乳後の排気方法、溢乳と吐乳の相異を指導する。口腔の清潔(3.6 (3) 歯科保健指導のポイント参照)
離乳の開始とは、なめらかにすりつぶした食物を初めて与えた時をいう。その時期は生後5,6か月ごろが適当である。乳児にとって、最適な栄養源は乳汁(母乳または育児用ミルク)である。離乳の開始前に果汁を与えることについては、果汁の摂取によって、乳汁の摂取量が減少すること、たんぱく質、脂質、ビタミン類や鉄、カルシウム、亜鉛などのミネラル類の摂取量低下が危惧されること、また、乳児期移行における果汁の過剰摂取傾向と低栄養や発育障害との関連が報告されており、栄養学的な意義は認められていない。
からだの汚れの部位を確認し、入浴の回数、洗い方を指導する。また顔、頭、手足、外陰、臀部など汚れやすい所は入浴時以外でも清拭する。夏期は全身の清拭や、入浴回数をもう一回増やしてもよい。また、衣類の洗剤、柔軟剤に注意をする。
生後1か月位から、徐々に外の空気に慣れさせるようにする。
自然に運動ができるような衣服の選択、おむつのかけ方、おむつカバーの選択をする。首がすわってくれば手をもって引き起こしたり、腹ばいで運動させる。
あやしたり、声をかけたり、抱いたりすることの必要性を指導する。(注)<乳幼児揺さぶられ症候群> 乳児が激しく揺さぶられたり、叩かれたりするような大きな衝撃を与えられると、身体(特に、脳や視神経)に損傷を受け、重大な障害が残ったり、死亡することもある。また、軽症の場合でも、食欲低下、むずかりが多いなど、はっきりしない症状が続くこともある。
母親との信頼関係、アタッチメントの形成の時期。乳児の要求に応え、満足させることによって親子関係の確立ができる。父親の役割としては、母親の心身安定の援助が必要である。
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発 育発 達
生理現象と保育
栄 養
清潔
健康増進
体重増加
発 達
便
尿
体温
その他
哺乳
離乳と離乳食
皮膚の清潔
外気浴
運動
遊び相手
健診時の測定値だけでなく、出生時、退院時、或いは前回健診時の測定値や、カウプ指数などを参考に判断するが、哺乳量のみならず哺乳方法(母乳栄養の場合は母親の乳房、乳汁の性状、抱き方など、人工栄養の場合は調乳法や哺乳びんの栓のしめ方など)を確認し、指導をする。特別な疾病や症状が認められず、なお観察を要する場合は指導項目を明確にしてから、2~4週後に再測定をする。
特に疾病がない場合でも、保育状況(寝かせっぱなし、声をかけない)によっては、月齢相当の発達を示さないので、保育上の指導を明確にし、3~4週後に再観察をする。
回数、色、性状などについて聴取し、正常か病的かの判断をする。回数が多く、体重増加不良も認められる場合は便を実際確認する。また回数が少ない(3~4日に1回)場合でも、自然排便があり、食欲もよく、腹部の膨満がない場合は特に問題としなくてもよい。肛門部の刺激も試みる。(胆道閉鎖症の項を参照)
尿の回数は一般に母親が考えているよりも多く(食事回数の3倍くらい)、また皮膚に対する刺激も強い(おむつかぶれの原因)ので、それを認識させ、おむつ交換の必要性と、交換時の皮膚の清拭、乾燥を指導する。夏期にはおむつが赤変する(尿酸あるいは他の原因)ことがある。
生後間もない間はまだ体温が不安定であるので、室温に特に注意が必要である(18~20℃)が、2週間も過ぎれば10~30℃程度であれば特に冷暖房を必要としない。冷暖房機器を使用する場合はいずれにしても過度にならないよう注意し、室内の換気に気をくばる。乳児の保育はその家の一番環境のよい(採光、風通し)部屋を選ばせる。衣類の数は、環境温と乳児の発汗状態(衿もとから背中に手を入れてみる)から細やかに調節するのがよいが、暑い時は大人より1枚少なめ、寒い時は1枚多めが目安であろう。なお哺乳時は1枚脱がせてから行った方がよい。
1~2か月頃までは、くしゃみ、はなづまり、せき、喘鳴、いきみ、しゃっくり、口唇や四肢の軽い振戦などが、決して病的でなく起きることが多いので、必要以上の心配をもたせないよう指導する。しかし、これらの症状が単発でなく他の関連症状と重複したり、持続、頻発したり、増強する時には注意をする。
原則として初乳からの母乳哺育をすすめるが、母乳不足の訴えがあった場合は、母乳分泌の状況をチェックしてから必要な場合にのみ人工乳の添加を考慮する。なお母乳栄養の場合は母親の栄養指導も重要である。またビタミンK不足の徴候に注意をすること。哺乳後の排気方法、溢乳と吐乳の相異を指導する。口腔の清潔(3.6 (3) 歯科保健指導のポイント参照)
離乳の開始とは、なめらかにすりつぶした食物を初めて与えた時をいう。その時期は生後5,6か月ごろが適当である。乳児にとって、最適な栄養源は乳汁(母乳または育児用ミルク)である。離乳の開始前に果汁を与えることについては、果汁の摂取によって、乳汁の摂取量が減少すること、たんぱく質、脂質、ビタミン類や鉄、カルシウム、亜鉛などのミネラル類の摂取量低下が危惧されること、また、乳児期移行における果汁の過剰摂取傾向と低栄養や発育障害との関連が報告されており、栄養学的な意義は認められていない。
からだの汚れの部位を確認し、入浴の回数、洗い方を指導する。また顔、頭、手足、外陰、臀部など汚れやすい所は入浴時以外でも清拭する。夏期は全身の清拭や、入浴回数をもう一回増やしてもよい。また、衣類の洗剤、柔軟剤に注意をする。
生後1か月位から、徐々に外の空気に慣れさせるようにする。
自然に運動ができるような衣服の選択、おむつのかけ方、おむつカバーの選択をする。首がすわってくれば手をもって引き起こしたり、腹ばいで運動させる。
あやしたり、声をかけたり、抱いたりすることの必要性を指導する。(注)<乳幼児揺さぶられ症候群> 乳児が激しく揺さぶられたり、叩かれたりするような大きな衝撃を与えられると、身体(特に、脳や視神経)に損傷を受け、重大な障害が残ったり、死亡することもある。また、軽症の場合でも、食欲低下、むずかりが多いなど、はっきりしない症状が続くこともある。
母親との信頼関係、アタッチメントの形成の時期。乳児の要求に応え、満足させることによって親子関係の確立ができる。父親の役割としては、母親の心身安定の援助が必要である。
親子関係
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第4節 6~10か月児の健康診査1. 健診の意義 6~7か月と9~10か月は、ともに発達のチェックの適したkey ageである。満7か月では、お坐りができ、視性立ち直り反射や顔に布をかけるテストでの評価、手を伸ばして物をつかむ、いろいろの音に対する確認に適しており、満10か月では、つかまって立ち上がることができ、パラシュート反応での評価、ニギニギ・バイバイなどの真似、人見知りの確認に適している。また、それまでに経過観察されていた発達の課題を評価する時期として利用しやすい。
2. 健診で把握すべき基本事項
一般的事項
栄養
発達
疾
病
子育て
児 一般事項:氏名、性、生年月日、出生順位、受診年月日(月-日齢)、両親氏名、年齢、職業、 世帯主氏名、住所、電話番号 出生時状況 早期新生児期状況 1か月児健診時状況 3~4か月児健診時状況母 妊娠時状況 分娩時状況 家庭 家族構成と健康状態(現在治療中の疾病、結核などの感染症) (その他1か月児健康診査の項参照)
哺乳状況離乳食の状況
運動(寝返り、腹ばい、坐位の姿勢、つかまり立ち、おもちゃを持つ、持ちかえる、口へ持っていく)聴覚(後ろから声をかけふり向く) 反応(人見知り、人まね、バイバイ)
体重増加不良、嘔吐、下痢、便秘痙攣(ひきつけ)、意識そう失眼位異常、光に対するまぶしがり聴覚異常広汎性発達障害(疑)既往症
保育者、保育器具、子育て上の不安、親の精神的状態、子ども虐待等に注意清潔(おむつ、下着の交換、入浴、清拭)、あそび(相手になる時間と内容)歯の手入れ
身体計測値と異常の有無 異常のあった場合の精検、治療の内容予防接種
異常の有無と治療の有無
109
【参考】(1)運動の発達段階の把え方は保護者によって異なるので、一定の基準を決めて聴取する。 例 寝返り(仰臥位から自力で腹臥位)、お座り(両手を離して自力で1分間以上坐位)はいはい(1ⅿ以上の 移動)(2)6~7か月以後になると見えない所からの音(人の声、ラジオやテレビの音、となりの部屋の物音など)に敏感 にすばやく振り向くようになり、個体差もほとんど無くなる。(3)網膜芽細胞腫
眼内の悪性腫瘍の内で最も多い。発症は1歳前が多く、ほとんどが2歳未満の発症である。その頻度は、約1万6千の出生に1件と言われる。現在では、治療法が進歩し、発見が早ければ生命予後はもちろん、眼球摘出もしなくてすみ、視力の予後も良くなってきている。初発症状は白色瞳孔が75%、次いで斜視が12%である。遺伝子の異常があるものがあり、特に両眼性ではほぼ全例が遺伝性なので、親が罹患している時には注意が必要である。
3. 健診に用いられる問診項目 6~7か月児
【6~7か月児】◎ 離乳食を始めましたか。(離乳食を始めて1か月位したら1日2回食にし、食品の種類を 増やしていきましょう。7、8か月頃から舌でつぶせる固さにします。)◎ 寝返りをしますか。( か月 日頃から) 【参考1】◎ おすわりをしますか。( か月 日頃から)◎ からだのそばにあるおもちゃに手をのばしてつかみますか。( か月 日頃から)◎ 家族といっしょにいる時、話しかけるような声を出しますか。( か月 日頃から)◎ テレビやラジオの音がしはじめると、すぐそちらを見ますか。・ 見えない所からの音や呼びかけに明らかに振り向きますか。【参考2】◎ ひとみが白く見えたり、黄緑色に光ってみえたりすることがありますか。【参考3】・ 目つきがおかしいとか、明るいところでは眼を閉じてしまうことがありますか。・ 変わった動作(例えば急に首をたれ、うずくまるような動作)をすることがありますか。・ 初めての歯は、生えましたか。◎ 最近、何か病気をしましたか。◎ 子育てについて困難を感じることはありますか。
◎印は、母子健康手帳の保護者記録欄にある質問と同じ項目
110
◇ 発育の評価 測定値の大小よりも発育曲線に沿った変化かどうかに着目する。【見逃したくない所見】 身体発育不良(発達の遅れや被虐待児とも関連する)
【見逃したくない所見】 人見知りをしない、あやしても声を出して笑わない、 喃語が少ない、おとなしい(広汎性発達障害などの 初期症状である場合もある
診察のポイント 6~7か月児健診
発育状況の確認
問診結果の確認
診察の手順と観察ポイント
診察結果の判定
◇ 発達の評価 寝返りをしない、お坐りをしない(運動発達の遅れ)
◇ 体重・身長・頭囲◇ 栄養
身身体発育曲線に沿って増加しているか授乳や離乳の状
母子健康手帳や保健師などによる問診結果をチェックする。
◇ 発達状況
◇ 既往症◇ 予防接種◇ 子育て状況
◇ 心配事の有無
1234567891011121314
臥位で全身観察(顔貌、皮膚、姿勢、自発運動)胸部聴診腹部触診引き起こし反射で坐位へ坐位でのパラシュート反応頭部触診斜視、眼振、睫毛内反のチェック頚部触診聴覚テスト(背後で音を出させて振り向かせる)両手をもって立位へ(四肢筋力、姿勢、運動観察、特に下肢)腹臥位で背部観察(翼状頚、脊柱の異常)仰臥位で顔に布をかけるテスト外性器観察口腔内視診
運動発達(寝返りをしますか、お坐りをしますかそばにあるおもちゃに手を伸ばしてつかみますかなど)の確認精神発達(家族と一緒にいる時、話しかけるような声を出しますかなど)聴覚(見えない所からの音や呼びかけに明らかに振り向きますかなど)先天異常など疾病の有無など既往症、感染症の罹患接種済みワクチンの確認と未接種ワクチンの勧奨ゆったりとした気分で子と過ごせるか、子育ての相談相手がいるかなど子育て状況や支援者の確認。問診票に記載がない場合も、医師の立場で尋ねる
4.2.1 体重の評価 4.2.2 身長の評価4.2.3 頭囲 4.2.6 身体発育不良
4.3.2 授乳の支援
寝返りは、7か月で95%ができ、仰臥位から腹臥位にまたはその逆ができる。お坐りは、7~8か月で80%ができる。5か月で手を伸ばしてつかみ、6か月でつかんだおもちゃをもう片方に持ち替える。
4~5か月で喃語が出現、6~7か月で話しかけるような、あるいは話しかけに応えるように「アーアー」と声を出し始める。
4.4 疾病を持つ子どもの理解と支援
疾病を持つ子どもの子育ては、その予後をも変えることがある。
アタッチメントの形成特定の養育者(通常は母親)に、特に強く反応し、人見知りするようになる。何か欲しいものがあると「アーアー」と声を出して要求することもある。
4.2.27 被虐待跡4.2.17 心音異常4.2.18 腹部腫瘤4.2.19 臍ヘルニア
2.2.2 発達とその評価
4.2.11 大泉門開大
4.2.13 追視4.2.14 斜視4.2.15 聴覚異常
4.2.20 停留精巣4.2.21 そけいヘルニア
腹臥位の習慣がなく、腹臥位が嫌いなために寝返りをしない場合もある。
4.2.1 体重の評価
(章)(節)(項)(○○○○)
例参照項目
111
参考(1)外から聞こえる音 ( 犬の鳴き声、自動車や飛行機の音、雨の音など )を、キョロキョロ捜したり、はっていっ たりするなどの反応も見られる。
*言語理解の発達 8~ 10 か月以後:語調やごく簡単な言葉の理解… ……ダメ、イケマセンなど禁止がわかる。 オイデオイデ、バイバイなどの言葉かけに応じた行動 (ジェスチャーなしでも)など。 *言語表現の発達 6~ 10 か月:喃語期………意味はまだ無いがさかんにそれらしくおしゃべりをする。 11 か月以後:始話期………意味のある語を言い始める。( マンマ、ワンワン、パパなど )
4. 健診に用いられる問診項目 9~10か月児
【9~10か月児】◎ 離乳食は順調にすすんでいますか。 (離乳食を3回にすすめましょう。9か月頃から歯ぐきでつぶせる固さにします。)◎ はいはいをしますか。( か月 日頃から)◎ つかまり立ちができますか。( か月 日頃から)◎ 指で小さい物をつまみますか。◎ 後追いをしますか。 ・ バイバイといって手を振ると、まねをしますか。 ・ 外のいろいろな音に反応を示しますか。【参考1】◎ 機嫌よくひとり遊びができますか。◎ そっと近づいて、ささやき声で呼びかけると振り向きますか。◎ 歯の生え方、形、色、歯肉などについて気になることがありますか。◎ 最近、何か病気をしましたか。◎ 子育てについて困難を感じることはありますか。 ◎印は、母子健康手帳の保護者記録欄にある質問と同じ項目
112
◇ 発育の評価 測定値の大小よりも発育曲線に沿った変化かどうかに着目する。【見逃したくない所見】 身体発育不良(発達の遅れや被虐待児とも関連する)
【見逃したくない所見】 這い這いをしない(運動発達の遅れ)。 後追いをしない、ひとりで遊ぶことが多い、名前を呼んで も来ないなどの場合は、広汎性発達障害や精神発達遅 滞も考慮する。 呼びかけやテレビの音に反応しない場合には聴力の再 検査が必要。
診察のポイント 9~10か月児健診
発育状況の確認
問診結果の確認
診察の手順と観察ポイント
診察結果の判定
◇ 発達の評価
◇ 体重・身長・頭囲◇ 栄養
身体発育曲線に沿って増加しているか離乳食
母子健康手帳や保健師などによる問診結果をチェックする。
◇ 運動発達
◇ 精神発達
◇ 既往症◇ 予防接種◇ 子育て状況
◇ 心配事の有無
123456778910101112
全身観察(顔貌、皮膚、姿勢、自発運動)胸部聴診腹部触診引き起こし反射で坐位へ頭部触診斜視、眼振、睫毛内反のチェック頚部触診聴覚テスト(背後で音を出させて振り向かせる)両手をもって立位へ(四肢筋力、姿勢、運動観察、特に下肢)立位でホッピング反応腹臥位にして這い這いの観察両腋で抱き上げてパラシュート反応外性器観察口腔内視診
運動発達(這い這いをしますか、つかまり立ちができますか、 指で小さいものをつまみますかなど)の確認精神発達(後追いをしますかなど)、社会性の発達(自分から抱いてもらいたがる、バイバイと いって手を振るとまねをする、「だめ」というと、 ちょっと手を引っ込めて親の顔を見るなど)先天異常など疾病の有無など既往症、感染症の罹患接種済みワクチンの確認と未接種ワクチンの勧奨ゆったりとした気分で子と過ごせるか、子育ての相談相手がいるかなど子育て状況や支援者の確認。問診票に記載がない場合も、医師の立場で尋ねる
4.2.1 体重の評価4.2.2 身長の評価4.2.3 頭囲4.2.6 身体発育不良
4.3.2 授乳の支援
9か月では90%がずり這いか、四つ這いで移動できる。9か月児の90%はつかまり立ちできる。干しブドウなど9か月児の95%が親指と人指指でつまめる。
4.4 疾病を持つ子どもの理解と支援
疾病を持つ子どもの子育ては、その予後をも変えることがある。
アタッチメントの形成後追い行動や母親がいなくなると不安になって泣く行動を示す。
4.2.27 被虐待跡4.2.17 心音異常4.2.18 腹部腫瘤 4.2.19 臍ヘルニア
2.2.2 発達とその評価
4.2.11 大泉門開大
4.2.14 斜視4.2.15 聴覚異常
4.2.20 停留精巣4.2.21 そけいヘルニア
シャフリングベビー‘7~8か月よりお坐りはできるが、這い這いはせずに、9か月頃より坐ったままでのいざり歩き(shuffling)を始める。40%に家族歴がある。1歳6~9か月でひとり歩きし、その後の発達は順調である
健診時に泣いてばかりで評価が出来ない場合は、経過観察による発達チェックが必要である。
4.2.1 体重の評価
(章)(節)(項)(○○○○)
例参照項目
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◇ 疾病の発見ポイント 6~10か月児4.2.27 被虐待児
2.4.1 虐待予防4.3 子育て支援・保健指導
3~4か月児健診結果や既往症などの問診結果も参考にして診察する。説明のつかない外傷、皮膚やおむつの清潔が極端に悪い場合は必ず継続的な支援につなげる。
◇ 子育て支援に果たす医師の役割 子育て支援には、多職種の連携が大切である。子どもの発育発達に遅れが疑われる場合、周産期からの健康課題(低出生体重児、先天異常ほか)を持つ場合には、親の子育てはより困難となり不安も高まる。自らは継続的な経過観察ができない場合でも、医師が保健機関や関係機関での相談を勧めることで、親はより安心して支援を受け容れることができる。子ども虐待が疑われる場合にも、通告義務を果たすとともに、継続的にかかわることのできる支援者へのつなぎをこころがけるべきである。
頭部大きさ、形状大泉門の大きさ、緊張
顔貌(表情、反応)眼(眼脂、眼振、睫毛内反、斜視)口腔(生歯)聴力(反応)
頚部リンパ節、甲状腺腫瘤、翼状頚、正中瘻
皮膚色(蒼白、黄疸、チアノーゼ)緊張感(ツルゴール)[緊満度]発疹(湿疹)血管腫、母斑、白斑
四肢形態、立位(筋緊張)、自発運動
泌尿・生殖器、肛門陰のう水腫、停留精巣、そけいヘルニア奇形(半陰陽)仙骨部腫瘤、瘻孔
顔面
胸部胸郭変形呼吸パターン心音(心雑音、不整脈)呼吸音
腹部形状、緊張、血管怒脹肝脾腫、腫瘤、臍ヘルニア
精神発達人みしり、バイバイ(手を振る動作)顔に布をかけるテスト
姿勢坐位、腹臥位の姿勢
神経発達引き起こし反射横パラシュート反射垂直保持
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黄 疸
湿 疹皮 膚 炎
血 管 腫(血管母斑)
色素性母斑
さかまつげ
斜 視
躯 幹
心雑音
ヘルニア
陰のう水腫
停留精巣
開排制限(股関節脱臼)
出生後の皮膚黄染の程度の変化を聴取する。既測定のビリルビン値、栄養法 (母乳栄養)、哺乳力、尿・便の色、その他一般状態を参考に精検を考慮する。柑皮症に注意。
(1)脂漏性湿疹:脂腺分泌の著しい頭頂部によくみられる。軽度のものはオリーブ油など でよく拭き取るか、石けんでよく洗い流す。経過が長く、黄色調のものは、細菌の繁 殖により皮膚炎を起こしている。この場合は受診が必要。(2)おむつかぶれ:糞便、尿分解産物などにより起こる。排泄後速やかにぬるま湯(水) で洗浄又は清拭し、乾布で水分をとり、しばらくおむつを当てないでおくとよい。(3)汗疹(あせも):汗腺の閉鎖による湿疹様皮膚炎。夏のみでなく暖房のため冬にもあ る。清潔を第一に、入浴、行水は毎日する。(4)アトピー性皮膚炎:かゆみがあり、慢性・反復性に経過する。皮膚を清潔に保ち、刺 激を少なくする。小児科か皮膚科を受診し、塗り薬は、症状・部位に応じて使用する。 特定の食物を食べると悪化する場合は、医師の指示のもと食事制限を行うこともある が、母親の自己判断で食事制限をしないように注意する。
その種類、部位、大きさで処置が異なる。(1)単純性血管腫:皮膚面と平行で、ウンナ型(項部)、サーモンパッチ(眉間、上眼瞼) 以外のものは自然消退しにくいが、1歳以下ではレーザー治療が有効なことがある。 希望があれば専門医を受診させる。(2)苺状血管腫:生後1か月前後に出現し、6~12か月位までは増大するが、その後退行 し、4~5歳までに消失することが多い。1歳以下ではレーザー治療が有効なことが ある。
(1) 蒙古斑:臀部を中心に出現する青色調の色素斑で、東洋人にはほとんど必発するが、 7~8才までに自然消退するので放置してよい。時には背中、四肢にも連続的あるい は単独に出現するが、この中には消退せずに持続するものがある。異所性蒙古斑は、 早期のレーザー治療が有効なことがあるので、希望があれば専門医を紹介する。(2)色素性母斑:褐色~黒褐色~黒色~青色にいたる身体の随所に出現する母斑であり、 消退しない。この中で色調が不整のもの、手掌・足底部に出現するものや巨大なもの は、悪性化の可能性があるので専門医へ紹介する。
通常は自然治癒するので放置でよいが1歳6か月児健診で再チェックする。両親の状態が参考になる。
乳児は一見内斜視様であるが、両眼の間の皮膚をつまむと正常か否かの判別がしやすい。またペンライトによる角膜反射が中央かどうかをみる。斜視:3~4か月児健診で斜視があれば精検また斜視の強いものは中枢神経系の異常にも注 意する。
胸鎖乳突筋に腫瘤を触知する場合は、要精検とする。
先天性心疾患が疑われる場合は、要精検とする。
臍ヘルニア:自然治癒が多いので放置でよい。1歳以降、治癒しない場合は、医療機関を紹 介する。そけいヘルニア:自然治癒もありうるので、3~6か月間かんとん時の注意を与えておいて 経過をみる。再検診の上精検を決定する。 女児で恥骨上に小腫瘤が触れる場合は直ちに小児外科へ紹介する。
自然治癒しやすいので放置でよいが、3~4か月児で内容が多く、緊満している場合は精検へまわす。
生後6か月までは、自然降下が見られることがある。現在、理想的手術時期は、生後6か月から1歳6か月までの間といわれている。精巣が挙上した状態であれば、専門医への受診を勧める。入浴時や睡眠中に触知可能なら問題のないことが多い。
下肢の自然肢位を妨げないように注意し(自然に運動ができるようなおむつのかけ方、抱き方など)、明らかに開排制限がある場合は要精検とする。 *自然肢位の保護
5. 特徴的な疾病や所見 6~10か月頃ウエスト症候群(点頭てんかん)
熱性けいれん
視・聴覚異常
シャフリングベ ビ ー
精神発達遅滞
3~10か月児に好発する頭部前屈を伴う全身の前屈発作(瞬間的)がある場合(突然おじぎをするような姿勢)はこれを疑い、小児神経医に紹介する。
小児の5%前後が経験し、6歳ころには消失する疾病である。熱の上昇時に1回だけ生じ、左右差なく、2~3分以内に消失する単純性熱性痙攣は、有熱時などに解熱剤や抗痙攣剤を一時的に服用するのみで経過観察することが多い。しかし、単純性以外の熱性痙攣や2~3回以上再発する場合は、脳波を検査し、発熱時にジアゼパムを使用し、それでも熱性痙攣が起こるときは抗痙攣剤を継続服用することもある。
視・聴覚の反応異常がある場合は、発達障害(運動、精神)による異常反応から区別し、それぞれの専門医へ紹介する。母の妊娠中の異常、家族歴に注意する。
知能発達は正常であるが、筋緊張が軽度に低下し、腹ばいや寝返りを好まない。下肢を伸ばして床につこうとしないで、座った姿勢で移動したがる。歩行開始は1歳半~2歳くらいになるが、その後の発達はふつう正常化する。他疾患と鑑別のため専門医の受診必要。
精神面の発達が該当月数に至らない場合、その生活状態をよく観察し、育児不良による発達遅滞と区別していく。具体的には目をみて声をかける(単純な言葉で大きく、はっきりと何度もくりかえす)。体を使ったり、体に触れたりする遊びを多くする。危険に対する禁止を何度もくりかえすが、ほめることをできるだけ多くして、親子の接触を強めていくなど指導する。また3~4か月毎に発達のチェックをし、生活習慣のレベルを上げていく。
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6. 保健指導のポイント 6~10か月頃
う蝕予防
親子関係
事故防止
遊び
その他
離乳開始1~2か月頃(7・8か月頃)から1日に2回さらに3か月経過後(9~11か月頃)から1日に3回にし、12か月~18か月頃に完了する。アレルギーにおいて、予防的な食物除去は推奨されず、特定の食物を食べると湿疹等が悪化する場合は、医師の指示のもと食事制限を行うこともあるが、保護者の自己判断で食事制限をしないように注意する。
2.3 乳幼児の歯科保健を参照
親の存在を十分に認識させる時期であり、スキンシップが重要なポイントとなる。外界に対して興味がでてくるが、また恐怖感も強くなる時期であるので、必ず傍に存在し、抱いて恐怖を解消させること。常に語りかけながら世話をすること。また父親も毎日少しでも接触時間を持ち、スキンシップにつとめる。
睡眠時間は個人差があるが(12~15時間)、午後8時頃までには就寝させ、昼間も1~2回の睡眠をとらせる。起床時に十分遊ばせれば自然にリズムがでる。
離乳期は食生活のリズムを作る最も大切な時期であるので、それまでの哺乳時間を尊重し、離乳食を含めて5回程度に調整していく。1回を30分程度で終了する。
おむつの清潔さに対する正常な感覚を養っておくことが大切な時期。
発達に伴う行動パターンに応じた事故防止策をとる。手の届く範囲に危険なもの(たばこ、小物、医薬品、ビニール袋、ナッツ類等)を置かないなど。(1.4.3 子どもの事故予防 を参照)
子どもが遊び相手を欲しがる時は原則として相手になる(全く相手を欲しがらない時は要注意)。しかしひとり遊びが始まってくる時期でもあるので、危険がなければ手を出さないでひとり遊びの楽しさを十分味わせる。
玩具と発達
玩具は乳幼児の知能と運動機能の発達に大きな役割を果す。 1 既製の玩具のほか、家庭用品や動物、草木、石などの自然物も玩具となる。 2 危険がなく、丈夫で衛生的なもの、道徳的美的で写実性に富むもの。 3 発達段階に沿ったもの。 4 色は鮮明で赤・黄・緑などの原色に近いもの。 5 玩具の数はあまり多くない方がよく、また一度に沢山の玩具を与えない。
(鈴木 榮著「育児相談のために」より)
栄 養 離 乳
睡 眠
食 事
排 泄
しつけ
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