5
1 精子と卵子の役割 精子 ヒト 60 μm ニタリクジラ 56 μm ・父方の遺伝情報 ・鞭毛による運動性 ・中心体(分裂装置) 卵子 マウス 70 μm ヒト 140 μm クロミンククジラ 200 μm ・母方の遺伝情報 ・発生に必要なタンパク質 ・発生に必要なエネルギー ・ミトコンドリアなどの細胞小器官 ・リボソームとtRNA、mRNAなど ヒトのオスの生殖器 陰嚢 膀胱 直腸 精嚢腺 前立腺 精巣 精管 尿道 精巣上体 包皮 陰茎 海綿体 尿道口 恥骨 カウパー腺 (尿道球腺) 副生殖腺 生殖腺 筋海綿体型:海綿体への血液供給で陰茎の硬さが変化する 精子 先体 中心体 ミトコンドリア 鞭毛 精子被覆抗原(精漿由来) 頭部 中間部 鞭毛部 受精に必要なもの以外はセルトリ細胞に吸収されている (中心体は受精卵の卵割に必要) 精子被覆抗原があると受精できない 精液の成分 精子(細胞・約1%):酸に弱い 精漿(液体・ムチンなどタンパク質が多い) 精液 精嚢分泌液 精嚢で生産(精漿の70%) 精子のエネルギー源として果糖を含む 前立腺液 前立腺で生産(精漿の30%) クエン酸を含み、精液のpHを弱アルカリ性に保つ セリンプロテアーゼを含む(精漿の性状を変える?) 尿道球腺液 尿道球腺液で生産 弱アルカリ性で精子を保護 性交時の摩擦軽減 成分など 精漿 血漿 Na(mg/100 ml) 259 318 K(mg/100 ml) 172 17 Ca(mg/100 ml) 37 8 タンパク質(mg/100 ml) 5500 8997 グリセロリン酸コリン(mg/100 ml) 182 0 グルコース(mg/100 ml) 10 83 フルクトース(mg/100 ml) 550 0 乳酸(mg/100 ml) 35 13 浸透圧(mOsm/kg) 281 281 ウシの精漿と血漿成分の比較 精子の運動を調節 精子のエネルギー源 受精能抑制因子、 各種酵素など ヒトの受精と着床 4日 桑実胚 6~24時間 受精 6~7日 着床 5日 胚盤胞 排卵 卵子の寿命は12~24時間 数字は排卵からの時間 受精卵は卵管の繊毛の 運動で移動する 精子 精子の寿命は2~3日 10~80分で卵管膨大部へ 1~3時間で受精能獲得

精子と卵子の役割 ヒトのオスの生殖器web.agr.ehime-u.ac.jp/~seisan/chikusou/slides/DAII08...1 精子と卵子の役割 ヒトのオスの生殖器 精子 ヒト 60 μm

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1

精子と卵子の役割

精子 ヒト 60 μm ニタリクジラ 56 μm

・父方の遺伝情報

・鞭毛による運動性

・中心体(分裂装置)

卵子 マウス 70 μm ヒト 140 μm クロミンククジラ 200 μm

・母方の遺伝情報

・発生に必要なタンパク質

・発生に必要なエネルギー

・ミトコンドリアなどの細胞小器官

・リボソームとtRNA、mRNAなど

ヒトのオスの生殖器

陰嚢

膀胱

直腸

精嚢腺

前立腺

精巣

精管

尿道

精巣上体

包皮

陰茎

海綿体

尿道口

恥骨

カウパー腺

(尿道球腺)

副生殖腺 生殖腺

筋海綿体型:海綿体への血液供給で陰茎の硬さが変化する

精子

核 先体 中心体

ミトコンドリア 鞭毛

精子被覆抗原(精漿由来)

頭部 中間部 鞭毛部

受精に必要なもの以外はセルトリ細胞に吸収されている

(中心体は受精卵の卵割に必要)

精子被覆抗原があると受精できない

精液の成分

精子(細胞・約1%):酸に弱い

精漿(液体・ムチンなどタンパク質が多い)

精液

精嚢分泌液 精嚢で生産(精漿の70%)

精子のエネルギー源として果糖を含む

前立腺液 前立腺で生産(精漿の30%)

クエン酸を含み、精液のpHを弱アルカリ性に保つ

セリンプロテアーゼを含む(精漿の性状を変える?)

尿道球腺液 尿道球腺液で生産

弱アルカリ性で精子を保護

性交時の摩擦軽減

成分など 精漿 血漿

Na(mg/100 ml) 259 318

K(mg/100 ml) 172 17

Ca(mg/100 ml) 37 8

タンパク質(mg/100 ml) 5500 8997

グリセロリン酸コリン(mg/100 ml) 182 0

グルコース(mg/100 ml) 10 83

フルクトース(mg/100 ml) 550 0

乳酸(mg/100 ml) 35 13

浸透圧(mOsm/kg) 281 281

ウシの精漿と血漿成分の比較

精子の運動を調節

精子のエネルギー源

受精能抑制因子、

各種酵素など

ヒトの受精と着床

4日

桑実胚

6~24時間

受精 6~7日

着床

5日

胚盤胞

排卵 卵子の寿命は12~24時間

数字は排卵からの時間

受精卵は卵管の繊毛の

運動で移動する

精子 精子の寿命は2~3日

10~80分で卵管膨大部へ

1~3時間で受精能獲得

Page 2: 精子と卵子の役割 ヒトのオスの生殖器web.agr.ehime-u.ac.jp/~seisan/chikusou/slides/DAII08...1 精子と卵子の役割 ヒトのオスの生殖器 精子 ヒト 60 μm

2

受精能獲得

先体反応

顆粒膜細胞・透明帯除去

ヒアルロニダーゼ

アクロシンなど

糖タンパク質

先体

先体反応

透明帯にはZP1・ZP2・ZP3の糖タンパク質がある

精子がZP3と結合すると先体反応が始まる

ZP3は動物によって違うため異種間受精を防止できる

Ca 2+

Ca 2+

Ca 2+

透明帯反応

受精で透明帯の性質が変化し他精子の侵入が不可能になる

Ca 2+

Ca 2+

Ca 2+

小胞体からCa2+が放出

透明帯

囲卵腔

表層顆粒

両者の細胞膜が融合

透明帯の性状が変化

囲卵腔が拡大

多精拒否

細胞内のCa2+濃度は細胞外や小胞体の10000分の1

雄性前核の形成

雌性前核の形成

卵減数分裂の再開

雄性前核・雌性前核

先体反応

卵の減数分裂再開

前核の形成

DNAの複製

雌性前核 雄性前核

融合

第一卵割

2細胞期

(極体は後に退化・消失)

ヒト初期胚の発生

4日

桑実胚

6~24時間

受精

6~7日

着床

5日

胚盤胞

受精卵は卵管の繊毛の

運動で移動する

卵割 約12時間周期

体細胞分裂は20~30時間周期

上皮成長因子(EGF)

TGFα(トランスフォーミング成長因子)

インスリン様成長因子-1(IGF-1)

卵管や卵自体から成長因子が分泌

卵に細胞分裂に必要な物質が蓄えられている

卵割にはG1期がない

卵管や子宮の分泌液の乳酸や

ピルビン酸をエネルギー源に

ブドウ糖は8日目以降

ブタとウシの着床

ウシ(両分子宮)

ブタ(二角子宮)

胚が分泌したホルモンなどによって

誘発された子宮運動により均等に配置

中心着床(ウシやブタ)

胚子の成長とともに子宮腔が拡張し、

栄養膜の全面が子宮内膜に付着

壁内着床(ヒトや高等霊長類)

胚の栄養膜から出す酵素によって子宮

内膜上皮を破壊し、子宮壁に胚が侵入

主な妊娠の確認の方法 ブタ

ウシ

ノンリターン法:21日以降の発情の有無で確認

直腸検査法:28日以降に直腸から子宮動脈の拍動を触診で調べる

超音波妊娠診断法:約24日以降に超音波で胎児拍動や羊水の有無を確認

ホルモン濃度による判別:約17日以降に血中プロジェステロン濃度を測定

ノンリターン法:21日後の発情の有無で確認

直腸検査法:約40日以降に直腸から黄体と子宮胎膜の有無を触診で確認

超音波妊娠診断法:約30日以降に直腸から探子を入れ胎児の有無を確認

子宮粘膜の調査:約35日以降に子宮頸管粘膜を調べる

(妊娠後に子宮頸管が閉じ、粘膜が固くなる)

繁殖メスブタが妊娠していない期間は飼料代がかかる

性周期が正常で、生殖器に異常がないのに受胎しない

個体がいる(リピートブリーダー)

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3

2細胞期 4細胞期 8細胞期 16細胞期 32細胞期 桑実胚

胚盤胞

(胞胚) 原腸胚 神経胚

神経板

ヒトの発生

コンパクション

割球が密着

透明帯を破って着床

透明帯は胚の形状維持や白血球からの防御に必要

透明帯

栄養膜細胞・・・後の胎盤(胚側)

内細胞塊(胚性幹細胞)・・・後の胎児

胚盤胞腔

胚盤胞

透明帯

子宮内膜 脱落膜

子宮腺 毛細血管

栄養膜細胞由来

胚性幹細胞由来

羊膜

上層 下層

胚盤

胚外体腔膜 胚外中胚葉

栄養膜合胞体層

着床 哺乳類の受精卵の45%が着床せずに死ぬといわれている

子宮内膜への接着 浸潤

初期胎盤の形成 胚性外胚葉

胚性中胚葉

胚性内胚葉

神経板

脊索

右 左 羊膜

卵黄のう

三層性胚盤

ヒトの外胚葉・中胚葉・内肺葉

脊髄

体節

体腔

側板

脊索

神経系・感覚系

表皮

骨格・筋肉

真皮・生殖器官

呼吸系

消化器系

外胚葉

中胚葉 内胚葉

原腸胚 神経胚 成体

外胚葉 表皮 表皮

神経管 脳・脊髄・神経・感覚器

中胚葉

脊索 消失

体節 骨格・筋肉・結合組織

腎節 腎臓

側板 心臓・血管・平滑筋・腹膜

内胚葉 腸管 消化管・呼吸系

それぞれの胚葉からできるもの

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4

胎児側の胎盤の形成 前 後 羊膜

卵黄嚢

絨毛膜

卵黄嚢 血管

(造血)

卵黄膜

羊膜腔

尿膜

尿膜腔

絨毛膜-尿膜(胎児側胎盤)

尿膜腔

卵黄嚢

(委縮する)

絨毛膜-卵黄膜

(初期の胎児側胎盤)

羊膜:胚を包んで羊膜腔を形成するとと

もに、羊水を分泌し、胚を取り巻く環境

を一定にする

卵黄膜:造血を行い、原腸の一部に

尿膜:絨毛膜とともに胎児側胎盤を作る

胎盤

羊膜

絨毛膜

羊水

絨毛 脱落膜(母体の子宮由来)

胎盤

子宮内膜

(母体の子宮)

母体の

子宮血管 胎盤の機能

栄養素・老廃物の交換

酸素・二酸化炭素の交換

ホルモンの分泌

免疫抗体の移行など

日齢 主な変化

21日 眼と前肢・後肢の原基

28日 前肢・後肢の伸長、耳窩

35日 骨格形成、交尾器の発生

42日 眼瞼閉鎖、耳介

70日 歯の出現

84日 外鼻孔の貫通

98日 体表面に軟毛

114日 分娩

ブタとウシの発生

ブタの発生

日齢 主な変化

21日 心臓の鼓動開始

22日 脳・脊髄の形成

25日 前肢・後肢の原基

45日 眼と鼻孔が明らかに

70日 化骨開始

110日 歯の発達開始

230日 体表面に発毛

280日 分娩

ウシの発生

あぶらブタの繁殖障害

母ブタが太りすぎだと胎児の発育低下、死産、難産、

子ブタの発育不良が起きやすくなる

子宮 ・血流低下により胎児の成長が低下

・陣痛が弱く難産に

脂肪が沈着するので

生殖器が圧迫される

卵巣 ・発育不全になり排卵数が低下

子宮頚部 ・産道が狭くなり難産に

・窒息子豚が増える

外陰部 ・分娩に際して裂傷しやすくなる

(子宮内膜炎にもなりがちに)

乳房 ・脂肪が沈着し乳量低下し

子ブタが発育不良に

ウシでも過肥になると子宮内膜が脂肪で

覆われるため着床しづらくなる

分娩豚房 単位はmm

2000

400

650

950

スノコ床

ヒーター埋設 保温箱

分娩柵

飼槽

ウォーター

カップ

パンチング鉄板

分娩豚房

分娩1週間前には分娩豚房に移す

プロラクチン

ヒト絨毛性ゴナドトロピン

ヒト胎盤性ラクトゲン

下垂体前葉

胎盤

ホル

モン

の分

泌量

妊娠・分娩とホルモン分泌

エストロジェン

プロジェステロン

卵巣

分娩 0 10 20 30 2 4 6 8週

乳腺の発育促進

乳汁の合成促進

プロジェステロンも乳腺を発達させる

プロスタグランジン

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5

分娩とホルモン

子宮 黄体(妊娠中期以降の胎盤も)

プロジェステロン

子宮平滑筋収縮抑制 分娩

オキシトシン

子宮平滑筋収縮・乳汁分泌

下垂体後葉・黄体

エストロジェン

黄体

胎盤および子宮

プロスタグランジンF2α

黄体退行・子宮平滑筋収縮

リラキシン

骨盤結合の弛緩・子宮頸管拡張

黄体・子宮・胎盤

分娩30~60日後に発情が再開する 分娩と産道

軟部産道

子宮頚、膣、陰門

骨部産道

寛骨、仙骨、尾骨

寛骨

仙骨

尾骨

腰椎

仙腸関節 腸骨

恥骨

坐骨

恥骨結合

胎盤などから分泌される

リラキシンの作用でこれ

らの結合部分が緩む

ブタの分娩

開口期

陣痛開始

子宮が収縮し、子宮口が開く

破水

娩出期

胎児娩出(破水1~4時間後)

10~20分間隔で胎児が娩出

3時間以内で終了する

後産期

胎盤娩出(胎児娩出0.5~2時間後)

後産が少ない場合は胎児が残っている可能性がある

ウシの分娩

開口期

陣痛開始

落ち着きがなく、背を曲げ尾を上げる

一次破水(陣痛開始3~6時間後)

膣内(膣口)で尿膜が破れる

娩出期

二次破水(一次破水0.5~40時間後)

足胞(羊膜)が見える

陰門で羊膜が破れ羊水が流出する

胎児娩出(二次破水0.5時間後)

後産期

胎盤娩出(胎児娩出3~6時間後)

24時間以上かかると後産停滞

うつぶせであれば、向きが逆でも良い

難産の例

産道が狭小 胎児が大きい

片方の足だけ出ている

胎児が見えてこない 胎児が仰向け

血液の入ったおりものが出てくる