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1 December 9, 2016 ・本資料は情報提供を唯一の目的としたものであり、金融商品の売買や投資などの勧誘を目的としたものではありません。 本資料の中に銀行取引や同取引に関連する記載がある場合、弊行がそれらの取引を応諾したこと、またそれらの取引の実 行を推奨することを意味するものではなく、それらの取引の妥当性や、適法性等について保証するものでもありません。 ・本資料の記述は弊行内で作成したものを含め弊行の統一された考えを表明したものではありません。 ・本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、その正確性、信頼性、完全性を保証するものではあり ません。最終判断はご自身で行っていただきますようお願いいたします。本資料に基づく投資決定、経営上の判断、その他 全ての行為によって如何なる損害を受けた場合にも、弊行ならびに原資料提供者は一切の責任を負いません。実際の適用に つきましては、別途、公認会計士、税理士、弁護士にご確認いただきますようお願いいたします。 ・本資料の知的財産権は全て原資料提供者または株式会社三菱東京 UFJ 銀行に帰属します。本資料の本文の一部または全部 について、第三者への開示および、複製、販売、その他如何なる方法においても、第三者への提供を禁じます。 ・本資料の内容は予告なく変更される場合があります。 BTMU Global Business Insight Asia & Oceania .タイ駐在員個人所得税の基本的な取り扱いとトラブル事例(2永峰・バンチキ会計事務所 公認会計士 山崎 宏史 .インドネシア:外国人の住宅所有に関する権利と制限 PT. INDOMALCO INFO CENTER Ⅲ.インド物品・サービス税(GST )~2017 4 1 日へ向けてのロードマップ Mayur Batra & Co. Ⅳ.各国トピックス 【マレーシア】輸出代金のリンギットへの両替義務化 【インド】高額紙幣の使用禁止から 1 カ月、各地で影響 【ミャンマー】10 月の外国投資額急増、前月比でおよそ 4 倍に Ⅴ.自動車業界レビュー 【タイ】2016 10 月の販売は前年比、前月比共マイナス転換。 完成車(CBU)輸出も前年、前月割れ続く。 2 7 9 12 11

BTMU Global Business Insight Asia & Oceania › report › insasean › AW20161209B.pdfBTMU Global Business Insight Asia & Oceania 3 『実際に、税務調査で否認されたケースをみてみると、海外子会社に出向している従業員のその海外子会

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December 9, 2016

・本資料は情報提供を唯一の目的としたものであり、金融商品の売買や投資などの勧誘を目的としたものではありません。

本資料の中に銀行取引や同取引に関連する記載がある場合、弊行がそれらの取引を応諾したこと、またそれらの取引の実

行を推奨することを意味するものではなく、それらの取引の妥当性や、適法性等について保証するものでもありません。

・本資料の記述は弊行内で作成したものを含め弊行の統一された考えを表明したものではありません。

・本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、その正確性、信頼性、完全性を保証するものではあり

ません。最終判断はご自身で行っていただきますようお願いいたします。本資料に基づく投資決定、経営上の判断、その他

全ての行為によって如何なる損害を受けた場合にも、弊行ならびに原資料提供者は一切の責任を負いません。実際の適用に

つきましては、別途、公認会計士、税理士、弁護士にご確認いただきますようお願いいたします。

・本資料の知的財産権は全て原資料提供者または株式会社三菱東京 UFJ銀行に帰属します。本資料の本文の一部または全部

について、第三者への開示および、複製、販売、その他如何なる方法においても、第三者への提供を禁じます。

・本資料の内容は予告なく変更される場合があります。

BTMU Global Business Insight

Asia & Oceania

Ⅰ.タイ駐在員個人所得税の基本的な取り扱いとトラブル事例(2) 永峰・バンチキ会計事務所 公認会計士 山崎 宏史

Ⅱ.インドネシア:外国人の住宅所有に関する権利と制限 PT. INDOMALCO INFO CENTER

Ⅲ.インド物品・サービス税(GST)~2017年4月1日へ向けてのロードマップ

Mayur Batra & Co.

Ⅳ.各国トピックス

【マレーシア】輸出代金のリンギットへの両替義務化

【インド】高額紙幣の使用禁止から 1 カ月、各地で影響

【ミャンマー】10 月の外国投資額急増、前月比でおよそ 4 倍に

Ⅴ.自動車業界レビュー

【タイ】2016 年 10 月の販売は前年比、前月比共マイナス転換。

完成車(CBU)輸出も前年、前月割れ続く。

… 2

… 7

… 9

… 12

… 11

BTMU Global Business Insight Asia & Oceania

2

Ⅰ.タイ駐在員個人所得税の基本的な取り扱いとトラブル事例(2)

(前回のレポートは、以下の URLをクリックして本文をご参照ください。)

http://www.bk.mufg.jp/report/insasean/AW20161110.pdf

1.トラブルの契機

前回取り上げた通り、タイで個人所得税の納税義務が発生する場合、A:タイ法人支払いの給与や手当だ

けでなく、B:日本法人支払いの給与や手当、C:日本法人負担の社会保険料、D:その他経済的利得(子女

の現地学費負担など)を含め申告をしなければなりません。

しかしながら、日タイ双方の給与明細を合算しただけ(Aと Bのみ)の申告であったり、Aのみの申告し

かしていないなど、駐在員の個人所得税の申告を正しい所得範囲で行っていない在タイ日系企業も散見され

ます。

誤った所得範囲で申告を行っている日系企業は実数として少なくないのですが、個人所得税を巡り、実際

に税務当局との間でトラブルになったという話を聞くことは極めてまれです。

これは、そもそも慢性的に人員不足のタイ税務当局が、金額的にインパクトの小さい個人所得税を主目的

に調査を実施することは、ほとんどないということを暗に物語っているともいえるでしょう。というのも、

仮にタイ税務当局が日本人駐在員の個人所得税を調査の対象としたとしても、B~D に係る根拠資料(日本

語)のほとんどが日本法人側で保管されているため、日本人駐在員の過少申告の証拠を入手することは非常

に困難であるからです。

しかしながら、ふとしたタイミングで日本人駐在員の個人所得税が税務当局との間でトラブルになること

があります。数々の事例から、そのきっかけとしてよく見られる三つのケースを以下に挙げます。

(1)日本法人がタイ法人に請求している日本人駐在員の給与金額と、日本人駐在員が申告している個人所

得税の所得金額が一致していない場合

昨今、本邦の税務署から、海外駐在員に対する日本側からの支払い給与や、その他の人件費関連費用を下

記のケースのように、極力海外の現地法人側で損金として処理するようにとの指導が入ることが多くなりま

した。

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3

『実際に、税務調査で否認されたケースをみてみると、海外子会社に出向している従業員のその海外子会

社における地位と同等の地位の現地従業員の給与と同等以上にその海外子会社がその出向している従業員

の給与を負担しているか否か(現地給与と出向負担金の合計額が同等の地位の現地従業員の給与の額以上で

あるか否か)を調べ、その海外子会社の負担が少ない場合(日本の親会社の負担が多過ぎる場合)には、調

査官がまずは「移転価格税制の対象になる!」と言い、最終的には国外関連者への寄附金の損金不算入の規

定(措法 66の 4(3))によって課税する、という例が多くなっています。』注

このように、従来日本側が支払った給与をタイ法人に請求していなかった企業も、日本側の税務リスクを

避けるため、タイ側に全額請求するようになることが多くなりました。

こうした費用負担の変更によってタイ法人の人件費が増加し、タイ税務当局の法人税調査に際し、増加要

因として、日本側が支払った日本人駐在員の給与や手当の存在と金額が把握され、それが駐在員の個人所得

税申告金額を上回っていた場合、その金額を根拠に、過年度分も含め過少申告の事実があったと認定され、

追徴税の支払いを課されることになります。

(2)会社が申告範囲の誤りに気付き、ある年度から適切な所得申告範囲に変更した場合

日本人駐在員の個人所得税について、誤った範囲で申告を行っている日系企業のほとんどは悪意がありま

せん。

ある時、申告範囲が誤っていたことに気付き、その年度から全駐在員の個人所得税を正しい範囲に修正し

て申告したら、税務局から現在所属している駐在員の過年度の修正申告だけでなく、過去に会社に在籍し、

既に帰任している日本人スタッフに関しても過少申告の事実があったと認定され、追徴税の支払いを課され

たというケースもありました。

(3)タイ人スタッフによる内部告発

会社によっては、日本人駐在員の個人所得税申告を社内のタイ人スタッフが実施しているところもありま

す。

通常タイ人スタッフは、タイ側からだけでなく、日本側からも給与や手当の支払いや、経済的利得による

所得があることになじみがありません。このため、タイ側からの支払い給与、賞与のみを所得に含め個人所

得税申告を行ってしまっていることが少なくありません。

そのような状況において、日本人駐在員の個人所得税申告を担当しているタイ人スタッフが、日本人駐在

員の日本側からの給与や各種補助、手当の存在を何かのきっかけで知ることになり、当該タイ人スタッフが

昇給や待遇などに不満を持って退職するに至った場合などに、その事実を税務当局側に内部告発するといっ

た事例を聞くこともあります。

2.個人所得税の過少申告が発覚した場合の規定

前章で挙げた個人所得税の過少申告が発覚した場合には、納税不足額のほか、納税不足額の 100%に相当

する加算税、月 1.5%の延滞税が課されます(自主的に修正申告をした場合には加算税と延滞税の減額規定

があります)。

**************************************************************************

注 朝長英樹「海外子会社への従業員の出向に係る負担」より引用

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4

また刑事罰として、脱税目的で虚偽の情報提供、虚偽の答弁、虚偽の証拠の作成、その他不正行為をした

場合には、3カ月以上 7年以下の懲役、または 2,000バーツ以上 2万バーツ以下の罰金が科されます。

刑事罰に関しては、脱税目的で税務局を欺くための不正行為が前提となっていますので、所得申告範囲に

関する認識の誤りによる過少申告は対象とはなりません。

3.個人所得税の負担軽減

税務上のリスクを負うことのない方法で、個人所得税の負担を軽くするためには所得税控除を最大限に用

いることが有効です。

所得税控除には細かいものを含めると幾つかありますが、日本人駐在員が現実的に利用可能なものとして

は(1) 長期投資信託(LTF)、(2) 積立保険、(3) 政府推奨年金保険、(4) リタイアメント長期投資信

託(RMF)、(5) プロビデントファンドの五つが挙げられます。

(1)長期投資信託(LTF)

特定の要件を満たした長期投資信託の購入金額のうち、個人所得の 15%もしくは 50 万バーツのいずれか

低い方を限度として所得控除を受けることができるという制度です。この長期投資信託を売却した際に発生

する売却益も非課税となります。

しかしながら、2016 年 1 月以降に購入した長期投資信託については、数えで 7 年保有しなければならず、

2016 年 12 月 31日に購入した場合、最短でも 2022年 1月 1日まで 5年以上は保有しなければ所得控除は認

められません。

保有期間要件もネックとなりますが、このような所得控除の対象となる長期投資信託の要件として、一定

のタイ株式市場の株式が含まれていることが求められるため、購入時の時価が将来的に下落する可能性もあ

ります。また、当然ながらバーツ建てでの購入となりますので、保有期間中のバーツの為替変動も影響して

きます。

所得控除の対象となる長期投資信託はバンコクの各銀行窓口で購入することができます。多くの銀行では

株式割合の大きい高リスク商品と、債券割合の大きい低リスク商品の 2種類を販売していますが、いずれに

しても元本割れのリスクがある点に留意が必要です。

この長期投資信託による所得控除制度は 2019 年度まで、2020 年度以降は廃止となることが予定されてい

ます。

(2)積立保険

タイローカルの保険会社が販売する生命保険において、保険料の払込金額 10万バーツまでを限度として、

所得税控除の対象にできるという制度です。

払込期間に制限はありませんが、満期まで 10年以上の保険契約であることが求められます。

実際にタイローカルの保険会社で見積もりを取った、5年積立 20年満期の積立保険の条件は下記のように

なります。

BTMU Global Business Insight Asia & Oceania

5

【5 年積立 20 年満期の積立保険(見積もり例)】 (単位:バーツ)

Policy Year (経過年数)

Main Premium (払込金)

Benefit at Policy Year End(受取金)

Life Coverage (死亡保証金) Surrender Value

(解約返戻金) % Amount % Amount

1 100,000 5,000 103 103,000 19,800

2 100,000

5,000 103 206,000 69,800

3 100,000

5,000 103 309,000 172,400

4 100,000

5,000 103 412,000 264,400

5 100,000

5,000 103 515,000 374,600

6 0 1 5,000 104 520,000 381,300

7 0 1 5,000 105 525,000 388,200

8 0 1 5,000 106 530,000 395,400

9 0 1 5,000 107 535,000 402,700

10 0 1 5,000 108 540,000 410,300

11 0 1 5,000 109 545,000 418,100

12 0 1 5,000 110 550,000 426,200

13 0 1 5,000 111 555,000 434,400

14 0 1 5,000 112 560,000 443,000

15 0 1 5,000 113 565,000 451,800

16 0 1 5,000 114 570,000 460,800

17 0 1 5,000 115 575,000 470,200

18 0 1 5,000 116 580,000 479,800

19 0 1 5,000 117 585,000 489,800

20 0 131 655,000 118 590,000 500,000

Total 500,000 - 750,000 - - -

タイの保険会社による保険契約は「タイ国保険事業奨励管理委員会(OIC)」により、保険会社が倒産した

場合でも、契約が守られるよう手配すると宣言されています。

上述の長期投資信託と比較し、元本割れのリスクがない点はメリットとなりますが、満期まで 10 年以上

の契約でなければならず、バーツ変動の為替リスクは残ります。

(3)政府推奨年金保険

タイ政府が推奨している条件の生命保険においては保険料の払込金額を、所得の 15%もしくは 20 万バー

ツのいずれか低い金額までを限度として所得控除を受けることができます。こちらもタイローカルの保険会

社で取り扱っています。

実際にタイローカルの保険会社にて見積もりを取った 35歳時点加入 5年積立 90歳満期の保険の条件は下

記のようになります。

【35 歳時点加入 5 年積立 90 歳満期の保険(見積もり例)】 (単位:バーツ)

Policy Year (経過年数)

Main Premium (払込金)

Benefit at Policy Year End (受取金)

Life Coverage (死亡保証金) Surrender Value

(解約返戻金) % Amount % Amount

Age 35 200,000 0 0 105 210,000 41,870

Age 36 200,000 0 0 105 420,000 162,425

Age 37 200,000 0 0 105 630,000 411,478

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6

Age 38 200,000 0 0 105 840,000 638,874

Age 39 200,000 0 0 105 1,050,000 911,748

Age 60 0 10.83 108,284 - - 0

Age 61 0 10.83 108,284 - - 0

Age 62 0 10.83 108,284 - - 0

Age 63 0 10.83 108,284 - - 0

Age 64 0 10.83 108,284 - - 0

Age 65 0 10.83 108,284 - - 0

Age 66 0 10.83 108,284 - - 0

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

Age 90 0 10.83 108,284 - - 0

Total 1,000,000 - 3,356,804 - - -

(4)リタイアメント長期投資信託(RMF)

上述の(1)長期投資信託と同様タイ上場株式を含んだ金融商品ですが、購入から 5年間もしくは 55歳ま

でのいずれか長い期間まで保有しなければならず、所得の 15%もしくは 50万バーツから(3)(5)の合計控

除額を除いた金額のいずれか低い方を限度として控除を受けることができます。

(5)プロビデントファンド

会社が退職金積立基金法に基づいて積み立てる退職金給付金です。積み立ては従業員の毎月の給与から、

および会社からの折半で行い、毎月の積立額は給与の 2~15%の間で任意で選択することができます。

従業員負担分の積立額が所得控除の対象となりますが、これも前述の(4)と同様、所得の 15%もしくは

50 万バーツから(3)(4)の合計控除額を除いた金額のいずれか低い方を限度として控除を受けることがで

きます。

以上の所得控除を最大限に活用した場合、仮に年間所得が 200万バーツ(約 600万円)として税額を計算

すると、年間で 22万 5,000バーツ(約 67万 5,000円)税負担を軽減することができます。

上記の(1)~(4)は個人として購入、契約する方法です。会社がタイ駐在員の個人所得税を負担する場

合は、駐在員個人が会社のコストを減らすために金融資産を購入したり、保険に加入する形になってしまい

ます。これらを会社のコスト削減として用いる場合には、各駐在員と会社との個別の取り決めが必要となっ

てきます。

一方、(5)のプロビデントファンドを用いる場合は、会社主導で駐在員を含む従業員の個人所得税の負担

軽減を図ることができるため、古くからタイで事業を営む在タイ日系企業などで採用しているケースも多く

あります。

以上無理のない方法があるようでしたら、会社や各個人の状況に応じて試みてはいかがでしょうか。

記事提供:永峰・バンチキ会計事務所 公認会計士 山崎 宏史

名古屋大学経済学部卒業。監査法人トーマツにて金融機関、グローバル企業の監査業務 に従事後、永峰・三島会計事務所に入所。現在はバンコク事務所(永峰・バンチキ)に

駐在し、在タイ日系企業に対して税務コンサルティング業務を行っている。

(2016年 9月 21日作成)

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Ⅱ.インドネシア:外国人の住宅所有に関する権利と制限

インドネシアの土地は、インドネシア国籍を有する者にしか所有権が認められず、外国人が所有権を得る

ことはできません。しかし、インドネシアの居住許可を有した外国人が、自身の住居用に「使用権」の付い

た土地に建つ住宅を所有することは可能です。

土地には区画ごとにさまざまな権利が設定されており、それぞれの土地権利書で確認できます。主な権利

は、所有権、事業権、建設権、使用権です。所有権の有効期間は無期限ですが、所有権の付いた土地を所有

できるのはインドネシア人に限られています。事業権の付いた土地は、例えば農園などに利用されているこ

とが多く、日系企業が工業団地で購入した土地は、権利書に建設権と記載されています。事業権や建設権に

は一定の有効期間があります。

使用権は、外国人に所有が認められる土地の権利として知られてきました。2016 年 9 月に公布された農

地・都市計画大臣/国土庁長官規則 2016年第 29号(以下、29/2016号)では、インドネシアにおいて居住

許可を有する外国人は、使用権によって、住居用に住宅を所有することができるとされています。具体的に

外国人が取得できるのは、以下の住宅です。

a. 使用権の付いた土地、所有権の上に使用権が設定された土地、あるいはもともと所有権や建設権だっ

たものを使用権に変更した土地に建つ住宅

b. 使用権の付いた土地に建てられたアパート、アパートのユニットごとに所有権を変更したアパート

つまり、外国人が住宅を購入しようと思った場合、必ずしも使用権が付いた土地に建つ家を探さなければ

ならないというわけではありません。29/2016号によると、所有権や建設権の付いた土地に建つ住宅が外国

人に譲渡された場合、その土地は国有地となり、その土地に設定されている権利を使用権へと変更すること

によって、当該の外国人に供与されると記されています。つまり、気に入った家が所有権の付いた土地に建

っていたような場合には、当該の土地の権利を土地管理当局で使用権に変更してもらえば、外国人でも購入

が可能となるわけです。

こうした使用権にも一定の有効期間があります。29/2016号では、以下のようになっています。

a. 所有権から変更した使用権の付いた土地の上に建てられた住宅の使用権は 30年有効で、20年の延長、

加えて 30年の更新が可能

b. もともと建設権だったものを使用権に変更した土地の上に建てられた住宅の使用権は、当初の建設権

の有効期間と同じ期間有効で、20年の延長、加えて 30年の更新が可能

c. 所有権の付いた新しいアパートを初めて購入したのが外国人で、使用権に変更した場合、その使用権

の有効期間は 30年で、20年の延長ならびに 30年の更新が可能

d. 所有権の付いた中古アパートを外国人が購入し、使用権に変更した場合、その使用権の有効期間はも

ともとの所有権の有効期間までとされ、20年の延長ならびに 30年の更新が可能

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8

29/2016号ではさらに土地の権利以外にも、外国人の所有を認める住宅について、その他の条件も定めら

れています。その一つが住宅の最低価格です。あまり安価な家を外国人が購入することはできません。最低

価格は、例えばジャカルタでは住宅なら 100 億ルピア以上、アパートは 30 億ルピア以上。ジャカルタに隣

接するバンテンと西ジャワの場合、住宅はいずれも 50 億ルピア以上、アパートはバンテンで 20 億ルピア、

西ジャワは 10億ルピア以上と設定されています。

また、外国人 1人/世帯につき 1 区画の土地しか購入できず、その面積は原則 2,000平方メートルまでで

す。これは投機の回避が目的と考えられます。

外国人によって所有されていた住宅も、他者に権利移転したり譲渡したりすることはもちろん可能です。

外国人からインドネシア人に譲渡された場合、使用権を再び所有権や建設権に変更することも可能です。

また相続による権利移転において相続人が外国人の場合、その相続人にもインドネシアにおける居住許可を

有していることが求められます。有していない場合は、相続した土地を速やかに売却しなければなりません。

この他、外国人によって所有される住居・住宅にも担保権を設定することができることが、29/2016号で

は定められています。

記事提供:PT. INDOMALCO INFO CENTER

インドネシアでの会社マネジメントに必要な投資、会計・税務、会社法務、労務、輸出入などの法令解説を

中心とした情報誌『インドネシア企業経営』を発行。並行して会計・税務・労務管理の代行やコーポレート・

セクレタリー等の実務サポートも行っており、実務に根ざした企業経営情報の提供を心がけている。

(2016年 10月 21日作成)

BTMU Global Business Insight Asia & Oceania

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Ⅲ.インド物品・サービス税(GST)~2017年4月1日へ向けてのロードマップ

物品・サービス税(GST)評議会は 2016年 11月 3日の会合で、2017年 4月 1 日からの導入が計画されて

いる GST 税率を決定した。税率表が発表されたことにより、産業別の影響を調査したり、予測を立てるこ

とが容易になり、それによって GST導入後の事業への影響と変化を理解することができるようになった。

GST税率の公表と同時に、2017年 4月 1日のGST導入へ向けた行動計画も策定された。インド政府は 2017

年 4月 1 日の GST の実施に間に合うよう、努力を重ねている。

GST 税率

GST 審議会は 5%、12%、18%、28%の 4段階の税率区分を定めた。これにより、GST税率は 0%から 28%

の範囲となる。

税率 課税対象品目 追加条項

0% 消費者物価指数のおよそ

50%を構成している食品

などの必需品。

コメ、小麦、豆類など、現在の付加価値税率が 5%で、物

品税が免除されている品目は GST の課税対象とならない。

穀物は免税となる(ゼロ税率ではない)ことが明確化され

たため、仕入税額控除の対象とはならない。

5% 一般的使用品目 食用油、穀粉、アタ粉、マイダ粉、スージ粉、ベサン粉、

牛乳、乳製品、鉱石、無機物、オイルシードなど、現在 5%

の州付加価値税が賦課されている品目は 5%の GST区分と

なる。

12% 大半の物品およびサービス。

日用品を含む。

標準税率 1

18% 標準税率 2

28% 高級品 白物家電および現行の税率が 30~31%の全ての品目。

28%+付加税 奢侈(しゃし)品や有害製

品[sin goods](高級自動

車、パンマサラ、炭酸飲料、

たばこなど)は最高税率

(28%)に加えて付加税が

賦課される。

・ 付加税とクリーンエネルギー税は導入から 5 年間、州

の歳入減少を補填するための財源とする。

・ 中央政府は州が歳入減少を 5 年間補填することを憲法

によって保証した。

・ Swachh Bharat Cess(インド美化のための税)、Krishi

Kalyan Cess(農業保護のための税)、教育税など多数

の租税が GST に組み込まれる。クリーン環境税だけは

現状のまま維持され、州の歳入を補填するための財源

となる。

インド政府の諮問機関(Cos)は課税品目ごとの税率を決定し、各区分の品目の整合性または分類は当局

が行い、GST評議会がこれを承認する。

BTMU Global Business Insight Asia & Oceania

10

今後のスケジュール

上記のように合意された税率は、2016 年 11 月 16 日から始まる冬季国会で承認されなければならない。

GST 評議会は 2016 年 11 月 9~10 日の会合でモデル GST 法案について討議し、最終的な形にまとめる見通

しで、そのモデル GST 法案をベースとして中央政府の GST(CGST)と統合 GST(IGST)に関する法律を

冬季国会に提出する(※)。これらが順調に進めば、2017 年 4 月 1 日から新しい間接税制度が導入される。

なお、州はこれらのモデル法案をベースとした州の GST法を成立させる必要がある。

GST ポータルとモバイルアプリ

2016年 11月 8日より GST ポータルがスタートした。

GST ポータルでは、物品サービス税ネットワーク(GSTN)から納税者の GST 識別番号(TIN)とパスワ

ードが発行され、納税者は GSTN にログインしてポータルに習熟したり、関連情報を入手したりできる。

このポータルによって国内の約 650 万~700 万人の納税者は、全ての税務申告および手続きをワンストッ

プで行うことができるようになる。現在、Infosysの特別設計部門がこの設計作業を行っている。

GSTNはモバイルアプリも開発中で、納税者はこのアプリによって、モバイル端末からでも税務登録を行

ったり、税務申告や申告書のアップロードを行うことができるようになる。

結論

政府は 2017 年 4 月 1 日の目標開始日に間に合わせるよう努力を重ねているが、そのためには、解決しな

ければならない制限や課題があり、政府が課税対象品目ごとの税率表を発表するまでは、GST が特定企業に

及ぼす影響を正確に評価することは難しい。また、複数の税率区分が設けられると分類の問題が生じ、議論

や訴訟となる可能性も生じる。今後はインド経済がどれだけ早く、かつ十分に GST のメリットを受け入れ

るかを見守っていくことになるだろう。

記事提供:Mayur Batra & Co.

(2016年 11月 4日作成)

(※)編集者注:GST評議会の第 5回会合が 12月 2~3日に開催されたが、関連法案について合意できず、12月中旬に再

度会合が開かれる予定になっている。

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Ⅳ.各国トピックス

【マレーシア】輸出代金のリンギットへの両替義務化

マレーシア中銀は 12 月 2 日、物品の輸出代金の 75%以上をリンギットに両替することや国内取引におけ

るリンギット建の決済を義務付けること等を定めた為替管理制度の変更を発表し、12月 5日より施行された。

背景には米国大統領選のトランプ氏の当選以降、対米ドルでリンギット安が進んだことがあり、今回の為

替管理制度の変更によりリンギットの下落に歯止めをかけることが主な目的とみられる。

詳細ついては、以下の URL レポートをご参照。

http://www.bk.mufg.jp/report/insasean/AW20161206.pdf

http://www.bk.mufg.jp/report/insasean/AW20161209A.pdf

【インド】高額紙幣の使用禁止から 1 カ月、各地で影響

インド政府は 11 月 8 日、常態化している賄賂や脱税、偽造紙幣の流通等を防止することを目的に 1,000

ルピー(約 1,680円)と 500 ルピーの 2種類の高額紙幣の使用禁止を発表した。

旧 500ルピー札と 1,000ルピー札は 11月 9日より通貨としての効力を失い、代わりに新たに 2,000ルピー

札と 500 ルピー札紙幣を発行している。12 月 30日まで銀行窓口で旧紙幣との交換作業を進めている。全国

の銀行や ATMでは現金の交換や引き出しを求め、市民の長い行列ができるなど、混乱が続いている。

また、混乱により現金での取引を控えようと、消費者の購買意欲が低下しており、自動車をはじめ、多く

の産業で売上げが落ち込んでいる。中小零細企業(SME)の中には、労働者に給与を支払うことができなく

なり、休業状態に陥っている企業も出ている。

一方で、不足している現金の代わりに電子決済が急速に普及するなど、1 カ月が経ち、各地で様々な影響

が出ている。

【ミャンマー】10 月の外国投資額急増、前月比でおよそ 4 倍に

ミャンマー投資企業管理局(DICA)は、10月の外国投資法の適用を受けた投資額が 20億 2,450万米ドル

(約 2,200億円)に達したと発表した。9月の 5億 5,200 万米ドルに対して 4倍近くに達しており、3月の新

政権発足以降最高額となった。尚、本統計にはティラワ特区をはじめとする経済特区(SEZ)への投資は含

まれていない。

国・地域別にみると、シンガポールが 19億 4,110万米ドルで全体の 95.9%を占めている。以下中国(3,690

万米ドル)、タイ(2,190万米ドル)と続き、日本は 790万米ドルとなっている。

また、産業別にみると、輸送・通信が 14 億 7,490 万米ドルで全体の 72.9%を占め、以下電力(4 億 8,000

万米ドル)、製造業(6,370万米ドル)と続く。

今後多くの投資が期待されている米国については、10 月単月での認可はなく、今年の累計でも 2 億 4,822

万米ドルにとどまっている。

10 月には米国の経済制裁解除やミャンマー新投資法の施行がなされ、外国企業にとっては投資環境が整い

つつあるものの、現状は今後の法整備状況を様子見している企業や投資家も多い。

(各国トピックスの出所)各国政府・業界団体発表、各種報道

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Ⅴ.自動車業界レビュー(タイ)

「タイ」の自動車業界の動向を記載します。

【タイ】

2016 年 10 月の販売は前年比、前月比共マイナス転換。完成車(CBU)輸出も前年、前月割れ続く。

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・タイ国トヨタ自動車(TMT)がまとめた 10月のタイ国内の新車販売台数は前年比▲10.7%、前月

(6 万 3,641台)比▲4.7%の 6万 634台と 3カ月ぶりに前年、前月比共マイナスに転じた。車種別では

乗用車が前年比▲4.8%、前月比▲9.8%の 2万 3,117台、商用車が前年比▲14.0%、前月比▲1.3%の

3 万 7,517台と乗用車、商用車共に不振。プミポン国王崩御に伴う消費自粛ムードが大きく影響した格好。

・タイ工業連盟(FTI)自動車部会公表の 10月の完成車(CBU)輸出台数は前年比▲7.2%、前月比▲8.3%

の 10万 3,192台 4カ月連続の前年割れ、前月比もマイナスに転じた。仕向け地別で見ると、北米が前年比

+93.1%、アジアが同+18.3%、欧州向けが同+9.2%といずれも好調だった。一方、アフリカが同▲53.5%、

中東が同▲52.6%、中南米が同▲31.2%、オセアニアが同▲5.4%と地域間格差が鮮明となった。

・業界では「ファースト・カー政策」(注 1)で定める 5年間の車両保有期限が 2016年 12月末から順次到来

することから、年明け以降の販売増加を期待する声がある一方、「消費が戻るのは国王崩御後 100日以降」

とする向きも多く、早期の販売回復は見込みづらい状況にある。

(注 1)2012年、タイ政府が自動車産業支援のため行った政策で、乗用車やピックアップトラックの購入者の一部を対象に

5年間の車両保有を条件に最大 10万バーツの税還付をしたもの。2016年 12月末より順次、保有義務期限が到来する。

・第 33回「タイ国際モーターエキスポ 2016年」が 12 月 1日~12日の日程で、バンコク北部ノンタブリ県

の「インパクト」で開催されている。9カ国のメーカーによる合計 37のブランドが出展されており、開催

期間中、来場者数 150万人、5万台の四輪車契約が目標とされている。

・10月のプミポン国王崩御を受けた追悼ムードが漂う中での開催で、メーカー各社の展示も控えめなものが

多いとされる。

・今般、「バンコク国際モーターショー」(BIMS)主催者と「マレーシア・オートショー」主催者、更に

マレーシ自動車研究所(MAI)の 3者は東南アジア諸国連合(ASEAN)内でのプロモーション協力を推

進していく覚書(MOU)に署名。2017年からモーターショーの相互出展などで協力関係を強化していく。

・今後、3者は協力して、タイとマレーシアに進出している自動車メーカーが効率的な情宣活動を出来るよ

うサポートしていく他、電気自動車(EV)、自動運転車、配車アプリケーションサービス等、多岐に亘る

プロモーションを可能にしていくとしており、将来的にはモーターショーへの相互出資も視野に入れてい

るという。

・タイ工業省傘下の工業製品規格事務局(TISI)は、政府が製造業の高度化国家戦略「タイランド 4.0」の一

環として推し進めている「自動車・タイヤ試験センター」が 2019年 6月完工する見通しを示し、政府も

2020年初頭の開所を目指す姿勢を強く示している。同センターは総額 45億 4,000 万バーツ(約 140億円)

を投じ東部のチャチュンサオ県サナームチャイケート郡の 200ヘクタール弱の敷地に建設される予定で

タイヤ試験走路と 6つの自動車試験走路を有するもの。

・政府は自動車産業における国際競争力維持の為、自動車部品の研究開発(R&D)、とりわけタイヤの R&

D を最優先事項に位置づけており、将来的に国内のタイヤ生産量を現行の年間 53万トンから 100万トン

に引き上げる方針を打ち出している。今回の「自動車・タイヤ試験センター」が R&D拠点の中核を担う

ことになる。

・マレーシア政府は同国入国許可証(VEP)発行登録制度について、2017年末迄にタイ国境でも導入する意

向を明らかにした。同システムは、同国に入国する車両に対し VEP取得を義務付け、同許可証発行手数

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~アンケート実施中~

(回答時間:10秒。回答期限:2016年 12月 21日)

https://s.bk.mufg.jp/cgi-bin/5/5.pl?uri=PG26FV

料として 20リンギット(500 円弱)を徴収するもの。既に 11月 1日よりシンガポールから同国ジョホー

ル州へ入国する車両に対し導入されており、将来的には、東マレーシア・サラワク州へ入国するインドネ

シアからの車両に対しても同制度が導入される予定。

(自動車業界レビューの出所)各国政府・業界団体発表、各種報道

(編集・発行) 三菱東京 UFJ 銀行 国際業務部

(照会先)高垣 恭 小澤 文月 北村 広明

(e-mail): [email protected]

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