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BCG接種におけるコッホ現象への対応 1 BCG接種における コッホ現象への対応 大阪府豊中保健所 永井仁美 コッホ現象を診断したら・・・ 市町村長は・・(中略)・・医師がコッホ現象を診 断した場合、直ちに被接種者の居住区域を管轄 する市町村長へ報告するよう協力を求めること (平成17年1月27日 厚生労働省健康局長通知) 市町村長→都道府県知事→厚生労働大臣に 報告

BCG接種における コッホ現象への対応BCG接種におけるコッホ現象への対応 3 大阪府への報告例24例の ツベルクリン反応結果(最大発赤径)

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BCG接種におけるコッホ現象への対応

1

BCG接種におけるコッホ現象への対応

大阪府豊中保健所 永井仁美

コッホ現象を診断したら・・・

市町村長は・・(中略)・・医師がコッホ現象を診断した場合、直ちに被接種者の居住区域を管轄する市町村長へ報告するよう協力を求めること

(平成17年1月27日 厚生労働省健康局長通知)

市町村長→都道府県知事→厚生労働大臣に

報告

BCG接種におけるコッホ現象への対応

2

BCGによる皮膚病変の推移

BCG接種制度変更

森 亨,山内祐子.BCG副反応としての皮膚病変の最近の傾向.結核2009;84:109-15

大阪府への報告例における接種月齢(平成17年度~19年度 大阪市を除く)

0

1

2

3

4

3ヶ月未満 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月 6ヶ月以降 不明

H17男児

H17女児

H17不明

0

1

2

3

4

3ヶ月未満 4ヶ月 6ヶ月以降

H18男児

H18女児

H18年度報告数 4例

0

1

2

3

4

3ヶ月未満 4ヶ月 6ヶ月以降

H19女児

H17年度報告数 18例

H19年度報告数 2例

BCG接種におけるコッホ現象への対応

3

大阪府への報告例24例のツベルクリン反応結果(最大発赤径)

12

2

1

5

1 1

2

0

2

4

6

8

10

12

~5mm ~9mm ~14mm ~19mm ~24mm ~29mm ~34mm

ツ反15mm以上は全員INHの6ヶ月投与実施

正常児①

接種当日 接種7日後

接種71日後接種36日後

BCG接種におけるコッホ現象への対応

4

正常児②

接種当日

接種58日後

接種10日後

接種24日後

コッホ現象におけるgrade(案)

針痕部の浸出液漏出 or 痂皮形成(1~9ヶ所)5

針痕部の化膿疹(1ヶ所以上)4

針痕部の発赤+刺入部周辺の健常皮膚の発赤2

針痕部の硬結(1ヶ所以上)3

針痕部の浸出液漏出 and/or 痂皮形成(10ヶ所以上)6

針痕部の発赤のみ1

症状grade

BCG接種におけるコッホ現象への対応

5

Grade1

局所反応所見針痕部の発赤のみ

例1

例2

例3

Grade2局所反応所見針痕部の発赤および針痕部周辺の皮膚の発赤が見られる

例3

例2

例1

BCG接種におけるコッホ現象への対応

6

Grade3

局所反応所見

針痕部に硬結が認められる( )は所見が認められる針痕数

(16個)例1

例2

例3

(14個)

(18個)

局所反応所見

針痕部に化膿疹が認められる( )は所見が認められる針痕数

Grade4

例3

例2

例1

(7個)

(12個)

(9個)

BCG接種におけるコッホ現象への対応

7

Grade5

局所反応所見針痕部に痂皮形成 or 浸出液の漏出が1~9ヶ所認められる

例1

例2

例3

Grade6局所反応所見

針痕部に痂皮形成

or/and浸出液の

漏出が10ヶ所以上

見られる

例1 例2

例3 例4

BCG接種におけるコッホ現象への対応

8

正常児の経過

0

1

2

3

4

5

6

0 2 4 6 10 20 30 40 50 60 70 80 90 120

day

grade

事例1

接種3日め

grade2(発赤+周辺発赤)

接種5日め

grade1(発赤)

事例2

grade3(硬結) grade1(発赤)

接種3日め 接種5日め

コッホ現象陰性(ツ反陰性)例

BCG接種におけるコッホ現象への対応

9

事例3

接種2日め

grade3(硬結10コ)

接種4日め

grade1(発赤)

事例4

grade3(硬結15コ) grade1(発赤)

接種7日め

接種2日め

事例5

接種2日め

grade4(化膿疹9コ)

接種5日め

grade3(硬結9コ)

BCG接種におけるコッホ現象への対応

10

コッホ現象陰性(ツ反陰性)例

0

1

2

3

4

5

6

1 2 3 4 5 6 7

接種後(day)

grade

事例1事例2事例3事例4事例5

数日内に反応が減弱

コッホ陽性(ツ反陽性)事例1(非直後型)

接種4日め:Grade 3(14)

接種6日め:Grade 3(14)

4×4/15×11 〔硬結径/発赤径〕

<ツベルクリン検査>

中等度陽性

接種25日め:Grade 5(4)

BCG接種におけるコッホ現象への対応

11

コッホ陽性(ツ反陽性)事例2(非直後型)

接種7日め: Grade 4(18)

接種13日め: Grade 4(18)

2×2/7×7 (15×12)

〔硬結径/発赤短径(発赤長径)〕

<ツベルクリン検査>

接種60日め: Grade 4(18)

強陽性

コッホ陽性(ツ反陽性)事例3(直後型)

3×3/9×16 〔硬結径/発赤径〕

<ツベルクリン検査>

接種5日め:Grade 5(1)

接種7日め:Grade 5(6) 接種85日め:Grade 2

中等度陽性

BCG接種におけるコッホ現象への対応

12

コッホ陽性(ツ反陽性)事例4(直後型)

接種7日め: Grade 4(18)

接種9日め: Grade 6

7×6/7×6 (27×20)

〔硬結径/発赤短径(発赤長径)〕

<ツベルクリン検査>

接種70日め: Grade 6

強陽性

0

1

2

3

4

5

6

0 3 6 9 12 15 30 45 60 75 90 145

事例1

事例2

事例3

事例4

コッホ現象陽性例(ツ反陽性)

grade

(日数)

7日め

BCG接種におけるコッホ現象への対応

13

直後型と非直後型

直後型(症例3,4) 非直後型(症例1.2)

正常or コッホもどき

局所反応

時間

grade3

接種部位の局所反応がgrade3以上(BCG接種後1週間以内)

フォロー中止

いいえ はい

局所反応が経過中軽減しない

いいえ

フォロー中止

はい

ツ反実施

発赤径10mm未満

フォロー中止

発赤径10mm以上

(コッホ現象)

胸部X線検査

異常所見あり

・発病なければ化学予防

精査にて発病の有無を確認し、

異常所見なし

化学予防

但し、経過中に局所反応の悪化が認められるならツ反検査を実施

(BCG接種後2週間以内が望ましい)

・発病があれば治療

問診(詳細に)

*BCG接種後2週間を過ぎた場合、ツ反発赤径は20mm以上とする

問診

BCG接種におけるコッホ現象への対応

14

発病児における経過(症例1)

2006年11月 出生

この時期に、父親が1ヶ月前より咳症状(+)のまま、会社の定期健診受診にて異常陰影を指摘される。

2007年 1月 父のTB診断【rⅡ2・塗(ー)・PCR(-)】

本児に対して、直後の接触者健診(家族健診)が実施されておらず、本児4ヶ月時点(2007.3)でBCG接種を受ける。

翌日にはBCG接種部位が化膿

2007年 3月

父親の登録後2ヶ月時点(BCG接種の1週間後)で通常通りの家族健診を実施したところ、ツ反29mm(+++)、胸部異常陰影あり、TB治療となる。

治療開始時、QFT(+)。肺門リンパ節石灰化(+)

結核発病児に見られた局所の変化(症例1)

接種後の局所変化

・BCG接種翌日に針痕部の発赤と化膿疹(+)

~家族の話より~

接種後14日目

接種後22日目

接種後31日目 接種後65日目 接種後140日目

BCG接種におけるコッホ現象への対応

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発病児における経過(症例2)2007年4月 出生

10月2日 BCG接種

母「数時間後に接種部位全体が腫れた。おかしい。」

10月10日 受診

母が異常に思い、近医を受診し、ツ反36mm(+++)

Dr⇒「心配ない」・・・・母「ほんと?」

10月14日 市民病院受診

Dr⇒「心配ない」・・・・母「おかしい。ほんと?」

10月16日 別の病院受診

Dr⇒「コッホ現象?」

母が咳をしていることに気づく⇒胸部XP⇒異常あり

母のTB診断 【rⅡ2・塗(3+)・PCR(+)】

本児も胸部異常陰影ありTB治療開始。QFT(+)

接種後15日目

接種後27日目

接種後36日目

接種後43日目

接種後50日目

結核発病児に見られた局所の変化(症例2)

接種後の局所変化

・BCG接種当日に発赤と腫脹

・BCG接種翌日にはさらに強い発赤と腫脹

~家族の話より~

BCG接種におけるコッホ現象への対応

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まとめ

大阪府下では毎年コッホ現象として届出がある。

コッホ現象への対応としての提案

1 保護者から接種後の局所の変化について相談や連絡を

受けた場合、接種後何日目か、gradeはどのくらいかなどの

聞き取りを行い、できれば直接観察が望ましい。

また局所変化について写真撮影を依頼しておくとよい。

2 接種後約1週間以内にgrade3以上の変化が見られている

ような場合にはツベルクリン反応検査を早急に実施する。

3 grade2以下であっても、その後の変化には十分に観察をし、

局所反応が強く増強するような場合はツベルクリン反応検査

をおこなう。 (接種後2週間以内)