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我が国のエボラ出血熱への対応 ~これまでの対応と今後の備え~ 平成 27 2 24 エボラ出血熱に関する関係省庁対策会議 今般のエボラ出血熱については、昨年 3 月、ギニアが世界保健機関(WHO)に対しアウト ブレイクの発生を報告し、ギニア、リベリア、シエラレオネの西アフリカ 3 か国を中心に 感染が拡大した。この 3 か国以外のアフリカにおいては、ナイジェリア、セネガル、マリ で、また、欧米においては、スペイン、アメリカ、イギリスで、既に感染が確認され、本 2 18 日時点で患者数は約 2 3 千人、死亡者数は約 9 4 百人となっている。 西アフリカにおけるエボラ出血熱の感染拡大について、昨年 8 8 日、WHO は「国際的 に懸念される公衆の保健上の緊急事態(PHEICPublic Health Emergency of International Concern))」として公表し、国際的な感染拡大防止のための取組を進めてき たが、拡大ペースは鈍化しているものの、未だ終息には至っていない。 我が国においては、ギニア、リベリア、シエラレオネへの邦人の渡航の自粛要請を行う とともに、検疫における水際対策の強化、感染症指定医療機関における準備等を進めてき た。こうした中で、我が国においても、西アフリカへの渡航歴がある方の中でエボラ出血 熱に感染の疑いがある事例も発生したところであるが、関係行政機関の連携の下、迅速に 対応してきた。 さらに、エボラ出血熱について、海外で邦人の感染が確認された場合及び国内で感染が 確認された場合に備える等、関係行政機関の緊密な連携の下、政府一体となって対応する ため、昨年 10 28 日にエボラ出血熱対策関係閣僚会議(主宰:内閣総理大臣、以下「関 係閣僚会議」という。)を設置・開催した。関係閣僚会議において、関係省庁の連携を強化 するため、エボラ出血熱に関する関係省庁対策会議(局長級、議長:内閣危機管理監、以 下「対策会議」という。)の設置を決定し、第 1 回対策会議を 11 5 日に開催した。ま た、適時、エボラ出血熱に関する関係省庁対策会議幹事会(課長級、以下「幹事会」とい う。)において、省庁横断的な課題についての対応を図ってきた。 今般、第 2 回対策会議を開催し、これまでの取組と最新の状況認識を踏まえた今後の備 えについて、以下のとおり整理することとする。 1. 我が国に関するこれまでの状況 (1)国内における疑い例の発生状況 流行国(現在はギニア、リベリア、シエラレオネ)への渡航歴がある日本への入国 者で、エボラ出血熱に感染の疑いがある者は、日本人、外国人にかかわらず、入国時 又は入国後に、検疫法に基づく隔離措置又は感染症法に基づく入院措置の対応をして 資料4-2 1

我が国のエボラ出血熱への対応 ~これまでの対応と …...我が国のエボラ出血熱への対応 ~これまでの対応と今後の備え~ 平成 27年2月24日

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我が国のエボラ出血熱への対応

~これまでの対応と今後の備え~

平成 27年 2月 24日

エボラ出血熱に関する関係省庁対策会議

今般のエボラ出血熱については、昨年 3月、ギニアが世界保健機関(WHO)に対しアウト

ブレイクの発生を報告し、ギニア、リベリア、シエラレオネの西アフリカ 3か国を中心に

感染が拡大した。この 3か国以外のアフリカにおいては、ナイジェリア、セネガル、マリ

で、また、欧米においては、スペイン、アメリカ、イギリスで、既に感染が確認され、本

年 2月 18日時点で患者数は約 2万 3千人、死亡者数は約 9千 4百人となっている。

西アフリカにおけるエボラ出血熱の感染拡大について、昨年 8月 8日、WHOは「国際的

に懸念される公衆の保健上の緊急事態(PHEIC(Public Health Emergency of

International Concern))」として公表し、国際的な感染拡大防止のための取組を進めてき

たが、拡大ペースは鈍化しているものの、未だ終息には至っていない。

我が国においては、ギニア、リベリア、シエラレオネへの邦人の渡航の自粛要請を行う

とともに、検疫における水際対策の強化、感染症指定医療機関における準備等を進めてき

た。こうした中で、我が国においても、西アフリカへの渡航歴がある方の中でエボラ出血

熱に感染の疑いがある事例も発生したところであるが、関係行政機関の連携の下、迅速に

対応してきた。

さらに、エボラ出血熱について、海外で邦人の感染が確認された場合及び国内で感染が

確認された場合に備える等、関係行政機関の緊密な連携の下、政府一体となって対応する

ため、昨年 10月 28日にエボラ出血熱対策関係閣僚会議(主宰:内閣総理大臣、以下「関

係閣僚会議」という。)を設置・開催した。関係閣僚会議において、関係省庁の連携を強化

するため、エボラ出血熱に関する関係省庁対策会議(局長級、議長:内閣危機管理監、以

下「対策会議」という。)の設置を決定し、第 1回対策会議を 11月 5日に開催した。ま

た、適時、エボラ出血熱に関する関係省庁対策会議幹事会(課長級、以下「幹事会」とい

う。)において、省庁横断的な課題についての対応を図ってきた。

今般、第 2回対策会議を開催し、これまでの取組と最新の状況認識を踏まえた今後の備

えについて、以下のとおり整理することとする。

1. 我が国に関するこれまでの状況

(1)国内における疑い例の発生状況

流行国(現在はギニア、リベリア、シエラレオネ)への渡航歴がある日本への入国

者で、エボラ出血熱に感染の疑いがある者は、日本人、外国人にかかわらず、入国時

又は入国後に、検疫法に基づく隔離措置又は感染症法に基づく入院措置の対応をして

資料4-2

1

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きた。

これまで、検疫の段階でエボラ出血熱への感染があり得る患者として確認されたの

は 2例(西アフリカからの入国者 1例、ギニアからの入国者 1例)である。また、入

国後、検疫所により健康監視が行われていた者でエボラ出血熱への感染があり得る患

者として確認されたのは 3例(リベリアからの入国者 1例、シエラレオネからの入国

者 2例)である。これらはいずれも、特定感染症指定医療機関に搬送され、その後、

国立感染症研究所の検査の結果、陰性との確定診断がなされている。

疑い事例の発生時への対応は、総じて適切かつ円滑に対応してきた。

(参考資料 1)エボラ出血熱への感染があり得る患者の発生日時、概要

(参考資料 2)エボラ出血熱流行の現状

(2)在外邦人の状況

外務省は、邦人保護の観点から、昨年 8月 8日以降、海外安全ホームページにおい

て、感染症危険情報を発出するなどにより、西アフリカ 3か国の在外邦人に対し、早

期退避の検討を促すなどの対応を行ってきた。

西アフリカ 3か国の在外邦人(大使館関係者、医療・援助関係者、現地人配偶者

等)については、昨年 8月初旬で概ね 100人であったが現在 40人まで減少するととも

に、感染の疑い例も確認されていない。

2. これまでの取組と今後の備え

(1)政府における体制の整備

○ 内閣

エボラ出血熱について、海外で邦人の感染が確認された場合及び国内で感染が

確認された場合に備えるとともに、それらの感染が確認された場合に適切に対応

するなど、関係行政機関の緊密な連携の下、政府一体となった対応するために、

関係閣僚会議を設置するとともに、内閣官房に「エボラ出血熱対策室」を、関連

情報の集約体制を強化するために、内閣総理大臣官邸危機管理センターに情報連

絡室を設置した。(平成 26年 10月 28日)

また、昨年 11月 5日に対策会議を開催するとともに、幹事会において、上記対

応についての具体的な検討を行った。

○ 警察庁

エボラ出血熱の感染者等が確認された場合に迅速・的確に対処するため、警察

庁に「エボラ出血熱に関する警察庁対策室」を設置した。(平成 26年 10月 28

日)

2

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○ 総務省消防庁

国内で感染が確認された場合の消防機関の対応に備えること等を目的として、

「エボラ出血熱緊急対策連絡会議」を開催した。(平成 26年 10月 29日)

○ 法務省

エボラ出血熱の発生に関して,関係府省庁との連携を図りつつ,一体となって

対応するため,「入国管理局エボラ出血熱対策本部」を設置した。(平成 26年 10

月 28日)

○ 外務省

エボラ出血熱に関する情報の収集や発信をさらに強化し、邦人保護に万全を期

するため、「エボラ出血熱対策室」を設置した。(平成 26年 10月 28日)

○ 厚生労働省

エボラ出血熱の感染拡大を最小限に抑制し、国民の生命及び健康を保護するこ

と等を目的として、「厚生労働省エボラ出血熱等対策推進本部」を設置、開催し

た。(平成 26年 10月 28日)

(2)国内発生への対応

国内において、エボラ出血熱への感染があり得る患者が確認された場合に、迅速か

つ的確に対応が行えるよう、関係省庁において、以下に掲げる取組を実施している。

① 入国時の検疫対応

昨年 8月から、流行国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)から入国しようとする者

に対して、より一層の注意喚起を行い、確実に問診・健康相談等を行う体制を整備し

た。(その後ナイジェリア及びコンゴ民主共和国(※)が検疫強化の対象に追加された

が、WHO のエボラ出血熱終息宣言等を踏まえ、それぞれ平成 26 年 10 月 24 日、11 月

21日に対象外とした。)

昨年 10月から過去 21日以内にギニア、リベリア又はシエラレオネに滞在していた

ことが確認された入国者は、エボラ出血熱患者との接触の有無に関わらず健康監視の

対象として健康監視の強化を図った。(平成 26年 10月 21日)

各海空港の検疫ブースにおいて、滞在歴質問ボードの掲示等による確認など一層の

検疫体制の強化とともに、過去 21日の流行国の滞在歴を確認することができるよう、

各海空港における検疫所と入国管理局の連携を強化。 (空港:平成 26年 10月 24日、

海港:平成 26年 11月 21日)

(※)コンゴ民主共和国における流行については、西アフリカの流行とは別の流行株とされている。参考

資料 2を参照。

3

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<参考:閣僚会議設置以前からの検疫所における取組>

【検疫業務の運用の明確化等】

・ 検疫所における流行国からの入国者の具体的な取扱い(エボラ出血熱が疑われる

者の隔離や、健康状態に異状を生じた者に対する健康監視などの対応手順)等を

明確化。(平成 26年 8月 8日)

・ 船舶に対する検疫対応(船長等から過去 21 日以内に流行国に滞在した者の有無

等を、報告させるなどの対応手順)等を明確化。(平成 26年 8月 15日)

・ 過去 21 日以内にギニア、リベリア又はシエラレオネに滞在していたことが確認

された入国者は、エボラ出血熱患者との接触歴があるものとみなして健康監視の

対象として対応。(平成 26年 10月 21日~)

【確実に問診・健康相談等を行う体制の整備】

・ 空港において日頃から実施している入国者へのサーモグラフィによる体温測定

に加え、出入国者に対するポスター等による注意喚起や、入国者に対する健康相

談室の利用を呼びかけ。(平成 26年 8月 1日~)

・ 航空会社に対して、流行国に 21 日以内に滞在した乗客は、空港到着後、検疫官

に申告するようお願いする旨の機内アナウンスの協力を依頼。(平成 26 年 8 月

12日~)

・ 9か国語による注意喚起ポスターを検疫所に配布し、注意喚起。(平成 26年 8月

12日~)

【帰国者・入国者への更なるきめ細かな対応】

・ 流行国に社員・職員が滞在等していることが把握できた企業・団体に対して、感

染を予防するために必要な情報の提供、帰国時における検疫所への申告や問診・

健康相談等について協力を依頼。(平成 26年 8月 22日~)

② 国内における対応

入国時又は国内において、万一、エボラ出血熱の疑いのある者が見つかった場合に

は、最寄りの特定感染症指定医療機関等に搬送して隔離措置を実施するなどの医療提

供体制を整備している。

注) エボラ出血熱患者は下記の感染症指定医療機関に搬送・収容が可能。(平成 26

年 11月 10日時点)

特定感染症指定医療機関 :3医療機関( 8床)

第一種感染症指定医療機関 :45医療機関(86床) ※特定と一種で2機関重複あり。

さらに、エボラ出血熱に対する国内対策の強化を図るため、以下の取組等を実施し

た。

○ 警察庁における取組

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・ 警察庁は、都道府県警察に対し、感染防護資機材の準備、関係機関が一体となっ

て行う各種対策への参画、訓練の実施等について指示するとともに、国内で感染者

等が確認された場合、必要に応じ、空港、医療機関等における警戒活動及び交通規

制、検体の搬送支援、感染者等の搬送支援等を実施するよう指示する通達を発出。

(平成 26年 10月 24日等)

・ 都道府県警察においては、関係機関との会議及び訓練、感染防護資機材の着脱等

の訓練、各種マニュアル等の作成及び教養等を実施。

○ 総務省消防庁における取組

・ 各消防機関に対し、「エボラ出血熱の国内発生を想定した消防機関における基本的

な対応について(依頼)」を発出し、救急要請時に発熱症状を訴えている者に、ギニ

ア、リベリア又はシエラレオネの過去 1 か月以内の渡航歴が判明した場合は、直ち

に保健所に連絡し、対応を保健所に引き継ぐこと等を内容とした消防機関の基本的

な対応を通知。(平成 26年 10月 28日)

○ 総務省消防庁及び厚生労働省における取組

・ 自治体に対し、国内でエボラ出血熱患者が発生した場合に保健所等が行う患者の

移送に係る消防機関の協力に関し、消防機関が移送に協力を行う基本的なケースや

移送に協力を行う条件について定めた通知を総務省消防庁及び厚生労働省から発

出。(平成 26年 11月 28日)

○ 厚生労働省における取組

・ 全国の自治体に対し、国内発生を想定した初動対応のフローチャート等の周知を

図るとともに、各都道府県における発生時の対応について再確認を要請。

・ 「エボラ出血熱対策関係全国担当課長会議」(平成 26 年 11 月 13 日)において、

都道府県等に対し、患者及び検体の搬送に係る実地訓練を要請し 140の自治体が実

施したところ。(平成 27年 2月 10日時点)

・ 医療関係者に対し、検査マニュアル、医療従事者の感染防御も含めた診療の手引

き等を作成・配布。

・ 指定医療機関を対象として、全国で個人防護具の着脱研修を実施。(平成 26年 10

月~、全 10回以上開催)

・ 治療に当たる医師に対して助言を行うため、特定感染症指定医療機関の医師等や

国立感染症研究所の専門家による会議(一類感染症の治療に関する専門家会議)を

設置(平成 26年 10月 24日)し、国内で患者が発生した場合には、本会議を開催す

ることとした。

○ 環境省における取組

・ 都道府県・政令市、(公益社団法人)全国産業廃棄物連合会及び(公益社団法人)

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日本医師会に対し、国内でエボラ出血熱患者が発生した場合の廃棄物の適正処理の

確保の周知徹底を依頼等する通知を環境省から発出。(平成 26年 10月 29日)

<参考:閣僚会議設置以前からの取組>

○ 総務省消防庁における取組

・ 各消防機関に対し、事務連絡「エボラ出血熱に関する対応について(情報提供)」

を発出し、情報収集及び衛生主管部局との情報共有や連携を促した。(平成 26年

9月 3日)

○ 厚生労働省における取組

・ 自治体に対し、事務連絡「エボラ出血熱に関する対応について(情報提供)」を

発出し、初動対応や都道府県における医療提供体制等の確認を依頼。(平成 26

年 8月 7日)

・ 自治体に対し、事務連絡「エボラ出血熱に関する対応について(情報提供)」を

発出し、初動対応等の再確認を依頼。(平成 26年 10月 3日)

・ 厚生科学審議会感染症部会において、国内で患者が発生した場合には、一類感染

症の治療に関する専門家会議を開催する旨、報告を行った。(平成 26 年 10 月 8

日)

・ 自治体に対し、事務連絡「エボラ出血熱の国内発生を想定した医療機関における

基本的な対応について(依頼)」、「エボラ出血熱の国内発生を想定した行政機関

における基本的な対応について(依頼)」を発出し、ギニア、リベリア又はシエ

ラレオネの過去 1 か月以内の滞在歴が確認された者は、直ちに保健所に連絡す

ること等にかかる行政と医療機関への協力・周知を依頼。(平成 26年 10月 24日)

③ エボラ出血熱疑い事案発生時の公表の考え方

エボラ出血熱患者の疑い事案発生時の公表の考え方について、関係省庁において整

理を行い、厚生労働省において公表した。(平成 26年 11月 21日)

○公表時期 医療機関から血液等の検体を搬送する時点

○公表内容

・ 疑似症者発生・検査実施の旨

・ 該当者属性

年代、性別、滞在国、症状、滞在国での接触歴、居住都道府県名/外国籍、他

の感染症罹患の有無、入院先医療機関の所在都道府県

・ 搭乗便名・発着地・乗客数等【入国時疑似症発症の場合】

※ 入国時疑似症発症の場合には、国土交通省においても公表

6

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④ その他

○ エボラ出血熱の国内侵入を防ぐための検疫体制の強化や、国内発生に備え、国

立感染症研究所の検査体制の強化を図るため、平成 26年度当初予算の活用によ

り、地方空港等への検疫官(30人)及び国立感染症研究所の研究者(2人)の緊

急増員を図ることとした。

○ また、平成 26年度補正予算において、厚生労働省においては、国内におけるエ

ボラ出血熱等の診断検査等を万全に期すため、国立感染症研究所のセキュリティ

強化を行うとともに、エボラ出血熱の診療体制の整備等を推進するため、感染症

指定医療機関及び保健所の防護服等の購入や医療機関の感染症病床の整備に対す

る補助を行うこととした。

○ その他、国内で発生した場合に備えたエボラ出血熱への感染があり得る患者及

び検体の搬送体制の整備や、海港におけるエボラ出血熱への感染があり得る患者

発生時の公表の考え方、洋上の船舶でエボラ出血熱への感染があり得る患者が発

生した場合の対応について、関係省庁において整理・検討等を進めている。

○ また、エボラウィルスをはじめとする一種病原体等を取り扱う BSL(バイオセー

フティレベル)-4の指定について、地域住民及び関係自治体の理解を得るため、

市民セミナーや見学会を開催するとともに、関係者を構成員とする国立感染研村

山庁舎施設運営連絡協議会(平成 26年 12月 設置)を開催(平成 27年 1月 20

日)し、協議を進めている。

(3)在外邦人等への対応

西アフリカ 3か国について、外務省において、昨年 3月以降、海外安全ホームペ

ージにおいて、随時、スポット・広域情報を発出・更新し、流行状況や感染防止策

等を周知している。また、在外邦人等に対して、在外公館よりホームページや一斉

メール等で随時注意喚起を実施している。

また、外務省は、昨年 8月 8日の WHOによる PHEICの宣言も踏まえ、同日から、

海外安全ホームページにおいて、感染症危険情報を発出する等により、邦人保護の

観点から、西アフリカ 3か国の在外邦人には感染予防策の実施や早期の退避の検討

を促し、西アフリカ 3か国への不要不急の渡航の延期を呼び掛けている。

上記のような取組の中で、西アフリカに滞在する在外邦人は限られている状況で

あり、在外公館が定期的に連絡を取るなどして在外邦人の状況を把握している。万

が一邦人が感染した場合は、医師の判断や本人の意思、家族の要望等を総合的に勘

案し、政府として最善の対応をとるよう関係省庁が連携して対応することとしてい

る。

7

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3.まとめ

これまで、国内においては、エボラ出血熱へ感染があり得る患者は複数確認されてい

るが、いずれの事案においても、検体の検査の結果は陰性であり、また在外邦人の感染

事案も発生していない。

また、WHOにおいては、本年 1月 21日時点において、最も深刻な影響を受けている西

アフリカ 3か国すべてで症例数が減少していることが確認されており、同月 28日には、

「感染伝播の減速」に焦点を当てた対策の段階から「流行の終息」に焦点を当てた対策

の段階に入ったとの報告がなされている。

他方で、WHOの緊急委員会(平成 27年 1月 21日)において、引き続き、PHEICを宣言

し続けるべきであることが全員一致で確認されている。

以上のように、西アフリカにおいて患者の新規発生数は昨年 10、11月頃に比べ、減少

傾向にあるものの、本年 1月に入り、シエラレオネ、ギニアにおいて再び増加している

こと等から(参考資料 2-3参照)、患者の発生を終息させることに向けた取組が引き続き

求められているところである。このため、警戒を怠ることなく、感染の状況や国際的な

動向等を注視しつつ、関係省庁が緊密に連携し、その状況等に応じた対策を的確に講じ

ていく必要がある。政府としては、引き続き、こうした対策を実施するとともに、国民

に対する迅速かつ的確な情報提供を行い、国民の安全・安心の確保を図っていくことと

する。

以上

8

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エボラ出血熱の感染があり得る患者の発生日・概要

※ 厚生労働省作成資料

【参考資料1】

第一報報告日

年齢 性別 国籍 住所地/

滞在地

滞在国 報告の経緯

検査結果

備考

10/27(H26)

40代 男性 - - 西アフリカ 羽田空港到着時に発熱あり。

陰性 本人の希望により、これ以上の情報は非公開

11/7(H26)

60代 男性 日本 東京都 リベリア 本人から検疫所に連絡。

陰性 近医を受診。近医は扁桃腺炎と診断。

11/7(H26)

20代 女性 ギニア - ギニア 関西国際空港到着時に発熱あり。

陰性 マラリア陽性。

12/29(H26)

30代 男性 日本 東京都 シエラレオネ

本人から保健所に連絡。

陰性 遺体袋との接触歴あり。急性副鼻腔炎と診断。

1/18(H27)

70代 女性 日本 東京都 シエラレオネ

本人から検疫所に連絡。

陰性 インフルエンザ陽性。

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エボラ出血熱の患者数・死亡者数【参考資料2-1】

エボラ出血熱の発生状況(2月15日までの報告数(疑い例等含む)。

WHO報告(2月18日)。)

広範囲かつ深刻な伝播が起きている国

患者数 死亡者数

ギニア 3,108 2,057

リベリア 9,007 3,900

シエラレオネ 11,103 3,408

初発例や限定的な感染が確認されている国

患者数 死亡者数

マリ 8 6

ナイジェリア 20 8

セネガル 1 0

スペイン 1 0

アメリカ 4 1

イギリス 1 0

合計 23,253 9,380

ナイジェリア

リベリア

シエラレオネ

ギニア

セネガル

コンゴ民主共和国

※西アフリカの流行とは別のものである(流行株が異なる)。

マリ

テキサス州

ニューヨーク州アメリカ合衆国

※10月17日にセネガル、10月19日にナイジェリア、12月2日にスペイン、1月18日にマリが感染終息。

スペイン

イギリス

赤:感染まん延国黄:輸入症例

/限定的感染国青:感染終息国

※コンゴ民主共和国11月21日にWHOが感染終息を宣言患者数:66 死亡者数:49

(WHO報告 (2014年11月19日))

※ 厚生労働省作成資料

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エボラ出血熱流行の現状(感染者数及び死亡者の推移)【参考資料2-2】

11,103

3,408

9,007

3,900

3,108

2,057

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

シエラレオネ

(感染者数)

シエラレオネ

(死亡者数)

リベリア

(感染者数)

リベリア

(死亡者数)

ギニア

(感染者数)

ギニア

(死亡者数)

○ 2月18日現在、リベリア、シエラレオネ、ギニアで、感染者23,218名、死亡者9,365名。これらの国では非常事態宣言等を発出(11月13日リベリアは非常事態宣言解除)。

○ アメリカ、スペイン、セネガル、ナイジェリア、イギリスでも感染発生。

(10月17日にセネガル、10月20日にナイジェリア、12月2日にスペイン、1月18日にマリが感染終息を宣言。)

○ WHOは8月、「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態」を宣言。終息には少なくとも6~9か月かかるとの見通しを発表。

○ 8月8日、外務省は、ギニア、リベリア及びシエラレオネについて、感染症危険情報を発出。

(渡航者向け) 「不要不急の渡航は延期してください。」(在留邦人向け)「早めの避難を検討してください。」

(単位:人)

実戦は感染者数、点線は死亡者数

※ WHO EBOLA SITUATION REPORT 等を参考に外務省が作成(平成27年2月18日時点)

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エボラ出血熱流行の現状(新規確定感染者報告数の推移)【参考資料2-3】

(単位:人)

※ WHO EBOLA SITUATION REPORT 等を参考に内閣官房エボラ出血熱対策室が作成(平成27年2月18日時点)

117

65

8076 74

20 3039

6552

8 4 5 4 20

100

200

300

400

500

600シエラレオネ

ギニア

リベリア

【シエラレオネ】

12月後半から1月後半に掛けて、新規確定感染者報告数は急激に減少したが、その後は60~80人/週で推移している。【ギニア】

1月25日以降3週連続で増加傾向にあったが、この1週間は減少した。【リベリア】

新規確定感染者の2名は、同じ感染源から感染したものである。(疫学リンクが追えている)

※ リベリアは、2014年11月2日以前のデータが公表されていない。