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知ってると便利なテクニック集 解析結果を数値出力するには ~解析値CSV出力~ 解析結果を直感的にわかりやすく伝えるためには、ア ニメーション等を用いた結果表示が非常に有効かと思 いますが、解析の目的、結果のプレゼンテーションの 方法などによっては、結果数値を表やグラフにまとめ たものが必要なケースも多いかと思います。 FlowDesignerは、解析結果をcsvファイルとして数値 出力をすることが可能です。 詳細は弊社FAQを。 http://www.akl.co.jp/faq/ phps/callpage.php?id=115 オブジェクトの分類 FlowDesignerの操作で本紙編集部が個人的に感じた 便利なワザ、知ってほしいテクニックをピックアップ! 使いこなせればモデリングの効率アップ、または結果表 示のバリエーションの幅が広がるはずです。 オブジェクトを作成していくと、役割・機能ごとに整理 した方が編集をしやすくなります。例えば、『熱通過率 を設定した窓オブジェクト』『壁オブジェクト』など。 これらを一括選択して、設定値を変更することは非常に 機会が多いはずです。 次号のテーマは「エッジメッシュの数を減らしたい」です。 第2号 ①計算終了後、数値を出力し たいポイントに、領域指定 オブジェクトを置きます。 ②「ツール」メニュー>「解 析値CSV出力」を選択しま す。またはツールバーの アイコンをクリックします。 ③数値出力したい解析対象、 出力範囲(オブジェクトで 指定)などを設定して、 「出力」を押します。 ④プロジェクトフォルダにcsv ファイルが生成されます。 <作成手順> 計算終了後に 出力する対象を 設定します。 左図は、夏場の部屋 に冷房を設置し、部 屋を冷やそうという 解析モデルです。 非定常計算を行い、 A,B、Cの3か所 での温度の時間変化 を数値出力します。 冷房 2.2kwA B C 先ほどの操作手順の通りに、 観測点に領域指定オブジェクト を配置して、「解析値CSV」を 行うと右のようなcsvファイル が出力されます。 A: オブジェクト(29) B: オブジェクト(30) C: オブジェクト(31) A B C CSVは要素単位でも出力で きるため、計算の詳細な検 証に有用です。また表計算 ソフトを用いて、解析結果 をグラフにまとめるなど活 用の幅は広いかと思います。 <オブジェクト編集の効率化> 窓オブジェクト 熱通過率の変更 壁オブジェクト 物性値の変更 ここで力を発揮するのが『分類』機能です。 <分類の設定方法> オブジェクトを選択した状 態で、右クリックメニュー の『分類』で設定します。 設定した『分類』はオブ ジェクトエクスプローラ上 部のアイコンで「分類表 示」にすることで確認する ことができます。 <オブジェクト表示の限定> 設定を一括変更する際に、キャンパス上で複数選択、範囲 選択などをすると思いますが、オブジェクト数が多くなっ てくると選択しづらくなります。そのときに『1階』 『床』『西側1』など分類を与えておくと、その部分だけ 表示/非表示、ロックなど容易にできるので、選択しやす くなります。 IFCファイル取り込み時の分類> IFCファイルを取り込んだ際には、 自動的にエンティティごとに分類さ れています。オブジェクト数が非常 に多いとき、必要な『分類』だけを 表示させることで、レスポンス速度 を落とさずに操作・編集できます。 <活用例>

第2号 - AKL桃瀬先生の流体解析講座 < 蒸気機関の発明 > 熱と人類とのかかわりは太古にまでさかのぼり、時代に応じて巧みに熱を利用し

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知ってると便利なテクニック集

解析結果を数値出力するには ~解析値CSV出力~

解析結果を直感的にわかりやすく伝えるためには、アニメーション等を用いた結果表示が非常に有効かと思いますが、解析の目的、結果のプレゼンテーションの方法などによっては、結果数値を表やグラフにまとめたものが必要なケースも多いかと思います。FlowDesignerは、解析結果をcsvファイルとして数値出力をすることが可能です。

詳細は弊社FAQを。

http://www.akl.co.jp/faq/ phps/callpage.php?id=115

オブジェクトの分類

FlowDesignerの操作で本紙編集部が個人的に感じた 便利なワザ、知ってほしいテクニックをピックアップ! 使いこなせればモデリングの効率アップ、または結果表示のバリエーションの幅が広がるはずです。

オブジェクトを作成していくと、役割・機能ごとに整理した方が編集をしやすくなります。例えば、『熱通過率を設定した窓オブジェクト』『壁オブジェクト』など。 これらを一括選択して、設定値を変更することは非常に機会が多いはずです。

次号のテーマは「エッジメッシュの数を減らしたい」です。

第2号

①解析モデルを作成。

②計算実行。

③計算実行。

解析領域: 5× 3 × 2 [m3]

解析領域: 5× 3 × 2 [m3]

①計算終了後、数値を出力したいポイントに、領域指定オブジェクトを置きます。

②「ツール」メニュー>「解析値CSV出力」を選択します。またはツールバーのアイコンをクリックします。

③数値出力したい解析対象、出力範囲(オブジェクトで指定)などを設定して、「出力」を押します。

④プロジェクトフォルダにcsvファイルが生成されます。

<作成手順>

計算終了後に

出力する対象を 設定します。

左図は、夏場の部屋に冷房を設置し、部屋を冷やそうという解析モデルです。 非定常計算を行い、A,B、Cの3か所での温度の時間変化を数値出力します。

冷房(2.2kw)

A

B

C

先ほどの操作手順の通りに、 観測点に領域指定オブジェクトを配置して、「解析値CSV」を 行うと右のようなcsvファイルが出力されます。

A: オブジェクト(29) B: オブジェクト(30) C: オブジェクト(31)

A B

C

CSVは要素単位でも出力できるため、計算の詳細な検証に有用です。また表計算ソフトを用いて、解析結果をグラフにまとめるなど活用の幅は広いかと思います。

<オブジェクト編集の効率化>

窓オブジェクト 熱通過率の変更

壁オブジェクト 物性値の変更

ここで力を発揮するのが『分類』機能です。

<分類の設定方法>

オブジェクトを選択した状態で、右クリックメニューの『分類』で設定します。 設定した『分類』はオブジェクトエクスプローラ上部のアイコンで「分類表示」にすることで確認することができます。

<オブジェクト表示の限定>

設定を一括変更する際に、キャンパス上で複数選択、範囲選択などをすると思いますが、オブジェクト数が多くなってくると選択しづらくなります。そのときに『1階』『床』『西側1』など分類を与えておくと、その部分だけ表示/非表示、ロックなど容易にできるので、選択しやすくなります。

<IFCファイル取り込み時の分類>

IFCファイルを取り込んだ際には、自動的にエンティティごとに分類されています。オブジェクト数が非常に多いとき、必要な『分類』だけを表示させることで、レスポンス速度を落とさずに操作・編集できます。

<活用例>

オブジェクトをグループ分けするという意味で『グループ化』と似ている面もあります。『グループ化』したものはそれを1つの新しいオブジェクトとして扱われますが、『分類』したものは個々のオブジェクトのままであるため、オブジェクト移動・回転などの動作に変わりはありません。

FlowDesigner の 解析事例

音楽ホール空調解析

目的

解析モデル

ホール内の観客席温度を一定にすることは、観客席範囲が広く、階層構造を持っているため非常に難しい問題です。 上図の音楽ホールについて、吹出風量と温度を一定の基で計算すると客席エリアは、 最高:27.9℃、最低:25.7℃、平均:26.7℃ となりました。結果の温度分布が全体的に高く、分布も不均一になっています。 この問題に対して【逆解析】という手法を用いると、対象エリアを目的の温度に近づけるための最適な『吹出温度』とその『配分』を算出することができます。

逆解析を行い、吹出温度調整を行うことにより、観客席の温度分布を以下のように目標温度に近づけることができました。 最高:24.9℃、最低:22.8℃、平均:23.9℃ 改善後の吹出温度の分布に注目すると、2階の吹出温度を1階より比較的低く設定すると、 客席温度が一定になる傾向を読み取ることができます。

今月号はFlowDesignerの最上位版であるEnterprise版での逆解析を用いた例をご紹介します。

現状

解析領域: 24m × 18m × 13m

流出入条件: 天井吹出 × 9 か所 (24 [m3/min] , 23℃) 1階席吹出 ×15 か所 (24 [m3/min] , 23℃) 舞台天井吸込 × 4 か所 (14 [m3/min] ) 側壁吸込 × 4 か所 (30 [m3/min] ) 舞台袖吸込 × 2 か所 (100 [m3/min] )

発熱条件: 客席発熱 (1・2階) ×10 か所 (2000 [W]) 照明発熱 (天井・2階) (5000 [W]) 照明発熱 (1階) × 2 か所 (4000 [W]) ステージ発熱 (5000 [W])

変更条件

1階席吹出×15

天井吹出×9

空調器の吹出温度を変更可能なパラメータとし、 「18℃~25℃」 を変更範囲とします。 (風量、風向は変更 しない)

ターゲット

観客席に均等に配置した「ターゲット」の温度を 『24℃』で均一化 することを目的とします。 1階、2階観客席にターゲット

(図中の青■)を均等に配置

解析結果

改善後

1階吹出温度配分 2階吹出温度配分

目標温度ライン

座席 (各ターゲット)位置の温度変化

逆解析について、詳細は弊社ホームページをご覧ください。 http://www.akl.co.jp/products/index.php

桃瀬先生の流体解析講座

< 蒸気機関の発明 >

熱と人類とのかかわりは太古にまでさかのぼり、時代に応じて巧みに熱を利用し

てきました。しかし、熱が科学として確立されたのは、前述しましたように19世

紀です。そこで、ここでは18世紀のヨーロッパを舞台にお話をはじめたいと思い

ます。18世紀というとみなさんご存知のように、ワットが蒸気機関を発明

(1765年)し、人類が熱から動力を取り出すことに成功した記念すべき時代で

す(正確には、ニューコメンという人が1712年に、蒸気を利用した揚水ポンプ

を考案していましたが、非常に大掛かりな装置でゆっくり動く蒸気機関でした)。

そして、この発明がイギリスに産業革命を起こしました。この事実を見ますと、

18世紀にはすでに熱に関するかなりの知識があったように思えますが、実際のと

ころは経験に基づく発明であり、技術が科学を先行していた時代だといえます。

事実、このころ熱の本質は熱素という物質の一種であると考えられており、これ

がこの時代の常識だったのです。その後蒸気機関は、外輪船(フルトン、

1807)や機関車(スチブンソン、1829)に応用され、技術としては確立されて

いきますが、あくまで技術者または経営者の関心の対象でした。そして、この蒸

気機関を科学の目で見つめなおしたのはイギリス人ではなくその敗戦国フランス

の若者カルノーでした。

2.蒸気機関とカルノー

桃瀬 一成 (工学博士)

現アドバンスドナレッジ研究所の取締役・技術フェロー。FlowDesignerに搭載されている逆解析機能の開発者。元大阪大学大学院基礎工学研究科の准教授で2011年よりアドバンスドナレッジ研究所の専任開発に従事。

2.蒸気機関とカルノー

熱と人類とのかかわりは太古にまでさかのぼり、時代に応じて巧みに熱を利用

してきました。しかし、熱が科学として確立されたのは、前述しましたように19

世紀です。そこで、ここでは18世紀のヨーロッパを舞台にお話をはじめたいと思

います。

18世紀というとみなさんご存知のように、ワットが蒸気機関を発明(1765年)

し、人類が熱から動力を取り出すことに成功した記念すべき時代です(正確には、

ニューコメンという人が1712年に、蒸気を利用した揚水ポンプを考案していま

したが、非常に大掛かりな装置でゆっくり動く蒸気機関でした)。そして、この

発明がイギリスに産業革命を起こしました。この事実を見ますと、18世紀にはす

でに熱に関するかなりの知識があったように思えますが、実際のところは経験に

基づく発明であり、技術が科学を先行していた時代だといえます。事実、このこ

ろ熱の本質は熱素という物質の一種であると考えられており、これがこの時代の

常識だったのです。その後蒸気機関は、外輪船(フルトン、1807)や機関車

(スチブンソン、1829)に応用され、技術としては確立されていきますが、あ

くまで技術者または経営者の関心の対象でした。そして、この蒸気機関を科学の

目で見つめなおしたのはイギリス人ではなくその敗戦国フランスの若者カルノー

でした。

カルノーは蒸気機関からすべての無駄を省いた仮想的な熱機関を考え、思考実

験を行いました。そして、現在カルノーサイクルと呼ばれている理想機関にたど

り着きます。カルノーは28歳のとき(1824年)、この結果を「火の動力、およ

びこの動力を発生させるのに適した機関の考察」というタイトルで発表しました。

彼の結論は現在では次のように表現することができます。

熱から仕事を取り出すには高温(絶対温度 TH)と低温(絶対温度 TL)の二つの

熱源が必要であり、これを用いてピストン・シリンダ機関に等温膨張、断熱膨張、

等温圧縮、断熱圧縮させるとき最大の仕事が得られ、そのときの熱効率(機関に

与えた熱量と機関から得られる仕事の比:カルノー効率)は h = 1 -TL / THで

与えられる

つまり、二つの高温熱源と低温熱源から取り出せる最大仕事は、それぞれの熱源

の絶対温度のみで決まるというものです。この結果は、その後の熱の研究に決定

的な影響を与えるのですが、残念ながら当時の科学者からはほとんど見向きもさ

れなかったようです。どうも当時の科学者は貴族的で、技術的・営利的なものに

はあまり関心がなかったようです。そして、カルノーは自分の結果が日の目を見

ることも知らず、36歳の若さでコレラに倒れます。

< 理想機関「カルノーサイクル ! 」>

カルノーは蒸気機関からすべての無駄を省いた仮想的な熱機関を考え、思考実験を行いました。そして、現

在カルノーサイクルと呼ばれている理想機関にたどり着きます。カルノーは28歳のとき(1824年)、この

結果を「火の動力、およびこの動力を発生させるのに適した機関の考察」というタイトルで発表しました。

彼の結論は現在では次のように表現することができます。

熱から仕事を取り出すには高温(絶対温度 TH)と低温(絶対温度 TL)の二つの熱源が必要であり、これ

を用いてピストン・シリンダ機関に等温膨張、断熱膨張、等温圧縮、断熱圧縮させるとき最大の仕事が得ら

れ、そのときの熱効率(機関に与えた熱量と機関から得られる仕事の比:カルノー効率)は h = 1 -TL /

THで与えられる。

つまり、二つの高温熱源と低温熱源から取り出せる最大仕事は、それぞれの熱源の絶対温度のみで決まると

いうものです。この結果は、その後の熱の研究に決定的な影響を与えるのですが、残念ながら当時の科学者

からはほとんど見向きもされなかったようです。どうも当時の科学者は貴族的で、技術的・営利的なものに

はあまり関心がなかったようです。そして、カルノーは自分の結果が日の目を見ることも知らず、36歳の

若さでコレラに倒れます。

世界的に有名なハーバード大学でもFlowDesignerが導入されました

世界に羽ばたくFlowDesigner !!

<発行>

Vol.002 2012年5月号 5分でわかる FlowDesigner

ユーザー向け資料なのでセミナー案内は 「操作体験セミナー」ではなく、中級セミナー のほうがよいか。

メッシュ分割を制す者は CFD を制すっ!

お知らせ

先月号で『限られたメッシュ数の中でどのように分割すればよいか』とありましたが、今月号はメッシュが必要な場所はどこか考えていきたいと思います。 まず最低限必要なメッシュがあります。それは「エッジメッシュ」です。

こんなときに注意っ!

オブジェクトの端(エッジ)を通るメッシュのことです。形状認識の際に元のオブジェクトサイズを、正確に保つために必要となります。

エッジメッシュとは

形状のみを表すオブジェクトは大きさが多少変わっても、解析結果に大きな影響は及ぼしません。しかし、流出入条件、発熱条件などを設定しているオブジェクトについては注意が必要です。 なぜならば、下記の例のように大きさが変わると流量、発熱量などもかわってしまうからです。

オブジェクトサイズが大事?

本紙はユーザー様に流体解析、FlowDesignerにより親しんで頂くため、またより知識を深めて頂くために発行しております。 掲載内容についてご意見・ご要望等お待ちしております。また本紙の増刷ご希望の方・ご不用な方は、お手数ですが弊社までご連絡ください。よろしくお願い致します。 (担当:黒岩)

メッシュ数 形状判定 解析結果 計算時間

10,000 7 秒

1,000,000 26 分

セミナーのお知らせ

◆体験セミナー◆ 6/13 、7/11 、8/8 、9/12 ◆中級セミナー◆ 5/23 、 6/20 、 7/18 、 8/15

リリースのお知らせ

逆解析で簡単に最適解を導きだせる最上位版の Enterprise版を近日リリース予定。

事務所移転のお知らせ

事業拡大のため、事務所を移転することになりました。5月21日(月)より新事務所での営業となります。新住所は本誌末に記載している通りです。セミナー等でご来社される際にはくれぐれもご注意ください。

FlowDesignerで作成したオブジェクトは通常、自動的にエッジメッシュが入る設定がされているため、普段はあまり意識することはありません。ちなみに、エッジメッシュの設定はモデラー画面右下のジオメトリタブの「エッジメッシュ対象」で設定可能です。

計算実行時、エッジメッシュが切られていないオブジェクトは、右図のように、メッシュが切られているラインに形状を近似して認識されます。 元の形状 形状認識後

第2回

流量:12[m3/min]

流速: 1 [m/s] 吹出面積: 0.2[m2]

流量:15[m3/min]

流速: 1 [m/s] 吹出面積: 0.25[m2]

解析モデルを作成する際に、解析空間内の流量、熱量のバランスがとれていても、形状認識によりオブジェクトサイズが変わってしまいそのバランスが崩れる可能性があります。そうすると期待している解析結果が出なかったり、計算自体が発散してしまうこともあります。

繰り返しになりますが、FlowDesignerはオブジェクトを「エッジメッシュ対象」に設定をして、メッシュ編集を行えば、通常、自動的にエッジメッシュが入る仕組みになっています。では、どんなときに注意が必要か。

■1回計算終了した後、オブジェクトを追加したとき ■解析領域に対して、オブジェクトが細かすぎるとき (最小限度幅設定 ⇒詳しくはFAQを)

メッシュ分割により認識された形状で計算を行うので、 計算実行前に、常に形状認識が正しくされているか確認をするとよいでしょう。

「流速」で設定された吹出口

都営新宿線 曙橋駅 A4出口 を左に出てすぐ