Upload
others
View
0
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
1
基礎力学B (2011年度2学期木曜1限)
1D201 8:40 - 9:55 担当 守友 浩 自B607
目 次
IV.惑星の運動と中心力
1. 円錐曲線 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 2.中心力による運動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 3.ケプラーの法則と万有引力・・・・・・・・・・・・・・・7 4. 惑星の運動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
V.角運動量
1.角運動量と力のモーメント ・・・・・・・・・・・・・10 2.角運動量ベクトル ・・・・・・・・・・・・・・・・・11 3.ベクトルの外積・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
VI.質点系の力学
1.運動量保存の法則・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 2.2体問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 3.全運動エネルギー ・・・・・・・・・・・・・・・・・17 4.全角運動量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
VII.剛体の運動 1.固定軸を持つ剛体の運動・・・・・・・・・・・・・・・21 2.剛体の慣性モーメント・・・・・・・・・・・・・・・・23 3.コマの歳差運動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
(参考文献) ・ 「力学」 戸田盛和(岩波書店)物理入門コース ・ 「力学I」 原島鮮 (裳華房) ・ 「力学」 近藤淳 (裳華房)
2
I.惑星の運動と中心力 ケプラーは惑星の運度を三つの法則にまとめた。いわゆる、ケプラーの法則である。 第一法則:惑星は太陽を焦点のひ
とつとする楕円軌道を描く 第二法則:太陽と惑星と結ぶ直線
が単位時間に掃過する面積は一定
である。 第三法則;惑星が太陽の周りをま
わる周期の2乗は楕円軌道の長半径の3乗に比例する。 ニュートンは、運動の法則と万有引力の法則を考え、ケプラーの法則を導き出した。このように地上
の運動と宇宙の運動とを統一的に考えることができ、力学のすばらしさが広く認められた。 (問題)万有引力は、距離の2乗に反比例する。月までの距離は、地球の半径の60倍であることより、
月の公転周期を計算せよ。月までの距離R は、3.8×108mである。[向心力は、 260mg
である。 2ωmRf =
より、g
RT26022 π
ωπ== =27日]
(問題)惑星の軌道と公転周期のデーターより、ケプラーの第三法則が成り立っていることを確かめよ。
1. 円錐曲線 アポロニウスは、「2定点からの距離の和が一定の曲線は楕円であり、差が一定の曲線は双曲線であ
3
る。」を導いている。この性質から出発して、円錐曲線の性質を調べよう。 楕円 二つの焦点FとF’の中央に原点をとり、x 軸はFF’を結ぶ直線とする 。 二 つ の 焦 点 か ら 一 点 P ),( yx い た る 距 離 は 、
2222 )(',)( ycxrycxr ++=+−= である。 arr 2'=+ を書
き下して、
aycxycx 2)()( 2222 =++++− (4.1)
となる。両辺を2乗して整理すれば、
})}{(){()2( 2222222 ycxycxcayx +++−−=−−+ (4.2)
となり、さらに2乗すると
22222222222 4)()}2({ xccyxcayx −++=−−+ (4.3)
となるが、両辺で 44 , yx などが打ち消しあって、結局
)()( 22222222 caayaxca −=+− (4.4)
を得る。これを書き直すと、
122
2
2
=+by
ax
(4.5)
を得る。ただし、 222 cab −= である。a を長軸半径、b を短軸半径という。また、
aba
ac 22 −==ε (4.6)
は焦点がどれくらい離れているか
を表すので、離心率と呼ぶ。 一方、焦点からの距離r と x 軸からの角ϕ を用いた極座標 ),( ϕrを用いると、
rarccrr −=++= 2cos4)2(' 22 ϕ (4.7)
である。両辺を2乗して整理すると、
2)cos( bcar =+ ϕ (4.8)
4
ここで、半直弦abl
2
= を定義すると、
ϕε cos1+=
lr (4.9)
が得られる。 ba, を l,ε で表せば、22 1
,1 εε −
=−
=lbla となる。
双曲線 二つの焦点FとF’の中央に原点をとり、x 軸はFF’を結ぶ直線とする。二つの焦点から一点P ),( yx
いたる距離は、 2222 )(',)( ycxrycxr ++=+−= である。 arr 2' =− を整理すると、
122
2
2
=−by
ax
(4.10)
が得られる。あるいは、離
心率ε と半直弦 l を用いれば、
ϕε cos1−=
lr (4.11)
となる。 (問題)(4.10)式と(4.11)式を導出せよ。 放物線 円錐を切る平面が、円錐の接平面に平
行な場合、その切り口が放物線になる。
平面の傾きがこれより小さければ楕円に
なり、傾きが大きければ双曲線になる。
したがって、放物線は楕円と双曲線のあ
る極限と見ることができる。 このことを式で表すために、例えば、
楕円を考えよう。まず、原点を近日点
)0,(a に移す。すると、式(4.5)は 1)( 22
2
2
=++
by
aax
となる。書き直すと、 02 222
=++ ybax
ax
と
なる。kb
a 22 = とおき、これを有限にとめて、 ∞→a とする。結果、放物線の式 kxy −=
2 が得ら
れる。
5
2. 中心力による運動 中心力とは、空間の一点を向き、その点からの距離の関数である力である。中心力を受けて運動
する質点の軌道は、1平面内に限られる。 理由:速度vvで運動する質点に、中心力F
vがはたらい
ているとする。この質点は、微小時間 tΔ の間に tvΔv 移動する。そして、力の中心と軌道 tvΔv によって平面S
が作られる。他方、 tΔ 後の速度は、 tmFvv Δ+=v
vv' で
ある。 'vv は平面S の上にある。さらに、 tΔ 経過しても軌道は同じ平面内にある。 平面極座標 中心力による運動を調べるのに適した極座標 ),( ϕr で運動を記述しよう。
⎩⎨⎧
==
ϕϕ
sincos
ryrx
(4.12)
一回、微分して、
⎪⎩
⎪⎨
⎧
+==
−==
ϕϕϕ
ϕϕϕ
cossin
sincos
rrvdtdy
rrvdtdx
y
x
&&
&& (4.13)
とない、さらに、微分して、
⎪⎪⎩
⎪⎪⎨
⎧
+−+=
−−−=
ϕϕϕϕϕϕϕ
ϕϕϕϕϕϕϕ
cossincos2sin
sincossin2cos
2
2
&&&&&&&
&&&&&&&
rrrrdt
dv
rrrrdt
dv
y
x
(4.14)
となる。他方、中心力の大きさを )(rf とすると、その yx, 成分は、
⎪⎪⎩
⎪⎪⎨
⎧
==
==
ϕ
ϕ
sin)(
cos)(
rffdt
dvm
rffdtdv
m
yy
xx
(4.15)
となる。したがって、この二つの式から、
⎪⎪⎩
⎪⎪⎨
⎧
=−
=+
0)cossin(
)()sincos(
ϕϕ
ϕϕ
dtdv
dtdv
m
rfdt
dvdt
dvm
yx
yx
(4.16)
が得られる。これらの式に、(4.14)を代入して整理すると、
6
⎩⎨⎧
=+=−
0)2()()( 2
ϕϕϕ
&&&&
&&&
rrmrfrrm
(4.17)
となる。 (方位角方向)
(4.17)式の第二式に、mrを掛けて、
0)( 2 =ϕ&rdtd
(4.18)
と変形する。これを時間ついて積分
すれば、
hr =ϕ&2 (一定) (4.19)
となる。 ϕ&2r は、単位時間に動径OP
が掃過する面積(面積速度)の2倍である。すなわち、一つの質点が固定点から中心力の作用を受けて運動するとき、力の中心まわりの面積速度は一定である。これは、ケプラーの第二法則である。 (動径方向)
(4.19)式を(4.17)式の第一式に代入して、
)()( 32
rfrhrm =−&& (4.20)
を得る。書き直すと、r に関する運動方程式は、
3
2
)(r
mhrfrm +=&& (4.21)
となる。もしも、軌道が半径 0r の円であれば、等速円運動の速さを 0v とすると、(4.19)式は、 hvr =00
となる。この場合、右辺第二項は、r
mvr
mh 203
2
= となる。したがって、この項は遠心力の効果を
表している。 (問題) 極座標 ),( ϕr 表示での運動エネルギーが、
)(21)(
21 22222 ϕ&& rrmvvmK yx +=+= (4.22)
となることを導け。
7
中心力のポテンシャル 中心力がある関数 )(rU から
)()( rUdrdrf −= (4.23)
によって導かれるとき、 )(rU をこの中心力のポテンシャルという。 3. ケプラーの法則と万有引力 ここでは、ケプラーの法則から万有引力を導こう。ケプラーの第一法則によれば、惑星の軌道は楕円
である。
ϕε cos1+=rl
(4.24)
時間で微分して、
ϕϕε &&
⋅= sin2rrl (4.25)
となる。第二法則より、 hr =ϕ&2 なので、書き直して、
ϕε sinlhr =& (4.26)
となり、さらに微分して、
2
2
3
2
2
2 coscoslrh
rh
rlh
lhr −==⋅= ϕεϕϕε &&& (4.27)
を得る。最後の変形は、 ϕε cos1+=rl
を用いた
(4.21)式と(4.27)式を見比べると、
2
2
)(lrmhrf −= (4.28)
であることが分かる。 lhm ,, は惑星ごとに異なり、太陽からの力も惑星ごとに異なるように見える。
万有引力が普遍的であることは、ケプラーの第三法則[ caT
=32
(一定)]で示される。楕円の面積
は abA π= である。したがって、惑星の周期はhab
hAT π2
2== となる。これらを利用すると、
2
2
2
2 4)(cr
mlrmhrf π−=−= (4.29)
が導ける。したがって、太陽からの力は惑星の質量mに比例し、距離r の2乗に反比例する。作用・反作用を法則より、太陽が惑星を引けが、惑星も太陽を引く。つまり、この力は質量による力であ
る。したがって、この力は太陽の質量M にも比例するはずである。すなわち、万有引力は、G を比例定数として、
8
2)( rmMGrf −= (4.30)
と書ける。比例定数G は万有引力定数と呼ばれ、その値は、実験より、6.672×10-11Nm2/kg2 と求まっている。また、万有引力のポテンシャルは、
rmMGrU −=)( (4.31)
である。 (問題)(4.29)式を導け。 (問題)1kgの物体を10cm離して置いたときの、万有引力の大きさを計算せよ。 (問題)(4.30)式より、重力 mgrf −=)( を導け。 4.惑星の運動
今度は、万有引力からケプラーの法則を導こう。惑星に働く力は 2)( rmMGrf −= なので、運動
方程式は、
⎪⎩
⎪⎨⎧
=
−=−
hrrMGrr
ϕ
ϕ
&
&&&
2
22
(4.32)
となる。第二式がケプラーの第二法則である。我々が知りたいのは、軌道 )(ϕrr = である。ここで、
ru 1= という関数を考える。すると、
ϕϕϕ
ϕ dduh
ddr
rh
ddr
dtdr
−=== 2& となり、さらに、
2
2
2
2
2
2
2
2
ϕϕ
ϕ dud
rh
dudh
dtrd
−=−= & となる。したがって、惑星の運動方程式( 232
rmMG
rmhrm −=−&& )
は、
23
2
2
2
2
2
rMG
rh
dud
rh
−=−−ϕ
(4.33)
となる。さらに整理して、
22
2
hMGu
dud
=+ϕ
(4.34)
が得られる。この方程式の一般解は、
9
20 )cos( hMGAu +−= ϕϕ (4.35)
なので、軌道方程式は、
20 )cos(
1
hMGA
r+−
=ϕϕ
(4.36)
となる。これは、 AGMh
GMhl
22
, == ε とおけば、(4.9)式の楕円(ϕε cos1+
=lr )に一致する。
これがケプラーの第一法則である。さて、周期 ]2[habT π= は、 GMlhalb == , を代入すると、
GMaT
3
2π= (4.37)
となる。これが、ケプラーの第三法則である。 エネルギー積分
惑星の運動方程式 23
2
rmMG
rmhrm −=−&& の両辺にr&を
掛けて、積分すると、 ErMG
rmhrm +=+ 2
22
221
& が得られ
る。整理して、
ErMGrrm
rMG
rhrm =−+=−+ )(
2)(
2222
2
22 φ&&& (4.38)
が得られる。第一項は運動エネルギー、第二項はポテンシャルを表す。 軌道の形とエネルギー面積速度の関係 エネルギーと面積速度との関係は、軌道上の一点を調べればよい。近日点では 0=r& となるので、
考えやすい。近日点での半径を mr とすると、
)21(22 2
2
2
2
hGM
rrmh
rMG
rmhE
mmmm
−=−= (4.39)
と書ける。 )1(11
2 εε
+=+
=h
GMlrm
を代入して、整理すると、
)1(2
22
22
−= εhMmGE (4.40)
が得られる。
10
V.角運動量 空間の一点から質点の運動を眺めると便利なことが多い。ここでは、運動量のモーメント(角運
動量)と力のモーメントとの関係を調べ、角運動量の運動方程式を導く。簡単な二次元から出発し
て、三次元に拡張しよう。
1. 角運動量と力のモーメント 平面上の運動方程式は、
yy
xx F
dtdv
mFdt
dvm == , (5.1)
である。第二式xを掛け、第一式に y を掛けて差をつくり、 )( xyxy yvxv
dtd
dtdv
ydt
dvx −=− に注意す
ると、
xyxy yFxFyvxvmdtd
−=− )}({ (5.2)
が得られる。ここで、二つの物理量
xyxy ypxpyvxvmL −=−≡ )( (5.3)
および
xy yFxFN −≡ (5.4)
と定義する。これらの物理量の意味を理解するため
に 、 位 置 を⎩⎨⎧
==
ϕϕ
sincos
ryrx
、 運 動 量 を
⎩⎨⎧
==
py
px
pppp
ϕϕ
sincos
と表示する。角運動量Lは、 )sin()cossinsin(cos ϕϕϕϕϕϕ −=−≡ ppp prprL となる。ここで、
原点から質点の位置を通る運動量ベクトル pv におろした垂線の長さを Pr とすると、
)sin( ϕϕ −= pP rr なので、 prL p≡ となる。これは、原点に関する運動量のモーメントであり、原点
に関する質点の角運動量と呼ばれる。同様に、 FrN F= は力のモーメントである。(5.2)式より、
NdtdL
= (5.5)
が得られる。つまり、角運動量の時間変化の割合は、力のモーメントに等しい。言い換えると、外力の
11
モーメントが0ならば角運動量は保存される。 (問題)角運動量を極座標 ),( ϕr で計算し、
ϕ&2mrL =
となることを示せ。(角運動量は面積速度に質量を掛けたものに等しい。質点に一つの中心力がはたらく
とき、その力の中心を原点に選ぶと、つねに 0== FrN F である。したがって、力の中心に関する面積速度は一定(ケプラーの第二法則)である。) (問題)質点に力がまったく作用しないときは、任意の点に関する
角運動量が保存されることを示せ。 2. 角運動量ベクトル 質点の運動を三次元空間で考えよう。
zz
yy
xx F
dtdv
mFdt
dvmF
dtdv
m === ,, (5.6)
から、前節とまったく同様にして、
⎪⎪⎪
⎩
⎪⎪⎪
⎨
⎧
−=−
−=−
−=−
xyxy
zxzx
yzyz
yFxFyvxvmdtd
xFzFxvzvmdtd
zFyFzvyvmdtd
)}({
)}({
)}({
(5.7)
が導かれる。そこで、
⎪⎩
⎪⎨
⎧
−=−≡−=−≡−=−≡
xyxyz
zxzxy
yzyzx
ypxpyvxvmLxpzpxvzvmLzpypzvyvmL
)()()(
(5.8)
とおく。さらに、
⎪⎩
⎪⎨
⎧
−≡−≡−≡
xyz
zxy
yzx
yFxFNxFzFNzFyFN
(5.9)
と書く。角運動量ベクトル
⎟⎟⎟
⎠
⎞
⎜⎜⎜
⎝
⎛=
z
y
x
LLL
Lv
と力のモーメントを表すベクトル
⎟⎟⎟
⎠
⎞
⎜⎜⎜
⎝
⎛=
z
y
x
NNN
Nv
との間には、
12
NdtLd vv
= (5.10)
が成り立つ。外力のモーメントが0ならば角運動量は保存される。これを角運動量保存の法則と呼ぶ。
(問題)角運動量が z 軸を向くとき、質点の運動は 0=z に限られることを示せ。[ 0== yx LL より、
0)( =− xy yvxvz が得られる。 0≠− xy yvxv より、 0=z となる。]
(問題)上の問題で、さらに、 0=zv を示せ。 3. ベクトルの外積
任意のベクトル BAvv
, に対して、ベクトルCvを
⎪⎩
⎪⎨
⎧
−=−=−=
xyyxz
zxxzy
yzzyx
BABACBABACBABAC
(5.11)
によって作るとき、これを BACvvv
×= (5.12)
と書き、ベクトルCvをベクトル BA
vv, の外積と呼ぶ。また、任意のベクトル DBA
vvv,, に対して
ADABADBDABADBA
AAABBA
vvvvvvv
vvvvvvv
vv
vvvv
×+×=×+
×+×=+×
=×
×−=×
)()(
0 (5.12)
が成り立つ。 (問題)(5.12)式を確かめよ。 外積は、次の性質を持つ。
性質1. BACvvv
×= は BAvv
, に垂直である。
性質2. CBAvvv
,, の大きさを CBA ,, とし、 BAvv
,
の作る平面内でAvからB
vへ測った角度をθ を
13
すれば、 θsinABC = となる。[Cの大きさは、 BAvv
, のつくる平行四辺形の面積に等しい。]
性質3. BACvvv
×= の向きは、AvからB
vへπ より小さな角で回したとき右ねじが進む向きと一致して
いる。[ BAvv
, をxy平面に含まれるようにすると、⎟⎟⎟
⎠
⎞
⎜⎜⎜
⎝
⎛=×=
θsin00
ABBACvvv
となる。 CBAvvv
,, は右手座
標系と一致する。] (問題)性質1を確かめよ。 (問題)性質2を確かめよ。
[ 22222222 )sin()( θABBABABABACCCC zzzzxxzyx =++−=⋅⋅⋅=++= ]
さて、前節で学んだ角運動量ベクトルLvと力のモーメントを表すベクトルN
vは、外積を用いて、
FrNprLvvv
rvv
×=
×= (5.13)
と書くことができる。
14
VI.質点系の力学 多くの質点からなる質点系が満たす運動方程式を調べる。質点系の運動は重心の運動と重心に相対的
な運動に分離することができる。重心は、一つの質点に外力の和が作用したかのように、運動する。 1. 運動量保存の法則 (一学期の復習) まずは、二個の質点(質量m)の間に内力が働いているとする。運動方程式は、
1222
2
2121
2
, Fdt
rdmF
dtrd
mvvvv
== となる。作用・反作用の法
則により、 1221 FFvv
−= なのである。質点1と質点2の位
置の中心 ]2
[ 21rr
rGvv
v += は、 022
=dt
rd Gv
に従うので、等速
度運動を続ける。
N 個の質点系を考える。質点 N,,3,2,1 ⋅⋅⋅ の重さを、 Nmmmm ,,,, 321 ⋅⋅⋅ とする。 j 番目の質点の運動
量を jpv
とし、これにはたらく外力を jFvとする、また、質点k が質点 j に及ぼす内力を kjF
vとする。質
点 j に対する運動方程式は、 0=jjFv
(質点は自分自身に力を及ぼさない)に注意して、
∑=
+=+⋅⋅⋅++++=N
kkjjNjjjjj
j FFFFFFFdtpd
1321
vvvvvvvv
(6.1)
と書ける。全運動量Pv
∑=
=N
jjpP
1
vv (6.2)
を定義する。作用・反作用の法則( jkkj FFvv
−= )に注意すれば、
∑=
=N
jjFdt
Pd1
vw
(6.3)
が得られる。したがって、質点系の全運動量の時間変化は外力の和に等しい、外力がないときは全運動
量は保存される。これは質点系に関する運動量の保存則である。 質点系の重心と全運動エネルギー
15
重心は、
∑
∑
=
== N
jj
N
jjj
G
m
rmr
1
1
v
v (6.4)
と定義される。ここで、(6.4)式の分母は全質量
∑=
=N
jjmM
1
(6.5)
である。さて、全運動量は、
∑∑==
==N
j
jj
N
jj dt
rdmpP
11
vvv
(6.6)
と書ける。(6.4)式、(6.5)式、(6.6)式を見比べると、
dtrd
MP Gvv
= (6.7)
であることが分かる。(6.3)に代入して、
∑=
=N
jj
G Fdt
rdM
12
2 vv (6.8)
が得られる。ゆえに、質点系の重心の加速度は外力のを全質量で割ったものに等しい。 2. 二体問題 二個の質点P と Q が中心力を及ぼしあいながら運動している。それぞれの位置を 21, rr
vvとし、質量を
21,mm とする。その間の距離を 12 rrrvv −= 、質点 P と Q を結ぶ直線に沿ってはたらく力を )(rf とす
る。運動方程式は、
rrr
rfdt
rdm
rrr
rfdt
rdm
1222
2
2
2121
2
1
)(
)(vvv
vvv
−=
−=
(6.9)
となる。二つの質点の重心 ][21
2211
mmrmrm
rG ++
=vv
vは、 02
2
=dt
rd Gv
を満たすので、等速運動をする。
次に、二つの質点の相対的な運動を調べるために相対座標
12 rrrvvv −= (6.10)
16
を導入する。(6.9)式の第一式に1
1m
− をかけ、第二式に2
1m
をかけて足すと、
rrrf
mmdtrd vv )()11(
212
2
+= (6.11)
を得る。換算質量μ
21
111mm
+=μ
(6.12)
を使えば、(6.10)式は、
rrrf
dtrd vv )(2
2
=μ (6.13)
と書ける。したがって、Pに対するQの運動は、P が固定されて Q の質量がμになったと考えたときの運動に等しい。 21 mm >> のときは、
2
1
2
2
1m
mmm
≈+
=μ である。したがって、2体問題において、質量が非常に違うときは、換算質量は小
さいほうの質量にほとんど等しい。 (問題)二つの恒星の間の距離が近くて、互いに引き合って重心のまわりをまわっているとき、これを
連星という。質量 1m の主星Pが質量 2m の伴星Qを距離(長半径)aをへだててまわっている。相対運
動の周期は、)(
221
3
mmGaT+
= π で与えられること示せ。
[(6.13)式に、 221)(
rmm
Grf −= および21
21
mmmm+
=μ を代入
して整理すると、rr
rmmm
Gdt
rdmvv
2221
2
2
2)( +
−= となる。]
(問題) 21,rrvvを重心 ][
21
2211
mmrmrm
rG ++
=vv
vと相対座標 ][ 12 rrr
vvv −= で
表すと、 rmm
mrrr
mmm
rr GGvvvvvv
21
12
21
21 , +
+=+
−= となることを示
せ。 (例)潮汐 太陽を無視して月による潮汐を考えよう。地球と月は万有引力で
17
引き合って、重心 G のまわりを回まわっている。A でも B でも、月の引力が海水を引き寄せる。しかしながら、地球が重心のまわりを回るため、遠心力はBにおいて強く働く。そのため、AでもBでも満ち潮になる。 3. 全運動エネルギー 質点系の全運動エネルギーK は、
∑=
=N
j
jj dt
rdmK
1
2)(21
v
(6.24)
と書ける。まず、 j 番目の質点の位置 jrvを、
'jGj rrrvvv += (6.25)
と分解する。 'jrv
は重心から見た質点の相対位置である。運動エネルギーは、
∑ ∑∑= ==
++=+=N
j
N
j
jj
jj
GGN
j
jGj dt
rdm
dtrd
mdtrd
dtrd
Mdtrd
dtrd
mK1 1
22
1
2 )'
(21')(
21})
'{(
21
vvvvvv(6.26)
となる。第一項は重心の運動エネルギー GK 、第三項は重心に相対的な運動のエネルギー 'K である。重
心の定義より、第二項は0である。したがって、
∑=
=
=
+=
N
j
jj
GG
G
dtrd
mK
dtrd
MK
KKK
1
2
2
)'
(21'
)(21
'
v
v (6.27)
となる。全運動エネルギーは重心の運動エネルギーと重心に相対的な運動のエネルギーの和に等しい。
(問題)重心の定義を利用して、 0'1
=∑=
N
jjj rmv
を証明せよ。
[ ∑∑∑===
+=+==N
jjjG
N
jjGj
N
jjjG rmrMrrmrmrM
111
')'( vvvvvv ]
4. 全角運動量
18
まず、質点系の全角運動量L
∑=
×=N
jjj prL
1
vvv (6.28)
に及ぼす内力と外力の影響を調べよう。微分して、外積の性質に注意すると、
∑∑∑===
×=×+×=N
j
jj
N
j
jj
N
jj
j
dtpd
rdtpd
rpdtrd
dtLd
111
vv
vvv
vv
(6.29)
となる。他方、質点 j に対する運動方程式は、 ∑=
+=N
kkjj
j FFdtpd
1
vvv
に jrvをベクトル的に掛け、 jr
vについ
て加えると、
∑∑∑∑∑== ===
×=×+×=×N
jjj
N
j
N
kkjj
N
jjj
N
j
jj FrFrFrdt
pdr
11 111
vvvvvvv
v (6.30)
となる。(問題参照)右辺は、外力だけで決定される。これを外力のモーメントNvと呼ぶ。
∑=
×=N
jjj FrN
1
vvv (6.31)
(6.29)式と(6.30)式より、
NdtLd vv
= (6.32)
が得られる。したがって、質点系の全角運動量の時間変化の割合は外力のモーメントに等しい。
(問題) 01 1
=×∑∑= =
N
j
N
kkjj Frvv
を証明せよ。
[ ∑∑∑∑∑∑∑∑= == == == =
×−=×−×=×N
j
N
kkjkj
N
j
N
kkjk
N
j
N
kkjj
N
j
N
kkjj FrrFrFrFr
1 11 11 11 1
)(21}{
21 vvvvvvvvv ]
重心の角運動量と重心のまわり角運動量
前節と同様に、質点系の全角運動量 ∑=
×=N
jjj prL
1
vvvを、 )
'(,'
dtrd
dtrd
mprrr jGjjjGj
vvvvvv +=+= と分解し
て調べよう。 'jrv
は重心から見た質点の相対位置である。式変形して、
19
∑∑∑===
×+×=+×+=×=N
j
jj
GGj
N
j
jGjGj
N
jjj dt
rdr
dtrd
rmdtrd
dtrd
rrmprL111
)'
'()'
()'(v
vv
vvv
vvvvv (6.33)
となる。第一項は全質量が重心に集中したと仮想したときの重心が原点まわりにもつ角運動量 GLv
、第
二項は重心のまわりの角運動量 'Lvである。したがって、
∑=
×=
×=
+=
N
j
jjjG
GGG
G
dtrd
rmL
dtrd
rML
LLL
1
''
'
vvv
vvv
vvv
(6.34)
となる。また、重心が原点まわりにもつ角運動量 GLv
は、
PrL GGvvv ×= (6.35)
とも記述できる。角運動量は重心運動によるものと、重心のまわりの運動によるものの和として与えら
れる。 (例)公転と自転
惑星の公転は重心が原点まわりにもつ角運動量 GLv
であり、自転は重心のまわりの角運動量 'Lvである。
外力のモーメントの分解
外力のモーメント ∑=
×=N
jjj FrN
1
vvvも、 'jGj rrr
vvv += を用いて
∑∑∑===
×+×=×+=N
jjj
N
jjG
N
jjjG FrFrFrrN
111
')'(vvvvvvvv
(6.36)
となる。第一項は力が重心に集まったときの原点まわりの外力のモーメント GNv
、第二項は重心のまわ
りの外力のモーメント 'Nvである。したがって、
∑
∑
=
=
×=
×=
+=
N
jjj
N
jjGG
G
FrN
FrN
NNN
1
1
''
'
vvv
vvv
vvv
(6.37)
20
となる。(6.35)式を微分して、(6.3)を利用すれば、
G
N
jjGGG
GG NFrdtPdr
dtPdrP
dtrd
dtLd vv
vv
vvv
vv
=×=×=×+×= ∑=1
(6.38)
であることが分かる。したがって、
'' NdtLd
NdtLd
GG
vv
vv
=
= (6.39)
となる。つまり、角運動量に対する運動方程式は重心に関する式と、重心のまわりの角運動量に対する
式に分けられる。
(問題)(6.32)式を利用して、単振り子の運動方程式 θθ sin22
mgdtdml −= を導け。
[ θθ sin, mglNmllL ⋅−=⋅= & ]
21
VII.剛体の運動 剛体とは、内力により相互の位置関係が変わらない質点の集合である。剛体の位置と配向(あるいは
回転)を決めるにはいくつ変数が必要か考えてみよう。
剛体内の一点(例えば、重心)は、空間に固定した座標
軸により、 ),,( zyx 3個の座標で決まる。この点を通って剛体に固定した一つの直線を考えると、その方向は極
座標の2個の変数 ),( ϕθ できまる。剛体は直線のまわりに回転できるので、それを表す角φが必要である。こうして、剛体の位置と配向は6つの変数で決まる。このこ
とを剛体の自由度は6であるという。 剛体の運動は、6つの運動方程式で決められる。すな
わち、重心に対する運動方程式
∑=
=N
jj
G Fdt
rdM
12
2 vv
の zyx ,, 三成分と、角運動量に対する運動方程式
∑=
×=N
jjj Frdt
Ld1
vvv
の zyx ,, 三成分である。もしも、外力のモーメントが0ならば、角運動量は一定に保たれる。これを剛体に対する角運動量保存の法則という。剛体の二点に大きさが等しく、向きが反対の二力が作用すると
き、これを偶力という。偶力は合力としては0であるが、力のモーメントをもち、剛体の回転を加速させる。 (問題)剛体に力が作用する点を着力点といい、着力点を通りの力のベク
トル方向と一致する直線を作用線という。剛体に同一平面内の平行でない
3つの力が加わってつりあっているときは、3力の作用線は一点で交わる
ことを証明せよ。[2力 21, FFvvの作用線の交点では、 21, FF
vvのモーメントは
0である。釣り合いが保たれるためには、 3Fvもこの点に関してモーメント
が0でなければならない。] 1. 固定軸を持つ剛体の運動 固定軸を持つ剛体は、固定軸まわりの回転の自由度ϕを持つ。この剛体の運動を決める方程式は、角
運動量に対する方程式である。軸上に原点を持ち、空間に固定した円柱座標 ),,( jjj zr ϕ を用いれば、角
22
質点 j の角速度dt
d jϕω = は一定である。全角運動量 zL は、
∑=j
jjz rmL ω2
(7.1)
となる。和∑j
は剛体を構成する質点全体に関する和である。こ
こで、剛体と固定軸によって定まる量
∑=j
jj rmI2 (7.2)
を固定軸まわりの剛体の慣性モーメント I と呼ぶ。軸のまわりの角運動量は、 ωILz = であるので、角運動量に関する運動方程式は、サフィックスを省略して、
NdtdI
dtdI == 2
2ϕω (7.3)
となる。慣性モーメントは回転運動の慣性の大きさを表すものである。 (例)物理振り子 軸に垂直な鉛直内に軸 yx, をとり、x軸を鉛直方向にとる。物理振り子の重心の位置を
),,( GGG zyx とすると、重力のモーメントは、
∑ −=−=j
Gjj gMyymgN となる。重心G
と軸Oと距離をhとし、OGの鉛直からの傾
きをϕとすれば、 ϕsinhyG = 。ゆえに重力
のモーメントは、 ϕsinMghN −= である。したがって、運動方程式は
ϕϕ sin22
MghdtdI −= (7.4)
となる。単振り子の運動方程式と比較すれば、物理振り子は長さが
MhIl = (7.5)
で与えられる単振り子と同じ運動をすることがわかる。 (問題)単振り子は、質量が先端に集中した物理振り子と同等であることを示せ。 回転の運動エネルギー
剛体の回転の運動エネルギーは、 ∑∑ ==j
jjj
jjj rmrmK222
21)(
21 ωω より、
23
IK 221ω= (7.6)
となる。 2. 剛体の慣性モーメント 回転半径 慣性モーメント I と全質量M との比の平方根を回転半径κ と呼ぶ。つまり、
∑∑
=
jj
jjj
m
rm 22κ (7.7)
である。 慣性モーメントの計算 剛体に固定した軸まわりの慣性モーメント I を考える。この軸を z 軸、これに平行で重心
を通る軸を 'z 軸とし、 'z 軸まわりの慣性モーメントを GI
とする。重心 ),,( GGG zyx を通り、 zyx ,, 軸に並行な
',',' zyx をとる。すると、
∑
∑+=
+=
jjjjG
jjjj
yxmI
yxmI
)''(
)(
22
22
(7.8)
である。 ,',' jGjjGj yyyxxx +=+= を第一式に代入して、整理すると、
222 )( MhIyxMII GGGG +=++= (7.9)
が得られる。h は 'z 軸と 'z 軸の間の距離( 22 GG yxh += )である。まわりしたがって、重心を通る
軸のまわりの慣性モーメント GI を知っていれば、これからh だけ離れた平行な軸のまわりの慣性モー
メントは(7.9)式で与えられる。実際の計算は、和∑j
を積分に置き換える。
(問題)(7.9)式を導け。
24
(例)密度も厚さも一様な円板 円板の中心を通り、円板に垂直な軸の周りの慣性モ
ーメントを求める。円板の半径a を、面密度をσ とする。軸からの距離がr と drr + の間の質量は rdrπσ2
であるから、全質量は22 adrrM
a
o
πσσπ == ∫ であり、
慣性モーメントは22
22 aMdrrrI
a
o
== ∫ σπ となる。
(例)密度の一様な球 球の中心を通る軸の周りの慣性モーメントを求める。円板の半径a を、密度をρとする。軸からの距
離がr と drr + の間の質量は drr 24πρ であるから、全質量は 323
44 adrrMa
o
ρπρπ == ∫ であり、慣性
モーメントは222222
524
324)( MadrrrdrryxI
a
o
a
o
==+= ∫∫ πρπρ となる。
(例)薄い球殻
球 の 場 合 、53
34
52,
34 aIaM ρπρπ == で あ る 。 球 殻 の 厚 さ を da と す る と 、
daadII 43
8 ρπ== (球)(殻) 、および、 daadMM 24πρ== (球)(殻) が得られる。したがって、
2
32 aMI (殻)(殻)= となる。
さて、これらの慣性モーメントは物体(質点ではない!)の運動にどのような影響を及ぼすだろうか。
具体的な例を紹介しよう。 (例)斜面を転がる球 斜面(傾きθ)を滑らずに転がり下りる球の加速度を求めよう。エネルギー保存則より、
MgHMgyIMv =++ 2221
21 ω (7.10)
が成り立つ。H ははじめ球が静止していたときの高さ、aは球の半径である。である。面と球の間にすべりがないので、
va =ω (7.11)
25
が成り立つ。2
52 MaI = を考慮して、(7.10)式を整理すると、 )(
107 2 yHMgMv −= なる。両辺を微
分して、 θsinvdtdy
−= に注意すると、 θsin57 Mg
dtdvM = などより、 θsin
75 g
dtdv
= が得られる。(質
点の場合は、 θsingdtdv
= )
つぎに、球にはたらく転がりの摩擦力F を求めよう。角運動
量 の 運 動 方 程 式 は FadtdI =ω と な る 。 よ っ て 、
θθω sin72sin
75
52
2 MggMdtdv
aI
dtd
aIF =⋅=== である。
摩擦力F は、最大静止摩擦力 mm MgF θμ cos= を超えること
はできない。したがって、滑り始める斜面の傾き mθ は、 μθ 27tan =m である。
(問題)斜面(傾きθ)を滑らずに転がり下りる円柱の加速度が θsin32 g
dtdv
= となることを示せ。ま
た、円柱に働く転がりの静止摩擦係数を求めよ。 3. コマの歳差運動 回転しているコマの軸を少し傾けると、軸が鉛直線と一定の角を保ちながら一定の角速度で旋回する。
これをコマの歳差運動という。ここでは、コマの回転が充分速い(つまり、歳差運動の角運動量が自転
の角運動量に対して無視できる)として、近似的な取り扱
いで歳差運動を導く。 コマの軸がθ傾いて歳差運動しているとする。支点からコマの重心までの距離をlとすると、支点のまわりの重力
のモーメントNvの大きさは θsinMglN = で与えられる。
モーメントNvは、鉛直線とコマの軸を含む面に垂直で、水
平面内にある。支店のまわりのコマの角運動量をLv、微小
時間dt の間のLvの変化を Ld
vとすると、
dtNLdvv
= (7.12) となる。角運動量L
vには、自転のための角運動量と歳差運動のための角運動量があるが、後者を無視し
よう。つまり、角運動量Lvはコマの軸と一致している。さて、歳差運動のために、角運動量L
vの先端は
半径 θsinL の円を描いてまわる。いま、歳差運動の角速度をΩとすると、 dtLdL Ω⋅= θsin となる。(7.12)式に、 dtLdL Ω⋅= θsin と θsinMglN = を代入して、
26
ωIMgl
LMgl
==Ω (7.13)
が得られる。同じコマでも、自転が早いほど歳差運動はゆっくりである。高速で回転しているコマは重
力がはたらいても倒れない。これをジャイロ現象と呼ぶ。 (例)地球の歳差運動 地球は少し扁平な回転楕円体であり、地軸はその対
称軸である。地軸は公転面に対して23.27度傾いているので、太陽の引力は地球の中心に対してモーメント
をもつことになる。引力のモーメントは地軸を立たせ
る向きにはたらく。このため、地球は自転と反対の向
きに歳差運動をおこない、その周期はやく26000年である。