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jipsti.jst.go.jp目次 vol.56 no.1 2013 月号 April 情報管理 Journal of Information Processing and Management JOHO KANRI 世界の大学図書館コンソーシアムとJUSTICEの現在

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  • 目次vol.56 no.12013

    月号April

    情報管理Journal of Information Processing and Management

    JOHO KANRI 目次vol.56 no.12013

    月号April

    情報管理Journal of Information Processing and Management

    JOHO KANRI

    世界の大学図書館コンソーシアムとJUSTICEの現在■JUSTICE(JapanAllianceofUniversityLibraryConsortiaforE-Resources)は日本の4年制大学図書館を参加対象とするコンソーシアムです。国立大学図書館協会コンソーシアムと公私立大学図書館コンソーシアムの統合により2011年4月に発足しました。そのミッションと活動内容,2013年からの新組織体制について解説するとともに,英国,フランス,韓国,カナダの学術図書館コンソーシアムの事例を紹介します。

    データ・サイエンティストがビッグデータで私たちの未来を創る

    ■ビッグデータ活用の鍵となる人材が不足しています。データ・サイエンティストは統計学や機械学習の高度な知識とビッグデータの取り扱いに関する十分なスキルを持った人材です。統計数理研究の第一人者が,データ・サイエンティストをめぐる時代的背景・技術的背景について説明したのち,世界におけるその人材育成の現状を述べ,日本における人材育成に関して提言します。

    加藤 治

    守屋文葉

    樋口知之

    12

    2

    ICOLC Participating Consortia

    巻頭言 1

    学会の役割を考える:日本植物生理学会が誇る国際学術雑誌Plant and Cell Physiologyの発行を通じて

    ■PlantandCellPhysiology(PCP)は誌名にJapanが入っていませんが日本植物生理学会の発行する月刊誌です。1959年に創刊され2011年にはインパクトファクターが4.7と,植物科学分野を代表する国際誌に成長しています。PCPの刊行は学会活動の柱のひとつです。PCPの概要,編集体制と出版体制,インパクトファクター向上の取り組みと今後の展望について,PCP編集長が解説します。

    山谷知行21

    いすゞ自動車における知財情報活動特許調査の負荷軽減

    ■いすゞ自動車株式会社は海外売り上げ比率が6割に上るグローバル企業です。知財活動は当然,グローバル化や事業環境の急速な変化への対応を迫られます。侵害リスク軽減と調査負荷軽減をともに満足する経済的な調査手法を求めて知財業務のリソース配分を見直した結果,どのような方策をとることになったか。いすゞ自動車の事例を担当者が紹介します。

    長池将幸28

  • 目次vol.56 no.12013

    月号April

    情報管理Journal of Information Processing and Management

    JOHO KANRI 目次vol.56 no.12013

    月号April

    情報管理Journal of Information Processing and Management

    JOHO KANRI

    視点:

    発表倫理からのアプローチ

    情報論議 根掘り葉掘り:

    バーチャル・ストリップ・サーチ 対 憲法修正第4条

    山崎茂明

    名和小太郎

    49

    52

    連載:

    新興地域の統計事情第5回 インドネシア

    高橋宗生43

    この本!~おすすめします~:

    科学者の “科学リテラシー” 向上のススメ小泉 周59

    63 情報界のトピックス 70 編集後記

    連載:

    研究・実務に役立つ!リーガル・リサーチ入門第7回 判例を探す

    小澤直子36

    集会報告:

    ウィキメディア・カンファレンス・ジャパン2013開催報告

    日下九八54

    69 PINUP

  • 1

    21

    Preface

    Activities of intellectual property information research in ISUZU MOTORS LIMITEDWorkload reduction of patent search

    Series:

    The state of statistics in emerging regionsPart 5: Indonesia

    Opinion:

    Focusing on publication ethics

    KATOOsamu

    NAGAIKEMasayuki

    OZAWANaoko

    TAKAHASHIMuneo

    YAMAZAKIShigeaki

    28

    36

    43

    49

    vol.56 no.12013

    Journal of Information Processing and Management AprilContentsJOHO KANRI

    Series:

    Introduction to legal research for R&D and businessPart 7: Research of judicial precedents

    My bookshelf:

    Improving "scientific literacy" of scientistsKOIZUMIAmane59

    In-depth argument on information:

    "Virtual strip searches" and the Fourth Amendment to the U.S. Constitution

    52 NAWAKotaro

    Data scientist: a key factor in innovation driven by big data

    HIGUCHITomoyuki2

    Current status of the world's university library consortium and JUSTICE

    MORIYAFumiyo12

    Roles of academic societies: "Plant and Cell Physiology" as a competitive journal of The Japanese Society of Plant Physiologists

    YAMAYATomoyuki

    Meeting:

    Wikimedia Conference Japan 201354 KUSAKAKyuhachi

    63 Topics of the information community 70 Editor's note

    69 PINUP

  • 1情報管理 vol. 56 no. 1 2013

    この4月より「情報管理」編集委員長に就任しまし

    た。どうぞよろしくお願い申し上げます。読者の皆

    様,執筆や編集等にご協力いただいた皆様方のお陰

    で,本誌は56年目を迎えることができました。改め

    て厚く御礼申し上げます。

    この4月から,JSTの文献情報提供サービスは,民

    間による提供が開始されます。1957年(昭和32年)

    以来,56年間継続してきたJSTの情報事業は新しい局

    面に入りました。これまでの文献情報サービスを少

    し回顧させていただきます。

    昭和の高度成長期に誕生した旧日本科学技術情報

    センター(JICST)のミッションは,産業振興等のた

    めの科学技術情報の基盤整備でした。サービス上の

    価値として,品質向上はもちろん,速報性,迅速に

    内容を把握するための情報加工,検索の効率化等,“ス

    ピード” に対する要望が特徴的だった,と思いを巡ら

    せています。つまり,素早い資料収集,日本語抄録

    による論文内容の紹介,オンラインシステムの構築

    および科学技術用語シソーラスによる効果的な索引

    技術の確立などは,“スピード” の要望に応えるもの

    でもありました。

    また,研究者・技術者向けのインターフェ-ス

    (GUI)の搭載や,学術電子ジャーナルプラットフォー

    ムJ-STAGEの構築,解析・可視化サービスによる俯瞰

    等も “スピード” の追求の流れと考えます。そして昨

    今のICT技術の超高度化は,「ビッグデータ」時代を

    もたらし,JSTによる文献情報サービスは,新たな局

    面を迎えています。

    新しいJST情報事業に求められる情報基盤のあり方

    を,現在,有識者の方々にご議論いただいています。

    科学技術イノベーションに貢献する持続性のある知

    識基盤として,多くの異業種・異分野の情報をつな

    ぎ,新しい知が想起・創発される連携プラットフォー

    ムの仕組みを探求する方向性が示されています。サー

    ビスは官民連携で推進する方向を描いています。

    「情報管理」誌はこれまで,JST情報事業の流れを

    包含しつつ,情報の整備・流通・活用に関する話題

    をタイムリーに取り上げてきました。今後とも,図

    書館・情報学的内容から科学技術イノベーション,

    社会と科学技術の対話コミュニケーションまで,時

    代の流れを見据えつつ幅広い内容を扱い,読者とと

    もに歩んでいきたいと思います。

    また,本誌は昨年度よりXML化を進めました。こ

    のXML化により,多くの情報との統合や,選択的な

    記事・データ抽出,非テキストデータの登載など,

    J-STAGEのパイロット誌としてさらなるチャレンジを

    していきたいと思います。

    本誌が,各種情報を組み合わせ新たな知の想起・創

    発を促せるジャーナルへと発展できるよう努力して

    まいります。引き続きご愛読くださいますよう,よ

    ろしくお願い申し上げます。

    科学技術振興機構

    情報企画部部長 加藤 治情報管理 56(1), 001-001, doi: 10.1241/johokanri.56.1 (http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.56.1)

    http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.56.1

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    vol.56 no.12013

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    JOHO KANRI

    April情報管理 http://johokanri.jp/

    データ・サイエンティストがビッグデータで私たちの未来を創るData scientist: a key factor in innovation driven by big data

    樋口 知之1

    HIGUCHI Tomoyuki1

    1 情報・システム研究機構 統計数理研究所(〒190-8562 東京都立川市緑町10-3)E-mail:[email protected] TheInstituteofStatisticalMathematics,ResearchOrganizationofInformationandSystems(10-3Midori-choTachikawa-shi,

    Tokyo190-8562)

    原稿受理(2013-01-18)

    情報管理 56(1),002-011,doi:10.1241/johokanri.56.2(http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.56.2)

    著者抄録

    ビッグデータの活用によりイノベーションを引き起こすことが産業界からアカデミアまで幅広く期待されている一方,

    その成功の鍵となる人材の不足についてはあまり真剣に議論されていない。データ・サイエンティストと呼ぶ,統計

    学や機械学習の高度な知識と,ビッグデータの取り扱いに関する十分なスキルを持った人材の養成は焦眉の急である。

    すでに産業界においては優秀な人材の争奪戦が相当激しいものとなっている。国際的競争力の維持の観点から日本の

    人材育成上の問題点を指摘するとともに,アメリカで始まった新しいポスドク・インターンシップ制度を紹介し,デー

    タ・サイエンティストを増やす方策を考えてみる。

    キーワード

    データ・サイエンティスト,統計家,ビッグデータ,人材育成,統計学,機械学習,データマイニング,並列計算

    1. 社会的背景:ビッグデータ元年

    1.1 オバマ政権とビッグデータの親密度

    2012年は「ビッグデータ元年」と呼ぶのにふさわ

    しい,ビッグデータの一般社会へ及ぼす影響が一般

    の方にも周知された年であった。何よりも決定的な

    インパクトを与えたのが,3月29日のアメリカ・オバ

    マ政権による「ビッグデータ(研究開発)イニシアティ

    ブ」の発表である注1)。同イニシアティブは,大統領

    府科学技術政策局の主導のもと,6つの国立研究機関

    (組織)との連携によって実施され,拠出される資金

    は総額2億ドル以上にもなる。巨大データの収集/保

    管/管理を可能にするため,ビッグデータに関連す

    る最新技術の構築に取り組むことにより,科学技術

    分野における新たな知見の導出や,国家安全保障と

    教育の向上を目指すのである。

    このようなオバマ政権がビッグデータの利用に深

    い理解を示している証拠としては,再選キャンペー

    ン時にビッグデータ分析チームがフルに活躍した

    ニュースが記憶に新しい注2)。2008年の大統領選挙

    http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.56.2

  • vol.56 no.12013

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    データ・サイエンティストがビッグデータで私たちの未来を創る

    情報管理 vol. 56 no. 1 2013

    での勝因はFacebookやYouTubeなどのソーシャルメ

    ディアの活用にあると当時盛んに報道されたが,今

    回はビッグデータに基づく効果的な選挙活動が勝利

    を導いたとさまざまなメディアで解説がなされてい

    る注3)。1960年にケネディとニクソンの大統領候補同

    士の討論が初めてテレビで中継されてから,半世紀。

    韓国の大統領選挙を見ても,選挙活動の重要戦略は

    明らかに次のフェーズに入ったと言える。

    国内に目を向けると,2012年5月にはNHKのクロー

    ズアップ現代で早々と話題が取り上げられ,「社会を

    変える “ビッグデータ” 革命」として報道された注4)。

    実は日本の官庁の動きも早く,ビッグデータの利用

    で先行している国内企業へのヒアリングが総務省に

    よって2012年2 ~ 4月にかけて実施され,その概要

    がWeb上でも公開されている注5)。各社の取り組みの

    現況がコンパクトにまとめられている上に,総務省

    からのヒアリングおよび追加質問への回答を通して,

    各社のビッグデータの利用に関する考え方や研究開

    発上の軸足の置き方の違いが明瞭になっており,よ

    く整理された資料となっている。

    1.2 データ・サイエンティストが主役

    2008年5月,アメリカのシリコンバレーにあるIBM

    Almaden研究所で行われた年1回の恒例の会議では,

    “InnovatingwithInformation” 注6)と題して今後の社

    会生活における情報技術がもたらすイノベーション

    について産学官の第一人者を集めて2日間にわたり真

    剣に議論された。そこで基調講演を行ったグーグル

    のチーフエコノミストであるHalVarianは,この先10

    年で最も魅力的な職業は統計家であると述べた。そ

    の理由を彼は,“datainhugesupplyandstatisticians

    inshortsupply,beingastatisticianhastobethe

    'reallysexyjobforthe2010s'” と説明している。なお,

    ここでいうsexyjobとは広い意味で魅力的な仕事を指

    す。

    2012年のHarvardBusinessReviewの10月号は「ビッ

    グデータ」を特集し,その中に “DataScientist:The

    SexiestJobofthe21stCentury”(データ・サイエン

    ティスト:21世紀の最も魅力的な職業)と題した記

    事が掲載された1)。ここでのDataScientistは内容から

    判断してHalVarianの言うstatisticianとほぼ同義語で

    ある。記事は,今日のデータ・サイエンティストが

    1980 ~ 1990年代のウォール街のクオンツ(高度な数

    学的手法を使って,マーケット分析や,投資戦略お

    よび金融商品の考案・開発を行う専門家)とそっく

    りであるという。当時,物理や数学を専門とする人々

    が投資銀行やヘッジファンド業務の中核となるアル

    ゴリズムや戦略を主導的に開発したが,同様のこと

    がまさに起きつつあると指摘している。社会的ニー

    ズに触発される形で多くの大学院にファイナンス工

    学や数理ファイナンスの講座やコースが開設された

    ことはよく知られている。

    ビッグデータがもたらすビジネスへのインパクト

    を的確なタイミングでわかりやすくまとめた報告書

    として2011年6月に出たMcKinseyGlobalInstitute(以

    後MGIと略す)レポートは,ビッグデータに関わる

    者にとって必ず引用する重要な文献である2)。MGIレ

    ポートは,5つの分野のビッグデータ――アメリカ

    のヘルスケアと小売業,ヨーロッパの官公庁サービ

    ス,全世界での製造業と個人位置情報を用いたサー

    ビス――を題材に,ビッグデータの適切な利用が新

    しい価値を創造し,いかに莫大な富を生むかを分析・

    予測している。そこで必要とされる3つのタイプの人

    材のうち,統計学と機械学習の知識とスキルを備え

    たタイプを “deepanalyticaltalent” と呼んでいる。

    他の2つのタイプは,“data-savvymanager”(デー

    タのことをよく理解できる経営者)と “support ing

    technologypersonnel”(データ技術者)である。

    ここで紹介した3つの話題では同じタイプの人材に

    ついて異なる呼び方をしていたが,本文ではこれ以後

    データ・サイエンティストと統一的に呼ぶことにする。

  • 4

    vol.56 no.12013

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    2. 技術的背景:情報工学とデータ解析法が両輪

    2.1 ビッグデータの3V

    ビッグデータの特徴はVで始まる3つのキーワード

    ――Volume(量),Velocity(発生速度や更新頻度),

    Var ie ty(多様性)――で語られることが多い。量の

    著しい増大スピードについてはいまさら説明の必要

    もないはずだが,あらためて確認しておきたい。計

    算機演算能力の劇的な向上を示す経験的指標として

    「ムーアの法則」がよく知られているが,データ量の

    増大スピードはそれとは比較にならないスケールで

    ある。ムーアの法則では5年で性能が約10倍になる一

    方,例えば遺伝子配列を読むシーケンサーが単位時

    間あたりに掃き出すデータ量は5年で1万倍以上にも

    なっている3)。

    発生速度の増大は,センサー技術の向上と廉価化

    がもたらした産物である。指名手配犯の顔や特徴を

    記憶し,繁華街などで見つけ出す「見当たり捜査員」

    の人力に加えて,ビデオ・サーベイランス(監視カ

    メラ)を用いた犯人の特定や追跡は今後ますます効

    果をあげることが期待されている。ビデオの時間・

    空間解像度の改善は,結果として高頻度のデータ産

    出につながっている。セキュリティの目的ばかりで

    なく工場の生産ラインなどでも,ビデオや画像を利

    用した管理・検査が大規模に導入されており,情報

    システムの実世界との接点となる現場でのデータ発

    生頻度は増大の一途である。この現象は“Edge-Heavy

    Data” 問題とも呼ばれている4)。

    通常,エッジに蓄積されるデータすべてが有益な

    情報ではなく,むしろそのほとんどがゴミ(MGIレポー

    トでは “ExhaustData”(排気データ)と呼んでいる)

    であり,そのまま輸送(転送)していてはコストが

    相当増える。そもそも莫大な通信量が通信システム

    全体に与える負荷からして問題である。このICTイン

    フラのリソースを消耗する意味でのデータの消耗性

    が,ビッグデータ関係者注7)をして「ビッグデータは

    価値密度が低い」と言わしめるのである。データ利

    用の主目的に合った価値がデータ内に間欠的に散在

    するため,ビッグデータの場合,価値の総和はかな

    り増えるが,総データ量で総価値を割り算した「価

    値密度」は極めて小さくならざるをえない。このため,

    “StreamComputing” のような,エッジですぐデータ

    を加工する計算技術が今後は重要になることは識者

    によって予想されている4)。

    ビッグデータは,リレーショナルデータベースで

    取り扱える構造化データだけでなく,テキストや画

    像,音声といった非構造化データを含むため,デー

    タの構造がVar ie tyに富むと解説されることが多い。

    よって,非構造化データを効率よく取り扱うための

    ハード/ソフトの仕組みが必要という論理展開がな

    されるが,知識獲得プロセスから見ると,これはや

    や計算機業界に依存した見方である。確かに,非構

    造化データには既存のデータベース技術・商品が単

    純には適用できないため効率的な情報処理が難しく

    なり,そこに業界は商機を見いだしている。しかし

    ながら,本質的に問題となるVarietyは,センサーデー

    タを取り扱う際には避けて通れない,取得現場環境

    (状況)の変化,データの欠損,異常値の混在といった,

    データの「質の不均一性」である5)。質の不均一性の

    問題を解決しないと,常識的な定性的理解を単に数

    値に置き換えるだけに終わり,単純な定量的理解を

    超える深い知識は得ることはできない。実は,質の

    不均一性も,前述した価値密度の低さの原因の1つと

    なっている。

    2.2 ビッグデータ解析の3大要素技術

    ビッグデータとは何かをこれまで説明してきたの

    で,次に,ビッグデータの利用に必要な技術の解説

    を行う。MGIレポートは,ビッグデータの利活用に

    関わる方法と技術(原文では,“Bigdatatechniques

    andtechnolog ies”)として次の3つが大切である

    と言明している。その3つとは,「データ解析法」

    (“Techniquesforanalyzingbigdata”),「データ可視

  • vol.56 no.12013

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    5

    データ・サイエンティストがビッグデータで私たちの未来を創る

    情報管理 vol. 56 no. 1 2013

    化」(“Visualization”),そして「ビッグデータ工学」(“Big

    datatechnologies”)である。1.2で述べた,MGIの言

    うビッグデータ分析に必須の3つのタイプの人材のう

    ち,データ・サイエンティストがこれらの研究開発

    を担当する。なおビッグデータ工学に関しては,3つ

    のタイプ中のデータ技術者によって担われる部分も

    大きい。

    ビッグデータのサイズはペタバイト級も普通なた

    め,データは物理的に分散して格納し,アプリケー

    ションが数千ノード上で動く必要がある。逐次的な

    計算が可能な平均値の計算ですらビッグデータに対

    してはそう簡単ではない。従って,データへのアク

    セス効率性を考えた上での格納法を含めた,業界標

    準的な巨大データベースの技術開発,つまり「ビッ

    グデータ工学」が重要であることは論をまたない。

    MapReduceやHadoopという言葉を耳にされたこと

    があるかも知れないが,それらは巨大なデータの管

    理と取り扱いに関する計算技術(ソフト)である。

    「データ可視化」は,莫大なデータサンプルを画面

    上にどのように表示するかに関する技術である。標

    準的なものとして,TagCloudやSpatial Information

    Flowがある。ソーシャルメディア等から得られたデー

    タを利用した複雑ネットワーク構造の表示でよく使

    われる手法で,読者も一度は目にしたことがある表

    示法である。個人的には,これらは深い知識を得る

    中核的な解析手法にはなり得ず,一種のセレンディ

    ピティを喚起するツールとして利用される印象を

    持っている。

    3つ目の「データ解析法」の中で主たる具体的手法

    がMGIレポートに列挙してある。粒度は大小さまざま

    であるが,データ解析のために普段よく使っている

    方法ばかりである。つまり,ビッグデータの解析法

    といっても,統計数理,機械学習,データマイニン

    グ,最適化など,広義の意味での「データ科学」(デー

    タを直接扱う手法を研究する領域)の手法群の利用

    が基本戦略なのである。ビッグデータの場合,あま

    りにも膨大な量のため,既存手法の単純な適用をす

    ることさえ難しいことが多々ある。その場合は,前

    述したビッグデータ工学と連携して新しい適用法を

    開発しなくてはならない。ただし,量がもたらす問

    題にばかり気をとられては決してならない。その問

    題を解決した結果が,月並みな常識の拾い上げに終

    わる危険性は往々にして大だからである。ビッグデー

    タの蓄積や管理,解析に多くのコストをかけて,あ

    りふれた知識しか獲得できないとしたら,そもそも

    ビッグデータを取り扱わないほうがビジネス的には

    正解と言えよう。新しい深い知識獲得のためには,

    前述した「低価値密度」「質の不均一性」以外に,次

    に述べる「データ空間のスパース性」の課題に挑戦

    することが欠かせない5),6)。

    2.3データ空間のスパース性

    ビッグデータの分析においては,サンプル数を圧

    倒的に増やせば,よく似た少数例もある程度入手で

    きると期待しがちである。残念ながらそうはうまく

    いかない。具体的に,スーパーやコンビニ,ドラッ

    グストアのレジで会員カードを示すと自動的に蓄積

    されるID付きPOSデータを取り上げて,この問題を考

    えてみる。ID付きPOSデータには,「誰が」,「いつ」,「何

    を」,「いくらで」,「いくつ」購入したかが記録される。

    つまり,[商品,消費者,時刻(説明上,簡単にする

    ために日単位とする)]で構成される3次元空間(テ

    ンソル)内に,[値段,個数]の対データが埋め込ま

    れている。[商品,消費者,時刻]で指定される1つ

    の領域(体積要素)をボクセル(voxel。画像でのピ

    クセルとの類比から)と呼ぶことにする。大手の総

    合スーパーで蓄積されるデータ量は,50,000商品×

    2,000万人×365日といった規模である。個々の消費

    者に注目すれば,1年間を通しても50,000商品のうち

    1%も購買することはない。また,毎日スーパーに行

    く顧客は限られている。従って,ほとんどすべての

    ボクセルにはデータが無く,つまり3次元空間は “ス

    カスカ” なのである。

    すると,サンプルをいくら増やしてもデータ空間

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    vol.56 no.12013

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    JOHO KANRI

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    は基本的にスカスカなのであるが,マーケティング

    でも明らかなように人間の思考や行動は,多様性は

    ありつつも,特定の状況だと同様のパターンを示す

    ことがよくある7)。例えば,「消費者」の軸において

    2,000万人を別々に扱うのではなく,デモグラフィッ

    ク――性別,年齢,住所,職業,年収,家族構成―

    ―でもって “たくさん” のグループに “適切” に分類

    してみる。結果として2,000万(人)を1,000(グルー

    プ)に減らすこともでき,この大幅な削減効果とし

    て縮約された新しい3次元空間のボクセルにはおおむ

    ねデータが存在するようになる。ただし,グループ

    数が極端に小さいと,「小学生の子供を持つ近所に住

    む主婦/主夫は,値引き率の高い肉をほぼ毎日買う」

    といった,解析以前の常識しか抽出できなくなる。

    よって肝となるのは,“たくさん” と “適切” をどう

    実現するかである。もし “うまい” 束ね方(分類)を

    見つけられれば,その情報がマーケティング上大き

    な意味を持つのは明らかである。このように,ビッ

    グデータ解析法の重要な数理的課題の1つは,データ

    空間内のスパースな(sparse,まばらな)サンプル分

    布の構造探索とそのモデル化になる。

    3. データ・サイエンティスト育成の現況

    3.1 先進諸国内で特異な日本の教育体制

    MGIレポートには,2004年から2008年までの5年間

    にデータ・サイエンティスト(MGIレポートでは“Deep

    AnalyticalTalent”)の育成数の遷移が図でまとめられ

    ている。分析期間内にデータソースが異なったこと

    による影響を受けたフランスを除くと,経済的先進

    諸国等でマイナスは日本だけ(-5.3%)である。概

    数の出し方が詳細にはわからないが,図中に示され

    た日本の年2,3千人という人数からすると,統計学,

    機械学習,データマイニング,最適化,OR,情報処

    理など,広義の「データ科学」を卒業・修了した学

    生数と見なせる。日本は若年層人口が急減している

    ため,マイナスはある程度仕方ないとは言え,今後

    のグローバルな競争を考えると心配な数字である。

    日本の統計学に関する人材育成策は,統計学の学

    際性に鑑み,大学・大学院に統計学科あるいは統計

    学専攻を設けず,その各応用分野での具体的課題に

    取り組ませる中で統計に関する専門的人材を養成す

    る,分野点在型方式である。統計数理研究所が統計

    科学専攻を担う基盤機関として1988年に総合研究大

    学院大学へ参画して初めて,日本に統計学を専門と

    する専攻ができた。これ以外,未だに国内の大学に

    は統計学を専門とする学科・専攻は存在しない注8)。

    一方,外国に目を向けると,状況の違いに暗澹た

    る気持ちにさせられる。英米主要大学はほぼすべて

    の大学に統計学科ないしは統計学部が配置されてい

    る。例えば,公立大学であるカリフォルニア大学の

    10の分校中7つの分校に統計学科が設置されている。

    アメリカにおいては,主要な州立大学や私立大学に

    統計学科が設けられるのは,社会的要請から当然の

    こととなっている。2010年のアメリカの労働省労

    働統計局の調査8)によれば,データに基づくモデリ

    ングや意思決定の専門家としての修士修了以上のレ

    ベルの専門職の呼称であるstatistician(前述したHal

    Varianの言う “statistician” でなく,極めて狭義の意

    味)のポストは25,000を超えており,この専門職数

    は2020年までに14%増加すると推計している。これ

    は,別途カウントされている統計調査士,金融アナ

    リスト,マーケティング・リサーチャー,応用数学者,

    教員を除いた専門職数である。

    経済成長が著しい中国,韓国,シンガポール等の

    アジア諸国も,欧米諸国同様の人材育成策をとって

    いる。ビッグデータ時代を迎え,中国でも現在300大

    学に統計学科の整備が進んでおり,韓国でも主要大

    学への統計学科,ビジネス・インフォマティクス関

    係の学科の設置はほぼ完了した注9)。ローカルなニー

    ズをも汲み上げたグローバルな製品化を実現するた

    めには,得られたデータを多面的に分析できる人材

    が現場にいると,大きな強みである。韓国企業のビ

    ジネスモデル立案上の強みはそういうところにもあ

  • vol.56 no.12013

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    るのではないだろうか。

    このように,主要な大学には必ず統計学科がある

    という欧米諸国やアジア先進諸国の状況からすると,

    日本の現状は奇異である。知的立国を目指す日本と

    して,この体制で将来的にも国際的競争力を維持で

    きるのかを不安視するのは私だけであろうか。

    3.2 インサイト・プログラム

    産業界で活躍するビッグデータ解析の人材育成に

    関して,非常に興味深い取り組みがアメリカ・シリ

    コンバレーで始まっている。わが国における人材育

    成の問題点を考える上で有益と思われる点があるの

    で若干誌面を割いて紹介したい9)。

    アカデミアで高度な知識とスキルを持つ人材と,

    産業界が求める人材像とのずれは日本固有の問題で

    なく,産業界との連携が比較的うまくいっていると

    見られることの多いアメリカにおいても大きな問題

    であり,アカデミアに職を置くものとしては非常に

    耳が痛い。特に成長著しいビッグデータ関連の産業

    においては,国際競争力の観点から従来型の人材養

    成プログラムでは不十分であるとの分析に基づき,

    シリコンバレーをベースとする企業(Facebook,

    LinkedIn,TwitterなどのSNS(SocialNetworking

    Service)系や,GoogleやMicrosoftのようなITメガ企

    業)が,起業のスタートアップ支援を主たる目的と

    する団体注10)を介してInsightDataScienceFellows

    Program注11)(以後,インサイト・プログラムと略す)

    を2012年夏から開始している。

    このインサイト・プログラムは,一言で言えば,

    ポスドク(博士号取得者)や博士課程在学大学院生

    のビッグデータ関連企業向け短期人材養成である。

    国際的企業の競争力を高めるため,経営にも深く貢

    献できるトップタレントの養成が目的で,既存のデー

    タ解析ツールの習熟者を養成することは目的外であ

    る。6週間のトレーニングはパロ・アルト(スタン

    フォード大学のある市)で行われ,参加料はなく,

    さらに期間中に生活費として5,000ドルが支給され

    る。以下にプログラムのホワイトペーパー(企画要

    約書)から,従来の人材育成プログラムと比較して

    特徴的と私が思った点を列挙する。

    まず人材のソースに関して,情報学の分野で勉強

    された方々にはすぐには承服しがたい話となるが,

    優れたビッグデータ解析者は “computersc ience

    majors” よりも物理学者のような “hardscientists” の

    ようである。その理由を,hardscientistsは数理的な

    知識と計算のスキルを相当に持ち,さらにデータか

    ら知識を獲得する訓練がよくなされていると述べて

    いる。hardscientistsにHadoopのようなビッグデー

    タ専用の情報処理技術やツールを習得してもらうほ

    うが効果的かつ効率的と判断しているようである。

    今後の情報学の教育カリキュラムを考える上で示唆

    に富む発言である。

    昨今,アカデミアで流行の企業へのインターンシッ

    プは,通常,学生・院生が少人数のグループ単位

    で,ある特定の企業の現場に出向き学習する制度で

    ある。従って,学生・院生は選択した企業の流儀や

    カルチャーにいきなりどっぷりと浸からざるをえな

    い。一方,インサイト・プログラムは準インターン

    シップとも言うべき制度で,企業のデータ・サイエ

    ンティストが学習現場に出向く。また参加者はプロ

    グラムの第一週の間に,どのビッグデータ・プロジェ

    クトに参加するかを,企業のデータ・サイエンティ

    ストのアドバイスを参考にしながら決めることがで

    きる。インターンシップ制度のような,単独の企業

    現場で学習する利点/欠点を再考してもよいのでは

    ないかと思う。なお,企業関係者は多忙なため,プ

    ログラム参加者との討論や指導が夜になることも普

    通である。

    プログラムに授業はなく,ビッグデータ解析上の

    具体的な課題解決を目的とするプロジェクトベース

    の自学自習を基本とする。もちろん,企業のデータ・

    サイエンティストがメンターとしてアドバイスをす

    る。データプロジェクトのプロセスごとに評点され

    ることはないため,能力評価はすべて総合評価のみ

  • 8

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    になる。そのため,広い意味でのコミュニケーショ

    ン能力が必須となるが,それはデータ・サイエンティ

    ストに求められる重要な資質であると断言できる。

    プログラムの最後には企業との就職面談があり,

    2012年夏に催された2回のプログラム(6 ~ 7月コー

    スと8 ~ 9月コース)の修了生の中で就職を希望した

    18名全員が参加企業に採用された。なんと初年度年

    収は9万~ 13万ドルである。これなら参加者にとっ

    ては相当の動機付けとなる。“ひも付き” 奨学金によ

    り早い段階で囲い込みをはかる日本の制度と比較す

    ると,双方にメリットのあるうまい仕組みである。

    あえてわかりやすい日本的なキャッチコピーをつけ

    れば,「優良企業就職率100%の民間資本ベースの職

    業訓練センター」であろうか。

    4. 提言:データ・サイエンティストを増やすには

    MGIレポートにもあるように,今後,データ・サイ

    エンティストが圧倒的に足りなくなるのは明らかで

    ある。すでに国内のソーシャルゲーム業界では,デー

    タ科学の高度な知識とデータ解析の豊富な経験を備

    えた人材の争奪戦が激しい。以下に,データ・サイ

    エンティストを増やす方策を即効性のあるものから

    提案していきたい。

    まず,インサイト・プログラムの日本版の立ち上

    げを急ぐべきである。アメリカの場合は民間資本を

    活用しているが,日本においては企業群からの拠出

    金をもとにしたコンソーシアムで運用することを企

    図するよりも,国主導でプログラムをデザインする

    ほうが効果的だと思う。その理由として,インサイト・

    プログラムでは参加者と参加企業が一対一に結ばれ

    ているのではなく,両者が入会うようなコモンズ的

    性格を帯びているため,これまで文部科学省がJSTを

    通して実施してきたようなポスドク・インターンシッ

    プ制度注12)をうまく活用するほうがシンプルではな

    いかと考える。

    インサイト・プログラム日本版の立ち上げが望ま

    しいと感じる他の理由として,俗に言う「ポスドク

    就職難民問題」および「隠れ難民問題」への対策が

    ある。隠れ難民とは,進路が決まらないために在学

    しつづける学生のことである10)。労働契約法の改正

    によりポスドクの雇用環境はより悪化のほうに向か

    うのではないかと多方面で憂慮され,高学歴者が現

    状以上に不安定な職に就かざるを得ない可能性は高

    い注13)。このことも踏まえると,日本版ではアメリカ

    のような6週間でなく,半年,あるいは1年といった

    長期間で,ビッグデータ解析法の勉強とデータプロ

    ジェクトを体験してもらうのがよいと考える。プロ

    グラムへの参加がポスドクの適切な転換の場になれ

    ば,かなりの成功であろう。

    2つ目として,国家戦略的に重要な領域の国立の基

    幹的研究所内に,分野横断的なデータ解析専門の恒

    久的な(プロジェクト型でない)研究部門を設置す

    ることを提案する。特に,支配方程式の少ないライフ・

    サイエンスにおいては,スーパーコンピューターを

    用いたシミュレーションのような演繹的な推論より

    も,ビッグデータからの知識発見がイノベーション

    に直結しやすい構図となっている。この点は,ヒト

    を扱う健康医療分野においてはより顕著であり,も

    しビッグデータ解析の研究部門の強化を怠れば今後

    の研究開発上,致命的な後遺症が残ると思われる。

    ライフ分野では,次世代(次々世代)シーケンサー

    が生み出す膨大な配列データの超高速処理,一分子

    イメージデータの動画像解析,X線自由電子レーザー

    等の世界最先端の計測機器の有効活用など,ビッグ

    データの解析が国際的競争を勝ち抜くために大きな

    役割を果たすことは明白である。このようなデータ

    解析の比重が高い先端分野はライフ・サイエンスだ

    けにとどまらない。地球環境のような複雑なシステ

    ムの理解とその変動の定量的予測には,基礎方程式

    の解法に傾斜した研究アプローチは効率的でなく,

    観測によるビッグデータを十分に活用する方策が世

    界の潮流である。さらには,これまで第一原理に基

  • vol.56 no.12013

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    情報管理 vol. 56 no. 1 2013

    本文の注

    注1) ホワイトハウスのサイトに報道発表資料が置いてある。日本語のインターネットニュースでも多数取り上げられた。http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/microsites/ostp/big_data_press_release.pdf

    注2) 再選を決めた翌日に発刊されたTime誌にまず掲載された。概略版が下記のサイトで読める。http : / /swampland.time.com/2012/11/07/inside-the-secret-world-of-quants-and-data-crunchers-who-helped-obama-win/

    日本語では,ZDNetJapanの「バラク・オバマ版『マネーボール』大統領選勝利の鍵はビッグデータの徹底活用」の記事(http://japan.zdnet.com/cio/sp_12mikunitaiyoh/35024226/)や,日経ビジネスONLINEの「米国大統領選で見たネット・ソーシャルと『本来の民主主義』の関係」(http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20121212/240898/?rt=nocnt)にコンパクトにまとめられている。

    注3) 総括的な情報は,海部美知「米国大統領選に見るソーシャルとビッグデータの役割」(KDDI総研R&A)(http://www.kddi-ri.jp/pdf/KDDI-RA-201212-01-PRT.pdf)にある。

    注4) NHKの下記のサイトに番組の概要が掲載されている。http : / /www.nhk .or . jp/genda i /k i roku/detail02_3204_all.html

    注5) 総務省情報通信審議会情報通信政策部会新事業創出戦略委員会・研究開発戦略委員会(第9回2012年4月27日に合同開催)参考資料「ビッグデータの活用に関する関係者ヒアリング等の概要」http : / /www.soumu.go.jp/main_content/000157984.pdf

    注6) 会議の情報および当日使用されたスライドはIBMのサイト(http://researcher.watson. ibm.com/researcher/view_project_subpage.php?id=4264)に置いてある。またYouTubeで部分的に内容が視聴できる。http://www.youtube.com/watch?v=D4FQsYTbLoI

    注7) 統計数理研究所丸山宏氏およびPFI(PreferredInfrastructure)岡野原大輔氏の談話より。

    注8) 例外的に近年,医療統計分野で統計の教育コースが立ち上がっている。最新のデータにアップされてはいないが,まとまった情報は以下を参照。

    日本泌尿器科学会."6.統計学を学べるところ".統計インフラのつくり方.https://sites.google.com/site/statinfra/sites

    注9) 日本学術会議報告(平成20年(2008年)8月28日)「数理科学分野における統計科学教育・研究の今日

    づくシミュレーションが大きな成功をあげてきた材

    料分野においても,実験データや過去のノウハウを

    蓄積したビッグデータを利活用する研究プロジェク

    トが大きな予算投下でもってアメリカではスタート

    している注14)。

    3つ目として,長期的な観点から高等教育での人

    材育成に関して意見を述べる。今後大学に対しては,

    データ科学を専門とする学科を設置する,あるいは

    既存の学科の教育機能を強化する等の要望がますま

    す増えていくであろう。また統計学の教育体制につ

    いて言うと,分野点在型だとどうしても応用分野の

    データの特性に固着した方法論の研究指導になりか

    ねず,もう少し抽象度をあげたレベルでの統計学の

    深い理解を促す系統的教育があれば,異分野への転

    向や新分野の開拓に積極的に取り組める人材が育つ

    であろう。

    グローバルな競争が一層激しさを増す中で,環境

    の変化を敏感に感じつつ,常に他より先んじた戦略

    立案ができる人材の育成には,分野横断的な(横串型)

    学問を専門とし,複数の応用分野を副専門とする教

    育(T型やπ型人材養成)組織が効果的である。時間

    はほとんど残されていない。

    http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/microsites/ostp/big_data_press_release.pdfhttp://www.whitehouse.gov/sites/default/files/microsites/ostp/big_data_press_release.pdfhttp://swampland.time.com/2012/11/07/inside-the-secret-world-of-quants-and-data-crunchers-who-helped-obama-win/http://swampland.time.com/2012/11/07/inside-the-secret-world-of-quants-and-data-crunchers-who-helped-obama-win/http://swampland.time.com/2012/11/07/inside-the-secret-world-of-quants-and-data-crunchers-who-helped-obama-win/http://japan.zdnet.com/cio/sp_12mikunitaiyoh/35024226/http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20121212/240898/?rt=nocnthttp://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20121212/240898/?rt=nocnthttp://www.kddi-ri.jp/pdf/KDDI-RA-201212-01-PRT.pdfhttp://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3204_all.htmlhttp://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3204_all.htmlhttp://www.soumu.go.jp/main_content/000157984.pdfhttp://www.soumu.go.jp/main_content/000157984.pdfhttp://researcher.watson.ibm.com/researcher/view_project_subpage.php?id=4264http://researcher.watson.ibm.com/researcher/view_project_subpage.php?id=4264http://www.youtube.com/watch?v=D4FQsYTbLoIhttps://sites.google.com/site/statinfra/siteshttps://sites.google.com/site/statinfra/sites

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    的役割とその推進の必要性」http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-h62-3.pdf

    注10) YCombinator(http://ycombinator.com/)とSVAngel(http://svangel.com/)。起業を考えている者に対して比較的少額のファンディングを行う組織である。

    注11) InsightDataScience.http://insightdatascience.com/ 現在,2013年度夏期プログラムの公募を受け付けている。

    注12)ポストドクター・インターンシップ推進事業.http://www.jst.go.jp/shincho/program/ino_wakate.html

    注13)改正労働契約法は大学にどう影響を与えるか?http://article.researchmap.jp/qanda/2012/12_01/

    注14)MaterialsGenomeInitiativeforGlobalCompetitiveness.2011年6月発表.http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/microsites/ostp/materials_genome_initiative-final.pdf

    参考文献

    1) Davenport,T.H.;Patil,D.J.DataScientist:TheSexiestJobofthe21stCentury.HarvardBusinessReview.October,2012,p.70-76.日本版 データ・サイエンティストほど素敵な仕事はない.DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー .2013,2月号,p.84-95.

    2) Manyika,James;Chui,Michael;Brown,Brad;Bughin,Jacques;Dobbs,Richard;Roxburgh,Charles;Byers,AngelaHung.Bigdata:Thenextfrontierforinnovation,competition,andproductivity.McKinseyGlobalInstitute,2011,156p.http://www.mckinsey.com/insights/mgi/research/technology_and_innovation/big_data_the_next_frontier_for_innovation,(accessed2013-02-19).

    3) Kahn,ScottD.OntheFutureofGenomicData.Science.2011,vol.331,no.6018,p.728-729.

    4) 丸山宏,岡野原大輔.Edge-HeavyData:CPS・ビッグデータ・クラウド・スマホがもたらす次世代アーキテクチャ .グローバルクラウド基盤連携技術フォーラム総会特別講演資料.2012-07-09.http://www.gictf.jp/doc/20120709GICTF.pdf,(accessed2013-02-19).

    5) 樋口知之.ビッグデータと個人化技術.統計.2012,9月号,p.2-9.

    6) 樋口知之.データ解析の真髄とは.DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー .2013,2月号,p.98-108.

    7) 佐藤忠彦,樋口知之.ビッグデータ時代のマーケティング―ベイジアンモデリングの活用.講談社,2013,215p.

    8) BureauofLaborStatistics."OccupationalOutlookHandbook".BureauofLaborStatistics.http://www.bls.gov/ooh/Math/Statisticians.htm#tab-1,(accessed2013-01-02).

    9) InsightDataScienceFellowsProgramWhitePaper.http://insightdatascience.com/Insight_Data_Science_2013.pdf,(accessed2013-02-19).

    10)濱中淳子.ポスドク就職難民問題~解決のための処方箋は何か~ .大学と学生.2008,no .56,p .14-20.http://www.jasso.go.jp/gakusei_plan/documents/daigaku530_06.pdf,(accessed2013-02-19).

    AuthorAbstract

    Todevelopanefficientwayofgeneratinginnovationdrivenbybigdataisacentralissueinacademiaaswellasindustry.Althoughsuchademandgrowsrapidly,ahumanresourcedevelopmentthatisakeyfactorforrealizingitremainstherarely-discussedproblem.Adatascientistwithsufficientknowledgeinstatisticsandmachinelearningisexactlyarightpersonwhoplaysacrucialroleinmakingeffectiveuseofbigdata.Infact,

    http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-h62-3.pdfhttp://ycombinator.com/http://svangel.com/http://insightdatascience.com/http://www.jst.go.jp/shincho/program/ino_wakate.htmlhttp://article.researchmap.jp/qanda/2012/12_01/http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/microsites/ostp/materials_genome_initiative-final.pdfhttp://www.whitehouse.gov/sites/default/files/microsites/ostp/materials_genome_initiative-final.pdfhttp://www.mckinsey.com/insights/mgi/research/technology_and_innovation/big_data_the_next_frontier_for_innovationhttp://www.mckinsey.com/insights/mgi/research/technology_and_innovation/big_data_the_next_frontier_for_innovationhttp://www.gictf.jp/doc/20120709GICTF.pdfhttp://www.gictf.jp/doc/20120709GICTF.pdfhttp://www.bls.gov/ooh/Math/Statisticians.htm#tab-1http://www.bls.gov/ooh/Math/Statisticians.htm#tab-1http://insightdatascience.com/Insight_Data_Science_2013.pdfhttp://insightdatascience.com/Insight_Data_Science_2013.pdfhttp://www.jasso.go.jp/gakusei_plan/documents/daigaku530_06.pdf

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    thebusinesscommunity, inparticular,socialnetworkgamecompanyhasmadesignificanteffortstoattractthem.Inthispaper,weaddressaproblemindevelopingdatascientistsinJapan,andgiveabriefintroductionofinterestinginternshipprogramforPhDcandidateorpost-doctoralresearcherwhichtheSiliconValleytechnologycompaniesinitiatedinsummer,2012.Itsprogramisdesignedtobridgeagapbetweenacademiaandacareerdatascience.Finally,weconsiderhowtoincreasethedatascientistinJapaneffectively,andproposetorealizeaJapaneseversionofthatprogramassoonaspossiblewithafinancialsupportofJapanesegovernment.

    Keywords

    datascientist,statistician,bigdata,humanresourcedevelopment,statistics,machinelearning,datamining,parallelcomputation

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    世界の大学図書館コンソーシアムとJUSTICEの現在Current status of the world's university library consortium and JUSTICE

    守屋 文葉1

    MORIYA Fumiyo1

    1 大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)(〒101-8430 東京都千代田区一ツ橋2-1-2)Tel :03-4212-2823 E-mai l :[email protected]

    1 JapanAllianceofUniversityLibraryConsortiaforE-Resources(2-1-2HitotsubashiChiyoda-ku,Tokyo101-8430)

    原稿受理(2013-02-13)

    情報管理 56(1),012-020,doi:10.1241/johokanri.56.12(http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.56.12)

    著者抄録

    世界各国には多数の図書館コンソーシアムが存在する。本稿ではその中からイギリス,フランス,韓国,カナダの事例

    を紹介し,それらと比較しながら,大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)の組織と活動を概観する。また,2013

    年度から会員制への移行と会費の徴収が行われるが,その意義について述べる。

    キーワード

    図書館コンソーシアム,電子ジャーナル,電子リソース,大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE),出版社交渉,

    会員制

    1. はじめに

    学術情報が電子版を媒体として流通されることが

    一般的となり,現在では電子ジャーナルは研究活動

    における「日用品」となっている。厳しい財政環境

    にもかかわらず,大学の研究業績の向上と学習・研

    究環境の充実が求められる中で,学術情報基盤整備

    の一翼を担う大学図書館コンソーシアムの役割はま

    すます重要になってきている。

    本稿では,世界各国の図書館コンソーシアムの

    状況を俯瞰し,それらと対比しつつ,わが国の大

    学図書館コンソーシアムである「大学図書館コン

    ソーシアム連合(JapanAllianceofUniversityLibrary

    ConsortiaforE-Resources:JUSTICE)」の現状を概説す

    る。あわせて,JUSTICEがこの4月から新たな体制に

    移行するという節目の時期にあることを踏まえ,大

    学図書館コンソーシアムとして将来目指すべき姿に

    ついて,私見を交えつつ考察を行う。

    2. 世界各国の図書館コンソーシアム

    世界には学術情報を扱う図書館コンソーシアムが

    200以上もあると言われている。「図書館コンソーシ

    アムのコンソーシアム」と呼ばれる国際図書館コン

    http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.56.12

  • vol.56 no.12013

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    13

    世界の大学図書館コンソーシアムとJUSTICEの現在

    情報管理 vol. 56 no. 1 2013

    ソーシアム連合(InternationalCoalitionofLibrary

    Consortia: ICOLC)のWebサイト(http://www.icolc.

    net/)にはICOLCに参加しているコンソーシアムのプ

    ロフィルが公開されており,現時点で約40か国,150

    件弱のコンソーシアムの情報を自由に見ることがで

    きる。表1は,この情報を参照してICOLCに参加する

    コンソーシアムの数が2以上ある国をまとめたもので

    ある。

    これを見ると,アメリカの数の多さが群を抜いて

    いるが,図書館自体の数の多さに加えて,地理的な

    区分(州など)や参加する機関の種別(研究大学,

    カレッジなど)が多様であることが主な要因であろ

    う。また,そうしたカテゴリごとにコンソーシアム

    が作られ,1つの図書館が2つないし3つのコンソーシ

    アムに参加することも決して特殊なことではない。

    世界各国の図書館コンソーシアムがどのようなも

    のなのかを知り,後に取り上げるJUSTICEが,そうし

    たコンソーシアム群の中でどのような位置にあるの

    かをとらえるために,まずは4か国の代表的なコン

    ソーシアムの組織形態や活動内容について,その概

    要を紹介する。

    2.1 イギリス:JISC Collections

    イギリスには,JISCCollections(https://www.jisc-

    collections.ac.uk/)という法人格(保証有限責任会

    社,companylimitedbyguarantee)を有するコン

    ソーシアムがある。2006年にJISC(JointInformation

    SystemsCommittee,英国情報システム合同委員会)

    という組織の下に設置され,英国の全高等・継続教

    育機関の,約500の図書館が参加している。運営委

    員会(6名),交渉担当専任スタッフ(18名)等を有

    し,運営経費はHEFCE(HigherEducationFunding

    CouncilforEngland,イングランド高等教育助成会議)

    などによる公的資金やコンサルティング業務などに

    よる収益を充当している。

    英国における教育研究のためのデジタル資源の整

    備・確保の支援を主な目的として,電子リソースの

    契約交渉を中心に活動しており,現在約120の電子

    ジャーナルやデータベースの契約を行っている。こ

    の他に,「KnowledgeBase+」(契約データや図書・

    雑誌の目録データを集積したデータベース),「elcat」

    (電子リソースのライセンスの比較・分析ツール),

    「JUSP」(電子ジャーナルの利用統計ポータル)など,

    コンソーシアム参加機関の業務に資するための多彩

    なサービスを開発・提供し,コンソーシアム内外と

    の情報共有や調査研究,関連他機関との連携協力な

    どを進めている。

    2.2 フランス:Couperin

    Coupe r i n(Con s o r t i umu n i v e r s i t a i r ed e

    図1 世界の主要な図書館コンソーシアム

    ICOLC Participating Consortia

    国名 ICOLC参加コンソーシアム数

    アメリカ 65

    カナダ 16

    ドイツ 7

    オーストリア 4

    イタリア 3

    チリ 2

    フランス 2

    インド 2

    ノルウェー 2

    スロベニア 2

    スペイン 2

    スウェーデン 2

    イギリス 2

    表1 ICOLC参加コンソーシアム数(国別)

    http://www.icolc.net/http://www.icolc.net/https://www.jisc-collections.ac.uk/https://www.jisc-collections.ac.uk/

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    publicationsnumériques)(http://www.couperin.

    o rg/)は,1999年に発足した図書館コンソーシアム

    である。フランス国内の大学・グランゼコール(高

    度専門職養成機関)・研究機関の約200の図書館が参

    加している。運営組織として,「専門図書館員委員会」,

    「評議員会」および「事務局」があり,評議員会のメ

    ンバーは大学等機関の長,行政代表,Couperin事務局

    の部門長などが務めている。事務局の専任職員は3名

    在籍し,運営費には各参加館から300 ~ 800ユーロの

    年会費を徴収して充当している。

    Couper inは,電子リソースをできる限り有利な

    価格で購入できるよう,参加図書館を統括して電子

    リソースの評価・交渉・手配等(出版社との契約交

    渉)を行うことを主な活動目的としており,参加す

    る図書館の担当者が交渉等の業務を分担して活動を

    支えている。この他,「学術コミュニティー全体に対

    し,科学技術情報への平等なアクセスを保証するた

    め,アーカイブの取得に関する国の政策を推進する」,

    「オープンアーカイブの整備を通じて学術コミュニ

    ケーションの改善に尽力する」,「フランス語による

    コンテンツ作成を推進する」などのミッションを掲

    げて活動を行っている。

    2.3 韓国:KESLI

    韓国には,KISTI(KoreaInstituteofScienceand

    TechnologyInformation)という国の研究機関が事

    務局を担い,大学図書館・企業・公共図書館など約

    540機関が参加しているKESLI(KoreaElectronicSite

    LicenseInitiative)(http://www.kesli.or.kr/)という国

    レベルのコンソーシアムがある。コンソーシアムの

    運営費は主に国からKIST Iに投じられているが,コン

    ソーシアムが取り扱う電子コンテンツの契約・支払

    いは,参加する機関が個々に行っている。

    KESL Iは1999年に電子ジャーナルの共同購入か

    らスタートした。当初からNDSL(NationalDigital

    ScienceLibrary)と呼ばれる,電子リソースのメタデー

    タとフルテキスト,所蔵情報などを提供するワンス

    トップサービスの構築を目指し,コンソーシアムに

    販売したい出版社に販売対象となる電子リソースの

    メタデータを提供させ,一方,参加館は保有する紙

    媒体のジャーナルの所蔵情報やライセンス情報を提

    供するといった形で整備が進められた。

    これだけでなく,参加館の所蔵資料の共同利用や

    司書再教育プログラムなどの活動も行っており,全

    国的な図書館協力ネットワークに発展している。

    2.4 カナダのコンソーシアム

    カナダでは,主に州別に学術図書館コンソーシア

    ムがあり,いくつかの州が集まったコンソーシアム

    が別に存在するなど,多くの大学が複数のコンソー

    シアムに参加している。それもあって,国内に「コ

    ンソーシアムのコンソーシアム」が存在する。コン

    ソーシアムの多くは大学とカレッジが参加対象だが,

    病院図書館,保健局等の図書館が参加するコンソー

    シアムも存在する。運営費のほとんどは,参加図書

    館からの年会費と,電子リソースのライセンス料に

    上乗せされる手数料によって賄われているが,中に

    は,州の高等教育省から運営の助成金を得ているコ

    ンソーシアムもある。多くは,運営のための組織と

    して参加図書館の館長による図書館長委員会,執行

    委員会,事務局を有しているが,事務局の専任職員

    は1 ~ 10名弱とさまざまである。

    各コンソーシアムの活動の主要な目的は,電子リ

    ソースのライセンス契約を有利に行うことである。

    特筆すべきは,カナダのほとんどのコンソーシアム

    では,インボイスの集中管理(出版社等がコンソー

    シアムに対してインボイスを1通のみ発行し,一括し

    て請求を行い,コンソーシアムが各参加図書館に対

    して個別にインボイスを発行する方式)を行ってい

    ることである。

    この他に,電子リソースのコンテンツのホスティ

    ングや,図書館間貸借に関わる調整,総合目録デー

    タベースの整備など,多様なサービスを提供してい

    る。

    http://www.couperin.org/http://www.couperin.org/http://www.kesli.or.kr/

  • vol.56 no.12013

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    世界の大学図書館コンソーシアムとJUSTICEの現在

    情報管理 vol. 56 no. 1 2013

    2.5 日本のコンソーシアム

    ICOLCの参加数には現れていないが,日本におけ

    る学術機関・図書館のコンソーシアムは,JUSTICEの

    他にもいくつか存在する。電子リソースの契約条件

    交渉を主要な活動の1つとしたコンソーシアムとし

    ては,医学図書館協会(JMLA)や薬学図書館協議会

    (JPLA)のコンソーシアム,国立・独立行政法人の

    研究所図書館によるコンソーシアム(JNLC)等が挙

    げられる。JMLA,JPLAは大学図書館も協会員となっ

    ており,そこに参加している大学図書館の大部分は

    JUSTICEの参加館でもある。JNLCも含め,各コンソー

    シアムの運営は,参加機関の代表がボランティアで

    行っている。

    3. JUSTICEの概要

    では,JUSTICEはどのような図書館コンソーシアム

    なのか。参加機関の種類,運営体制,運営に係る経

    費の出所,活動目的・内容に焦点をあてて説明したい。

    3.1 参加機関,運営組織,運営経費

    JUST ICEは,国公私立の設置母体を問わず,4年制

    大学の図書館が参加することができるコンソーシア

    ムである。国公私立大学図書館協力委員会(以下,

    協力委員会)と国立情報学研究所(NI I)との間で

    2010年10月に締結された「連携・協力の推進に関す

    る協定書」1)(以下,協定書)のうち,「電子ジャーナ

    ル等の確保と恒久的なアクセス保証体制の整備」を

    推進するための組織として,2011年4月に発足した。

    一から新しく作られたものではなく,2000年頃から

    各々活動を行ってきた国立大学図書館協会(JANUL)

    コンソーシアムと公私立大学図書館コンソーシアム

    (PULC)が統合されたものである。企業や公共図書

    館などの機関は,現在は参加の対象となってはいな

    い。

    次に運営体制だが,JUSTICEはNIIと協力委員会によ

    り設置された連携・協力推進会議の下に置かれてい

    る「運営委員会」と,NI Iの学術基盤推進部に設置さ

    れた図書館連携・協力室が担当する「事務局」とで

    運営されている。運営委員会は大学図書館の職員で

    構成されており,主に管理職からなる委員と実務担

    当者からなる協力員をあわせた40名弱の人員で運営

    全般の基本方針の策定や,具体的な活動(出版社交渉,

    調査・分析,広報等)を行っている。

    先に取り上げた各国のコンソーシアムと同じく,

    事務局に専任職員(3名)が配置されているが,専

    任事務局を備えた図書館コンソーシアムはおそらく

    日本ではJUSTICEが最初であろう。JUSTICEの母体と

    なったJANULコンソーシアムとPULCもそうであっ

    たが,国内のコンソーシアムは,一般的に,その母

    体である図書館協会に専任職員がいることはあって

    も,コンソーシアムは事務局業務を含めて図書館職

    員のボランティアで運営されてきている。しかし,

    コンソーシアムの継続的な活動には,日常的に業務

    を行う事務局と専任の職員が不可欠である。そのた

    め,JUSTICEの発足にあたっては,NIIが事務局の組織

    と場所,事務局運営に係る経費等の支援を行い,人

    的な支援は大学図書館が職員を出向させる形で専従

    の事務局を設けることとなった。専任職員の人件費

    は出向元の大学が負担している。これにより,大学

    図書館の職員がその身分のまま,NI Iの日常的な支

    援のもとで図書館コンソーシアムの業務を行うとい

    う,これまでにない新たな連携・協力のフレームワー

    クが生まれることとなった。さらに,国公私立とい

    う設置形態の枠を超え,机を並べて日常業務を行う

    組織というのも大学図書館としては画期的である。

    JUSTICEの誕生は,NIIと大学図書館の将来の姿を考え

    る上で,非常に大きな意味を持つといえる。

    3.2 ミッション,活動内容

    JUSTICEのミッション,および活動内容は,2012年

    7月に制定された「大学図書館コンソーシアム連合 

    要項」2)に以下のとおり明記されている。この要項は,

    後述する新体制への移行に向けて制定されたもので

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    あるが,現在のミッションおよび活動内容を踏襲し,

    かつ,より具体化して記述されたものである。

    第2章 目的及び事業

    (目的)

    第4条 連合は,電子ジャーナル等の電子リソース

    に係る契約,管理,提供,保存,人材育成等を

    通じて,わが国の学術情報基盤の整備に貢献す

    ることを目的とする。

    (事業)

    第5条 連合は,前条の目的を達成するために次の

    事業を行う。

    (1) 出版社等との交渉を通じた電子リソースの

    購入・利用条件の確定

    (2) 電子ジャーナルのバックファイルや電子コ

    レクション等の拡充

    (3) 電子リソースの管理システムの共同利用

    (4) 電子リソースの長期保存とアクセス保証

    (5) 電子リソースに関わる図書館職員の資質向

    (6) 前各号のほか,本連合の目的を達成するた

    めに必要な事業

    中でも,第5条(1)の電子リソースの契約に係る

    出版社等との交渉が主たる活動である。この点は他

    国のコンソーシアムと同じであるが,韓国のKESL Iや

    カナダのコンソーシアムが行っているような,参加

    館間の所蔵資料の共同利用サービス(ILL)の運営や

    総合目録の構築など,紙媒体資料を基本とした従来

    型の事業・サービスは,JUSTICEの活動の対象として

    いない。前述のとおり,「電子ジャーナル等の確保と

    恒久的なアクセス保証体制の整備」を推進するため

    の組織として発足したこともあるが,そもそも日本

    においては,それらの事業はNI Iが基盤を整備し,20

    年以上にわたり一貫して支えてきており,新たに行

    う必要がないためでもある。しかし,今後JUSTICEが

    電子リソースにかかるさまざまな事業を展開してい

    く中で,紙媒体資料を中心とした既存のサービス等

    との連携・融合も必要になるであろう。

    出版社等との契約条件交渉における重要なポイン

    トとして,電子リソースの契約・支払いをコンソー

    シアムが主体となって履行しているかどうかという

    ことがある。コンソーシアムは,参加館の支出を抑

    え,電子リソースへのアクセス環境を維持・改善す

    ることを目的として,参加館を代表して交渉を行う

    のだが,特に商業出版社を相手にする場合は,相手

    が一方的に減収となるような要求をしても合意に達

    することは難しく,互いがwin-winで折り合える点

    を探ることが必要となる。その際,出版社側から提

    示される価格低減策の1つに,コンソーシアム(参加

    館)との契約事務の合理化がある。大学と出版社と

    で個別に契約・支払いを行うのでなく,コンソーシ

    アムが契約主体となり支払いも一括して行うことが

    できれば,出版社側では相応の業務削減が行えるた

    め,削減されたコストに見合う分を契約額から削減

    できるというわけである。しかし,コンソーシアム

    が契約・支払いの主体となるためには法人格を取得

    する必要がある。また,コンソーシアムが,参加館

    を代表して出版社との契約を行い,出版社に代わっ

    て各参加館から契約料金を受領することになるため,

    適正な会計処理等の仕組みが構築されていなければ

    ならない。イギリスのJISCやカナダのコンソーシアム

    ではこのような一括契約を行っているが,世界的に

    も実現しているコンソーシアムはあまり多くないの

    が実情であろう。JUSTICEでも,コンソーシアムとし

    て契約条件に合意した出版社の製品を契約するかど

    うかの判断と,実際の契約・支払いは各参加館が行っ

    ている。コンソーシアムとしては,参加館の電子リ

    ソースへのアクセス環境を維持していくためにも,

    契約額圧縮のための手立てを考え続けなければなら

    ない。将来的に契約・支払いを行う主体となる可能

    性も含め,制度整備・組織整備を進める必要がある

    だろう。

    JUSTICEの活動は契約交渉の他にもいくつかある

    が,とりわけ,かつてのコンソーシアムでは手薄で

    あった,人材育成に取り組むための環境が初めて整っ

  • vol.56 no.12013

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    世界の大学図書館コンソーシアムとJUSTICEの現在

    情報管理 vol. 56 no. 1 2013

    たことは評価されるべきである。フランスでは,図

    書館職員養成の課程を受講したり,在職中に交渉ス

    キルをトレーニングする機会が設けられているよう

    だが,活動の柱となる業務に携わる人材の育成は,

    コンソーシアムにとって死活的に重要である。特定

    の職員が長く関わることは,その期間の活動の安定

    をもたらすという点で決して悪いことではないが,

    コンソーシアムの持続的な活動体制を構築するため,

    ひいては学術情報流通基盤整備の中核的役割を担う

    人材を大学図書館界に増やしていくために,育成に

    は積極的に取り組む必要があろう。

    具体的には,事務局が組織上NI Iに置かれているこ

    とから,NIIの実務研修制度を活用している。1年以内

    の月単位で研修生を受け入れ,OntheJobTraining

    (OJT)を基本としつつ,あわせて事務局員やNI Iの職

    員の協力のもと個別研修課題に取り組んでいる。事

    務局では,昨年度は3名,今年度は1名の実務研修生

    を受け入れたが,それぞれ所属の大学へ戻った後も,

    実務研修で身につけたさまざまなスキルを生かすと

    ともに,研修中に築いた人的なネットワークを活用

    し,学術情報流通への高い関心を維持しながら業務

    を行っている様子がうかがえる。大学図書館におけ

    る人材育成プランの1つとして,この研修制度の活用

    が高まればと期待している。

    3.3 世界の図書館コンソーシアムの中で

    ここまでJUSTICEの概要を見てきたが,各国の図書

    館コンソーシアムの中で,JUSTICEは他と似たところ

    のない特殊な組織であるとは言えない。どのコンソー

    シアムも電子リソースという学術情報を対象とし,

    互いに連帯し,情報を共有しているためにおのずと

    同じ方向へ向かうのだろう。

    事務局員として情報を得た中では,運営組織の規

    模(事務局職員の数)や,活動の体制(参加館の分

    担による業務支援)などは,フランスのCouperinが

    最も形態として近いように感じる。組織だけでなく,

    学術情報流通の世界における主要言語である英語を

    母国語としないという文化的な面でも類似性が高く,

    おそらくコンソーシアムの交渉の手法や取り扱う対

    象の選択なども似通ってくるのではないかと思われ

    る。

    すでに欧州では国を超えたコンソーシアムの連携

    が行われており,ICOLCの活動も活発である。また,

    欧米の図書館職員の主導により各種のプロジェクト

    が運営されてもいる。JUSTICEには,これらの国際的

    な枠組みにおける日本の窓口として,日本の貢献度

    を高めていくことも,国内外から期待されている。

    4. 新たなステージへ

    JUSTICEの発足から2年が経過しようとしているが,

    この2年間は従来の2つのコンソーシアムの業務を統

    合し,安定的・持続的な活動体制を確立するまでの

    移行期間という位置付けである。その業務統合もお

    おむね完了し,2013年4月から新たな運営組織へと移

    行することとなっている。現在との大きな違いは会

    費の徴収を前提とした会員制の組織となることであ

    る。

    4.1 コンソーシアムの立ち位置

    JUSTICEがコンソーシアムとして安定的な組織運営

    を行うために,大学図書館コミュニティーにおいて

    どのような立ち位置をとるべきかについては,発足

    の直後から運営委員会で検討が重ねられた(図2)。

    そもそもかつてのJANULコンソーシアムのような図

    書館協会との一体型では,協会員以外の機関を含む

    ような組織再編はできず,専任事務局の設置が求め

    られていたものの協会組織としては困難であった。

    この「協会一体型」では解決し難い課題の存在が

    JUSTICE発足の要因の1つでもある。従って,まずは「協

    会一体型」から離れた組織としてJUSTICEを立ち上げ,

    その上で,全面的なアウトソーシングまで含めた中

    で最適と思われる形態を検討した結果,連携・協力

    の枠組みとともに会員館の支援によって運営される,

  • 18

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    中間的な形態の会員制組織を選択することとなった

    のである。

    4.2 新組織への移行が持つ意味

    発足してから現在までの運営体制を振り返ると,

    運営の基盤が連携・協力推進会議の下に置かれ,コ

    ンソーシアムのガバナンスにNI Iが関わる形となった

    ことは画期的であった。その一方,参加館である個々

    の大学図書館からすると,JANULコンソーシアムと

    PULCの参加館がそのまま移行された状態であり,出

    版社の契約条件に見られるように,元のコンソーシ

    アムの参加館であるという識別子が残っているため,

    JUSTICEの参加館と言われても実感に乏しい状態で

    あったのも,やむを得ない(図3)。

    2013年4月以降は,連携・協力の枠組みと,会費

    を支払い会員館となる大学図書館からの二重の支援,

    ガバナンスによって成り立つ組織に生まれ変わる(図

    4)。この新組織への移行に際し,2012年10月から12

    月にかけて,既存の参加館に対して新組織の要項案

    や会費案等を示し,改めて参加意思を確認したとこ

    ろ,不参加を選択した大学もあったが,新体制以降

    に新規参加を希望する大学もあり,最終的には491館

    から参加の意向を得ることができた。幸いにも設立

    当初(486館)より多い数の会員館でスタートするこ

    ととなったのである。

    こうした,JUSTICEの会員館となるかどうかを自ら

    図3 JUSTICE運営体制(2011年4月~ 2013年3月)

    国立情報学研究所 連携・協力推進会議国公私立大学図書館

    協力委員会

    連携の枠組み

    学術基盤推進部

    公立大学協会図書館協議会

    国立大学図書館協会

    大学図書館コンソーシアム連合

    協力員

    私立大学図書館協会JUSTICE

    運営委員会

    図書館連携・協力室長(専任)

    協力員

    事務局

    JANUL国立大学図書館コンソーシアム

    参加館(出向)図書館連携・協力室長(専任)

    室員(専任)

    室員(専任)

    PULC公私立大学図書館コンソーシアム

    参加館(出向)

    室員(専任)

    業務移行

    参加館

    旧JANUL旧JANULコンソーシアム

    旧PULC

    協会一体型組織

    民間会社等へ委託

    ウ グ事務 専任職員

    会員制組織

    兼業(ボランティア) アウトソーシング事務局(専任職員)+兼業(ボランティア)

    ・ 電子リソースの整備というコアの業務を自ら担う

    ・ 参加館から派遣された専任職員が事務局業

    ・ 運営の効率化うコアの業務を自ら担う

    ・ 事務局担当館への負担が大きく維持困難

    ・ 協会等をまたぐ統合不可

    専任職員が事務局業務を担う

    ・ 電子リソースの整備というコア業務への図書

    ・ 電子リソースの整備というコアの業務への図書館の関与を放棄

    協会等をまたぐ統合不可館の関与を維持

    ・ 安定性・継続性の強化

    図2 JUSTICEの位置付け

  • vol.56 no.12013

    J o u r n a l o f I n f o r m a t i o n P r o c e s s i n g a n d M a n a g e m e n t

    JOHO KANRI

    April情報管理 http://johokanri.jp/

    19

    世界の大学図書館コンソーシアムとJUSTICEの現在

    情報管理 vol. 56 no. 1 2013

    選択するという過程を通して,会員としての自覚を

    深めてもらうことができたのではないかと思われる。

    なお,現在のJUSTICEは,NIIから事務局組織,場所,

    事務局運営に係る経費等の支援を受け,その上で大

    学図書館職員が活動する体制が実現されているとは

    いえ,NI Iの支援以外の活動経費,特に事務局職員の

    人件費に関しては,全面的に出向元の大学(=特定

    の参加館)の負担となっている。会費の徴収を開始

    するのは,この負担を軽減するための財源確保が主

    な目的である。

    会費の徴収についてはさまざまな考え方があり,